JP4942869B2 - エレベータ用滑車アッセンブリおよびエレベータシステム - Google Patents

エレベータ用滑車アッセンブリおよびエレベータシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータ技術に関し、特に、制御された滑車−ロープ係合のための可変のショルダ部材およびクラウニング部材を有する平形ロープ用摩擦滑車に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある特定のエレベータ牽引駆動システムには、可撓性の平形ロープが利用されており、これによって、断面が円形である従来のロープと比較して様々な利点が得られるようになっている。可撓性平形ロープを利用した場合、性能および耐性について様々な利点が得られるが、不都合な点もある。これらの不都合な点の中で、ベルトの経路の問題が生じる可能性があることが挙げられる。
【0003】
ベルト経路の問題から、性能に関する様々な問題が生じる恐れがある。例えば、ベルト経路が不適切な場合、望ましくないノイズが発生し、エレベータかごの内部の乗員が、このノイズを聞いて危険な状態であると思い、不快になる可能性がある。ベルト経路が不適切な場合、エレベータかごの乗り心地が悪くなる。ベルト経路が著しく不適切な場合、摩耗が早くなり、エレベータベルトの交換が早くなる可能性がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エレベータシステムのベルト経路の不適切性を最小化もしくは除去することを可能とする滑車の設計を提供することである。
【0005】
本発明の更なる目的は、上述したような従来の周知のエレベータ用滑車設計により生じる欠点を解消することである。
【0006】
これらの目的および他の目的は、以下で説明されるような方法で、本発明によって達成される。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一種類の材料(例えば、鋼や鋳鉄)からなる滑車を利用した場合に、可撓性の平形ロープの経路に関する問題が起こり易いことが試験により明らかとなっている。例えば、ベルト溝部に対してベルトの中心がずれた場合、ベルト溝部のショルダにベルトがこすられる可能性がある。このような状態によって、望ましくないノイズが発生し、最終的にベルトが劣化する。ベルト溝部の側部に沿ってベルトが劣化する速度は、ベルト材料と滑車材料との接触だけでなく、滑車のミスアライメントの程度にも依存する。一般的な可撓性平形ロープは、ウレタンといった可撓性材料からなる被覆を有する。ウレタン製被覆は、所望の大きさの摩擦で滑車ベルト溝部の底部と係合するが、ミスアライメントが生じた場合には、この溝部のショルダと係合し、ウレタン製被覆とショルダとの間に望ましくない摩擦係合が生じる傾向がある。
【0008】
滑車溝部の底部のクラウニングの大きさは、ベルト経路を左右する要素である。凸状面を設けることによるクラウニングが過度に大きい場合、運転中に、可撓性平形ロープにおける応力の勾配が不均衡になるため、ベルトが劣化し易くなる。一方、クラウニングが不十分である場合、ベルトが滑車のミスアライメントの影響を受け易くなる。
【0009】
駆動滑車の牽引能力は、エレベータシステムの設計および運転を行う際の重要な要素である。必要となる牽引力によって、滑車溝部の材料選択および表面仕上げが決定されるため、従来の滑車の設計では、周囲の面(例えば、溝部のショルダ)も、溝部においてベルトと接触する面と同じであった。このことは、一般的な滑車の幾つかの部材が、1種類の材料から形成されているとともに、一体型構造を有するためである。
【0010】
本発明は、エレベータシステムにおいて可撓性平形ロープとともに利用するための、個々に変更することが可能なショルダ部材およびクラウニング部材を備えたセグメント式エレベータ滑車アッセンブリに関する。これによって、ベルトと接触する滑車溝部に、大きな牽引力が得られるような表面仕上げおよびクラウニングを選択し、偶発的にベルトの側面と接触し得る滑車溝部ショルダを、摩擦係数が低く円滑な、牽引力が小さいものとすることが可能となる。同心円状の回転のために2つの軸受に取り付けられた中心ハブが、滑車のセグメントを同心円状の位置関係に維持する手段となっている。本発明の設計によって、システムが滑車の角度的ミスアライメントを許容するものとなり、滑車溝部のショルダに沿って側面がこすられることに起因して可撓性平形ロープが早く劣化する可能性が減少する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のエレベータ用の滑車アッセンブリ10が図1および図2に示されている。滑車10は、底面18,20,22およびショルダ面24,26,28を有する複数の溝部12,14,16を備えている。好適な実施例には、3つの溝部が図示されているが、滑車の数は、所望どおりにすることができる。図1および図2に示されている滑車の溝部の底面18,20,22は、ほぼ平面形状を有するが、図3および以下の説明に記載されるように、これらを凸形状および凹形状とすることも可能である。
【0012】
図2の分解図を参照すると、滑車10は中心ハブ30を備えており、この中心ハブ30は、内側スリーブ軸受32、外側スリーブ軸受34および中心リング部材36を備えている。中心リング部材36の外周部が、中央の滑車溝部14の底面20となっている。内側スリーブ軸受32は、外側スリーブ軸受34の内部にぴったりと同心円状に受容されており、かつこれに対して回転するようになっている。内側スリーブ軸受32は、滑車アッセンブリ全体を組み立てるための軸もしくは軸軸受(図示せず)に嵌まるようになっている。中心リング部材36は、外側スリーブ軸受34の周りに嵌まっており、かつこれに対して回転しないように固定されている。
【0013】
外側スリーブ軸受34は、以下で説明するような付加的なスリーブ軸受およびこれに関連する構造に適合するように、十分な長さを有する。中心部に孔42,44を有するほぼ平坦なディスク状の第1分離板38および第2分離板40が、中心リング部材36の各側の外側スリーブ軸受34の周りに配置されている。第1分離板38および第2分離板40は、中央の滑車溝部の底部20と協働して、中央の滑車溝部14を構成している。第1分離板38および第2分離板40のそれぞれ径方向に延びて互いに対向している面が、中央の溝部14のショルダ面26となっている。
【0014】
第1分離板38の側および第2分離板40の側で、第2リング部材46および第3リング部材48が、それぞれ、外側スリーブ軸受34の周りに配置されている。第3分離板50および第4分離板52が、それぞれ、第2リング部材46および第3リング部材48うちの一方に隣接して外側スリーブ軸受34の周りに配置されている。第1分離板38および第3分離板50が、第1側方溝部12の底部18と協働して、第1側方溝部12を構成している。第1分離板38および第3分離板52のそれぞれ径方向に延びて互いに対向している面が、第1側方溝部12のショルダ面24となっている。第2分離板40および第4分離板52が、第2側方溝部16の底部22と協働して、第2側方溝部16を構成している。第2分離板40および第4分離板52のそれぞれ径方向に延びて互いに対向している面が、第2側方溝部16のショルダ面28となっている。
【0015】
図1および図2に示されるように、第1端部保持板54および第2端部保持板56が、それぞれ、滑車アッセンブリ10の各端部に取り付けられている。第1端部保持板54および第2端部保持板56は、それぞれ、内側スリーブ軸受32の周りに嵌まるような寸法の中心開口部58,60を備えている。ボルト62,64の組が、保持板の孔66,68、分離板の孔70およびリング部材の孔72を貫通していることによって、アッセンブリが一体となった状態で保持されている。
【0016】
リング部材36,46,48,50,52および分離板38,40,48,50に用いられる材料および特殊な形状を個々に選択し、これらの部材を、同様な相手側部材もしくは異なる相手側部材と組み合わせて、本発明の1つの滑車アッセンブリ10を構成することができる。例えば、溝部の底部によるエレベータベルトの牽引が最適となるように選択された材料からリング部材を形成し、牽引特性が小さい材料(例えば、DELRINTMやUNMWP)から分離板を形成することができる。図3を参照して説明されるように、溝部の底面を別の形状にすることもできる。
【0017】
リング部材36,46,48,50,52の外周面を様々な形状にすることによって、ベルトと接触する面に所望のクラウニングを設けることができる。図1に示されている溝部の底部は、平坦であるが、図3に示されているように、1つあるいは複数の凸状底部を設けることができる。図3を参照すると、図1および図2に関して説明されたものと同様な設計の、本発明の滑車アッセンブリ100は、少なくとも1つの凸状底面102を備えている。他の底面104,106は、所望により、平坦面もしくは凸状面にすることができる。
【0018】
滑車アッセンブリ部材の交換可能であることによって、破損したり損傷したリング部材もしくは分離板を個々に取り替えることができ、また、特定用途のための別個の部材を選択的に組み立てることが可能となっている。
【0019】
好適な実施例が記載されたが、現在特許請求されている発明の範囲から逸脱することなく、変更および改良を加えることができることは、理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の好適な実施例の滑車アッセンブリの概略的前面図。
【図2】図1に示された滑車アッセンブリの概略的分解図。
【図3】本発明の第2の好適な実施例の滑車アッセンブリの概略的前面図。
【符号の説明】
10…滑車アッセンブリ
12,14,16…溝部
18,20,22…底面
24,26,28…ショルダ面
30…中心ハブ
32…内側スリーブ軸受
34…外側スリーブ軸受
36,46,48…リング部材
38,40,50,52…分離板
54,56…端部保持板

Claims (9)

  1. エレベータ用滑車アッセンブリであって、
    互いに対して同心円状に整列された複数のリング部材(36,46,48)と、
    隣接する複数のリング部材の間に配設された複数の分離板(38,40,50,52)と、
    を備え、
    各リング部材は、エレベータ用ロープと摩擦接触状態で係合する外側円周方向面(18,20,22)を有し、
    前記分離板は、前記エレベータ用ロープの側面と接触する接触ショルダ(24,26,28)を形成するようにリング部材間に配設され、分離板は、ロープ係合面を備え、このロープ係合面の摩擦係数は、リング部材(36,46,48)の外側円周方向面(18,20,22)の摩擦係数より低いことを特徴とするエレベータ用滑車アッセンブリ。
  2. 前記リング部材および分離板に受容され、かつ前記リング部材および分離板と同心円状に整列された第1軸受部材を備えていることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用滑車アッセンブリ。
  3. 複数の分離板は、複数のリング部材に対して同心円状に整列されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用滑車アッセンブリ。
  4. 少なくとも1つの前記リング部材の前記外側円周方向面は、径方向外側に延びた凸形状を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータ用滑車アッセンブリ。
  5. 滑車アッセンブリを備えたエレベータシステムであって、
    第1摩擦係数を有するとともにエレベータ用ロープと摩擦接触状態で係合するように構成された外側円周方向面(18,20,22)をそれぞれ有し、かつ互いに対して同心円状に整列された複数のロープ係合リング部材(36,46,48)と、
    前記ロープ係合リング部材の内部に受容されているとともに、前記ロープ係合リング部材と同心円状に整列された第1軸受部材と、
    隣接する前記リング部材の間に配設された複数の分離板(38,40,50,52)と、
    を備え、
    前記複数の分離板は、前記エレベータ用ロープの側面と接触する接触ショルダ(24,26,28)を形成するように前記リング部材間に配置され、該接触ショルダは、前記第1摩擦係数より低い第2摩擦係数を有することを特徴とするエレベータシステム。
  6. 少なくとも1つの前記ロープ係合リング部材の前記外側円周方向面は、径方向外側に延びた凸形状を有することを特徴とする請求項5記載のエレベータシステム。
  7. エレベータシステムであって、
    複数のロープ係合ボディを備えており、各ロープ係合ボディは、同心円状に整列された個々に変更可能な複数のクラウニング部材と、該クラウニング部材間に配設された個々に変更可能な複数のショルダ部材と、を備えていることを特徴とするエレベータシステム。
  8. 前記ロープ係合ボディのクラウニング部材は、それぞれ、エレベータ用ロープと係合する外側円周方向面を有するリング形状部材を備えていることを特徴とする請求項7記載のエレベータシステム。
  9. 少なくとも1つの前記ロープ係合ボディの前記外側円周方向面は、径方向外側に延びた凸形状を有することを特徴とする請求項8記載のエレベータ用滑車アッセンブリ。
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