JP4940510B2 - 耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、家電、建材用途等に好適な、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表面処理鋼板の耐食性向上のために、鋼板表面にクロムを含有する保護処理層を形成するクロメート処理が従来から広く行われている。しかし、近年は環境負荷物質低減の観点から、有害なCr6+を使用しない保護処理層に関する技術が種々提案されており、なかでも希土類元素の水酸化物皮膜が緻密で耐食性を有することを利用した技術が注目されている。このような保護処理層を形成する手法として、電解処理は反応により保護処理層を形成する手法に比べて付着量の制御が容易であるなどの利点を有していることから、例えば特開平9−249990号公報、特開平2000−64090号公報には希土類元素を含む水溶液で電解処理することにより希土類水酸化物皮膜を金属面に被覆する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の技術はいずれも希土類金属イオンなどを含有する水溶液から電解によりそれらの成分を含む保護処理層を金属素材の表面上に形成させることにより、緻密な希土類水酸化物皮膜を生成するものであるが、耐食性レベルが期待するほど向上しないという問題がある。これは、希土類水酸化物はそのバリア効果により下地の腐食を遅らせることができるが、一旦腐食が始まると腐食が急速に進行するためであると考えられる。
【0004】
本発明はこのような従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的は、クロムを含まない皮膜を形成することにより優れた耐食性を有する表面処理鋼板の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
【0006】
(1)、電解液中で鋼板を陰極とした電解処理により鋼板表面に保護処理層を形成する表面処理鋼板の製造方法において、Y、La、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属カチオンをY、La、Ce換算で合計で0.01〜3mol/L、シリカ微粒子をSiO2換算で0.001〜3mol/L含有する水溶液を電解液として鋼板に電解処理を施すことを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0007】
(2)、電解処理により鋼板表面にY、La、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属成分の付着量がY、La、Ce換算で5〜3000mg/m2、シリカの付着量がSiO2換算で10〜1000mg/m2である保護処理層を形成することを特徴とする(1)に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0008】
(3)、前記電解液が、さらに硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオン、Pの酸素酸イオンの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.001〜3mol/L含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0009】
(4)、鋼板に(1)ないし(3)のいずれかに記載の電解処理を施した後、バナジン酸イオンをV換算で0.001〜3mol/L含有する水溶液を電解液として第二の電解処理を施すことを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0010】
(5)、第二の電解処理により、(1)ないし(3)のいずれかに記載の電解処理により形成された保護処理層に、バナジウム酸化物および/またはバナジウム水酸化物のV成分の付着量がV換算で5〜1000mg/m2である保護処理層を形成することを特徴とする(4)に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0011】
(6)、前記鋼板が亜鉛系めっき鋼板であることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
【0012】
(7)、(1)ないし(6)のいずれかに記載の製造方法で得られた表面処理鋼板の表面に被覆層を形成し、該被覆層の厚さが0.05〜3μmであることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
請求項に同じ
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、素材鋼板を電解液中で電解処理することにより、少なくともその一方の表面に保護処理層を形成する耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法である。電解処理の対象となる素材鋼板の種類に制約はなく、例えば熱延鋼板、冷延鋼板、亜鉛系めっき鋼板等を用いることができる。亜鉛系めっき鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni、Zn−Co、Zn−Co−Mo、Zn−Crなどの合金電気めっき鋼板、Zn−SiO2分散電気めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミ合金めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミ−マグネシウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛−マグネシウム合金めっき鋼板などがある。また、めっき皮膜表面に保護処理層や有機皮膜を形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)等の処理を施しておくことができる。
【0014】
本発明者等は電解による保護処理層の形成について検討し、希土類水酸化物による皮膜の耐食性を高める方策について検討した結果、希土類水酸化物とともにシリカを陰極電解により析出させることにより耐食性が飛躍的に高まることを見出して本発明を完成した。すなわち、電解用の水溶液(電解液)の成分として以下の(a)、(b)を満たす水溶液を用いることにより、優れた耐食性を示す保護処理層を得ることができる。
【0015】
(a)Y、La、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属カチオンをY、La、Ce換算で合計で0.01〜3mol/L含有する。(Y、La、Ce換算とは、電解液に含まれるY、La、Ceが全て金属カチオンであると仮定して、分析された電解液中のY、La、Ce量から計算された金属カチオン量である。)
Y、La、Ceの金属カチオンの供給源には特別な制約はなく、Y、La、Ceを析出させる場合、電解液には必ずしも、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、過酸化水素などの酸化剤成分は必要でなく、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩などの水可溶性希土類塩を溶解して得られる水溶液中で電解処理するのみで希土類酸化物及び/または水酸化物を含有する皮膜の形成が可能である。カチオンの供給源となる、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩の水和数などに特に規定は無い。カルボン酸塩としては酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などがある。Y、La、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属カチオンの濃度は合計で0.01〜3mol/Lとする。0.01mol/L未満の場合、耐食性に優れた皮膜を得ることができない。また、3mol/Lを超えると、濃度に見合った付着量が得られないため却って不経済である。好ましくは、0.05〜0.5mol/Lとする。硫酸塩は取り扱いも容易であるため、硫酸塩をベースにカルボン酸塩などを混合させる系を用いることが好ましい。
【0016】
(b)シリカ微粒子をSiO2換算で0.001〜3mol/L含有する。
【0017】
Y、La、Ceの金属カチオンのみを含有する電解液では形成する皮膜の耐食性が不十分であり、シリカを共析させることで耐食性を高めることができる。その理由は明らかでないが、希土類水酸化物のバリア性にシリカのインヒビターの効果が加わったためと考えられる。シリカが添加されることにより、腐食生成物が安定化し腐食が始まっても進行が非常に遅い。シリカを皮膜中に析出させるためには適切な濃度のシリカ微粒子を含有する電解液が必要であり、0.001〜3mol/L含有する時にシリカが安定的に析出する。0.001mol/L未満では十分析出せず、3mol/Lを超えると液の安定性が低下する。さらに好ましくは、0.01〜0.5mol/Lである。シリカ微粒子はシリカゾルの様な水分散液を用いる方法や、ヒュームドシリカ、ホワイトカーボンなどのシリカ微粒子を直接添加するなどの方法で添加することができる。この場合、シリカの一次粒径(物理的に分割可能な最小の粒径)、形状など特に規定されるものではないが、緻密な保護処理層形成のためには、一次粒径の小さいものがより好ましい。
【0018】
上記(a)、(b)を含有する電解液で電解処理して形成される保護処理層は、Y、La、Ceを含む酸化物及び/または水酸化物が主成分である。結晶質あるいは非晶質のいずれの場合もあるが、特に非晶質の場合に優れた緻密性を有する皮膜となる。
【0019】
保護処理層の好ましい付着量について説明する。前述したように本発明で得られる保護処理層の構造は十分明らかでないが、保護処理層中の各成分の含有量(付着量)が、Y、La、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属成分がY、La、Ce換算で合計5〜3000mg/m2、シリカ成分がSiO2換算で10〜1000mg/m2、であることが好ましい。(Y、La、Ce換算とは、保護処理層皮膜に含まれるY、La、Ceが全て金属であると仮定して、分析された皮膜中のY、La、Ce量から計算された金属量である。)金属成分の付着量が5mg/m2未満では耐食性が不十分な場合があり、一方、3000mg/m2を超えると皮膜が剥離し易くなったり、導電性が低下するなどの問題が生じる。さらに好ましくは、10〜500mg/m2である。シリカ成分の付着量が10mg/m2未満では耐食性が不十分な場合があり、一方、1000mg/m2を超えると導電性が低下するなどの問題が生じる。なお、電解条件(電流密度や通電の時間)を変更することにより、保護処理層中のそれぞれの成分の付着量を制御して耐食性を最適化することができる。
【0020】
また、電解液として上記の(a)、(b)に加えて(c)を満たす水溶液を用いることにより、さらに優れた耐食性を示す保護処理層を得ることができる。
【0021】
(c)硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオン、Pの酸素酸イオンの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.001〜3mol/L含有する。
【0022】
上記の成分の添加により、希土類+シリカ系における皮膜の緻密性が改善され、さらに耐食性に優れた皮膜を得ることができる。これら成分の添加により皮膜の緻密性が向上する機構は明らかでないが、還元時の水素イオンの消費によるpH上昇効果、皮膜に共析することによる効果などが推定される。
【0023】
上記のイオンの供給方法としては特に制限はなく、これらのイオンを含む水可溶性のアルカリ金属塩などの金属塩、アンモニウム塩などを添加すればよい。また、Pの酸素酸としてはリン酸、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、トリポリリン酸、トリポリリン酸塩などの縮重合リン酸塩、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩など1種以上を添加できる。
【0024】
上記のイオンを合計で0.001〜3mol/L含有する場合に有効である。0.001mol/L未満ではその効果が十分でない。また、3mol/Lを超えると液の安定性が低下する。好ましくは0.01〜2mol/L、さらに好ましくは0.01〜1mol/Lとする。
【0025】
以上の(a)、(b)好ましくはさらに(c)を含有する電解液のpHは、水溶液中の成分が安定に分散し得るpHであれば特に限定されないが、液の安定性上、pH1〜9が好ましい。さらに好ましくはpH3〜8、特に好ましくはpH4〜8である。
【0026】
電解液には上記以外にも、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの電気伝導度を高める成分や、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのpH緩衝剤、さらなる皮膜緻密化の目的で水溶性有機樹脂を添加しても構わない。
【0027】
また、上記の(a)、(b)好ましくはさらに(c)を含有する電解液を用いて電解処理を行うことにより下層保護処理層を形成した後、さらに以下の(d)を含有する電解液で第二の電解処理を行うことにより上層保護処理層を形成して、2層保護処理層の構造とすることにより、耐食性をさらに飛躍的に向上させることができる。
【0028】
(d)バナジン酸イオンをV換算で0.001〜3mol/L含有する。なお、ここでV換算とは、電解液に含まれるバナジン酸イオン中のV量により電解液中のV濃度を定義したものである。
【0029】
バナジン酸イオンの供給源としては、メタバナジン酸、オルトバナジン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が使用可能である。バナジン酸イオンの濃度は0.001〜3mol/Lとする。0.001mol/L未満では、耐食性の優れた皮膜を得ることができない。また、3mol/Lを超えると、濃度に見合った付着量が得られないため却って不経済である。好ましくは、0.05〜0.5mol/Lとする。
【0030】
下層保護処理層である希土類水酸化物+シリカ皮膜を形成した上で、さらにバナジン酸イオンを含有する水溶液中で第二の電解処理を行い上層保護処理層を形成することにより耐食性が飛躍的に高められる機構については必ずしも明らかではないが、バナジウム酸化物析出時の酸化作用により緻密な皮膜が生成し耐食性が向上するものと考えられる。上記の電解処理により得られる皮膜はバナジウム酸化物及び/または水酸化物を含有する皮膜である。結晶質あるいは非晶質のいずれいずれの場合もあるが、特に非晶質の場合に優れた緻密性を有する皮膜となる。
【0031】
(d)を用いた電解液で保護処理層を下層保護処理層+上層保護処理層の2層構造とする場合の好ましい付着量について説明する。上層保護処理層はVをV換算で5〜1000mg/m2含有することが好ましい。5mg/m2未満では耐食性が不十分な場合があり、1000mg/m2を超えると皮膜が剥離し易くなったり、導電性が低下するなどの問題が生じる。さらに好ましくは、10〜500mg/m2とする。
【0032】
(d)を用いた電解液にシリカ微粒子をSiO2換算で0.001〜3mol/L添加するとさらに耐食性が向上する。0.001mol/L未満ではその効果が十分でない。また、3mol/Lを超えると液の安定性が低下する。さらに好ましくは、0.01〜0.5mol/Lである。また好ましいシリカの付着量はSiO2換算で10〜1000mg/m2である。10mg/m2未満の場合耐食性が不十分な場合があり、一方、3000mg/m2を超えると導電性が低下するなどの問題が生じる。
【0033】
(d)を用いた電解液が、さらに硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、モリブデン酸イオン、Pの酸素酸イオンの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.001〜3mol/L含有すると、皮膜の緻密性が改善され、より優れた皮膜を得ることができる。
上記のイオンが0.001mol/L未満ではその効果が十分でない。一方、3mol/Lを超えると、液の安定性が低下する。好ましくは、0.01〜2mol/L、さらに好ましくは0.01〜1mol/Lとする。これらの成分の添加により皮膜の緻密性が向上する機構は明らかでないが、還元時における水素イオンの消費によるpH上昇効果、皮膜に共析することによる効果などが考えられる。
これらのイオンの供給方法としては特に制限はなく、これらのイオンを含む水可溶性のアルカリ金属塩などの金属塩、アンモニウム塩などを添加すればよい。また、Pの酸素酸としてはリン酸、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、トリポリリン酸、トリポリリン酸塩などの縮重合リン酸塩、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩など1種以上を添加できる。
【0034】
(d)を用いた電解液のpHは、水溶液中の成分が安定に分散し得るpHであれば特に限定されないが、液の安定性上、pH5〜14が好ましく、さらに好ましくはpH7〜12である。
【0035】
(d)を用いた電解液には上記以外にも、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの電気伝導度を高める成分や、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのpH緩衝剤、さらなる皮膜緻密化の目的で水溶性有機樹脂を添加しても構わない。
【0036】
次に、製造上の好ましい電解条件について説明する。以下の条件は上層保護処理層を形成する第二の電解処理においても同様である。
【0037】
本発明は、電解により保護処理層を鋼板上に形成するものであり、電解方法は特に限定されないが、一実施形態としてアノードが平行に配置された、セル中をストリップが通過する通常の電解セルを使用することができる。この場合、縦型セル、横形セルのいずれでも適用可能である。鋼板の対極については特に限定されないが、Pb合金系、酸化イリジウム被覆電極などの不溶性アノード、電解浴成分を補給し得る自溶性アノードのいずれも適用可能である。
【0038】
本発明の電解による保護処理層の形成条件は、電流密度以外は特に制限されるものではないが、亜鉛系めっき鋼板を用いる場合は亜鉛系めっき鋼板を陰極とし、定電流で電解するのが、亜鉛の溶出を伴わず、有効に保護処理層を形成できる点で特に望ましい。通常の鋼板を用いる場合も、鋼板を陰極として定電流で電解するのが、鉄の溶出が少なく有効に保護処理層を形成できる。
【0039】
本発明における電解処理の電流密度は、鋼板を陰極として電解処理を行う場合は1〜20A/dm2とするのが好ましい。これは陰極電解により皮膜を形成する際、副反応として水素ガスが発生するためであり、電流密度が20A/dm2以上となると、水素発生が激しく生じ、皮膜の緻密性が大きく低下する。また、1A/dm2未満では皮膜の析出が十分でなく耐食性に有効な皮膜が得られない。電流密度はさらに好ましくは、1〜10A/dm2とする。電解時間については特に限定されるものでは無く、電解用セルが複数あり、通電が多段階になるパターンを用いても良い。この場合、通電時間の合計は30秒以下が好ましい。30秒以上通電した場合、生産効率が問題となるばかりでなく、保護処理層が厚くなり、容易に欠落するなどの問題が生じる場合がある。より好適な通電時間は、0.1〜5秒である。電解液の温度は特に限定されないが、40〜60℃が好ましい。
【0040】
電解後の水洗方法については特に限定されるものではなく、通常のスプレー水洗が好適である。水洗温度も特に限定されるものではなく、好ましくは、常温〜80℃である。また乾燥方法についても特に限定されるものではなく、高周波誘導加熱による乾燥、熱風による乾燥、赤外線による乾燥等、任意の方法を用いることができる。
【0041】
以上により耐食性に優れた鋼板が得られるが、保護処理層の上部に被覆を行うことで、さらに耐食性を向上させることができる。保護処理層を形成した亜鉛系めっき鋼板、または冷延または熱延鋼板の、保護処理層の上部に有機または無機系またはそれらの混合系の被覆層を形成する。被覆層は単一層でも良いが、例えば保護処理層の上に無機の被覆層を浸漬して、スプレー処理により形成し、さらにその上に有機の被覆層を形成させて2層構造にするなど、多層構造とすることも可能である。
【0042】
以下、被覆層について詳しく説明する。被覆層とは、保護処理層上の皮膜のことであり、無機系、有機系のいずれを用いても良い。皮膜組成は特に限定しないが、無機系の皮膜を被覆層として形成させる場合には、例えば水ガラス、リチウムシリケートなどのケイ酸系水溶液、メチルシリケート、エチルシリケートなどのケイ酸エステルをエタノール、メチルセルソルブなどの有機溶剤、あるいは有機溶剤と水の混合液に溶解させた溶液、シランカップリング剤を水あるいは有機溶剤に溶解させた溶液、溶剤にシリコーン樹脂を溶解させたもの、リン酸塩水溶液、あるいは、これら溶液にシリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア等の酸化物を分散させたものを浸せき処理あるいはスプレー処理、もしくは塗布の後、乾燥すればよい。
【0043】
次に有機系の被覆層について説明する。有機系の被覆層(有機皮膜)の基体樹脂としては特に制限はなく、水溶性樹脂、水分散性樹脂、有機溶剤可溶性樹脂のいずれも用いることができ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂等を用いることができるが、特に耐食性の観点からはOH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類及びこれらの樹脂2種以上の混合物もしくは付加重合物等が挙げられる。また、これらのなかでも熱硬化性樹脂が好ましく、さらにエポキシ樹脂または変性エポキシ樹脂が最も好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂のうち1種を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0045】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドまたはポリアルキレングリコールを付加し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等を用いることができる。これらエポキシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には、数平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エポキシ樹脂は単独または異なる種類のものを混合して使用することもできる。
【0046】
変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基またはビドロキシル基に各種変性剤を反応させた樹脂が挙げられる。例えば乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂にイソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂にアルカノールアミンを付加したアミン付加ウレタン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0047】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、単核型若しくは2核型の2価フェノールまたは単核型と2核型との混合2価フェノールを、アルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体である。単核型2価フェノールの代表例としてはレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールが挙げられ、2核型フェノールの代表例としてはビスフェノールAが挙げられ、これらは単独で使用しても或いは2種以上を併用してもよい。
【0048】
ウレタン樹脂としては、例えば、油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0049】
アルキド樹脂としては、例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子量オイルフリーアルキド樹脂等を挙げることができる。
【0050】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(またはウレタン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0051】
エチレン樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が挙げられ、さらに、これらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0052】
アクリルシリコーン樹脂としては、例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖又は末端に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤を添加したもの等が挙げられる。これらのアクリルシリコーン樹脂を用いた場合、優れた耐候性が期待できる。
【0053】
フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系共重合体があり、これには例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シンクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー(フルオロオレフィン)とを共重合させた共重合体がある。これらフッ素樹脂を用いた場合には、優れた耐候性と優れた疎水性が期待できる。
【0054】
また、樹脂の乾燥温度を低くするために、樹脂粒子のコア部分とシェル部分とで異なる樹脂種類、または異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア・シェル型水分散性樹脂を用いることができる。また、自己架橋性を有する水分散性樹脂を用い、例えば、樹脂粒子にアルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解によるシラノール基の生成と樹脂粒子間のシラノール基の脱水縮合反応を利用した粒子間架橋を利用することができる。また、有機皮膜に使用する樹脂としては、有機樹脂をシランカップリング剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケートも好適である。
【0055】
有機皮膜の耐食性や加工性を向上させるために、特に熱硬化性樹脂を用いることが望ましいが、この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂)、ブチル化尿素−メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができる。
【0056】
また、上記の有機系および無機系の被覆層には、さらに耐食性を向上させるための防錆添加剤として、酸化物微粒子(例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモン等)、ポリリン酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸亜鉛、リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸亜鉛等)、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(リンモリブデン酸アルミニウム等)、有機リン酸およびその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩等)、有機化合物(ポリエチレングリコール)等から選ばれる1つ以上の化合物を皮膜組成物に添加してもよい。
【0057】
さらに、上記の被覆層には、その他の添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等)、着色染料(例えば、有機溶剤可溶性アゾ系染料、水溶性アゾ系金属染料等)、無機顔料(酸化チタン)、キレート剤(チオール等)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤など)、メラミン・シアヌル酸付加物等を添加することができる。
【0058】
また、上記の有機系の被覆層を有する有機被覆鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、これらの皮膜に鉄族金属イオン(Niイオン、Coイオン、Feイオン)の1種以上、好ましくはNiイオンを添加してもよい。鉄族金属イオンの濃度の上限は特に定めないが、濃度の増加に伴い耐食性に影響を及ぼさない程度とする。
【0059】
被覆層中には、さらに必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤を配合することができる。本発明に適用できる固形潤滑剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素)、フッ素樹脂微粒子(例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂等)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等)、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等)、金属石鹸類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム等)、金属硫化物(二硫化モリブデン、二硫化タングステン)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩等を用いることができる。
【0060】
上記の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子(なかでも、ポリ4フッ化エチレン樹脂微粒子)が好適である。ポリエチレンワックスとしては、例えば、ヘキスト社製のセリダスト9615A、セリダスト3715、セリダスト3620、セリダスト3910、三洋化成(株)製のサンワックス131P、サンワックス161P、三井石油化学(株)製のケミパールW100、ケミパールW200、ケミパールW500、ケミパールW800、ケミパールW950等を用いることができる。
【0061】
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、ダイキン工業(株)製のルブロンL2、ルブロンL5、三井・デュポン(株)製のMP1100、MP1200、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンディスパージョンAD1、フルオンディスパージョンAD2、フルオンL141J、フルオンL150J、フルオンL155J等が好適である。また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
【0062】
被覆層中での固形潤滑剤の配合量は、基体樹脂に対して1〜80mass%(固形分)、好ましくは3〜40mass%(固形分)とする。固形潤滑剤の配合量が1mass%未満では潤滑効果が乏しく、一方、配合量が80mass%を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
【0063】
また、上記被覆層形成用の塗料組成物は、通常、溶媒(有機溶剤および/または水)を含有し、さらに必要に応じて中和剤等が添加される。被覆層の乾燥膜厚は0.05〜3μm、好ましくは0.1〜1μmとする。0.05μmより薄い場合には、耐食性が向上しない。また、3μmを超えると、耐食性は良好であるが導電性が悪くなるので溶接できないなどの問題がある。
【0064】
被覆層を有する場合の本発明の製造方法を説明する。本発明では、電解による保護処理層の形成、水洗、乾燥、被覆層の形成のプロセスにより皮膜形成が行われ、必要に応じて、電解による保護処理層の形成、水洗(あるいは水洗無し)、シーリング処理、乾燥、被覆層の形成などの様に保護処理層形成直後にシーリング処理を行ってもよい。またシーリング処理は、スプレー処理、浸せき処理、塗布等の方法で行われる。シーリングに使用する被覆層は本発明で記載した被覆層用の組成物が使用できる。またこの場合、シーリング層の膜厚は特に規定されないが、保護処理層の欠陥を塞ぐという観点から被覆層よりも薄い皮膜でも十分な性能が得られ、また皮膜厚が厚すぎると被覆層との密着性が低下するため0.05〜1μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.5μmが適当である。
【0065】
保護処理層上に被覆層を形成する方法については特に限定されるものではないが、塗布方式、浸せき方式、電解方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸せき処理、スプレー処理の後にエアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0066】
被覆層の形成は、電解処理による保護処理層の形成、無通電での電解液接触(必要に応じて)、水洗、乾燥の工程に引き続き行われるが、水洗に引き続き連続して被覆層の形成を行ってもよい。
【0067】
また、被覆層の原料樹脂の塗布時の温度については特に限定されないが、常温〜60℃が適当である。常温以下では冷却などのための設備が必要のため不経済であり、一方60℃を超えると水分が蒸発するため液管理が困難となる。
【0068】
被覆層を形成後、通常水洗することなく加熱乾燥を行うが、被覆層を形成後に水洗を行うことも可能である。被覆層の乾燥方法は特に限定されるものではなく、高周波誘導加熱による乾燥、熱風による乾燥、赤外線による乾燥のいずれも可能である。この場合の加熱乾燥温度は、到達板温で50〜300℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは80〜160℃の範囲で行うと良い。
【0069】
【実施例】
表1、2に示す濃度の電解液調整用薬品をイオン交換水に溶解して、符号A〜Pの下層保護処理層用の電解液と、a〜iの上層保護処理層用の電解液とを調整した。各電解液のpHを表1、2に併せて示す。電解液中の金属カチオン量の定量にはICP法を用いた。電解液のpHは50℃の状態の値であり、硫酸塩の場合には硫酸の様に、基本的にアニオンを同一にした酸を用いた。pHを上げる場合には希釈した水酸化ナトリウムを用いて適宜調整した。表1、2においてシリカゾル(シリカ微粒子)以外の薬品は和光純薬工業(株)製特級試薬を使用した。電解液に添加するシリカゾルは日産化学のスノーテックスOSを用い、表中のシリカゾル濃度はSiO2換算のモル濃度である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1、2に示す符号A、B、D、E、G、H、M、N、a〜fは本発明で用いる電解液の成分範囲内であるが、符号I〜L、O、P、g〜iは範囲外である。符号OはY、Ce、Laのカチオンを含有せず、符号Pはシリカ微粒子を含有せず、符号iはバナジン酸イオンを含有していない。
【0073】
また、有機系の被覆層を得るための組成物として、表3に記載の樹脂組成物(符号あ〜お)を調整した。表3に示す樹脂組成物にはそれぞれシリカ微粒子を樹脂組成物の固形分に対し10mass%となるように配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて分散させ塗料組成物とした。また、無機系の被覆層を得るための組成物として、表4に記載の樹脂組成物(符号ア〜ク)を調整した。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
保護処理層を形成する原板として、表5に示す各種亜鉛めっき鋼板および冷延鋼板(符号EG、GI、GA、EN、GL、GF、CR)を用いた。
【0077】
【表5】
【0078】
表5に示す各種鋼板をアルカリ脱脂処理ののち水洗乾燥し、これら鋼板を陰極として、表1に示した各種電解液(浴温50℃)において鋼板上に電解処理を行い、引き続き水洗、熱風乾燥を行い保護処理層を形成した。一部試料については、前記の保護処理層(下層保護処理層)の形成に引き続いて表2に示した各種電解液(浴温50℃)において鋼板上に第二の電解処理を行い、上層保護処理層を形成して保護処理層を2層とした。このようにして表6、7に示すNo.1〜64の試料を作製した。
【0079】
保護処理層中のシリカ量、Y、La、Ce量、V量は、各試料をそのまま酸に溶解し、溶解液中のシリカ量、Y、La、Ce量、V量を求め、あらかじめブランクとして電解保護処理層を施さない原板を同じく酸に溶解しこれらの値を測定した値を除して求めた。ただし、めっきを有する原板を用いた場合はめっき膜のみを酸に溶解し、冷延鋼板を原板に用いた場合は鋼板ごと酸に溶解して測定した。これらの値も表6、7に示す。
【0080】
さらに、No.32〜64の試料については、保護処理層に引き続き水洗、乾燥後、被覆層を形成した。被覆層の形成には、ロールコーターを用い表3の樹脂組成物と添加成分、もしくは表4の樹脂組成物からなる処理液を塗布し、加熱乾燥させて形成した。皮膜の膜厚は処理組成物の固形分、及びロール圧下力、回転速度等により調整した。
【0081】
以上のようにして得られた表面処理鋼板について耐食性、導電性を評価した。これらの結果を表6、7に併せて示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
耐食性の評価は、塩水噴霧試験(JIS Z2371)で行い、36時間後の腐食発生面積率を測定した。腐食発生無しを5点、腐食発生面積率1〜3%を4.5点、3〜5%を4点、5〜10%を3.5点、10〜15%を3点、15〜30%を2.5点、30〜50%を2点、50〜70%を1.5点、70%以上を1点とした。
【0085】
導電性は、層間絶縁抵抗値(JIS C2550)の測定により評価した。層間絶縁抵抗値が1Ωcm2/枚以下を◎、1〜5Ωcm2/枚を○、5Ωcm2/枚超えを×とし、◎および○を好ましい導電性を持つものとした。
【0086】
本実施例では比較のために冷延鋼板(CR)および亜鉛めっき鋼板(EG)にクロメート処理を施した試料も作製した。各鋼板表面に、日本ペイント(株)製サーフコートS−7をバーコーターを用いて塗布し到達板温100℃で乾燥してCr付着量を30mg/m2として、上記と同様の評価を行った。これらのクロメート鋼板はどちらも耐食性が3点、導電性が◎であった。よって本発実施例では耐食性が3点以上の表面処理鋼板を、クロメート処理と同等かそれ以上の性能を有するものとして合格とした。
【0087】
No.1、2、4、5、7、8、13、14、26〜59の本発明の製造方法で保護処理層を形成した試料は、優れた耐食性を示すことが分かった。No.50は本発明の製造方法を用いているので耐食性は良好であるが、被覆層の膜厚が厚いため、導電性が劣っている。
【0088】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、亜鉛めっき鋼板および冷延、熱延鋼板に、有害なクロムを含まない皮膜を電解により形成させることができるので、環境を汚染することなく効率的に、耐食性に優れた鋼板が得られる。また本発明で得られる鋼板を、自動車、家電、建材用に使用すれば、製造中および廃棄後の取り扱い者をも含めたそれらの製品の使用者の健康を損なうリスクを低減できる。
Claims (7)
- 電解液中で鋼板を陰極とした電解処理により鋼板表面に保護処理層を形成する表面処理鋼板の製造方法において、Y、Laの中から選ばれる1種又は2種の金属カチオンをY、La換算で合計で0.01〜3mol/L、シリカ微粒子をSiO2換算で0.001〜3mol/L含有する水溶液を電解液として鋼板に電解処理を施すことを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 電解処理により鋼板表面にY、Laの中から選ばれる1種又は2種の金属成分の付着量がY、La換算で5〜3000mg/m2、シリカの付着量がSiO2換算で10〜1000mg/m2である保護処理層を形成することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 前記電解液が、さらに硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオン、Pの酸素酸イオンの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.001〜3mol/L含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 鋼板に請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電解処理を施した後、バナジン酸イオンをV換算で0.001〜3mol/L含有する水溶液を電解液として第二の電解処理を施すことを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 第二の電解処理により、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電解処理により形成された保護処理層に、バナジウム酸化物および/またはバナジウム水酸化物のV成分の付着量がV換算で5〜1000mg/m2である保護処理層を形成することを特徴とする請求項4に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 前記鋼板が亜鉛系めっき鋼板であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の表面処理鋼板の製造方法。
- 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の製造方法で得られた表面処理鋼板の表面に被覆層を形成し、該被覆層の厚さが0.05〜3μmであることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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