JP4940422B2 - 球状遷移金属錯体およびその製造方法 - Google Patents

球状遷移金属錯体およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、置換基を有する二座有機配位子と遷移金属原子から形成される中空の殻を有し、二座有機配位子の置換基が中空の殻内部に配向してなる新規な球状遷移金属錯体、およびその製造方法に関する。
厳密に制御されたナノサイズの中空構造体は、表面、内面、孤立内部空間の3つの領域に分類することができる。これまで、その表面や内部空間については盛んに研究が行われてきたが、人工系において内面を利用した研究例はほとんど報告されていない。
近年、フェリチンなどの球状タンパク質や球状ウイルスCCMVなど、自然界のナノスケール構造体の内面を利用した研究が行われている。これらの構造体は人工的な刺激により分解されても、再び自己組織化によって元の構造に復元する。球殻構造(中空の殻を有する球状構造)の内面に向くようにサブユニットに対し官能基修飾を行い、自己組織化によって再び球殻構造を形成させることで、球状の内面へ官能基を精密に配置することができる(非特許文献1、2)。
しかしながら、球状構造の内面へ複数の官能基を100%の確率で同時に結合させるのは、有機化学的には困難である。
従って、化学的な手法によって球状構造を設計し、その内部に機能性の官能基の導入を行うことができれば、分子設計によって構造や機能を自由に制御できると期待される。
従来、有機分子を基本骨格とした機能的な構造体としては、デンドリマーやミセルが知られている。
デンドリマーは三次元の枝分かれ構造をしており、機能性部位が内部に密集している。これらの官能基が球体内に集まることによって、金属イオンの包接、光エネルギーの捕集などの機能が見出されている(非特許文献3〜7)。
また、デンドリマーの末端を架橋した後にコアを除去することで、内部に空間を持った球殻構造とし、中心に集まった官能基によって標的分子の選択的な認識なども行われており、分子インプリンティングとして注目されている(非特許文献8〜11)。
しかしながら、デンドリマーは合成が煩雑であり、内部の空間を広げることが難しいといった問題点がある。
一方、ミセルは、親水性部位と疎水性部位からなる両親媒性物質が溶媒中で疎水性相互作用により自己集合することで形成された球殻構造体である。水中にあるミセルの場合、疎水性部位はミセル内部に配向しており、この疎水性部位に様々な機能性官能基を導入することにより、ミセルの内面の環境を自由にかつ容易に制御することが可能である(非特許文献12,13)。
しかしながら、ミセルにおいては構成成分の数や集合の密度に分布が生じるため、一義的に大きさや構造を制御することができず、内部の官能基を精密に配置することはできない。そのため、内部に集積する官能基の数も規定することが難しい。
中空構造を利用した高度な機能化を目指すためには、その内部に広い空間を有することが重要である。また、構造や大きさが明確に決まっており、かつ一義的に生成するような構造体を用いることにより、内部に配置される官能基の数およびその位置を精密に制御する必要がある。
近年、前述したような弱い結合が共同的に働くことによる自己組織化を用いて、構造が制御され、かつ広い空間を有する様々な構造体が構築されている。
本発明者らも、有機配位子と遷移金属イオンとの配位結合を利用した自己組織化を検討している。配位結合は適度な結合力があり方向性が明確に規定されているため、精密に構造が制御された分子集合体を自発的かつ定量的に構築することが可能である。また、金属の種類や酸化数に応じて配位数や結合角を制御することができるため、多様な配位結合性の構造体を得ることができる(特許文献14〜16)。
例えば、平面四配位性のPd(II)イオンを用いた場合には配位結合の方向を90度に規定できる。特に、シス位をエチレンジアミンで保護したパラジウムエチレンジアミン硝酸錯体[(en)Pd(NO](M)と、パネル状の有機配位子(L)からは、配位子に応じた様々な中空構造が最も安定な状態として自己集合する(特許文献17〜22)。
また、多成分からなるM1224組成の立方八面体型の球状錯体の自己集合も見出されている(非特許文献23)。中心がフランやベンゼンである約120度の折れ曲がり型二座配位子24個とPd(II)イオン12個が自己集合し、8枚の正三角形と6枚の正方形の計14枚の面を構成している。この場合、頂点の数は12、辺の数は24で各々金属イオンと配位子の数に相当する。
この構造は、X線結晶構造解析により明らかになっており、直径約3.5nm、内部空間容積約22nmであり、巨大な三次元中空構造が構築されている。また、配位子の長さを変化させた二座配位子からも同様にM1224組成の球状錯体が構築されることがわかっており、直径5nmの球状錯体が自己集合する。これらの錯体は、球状という内部の空間が最も広くなる構造をとっており、このサイズであると生体分子のタンパク質や核酸などが包接できる大きさである。
上記M1224組成の球状錯体では配位子の所定位置に官能基を導入することによって、自己集合反応を経て球状カプセルのナノ表面に24個の官能基を一挙にかつ精密に配置できることが明らかとなっている。例えば、ポルフィリンやフラーレンを表面に精密に配置した錯体が報告されており(非特許文献23)、球状構造のナノ表面を利用した生理活性や光物性などへの応用が期待されている。
また、カチオン性のトリメチルアンモニウム基を導入することで、表面に48の電荷を持つカチオンボールが構築され、タンパク質の変成作用を著しく増大させるといったナノ表面特有の機能が見出されている(非特許文献24)。
R.M.Kramer,C.Li,D.C.Carter,M.O.Stone,R.R.Naik,J.Am.Chem.Soc.,2004,126,13283 T.Douglas,E.Strable,D.Willits,A.Aitouchen,M.Libera,M.Young,Adv.Mater.,2002,14,415 D.−L.Jiang and T.Aida,Nature,1997,388,454 G.Unger,V.Percec,M.N.Holerca,G.Johansson, and J.A.Heck,Chem.Eur.J.,2000,6,1258 R.M.Crooks,M.Zhao,L.Sun,V.Chechik,and L.K.Yeung,Acc.Chem.Res.,2001,34,180 S.Naro,S.Kitagawa,M.Kondo,K.Seki,Angew.Chem.Int.Ed.,2000,39,2028 M.Tominaga,J.Hosogi,K.Konishi,and T.Aida,Chem.Commun.,2000,719 M.S.Wendland,S.C.Zimmerman,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,1389 S.C.Zimmerman,M.S.Wendland,Nature,2002,418,399 E.Mertz,S.C.Zimmerman,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,3424 S.C.Zimmerman,I.Zharov,M.S.Wwendlad,N.A.Rakow,K.S.Sudlick,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,13504 Y.Kakizawa and K.Kataoka,Adv.Drug Deliv.Rev.,2002,54,203 M.L.Adams,A.Lavasanifar,G.S.Kwon,J.Pharm.Sci.,2003,92,1343 P.J.Stang,B.Olenyuk,Acc.Chem.Res.1997,30,507 M.Fujita,Chem.Soc.Rev.,1998,27,417 B.Olenyuk,A.Fechtenkotter,P.J.Stang,J.Chem.Soc.Dalton Trans.1998,1707 M.Fujita,K.Umemoto,M.Yoshizawa,N.Fujita,T.Kusukawa,K.Biradha,Chem.Commun.,2001,509 M.Fujita,D.Oguro,M.Miyazawa,H.Oka,K.Yamaguchi,K.Ogura,Nature,1995,378,469 N.Takeda,K.Umemoto,K.Yamaguchi,M.Fujita,Nature,1999,398,794 K.Umemoto,H.Tsukui,T.Kusukawa,K.Biradha,M.Fujita,Angew.Chem.Int.Ed.,2001,40,2620 M.Aoyagi,S.Tashiro,M.Tominaga,K.Biradha,M.Fujita,Chem.Commun.,2002,2036 T.Yamaguchi,S.Tashiro,M.Tominaga,M.Kawano,T.Ozeki,M.Fujita,J.Am.Chem.Soc.,2004,10818 M.Tominaga,K.Suzuki,M.Kawano,T.Kusukawa,T.Ozeki,S.Sakamoto,K.Yamaguchi,M.Fujita,Angew.Chem.Int.Ed.,2004,43,5621 矢倉健一郎、卒業論文、東京大学
本発明は、このような本発明者らの研究開発の一環としてなされたものであり、n1個(n1は6〜60の整数を表す。)の遷移金属原子と、2n1個の、置換基を有する二座有機配位子とから形成されてなる中空の殻を有する遷移金属錯体であって、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されている球状遷移金属錯体、およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼンの2位に種々の置換基を導入した化合物を合成し、このものを二座有機配位子として用いて遷移金属化合物との自己組織的な球状遷移金属錯体の形成を試みた。
その結果、置換基を錯体の中空の殻内部に配置しつつ、従来通りの球状遷移金属錯体が効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(9)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体が提供される。
(1)中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n1個(n1は、6〜60の整数を表す。)の遷移金属原子と、2n1個の、置換基を有する二座有機配位子とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする球状遷移金属錯体。
(2)中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n2個(n2は、6、12、24、30または60である。)の遷移金属原子と、2n2個の、置換基を有する二座有機配位子とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする球状遷移金属錯体。
(3)遷移金属化合物(M)と置換基を有する二座有機配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn12n1(n1は、6〜60の整数を表し、M同士、L同士は、それぞれ同一であっても、相異なっていても良い。)で表される(1)に記載の球状遷移金属錯体。
(4)遷移金属化合物(M)と置換基を有する二座有機配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn22n2(n2は、6、12、24、30または60であり、M同士、L同士は、それぞれ同一であっても、相異なっていても良い。)で表される(2)に記載の球状遷移金属錯体。
(5)直径3〜15nmの中空の殻を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
(6)前記遷移金属錯体を構成する遷移金属原子が、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir及びPtからなる群から選ばれる一種であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
(7)前記二座有機配位子が、式(I)
Figure 0004940422
{式中、R、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
m1、m2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。m1、m2が2以上のとき、R同士、R同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていても良い。
Aは、下記式(a−1)〜(a−4)
Figure 0004940422
〔Rは置換基を表す。
は、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m4は0〜2の整数を表す。m3が2以上、m4が2のとき、複数個のRは同一であっても、相異なっていても良い。
Qは、−Nr1−(r1は水素原子、アルキル基、アリール基、若しくはアシル基を表す。)、−O−、−C(=O)−、−S−、または−SO−を表す。〕
で表される基を示す。}
で示される化合物の一種であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
(8)前記Rが、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCHCH−OR〔式中、Rは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH(r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH)t−R−N=N−R(tは0〜10の整数を表し、Rは置換されていても良いアリーレン基を表し、Rは置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で示される基であることを特徴とする(7)に記載の球状遷移金属錯体。
(9)前記二座有機配位子が、式(I−1)
Figure 0004940422
{式中、Rは、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCHCH−OR〔式中、Rは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH(r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH)t−R−N=N−R(tは0〜10の整数を表し、Rは置換されていても良いアリーレン基を表し、Rは置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で表される基を示す。}で示される化合物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
本発明の第2によれば、下記(10)および(11)に記載の球状遷移金属錯体の製造方法が提供される。
(10)遷移金属化合物(M)と置換基を有する二座有機配位子(L)とを、遷移金属化合物(M)1モルに対し、二座有機配位子(L)を1〜5モルの割合で反応させることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の球状遷移金属錯体の製造方法。
(11)前記遷移金属化合物を構成する遷移金属原子が、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir及びPtからなる群から選ばれる一種であることを特徴とする(10)に記載の球状遷移金属錯体の製造方法。
本発明の球状遷移金属錯体は、精密に制御された大きさの中空の殻を有し、前記二座有機配位子の置換基が前記中空の殻内部に配向した特殊な構造を有する。
本発明によれば、二座有機配位子の官能基を球状遷移金属錯体の中空の殻内部に集積することが可能であるため、小分子の持つ機能や情報が球状遷移金属錯体内部で増幅されることが期待される。
また、二座有機配位子に導入する官能基によって、球状遷移金属錯体の中空内部の環境を自在に変化させることが可能となり、他の分子やイオンをゲストとして取り込むことが可能であり、精密に配置された官能基を用いることで、ゲストの種類や数の制御を行うことも可能となる。
本発明の製造方法によれば、複雑なステップを要することなく、球状構造内部に官能基を有するナノメートルスケールの球状遷移金属錯体を効率よく製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)球状遷移金属錯体
本発明の球状遷移金属錯体は、中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n1個の遷移金属原子と、2n1個の、置換基を有する二座有機配位子(以下、「二座配位子(L)」ということがある。)とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする。
ここで、n1は6〜60の整数である。
なかでも、本発明の球状遷移金属錯体は、中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n2個の遷移金属原子と、2n2個の、置換基を有する二座配位子(L)とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする球状遷移金属錯体であるのが好ましい。
ここで、n2は、6、12、24、30または60、好ましくは6または12、特に好ましくは12である。
本発明の球状遷移金属錯体は、遷移金属イオンと二座配位子(L)との配位結合を利用した自己組織化を利用して形成されるものである。配位結合は適度な結合力があり方向性が明確に規定されているため、精密に構造が制御された分子集合体を自発的かつ定量的に構築することが可能である。また、金属の種類や酸化数に応じて配位数や結合角を制御することができるため、多様な配位結合性の構造体が可能である。
本発明の球状遷移金属錯体としては、遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn12n1(n1は前記と同じ意味を表す。)で示されるものが好ましく、遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn22n2(n2は前記と同じ意味を表す。)で示されるものがより好ましい。ここで、M同士、L同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
また、本発明の球状遷移金属錯体の中空の殻の大きさは、特に制限されないが、直径が3〜15nmであるのが好ましい。
(1)遷移金属原子
本発明の球状遷移金属錯体を構成する遷移金属原子としては、特に制限されないが、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir及びPtからなる群から選ばれる一種であることが好ましく、平面4配位の錯体を容易に形成し得ることから、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族原子が好ましく、Ru、Pd、Ptがより好ましく、Pdが特に好ましい。
遷移金属原子の価数は、通常0〜4価、好ましくは2価であり、配位数は、通常4〜6、好ましくは4である。
(2)二座配位子(L)
本発明の球状遷移金属錯体を形成する二座配位子(L)は、置換基を有し、かつ、この置換基が、中空の殻内部に配向するように遷移金属原子と自己組織的に球状遷移金属錯体を形成できるものであれば特に制限されないが、下記に示す式(I)で表される化合物が好ましい。式(I)で表される化合物は、ピリジル基の隣にブリッジ部としてアセチレン基を有し、平面性を保ちつつ、両端のピリジル基の間に広い空間をもった構造を有する。
Figure 0004940422
式中、R、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
m1、m2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。m1、m2が2以上のとき、R同士、R同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていても良い。
Aは、下記式(a−1)〜(a−4)で表される化合物の一種を表す。
Figure 0004940422
式中、Rは置換基を表す。
の置換基としては、特に制限されない。Rの具体例としては、置換されていても良いアルキル基、式:−(OCHCH−OR〔式中、Rは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH(r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH)t−R−N=N−R(tは0〜10の整数を表し、Rは置換されていても良いアリーレン基を表し、Rは置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を示す。sは0〜20の整数を表す。〕で示される基が挙げられる。
は、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m4は0〜2の整数を表す。m3が2以上、m4が2のとき、複数個のRは同一であっても、相異なっていても良い。
前記R、R、Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
、R、Rの置換されていても良いアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。
また、R、R、Rの置換されていても良いアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有していても良いフェニル基などが挙げられる。
、R、Rの置換されていても良いアルコキシル基のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシル基が挙げられる。また、R、R、Rの置換されていても良いアルコキシル基の置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有していても良いフェニル基などが挙げられる。
Qは、−Nr1−(r1は、水素原子、アルキル基、アリール基、若しくはアシル基を表す。)、−O−、−C(=O)−、−S−、または−SO−を表す。
前記r1のアルキル基としては、メチル基、エチル基などが、アリール基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基などが、アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などがそれぞれ挙げられる。
本発明に用いる二座配位子(L)としては、下記式(I−1)で表される化合物であるのがさらに好ましい。
Figure 0004940422
式中、Rは、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCHCH−OR〔式中、Rは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH(r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH)t−R−N=N−R(tは0〜10の整数を表し、Rは置換されていても良いアリーレン基を表し、Rは置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で表される基を示す。
前記Rの置換されていても良いアルキル基のアルキル基としては、特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。また、該アルキル基の置換基としては、特に制限されず、例えば、置換されていても良いアリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、置換されていても良いアミノ基;カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
前記式:−(OCHCH−ORで表される基において、Rの置換されていても良いアルキル基としては、前記Rの置換されていても良いアルキル基の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
置換されていても良いアリール基のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。
の置換されていても良いヘテロ環基のヘテロ環基としては、特に制限されず、例えば、フリル基、チエニル基、ピロール基、イミダゾイル基、チアゾリル基、オキサゾイル基、ピリジル基などが挙げられる。
また、Rのアリール基およびヘテロ環基の置換基としては、特に制限されず、例えば、置換されていても良いアリール基、ハロゲン原子、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、置換されていてもよいアミノ基;カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
前記式:−CO−C(r2)=CHで表される基としては、式:−CO−CH=CHで表される基、式:−CO−C(CH)=CHで表される基などが挙げられる。
前記式:−(CH)t−R−N=N−Rで表される基において、Rは、p−フェニレン基、m−フェニレン基、1,4−ナフタレン基などの置換されていても良いアリーレン基を表す。
は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基などの置換されていても良いアリール基を表す。
また、sは0〜20の整数を表し、0〜5の整数が好ましい。
前記式(I−1)で示される化合物の好ましい具体例としては、Rが、次の(I−a)〜(I−e)に示すものが挙げられるが、本発明に用いる二座配位子(L)はこれらに限定されるものではない。
Figure 0004940422
本発明の球状遷移金属錯体の一例を図1に示す。図1に示す球状遷移金属錯体は、12個の遷移金属化合物(M)と、24個の二座配位子(L)とから構成されている。
図1に示す球状遷移金属錯体は、金属イオン12個と折れ曲がった二座配位子(L)24個が自己集合することにより構築され、その内部に広い空間を持つ。また、二座配位子(L)は置換基Rを有し、置換基Rは、球状の殻の内面に精密に配列されている。
2)球状遷移金属錯体の製造方法
本発明の球状遷移金属錯体の製造方法は、遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)とを、遷移金属化合物(M)1モルに対し、二座配位子(L)を1〜5モル、好ましくは2〜3モルの割合で反応させることを特徴とする。
本発明に用いる遷移金属化合物(M)は、二座配位子(L)と自己組織的に球状遷移金属錯体を形成できるものであれば特に制限されないが、二価の遷移金属化合物が好ましい。
遷移金属化合物(M)を構成する遷移金属原子としては、例えば、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir又はPt等の遷移金属原子が挙げられる。なかでも、平面4配位の錯体を容易に形成し得ることから、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族原子が好ましく、Ru、Pd、Ptがより好ましく、Pdが特に好ましい。
遷移金属化合物(M)として具体的には、遷移金属の、ハロゲン化物、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、効率よく、目的とする球状遷移金属錯体が得られることから、遷移金属の、硝酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩が好ましい。
遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)との使用割合は、目的とする球状遷移金属錯体の組成などに応じて適宜設定することができる。例えば、前述した、式:M1224の組成をもつ遷移金属錯体を得たい場合には、遷移金属化合物(M)1モルに対し、二座配位子(L)を2〜3モルの割合で反応させればよい。
遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)との反応は、適当な溶媒中で行うことができる。
用いる溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルセロソルブなどのセロソルブ類;水等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
遷移金属化合物(M)と二座配位子(L)との反応は、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行する。
反応時間は、数分から数日間である。
反応終了後は、ろ過、イオン交換樹脂等によるカラム精製、蒸留、再結晶等の通常の後処理を行い、目的とする球状遷移金属錯体を単離することができる。
なお、得られる球状遷移金属錯体の対イオンは、通常、用いる遷移金属化合物(M)の陰イオンであるが、結晶性を向上させたり、球状遷移金属錯体の安定性を向上させる目的で対イオンを交換してもよい。かかる対イオンとしては、PF 、ClO 、SbF 、AsF 、BF 、SiF 2−等が挙げられる。
得られた球状遷移金属錯体の構造は、H−NMR、13C−NMR、IRスペクトル、マススペクトル、可視光線吸収スペクトル、UV吸収スペクトル、反射スペクトル、X線結晶構造解析、元素分析等の公知の分析手段により確認することができる。
以上のようにして、極めて簡便な操作により、本発明の球状遷移金属錯体を効率よく製造することができる。そのため、グラムスケールでの大量合成も可能である。
二座配位子(L)は、公知の合成法を適用することにより製造することができる。
例えば、前記式(I)で表される化合物のうち、下記式(I−2)で表される化合物は、以下に示すように、文献公知の方法(K.Sonogashira,Y.Tohda,N.Hagihara,Tetrahedron Lett.,1975,4467;J.F.Nguefack,V.Bolitt,D.Sinou,Tetrahedron Lett.,1996,31,5527)に従い、製造することができる。
Figure 0004940422
式中、A、Rおよびm1は前記と同じ意味を表す。
(A−1)は、式:X−A−Xで表される化合物を表す。
Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を表す。
すなわち、式(I−2)で表される化合物は、適当な溶媒中、塩基、Pd(PhCN)Cl/P(t−Bu)、Pd(PPh等のパラジウム触媒、およびヨウ化第1銅などの銅塩の存在下に、式(II)で示される4−エチニルピリジン類(又はその塩)と、式(III)で表される化合物(A−1)とを反応させることにより得ることができる。
なお、上記反応は、2つの4−エチニルピリジン類(またはその塩)を一挙に反応させて、同じピリジニルエチニル基を2つ有する化合物を製造する例である。相異なる置換ピリジルエチニル基を有する化合物は、対応する4−エチニルピリジン類(またはその塩)を、同様な反応条件で、段階的に反応させることにより得ることができる。
ここで用いる塩基としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類が挙げられる。
用いる溶媒としては、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトニトリル等のニトリル類;等が挙げられる。
反応温度は、通常、0℃から溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは10℃〜70℃であり、反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間である。
4−エチニルピリジン(又はその塩)は、公知の方法で製造することができるが、市販品をそのまま用いることもできる。
また、式(III)で表される化合物は、公知の方法で製造することができる。
本発明の球状遷移金属錯体は、ナノメートルスケールの一定の大きさを有し、二座配位子(L)の置換基Rが錯体の球状構造の内部に配向した、精密に制御された特殊な構造を有する。すなわち、二座配位子(L)の官能基を球状遷移金属錯体の中空の殻内部に集積することが可能であるため、小分子の持つ機能や情報が球状遷移金属錯体内部で増幅されることが期待される。
例えば、本発明の球状遷移金属錯体において、二座配位子(L)が前記(I−b)で表される化合物である場合には、この球状遷移金属錯体の中空の殻内部に、Ca(II)イオンや、La(III)イオン、Eu(III)イオン、Sm(III)イオンの所定数を包接させることができる。また、溶媒を交換することにより、包接させたCa(II)イオンや、La(III)イオン、Eu(III)イオン、Sm(III)イオンなどを再び中空の殻外部に取り出すこともできる。包接されるイオンの数は、通常、二座配位子(L)の数、すなわち、アルキレンオキサイド鎖の数と同じである。
また、本発明の球状遷移金属錯体において、二座配位子(L)が前記(I−d)で表される化合物である場合には、光照射することで、二座配位子の置換基部分の窒素−窒素二重結合を光異性化(シス−トランス光異性化)させることにより、中空の殻の内部形状を変化させることができる。このことは、本発明の球状遷移金属錯体を光材料として応用できる可能性を示している。
さらに、本発明の球状遷移金属錯体において、二座配位子(L)が前記(I−e)で表される化合物である場合には、球状遷移金属錯体の中空の殻内部において、ラジカル重合開始剤の存在下に重合反応を行わせることができる。重合反応終了後に、反応系に酸を添加することで錯体を分解して、粒子径が均一なナノ粒子である重合体を得ることができる。同様の反応方法として、ミセル内部で重合を行わせるミセル重合が知られているが、本発明の球状遷移金属錯体を用いることで、ミセル重合の場合より格段に粒子径の均一性に優れるナノ粒子を得ることができる。
以上のように、本発明の球状遷移金属錯体は、ナノメートルスケールのカプセル型分子として、センサー、機能材料、ドラッグデリバリ、記録媒体材料、触媒等として、さまざまな応用分野への展開が可能である。
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
(機器類)
(1)H−NMRスペクトルの測定
H−NMRスペクトルは、Bruker DRX 500(500MHz)NMR spectrometer、及びJEOL JNM−AL 300(300MHz)NMR spectrometerにより測定した。
溶媒として、CDCl、DMSOを用いた場合は、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、CDCNを用いた場合にはTMSのCDCl溶液をガラスキャピラリーに封管したものを外部標準とした。
また、化学シフトはδ値で表示し、次の省略形を用いた。s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、br(ブロード)。
(2)13C−NMRスペクトル、および各種二次元NMRスペクトルの測定
13C−NMRスペクトルおよび各種二次元NMRスペクトルは、Bruker DRX 500(125MHz)NMR spectrometerを用いて測定した。
(3)マススペクトルの測定
GC−MSは、SHIMADZU GC−CP5050Aを用い、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOFMAS)は、Applied Biosystem Voyager DE−STRで測定した。
コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)は、JEOL JMS−700Cにより測定した。
(試薬類)
反応溶媒は、和光純薬工業株式会社、並びに、関東化学株式会社で市販されている有機合成用脱水溶媒(水分0.005%以下)をそのまま使用した。
試薬類は、特に精製することなく、市販品をそのまま使用した。
Pd(PPhは、Coulsonの文献(D.R.Coulson,Inorg. Synth.,1972,13,121)を参考にして合成したものを使用した。
(実施例1)
(1)2,6−ビス(4−ピリジルエチニル)トルエンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、2,6−ジブロモトルエン(0.50g,2.0mmol)、4−エチニルピリジン塩酸塩(0.67g,4.8mmol)、Pd(PhCN)Cl(46.0mg,0.12mmol)、CuI(15.2mg,0.08mmol)を入れ、脱気した1,4−ジオキサン(2ml)を加えた後、トリ t−ブチルホスフィン(0.68ml,0.25mmol)、脱気したジイソプロピルアミン(0.68ml,4.8mmol)を加え、室温で17時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(10ml)を加え吸引濾過し不溶物を除いた。ついで、濾液をエチレンジアミン(2ml)で洗浄し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))により精製して、2,6−ビス(4−ピリジルエチニル)トルエンを収率81%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);2.69(s,3H),7.37(t,J=7.8Hz,1H),7.57(d,J6.3Hz4H),7.68(d,J=7.8Hz,2H),8.65(d,J=5.8Hz,4H)
13C−NMR(DMSO−d,125MHz,δppm);18.87(CH),91.03(Cq),91.46(Cq),121.99(Cq),125.99(CH),126.55(CH),129.91(Cq),133.22(CH),142.20(Cq),149.97(CH)
MS(GC−MS);m/z=294(M
(2)2,6−ビス(4−ピリジルエチニル)トルエン(L)とPd(NO(M)からM1224球状錯体の自己集合
Figure 0004940422
反応器に、2,6−ビス(4−ピリジルエチニル)トルエン(5.9mg,0.020mmol)、Pd(NO(2.3mg,0.010mmol)を入れ、DMSO(1.0ml)を加えて70℃で12時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、落ちてきた沈殿を遠心分離した後、上澄みを取り除き真空乾燥することで白色粉末状固体を収率78%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);2.67(s,3H),7.39(br,1H),7.68(br,2H),7.90(br,4H),9.24(br,4H)
13C−NMR(DMSO−d,125MHz,δppm);18.73(CH)、89.66(Cq),95.88(Cq),121.16(Cq),126.93(CH),128.59(CH),134.12(CH),134.40(Cq),143.82(Cq),151.00(CH)
CSI−MSはカウンターアニオンをCFSO に交換した後に測定を行った。
CSI−MS(CFSO salt,CDCN:DMSO=20:1);1553.2[M−7(CFSO )]7+,1340.3[M−8(CFSO )]8+,1174.8[M−9(CFSO )]9+
(実施例2)
(1)1,3−ジブロモ−2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]ベンゼンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、1,3−ジブロモ−2−[2−(p−トルエンスルホニルオキシ)エトキシ]ベンゼン(0.90g,2.0mmol)、4−シアノフェノール(0.28g,3.0mmol)、炭酸カリウム(0.83g,6.0mmol)を入れ、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)を加え、100℃で24時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、クロロホルムで3回抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:n−ヘキサン=1:1(v/v))により精製し、1,3−ジブロモ−2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]ベンゼンを収率87%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(CDCl,300MHz,δppm);4.32−4.42(m,4H),6.83(t,J=8.1Hz,1H),6.95(d,J=9.0Hz,2H),7.45(d,J=8.1Hz,2H),7.54(d,J=9.0Hz,2H)
13C−NMR(CDCl,75MHz,δppm);67.18(CH),70.92(CH),104.30(Cq),115.35(CH),118.26(Cq),119.13(Cq),126.65(CH),132.81(CH),133.97(CH),152.82(Cq),161.86(Cq)
MS(GC−MS);m/z=395,397,399(M
(2)2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、1,3−ジブロモ−2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]ベンゼン(1.0g,2.5mmol)、4−エチニルピリジン塩酸塩(1.0g,7.2mmol)、Pd(PhCN)Cl(76.0mg,0.20mmol)、CuI(25.9mg,0.14mmol)を入れ、脱気した1,4−ジオキサン(9ml)を加えた後、トリ t−ブチルホスフィン(0.120ml,0.48mmol)、脱気したジイソプロピルアミン(0.68ml,4.8mmol)を加え、50℃で40時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(20ml)を加え、吸引濾過し不溶物を除いた後に、濾液をエチレンジアミン(4ml)で洗浄し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1(v/v))、GPCにより精製し、2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼンを収率92%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);4.47−4.49(m,2H),4.71−4.73(m,2H),6.70(d,J=9.0Hz,1H),7.29(t,J=7.5Hz,1H),7.42(d,J=6.0Hz,4H),7.65(d,J=8.5Hz,1H),7.70(d,J=8.0Hz,2H),8.59(d,J=5.5Hz,4H)
13C−NMR(DMSO−d,125MHz,δppm);68.24,72.73,89.08,91.25,102.92,115.42,116.03,118.98,124.47,125.10,129.77,134.05,134.88,149.84,161.14,161.72
MS(MALDI−TOFMAS);m/z=442.0([M+H]
(3)2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(L)とPd(NO(M)からM1224球状錯体の自己集合
Figure 0004940422
2−[4−(p−シアノフェニル)−1,4−ジオキサブチル]−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(8.8mg,0.020mmol)、Pd(NO(2.3mg,0.010mmol)にDMSO(1.0ml)を加え、70℃で12時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、落ちてきた沈殿を遠心分離した後、上澄みを取り除き真空乾燥することで白色粉末状固体を収率87%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);4.43(br,2H),4.70(br,2H),6.94(d,J=8.0Hz,1H),7.29(br,1H),7.44(d,J=8.0Hz,1H),7.68(br,2H),7.75(br,4H),9.23(br,4H)
13C−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);69.42,74.21,90.94,94.89,103.84,116.21,116.59,120.03,125.77,129.47,134.87,135.13,137.12,151.98,162.64,163.33
CSI−MSはカウンターアニオンをCFSO に交換した後に測定を行った。CSI−MS(CFSO salt,CDCN:DMSO=20:1);1781.1[M−8(CFSO )]8+,1575.3[M−9(CFSO )]9+,1410.7[M−10(CFSO )]10+
(実施例3)
(1)1,3−ジブロモ−2−(12−トシルオキシ−1,4,7,10−テトラオキサドデシル)ベンゼンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、2,6−ジブロモフェノール(2.6g,10.4mmol)、テトラエチレングリコール ジ p−トルエンスルホネート(9.4g,18.6mmol)、炭酸カリウム(5.6g,41.6mmol)を入れ、アセトン(80ml)を加えて、55℃で24時間攪拌した。反応液を室温に戻し、クロロホルムで3回抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製し、1,3−ジブロモ−2−(12−トシルオキシ−1,4,7,10−テトラオキサドデシル)ベンゼンを収率68%で得た。
(物性値)
無色液体状物質
H−NMR(CDCl,500MHz,δppm);2.44(s,3H),3.58−3.60(m,4H),3.64−3.67(m,2H),3.68−3.71(m,2H),3.74−3.77(m,2H),3.91−3.94(m,2H),4.16(m,J=5.0Hz,2H),4.19(t,J=4.9Hz,2H),6.86(t,J=7.9Hz,1H),7.33(d,J=8.1Hz,2H),7.50(d,J=8.1Hz,2H),7.80(d,J=8.2Hz,2H)
13C−NMR(CDCl,75MHz,δppm);21.62(CH),68.66(CH),69.22(CH),70.10(CH),70.59(CH),70.69(CH),70.75(CH),70.80(CH),72.37(CH),118.38(Cq),126.28(CH),127.97(CH),129.79(CH),132.71(CH),133.01(Cq),144.75(Cq),153.27(Cq)
MS(MALDI−TOFMAS);m/z=602.9,604.9,606.9([M+Na]),618.8,620.8,622.8([M+K]
(2)1,3−ジブロモ−2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)ベンゼンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、1,3−ジブロモ−2−(12−トシルオキシ−1,4,7,10−テトラオキサドデシル)ベンゼン(0.80g,1.4mmol)、水酸化ナトリウム(1.1g,27.0mmol)を入れ、アセトン(80ml)を加え、90℃で24時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、クロロホルムで3回抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去して、1,3−ジブロモ−2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)ベンゼンを収率97%で得た。
(物性値)
無色液体状物質
H−NMR(CDCl,500MHz,δppm);3.38(s,3H),3.54−3.57(m,2H),3.64−3.68(m,4H),3.68−3.72(m,4H),3.76−3.79(m,2H),3.94(t,J=5.1Hz,2H),4.20(t,J=5.0Hz,2H),6.86(t,J=8.1Hz,1H),7.50(d,J=8.1Hz,2H),
13C−NMR(CDCl,75MHz,δppm);59.02(CH),70.08(CH),70.50(CH),70.62(CH),70.65(CH),70.67(CH),70.81(CH),71.93(CH),72.37(CH),118.39(Cq),126.25(CH),132.69(CH),153.29(Cq)
(3)2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼンの合成
Figure 0004940422
内部をアルゴン置換した反応器に、1,3−ジブロモ−2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)ベンゼン(0.54g,1.2mmol)、4−エチニルピリジン塩酸塩(0.48g,3.4mmol)、Pd(PhCN)Cl(28mg,0.074mmol)、CuI(9.35mg,0.049mmol)を入れ、脱気した1,4−ジオキサン(2.5ml)を加えた後、トリ t−ブチルホスフィン(38μl,0.15mmol)、脱気したジイソプロピルアミン(1.5ml,10.6mmol)を加え、50℃で24時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(10ml)を加えて吸引濾過し、不溶物を除いた後に、濾液をエチレンジアミン(2ml)で洗浄し、有機層を蒸留水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1(v/v))、GPCにより精製し、2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼンを収率81%で得た。
(物性値)
無色液体状物質
H−NMR(CDCN,500MHz,δppm);4.10(s,3H),4.25−4.28(m,2H),4.32−4.37(m,8H),4.46−4.49(m,2H),4.72−4.75(m,2H),5.31−5.34(m,2H),8.05(t,J=7.9Hz,1H),8.33(d,J=6.2Hz,4H),8.46(d,J=7.6Hz,2H),9.47(d,J=5.8Hz,4H)
13C−NMR(CDCN,125MHz,δppm);58.71(CH),70.83(CH),70.96(CH),70.97(CH),71.05(CH),71.24(CH),71.38(CH),72.44(CH),74.72(CH),89.96(Cq),92.00(Cq),117.55(CH),125.00(CH),126.14(CH),131.47(CH),135.59(CH),150.88(CH),162.50(CH)
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm)3.20(s,3H),3.37−3.40(m,2H),3.43−3.45(m,4H),3.45−3.48(m,4H),3.57−3.61(m,2H),3.84−3.87(m,2H),4.43−4.46(m,2H),7.26(t,J=7.9Hz,1H),7.55(d,J=5.8Hz,4H),7.70(d,J=7.7Hz,2H),8.66(d,J=6.0Hz,4H)
13C−NMR(DMSO−d,125MHz,δppm);57.91(CH),69.45(CH),69.64(CH),69.65(CH),69.69(CH),69.85(CH),69.99(CH),71.14(CH),73.58(CH),89.15(Cq),91.13(Cq),115.96(CH),124.24(CH),125.14(CH),129.89(CH),134.70(CH),149.94(CH),161.20(CH)
MS(LC−MS);m/z=487.0([M+H]
(4)2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(L)とPd(CFSO(M)からM1224球状錯体のCHCN中での自己集合
Figure 0004940422
反応器に2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(9.7mg,0.020mmol)、Pd(CFSO(4.0mg,0.010mmol)を入れ、そこへCHCN(1ml)を加え、50℃で12時間撹拌した。減圧下溶媒を留去した後、固体にジエチルエーテルを加えて洗浄し、沈殿を遠心分離した後、上澄みを取り除き真空乾燥することで白色粉末状固体を収率90%で得た。この遷移金属錯体を錯体(1a)とする。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(CDCN,500MHz,δppm);3.94(s,3H),4.07−4.10(m,2H),4.17−4.20(m,2H),4.21−4.24(m,2H),4.27−4.30(m,2H),4.35−4.38(m,2H),4.45−4.48(m,2H),4.69−4.72(m,2H),5.24−5.27(m,2H),8.04(t,J=7.7Hz,1H),8.47(d,J=7.8Hz,2H),8.52(d,J=6.8Hz,4H),9.87(d,J=6.7Hz,4H)
13C−NMR(CDCN,125MHz,δppm);58.68(CH),70.75(CH),70.92(CH),70.94(CH),71.00(CH),71.21(CH),71.37(CH),72.34(CH),75.14(CH),90.50(Cq),95.36(Cq),116.63(Cq),125.8(CH),129.61(CH),136.36(Cq),137.00(CH),151.87(CH),163.58(Cq)
CSI−MS(CFSO salt,CDCN);1916.8[M−8(CFSO )]8+,1687.4[M−9(CFSO )]9+,1503.6[M−10(CFSO )]10+
(5)2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(L)とPd(NO(M)からM1224球状錯体のDMSO中での自己集合
Figure 0004940422
反応器に2−(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)−1,3−ビス(4−ピリジルエチニル)ベンゼン(9.7mg,0.020mmol)、Pd(NO(2.3mg,0.010mmol)を入れ、そこへDMSO(1ml)を加え、70℃で12時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、落ちてきた沈殿を遠心分離した後、上澄みを取り除き真空乾燥することで白色粉末状固体を収率91%で得た。
(物性値)
白色粉末状物質
H−NMR(DMSO−d,500MHz,δppm);3.06(s,3H),3.20−3.24(m,2H),3.29−3.35(m,4H),3.35−3.39(m,2H),3.43−3.47(m,2H),3.54−3.58(m,2H),3.83(br,2H),4.41(br,2H),7.26(br,1H),7.68(br,2H),7.85(br,4H),9.27(br,4H)
13C−NMR(DMSO−d,125MHz,δppm);57.84(CH),69.41(CH),69.62(CH),69.63(CH),69.67(CH),69.80(CH),70.05(CH),71.08(CH),73.96(CH),89.83(Cq),93.91(Cq),115.15(Cq),124.57(CH),128.49(CH),134.23(Cq),136.02(CH),151.04(CH),162.26(Cq)
CSI−MSはカウンターアニオンをCFSO に交換した後に測定を行った。CSI−MS(CFSO salt,CDCN:DMSO=20:1);1916.6[M−8(CFSO )]8+,1687.3[M−9(CFSO )]9+,1503.6[M−10(CFSO )]10+
(金属イオンの包接挙動)
次に、上記実施例3の(4)で合成した球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液(0.1mM)に対して、12当量の各種金属イオンを加え、H−NMRを用いてエチレングリコール鎖と金属イオンとの相互作用について検討を行った。金属イオンのカウンターアニオンにはCFSO を用いた。
その結果、Ca(II)イオンおよび各種ランタノイドイオンを加えた場合には、エチレングリコール鎖のHが大きくシフトして観測された。一方、骨格のピリジン環やベンゼン環のH−NMRの化学シフトはほとんど変化しなかった。また、エチレングリコール鎖を持たない錯体にもこれらの金属イオンを加えたが、シグナルのシフトは観測されなかった。
球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、Ca(II)、La(III)、Sm(III)、Eu(III)イオンを加えた場合のH−NMRのスペクトルの変化を図2に示す。
図2中、a)は球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液のH−NMRスペクトル図であり、b)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のCa(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図であり、c)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のLa(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図であり、d)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のSm(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図であり、e)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のEu(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図である。
以上のことから、エチレングリコール鎖のH−NMRのシフトはエチレングリコール鎖への金属イオンの配位が起こっていることを強く示唆している。
このように、アセトニトリル中において金属イオンの取り込みが確認できたのは、溶媒の配位がそれほど強くないために、ハードなドナーであるエーテル酸素が優先してランタノイドイオンに配位することができるためであると考えられる。
さらに、24個のエチレングリコール鎖を持つ球状遷移金属錯体(1a)が、ランタノイドイオンとどのような比で相互作用しているかを見積もるためにjob’s plotによる検討を行った(村上幸人(監修),超分子化学の基礎と応用,エヌ・ティー・エス,1995参照)。その結果、エチレングリコール鎖とゲストのLa(III)イオンが1:1の比率で複合体を形成していることがわかった。すなわち、球状錯体1分子あたり24個のLa(III)イオンが集積することが示された。
このように、M1224球状錯体の内面に24個のエチレングリコール鎖を導入することにより、錯体内部の環境を変化させることができ、金属イオンを取り込む駆動力が生まれ、錯体内部へのゲスト包接が可能となった。また、包接されるゲストの数は24個と決定でき、一義的に決まることが分かった。
次に、球状遷移金属錯体の中空内に金属イオンを取り込むとこができることがわかったので、さらに、取り込んだゲストを再び取り出すことを試みた。
球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液(0.1mM)、0.6mlに対し12当量のLa(III)イオン、およびEu(III)イオンを加えて5時間撹拌したサンプルに、DMSO0.6mlを加えることで、図3に示すように、H−NMRにおいて各シグナルがシャープに戻ることが観測された。
図3中、a)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のLa(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図であり、b)は、a)の溶液にDMSO−d6を0.6ml添加した後のH−NMRスペクトル図であり、c)は、球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、球状遷移金属錯体(1a)に対し12当量のEu(CFSOを添加し、5時間攪拌した後のH−NMRスペクトル図であり、d)は、c)の溶液にDMSO−d6を0.6ml添加した後のH−NMRスペクトル図である。
図3より、球状遷移金属錯体(1a)の各シグナルの位置は、La(III)イオンおよびEu(III)イオンが存在しない場合と同じ位置に現れていることから、エチレングリコール鎖と金属イオンとの相互作用が消失したことを示している。
これは、金属イオンへの強い配位能を持つDMSOを加えることにより、エチレングリコールに代わり、DMSOが金属イオンに強く配位するためであると考えられた。
DMSOを加えることにより、錯体内部に貯蔵されたランタノイドイオンを取り出すことができたといえる。
以上のように、アセトニトリル中で球状遷移金属錯体(1a)を構築することにより、球状錯体内にCa(II)イオン、各種ランタノイドイオンを取り込むことが可能になり、その数は24個という一義的な個数であることが分かった。さらに、この溶液にDMSOを添加することにより、内部に包接された金属イオンを取り出すことにも成功した。すなわち、置換基を導入したことにより、構造が明確に制御された錯体分子内において金属イオンの貯蔵および、放出を行うことが可能となった。
ランタノイドイオンのCFSO塩は、不斉Diels−Alder反応やアルドール反応などの触媒としての働きが見出されており(L.Trembleau,J.RebekJr,Chem.Commun.,2004,58など)、ランタノイドイオンがM1224球状錯体という大きさおよび構造の定義された空間に包接されたことにより、基質選択性や立体制御が可能な触媒としての応用が期待される。
本発明により確立された球状錯体の内面を置換基により修飾する手法によれば、目的に応じて様々な置換基を導入することができると考えられる。球状遷移金属錯体は自発的に形成されるため非常に簡便であり、その構造は明確に定義されているため、精密に制御された特異な内部空間を作る上で非常に有用な手法であるといえる。
今後、球状錯体内面に導入する置換基を設計することにより、生体系と同様に、球殻構造の内面に導入する置換基が協同的に働くことによる新たな機能も期待でき、DNAなどの巨大な生体分子の包接や安定化、ポリペプチドの選択的認識および二次構造の制御、またこのような巨大空間を利用した特異的な反応場としての利用も十分に期待できる。
12個の遷移金属化合物(M)と、24個の二座配位子(L)とから構成される本発明の球状遷移金属錯体の立体構造を示す図である。 球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、Ca(II)、La(III)、Sm(III)、Eu(III)イオンを加えた場合のH−NMRのスペクトルの変化を示す図である。 球状遷移金属錯体(1a)のアセトニトリル溶液に、La(III)およびEu(III)イオンを加え5時間攪拌した後に、DMSO−d6を添加した場合のH−NMRのスペクトルの変化を示す図である。

Claims (9)

  1. 中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n1個(n1は、6〜60の整数を表す。)の遷移金属原子と、2n1個の、式(I)
    Figure 0004940422
    {式中、R 、R はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
    m1、m2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。m1、m2が2以上のとき、R 同士、R 同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていても良い。
    Aは、下記式(a−1)〜(a−4)
    Figure 0004940422
    [R は、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCH CH −OR 〔式中、R は、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH (r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH )t−R −N=N−R (tは0〜10の整数を表し、R は置換されていても良いアリーレン基を表し、R は置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で示される置換基を表す。
    は、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
    m3は0〜3の整数を表し、m4は0〜2の整数を表す。m3が2以上、m4が2のとき、複数個のR は同一であっても、相異なっていても良い。
    Qは、−Nr1−(r1は水素原子、アルキル基、アリール基若しくはアシル基を表す。)、−O−、−C(=O)−、−S−、または−SO −を表す。]
    で表される基を示す。}
    で示される、置換基を有する二座有機配位子とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする球状遷移金属錯体。
  2. 中空の殻を有する球状遷移金属錯体であって、前記中空の殻が、n2個(n2は、6、12、24、30または60である。)の遷移金属原子と、2n2個の、式(I)
    Figure 0004940422
    {式中、R 、R はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
    m1、m2はそれぞれ独立して、0〜4の整数を表す。m1、m2が2以上のとき、R 同士、R 同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていても良い。
    Aは、下記式(a−1)〜(a−4)
    Figure 0004940422
    [R は、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCH CH −OR 〔式中、R は、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH (r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH )t−R −N=N−R (tは0〜10の整数を表し、R は置換されていても良いアリーレン基を表し、R は置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で示される置換基を表す。
    は、ハロゲン原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルコキシル基、シアノ基またはニトロ基を表す。
    m3は0〜3の整数を表し、m4は0〜2の整数を表す。m3が2以上、m4が2のとき、複数個のR は同一であっても、相異なっていても良い。
    Qは、−Nr1−(r1は水素原子、アルキル基、アリール基若しくはアシル基を表す。)、−O−、−C(=O)−、−S−、または−SO −を表す。]
    で表される基を示す。}
    で示される、置換基を有する二座有機配位子とから形成されてなり、かつ、前記置換基が前記中空の殻内部に配向するように形成されていることを特徴とする球状遷移金属錯体。
  3. 遷移金属化合物(M)と、前記式(I)で示される、置換基を有する二座有機配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn12n1(n1は、6〜60の整数であり、M同士、L同士は、それぞれ同一であっても、相異なっていても良い。)で表される請求項1に記載の球状遷移金属錯体。
  4. 遷移金属化合物(M)と、前記式(I)で示される、置換基を有する二座有機配位子(L)とから、前記置換基が中空の殻内部に配向するように自己組織的に形成されてなる、式:Mn22n2(n2は、6、12、24、30または60であり、M同士、L同士は、それぞれ同一であっても、相異なっていても良い。)で表される請求項2に記載の球状遷移金属錯体。
  5. 直径3〜15nmの中空の殻を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
  6. 前記遷移金属錯体を構成する遷移金属原子が、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir及びPtからなる群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
  7. 前記式(I)で示される、置換基を有する二座有機配位子が、式(I−1)
    Figure 0004940422
    {式中、Rは、置換されていても良いアルキル基、または式:−(OCHCH−OR〔式中、Rは、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロ環基、式:−CO−C(r2)=CH(r2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表される基、式:−(CH)t−R−N=N−R(tは0〜10の整数を表し、Rは置換されていても良いアリーレン基を表し、Rは置換されていても良いアリール基を表す。)で表される基を表し、sは0〜20の整数を表す。〕で表される基を示す。}で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の球状遷移金属錯体。
  8. 遷移金属化合物(M)と、式(I)で示される、置換基を有する二座有機配位子(L)とを、遷移金属化合物(M)1モルに対し、二座有機配位子(L)を1〜5モルの割合で反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の球状遷移金属錯体の製造方法。
  9. 前記遷移金属化合物を構成する遷移金属原子が、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Cd、Os、Ir及びPtからなる群から選ばれる一種であることを特徴とする請求項に記載の球状遷移金属錯体の製造方法。
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