JP4938379B2 - 樹脂ベルト - Google Patents

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本発明は、樹脂ベルトに係り、耐摩耗性能及び耐クラック性能の高い樹脂ベルトに関するものである。
従来の歯付きベルトは、特許文献1に開示されているように、合成樹脂製のベルト本体の内周面側に多数の等ピッチの歯部が形成され、その内周面側に帆布が接着されると共に、ベルト本体の平ベルト部には複数条のコードがベルト幅方向に並列して埋設されている。
特開2002−349636(請求項1参照)
しかしながら、従来の歯付きベルトは、ベルト本体を構成する樹脂の重量平均分子量が約11万であり、耐摩耗性能及び耐クラック性能が低いという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、耐摩耗性能および耐クラック性能の高い樹脂ベルトを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、樹脂ベルトを重量平均分子量(以下、単に分子量という)が14万以上のポリエステルエラストマーから構成したことを特徴とするものである。樹脂ベルトを構成するポリエステルエラストマーの分子量を、従来よりも格段に大きい14万以上とすることにより、樹脂ベルトの耐屈曲疲労性が向上し、樹脂ベルトの耐クラック性能、耐摩耗性能及び歯欠け耐久性能を向上させることができる。
ポリエステルエラストマーの分子量としては、14万以上、好ましくは20〜25万、特に好ましくは25万である。分子量14万よりも小さければ、耐摩耗性能及び耐クラック性能が低くなる傾向があり、一方分子量25万よりも高くなると、製造コストが高くなり好ましくない。なお、本発明における重量平均分子量とは、成形品である樹脂ベルトから切り出した物を測定した場合の値である。
また、上記構成の樹脂ベルトは、成形性が高く、短時間で成形することができる。ここで、環状のベルトの成形行程では、成形用の円柱状の金型の外周面に帆布及び心線を巻き付け、さらにその上からポリエステルエラストマーシートを環状に巻き付けて、加熱加圧することにより成形する。従来の樹脂ベルトでは、この成形を短時間で行うと、ポリエステルエラストマーシートを環状に巻き付けた際の端部同士を重ね合わせたラップ部分の接着性が悪く、ベルト走行時にベルト背面のラップ部分で早期にクラックが発生してしまう。したがって、従来の樹脂ベルトでは、成形に長い時間が必要となってしまっていた。しかし、本発明の樹脂ベルトは、ラップ部分の接着性が高く、短時間で接着させることができる。
また、分子量が14万よりも小さいポリエステルエラストマーは、その流動特性が成形温度により急変して急激に流動性が高くなってしまう。そのため、ベルト成形時の温度設定には精密さが要求されるが、温度設定には多少の変動が起きやすいため、温度制御が困難である。そこで、上述のように、樹脂ベルトを構成するポリエステルエラストマーの分子量を14万以上とすれば、温度上昇に対するポリエステルエラストマーの流動性の上昇は緩やかとなり、流動挙動が改善される。したがって、成形時の温度条件に幅ができるので、樹脂ベルト成形の制御を容易なものにすることができる。
本発明におけるポリエステルエラストマーとは、芳香環を有する高融点ポリエステルセグメントと分子量400〜1700の低融点重合体セグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が180℃以上あり、低融点重合体セグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステルエラストマーである。
ポリエステルエラストマーをさらに詳しく述べると、芳香環を有する高融点ポリエステルセグメント構成成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキサイド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。なお、高融点ポリエステルセグメント構成成分の酸成分として、テレフタル酸が全酸成分の70モル%以上であることが好ましい。
また、分子量400〜1700の低融点重合体セグメントとしては、例えばポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにこれらのポリエーテルグリコール構成を共重合した共重合ポリエーテルグリコールを示すことができる。
高融点化や成形性の面から、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが好ましく、分子量800〜1500が低温特性から特に好ましく、全ポリエステル重量の15〜75%であることが好ましい。特に耐久性、柔軟性の面から25〜65%の範囲が好ましい。
本発明のポリエステルエラストマーの製造には、公知の任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことは、成形性、成形体の耐久寿命を上げるため、もちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、高分子鎖の末端の反応しうる官能基を2官能以上もつ化合物などで鎖延長しても良い。
本発明の樹脂ベルトは、ベルト本体の内周面側に歯部を形成した歯付きベルトなどのベルトに適用することができる。また、ベルトの用途としても、伝動ベルト、搬送ベルトを問わず適用可能であり、さらに、有端ベルト、無端ベルトを問わず適用可能である。
また、ベルト寸法を一定に保持するために、ベルトに心線を埋設するのが好ましい。心線としては、これに限定されるものではないが、ガラス繊維、スチール繊維、アラミド繊維、PBO繊維又はカーボン繊維を用いればよい。
また、ベルト表面を補強するために、ベルト表面を帆布で被覆するのが好ましい。帆布としては、これに限定されるものではないが、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、PBO繊維又は綿繊維を用いればよい。
また、帆布の表面は、フェノール樹脂を主成分とする処理剤で処理するのが好ましい。帆布とベルト本体との接着力が向上する。
本発明によると、樹脂ベルトを構成するポリエステルエラストマーの分子量を従来よりも格段に大きい14万以上とすることにより、樹脂ベルトの耐屈曲疲労性が向上し、樹脂ベルトの耐クラック性能、耐摩耗性能及び歯欠け耐久性能が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の歯付きベルトの断面図である。
図1に示すように、本実施形態の樹脂ベルト1は、搬送用歯付きベルトであって、平板状で環状のベルト本体2と、その内周面側においてベルト長さ方向に等ピッチで形成された歯部3と、これらの歯部3の歯面及び歯溝に沿って装着された帆布4と、ベルト本体2にその幅方向に並列して埋設された複数本の心線5とを備えてなるものである。歯部3は、歯付プーリのプーリ歯に噛み合うように形成される。
ベルト本体2及び歯部3を構成するゴム素材は、分子量が14万以上のポリエステルエラストマーから構成されている。分子量が14万以上のポリエステルエラストマーを使用することにより、耐摩耗性能および耐クラック性能が高く、ベルト成形の制御をしやすいものとできる。なお、ポリエステルエラストマー以外に他の材料を配合してもよい。
帆布4は、ベルト本体2及び歯部3がプーリなどと接触して摩耗するのを防ぐと共に、これらの強度を保持するために、歯部3及び歯溝に接着されるものである。本実施形態においては、帆布4として6―6ナイロンからなる合成繊維布を使用したが、これに限定されるものではなく、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、アラミド若しくはPBO(ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)等の合成繊維、又は綿等の天然繊維からなる布を使用してもよい。また、帆布4は、2/2綾織の織組織からなるが、これに限定されるものではない。
心線5は、ガラス繊維を撚り合わせたガラス心線などからなり、歯部3の歯底付近に位置するようにベルト本体2に埋設され、歯付ベルトに作用する引張力を受け持つようになっている。なお、心線5は、アラミド繊維、カーボン繊維、スチール繊維、PBO繊維又はポリエステル繊維製であってもよい。
次に、この歯付きベルト1を製造する手順を説明する。まず、ベルト1の歯部3に対応する歯溝が形成された金型の外周面に、フェノール樹脂を主成分とする処理剤で処理した帆布4を環状に縫合したものを被せ、その外側に心線5及びポリエステルエラストマーシートをこの順で巻き付け、ポリエステルエラストマーシートの両端部を重ね合わせる。
次いで、ポリエステルエラストマーシートの外側に筒状のシェルバッグを被せて加硫釜内で加熱加圧することにより、ポリエステルエラストマーシートの一部を帆布4を押しながら金型の歯溝に流入させつつ、ポリエステルエラストマーシートを成形して歯付ベルトスラブを構成する。金型を冷却した後、この歯付ベルトスラブをシェルバッグ及び金型から取り外し、背面研磨、印刷及び所定幅への裁断を施して歯付ベルト1の製造が完了する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正・変更を加えることができるのは勿論である。例えば、上記実施形態では、搬送ベルトについて説明したが、これに限らず伝動ベルトに本発明を適用してもよい。また、ベルトは無端・有端を問わず適用できることは勿論である。
次に、歯付きベルト1について、以下に示す条件下で試験を行った。表1に示すように、実施例1〜4と比較例1は、ベルト本体2及び歯部3を構成するポリエステルエラストマーの分子量(M)、溶融粘度(MFR)及び融点(Tm)を変えたものであり、その他の条件は同じである。ポリエステルエラストマーとしては、実施例1〜4及び比較例1共に、東洋紡社製の「ペルプレン」(登録商標、以下省略する)を使用した。表1の使用樹脂欄中「P75M」は品番を示す。なお、歯付きベルト1は、ベルト幅10mm、歯部3の歯数163個、歯部3のピッチ3mmで形成されている。
Figure 0004938379
なお、本発明における各種物性の測定条件及び方法は、下記の通りである。
(1)重量平均分子量(Mw)
東ソー株式会社製の高速GPC装置「HLC−8220GPC」を用い、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン(PS)換算で分子量を算出した。
カラム:TSKgel SuperHM−H×2+TSKgel SuperH2000(東ソー株式会社製)
溶媒:クロロホルム
流速:0.6ml/min
濃度:0.025%
温度:40℃
検出器:RI
標準ポリスチレン:TSK STANDARD POLYSTYRENE(東ソー株式会社製)
(2)融点(Tm)
該当のポリエステルエラストマーをセイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計DSC−220Cを用いて、室温から250℃まで20℃/分で昇温し、250℃から50℃まで50℃/分で降温した後、再度250℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温の際での融解による吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。なお、測定試料は、10mgの試料をアルミニウム製蓋で密封状態にして、窒素雰囲気で測定した。
(3)溶融粘度(MFR)
該当のポリエステルエラストマーのペレットを100℃×6hr乾燥した後、東洋精機製作所製のキャピログラフ1Bにて、測定温度160、180、200℃、L=30mm、D=1.0mmのキャピラリーを使用し、試験速度=0.5〜500mm/minにて剪断応力と溶融粘度の関係を求めた。図5には、Shear Rate(sec−1)=6.08での測定温度と溶融粘度の関係を示す。
<1.背面クラック発生試験>
図2は、2軸に張架された歯付きベルト1における、背面クラックが発生するまでの時間を示すグラフである。また、図3は、3つの歯付きプーリーに張架された歯付きベルト1における、背面クラックが発生するまでの時間を示すグラフである。図2及び図3における背面クラック発生までの時間は、比較例1における背面クラック発生までの時間を1とした場合の相対比で表している。
また、図2の場合は、水平に配された2つのプーリーに歯付きベルト1を張架して無負荷の状態で試験したものであり、図3の場合は、図3のグラフの左上の枠内に記載されているように配された3つの歯付きプーリーに、歯付きベルト1を張架し、そのうち2つのプーリ間に差し渡されたベルトの背面にテンションプーリを配置して試験したものである。図2では、歯数が14の歯付きプーリーを使用し、図3では、歯数が14の歯付きプーリーを使用し、それぞれ12000rpmの状態で回転させることにより、ベルト1を走行させて、歯付きベルト1に背面クラックが発生するまでの時間を測定した。
図2より、実施例1、2、3及び4で、比較例1よりクラック発生までの時間が長く、クラックが発生しにくいことが分かる。実施例3にいたっては、比較例1の約6.5倍の時間が経ってもクラックが発生しなかった。また、実施例1〜3ではクラック未発生のまま歯欠けが発生した時点で終了させた。
また、図3より、実施例1は、比較例1よりも約4倍長い間クラックが発生しなかった。また、実施例3にいたっては、比較例1よりも約10倍以上の時間が経ってもクラックは発生せず、心線5が抜けた時点で終了させた。
以上から、14万以上の分子量のポリエステルエラストマーから構成されるベルト1は、耐クラック性能に優れることが分かった。
<2.歯摩耗性試験>
図4は、分子量と歯摩耗性との関係を示すグラフである。平行に配された2つのプーリーに歯付きベルト1を張架して試験したものであり、歯幅摩耗量は、歯幅(W)を歯高さの1/2の高さ(1/2H)における幅とした場合における、0時間における歯幅(W)とt時間経過後における歯幅(W)との差(W−W)である。プーリーは、歯数が14の歯付きプーリーを使用し、12000rpmの無負荷の状態でプーリーを回転させることにより、ベルト1を走行させて、歯付きベルト1に歯摩耗量を測定した。なお、図4の横軸は、比較例1の歯付きベルト1のクラックが発生し停止した時間を1とした場合の相対時間比である。
図4より、比較例1は、短時間のうちに歯幅摩耗量が増加するが、実施例1〜3は、曲線が緩やかであり、長時間かかって歯幅摩耗量が増加する。特に、実施例3では、比較例1よりも約6倍の時間が経った後に、比較例1と同程度の歯幅の摩耗が発生した。したがって、比較例1よりも実施例1〜3のほうが、歯の耐摩耗性が良いことが分かる。
以上から、14万以上の分子量のポリエステルエラストマーから構成されるベルト1は、耐摩耗性能に優れることが分かった。
<3.樹脂の溶融粘度測定試験>
図5は、樹脂の溶融粘度と、測定温度との関係を示すグラフである。上記実施例1〜3及び比較例1で用いた分子量の異なるポリエステルエラストマー(東洋紡社製のペルプレン)の溶融粘度を測定した。
なお、樹脂の温度に対する溶融粘度の挙動はベルト成形性に大きく関係する。すなわち、ベルト成形時において、歯溝が形成された金型の外周面に被せられた帆布4は、加熱加圧により高粘度となった樹脂で押され、徐々に金型の溝部へ押し込まれ、歯溝の形状に沿って歯部3が形成される。しかし、帆布4が完全に金型の歯溝面に押し込まれる前に、樹脂の流動性が急激に高くなってしまうと、流動性を増した(低粘度化した)樹脂が帆布4の布目を通過して浸み出し、金型の歯溝と歯布4との間の空隙を充填してしまう。その浸み出した樹脂は、ベルト1の歯布4表面を覆ってしまう。したがって、ベルト成形時の温度設定には精密さが要求される。
そこで、図5より、分子量が11万のもの(P75M現行分子量;比較例1に用いた樹脂)は、温度上昇により粘度が急激に変化することが分かる。したがって、分子量が11万のものは、温度条件の幅が狭く、ベルトの成形性の制御が困難である。
これに対し、分子量が15万(P75M分子量変更I;実施例1に用いた樹脂)、18万(P75M分子量変更II;実施例2に用いた樹脂)、21万(P75M分子量変更III;実施例3に用いた樹脂)のものは、温度上昇による粘度低下が低い。特に分子量21万のものが最も溶融粘度が高く、ベルト成形性に優れているといえる。ベルト成形の制御がしやすい。
<4.ベルト成形性試験>
図6は、歯付きベルト1の歯部を電子顕微鏡で観察したもののイメージ図である。図6より、比較例1は、歯部3の樹脂が帆布4から外へ浸み出してしまい、歯部3の表面を露出した樹脂が部分的に覆う露出樹脂層6が見られる。これに対し、実施例1及び実施例2では浸み出しの発生が少なく、実施例3ではほとんど浸み出しが発生していない。したがって、分子量が14万以上の樹脂は、ベルト成形性がよい。
<5.帆布と樹脂の接着性試験>
次に、実施例3に用いた樹脂と帆布4との接着性について、種々の処理剤を変えて接着力を試験した。図7は、実施例3に用いた樹脂からなるポリエステルエラストマーシートと帆布4との接着性を示すグラフである。図7の縦軸は、評価対象3の接着力を1とした場合の相対比を示す。評価対象1、評価対象2及び評価対象3は、帆布4の処理剤の種類を変えたものであり、その他の条件は同じである。すなわち、ポリエステルエラストマーシートとして、評価対象1、評価対象2及び評価対象3は、分子量約21万のポリエステルエラストマー(東洋紡社製のペルプレン)を使用している点は同じであるが、帆布4の処理剤として、評価対象1はフェノール樹脂を主成分とするもの、評価対象2はRFL(レゾルシン・ホルマリン・CRゴムラテックス)、評価対象3はCRゴム糊を使用したものである点で相違する。処理剤による処理は、帆布4を処理剤に含浸付着し、乾燥させることにより行う。なお、歯付きベルト1は、ベルト幅10mm、歯部3の歯数163個、歯部3のピッチ3mmで形成されている。
接着性試験の方法について説明する。まず、ポリエステルエラストマーシートは、厚さ1.5mm、縦15cm、横12cmの大きさに裁断し、それを2枚重ねたものを用意する。帆布は、縦15cm、横12cmの大きさに裁断したものを用意する。なお、帆布は、伸長方向を縦方向にする。そして、ポリエステルエラストマーシートと帆布とを重ね合わせ、縦12cm×横15cm×高さ2mmの金型に、帆布を下にしてセットし、160℃、10分、150kgf・cmの条件でプレスする。金型を水で冷却して、金型から帆布が張り付いたポリエステルエラストマーシートを取り出す。これを25mm幅で縦方向に切断する。帆布とポリエステルエラストマーシートの端を一部はがし、オートグラフにて、50mm/minの速度で剥離試験を行う。この結果を図7に示す。
図7より、評価対象1は、評価対象2及び評価対象3よりも接着性が高いことが分かる。したがって、帆布4の表面をフェノール樹脂を主成分とする処理剤で処理すると、帆布4とポリエステルエラストマーシートとの接着性が向上する。歯付きベルトの耐久性がさらに向上する。
本実施形態の歯付きベルトの要部断面図 2軸に張架された歯付きベルトにおける、背面クラックが発生するまでの時間を示すグラフ 3つの歯付きプーリーに張架された歯付きベルトにおける、背面クラックが発生するまでの時間を示すグラフ 分子量と歯摩耗性との関係を示すグラフ 樹脂の流動性を示すグラフ 歯付きベルトの歯部を電子顕微鏡で観察したもののイメージ図 帆布とポリエステルエラストマーシートとの接着性を示すグラフ
符号の説明
1 樹脂ベルト
2 ベルト本体
3 歯部
4 帆布
5 心線

Claims (5)

  1. ベルト本体の内周面側に歯部が形成され、該歯部が帆布で被覆され、前記ベルト本体に心線が埋設された樹脂ベルトであって、前記ベルト本体及び歯部は、重量平均分子量が14万〜25万のポリエステルエラストマーから構成されることを特徴とする樹脂ベルト。
  2. ベルト本体の内周面側に歯部が形成され、該歯部が帆布で被覆され、前記ベルト本体に心線が埋設された樹脂ベルトであって、前記ベルト本体及び歯部は、重量平均分子量が20万〜25万のポリエステルエラストマーから構成されることを特徴とする樹脂ベルト。
  3. 前記心線は、ガラス繊維、スチール繊維、アラミド繊維、PBO繊維又はカーボン繊維を用いてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂ベルト。
  4. 前記帆布は、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、PBO繊維又は綿繊維を用いてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の樹脂ベルト。
  5. 前記帆布の表面は、フェノール樹脂を主成分とする処理剤で処理されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂ベルト。
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