JP4038789B2 - 歯付きベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、動力伝動用や搬送用などの歯付きベルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図4に示すように、動力伝動用や搬送用などに歯付きベルト11が使用されている。
【0003】
図5に示すように、この歯付きベルト11は、プーリ等に係合する歯部及び歯底部分を有し、歯形を有する成形金型12へ原料13(樹脂やエラストマー)を供給して製造される。前記成形金型12の歯形面には、予め伸縮性を有する帆布14が配設される。
【0004】
ところで、前記歯形面に配設された伸縮性を有する帆布14にはラテックス、RFL、ゴム糊等で織り目の目止め処理がなされているのであるが、成形時に帆布14の織り目が原料13の圧力により伸張され、織り目が広がった時に目止めが不十分であった箇所から原料13がベルト歯部の表面側に部分的に滲み出してしまうことがあった。なお図中15は、成形用のバッグゴムである。
【0005】
しかし、樹脂やエラストマーが帆布14を通り越してベルト歯部の表面側に露出した場合、露出した部分とそうでない部分(帆布14がベルト歯面を覆っている)が混在するアンバランスな状態により異音が発生することがあるという問題があった。
【0006】
また、樹脂やエラストマーがベルト歯部の表面側に露出するとその樹脂やエラストマーが走行中容易に剥がれたり欠落したりするので、ジャンピング性能や耐久性によくない影響があるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、従来よりも異音の発生を抑制しジャンピング性能や耐久性を向上させることができる歯付きベルトの製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1) この発明の歯付きベルトの製造方法は、歯形を有する成形金型の歯形面に伸縮性を有する帆布を配設し、前記帆布の成形金型に接する面側には前記帆布と同調して伸縮する樹脂フィルムが固着されていると共に前記樹脂フィルムは樹脂製のベルト本体原料よりも融点が高く設定され、前記成型金型により前記融点以下で流動可能状態の上記ベルト本体原料を成形するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この歯付きベルトの製造方法では、帆布の成形金型に接する面側に固着され帆布と同調して伸縮する樹脂フィルムはベルト本体原料よりも融点が高く設定されているので、前記融点以下で流動可能状態のベルト本体原料が帆布の目を通り抜けても、融点が高く成形時に溶融状態にはない樹脂フィルムは越えられない。したがってベルト本体原料はベルト歯面側にまでは滲み出さないので、ベルト歯部の表面側には露出しない。
【0010】
また、ベルト成形中に流動するベルト本体原料に押圧された帆布と樹脂フィルムは同調して成形金型の溝に添うまで拡張し、ほぼ均一な厚みの帆布層と樹脂フィルム層とが成形される。歯底となる帆布層が均一な厚みとなると、ピッチラインが安定し、芯線(コード)が保護されるため耐久性が向上する。
【0011】
ベルト本体原料は、シート状などのある程度定形的な変形可能なものを成形金型に予め配設した後に加熱を開始してもよく、押し出し機などから流動状態(液状樹脂や溶融状態)として成形金型に供給してもよい。
(2) 流動した前記ベルト本体原料が帆布の目を通り抜けて樹脂フィルムに融着するようにしてもよい。
【0012】
ベルト形成中に前記樹脂フィルムは若干軟化し、帆布の各目を通り抜けたベルト本体原料を樹脂フィルムに直接融着させることにより、冷却後はベルト本体原料と帆布と樹脂フィルムとを相互に強固に固着させることができる。
(3) 前記ベルト本体原料としてポリエーテルエステル樹脂を用い、前記樹脂フィルムとしてポリエーテルエステル樹脂フィルムを用いたこととしてもよい。
【0013】
ベルト本体原料と樹脂フィルムの材質として各種の樹脂やエラストマーを用いることができるが、このようにポリエーテルエステル樹脂を用いると、熱可塑性エラストマーの中で優れた高温特性を有し低温から高温まで高強力、ゴム弾性を示すので使用温度範囲が広く、また振動吸収性、耐油・耐水性、耐薬品性に優れ、さらに低摩擦係数によりプーリとの噛み合い騒音が小さく耐久性がよい。
【0014】
また、ベルト本体原料としてこの他に液体注型樹脂やエラストマーを用いて射出成形機により成形したり、熱可塑性エラストマーを用いて押し出し機により成形したりすることができる。
(4) 前記帆布の最外層には、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール及び/前記フェノールカルボン酸と所定の化合物とを含有する成分で変性したフェノール樹脂層が形成されている。
このような構成にすると、帆布とポリエーテルエステル樹脂から成るベルト本体原料との接着性に優れたものとなる。
【0015】
ここで、帆布にフェノール樹脂層を形成する前にラテックス処理又はRFL処理しておくと、帆布の原糸同士の擦れが低減され帆布の耐摩耗性に有効である。
(5) 芯線を埋設するようにしていると共に、前記芯線の最外層には、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール及び/又はフェノールカルボン酸と所定の化合物とを含有する成分で変性したフェノール樹脂層が形成されている。
このように構成すると、芯線とポリエーテルエステル樹脂から成るベルト本体原料との接着性に優れたものとなる。なお、芯線(ガラス繊維や芳香族ポリアミド繊維)とベルト本体との接着強度を増加させるために、芯線には、必要に応じて例えばレゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)層を形成し、又はレゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス(RFL)層にさらにRFL層との接着性の優れたオーバーコート層を形成してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、この実施形態の歯付きベルトの製造方法は、歯形を有する成形金型1の歯形面に伸縮性を有する帆布2(歯布)を配設し、前記帆布2の成形金型1に接する面側には前記帆布2と同調して伸縮する樹脂フィルム3(目止めとして機能しバリアとなる)を固着している。成形金型1の歯形面に対し帆布2の外側には、芯線4を配している。
【0018】
ところで、前記樹脂フィルム3は、ベルト本体原料5よりも融点が高く設定されている。前記ベルト本体原料5としてポリエーテルエステル樹脂を用い、前記樹脂フィルム3としてポリエーテルエステル樹脂フィルムを用いた。
【0019】
そして、成形金型1により前記樹脂フィルム3の融点以下で流動可能状態のベルト本体原料5を成形するようにしており、成形中に帆布2の織り目6(図3のA参照)がベルト本体原料5の圧力により伸張されて広がった時(図3のB参照)に、ベルト背面側から芯線4間を通り抜けさらに帆布2の目から滲み出してきたベルト本体原料5は、樹脂フィルム3に融着する。なお図中7は、成形用のバッグゴムである。
【0020】
具体的には、前記ポリエーテルエステル樹脂としてハイトレル(東レ・デュポン社製 商標)を用い、次のようにした。
【0021】
歯形を有する成形金型1(成形モールド)の歯形面に伸縮性を有するナイロン(商標)製の帆布2(歯布)を配設し、前記帆布2の成形金型1に接する面側には前記帆布2と同調して伸縮する樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)を固着した。成形金型1の歯形面に対し帆布2の外側には、芯線4(ガラスコード、アラミドコード等)を配した。そして、成形金型1により、前記樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)の融点以下で流動可能状態のベルト本体原料5(ハイトレルシート)を加熱・加圧成形した。
【0022】
次に、この実施形態の歯付きベルトの製造方法を説明する。
【0023】
この歯付きベルトの製造方法では、ベルト本体原料5よりも融点が高く設定された樹脂フィルム3が帆布2の歯面側に固着されており(図2A参照)、成形時に背面側から帆布2の折り目6(図3参照)を通り抜けてきたベルト本体原料5と融着させて(図2B参照)、歯面表面へのベルト本体原料5の進出を防止するようにしている(図2C参照)。
【0024】
すなわち、成形時に樹脂フィルム3の融点以下で流動可能状態にあるベルト本体原料5が帆布2の織り目6(図3参照)を通り抜けても(図2B参照)、帆布2に固着された樹脂フィルム3はベルト本体原料5よりも融点が高く設定されているので、融点が高く成形時に溶融状態にはない樹脂フィルム3を越えられない(図2C参照)。
【0025】
したがってベルト本体原料5はベルト歯面側にまでは滲み出さないので(図1参照)、ベルト歯部の表面側には露出せず、ベルト本体原料5が露出した部分とそうでない部分が混在するアンバランスな状態とはならず、異音の発生を従来よりも抑制することができ、ジャンピング性能や耐久性能を向上させることができるという利点がある。
【0026】
また、製造された歯付きベルトの歯面の帆布2の表面には樹脂フィルム3の層がラミネートされたような構造となるので、前記樹脂フィルム3層によりベルト歯面側からの油や水などの浸入を防止することができ、ベルトの寸法安定性に優れ長寿命なものとなる。
【0027】
ベルト本体原料5として各種の樹脂やエラストマーを用いることができるが、ポリエーテルエステル樹脂を用いると、熱可塑性エラストマーの中で優れた高温特性を有し低温から高温まで高強力、ゴム弾性を示すので使用温度範囲が広く、また振動吸収性、耐油・耐水性、耐薬品性に優れ、さらに低摩擦係数によりプーリとの噛み合い騒音が小さく耐久性がよいという利点がある。
【0028】
なおベルト本体原料5として、この他に液体注型樹脂やエラストマーを用いて射出成形機により成形したり、熱可塑性エラストマーを用いて押し出し機により成形したりすることができる。
【0029】
【実施例】
次に、この発明の構成をより具体的に説明する。
(実施例1)
ナイロン(商標)製の帆布2(歯布)に、ベルト本体原料5(ハイトレルシート)より高い融点を有する樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)を固着(ラミネート)し、所定の寸法に裁断融着した(帆布ジャケットという)。
【0030】
帆布2にはラテックス処理とRFL処理とを施し、その最外層には、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール樹脂層を形成した。なお前記フェノール樹脂層の代わりに、フェノールカルボン酸と所定の化合物とを含有する成分で変性したフェノール樹脂層を形成してもよい。
【0031】
前記帆布ジャケットを成形金型1(成形モールド)の外周の歯形面に、樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)の方が成形金型1のモールド面に接するようにして被せ、その外周に芯線4(ガラスコード、アラミドコード等)を螺旋状に巻き付けた。
【0032】
芯線4の最外層には、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール樹脂層を形成した。また、芯線とベルト本体との接着強度を増加させるために、RFL層を形成し、この後、RFL層と接着性の優れたオーバーコート層を予め形成しておいた。
【0033】
前記芯線4の上から常温のベルト本体原料5(ハイトレルシート)を巻回し、粘着テープで止めた。前記ベルト本体原料5(ハイトレルシート)の上に剥離紙を巻回し粘着テープで止めた後、外型シェルに挿入して加硫釜に入れ加熱加圧してベルトスラブを成形した。加熱温度はベルト本体原料5(ハイトレルシート)の融点と同等以上であって、樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)の融点未満に設定した。加圧力、加熱時間は本体樹脂が流動してベルト歯が完全に成形されるように設定した。
【0034】
つまり、ベルト本体原料5(ハイトレルシート)は加熱していない樹脂シートの形態で、樹脂フィルム3を被覆・固着した帆布2及び芯線4と共に成形金型1に事前に配設され、成形時に室温から成形温度に到達するまで加熱・加圧することによりベルト本体原料5を可塑化し流動可能状態にしてベルト歯を成形するようにしている。
【0035】
すると、帆布2と固着した樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)が成形時に帆布2の伸張に同調して伸張し、ベルト歯が成形された時点で樹脂フィルム3により被覆された帆布2がベルト歯表面を形成するようになった。
【0036】
成形の終了後、前記成形金型1を直ちに水冷し、室温付近まで冷却した。前記成形金型1を外型シェルから抜き取り、脱型機により成形スラブを成形モールドから脱型した。同成形スラブをスラブ研磨機で背面研磨して離型紙を除去し所定のベルト厚みに揃えた後、印刷・裁断して歯付きベルトを得た。
【0037】
得られた歯付きベルトは、ベルト歯部の表面側から順に、樹脂フィルム3層、ベルト体樹脂5が浸透した帆布2層、ベルト本体樹脂5層(芯線4あり)となっている。つまり樹脂フィルム3により、ベルト歯表面にベルト本体原料5が滲み出さないようにしていると共に、樹脂フィルム3により被覆された帆布2をベルト歯表面に形成させるようにしている。
【0038】
この方法は、単純で製造コストが安く予成形設備が不要であるという利点があった。
(実施例2)
ナイロン(商標)製の帆布2(歯布)に、ベルト本体原料5(ハイトレルシート)より高い融点を有する樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)を固着(ラミネート)し、予成形機(図示せず)によりベルト歯表面側がハイトレルフィルム3となるように予成形した(予成形帆布という)。
【0039】
前記予成形帆布を成形金型1(成形モールド)の歯数・歯幅に合わせて裁断・縫合し、成形モールド外周の歯切り面に合わせて装着し、目ズレしないよう仮止めし、その外周に芯線4(ガラスコード、アラミドコード等)を螺旋状に巻き付けた。
【0040】
前記芯線4の上から常温のベルト本体原料5(ハイトレルシート)を巻回し、粘着テープで止めた。前記ベルト本体原料5(ハイトレルシート)の上に剥離紙を巻回し粘着テープで止めた後、外型シェルに挿入して加硫釜に入れ加熱加圧してベルトスラブを成形した。
【0041】
加熱温度はベルト本体原料5(ハイトレルシート)の融点と同等以上であって、ラミネートする樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)の融点未満に設定した。加圧力、加熱時間は本体樹脂が流動してベルト歯が完全に成形されるように設定した。
【0042】
成形の終了後、前記成形金型1を直ちに水冷し、室温付近まで冷却した。前記成形金型1を外型シェルから抜き取り、脱型機により成形スラブを成形モールドから脱型した。同成形スラブをスラブ研磨機で背面研磨して離型紙を除去し所定のベルト厚みに揃えた後、印刷・裁断して歯付きベルトを得た。
【0043】
この方法によると、成形時に帆布2と樹脂フィルム3(ハイトレルフィルム)が殆ど伸張されないので、帆布2の糸密度、樹脂フィルム3のフィルム厚み等のバラツキが小さくまたフィルム厚を薄くすることができ、製品の性能が高レベルで耐久性能がよいという利点があった。
【0044】
【発明の効果】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0045】
ベルト本体原料はベルト歯部の表面側には露出しないので、従来よりも異音の発生を抑制しジャンピング性能や耐久性能を向上させることができる歯付きベルトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の歯付きベルトの製造方法の実施形態で製造された歯付きベルトを説明する要部断面図。
【図2】図1の製造方法を順を追って説明する図。
【図3】帆布の織り目の状態を説明する平面図。
【図4】歯付きベルトを説明する斜視図。
【図5】従来の歯付きベルトの製造方法を説明する図。
【符号の説明】
1 成形金型
2 帆布
3 樹脂フィルム
5 ベルト本体原料
Claims (1)
- 歯形を有する成形金型の歯形面に伸縮性を有する帆布を配設し、前記帆布の成形金型に接する面側には前記帆布と同調して伸縮する樹脂フィルムが固着されていると共に前記樹脂フィルムはベルト本体原料よりも融点が高く設定され、前記成形金型により前記融点以下で流動可能状態のベルト本体原料を形成するようにしており、前記ベルト本体原料としてポリエーテルエステル樹脂を用い、前記樹脂フィルムとしてポリエーテルエステル樹脂フィルムを用い、前記帆布の最外層には、不飽和結合のある側鎖を有するフェノール及び/又はフェノールカルボン酸と所定の化合物とを含有する成分で変性したフェノール樹脂層が形成されていることを特徴とする歯付きベルトの製造方法。
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