JP4936904B2 - 噴射ノズルとそれを用いた噴霧方法 - Google Patents

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本発明は、気体と液体との二流体を混合して噴射又は噴霧するのに有用な噴射ノズル(又は二流体ノズル)と、このノズルによる混合ミストの噴霧又は噴射方法、例えば、熱間圧延や連続鋳造過程の冷却ゾーンでの鋼材及び鋳片の冷却などに有用な噴射ノズルと、混合ミストの噴射方法(又は連続鋳造設備のロール帯での混合ミストによる鋳片の二次冷却方法)に関する。
空気と水とをそれぞれノズルに導入し、連続鋳造される鋳片に対して混合ミストを霧状に噴射又は噴霧することにより鋳片を冷却する方法が知られている。
例えば、特開昭59−159260号公報(特許文献1)には、複数のガイドロールを経て連続的に引き抜かれる鋳片を冷却するためのミスト噴出装置であって、気液混合供給パイプの先端にミスト噴出ノズルを取り付け、このノズルのミスト噴出面に少なくとも2個一組のミスト噴出孔を開口し、各噴出孔はミスト噴出方向が互いに交差する方向に向けて形成された、ミスト噴出装置が開示されている。この文献には、水供給管及び空気供給管と、これらの供給管からの流体が合流する気液混合供給パイプと、この供給パイプの先端部に装着されたミスト噴出ノズルとで構成され、噴出ノズルの滞留室に対して気液混合物を導入するための導入部にオリフィスを形成した装置も記載されている。この装置では、気液混合物がオリフィスを通過した後、滞留室内へ放出解放され、微細なミストを形成できる。しかし、導入部にオリフィスを形成するため、構造が複雑であるとともに、水と空気との混合衝突効率を向上できず、混合ミストの液滴を微細化するには限度がある。
特開2003−93926号公報(特許文献2)には、ノズル本体の先端部に、流路断面が前記ノズル本体の先端部の径方向に長い複数の流体噴射用のオリフィスを前記オリフィスの幅方向に並設した流体噴射ノズルであって、各オリフィスごとに、前記オリフィスの上流側に設けた複数の流路部分から衝突合流室へ流れ込んだ流体が前記オリフィスの幅方向に対応する方向で衝突した後、前記オリフィスから噴射される流体噴射ノズルが開示されている。この噴射ノズルでは、ノズル本体の上流部に軸芯を同じくして形成された内径の大きな第1流路が形成されており、第1流路からの気液混合体は、丸孔状で流路が狭まった複数の第2流路を経て、各衝突混合室に流入し、各衝突混合室で混合衝突した気液混合体は各オリフィス(噴出孔)から噴出される。しかし、この噴射ノズルはオリフィスごとに衝突混合室を隣接して形成する必要があるため、構造が複雑化する。水と空気との混合衝突効率を向上できず、混合ミストの液滴を微細化するには限度がある。
特公平6−61488号公報(特許文献3)には、有底筒状ノズル本体の内底部に、ノズル軸芯と同芯の円周に沿う内周面を形成し、前記ノズル本体の少なくとも底部に、ノズル軸芯方向視で、ノズル軸芯に対して直交する方向に沿う横長のオリフィスを形成した液体噴霧用ノズルであって、前記内周面の上流側に、前記内周面の内径よりも大径の大径周面を形成し、前記内周面と前記大径周面とを段差部分を介して接続させるとともに、前記ノズル軸芯方向視で前記オリフィスに対してその長手方向中間位置で直行する方向の長溝を、前記ノズル軸芯に沿う方向で前記内周面に形成し、さらに前記長溝を、その上流側端部が前記段差部分に開口し、かつ下流側端部が前記オリフィスに近い位置で互いに対抗する状態に設けた液体噴霧用ノズルが開示されている。この文献の噴霧用ノズルでは、段差部を利用して液滴を微細化できるものの、横長のオリフィスに対して直交する方向での噴霧量分布を均一化するのが困難である。
特開2003−136205号公報(特許文献4)には、連続鍛造鋳型下部のロール帯で、ロール間に配置したスプレーノズル(例えば、複数の噴霧口を有するスプレーノズル)で二次冷却する方法において、噴霧水量の最大部の20%以上の水量分布とし、所定の噴霧域が隣接するロール間に内接するようにスプレーノズルを配置し、鋳片の引き抜き方向の水量分布を適正化し、冷却能を効率よく強化する二次冷却方法が提案されている。しかし、鋳造速度が変動すると、変動速度に応じて、冷却水量を追従できず、スプレーノズルからの噴霧状態を維持できない。そのため、連続鋳造での操業変動に対応しつつ二次冷却することが困難である。例えば、定常時に比べて鋳造速度を1/10程度に減速させると、この減速に応じて冷却能も低下させることにより、鋳片の品質(凝固組織制御、割れ防止など)を確保できる。また、スプレーノズルからの噴霧状態を、定常時の一様な水量分布に保ちながら、ミストによる冷却量を低減させて鋳片の冷却能を低下させる必要がある。しかし、通常、噴霧流量分布を所定のパターンに維持しつつ噴霧水量を変化させることは困難である。
特開昭59−159260号公報(特許請求の範囲、図18) 特開2003−93926号公報(特許請求の範囲) 特公平6−61488号公報(特許請求の範囲) 特開2003−136205号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、スリット状吐出口の厚み方向での噴霧分布の均等性を向上できる噴射ノズル(又は二流体ノズル)およびそれを用いた噴霧(又は噴射)方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡単な構造であっても、ミストの噴霧分布を均一化できる噴射ノズル(又は二流体ノズル)及び混合ミストの噴射(又は噴霧)方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、スリット状吐出口の厚み方向での噴霧幅を大きくしつつ、噴霧分布の均等性を向上できる噴射(又は噴霧)方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ノズル本体の先端部のスリット状吐出口の上流側に、流路幅が狭まった第2の流路を介して、第1の流路と第3の流路とが連通したノズルにおいて、第3の流路の下流端から第2の流路の途中部まで、第2の流路の対向する側壁に軸方向に延びかつ上流からの流体が衝突可能な衝突壁を有する切り欠き凹溝を形成するとともに、軸芯を避けて、ノズル本体の先端部に、前記切り欠き凹溝の対向方向に対して直交する方向に複数のスリット状吐出口を形成すると、構造を複雑化することなく、スリット状吐出口の厚み方向における噴霧幅を広げつつ噴霧分布を均一化できることを見いだした。また、複数の吐出口(例えば、少なくとも2個一組の噴出孔)を有するスプレーノズルにおいて、吐出口からの噴出方向を互いに交差する方向に向け、鋳片の表面に到達する前に噴出流を交差させて噴出させ、混合ミストを形成すると、噴霧量分布を維持しつつ噴霧液量(水量など)を変化できることを見いだした。本発明者らはこのような知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明の噴射ノズル(又は噴霧ノズル)は、ノズル本体と、このノズル本体の先端部に形成された複数のスリット状吐出口と、この吐出口の上流側に形成された第1の流路と、この第1の流路の上流側に形成され、かつ第1の流路よりも流路幅が狭まった第2の流路と、この第2の流路の上流側に形成され、かつ第2の流路よりも流路幅が大きな第3の流路とを備えている。このようなノズルは、前記第2の流路と前記第3の流路とを連通する連通流路を備えており、この連通流路の下流端は前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部(衝突壁)を形成している。さらに、前記段部は、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭めている。すなわち、ノズルは、前記第3の流路と第2の流路とを連通するとともに、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭め、かつ前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部が下流端に形成された連通流路を備えている。
このような噴射ノズルでは、第3の流路からの流体が連通流路の段部で衝突するため、流体の撹拌性を向上できるとともに、流路幅の狭い第2の流路からの撹拌された流体を第1の流路で解放できるため、流体をさらに均質化できる。そのため、複数のスリット状吐出口からの噴霧流体の均一性、特にスリット状吐出口の延びる方向に対して直交する方向での噴霧流体の均一性を向上できる。さらに、第1乃至第3の流路に加えて連通流路を形成すればよいため、ノズルの構造を簡素化できる。
前記連通流路は、第2の流路に隣接して前記第3の流路の下流端から前記第2の流路の途中部まで下流方向に延びる切り欠き凹溝(又は切り欠き凹部)で構成してもよい。このような構造のノズルでは、切り欠き凹溝(又は切り欠き凹部)による段部が、流路径の小さな第2の流路に隣接しているため、段部での流体の衝突効率を高めることができる。さらに、流路径の大きな第3の流路の下流端から流路径の小さな前記第2の流路の途中部まで連通流路を形成すればよいため、連通流路の形成が容易であるとともに、ノズルの構造をさらに簡素化できる。
さらに、第2の流路内壁の少なくとも1つの対向部に切り欠き凹溝を形成し、これらの切り欠き凹溝の対向する方向に対して並列に延びる複数のスリット状吐出口を形成してもよい。このような構造のノズルでは、互いに対向する切り欠き凹溝の下流端の段部で流体の衝突効率を高めることができるとともに、切り欠き凹溝の下流端の段部では、衝突した流体が切り欠き凹溝の延びる方向とは異なる方向に拡散する。また、衝突混合により生成した流体を第2の流路よりも流路径の大きな第1の流路内で解放することにより混合流体をさらに微細化および均質化できる。そのため、ノズル先端部の複数のスリット状吐出口から混合流体を均質化しつつ噴射でき、スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向(厚み方向)における噴霧流量を均一化できる。
また、筒状のノズル本体の軸芯の上流方向に、第1の流路、第2の流路及び第3の流路で構成された流路が形成され、連通流路の段部(又は切り欠き凹溝の下流側の端面)が、縦断面形状において、ノズル本体の軸線に対して直交又は下流方向に底部を向けて湾曲した衝突壁を形成していてもよい。
より具体的には、噴射ノズルは、ノズル本体の軸線方向に対して直交する方向に形成された円筒状の第1の流路と、ノズル本体の軸芯方向に形成された円筒状の第2の流路と、この第2の流路と同軸にノズル本体の軸芯方向に形成された円筒状の第3の流路と、この第3の流路の下流端から第2の流路に隣接して軸方向に延び、かつ第2の流路の途中部まで対向して形成されているとともに、上流からの流体が衝突可能な衝突壁を有する切り欠き凹溝(断面半円弧状などの凹溝など)と、これらの切り欠き凹溝の対向する方向に対して、軸芯を避けてノズル本体の先端に、並列に形成された2つのスリット状吐出口とを備えていてもよい。さらに、切り欠き凹溝が、第2の流路の内壁が対向する対向壁に形成され、2つのスリット状吐出口が、前記切り欠き凹溝の対向する方向に対して並列に形成されていてもよい。
本発明の噴射ノズルでは、複数のスリット状吐出口を、ノズル先端の前方で流体が衝突する衝突域に向け、吐出口からの流体をノズル先端の前方の衝突域で衝突させてもよい。さらに、噴射ノズルは、水と空気とが混合した二流体を噴射させる噴射ノズルであってもよい。
本発明は、前記噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴射する噴射方法を含む。さらに、本発明は、ノズル本体と、このノズル本体の先端部に形成されたスリット状吐出口と、この吐出口の上流側に形成された第1の流路と、この第1の流路の上流側に形成され、かつ第1の流路よりも流路幅が狭まった第2の流路と、この第2の流路の上流側に形成され、かつ第2の流路よりも流路幅が大きな第3の流路とを備えたノズルを用い、スリット状吐出口から噴射される噴霧量の均一性を向上する方法も包含する。この方法では、前記第3の流路と第2の流路とを連通するとともに、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭め、かつ前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部が下流端に形成された連通流路を形成し、ノズル本体の先端部に形成された複数のスリット状吐出口から気体と液体との混合流体を噴射することにより、スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向(厚み方向)での噴霧幅を大きくしつつ、噴霧量の均一性を向上させる。
さらに、前記噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴霧する方法において、噴霧量が均一な最小流量と噴霧量が均一な最大流量との比率が、後者/前者=10以上の範囲において、噴霧幅(スリット状吐出口の厚み方向の噴霧幅)を大きくするとともに噴霧量の均一性を向上させることもできる。
本発明の噴射ノズルは種々の用途、例えば、連続鋳造設備の鋳片の両側にロールが配設されたロール帯において、ロール間に配設したスプレーノズルから気液混合ミストを噴出して鋳片を二次冷却する方法に利用できる。この方法では、前記噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口(例えば、少なくとも2個1組の噴出孔)から噴出させるとともに、各スリット状吐出口からの噴出流を鋳片に到達する前に交差させ、生成した混合ミストで鋳片を冷却することができる。すなわち、鋳造速度が変動しても、鋳片に対して所定の噴霧量分布(スリット状吐出口の厚み方向の分布)を維持しつつ、鋳造速度に応じて噴霧液量を調整できる。特に、気体(空気など)を低流量で供給しても、均一な噴霧量分布で鋳片を冷却できる。
本発明では、連通流路の段部で第3の流路からの流体を衝突させ撹拌混合性を向上させて、流路径の小さな第2の流路と流路径の大きな第1の流路を経て複数のスリット状吐出口から混合流体を噴射できるため、スリット状吐出口の厚み方向(スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向)での噴霧幅を大きくしつつ、噴霧分布の均等性を向上できる。また、簡単な構造であっても、ミストの噴霧分布を均一化できる。
以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の噴射ノズル(二流体ノズル)の一例を示す概略斜視図であり、図2は図1に示すノズルのII-II線断面図であり、図3は図1に示すノズルのIII-III線断面図である。図4は図2に示すノズルの横断面図であり、図5は図1に示すノズルの上流端の概略平面図である。なお、以下の例では、液体として水(高圧水などの加圧水)を用い、気体として空気(加圧空気)を利用している。
噴射ノズルは、筒状のノズル本体1と、軸芯を避けてノズル本体の先端に、並列に形成された2つのスリット状吐出口2a,2bと、これらの吐出口の上流側に、前記ノズル本体1の軸線方向に対して直交するとともに、前記スリット状吐出口2a,2bの延びる方向に対して直交する方向に形成された円筒状の第1の流路3と、この第1の流路の上流側で、ノズル本体1の軸芯方向に形成され、かつ流路幅が狭まった円筒状の第2の流路4と、この第2の流路の上流側で、第2の流路4と同軸にノズル本体1の軸芯方向に形成され、かつ第2の流路4よりも流路幅が大きな円筒状の第3の流路5とを備えている。
図3に示されるように、ノズル本体1の先端部の前方域又は衝突混合域で各吐出口からの流体を衝突混合させるため、2つのスリット状吐出口2a,2bは、内方に傾斜し軸芯線の方向(前記前方域又は衝突混合域)に向いている。すなわち、2つのスリット状吐出口2a,2bを形成する外側の内壁は、ほぼノズル本体1の軸方向に沿って形成されており、内側の内壁は内方に傾斜している。そのため、2つのスリット状吐出口2a,2bからの流体はノズル本体1の軸線方向から外方向への噴射が規制され、ノズル本体1の軸芯方向(又は内方)への噴射が許容されており、2つのスリット状吐出口2a,2bからの流体をノズル先端の前方域に向けている。
前記第3の流路5の下流端からは、断面形状が半円弧状の切り欠き凹溝6が、第2の流路4に隣接して(又は第2の流路の内壁を切削して)、第2の流路4の途中部まで軸方向に延びて形成され、連通流路7を形成している。前記切り欠き凹溝6は、第2の流路4の内壁が対向する対向壁に形成され、互いに対向する一対の連通流路7を形成している。さらに、各切り欠き凹溝6の下流端は、上流からの流体が衝突可能な衝突壁(又は段部)8を形成している。なお、前記2つのスリット状吐出口2a,2bは、前記切り欠き凹溝6,6の対向する方向(対向方向)に対して平行に延びて並列に形成されている。すなわち、スリット状吐出口2a,2bは、切り欠き凹溝6,6が対向する方向と平行又は並列に延びている。
噴射ノズルは、気体と液体との混合流体(二流体)を噴霧又は噴射するのに有用である。すなわち、前記噴射ノズルは、通常、気体供給路と液体供給路とを備えた供給ユニット(供給管など)に気密および液密に装着される。この供給ユニットは、気体と液体とを衝突混合して噴射ノズルに供給するため、混合室を備えていてもよい。
このような噴射ノズルでは、供給ユニットからの気液混合流体は、第3の流路5から第2の流路4に流通する過程で、流路径の小さな第2の流路4において、連通流路7(又は切り欠き凹溝6)の下流端の衝突壁(又は段部)8で衝突するため、攪乱性又は撹拌性(又は衝突混合性)を向上でき、混合流体(混合ミスト)の液滴を微細化できる。さらに、衝突壁8で撹拌混合された混合流体は、流路径の小さな第2の流路4から流路径の大きな第1の流路3に導入されて解放されるため、さらに混合流体(混合ミスト)の混合性を向上できるとともに、液滴を微細化及び均質化できる。そして、第1の流路3の延びる方向とスリット状吐出口2a,2bの延びる方向とが直交するとともに、2つのスリット状吐出口2a,2bからの混合流体(混合ミスト)がノズル先端部の前方域で交差して合流又は衝突するため、さらに混合ミストを均一化及び均質化しつつ、スリット状吐出口2a,2bの延びる方向に対して直交する方向での噴霧幅を大きくしつつ、噴霧液量の分布を均一化でき、均一な濃度分布で噴霧できる。また、第1乃至第3の流路3,4,5に加えて切り欠き凹溝6(又は連通流路7)を形成すればよいため、ノズルの構造を簡素化できる。
なお、本発明において、ノズル本体の形状は筒状に特に制限されず、種々の形状のノズル本体が利用できる。また、必要であれば、ノズル本体には気体供給口及び/又は液体供給口を形成してもよい。さらに、ノズル本体の上流側には、気体供給路及び/又は液体供給路を形成してもよい。
ノズル本体の先端部には、複数のスリット状吐出口を形成すればよく、複数のスリット状吐出口は、交差して延びていてもよいが、通常、平行又はほぼ平行に形成されている。また、複数のスリット状吐出口は、前記第2の流路の軸方向の投影域と少なくとも部分的に重複していてもよいが、通常、前記投影域から外れた領域に形成されている場合が多い。さらに、複数のスリット状吐出口のうち少なくとも1つの吐出口は、ノズル本体の軸芯を通過してもよいが、複数のスリット状吐出口は、通常、軸芯を避けてノズル本体の先端に形成されている場合が多い。
さらに、切り欠き凹溝(又は連通流路)が対向して形成されている場合、複数のスリット状吐出口の延びる方向(スリット方向)は、切り欠き凹溝(又は連通流路)の対向する方向(対向方向)に対して交差する方向(例えば、直交する方向)であってもよいが、通常、切り欠き凹溝(又は連通流路)の対向方向に対して平行に並列して複数のスリット状吐出口を形成する場合が多い。
本発明では、スリット状吐出口毎に衝突混合室を形成する必要がないため、スリット状吐出口の数は特に制限されず、例えば、2〜5程度であってもよいが、通常、2〜4程度である場合が多い。
複数のスリット状吐出口からの噴霧方向は、ノズルの用途に応じて選択でき、例えば、ノズル本体の軸線方向であってもよく、ノズル本体の軸線方向に対して広がる方向(外方向)や狭まる方向(内方向)であってもよい。複数のスリット状吐出口のうち軸芯を外れる吐出口は、通常、流体(混合流体又は混合ミスト)をノズル先端の前方域(衝突域)で衝突させるため、内方に傾斜し軸芯線の方向(ノズル先端の前方域)に向いている場合が多い。スリット状吐出口の傾斜角度は軸芯から2〜70°(好ましくは5〜60°、さらに好ましくは7〜45°、特に10〜30°)程度であってもよい。
前記吐出口の上流側に形成された第1の流路の形状は、円筒状に限らず、球体状、楕円体状、角柱状などであってもよい。また、第1の流路は、ノズル本体の軸線方向に沿って形成してもよく、ノズル本体の軸線方向に対して直交する方向に形成してもよい。加工性の点から、ノズル本体の軸線方向に対して直交する方向に延びる第1の流路(特に円筒状の第1の流路)を形成する場合が多い。
第2の流路の形状は、円筒状に限らず、楕円柱状、角柱状、第1の流路に向かって流路が狭まる円錐状や角錐状などであってもよい。また、第2の流路は、第1の流路に比べて流路幅が狭まっていればよく、オリフィス状であってもよい。第2の流路は、通常、ノズル本体の軸線方向、特にノズル本体の軸芯方向に形成する場合が多い。
第3の流路の形状は、円筒状に限らず、楕円柱状、角柱状、第2の流路に向かって流路が狭まる円錐状や角錐状などであってもよい。第3の流路は、第2の流路よりも流路幅が大きく、第3の流路の流路径を100としたとき、第2の流路の流路径は、例えば、5〜85程度の範囲から選択してもよく、通常、10〜80、好ましくは20〜75、さらに好ましくは30〜70程度であってもよい。さらに、第3の流路は、ノズル本体の軸線方向に形成する場合が多い。例えば、第3の流路は、第2の流路と同軸、特にノズル本体の軸芯方向に形成する場合が多い。
なお、ノズル本体には、第1の流路、第2の流路及び第3の流路で構成された流路が軸芯を同じくして形成してもよく、第1の流路をノズル本体の軸芯に対して直交する方向に形成し、第2の流路及び第3の流路をノズル本体の軸芯に沿って形成してもよい。
本発明の噴射ノズルにおいて、前記第3の流路と第2の流路とを連通する連通流路は、その下流端に、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭め、かつ前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部(又は衝突段部、衝突壁)が形成されていればよい。このような段部(又は衝突段部、衝突壁)を形成することにより、段部に衝突して撹拌混合された流体は流路幅の狭い第2の流路でさらに混合撹拌され、第1の流路で解放(特に急激に解放)されて均質化される。そのため、噴射ノズルには、少なくとも1つの連通流路を形成すればよく、通常、周方向の複数箇所(例えば、少なくとも1つの対向する箇所)で連通流路を形成する場合が多く、例えば、周方向に等間隔毎に形成された3〜6程度の部位で連通流路を形成してもよい。
連通流路の段部(衝突壁)は、前記のように半径方向に第3の流路を狭めればよく、通常、周方向の複数箇所(例えば、少なくとも1つの対向する箇所)で第3の流路を半径方向に狭める場合が多く、例えば、周方向に等間隔毎に形成された3〜6程度の部位で第3の流路を半径方向に狭めてもよい。
前記連通流路は、前記のように、第2の流路に隣接している(又は第2の流路内壁を軸方向に切削している)場合が多く、前記第3の流路の下流端から前記第2の流路の途中部まで下流方向に延びる切り欠き凹溝(切り欠き凹部)で構成してもよい。この切り欠き凹溝の下流端(切り欠き凹溝の下流側の端面)は、通常、前記段部(衝突壁)を形成する。切り欠き凹溝(又は切り欠き凹部)の断面形状は、半円弧状、U字状、コ字状、V字状などであってもよい。
さらに、連通流路は、上流方向から下流方向に向かって多段に形成してもよい。図6は本発明の噴射ノズルの他の例を示す概略縦断面図である。なお、前記図1に示す例の噴射ノズルと同一又は共通の要素には同一の符号を付して説明する。この例では、第3の流路5の下流端のうち互いに対向する部位からは、断面形状が半円弧状の第1の切り欠き凹溝16aが、第2の流路4に隣接して又は沿って(又は第2の流路の内壁を切削して)、第2の流路4の途中部まで軸方向に延びて形成され、第2の流路4の内壁の対向する対向壁において第1の連通流路17aを形成している。前記第1の切り欠き凹溝16aは、互いに対向する一対の第1の連通流路17aを形成する。さらに、各第1の切り欠き凹溝16aの下流端は、上流からの流体が衝突可能な第1の衝突壁(又は段部)18aを形成している。
また、第1の連通流路17aの下流端からは、断面形状が半円弧状の第2の切り欠き凹溝16bが、第2の流路4に沿って(又は第2の流路の内壁を切削して)、第2の流路4の途中部まで軸方向に延びて形成され、第2の連通流路17bを形成している。この第2の連通流路17bの下流端は、上流からの流体が衝突可能な第2の衝突壁(又は段部)18bを形成している。すなわち、第1の段部18aと第2の段部18bとで下流側にいくにつれて流路径が狭まる階段状の段部を形成している。
なお、前記2つのスリット状吐出口2a,2bは、前記切り欠き凹溝16a,16aの対向する方向(対向方向)に対して並列に形成されている。すなわち、スリット状吐出口は、切り欠き凹溝16a,16aが対向する方向と平行又は並列に延びている。
多段に連通流路又は段部を形成する場合、段数は特に制限されず、例えば、2〜5程度であってもよい。また、噴射ノズルには、半径方向の深さの異なる連通流路(又は切り欠き段部)を周方向の異なる部位に形成してもよい。例えば、半径方向に深さが大きな第1の連通流路(又は切り欠き凹溝)と半径方向に深さが小さな第2の連通流路(又は切り欠き凹溝)とを、第3の流路の下流端から第2の流路内壁において、対向させて又は周方向に隣接させて形成してもよい。
連通流路の段部(衝突壁)の縦断面形状は特に制限されず、ノズル本体の軸線に対して直交して衝突壁を形成してもよく、下流方向に底部を向けて湾曲(例えば、U字状)して衝突壁を形成してもよく、屈曲(例えば、コ字状又はV字状)して衝突壁を形成してもよい。図7は本発明の噴射ノズルのさらに他の例を示す概略断面図である。この例において、連通流路27(切り欠き凹溝26)の段部(衝突壁)28は、撹拌性を向上させるため、縦断面形状において、ノズル本体の軸線に対して下流方向に底部を向けてU字状に湾曲している。
さらに、連通流路の段部(衝突壁)は、前記切り欠き凹溝の下流端に限らず、第2の流路の上流端に装着された装着部材の切り欠き部と第2の流路の上流端面とで形成してもよい。この場合でも、装着部材の非切り欠き部により第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭めることができる。図8は本発明の別の例の噴射ノズルを示す概略図であり、(A)は概略断面図、(B)はデフレクタの概略斜視図、(C)は概略平面図である。
この例では、撹拌性を向上させるため、装着部材としてデフレクタ31が使用されている。すなわち、このデフレクタ31は、第3の流路を横断する平板状の軸部の両端部に形成され、湾曲した周面を有する遮蔽部31aを備えており、両端の遮蔽部を連結する軸部の両側部は、流体が第2の流路4へ流通可能な切り欠き部31bを形成している。なお、デフレクタ31は、前記湾曲した外周面を有する円盤状部材の対向する両側部を切り欠いて切り欠き部31bを形成することにより調製できる。このようなデフレクタ31は、前記切り欠き部31bが第2の流路4に臨んだ状態で、第2の流路4の上流端に装着されている。すなわち、デフレクタ31の前記軸部及び遮蔽部31aは第3の流路5を半径方向に狭めており、前記切り欠き部31bは第3の流路5と第2の流路4との連通流路を形成するとともに、第2の流路4の上流端面は段部(衝突壁)を形成している。
このようなデフレクタ31を備えた噴射ノズルでは、第3の流路5からの流体(例えば、気液混合流体)は、デフレクタ31と衝突するとともに、デフレクタ31により分流されて切り欠き部31bを通じて第2の流路4に導入される。そのため、流体(例えば、気液混合流体)の混合撹拌性を大きく向上でき、スリット状吐出口からの噴射流体を均質化しつつ、スリット状吐出口の延びる方向に対して直交する厚み方向での噴霧流量の均一性を高めることができる。さらに、スリット状吐出口の延びる方向に対して直交する厚み方向において噴霧幅を大きくしつつ、噴霧流量を均一化できる。
なお、デフレクタを装着する場合、必ずしも前記切り欠き凹溝を形成する必要はないが、前記切り欠き凹溝を形成するとともに、デフレクタを第3の流路(第2の流路の上流端)に装着してもよい。また、必要であれば、デフレクタは第2の流路に装着してもよい。
デフレクタの形状は、流体の分流と撹拌とを向上できる構造であればよく、第3の流路5と第2の流路4との連通流路を形成するとともに、第3の流路を半径方向に狭めて段部を形成できればよく、例えば、1又は複数の切り欠き部(例えば、中心部から放射状に延びる遮蔽部と、これらの遮蔽部間に形成された切り欠き部)を形成してもよい。
本発明の噴射ノズルは、前記厚み方向での噴霧量を均一化できるため、種々の流体(水などの気体、空気などの気体)を噴射するのに有用であり、水などの液体を単独で噴射させてもよいが、液体(特に水)と気体(特に空気)とを混合した二流体を噴射するのに有用である。そのため、本発明では、噴射ノズルに流体を供給し、複数のスリット状吐出口から噴射する。特に、噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴射する。
本発明において、気体の圧力は、通常、0.01〜1MPa(例えば、0.02〜0.8MPa)、好ましくは0.03〜0.7MPa程度である。液体は、通常、加圧液体(又は高圧液)として供給され、圧力は、0.01〜2MPa、好ましくは0.02〜1.5MPa、さらに好ましくは0.03〜1MPa程度であってもよい。気体と液体との流量比(体積割合)は、例えば、気体/液体(気液体積比)=3〜500、好ましくは5〜400、さらに好ましくは7〜300(例えば、10〜250)程度であってもよい。
本発明は、単純な構造であっても、微粒子化された混合ミストを生成できる。ミスト粒子の粒子径は、気体及び液体の流量などにより変動するが、例えば、平均粒子径(平均液滴径)10〜500μm、好ましくは15〜400μm(例えば、20〜300μm)、さらに好ましくは50〜250μm(例えば、60〜200μm)程度であってもよい。
なお、混合ミストは、ノズルから下方に噴射又は噴霧してもよく、被噴霧対象の位置に応じて、斜め方向や上方へ噴射又は噴霧してもよい。
本発明は、前記噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口(少なくとも2個1組の吐出口など)から噴霧する方法も包含する。この方法では、噴霧量が均一な最小流量と噴霧量が均一な最大流量との比率が、後者/前者=10以上の範囲において、噴霧幅を大きくするとともに噴霧量の均一性を向上できる。噴霧量が均一な前記最小流量と最大流量との前記比率は、例えば、10〜75、好ましくは15〜60、さらに好ましくは20〜50(例えば、20〜30)程度であり、通常、15〜25程度である。なお、「噴霧量が均一」とは、スリット状吐出口が延出する方向に対して直交する厚み方向での噴霧量分布の両側部(最大の液体噴霧量の20%未満、好ましくは25%未満、さらに好ましくは30%未満の領域)を除く噴霧領域(最大の液体噴霧量の20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上の領域)において最大の液体噴霧量(液体量密度又は水量密度)を100としたとき、液体噴霧量が65〜100(例えば、70〜100、好ましくは75〜100、さらに好ましくは80〜100)であることを意味する。
この方法では、噴霧量が均一な最小流量から最大流量の範囲が広いため、均一に噴霧可能な流量範囲が拡がり、安定して均一な分布で混合流体を噴霧でき、噴霧量分布での噴霧液量の均一性を向上できる。そのため、噴霧量分布を維持又は噴霧液量の変動を抑制しつつ、噴霧液量を調整できる。特に、被処理体(鋳片など)に到達する前に各スリット状吐出口からの噴出流を交差させ、生成した混合ミストで被処理体を処理すると、液体流量に対する気体流量の割合を低減しても、噴霧量分布を維持しつつ、混合流体を噴霧できる。このような本発明の方法は、工業的に極めて有利であり、例えば、連続鋳造設備の鋳片の両側にロールが配設されたロール帯において、鋳片を二次冷却する方法として有効に利用できる。
図9は本発明の噴射ノズルを備えた連続鋳造設備を示す概略図、図10は噴射ノズルの配置状態を示す概略図、図11は噴霧量分布の測定方法を説明するための概略図である。
連続鋳造設備において、鋳型41からのスラブ及び鋳片45は、鋳片45の両側にロール46が配設されたロール帯(鋳型41の下流のロール帯)42において冷却される。すなわち、鋳片45の引き抜き方向には、複数のロール46が鋳片45の両側に所定間隔を置いて配置され、鋳片45の引き抜き方向に隣接する一対のロール46間には、スプレーノズル(前記噴射ノズル)43が配置されている。このスプレーノズル(前記噴射ノズル)43は、鋳片45の引き抜き方向に対して、スリット状吐出口の延出方向を交差又は直交させて配設されている。そして、前記ロール帯において、ロール46間に配設したスプレーノズル(前記噴射ノズル)43から気液混合ミスト44を噴出して鋳片45を二次冷却する。なお、図9中、符号Cは切断機である。
このような方法において、前記噴射ノズル43に気体(又は空気)と液体(又は水)とを供給し、ノズル43内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴出させ、各スリット状吐出口からの噴出流を鋳片45に到達する前に交差させる。複数のスリット状吐出口からの噴出流(混合流体)をノズル43の前方域で交差させると、噴霧幅(スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する厚み方向の噴霧域)を拡げることができるとともに、噴霧量分布での噴霧量の均一性を向上できる。特に、噴霧量(噴霧液量)が変動しても、所定の噴霧量分布を維持できる。換言すれば、噴霧流量分布を所定のパターンに維持しつつ噴霧液量を変化させることができる。そのため、連続鋳造設備において鋳造速度が変動しても、鋳造速度に対応させて、噴霧量分布を維持しながら噴霧液量を追従させることができ、噴出流の交差により生成した混合ミスト44で鋳片を均一に冷却できる。また、鋳造速度が変動しても、鋳片の品質(凝固組織制御、割れ防止など)を確保でき、安定した鋳片を製造できる。
なお、図10に示されるように、噴出流の交差角度(吐出口が臨む方向又は吐出口の傾斜角度に沿った延長線により形成される交差部の角度)θは、10〜60°程度の範囲から選択でき、通常、15〜50°、好ましくは20〜45°、さらに好ましくは25〜40°(例えば、25〜35°)程度である。
さらに、前記噴射ノズルでは、気体(例えば、空気)を低流量で供給しても、均一な噴霧量分布で気液混合ミストを噴霧できる。例えば、従来のノズルでは、気体として空気、液体として水を用いたとき、常温常圧での気水体積比(気体/液体の体積比)が小さいと、最大の液体噴霧量(液体量密度又は水量密度)を100としたとき、液体噴霧量が50〜60程度又はそれ以下に低下する領域が生成し、噴霧量分布が不均一である。特に、気体供給量が少なくなると、噴霧量分布が著しく不均一化する。これに対して、本発明の噴射ノズルを用いると、常温常圧での気水体積比(気体/液体の体積比)が5〜400(例えば、10〜350)程度であっても、噴霧量分布を均一化できる。換言すれば、水の供給量に対する空気の供給量(気水体積比)が1〜80倍(例えば、5〜50倍)程度変動しても、噴霧量分布を均一化できる。特に、水の供給量に対する空気の供給量(気水体積比)が7〜150(例えば、10〜100、特に20〜50)程度であっても、均一な噴霧量分布で混合ミストを噴霧できる。
なお、噴霧量分布は慣用の方法、例えば、図11に示す測定方法で測定できる。すなわち、噴霧量分布は、噴霧域からの高さhの位置に噴射ノズル43を配設し、このノズルから混合ミストを噴射し、ミスト中の液体(特に水)を、所定の方向(この例では、スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する厚み方向)に互いに隣接して配設された仕切り板48で形成される各水槽47で受け、各水槽47の受液量(特に受水量)を測定することにより求めることができる。そして、噴霧量分布において最大液量を100%としたとき、最大液量の20%の液量となる始点をそれぞれA,Bとし、このA,B間の液量分布により噴霧状態の均一性を評価できる。
本発明の噴射ノズルは、種々の用途、例えば、被冷却体(連続鋳造装置の二次冷却帯での鋼材、熱間圧延の鋼材などの加熱体)の冷却、被処理体の洗浄などに利用できる。特に、連続鋳造装置の二次冷却帯において並設されたロール間に配設し、鋳片の全面に混合ミスト(冷却ミスト)を噴射して均一に冷却するのに適している。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
比較例1
特開2003−93926号公報の図15及び図16に記載のノズルを用い、空気量を12.0m/h(N)とし、水量0.52L/分(気水体積比=384.6)、5.91L/分(気水体積比=33.8)又は11.30L/分(気水体積比=17.7)、高さ220mmの条件で気液ミストを噴霧した。スリット状吐出口の厚み方向(スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向)において10mm間隔で噴霧水量を測定し、噴霧量分布(水量密度(%))のグラフを作成した。結果を図12に示す。なお、図12(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。
なお、ノズルは、ノズル本体の上流部に形成された第1流路(内径14mmφ×長さ10mm)と、底部が丸孔状の第2の流路(内径10mmφ×深さ15mm)と、ノズル本体の先端部に軸芯を外れて径方向に形成され、軸芯からそれぞれの角度10°で外方向に向いた2つのオリフィスとを備えている。
比較例2
特公平6−61488号公報の第1図に記載のノズルを用い、比較例1と同様の条件で気液ミストを噴霧し、スリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布(水量密度(%))を測定した。結果を図13に示す。なお、図13(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。
なお、前記ノズルは、ノズル本体の上流部に形成された第1流路(内径18mmφ×長さ20mm)と、底部が丸孔状の第2の流路(内径9mmφ×長さ15mm)と、第2の流路の上流端の段差部から流路の軸線方向に平行に延びる断面湾曲状の長溝(湾曲面に沿った仮想円の内径5mmφ×長さ10mm)と、ノズル本体の先端部においてほぼ軸芯上を横断する1つのスリット状オリフィスとを備えている。長溝は、スリット状オリフィスが延びる方向に対して直交する段差部から互いに対向して下流方向に延びている。
実施例1
図1〜図5に示すノズルを用い、比較例1と同様の条件で気液ミストを噴霧し、スリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布(水量密度(%))を測定した。結果を図14に示す。なお、図14(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。
なお、実施例1のノズルにおいて、第3の流路は内径13mmφ×長さ8mm、第2の流路は内径8mmφ×長さ8mm、軸方向に対して直交する方向に延びる第1の流路は内径10mmφ×長さ20mmである。また、2つのスリット状吐出口は、第1の流路が延びる方向に対して直交する方向に並列に延び、かつノズルの中心軸の方向(内方向)に向かって傾斜して開口している。
図12及び図13と図14との対比から明らかなように、実施例1のノズルを用いると、厚み方向(スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向)の噴霧幅を大きくできるとともに、噴霧量を均一化できる。
実施例2
空気量を8.0m/h(N)、水量を1L/分、10L/分又は20L/分(気水体積比=約7〜133)とする以外、実施例1と同様にして気液ミストを噴霧し、スリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布(水量密度(%))を測定したところ、実施例1と同様に、厚み方向(スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向)の噴霧幅を大きくできるとともに、噴霧量を均一化できた。
図1は本発明の噴射ノズル(二流体ノズル)の一例を示す概略斜視図である。 図2は図1に示すノズルのII-II線断面図である。 図3は図1に示すノズルのIII-III線断面図である。 図4は図2に示すノズルのIV-IV線断面図である。 図5は図1に示すノズルの上流端の概略平面図である。 図6は本発明の噴射ノズルの他の例を示す概略縦断面図である。 図7は本発明の噴射ノズルのさらに他の例を示す概略断面図である。 図8は本発明の別の例の噴射ノズルを示す概略図であり、(A)は概略断面図、(B)はデフレクタの概略斜視図、(C)は概略平面図である。 図9は本発明の噴射ノズルを備えた連続鋳造設備を示す概略図である。 図10は噴射ノズルの配置状態を示す概略図である。 図11は噴霧量分布の測定方法を説明するための概略図である。 図12は比較例1におけるスリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布を示すグラフであり、図12(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。 図13は比較例2におけるスリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布を示すグラフであり、図13(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。 図14は実施例1におけるスリット状吐出口の厚み方向の噴霧量分布を示すグラフであり、図14(A)は気水体積比=384.6でのグラフ、(B)は気水体積比=33.8でのグラフ、(C)は気水体積比=17.7でのグラフである。
符号の説明
1…ノズル本体
2a,2b…スリット状吐出口
3…第1の流路
4…第2の流路
5…第3の流路
6,16a,16b,26…切り欠き凹溝
7,17a,17b,27…連通流路
8,18a,18b,28…段部(衝突壁)
31…デフレクタ
31b…切り欠き部

Claims (13)

  1. ノズル本体と、このノズル本体の先端部に形成された複数のスリット状吐出口と、この吐出口の上流側に形成された第1の流路と、この第1の流路の上流側に形成され、かつ第1の流路よりも流路幅が狭まった第2の流路と、この第2の流路の上流側に形成され、かつ第2の流路よりも流路幅が大きな第3の流路とを備えたノズルであって、前記第3の流路と第2の流路とを連通するとともに、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭め、かつ前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部が下流端に形成された連通流路を備えている噴射ノズル。
  2. 連通流路が、第2の流路に隣接して前記第3の流路の下流端から前記第2の流路の途中部まで下流方向に延びる切り欠き凹溝で構成されている請求項1記載の噴射ノズル。
  3. 第2の流路内壁の少なくとも1つの対向部に切り欠き凹溝が形成されており、これらの切り欠き凹溝の対向する方向に対して複数のスリット状吐出口が並列に延びて形成されている請求項2記載の噴射ノズル。
  4. 筒状のノズル本体の軸芯の上流方向に、第1の流路、第2の流路及び第3の流路で構成された流路が形成され、連通流路の段部が、縦断面形状において、ノズル本体の軸線に対して直交又は下流方向に底部を向けて湾曲した衝突壁を形成している請求項1記載の噴射ノズル。
  5. ノズル本体の軸線方向に対して直交する方向に形成された円筒状の第1の流路と、ノズル本体の軸芯方向に形成された円筒状の第2の流路と、この第2の流路と同軸にノズル本体の軸芯方向に形成された円筒状の第3の流路と、この第3の流路の下流端から第2の流路に隣接して軸方向に延び、かつ第2の流路の途中部まで対向して形成されているとともに、上流からの流体が衝突可能な衝突壁を有する切り欠き凹溝と、これらの切り欠き凹溝の対向する方向に対して、軸芯を避けてノズル本体の先端に、並列に形成された2つのスリット状吐出口とを備えている請求項1記載の噴射ノズル。
  6. 切り欠き凹溝が、第2の流路の内壁が対向する対向壁に形成され、2つのスリット状吐出口が、前記切り欠き凹溝の対向する方向に対して並列に形成されている請求項5記載の噴射ノズル。
  7. 複数のスリット状吐出口が、流体をノズル先端の前方域で衝突させる方向に向いている請求項1記載の噴射ノズル。
  8. 水と空気とが混合した二流体を噴射させる請求項1記載の噴射ノズル。
  9. 請求項1又は請求項7記載の噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴射する噴射方法。
  10. ノズル本体と、このノズル本体の先端部に形成されたスリット状吐出口と、この吐出口の上流側に形成された第1の流路と、この第1の流路の上流側に形成され、かつ第1の流路よりも流路幅が狭まった第2の流路と、この第2の流路の上流側に形成され、かつ第2の流路よりも流路幅が大きな第3の流路とを備えたノズルを用い、スリット状吐出口から噴射される噴霧量の均一性を向上する方法であって、前記第3の流路と第2の流路とを連通するとともに、前記第3の流路を周方向の少なくとも一箇所で半径方向に狭め、かつ前記第3の流路からの流体が衝突可能な段部が下流端に形成された連通流路を形成し、ノズル本体の先端部に形成された複数のスリット状吐出口から気体と液体との混合流体を噴射し、スリット状吐出口が延びる方向に対して直交する方向での噴霧幅を大きくし、噴霧量の均一性を向上させる方法。
  11. 請求項1又は請求項7記載の噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴霧する方法であって、噴霧量が均一な最小流量と噴霧量が均一な最大流量との比率が、後者/前者=10以上の範囲において、噴霧幅を大きくするとともに噴霧量の均一性を向上させる方法。
  12. 連続鋳造設備の鋳片の両側にロールが配設されたロール帯において、ロール間に配設したスプレーノズルから気液混合ミストを噴出して鋳片を二次冷却する方法において、請求項1又は請求項7記載の噴射ノズルに気体と液体とを供給し、ノズル内で混合された混合流体を複数のスリット状吐出口から噴出させるとともに、各スリット状吐出口からの噴出流を鋳片に到達する前に交差させ、生成した混合ミストで鋳片を冷却する方法。
  13. 気水体積比(気体/液体の体積比)5〜400で噴霧し、鋳片を冷却する請求項12記載の方法。
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