しかしながら、特許文献1に開示された煙突解体方法においては、耐火煉瓦壁の内面に付着した有害物質(ダイオキシンなど)を煙道内洗浄装置によって事前にある程度除去することができるが、特にアスベストを含む断熱材を使用して断熱層が形成されているような場合、すなわち断熱層の内面側のみならず断熱層の内部にも有害物質が存在する場合には、煙道内洗浄装置によって事前に有害物質を除去することができないため、やはり有害物質を含む粉塵が周囲環境に飛散するおそれがある。
また、煙突の下部の煙道口に集塵機が配設されているため、特に大型煙突を解体するような場合には、集塵機から遠方に位置する煙突の頂部側の負圧状態を好適に維持することが難しく、且つ、ワイヤソーを用いて切断するために切断部の開口幅が小さくなり、切断時に外部と煙道が連通するとともに煙道内に流入する外部空気の流入量が少なくなって、煙道内に飛散した粉塵を確実に集塵機で回収することができないおそれがあった。このため、煙突の内部に有害物質を含んだ粉塵が浮遊し、切り出した煙突ブロック片を煙突から分離するように吊り上げるとともに、外部にこの浮遊した粉塵が飛散してしまうおそれがあった。
さらに、このような粉塵の飛散を防止するために、仮囲いを設置するようにしているため、特に大型煙突を解体するような場合には、やはり煙突全体を覆うように仮囲いを設置することが困難となり、また、強風等に対する別途対策を要することになって、信頼性や安全性を確保できないおそれがある上、解体工事の高コスト化や工期の長期化を招くという問題があった。
また、特許文献1に開示された煙突解体方法においては、切断した煙突ブロック片を作業室にてバックホウを用いて細かく分解するものとしているが、例えば鋼製の外筒を備えた煙突ブロック片を解体する場合には、この外筒と耐火煉瓦(断熱層)とを好適に分離することができず、また、鉄筋コンクリート製の外筒を備えている場合においても、有害物質を含んだ耐火煉瓦を、有害物質を含んでいない外筒と区分しながらバックホウで細かく分解することは困難であり、耐火煉瓦と鉄筋コンクリートが混在してしまい、管理型廃棄物処分場に処分する廃棄物量の増大を招くという問題があった。
一方、特許文献2に開示された煙突解体方法においても、煙突内の空気を吸引するポンプが煙突の切断部に対し下方に設けられているため、また、ワイヤソーを用いて切断するため、特許文献1に開示された煙突解体方法と同様、切断時に煙道内に飛散した粉塵を確実に回収できないおそれがあった。
また、切断・分離した煙突(煙突ブロック片)を解体する手法についての言及がなく、例えば順次複数の煙突ブロック片を、地上にてそれぞれプラスチックシートなどで覆って隔離して解体することが考えられるが、このような場合には、プラスチックシートによる隔離作業、仮設足場などの設置作業、解体後の有害物質を含んだガラの除去・梱包作業、プラスチックシートの撤去前の内部空気測定作業などを煙突ブロック片毎に行うことになり、工程の増加ひいてはコストの増大を招くという問題があった。
本発明は、上記事情を鑑み、確実に粉塵の飛散を防止して効率的に煙突を解体することが可能な煙突解体方法及びこれに用いる集塵ハット並びに煙突ブロック片処理ヤードを提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の煙突解体方法は、外筒の径方向内側に断熱層が配設されてなる煙突を解体する方法であって、前記煙突の煙道を形成する内部を密閉するように集塵ハットを前記煙突の頂部に設置する集塵ハット設置工程と、前記集塵ハットに設けられた内部用集塵機を駆動して前記煙突の内部空気を吸引するとともに前記煙突の内部を負圧状態にする内部空気吸引工程と、前記頂部の下方に設定され前記煙突を輪切り状に切断する切断線に沿って、前記外筒にスリット状の開口部を形成し、前記断熱層を前記煙突の外部に露出させるスリット形成工程と、前記煙突の外部から、前記開口部を通じて粉塵飛散防止剤を供給しつつ前記断熱層を前記開口部に沿ってはつり取り、前記頂部側の断熱層を分離させる断熱層分離工程と、前記開口部を環状に繋げるように前記外筒を前記切断線に沿って切断し、前記頂部側の外筒を分離させる外筒分離工程とを備え、前記集塵ハット設置工程と前記内部空気吸引工程と前記スリット形成工程と前記断熱層分離工程と前記外筒分離工程を繰り返し行って前記煙突を解体することを特徴とする。
この発明においては、煙突を輪切り状に切断する切断線に沿ってスリット状の開口部を外筒に形成することで、露出した断熱層を煙突の内部に落とすようにはつり取ることができ、且つ粉塵飛散防止剤を供給しつつはつり取ることで、煙突の外部に粉塵を飛散させることなく頂部側の断熱層を分離することができる。
また、このとき、集塵ハットで煙突の内部が密閉され、且つこの集塵ハットに設けられた内部用集塵機によって煙突の頂部側の内部が確実に負圧状態とされているため、断熱層をはつり取る際に、煙突の外部と内部が連通するとともに外部空気が粉塵及び粉塵飛散防止剤とともに確実に内部に流入することになり、粉塵の外部への飛散を確実に防止することができる。
さらに、外筒に形成した開口部を通じて断熱層をはつり取ることになるため、従来のワイヤソーを用いて切断するものと比較し、大きく開口させながら頂部側の断熱層を分離することができ、これにより、多量の外部空気を煙突の内部に流入させることが可能になるため、この点からも確実に粉塵の外部への飛散を防止することができる。
また、開口部を環状に繋げるように外筒を切断することによって、すなわち開口部の形成時に切断線上に残され、スリット状の開口部を保持している外筒の残部を切断することによって、頂部側の外筒を完全に分離することができ、頂部側の断熱層と頂部側の外筒からなる煙突ブロック片を分離することができる。そして、このような煙突ブロック片の分離作業を順次行うことで、確実に粉塵の飛散を防止しつつ煙突を効率的に解体してゆくことが可能になる。
また、本発明の煙突解体方法においては、前記集塵ハットに前記煙突の外部空気を吸引する外部用集塵機が設けられ、前記断熱層分離工程で前記断熱層を前記開口部に沿ってはつり取る際に、前記外部用集塵機によって前記開口部近傍の前記外部空気を吸引して粉塵を捕集することが望ましい。
この発明においては、集塵ハットに設けられた外部用集塵機によって、外筒に形成したスリット状の開口部近傍の外部空気を吸引することができるため、この開口部を通じて断熱層をはつり取る際に発生した粉塵の飛散をより確実に防止することができる。
さらに、本発明の煙突解体方法においては、前記外筒分離工程後に、前記断熱層分離工程及び前記外筒分離工程によって分離した前記頂部側の断熱層及び前記頂部側の外筒からなる煙突ブロック片を前記集塵ハットとともに吊り上げ、該煙突ブロック片の下端側に蓋部材を取り付ける蓋部材取付工程を備えることがより望ましい。
この発明においては、例えばクレーンで煙突ブロック片を吊り上げるとともにその下端側に蓋部材を取り付けることによって、切り出した煙突ブロック片を地上に吊り降ろす際に破片や粉塵が落下あるいは飛散することを確実に防止することができる。
また、本発明の煙突解体方法においては、前記外筒分離工程後あるいは前記蓋部材取付工程後に、前記断熱層分離工程及び前記外筒分離工程によって分離した前記頂部側の断熱層及び前記頂部側の外筒からなる煙突ブロック片を前記集塵ハットとともに地上に吊り降ろし、該煙突ブロック片を解体処理する煙突ブロック片処理工程を備え、該煙突ブロック片処理工程は、前記煙突ブロック片を吊り降ろすとともに内部を負圧状態で維持した煙突ブロック片処理ヤードに受け入れ、該煙突ブロック片処理ヤードで、前記煙突ブロック片の前記断熱層をはつり除去するとともに梱包し、前記断熱層をはつり除去した後の前記外筒をケレン処理するとともに粉塵飛散防止剤を散布して、梱包後の前記断熱層と、前記ケレン処理及び前記粉塵飛散防止剤の散布処理後の前記外筒とをそれぞれ外部に搬出することが望ましい。
この発明においては、煙突ブロック片処理ヤードが負圧状態で維持されているため、煙突ブロック片の断熱層をはつり除去する際に確実に粉塵が外部に飛散することを防止することができる。また、ケレン処理によって、外筒の細部に残った断熱層を確実に除去することができ、確実に外筒と断熱層とを分離することができる。また、分離した断熱層を梱包し、外筒に粉塵飛散防止剤を散布して、断熱層と外筒をそれぞれ煙突ブロック片処理ヤードから搬出することで、確実に粉塵の飛散を防止して断熱層と外筒を処分することができる。そして、このように切り出した煙突ブロック片を解体して処分できることで、断熱層に有害物質が含まれているような場合においても、周囲環境や作業者に対する信頼性や安全性を確保して解体することができるとともに、有害物質を含む断熱層と有害物質を含まない外筒をそれぞれ区分して処分することが可能になる。
さらに、本発明の煙突解体方法においては、前記煙突ブロック片処理ヤードが、吊り降ろした前記煙突ブロック片を受け入れる搬入室と、前記搬入室から受け入れた前記煙突ブロック片から前記断熱層をはつり除去するはつり室と、前記はつり室から受け入れた前記外筒をケレン処理するケレン室と、前記ケレン室から受け入れた前記外筒を外部に搬出するための搬出室とを備え、隣接する前記各室同士が開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁で区画されるとともに、少なくとも前記はつり室と前記ケレン室がそれぞれ個別に負圧状態で維持されていることがより望ましい。
この発明においては、開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁で各室が区画され、少なくともはつり室とケレン室がそれぞれ個別に負圧状態で維持されていることによって、はつり室やケレン室で断熱層を除去する際に、粉塵が外部に飛散することを確実に防止できる。また、搬入室と搬出室が設けられていることによって、例えば停電などによってはつり室やケレン室の負圧状態が維持できなくなる不測の事態が生じた場合においても、粉塵の外部への飛散を確実に防止することができる。さらに、このとき、これら搬入室と搬出室も負圧状態で維持するようにした場合には、より確実に外部への粉塵の飛散を防止することが可能になる。
本発明の集塵ハットは、煙突を解体する際に、前記煙突の煙道を形成する内部を密閉するように前記煙突の頂部に設置される集塵ハットであって、前記煙突の頂部を被覆する隔離パネルを備えた吊台と、前記隔離パネルの下面に設けられ、前記集塵ハットを設置するとともに前記煙突の頂部に密着する弾性部材と、前記吊台に支持され、前記煙突の内部空気を吸引する内部用集塵機とを備えることを特徴とする。
この発明においては、煙突の頂部を被覆する隔離パネルと、煙突の頂部に密着する弾性部材によって、確実に煙突の内部を密閉することができる。また、このように密閉した状態で、内部用集塵機で煙突の内部空気を吸引することによって、煙突の内部、特に煙突頂部側の内部を確実に負圧状態にすることができる。これにより、煙突を切断する際に、粉塵を煙突の内部に確実に導くことができ、且つ内部用集塵機でこの粉塵を捕集することができるため、外部への粉塵の飛散を確実に防止することができる。
また、本発明の集塵ハットにおいては、前記煙突を切断する際に、該切断部近傍の前記煙突の外部空気を吸引して粉塵を捕集する外部用集塵機を備えることが望ましい。
この発明においては、煙突の切断時に、煙突の外部と内部が連通していない状態、すなわち内部用集塵機で粉塵を捕集できない状態においても、この切断作業によって生じた粉塵を煙突の外側から捕集することができる。
さらに、本発明の集塵ハットにおいては、前記集塵ハットを懸吊するための支持部が前記吊台に移動可能に設けられていることがより望ましい。
この発明においては、例えば支持部にワイヤを取り付け、クレーンで懸吊して集塵ハットを煙突の頂部に設置する際に、煙突の頂部の径に応じて支持部を自在に移動して集塵ハットの支持点を変えることができる。これにより、煙突の頂部の径が異なる場合においても、常時安定した状態で集塵ハットを設置することができる。
本発明の煙突ブロック片処理ヤードは、外筒の径方向内側に断熱層が配設されてなる煙突を解体する際に、前記煙突を輪切り状に切断して形成した煙突ブロック片を解体処理するための煙突ブロック片処理ヤードであって、吊り降ろした前記煙突ブロック片を受け入れる搬入室と、前記搬入室から受け入れた前記煙突ブロック片から前記断熱層をはつり除去するはつり室と、前記はつり室から受け入れた前記外筒をケレン処理するケレン室と、前記ケレン室から受け入れた前記外筒を外部に搬出するための搬出室とを備え、隣接する前記各室同士が開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁で区画されるとともに、少なくとも前記はつり室と前記ケレン室には、内部空気をそれぞれ個別に吸引して内部を負圧状態に維持しつつ粉塵を捕集する集塵機が設けられていることを特徴とする。
この発明においては、開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁で各室が区画され、少なくともはつり室とケレン室がそれぞれ個別に負圧状態で維持されていることによって、はつり室やケレン室で断熱層を除去する際に、粉塵が外部に飛散することを確実に防止できる。また、搬入室と搬出室が設けられていることによって、例えば停電などによってはつり室やケレン室の負圧状態が維持できなくなる不測の事態が生じた場合においても、粉塵の外部への飛散を確実に防止することができる。さらに、このとき、これら搬入室と搬出室も負圧状態で維持するようにした場合には、より確実に外部への粉塵の飛散を防止することが可能になる。
また、本発明の煙突ブロック片処理ヤードにおいては、前記搬入室と前記はつり室と前記ケレン室と前記搬出室に連設された軌条と、該軌条上を走行して上載した前記煙突ブロック片を前記各室に搬送する搬送台車とが設けられていることが望ましい。
この発明においては、煙突から切り出した煙突ブロック片を例えばクレーンで地上に吊り降ろすとともに搬送台車に上載し、この搬送台車を走行させることで順次搬入室、はつり室、ケレン室、搬出室に煙突ブロック片を搬送して各室で解体処理を施すことができる。これにより、切り出した煙突ブロック片を流れ作業で効率的に解体処理することが可能になる。
さらに、本発明の煙突ブロック片処理ヤードにおいては、前記はつり室の下方にはつり除去した前記断熱層を投入する投入室が設けられ、該投入室に繋がり投入した前記断熱層を梱包する梱包室が設けられており、前記はつり室の床に形成した開閉可能な投入口を開くことによって、前記はつり室ではつり除去した前記断熱層が前記投入室に投入されることがより望ましい。
この発明においては、はつり室の床に投入口が設けられ、はつり室ではつり除去した断熱層をこの投入口を開くことによって容易に投入室に投入することができる。そして、この投入室に投入した断熱層を梱包室で梱包することで、より効率的に煙突ブロック片を解体処理することが可能になる。
本発明の煙突解体方法及び集塵ハット並びに煙突ブロック片処理ヤードによれば、例えば大型煙突を解体するような場合においても、従来のように煙突をプラスチックシートで覆うことなく確実に粉塵の飛散を防止して煙突を解体することができるため、解体工事の低コスト化や工期の短期化を図ることが可能になる。また、断熱層に有害物質が含まれているような場合においても、確実に粉塵の飛散を防止できるため、周囲環境や作業者に対する信頼性や安全性を確保して解体工事を行うことが可能になる。
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る煙突解体方法及び集塵ハット並びに煙突ブロック片処理ヤードについて説明する。本実施形態は、有害物質を含む粉塵の飛散(有害物質自体の飛散を含む)を確実に防止して煙突を解体する煙突解体方法及びこれに用いる集塵ハット並びに煙突ブロック片処理ヤードに関するものである。
本実施形態の煙突解体方法で解体する煙突1は、図1及び図2に示すように、地中に埋設した基礎2に支持されており、鋼製の外筒3と、この外筒3の径方向内側に配設され、外筒3の内面に断熱材をライニングして形成された断熱層4とを備えて構成されている。また、本実施形態の煙突1は、下端から上端(頂部1a)に向かうに従い漸次煙突1の外径及び断熱層4によって形成される煙道の口径(煙突1の内径)が縮径するように形成されるとともに、例えば高さが85m、最大外径が6.5m、最小外径が4mの大型煙突とされている。さらに、外筒3の厚さが9mm、断熱層4の厚さが60mmで形成され、断熱層4には、アスベスト(有害物質)を含む断熱材が使用されている。また、本実施形態の煙突1には、図1に示すように、下端側に水平方向に貫通する煙道口が形成されており、この煙道口は、解体工事に伴い事前に閉塞板5で閉塞されている。
そして、本実施形態の煙突解体方法は、上記のような煙突1を頂部1a側から例えば3.5mの高さ毎に順次輪切り状に切断・分離して(例えば3.5mの高さ毎の煙突ブロック片6を切り出して)煙突1を解体してゆくものであり、このとき、図1に示すように、クレーン7と、煙突1の全周を覆うように設けられた仮設足場8と、集塵ハット9と、煙突ブロック片処理ヤード10とを用いて解体作業が行われる。
本実施形態の集塵ハット9は、図2から図4に示すように、煙突1の最大外径以上の外径を備えて略円盤状に形成されており、例えばH形鋼などの鋼材15及びこの鋼材15の下面に取り付けて設けられた略円板状の隔離パネル16からなる吊台17と、図4に示すように、隔離パネル16の下面に取り付けられた例えばゴム板などの弾性部材18(図4に一部を図示)と、鋼材15に支持された内部用集塵機19及び外部用集塵機20とを備えて構成されている。また、吊台17の鋼材15には、図4に示すように、クレーン7で懸吊する際のワイヤ21を取り付けるための支持部22が設けられている。
内部用集塵機19及び外部用集塵機20はそれぞれ、吊台17の鋼材15に支持された集塵機本体19a、20aと、この集塵機本体19a、20aに繋がるダクト19b、20bとで構成されている。また、内部用集塵機19は、外部用集塵機20に対して径方向内側に配置され、隔離パネル16を貫通したダクト19bが、煙突1と互いの軸線O1、O2を略同軸上に配して煙突1の頂部1aに集塵ハット9を設置した状態で、煙突1の煙道を形成する内部1bに配設される。外部用集塵機20は、隔離パネル16を貫通したダクト20bが、煙突1の頂部1aに集塵ハット9を設置した状態で、煙突1の外部1cに配されるように設けられ、図2に示すように、煙突1の頂部1aの下方に設定され煙突1を輪切り状に切断・分離する切断線S近傍に吸引口が配されるように設けられている。
そして、上記のように構成した本実施形態の集塵ハット9は、煙突1の頂部1aに設置すると、隔離パネル16で煙突1の頂部1aを被覆し、これとともに弾性部材18が頂部1aに密着して煙突1の煙道を形成する内部1bを密閉させる。また、この状態で、内部用集塵機19を駆動すると、密閉した煙突1の内部空気が吸引され、煙突1の内部1bを外部1cに対して負圧状態にすることができる。さらに、外部用集塵機20を駆動すると、切断線S近傍の外部空気を吸引することができる。
一方、本実施形態の煙突ブロック片処理ヤード10は、図5及び図6に示すように、煙突1を輪切り状に切断して分離し、集塵ハット9とともにクレーン7で地上に吊り降ろした煙突ブロック片6を受け入れる搬入室30と、搬入室30から受け入れた煙突ブロック片6から断熱層4をはつり除去するはつり室31と、はつり室31から受け入れた煙突ブロック片6(外筒3)をケレン処理するケレン室32と、ケレン室32から受け入れた煙突ブロック片6(外筒3)を外部に搬出するための搬出室33とを備えて構成されている。
また、本実施形態において、上記のように各室30〜33を備えて構成した煙突ブロック片処理ヤード10は、内外二重の構造で形成されており、外郭10aが、風雨対策のため、仮設足場10bに防炎シート及び鋼製折板10cを取り付けて構成されている。また、内郭10dは、例えば0.1mm以上の厚さを有するプラスチックシートで構成されている。
さらに、搬入室30とはつり室31、はつり室31とケレン室32、ケレン室32と搬出室33の隣接する各室同士は、例えばシャッターなどの図示せぬ開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁34で区画され、連通/閉鎖可能とされている。そして、本実施形態においては、仕切り壁34で区画されたはつり室31とケレン室32に、内部空気をそれぞれ個別に吸引して各室31、32の内部を負圧状態に維持するとともに粉塵を捕集する集塵機35が設けられている。なお、搬入室30及び搬出室33の各室と外部との間にも搬入口(搬出室33においては搬出口)を備えた仕切り壁34が設けられており、これら搬入室30及び搬出室33の内部空気をそれぞれ吸引する集塵機が設けられている。また、搬入室30及び搬出室33に設けた集塵機は、はつり室31とケレン室32よりも小さな負圧となるように搬入室30及び搬出室33の負圧状態を調整することができる。
また、本実施形態では、図6に示すように、はつり室31の下方に、はつり除去した断熱層4を投入する投入室36が設けられている。この投入室36は、はつり室31の床31aに形成した図示せぬ開閉可能な投入口を開くことによって、はつり除去した断熱層4がはつり室31から投入される。また、投入室36には、はつり室31から投入された断熱層4を袋などに梱包する梱包室37が繋げられている。なお、投入室36及び梱包室37にも、各室の内部空気を吸引する集塵機35が設置されている。
さらに、煙突ブロック片処理ヤード10には、図6及び図7に示すように、搬入室30とはつり室31とケレン室32と搬出室33に連設された軌条40と、この軌条40上を走行して上載した煙突ブロック片6を各室30〜33に搬送する搬送台車41とが設けられている。また、軌条40は、搬入室30と搬出室33からそれぞれ煙突ブロック片処理ヤード10の外側に延設されており、搬入室30から煙突ブロック片処理ヤード10の外側に配置した搬送台車41に、クレーン7で吊り降ろした煙突ブロック片6を直接上載させることができる。また、搬出室33から処理後の煙突ブロック片6(外筒3)を煙突ブロック片処理ヤード10の外側に搬出することができる。
ついで、上記の集塵ハット9と煙突ブロック片処理ヤード10を用いて煙突1を解体する方法について説明し、本実施形態の煙突解体方法及び集塵ハット9並びに煙突ブロック片処理ヤード10の作用及び効果について説明する。
はじめに、図1に示すように、煙突1の周囲に作業足場8を構築する。ついで、集塵ハット9の支持部22にワイヤ21を取り付け、このワイヤ21を介してクレーン7で集塵ハット9を吊り上げる。
ついで、このように吊り上げた集塵ハット9を、クレーン操作によって互いの軸線O1、O2が略同軸上に配されるようにしながら煙突1の頂部1aに設置する(集塵ハット設置工程)。このように設置した段階で、煙突1の頂部1aに弾性部材18が密着し、且つこの頂部1aに開口する煙道(煙突1の内部1b)が隔離パネル16で覆われ、煙突1の内部1bが集塵ハット9で密閉される。また、この状態で、内部用集塵機19のダクト19bが煙突1の内部1bに配置され、外部用集塵機20のダクト20bが煙突1の外部1cに配置される。
さらに、図2に示すように、作業者Mが、シャックル取付用の孔を煙突1に穿設するとともにシャックル42を取り付け、このシャックル42と集塵ハット9の吊台17(鋼材15)の下面に設けられた取付部43とに所定の緊張力をもってワイヤ44を取り付けて、煙突1の切断線Sを挟んで頂部1a側の部分(分離前の煙突ブロック片6)と集塵ハット9とを一体に繋げる。
上記のように集塵ハット9の設置を終えた段階で、内部用集塵機19を駆動し、煙突の内部空気の吸引を開始する(内部空気吸引工程)。これにより、下端側の煙道口が閉塞板5で閉塞され、頂部1a側に集塵ハット9が設置されて気密状態で保持された煙突1の内部1bが負圧状態となる。
ついで、作業者Mは、例えばガスバーナを用いて外筒3を頂部1aの下方に設定され煙突1を輪切り状に切断する切断線Sに沿って切断してスリット状の開口部50を形成する(スリット形成工程)。このとき、外筒3の周方向の例えば4箇所に残部51を残すように、すなわち外筒3を周方向に環状に切断することなく、残部51によって切断線Sを挟んで頂部1a側の外筒3と下端側の外筒3を繋げた状態にして切断を行う。そして、切断後に外筒3を剥がして除去することにより、煙突1の軸線O1方向の幅Tが例えば10cm程度のスリット状の開口部50が形成され、これとともに煙突1の径方向内側に配設された断熱層4が外部1cに露出する。ここで、上記のように残部51を残すことによって開口部50が所定の幅寸法で保持される。よって、本実施形態では4箇所に残部51を設けるものとしたが、残部51は、開口部50を保持することが可能であれば、特にその数や位置を限定する必要はない。
ついで、断熱層4を外部1cに露出させた段階で、集塵ハット9の外部用集塵機20を駆動し、開口部50近傍(切断線S近傍)の外部空気の吸引を開始する。これとともに、作業者Mは、開口部50を通じて露出した断熱層4に、煙突1の外部1cから粉塵飛散防止剤を噴霧(供給)しつつ、例えばブレーカーなどを用いて断熱層4を開口部50(切断線S)に沿ってはつり取る(断熱層分離工程)。
このとき、断熱層4を煙突1の内部1bに落とすようにはつり取り、煙突1の外部1cと内部1bが連通するとともに、内部用集塵機19によって負圧状態に保持された内部1bに向けて外部空気が流入する。これにより、断熱層4をはつることによって発生したアスベストを含んだ粉塵が、外部空気とともに煙突1の内部1bに吸引される。また、内部1bに吸引した粉塵(アスベスト)は、継続的に駆動する内部用集塵機19によって、内部空気とともに吸引されて捕集される。さらに、外部空気とともに粉塵飛散防止剤も内部1bに吸引されて供給されるため、内部1bでの粉塵の拡散が抑制されることになり、この点からも確実に粉塵が内部用集塵機19で捕集されることになる。また、このとき、内部用集塵機19を集塵ハット9に設けて煙突1の頂部1aに配置するようにしているため、すなわち、従来のように煙道口に集塵機を設けた場合と比較して、内部用集塵機19が切断線S(開口部50)の近くに設けられているため、開口部50から流入する粉塵が確実にこの内部用集塵機19で捕集される。さらに、本実施形態では、幅Tが10cm程度の開口部50を通じて断熱層4をはつり取るため、従来のように煙突1(断熱層4)の切断にワイヤソーを用いるものと比較し、断熱層4の切断部が大きく開口することになる。これにより、煙突1の内部1bへの外部空気の流入量が多くなり、また、10cm程度の開口によって外部空気の流入速度の著しい低下を招くこともなく、確実に粉塵が内部1bに吸引されることになる。
一方、煙突1の外部1cと内部1bが連通するまでの間、断熱層4をはつることによって発生する粉塵が外部1cに飛散するおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、粉塵飛散防止剤を噴霧しながらはつり作業を行っているため、粉塵が外部1cに飛散することが防止されている。さらに、外部用集塵機20によって開口部50近傍の外部空気の吸引を行っているため、万一外部1cに粉塵が飛散した場合においても、この外部用集塵機20によって確実に捕集される。
そして、このように粉塵の飛散を確実に防止して、開口部50に沿って断熱層4をはつり取るとともに、外筒3の残部51の内側にある断熱層4を、開口部50を通じてはつり取り、頂部1a側の断熱層4を完全に分離させる。
ついで、頂部1a側の断熱層4の分離(切り出し、切断)を終えた段階で、例えばガスバーナを用いて外筒3の残部51を、開口部50を環状に繋げるように切断線Sに沿って切断する(外筒分離工程)。これにより、頂部1a側の外筒3が下部側の外筒3から分離され、煙突1から頂部1a側の断熱層4及び頂部1a側の外筒3からなる煙突ブロック片6が切断・分離される。このとき、煙突ブロック片6は、クレーン7でワイヤ21を介して支持した集塵ハット9と一体に繋げられているため、残部51を切断すると同時に集塵ハット9とともにクレーン7で吊り下げ支持される。
ついで、煙突ブロック片6を分離した段階で、煙突ブロック片6を集塵ハット9とともにクレーン7で例えば数十cm程度吊り上げる。そして、作業者Mは、図1に示すように、吊り上げた煙突ブロック片6の下端側に蓋部材52を取り付け、煙突ブロック片6から破片や粉塵(アスベスト)が落下することがないようにする(蓋部材取付工程)。
ついで、クレーン7によって煙突ブロック片6を地上に吊り降ろす。このとき、煙突1の近隣に設けられた煙突ブロック片処理ヤード10に、クレーン7によって煙突ブロック片6が吊り降ろされるとともに、図7に示すように、搬入室30の外側に配置した搬送台車41に上載される。このように搬送台車41に上載するとともに、煙突ブロック片6と集塵ハット9を一体に繋いでいるワイヤ44及びシャックル42を取り除き、煙突ブロック片6から集塵ハット9を取り外す。そして、搬入室30の搬入口を開くとともに搬送台車41を軌条40上で走行させ、煙突ブロック片6を搬入室30に搬入する。
一方、煙突ブロック片6から取り外した集塵ハット9は、再度クレーン7で煙突1の上端(煙突ブロック片6を切り出した後に形成された新たな煙突1の頂部1a)に設置し、前述と同様に、次の煙突ブロック片6の切り出しに使用される。このとき、本実施形態の煙突1は、下端から上端1aに向かうに従い漸次縮径するように形成されているため、煙突ブロック片6の切り出しを行ってゆくと、新たな煙突1の頂部1aの外径が大きくなってゆく。このように解体を行うとともに煙突1の外径が変化する場合においても、本実施形態の集塵ハット9では、地上に吊り降ろした煙突ブロック片6から取り外した段階で、支持部(支持点)22の位置を新たな頂部1aの外径に応じた位置に調整して、常時安定した状態で頂部1aに設置される。
他方、搬送台車41で煙突ブロック片6を搬入室30に受け入れるとともに、搬入室30の搬入口を閉鎖する(煙突ブロック片処理工程)。このとき、搬入室30に集塵機が設けられている場合には、搬入室30が負圧状態になるため、煙突ブロック片6の受け入れ時に搬入口を開いても、外部1cの空気が搬入室30の内部に流入して煙突ブロック片処理ヤード10内の空気が外部1cに放出されることがない。よって、この煙突ブロック片処理ヤード10での処理によって発生する粉塵が外部(周囲環境)1cに飛散することがない。
ついで、搬入室30に煙突ブロック片6を受け入れた段階で、搬入室30とはつり室31の間の搬入口を開き、搬送台車41によって煙突ブロック片6をはつり室31に受け入れて、搬入口を閉鎖する。このとき、はつり室41が集塵機35によって負圧状態で維持されているため、外部1c(搬入室30)にはつり室31の内部空気が放出されることがなく、粉塵が外部1c、30に飛散することがない。そして、このように受け入れた煙突ブロック片6に対し、防護服を装着した作業者がブレーカーなどを用いて断熱層4のはつり除去を行う。このように取り除いた断熱層4は、はつり室31の床31a上に落ち、ある程度断熱層4を外筒3から取り除いてはつり作業を終えた段階で、はつり室31の床31aに形成した投入口を開くことによって、はつり除去した断熱層4がはつり室31から投入室36に投入される。また、このように断熱層4をはつり除去することによって、はつり室31内にアスベストを含む粉塵が飛散することになるが、本実施形態では、はつり室31に集塵機35が設けられているため、飛散した粉塵は確実に集塵機35で捕集される。
また、投入室36に投入した断熱層4は、梱包室37に搬入しつつ二重袋に梱包され、図5に示すように、前室55、除染室56などのセキュリティーゾーンを通じて外部1cに搬出される。そして、このように搬出した断熱層4は、特別管理型産業廃棄物として処分される。また、このとき、投入室36や梱包室37は、それぞれ集塵機35によって内部空気が吸引され、負圧状態で維持されているため、投入作業、梱包作業に伴って飛散した粉塵が確実にこの集塵機35で捕集され、且つ負圧状態で維持されることで外部1cに放出されることがない。
一方、はつり室31での処理を終えた煙突ブロック片6(断熱層4をはつり除去した後の外筒3)は、はつり室31とケレン室32の間の搬入口を開き、搬送台車41によってケレン室32に受け入れられ、これとともに搬入口を閉鎖する。そして、このように受け入れた外筒3(煙突ブロック片6)には、はつり室31で除去し切れていない断熱層4が外筒3の細部に残存しているため、このケレン室32において、細部の断熱層4を除去するように外筒3にケレン処理を施す。このとき、ケレン室32の内部空気が集塵機35によって吸引されているため、飛散したアスベストを含む粉塵が捕集される。また、ケレン処理を施した場合においても、外筒3に微量のアスベスト(粉塵)が付着して残存するおそれがあるため、ケレン室32で処理した後の外筒3に粉塵飛散防止剤を散布し、微量のアスベストの封じ込め処理を施す。
このようにケレン処理及び粉塵飛散防止剤による封じ込め処理を施した段階で、ケレン室32と搬出室33の間の搬入口を開き、搬送台車41によって外筒3を搬出室33に搬入し、搬入口を閉鎖する。このとき、ケレン室32が集塵機35によって負圧状態で維持されているため、搬出室33(外部1c)に粉塵が飛散することがない。そして、搬出室33と外部1cの間に設けられた搬出口を開いて外部1cに外筒3が搬出され、スクラップ処理される。
上記のように煙突から煙突ブロック片6を切り出し、煙突ブロック片処理ヤード10での煙突ブロック片6の処理を繰り返し行うことによって、煙突1が順次解体されてゆく。そして、このとき、断熱層4にアスベスト(有害物質)が含まれている場合においても、粉塵の飛散が確実に防止された状態で、煙突ブロック片6の切り出し、煙突ブロック片処理ヤード10での処理が行われるため、周囲環境や作業者に対する信頼性や安全性を確保して煙突1が解体されることになる。また、煙突ブロック片6の切り出しと煙突ブロック片6の処理が流れ作業で行われるため、効率的に解体作業が進められる。
したがって、本実施形態の煙突解体方法においては、煙突1を輪切り状に切断する切断線Sに沿ってスリット状の開口部50を外筒3に形成することで、露出した断熱層4を煙突1の内部1bに落とすようにはつり取ることができ、且つ粉塵飛散防止剤を供給しつつはつり取ることで、煙突1の外部1cに粉塵を飛散させることなく頂部1a側の断熱層4を分離することができる。
また、集塵ハット9で煙突1の内部1bが密閉され、且つこの集塵ハット9に設けられた内部用集塵機19によって煙突1の頂部1a側の内部1bが確実に負圧状態にできるため、断熱層4をはつり取る際に、煙突1の外部1cと内部1bが連通するとともに外部空気が粉塵及び粉塵飛散防止剤とともに確実に内部1bに流入することになり、粉塵の外部1cへの飛散を確実に防止することができる。
さらに、外筒3に形成したスリット状の開口部50を通じて断熱層4をはつり取ることになるため、従来のワイヤソーを用いて切断するものと比較し、大きく開口させながら頂部1a側の断熱層4を分離することができ、これにより、多量の外部空気を煙突1の内部1bに流入させることが可能になるため、この点からも確実に粉塵の外部1cへの飛散を防止することができる。
また、スリット状の開口部50の形成時に切断線S上に残され、開口部50を保持している外筒3の残部51を切断することによって、頂部1a側の外筒3を完全に分離することができ、煙突ブロック片6を分離することができる。そして、このような煙突ブロック片6の分離作業を順次行うことで、確実に粉塵の飛散を防止しつつ煙突1を効率的に解体してゆくことが可能になる。
さらに、クレーン7で煙突ブロック片6を吊り上げるとともにその下端側に蓋部材52を取り付けることによって、切り出した煙突ブロック片6を地上に吊り降ろす際に破片や粉塵が落下あるいは飛散することを確実に防止することができる。
また、本実施形態の煙突解体方法及び集塵ハット9においては、集塵ハット9が、煙突1の頂部1aを被覆する隔離パネル16と、煙突1の頂部1aに密着する弾性部材18とを備えることによって、確実に煙突1の内部1bを密閉することができる。さらに、このように密閉した状態で、内部用集塵機19で煙突1の内部空気を吸引することによって、煙突1の内部1b、特に煙突頂部1a側の内部1bを確実に負圧状態にすることができる。これにより、煙突1を切断する際に、粉塵を煙突1の内部1bに確実に導くことができ、且つ内部用集塵機19でこの粉塵を捕集することができる。
また、集塵ハット9に外部用集塵機20を備えることによって、煙突1の切断時に、煙突1の外部1cと内部1bが連通していない状態、すなわち内部用集塵機19で粉塵を捕集できない状態においても、この切断作業によって生じた粉塵を煙突1の外側から捕集することができる。これにより、常時、確実に粉塵の飛散を防止することができる。
また、本実施形態の煙突解体方法及び煙突ブロック片処理ヤード10においては、煙突ブロック片処理ヤード10が負圧状態で維持されているため、煙突ブロック片6の断熱層4をはつり除去する際に確実に粉塵が外部1cに飛散することを防止することができる。また、ケレン処理によって、外筒3の細部に残った断熱層4を確実に除去することができ、確実に外筒3と断熱層4とを分離することができる。また、分離した断熱層4を梱包し、外筒3に粉塵飛散防止剤を散布して、断熱層4と外筒3をそれぞれ煙突ブロック片処理ヤード10から搬出することで、確実に粉塵の飛散を防止して断熱層4と外筒3を処分することができる。そして、このように切り出した煙突ブロック片6を解体して処分できることで、断熱層4にアスベストが含まれているような場合においても、周囲環境や作業者に対する信頼性や安全性を確保して解体することができるとともに、アスベストを含む断熱層とアスベストを含まない外筒3をそれぞれ区分して処分することが可能になる。
さらに、開閉可能な搬入口を備えた仕切り壁34で各室30〜33が区画され、はつり室31とケレン室32がそれぞれ個別に負圧状態で維持されていることによって、はつり室31やケレン室32で断熱層4を除去する際に、粉塵が外部1cに飛散することを確実に防止できる。また、搬入室30と搬出室33が設けられていることによって、例えば停電などによってはつり室31やケレン室32の負圧状態が維持できなくなる不測の事態が生じた場合においても、粉塵の外部1cへの飛散を確実に防止することができる。さらに、このとき、これら搬入室30と搬出室33も負圧状態で維持するようにした場合には、より確実に外部1cへの粉塵の飛散を防止することが可能になる。
また、搬入室30とはつり室31とケレン室32と搬出室33に連設された軌条40と、この軌条40上を走行して上載した煙突ブロック片6を各室に搬送する搬送台車41とが設けられていることによって、煙突1から切り出した煙突ブロック片6をクレーン7で地上に吊り降ろすとともに搬送台車41に上載し、この搬送台車41を走行させることで順次搬入室30、はつり室31、ケレン室32、搬出室33に煙突ブロック片6を搬送して解体処理を施すことができる。これにより、切り出した煙突ブロック片6を流れ作業で効率的に解体処理することが可能になる。
さらに、はつり室31の下方に、投入口で繋がる投入室36を設け、この投入室36に繋がる梱包室37が設けられていることで、はつり室31ではつり除去した断熱層4を、投入口を開くことによって容易に投入室36に投入することができる。そして、この投入室36に投入した断熱層4を梱包室37で梱包するようにしたことで、例えばはつり室31内で断熱層4を梱包する場合と比較し、より効率的に煙突ブロック片6を解体処理することが可能になる。
よって、本実施形態の煙突解体方法及び集塵ハット9並びに煙突ブロック片処理ヤード10によれば、大型煙突を解体するような場合においても、従来のプラスチックシートなどで煙突1を覆うことなく、確実に粉塵の飛散を防止して効率的に煙突1を解体することが可能になり、断熱層4に有害物質(アスベスト)が含まれているような場合においても、周囲環境や作業者に対して信頼性や安全性を確保することができるとともに、解体工事の低コスト化や工期の短期化を図ることが可能になる。
以上、本発明に係る煙突解体方法及び集塵ハット並びに煙突ブロック片処理ヤードの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、有害物質がアスベストであるものとし、このアスベストを含む断熱層4を、アスベスト(粉塵)を飛散させることなく撤去することについて説明を行ったが、本発明の煙突解体方法及び集塵ハット9並びに煙突ブロック片処理ヤード10は、例えばプラントや焼却場などのダイオキシンや他の有害物質が断熱層4に付着しているような煙突1を解体する場合に適用してもよく、本実施形態と同様の操作を行うことで、これら有害物質を確実に外部1cに飛散させることなく煙突1を解体することが可能である。
また、本実施形態では、高さが85m、径が4〜6.5mの大型煙突の解体を行うものとして説明を行ったが、小型煙突の解体に適用してもよい。
さらに、本実施形態では、煙突1が鋼製の外筒3を備えて形成されているものとしたが、鉄筋コンクリート製の外筒3を備えた煙突1の解体に適用してもよい。この場合には、例えば削岩機(ブレーカー)などを用いて外筒3をはつり取り、外筒3に開口部50を形成し、このとき、外筒3に粉塵飛散防止剤を供給したり、外部用集塵機20で粉塵を吸引するようにすれば、本実施形態と同様に粉塵の飛散を防止しつつ煙突1の解体を行うことが可能である。
また、本実施形態では、集塵ハット設置工程後に内部空気吸引工程を行うものとして説明を行ったが、内部空気吸引工程は、スリット形成工程後に行ってもよく、この場合においても、本実施形態と同様に煙突1の解体を行うことが可能である。
さらに、本実施形態では、有害物質の飛散を防止しつつ煙突ブロック片6を切り出し、この煙突ブロック片6を煙突ブロック片処理ヤード10に吊り降ろして処理するものとしたが、本実施形態のように切り出した煙突ブロック片6を他の方法で処理したり、逆に他の方法で切断した煙突ブロック片6を、本実施形態の煙突ブロック片処理ヤード10で処理するようにしてもよい。また、本発明の煙突解体方法や集塵ハット9、煙突ブロック片処理ヤード10は、有害物質を含んでいない煙突1を解体する際に適用してもよく、この場合には、粉塵を外部1cに飛散させることなく確実に煙突1を解体することが可能である。