JP4935253B2 - 積層体およびそれを用いた容器 - Google Patents
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Description
そこで、本発明者らは、紙基材と紙基材上に押出コーティングにより積層された熱可塑性樹脂層とが非接着されている部分と弱接着されている部分とを設けることにより、剥離強度が調整された積層体の作製を試みたところ、紙基材と熱可塑性樹脂層との間にエア溜まりが発生するという問題に直面した。このようなエア溜まりは、積層体の意匠性を低下させたり品質にばらつきを生じさせるばかりか、製造機械にダメージを与えることもある。
非接着印刷層は、紙基材の面積に対して50%〜99%形成されていることが好ましい。
図1に示すように、本発明に係る積層体は、平滑化加工が施された表面1を有する紙基材2と、平滑化加工が施された表面1上に部分的に形成された非接着印刷層3と、紙基材2の平滑化加工が施された表面1および非接着印刷層3上に積層されたオレフィン系熱可塑性樹脂層4とを備えている。そして、非接着印刷層3が形成されていない部分である紙基材2の平滑化加工が施された表面1と、オレフィン系熱可塑性樹脂層4とは弱接着されており、非接着印刷層3とオレフィン系熱可塑性樹脂層4とは接着されておらず、オレフィン系熱可塑性樹脂層4は紙基材2から剥離可能なように構成されている。さらに、図2に示すように、本発明に係る積層体の非接着印刷層3は、積層体全面にわたって連続して存在するように形成されている。本発明において、「非接着印刷層が積層体全面にわたって連続して存在する」とは、非接着印刷層3が、紙基材2の平滑化加工が施された表面1上において分断されていないことを意味する。一方、紙基材2とオレフィン系熱可塑性樹脂層4とが弱接着されている部分(平滑化加工が施された表面1)は、島状に存在するように構成されている。なお、図2において、オレフィン系熱可塑性樹脂層4は省略されている。
紙基材2の坪量は特に限定されるものではなく、積層体を用いた製品の形態に応じて適宜決定すればよい。
印刷方法としては、積層体全面にわたって非接着印刷層3が連続して存在するように形成可能な印刷方法であれば特に限定されないが、塗布量が安定していることおよび生産性が高いことから、版の継ぎ目のない円筒印刷版を用いたグラビア印刷を採用することが好ましい。また、平滑化加工が施された表面1に対する非接着印刷インキの塗布量は特に限定されるものではないが、0.5〜10g/m2であることが好ましく、1〜5g/m2であることが更に好ましい。塗布量が0.5g/m2未満であると非接着印刷層3とオレフィン系熱可塑性樹脂層4とが接着してしまうことがあり、また10g/m2を超える量を塗布することはコストの無駄が多くなるため好ましくない。また、グラビア印刷により10g/m2を超える量を塗布することは難しい。
また、弱接着部分の剥離強度は、0.049N/15mm幅以上であることが好ましい。剥離強度がこの値未満であると、積層体の製造時および加工時に、オレフィン系熱可塑性樹脂と紙基材の接着が不十分な場合がある。適切な剥離強度は、弱接着部分と非接着部分で形成される模様および加工される容器の種類によって異なるため適宜決定する。剥離強度は、オレフィン系熱可塑性樹脂の種類、押出コーティングの加工条件等を変化させることによって適宜増減することができる。
なお、剥離強度の測定は、まず積層体の弱接着部分のみを15mm幅にて100mm切り出して試験片とし、切り出した試験片の一方から紙と樹脂フィルムとを60mmまで剥がし、引張り試験機の両チャックにそれぞれチャッキングする。チャック間距離は100mmとする。そして25℃雰囲気下、50mm/minの引張り速度で180度方向に剥がし、最大荷重を測定する。測定は10回行い、その算術平均を剥離強度とする。また、本発明の積層体における弱接着部分と非接着部分との具体的な態様によって、15mm幅にての試験片が得られない場合がある。この場合、15mm幅以下の試験片を採取して剥離強度を測定し、これを15mm幅の試験片を試験した値に換算して、弱接着部分の剥離強度の値とする。
これに対して、例えば、図3に示すように、平滑化加工が施された表面1上において非接着印刷層3が、分断部5(繰り出し方向と略直角の方向に非接着印刷インキが連続して塗布されていない部分)により分断されており、連続して存在しない紙基材2を用いると、押出コーティングの際に紙基材2とオレフィン系熱可塑性樹脂層4とが分断部5において弱接着される。これによりエアは紙基材2の繰り出し方向と反対の方向に抜かれずに、紙基材2とオレフィン系熱可塑性樹脂層4との間にエア溜まりを発生させる。このようなエア溜まりは積層体の意匠性を低下させたり品質にばらつきを生じさせるばかりか、製造機械にダメージを与えることもある。
また、上記ではオレフィン系熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを使用した場合の押出コーティング加工条件について説明したが、他のオレフィン系熱可塑性樹脂においても樹脂の性状に応じて加工条件を適宜設定することができる。
このようにして製造される容器等の製品は、使用後に、紙基材2からオレフィン系熱可塑性樹脂層4を容易に剥離させることができるので、紙およびプラスチックを分別回収・再利用することができる。そのため、本発明の積層体から得られる容器等の製品は、資源の有効利用および地球環境保護という面からみて極めて優れたものであるといえる。
<実施例1>
片面がクレーコートされた紙基材である坪量320g/m2の板紙(NEWウルトラH;日本大昭和板紙株式会社製)のクレーコート面(ベック式平滑度265秒)に、硝化綿を主成分とする剥離用印刷インキ(CP−2K;大日精化工業株式会社製)を版の継ぎ目のない円筒印刷版を用いたグラビア印刷で部分的に印刷し、図2に示されるようにクレーコート面上に非接着印刷層を部分的に形成した。次に、紙基材を繰り出しロールから繰り出すとともに、ポリプロピレン樹脂(F109V;(株)プライムポリマー製、融点162℃)を押出し機のダイより押出し、紙基材のクレーコート面および非接着印刷層上に厚さ60μmのポリプロピレン樹脂層を積層した。このときの加工条件は、押出温度280℃およびラインスピード(繰り出し速度)70m/minに設定した。このようにして得られた実施例1の積層体にエア溜まりは一切見られず、また、加工中、製造機械に不都合はなかった。
Claims (4)
- クレー、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタンまたは沈降性炭酸カルシウムを含む表面コート剤の塗布による平滑化加工が施された表面を有する紙基材と、紙基材の平滑化加工が施された表面上にアクリル系樹脂または硝化綿を主成分とする非接着印刷インキを塗布することにより部分的に形成された非接着印刷層と、オレフィン系熱可塑性樹脂を押出コーティングすることにより紙基材の平滑化加工が施された表面および非接着印刷層上に積層されたオレフィン系熱可塑性樹脂層とを備え、紙基材とオレフィン系熱可塑性樹脂層とは接着され且つ非接着印刷層とオレフィン系熱可塑性樹脂層とは非接着されている積層体であって、
非接着印刷層が積層体全面にわたって連続して存在することを特徴とする積層体。 - 前記非接着印刷層が、前記紙基材の面積に対して50%〜99%形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 請求項1または2に記載の積層体を加工してなることを特徴とする容器。
- オレフィン系熱可塑性樹脂層が前記容器の少なくとも内面になるように加工されていることを特徴とする請求項3に記載の容器。
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