成膜装置のクリーニングには、2つのクリーニング法がある。その一つのクリーニングは、チャンバ内のフェースプレート及びプロセスキットに対して成膜工程ごとに行われる。他のクリーニングは、通常、数千回といった成膜を行った後に行われる。後者のクリーニングでは、チャンバの真空度を大気圧に戻した後にチャンバを開けることが必要であり、またフェースプレートを再生処理した後にチャンバを真空排気することが必要である。このクリーニングを行うためには多くの時間がかかるので、このクリーニングの頻度を下げることが求められる。この結果、この成膜装置を用いる製造プロセスにおける生産効率を上げることができる。
そこで、本発明の目的は、成膜におけるクリーニングの負担を軽減できる成膜装置を処理する方法、成膜方法、及び成膜装置を提供することである。
本発明の一側面は、プロセスチャンバ内にフェースプレートを有する成膜装置を処理する方法に係る。この方法は、(a)フェースプレートをフッ素の活性種に曝す工程と、(b)酸素を構成元素として含む第1のガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程と、を備える。
この方法では、フッ素の活性種によりフェースプレートをクリーニングした後に第1のガスのプラズマにフェースプレートを曝すので、酸素のプラズマによりフェースプレートの表面が処理される。この酸素処理により、フッ素クリーニング効率の低下を低減できる。
また、本発明の方法は、フッ素の活性種に曝す工程に先立って、プロセスチャンバ内にフェースプレートを備える成膜装置を準備する工程を更に備えることができる。
本発明の方法は、フェースプレート上に薄膜を堆積する工程を更に備えることができる。この工程によれば、クリーニングにより生じている可能性のある生成物をフェースプレート上に薄膜により閉じこめて、パーティクルの発生を低減できる。
本発明の方法では、第1のガスは、N2Oといった酸化物ガス及びO2の少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
本発明の方法は、フェースプレートを曝す工程に先立って、フッ素を構成元素として含む第2のガスからリモートプラズマ装置において活性種を生成する工程を更に備えることができる。
リモートプラズマを用いるとフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下を酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明の方法では、第2のガスは、NF3といったフッ化物ガス及びF2の少なくともいずれかを含むことができる。
本発明の方法では、フェースプレートの材料は、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレートによれば、酸素処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明の別の側面は、成膜方法に係る。この方法は、(a)プロセスチャンバ内にフェースプレートを備える成膜装置に、金属膜を備える基板を置く工程と、(b)プロセスチャンバ内において基板を還元雰囲気に曝す工程と、(c)窒素及び酸素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物を基板上に堆積する工程と、(d)シリコン化合物を基板上に堆積した後に、基板を成膜装置から取り出す工程と、(e)フッ素の活性種にフェースプレートを曝す工程と、(f)酸素を構成元素として含む第1のガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程と、を備える。
この方法によれば、基板を還元雰囲気に曝すことにより、基板上の金属膜の表面が還元されると共に、フェースプレートの表面も還元される。還元されたフェースプレートの表面はフッ素処理の後に酸素プラズマに曝されるので、フェースプレートの表面が処理される。
この方法は、(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程、(e)工程、(f)工程を繰り返す工程を更に備えることができる。この成膜方法によれば、成膜を繰り返してもクリーニング特性の変動が小さい。
本発明の方法では、第2のガスは、N2Oといった酸化物ガス及びO2の少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
本発明の成膜方法では、第2のガスは、F2及びフッ化物ガスの少なくともいずれかを含むことができる。
本発明の成膜方法は、基板を大気中に置く工程と、シリコン化合物を形成する工程に先立って、基板を還元性雰囲気に曝す工程と更に備えることができる。基板は、その主面上に金属膜を備えている。この成膜方法によれば、金属膜を備える基板を大気中に置くとき、金属膜上には自然酸化膜が形成される。還元性雰囲気中において、金属膜上の自然酸化膜は還元されて、酸化膜は実質的に消失する。好適な実施例では、金属膜は銅を含む。好適な実施例では、還元性雰囲気はアンモニアを含む雰囲気であることができる。アンモニアを用いて、基板の主面上の金属膜の表面の酸化物を還元することができる。
本発明の更なる別の側面は、成膜方法に係る。この方法は、(a)フェースプレートを備える成膜装置内に置かれた基板及びフェースプレート上に、窒素及び酸素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物を堆積する工程と、(b)フェースプレート上のシリコン化合物をエッチングするためにフッ素の活性種にフェースプレートを曝す工程と、(c) フェースプレートを曝す工程の後に、フェースプレートを酸化する工程とを備える。
この方法では、成膜によりフェースプレート上に生成された反応物をフッ素の活性種によりクリーニングした後に、酸素のプラズマによりフェースプレートの表面が処理される。この酸素処理により、成膜の回数の増加とともに低下するフッ素クリーニング効率の低下を低減できる。フッ素クリーニング工程及び成膜工程の繰り返し数を増加できる。
本発明の成膜方法は、フェースプレートを曝す工程に先立って、フッ素を構成元素として含む第2のガスからリモートプラズマ装置において活性種を生成する工程を備えることができる。
リモートプラズマを用いるとフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下をフェースプレートの酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明の成膜方法は、シリコン化合物を形成する工程に先立って、基板を還元性雰囲気に曝す工程と、基板を還元性雰囲気に曝す工程に先立って基板を大気中に置く工程とを更に備えることができる。基板は、その主面上に金属膜を備えている。この成膜方法によれば、金属膜を備える基板を大気中に置くとき、金属膜上には自然酸化膜が形成される。還元性雰囲気中において、金属膜上の自然酸化膜は還元されて、酸化膜は実質的に消失する。好適な実施例では、金属膜は銅を含む。好適な実施例では、還元性雰囲気はアンモニアを含む雰囲気であることができる。アンモニアを用いて、基板の主面上の金属膜の表面の酸化物を還元することができる。
本発明の成膜方法では、第2のガスは、NF3といったフッ化物ガス及びF2の少なくともいずれかを含むことができる。
本発明の成膜方法では、フェースプレートの材料は、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレートによれば、酸素処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明のまた更なる別の側面によれば、成膜装置は、プロセスチャンバと;
プロセスチャンバ内に設けられたフェースプレートと;フッ素活性種を生成するための手段と;プロセスチャンバに結合されたプロセスガス源と;プロセスガス源からのガスのプラズマをプロセスチャンバ内に生成するための手段と;クリーニングシーケンスを制御するためのクリーニング制御手段を含む制御部と;を備える。プロセスガス源は、酸素を構成元素として含む第1のガス源を含む。クリーニング制御手段は、フッ素活性種を用いてフェースプレートを処理するための第1の制御を行う手段と;プロセスガス源を制御して、第1のガスのプラズマにフェースプレートを曝すための第2の制御を行う手段とを有する。
この成膜装置のクリーニング制御手段を用いると、フッ素活性種によりフェースプレートをクリーニングした後に、第1のガスのプラズマによりフェースプレートの表面が処理される。この酸素処理により、成膜を繰り返すことにより生じている可能性のあるフッ素クリーニング効率の低下を低減できる。
本発明の成膜装置では、フッ素活性種を生成するための手段は、フッ素を構成元素として含む第2のガスから活性種を生成するリモートプラズマ装置を含むことができる。リモートプラズマ装置はプロセスチャンバに結合されている。
リモートプラズマを用いるとフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下を酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明の成膜装置では、第1のガスは、N2O、O2、H2O2、CO2、H2O及びO3の少なくともいずれかを含むことができる。本発明の成膜装置では、第2のガスは、NF3といったフッ化物ガス及びF2の少なくともいずれかを含むことができる。
本発明の成膜装置では、フェースプレートの材料はアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレートによれば、酸素処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
本発明の成膜装置では、プロセスガス源は、窒素含有ガス源及び酸素含有ガス源の少なくともいずれかのガス源と、シリコン含有ガス源とを含むことができる。制御部は、成膜シーケンスを制御するための成膜制御手段を含むことができる。成膜制御手段は、プロセスチャンバ内において基板上に、窒素及び酸素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物を形成するための第3の制御を行う手段を更に備えることができる。
成膜によりフェースプレート上には反応物が生成される。この反応生成物をフッ素の活性種によりクリーニングした後に、第2のガスのプラズマによりフェースプレートの表面が処理される。このプラズマ処理により、成膜の回数の増加とともに低下するフッ素クリーニング効率の低下を低減できる。フッ素クリーニングされたフェースプレートのクリーニング品質の低下を低減できる。
本発明の成膜装置では、プロセスガス源は、還元性物質を含む第3のガス源を更に含むことができる。成膜制御手段は、プロセスガス源を制御して、プロセスチャンバ内において基板を還元するための第4の制御を行うための手段を更に備えることができる。
この成膜装置では、基板を還元雰囲気に曝すことにより、基板の表面が還元されると共に、フェースプレートの表面も還元される。還元されたフェースプレートの表面はフッ素処理の後に酸素プラズマに曝されるので、フェースプレートの表面が酸化される。フッ素クリーニングされたフェースプレートのクリーニング品質の低下を低減できる。
本発明の成膜装置では、プロセスガス源は、アンモニアを提供するアンモニア源を含むことができる。還元性ガスを用いて、基板の表面の酸化物を還元することができる。また、基板の主面上には金属膜が形成されていてもよい。還元性雰囲気において、金属膜の表面の酸化物を還元することができる。
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
以上説明したように、本発明によれば、成膜におけるクリーニングの負担を軽減できる成膜装置を処理する方法、成膜方法、及び成膜装置が提供される。
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の成膜装置、成膜装置を処理する方法及び成膜方法に係わる実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る成膜装置を示す図面である。図1を参照すると、平行平板プラズマ成膜装置といった成膜装置1が示されている。成膜装置1は、2つ成膜セクション1a、1bを備える。引き続く説明では、成膜セクション1a及びこれに関連するセクションを説明する。
成膜装置1は、プロセスチャンバ5と、プロセスガス源7と、フェースプレート9と、ステージ11と、制御部13とを備える。プロセスガス源7は、酸素を構成元素として含む第1のガス源7aを含む。プロセスガス源7は、マスフローメータ及びバルブ17を介してプロセスチャンバ5に結合されている。プロセスガス源7とチャンバ5との間には、複数のガス源7a、7b、7c、7dからのガスを混合するガスミクサー19が設けられている。ガスミクサー19は、チャンバ5と配管を介して結合している。プロセスガス源7からのプロセスガス(例えば、原料ガス及びキャリアガス)は、プロセスチャンバ5に導入される。フェースプレート9は、プロセスチャンバ5内に設けられている。フェースプレート9は、高周波電力を提供できる電源21の一端21aに接続されている。フェースプレート9は、プラズマを生成するための一方の電極を構成するように設けられている。フェースプレート9は、ステージ11に対面する部分に複数の孔9aを有しており、孔9aを介してミクサー19からのガスをプロセスチャンバ5に導入している。ステージ11の電極11aは、プラズマを生成するための他方の電極を構成するように設けられており、電極11aは、キャパシタ23を介して電源21の他端21bに接続されている。電源21からの電力がフェースプレート9とステージ11との間に加えられると、プロセスチャンバ5内のガスのプラズマがフェースプレート9とステージ11との間の領域に生成される。例えば、フェースプレート9及びステージ11は、プロセスガス源9からのガスのプラズマをプロセスチャンバ5内に生成するための手段として働くことができる。好適な実施例では、成膜装置は、平行平板型プラズマ成膜装置といったプラズマCVD装置である。
この成膜装置1によれば、半導体デバイスを構成するための膜をステージ11上に設けられた基板上に形成することができる。また、この成膜装置1においては、成膜に先立って及び/又は成膜の後に、クリーニング活性種によりチャンバ5のクリーニングを行うことができる。
クリーニング活性種は、クリーニング活性種を生成するための手段によって生成される。クリーニング活性種はプラズマをプロセスチャンバ5内に生成するための手段を用いて生成されることができるけれども、好適な実施例では、成膜装置1は、リモートプラズマ装置3を含むことができる。リモートプラズマ装置3はプロセスチャンバ5に結合されている。リモートプラズマ装置3は、フッ素活性種を生成するためのガスを供給するガス源15に結合されており、このガス源15からのガスのプラズマを生成して、フッ素活性種F*といった活性種を生成する。リモートプラズマ装置3は、例えば、フッ素活性種を生成するための手段として働く。リモートプラズマ装置3からの配管は、ガスミクサー19とチャンバ5とを結合する配管と合流した後にプロセスチャンバ5に結合している。リモートプラズマ装置3からの活性種及びプロセスガス源7からのプロセスガス(例えば、原料ガス及びキャリアガス)は、プロセスチャンバ5に導入される。活性種は、プロセスチャンバ5内に導入される前に、フェースプレート9の中空領域において広がり、複数の孔9aを介してプロセスチャンバ5に導入されている。導入された活性種は、プロセスチャンバ5内のクリーニングのために作用する。
プロセスチャンバ5には、真空排気系25がゲートバルブ27を介して結合されている。プロセスチャンバ5には、また、マノメータ29が結合されている。
制御部13は、制御線31aを介してマスフローメータ及びバルブ17と接続されている。制御部13は、制御線31bを介して電源21と接続されている。制御部13は、制御線31cを介してリモートプラズマ装置3と接続されている。制御部13は、制御線31dを介してゲートバルブ27と接続されている。制御部13は、制御線31eを介してマノメータ29と接続されている。制御部13は、制御線31fを介してステージ11のヒータ11bと接続されている。制御部13は、制御線を介して31a〜31fを介して、信号の授受を行うことができる。
制御部13は、クリーニングシーケンスを制御するためのクリーニング制御手段33を含むことができる。また、制御部13は、成膜シーケンスを制御するための成膜制御手段35を含むことができる。半導体装置の製造プロセスでは、成膜装置1において成膜及びクリーニングが数千回繰り返される。クリーニングは、各成膜に先立って或いは各成膜の後に行われる。このクリーニングは、前回の成膜においてチャンバ内に形成された反応生成物を除去するために行われる。
図2は、制御部のクリーニング制御手段の構成を示す図面である。図2を参照すると、成膜装置1において用いることができる制御部13aが示されている。制御部13aはクリーニング制御手段33a及び成膜制御手段35aを備える。
クリーニング制御手段33aは、クリーニング用活性種を用いてフェースプレート9を処理するための第1の制御を行う手段37aと、酸素を構成元素として含むガスのプラズマにフェースプレートを曝すための第2の制御を行う手段37bとを有することができる。
好適な実施例では、クリーニング用活性種としては、フッ素活性種が用いられる。手段37aは、チャンバ5内に活性種を発生すること或いはチャンバ5内に活性種を導入するための制御信号を生成する。この制御信号に応答して成膜装置1の該当部分が動作すると、フェースプレート9に所望の処理が行われる。
成膜装置1のプロセスガス源7は、酸素含有物質のガスを供給するガス源9aを含む。手段37bは、プロセスガス源7を制御して、酸素を構成元素として含むガスをチャンバ5内に導入する。手段37bは、プロセスガス源7及びゲートバルブ27を制御して、チャンバ5内の真空度を制御する。手段37bは、電源21を制御して、成膜装置1の対向電極間に高周波電力を印加する。電力の印加により、チャンバ5内の対向電極間にはプラズマが発生される。フェースプレート9はこれらの対向電極の一方として機能するので、プラズマに曝される。
成膜装置1のクリーニング制御手段33aを用いると、フッ素活性種によりフェースプレート9をクリーニングした後に、酸素含有ガスのプラズマによりフェースプレート9の表面が処理される。この酸素処理により、成膜の繰り返しに伴って生じている可能性のあるフッ素クリーニング効率の低下を低減できる。
また、リモートプラズマ装置3を用いるとフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下を酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
図3は、クリーニング制御手段及び成膜制御手段を含む制御部の構成を示す図面である。図3を参照すると、成膜装置1において用いることができる制御部13bが示されている。制御部13bは、クリーニング制御手段33a及び成膜制御手段35bを備える。成膜制御手段35bは、シリコン化合物を形成するための制御を行うための手段として働く。詳述すれば、成膜制御手段35bに応答して成膜装置1の該当部分が動作するとき、ステージ11上の基板の表面にシリコン化合物が堆積される。プロセスガス源7は、窒素含有ガス源7b及び酸素含有ガス源7cの少なくともいずれかのガス源と、シリコン含有ガス源7dとを含むことができる。プロセスガス源7は、キャリアガス源を含むことができる。
チャンバ5内のステージ11上に基板を配置した後に、チャンバ5を真空排気する。手段35bは、真空度が所定値に到達した後に、窒素含有ガス源7b及び酸素含有ガス源7cのいずれかのガス源並びにシリコン含有ガス源7dを制御して、窒素含有ガス及び酸素含有ガスの少なくともいずれかのガス並びにシリコン含有ガスをフェースプレート9を介してプロセスチャンバ5に導入する。手段35bは、電源21を制御して、成膜装置1の対向電極間に高周波電力(例えば、13.56MHz程度の高周波電力)を印加する。電力の印加により、導入されたプロセスガスのプラズマがプロセスチャンバ5内の対向電極間に発生される。フェースプレート9及び基板の表面に、反応生成物が堆積される。
引き続いて、いくつかの成膜の具体例を説明する。成膜制御手段39aは、プロセスチャンバ5内において基板上に窒化シリコン膜を形成するための第3Aの制御を行う手段39aを更に備えることができる。プロセスガス源7は、窒素含有ガス源3bと、シリコン含有ガス源dとを含むことができる。手段39aにより、ステージ11上の基板の表面には、窒化シリコンが堆積される。
成膜制御手段35bは、プロセスチャンバ5内において基板上に酸化シリコン膜を形成するための第3Bの制御を行う手段39bを更に備えることができる。プロセスガス源7は、酸素含有ガス源7cと、シリコン含有ガス源7dとを含むことができる。手段39bにより、ステージ11上の基板の表面には、酸化シリコンが堆積される。
成膜制御手段35cは、プロセスチャンバ5内において基板上に、窒素及び酸素を含むシリコン化合物を形成するための第3Cの制御を行う手段を更に備えることができる。プロセスガス源7は、窒素含有ガス源7bと、酸素含有ガス源7cと、シリコン含有ガス源7dとを含むことができる。手段39cにより、ステージ11上の基板の表面には、酸窒化シリコンが堆積される。
上記のいずれかの手段によって制御されて為された成膜では、フェースプレート9上に反応生成物が堆積される。この反応生成物をフッ素の活性種によりクリーニングした後に、酸素含有ガスのプラズマによりフェースプレート9の表面が処理される。このプラズマ処理により、成膜の回数の増加とともに低下するフッ素クリーニング効率の低下を低減できる。フッ素クリーニングされたフェースプレートのクリーニング品質の低下を低減できる。
図4は、クリーニング制御手段及び成膜制御手段を含む制御部の構成を示す図面である。図4を参照すると、成膜装置1において用いることができる制御部13cが示されている。制御部13cは、クリーニング制御手段33a及び成膜制御手段35cを備える。成膜制御手段35cは、シリコン化合物を形成するための制御を行うための手段として働く。成膜制御手段35cは、既に説明された手段39a〜39cに加えて、プロセスガス源7を制御してプロセスチャンバ5内において基板の表面を還元するための制御を行うための手段39dを更に備えることができる。
好適な実施例では、基板は、その表面上に金属膜を備える。基板は、成膜装置1内にロードされる前、半導体製造工場のクリーニングルームに置かれている。クリーニングルーム内は、実質的に大気と同じ成分からなる雰囲気である。この雰囲気中に暫くの時間置かれた基板の表面には、自然酸化膜が形成されている。銅といった金属膜を備える半導体装置の中間生産物においては、金属膜の表面上の自然酸化膜を、後の成膜に先立って除去しておくことが好ましい。
成膜装置1の制御部13cは、自然酸化膜を除去するための制御を行う手段39dを備えている。成膜装置1のプロセスガス源7は、還元性物質を含むガス源7eを更に含むことができる。例えば、アンモニアは、金属酸化膜に対して還元性を示し、金属膜の表面に形成された金属酸化物を還元するために役立つ。詳述すれば、プロセスチャンバ5内のステージ11上に基板を配置した後に、プロセスチャンバ5を真空排気する。手段35dは、真空度が所定値に到達した後に、成膜に先立って、還元性ガス源7dからのガスをフェースプレート9を介してプロセスチャンバ5に導入する。チャンバ5内には、所定の分圧の還元性ガスが導入される。手段35dは、電源21を制御して、成膜装置1の対向電極間に高周波電力を印加する。電力の印加により、導入されたプロセスガスのプラズマがチャンバ5内の対向電極間に発生される。フェースプレート9及び基板の表面の物質がプラズマに曝されて、これらの表面の物質は還元される。基板上に銅膜が形成されているときは、銅膜の表面は、CuO及びCu2Oといった酸化銅の自然酸化物が形成されている。プラズマにより、銅膜の表面上の酸化銅は還元されて、消失する。次いで、成膜制御手段39a〜39cのいずれかの手段に応答して成膜装置3の該当部分が動作するとき、電力の印加により、導入されたプロセスガスのプラズマがチャンバ5内の対向電極間に発生される。基板の金属膜の表面上には、シリコン化合物が堆積される。そして、フェースプレート9の表面に反応生成物が形成される。
この成膜装置1では、基板を還元雰囲気に曝すことにより、基板の表面が還元されると共に、フェースプレート9の表面も還元される。還元されたフェースプレート9の表面はフッ素処理の後に酸素プラズマに曝されるので、フェースプレート9の表面が酸化される。この酸化により、還元性ガスにより減少したフェースプレート9の酸化物が回復される。故に、フッ素クリーニングされたフェースプレート9のクリーニング品質の低下を抑制できる。
図5は、制御部の構成を示す図面である。成膜装置1では、制御部13dは、クリーニング制御手段及び成膜制御手段を繰り返すための制御を行う手段41を更に備えることができる。成膜装置1によれば、成膜を繰り返してもクリーニング特性、成膜特性及び成膜品質の変動を小さくできる。
図6は、クリーニング制御手段及び成膜手段を含む制御部の構成を示す図面である。成膜装置1では、クリーニング制御手段33bは、フェースプレート9上に薄膜を堆積するための制御を行うシーズニング制御手段37cを更に備えることができる。このシーズニング制御手段37cによれば、クリーニングにより生じている可能性のある生成物を薄膜によりフェースプレート9上に閉じこめて、パーティクルの発生を低減できる。薄膜としては、シリコン化合物膜が例示される。この薄膜は、例えば、ステージ11上に基板を配置すること無く、成膜制御手段を行うことにより得られる。
これまでに説明したように、クリーニング制御手段33、成膜手段35及び繰り返し手段41を含む制御部13を利用して絶縁性シリコン化合物を堆積することができる。成膜装置1のプロセスガス源7では、ガス源7aは、例えば、N2O、O2、H2O2、CO2、H2O及びO3の少なくともいずれかの酸素含有ガスを供給できる。ガス源7bは、例えば、アンモニア(NH3)といった窒素含有ガスを供給できる。ガス源7cは、例えば、O2、O3、H2O2、N2O、H2O及びO3の少なくともいずれかの酸素含有ガスを供給できる。ガス源7dは、例えばSiH4といった無機シラン系ガス、或いは、例えばTEOSといった有機シラン系ガスの少なくともいずれかのシリコン含有ガスを供給できる。ガス源15eは、例えば、アンモニアといった還元性ガスを供給できる。また、プロセスガス源7は、例えば、F2、NF3及びその他のフッ化物ガスの少なくともいずれかを含むフッ素含有ガスを供給するガス源を備えてよい。
好適な実施例では、フェースプレート9の材料はアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレートによれば、酸素処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、プロセスチャンバ内にフェースプレートを有する成膜装置を処理する方法に係る。ます、プロセスチャンバ内にフェースプレートを備える成膜装置を準備する。成膜装置としては、例えば、第1の実施の形態において説明された成膜措置1が例示されるが、これに限定されるものではない。図7(a)〜図7(c)は、成膜装置を処理する方法を示すフローチャートである。
図7(a)を参照すると、フローチャート100が示されている。フローチャート100は、ステップS101において始まる。ステップS103では、フェースプレートがクリーニング用活性種に曝される。クリーニング用活性種としてはフッ素F*が例示される。ステップS105では、酸素を構成元素として含むガスのプラズマがチャンバ内に生成される。フェースプレートは、このプラズマを曝される。
例示的なプラズマ条件が下記に示される。
使用ガス:N2O
ガス流量:4000sccm
チャンバ内圧力:533.3Pa(4Torr)
ヒーター温度:摂氏400度
高周波電力:1000ワット。
フローチャート100に示された方法では、フッ素の活性種によりフェースプレートをクリーニングした後に、酸素含有物のガスのプラズマにフェースプレートを曝している。酸素のプラズマにより、フェースプレートの表面が処理される。このプラズマ処理により、フッ素クリーニング効率の低下が抑制される。プラズマ処理の後に、フローチャート100は、ステップS107において終わる。
図7(b)を参照すると、フローチャート110が示されている。フローチャート110は、ステップS109において始まる。好適な実施例では、プロセスチャンバ内にフェースプレートを有する成膜装置を処理する方法は、ステップ103に先立って、ステップ111を備える。ステップ111では、フッ素を構成元素として含むガスからリモートプラズマ源において活性種F*が生成される。
活性種F*の生成条件が下記に示される。
使用ガス:NF3
ガス流量:1400sccm
印加パワー:4000ワット。
ステップ111の後に、ステップS103において、リモートプラズマ装置から提供されたクリーニング用活性種にフェースプレートが曝される。ステップS105では、酸素を構成元素として含むガスのプラズマがチャンバ内に生成される。フェースプレートは、このプラズマを曝される。プラズマ処理の後に、フローチャート110は、ステップS115において終わる。
リモートプラズマ法により活性種を生成することによりフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下を酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
図7(c)を参照すると、フローチャート120が示されている。フローチャート120は、ステップS117において始まる。引き続いて、ステップS103及びS105が順次に行われる。好適な実施例では、ステップS119において、プラズマ処理によりフェースプレートの表面の酸化物が再生・回復された後に、シーズニング処理が行われる。シーズニング処理において、フェースプレート上に薄膜が堆積される。薄膜としては、酸素及び窒素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物膜が例示される。
シーズニング処理条件が下記に示される。
使用ガス:SiH4/N2O
ガス流量:260/3900sccm
印加パワー:300ワット。
シーズニング処理によれば、クリーニングにより生じている可能性のある生成物を薄膜によりフェースプレート上に閉じこめて、パーティクルの発生を低減できる。シーズニング処理の後に、フローチャート120は、ステップS121において終わる。
本実施の形態において、フッ素含有ガスは、NF3といったフッ化物ガス及びF2の少なくともいずれかを含むことができる。本実施の形態において、酸素含有ガスは、N2Oといった酸化物ガス及びO2の少なくともいずれかを含むようにしてもよい。また、本実施の形態において、フェースプレートの材料は、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレートによれば、酸素処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、成膜方法に係る。ます、プロセスチャンバ内にフェースプレートを備える成膜装置を準備する。成膜装置としては、例えば、第1の実施の形態において説明された成膜措置1が例示されるが、これに限定されるものではない。図8(a)〜図8(c)並びに図9(a)及び図9(b)は成膜方法を示す工程図である。
図8(a)を参照すると、成膜装置1が準備される、その後に、ステージ11上に基板51が配置されている。所定の真空度に到達するまで、排気ポート53からプロセスチャンバ5を真空排気する。ステージ11上には、基板生産物49が配置されている。基板生産物49は基板51を備えており、その主面上に半導体能動素子51aが形成されている。基板生産物49は、この素子51a上に形成された絶縁性シリコン化合物膜55を備えており、また、絶縁性シリコン化合物膜55上に形成された金属膜57を備える。
図8(b)を参照すると、基板上の金属膜57上に、窒素及び酸素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物が堆積される。この堆積を行うために、シリコン含有ガス、酸素含有ガス、窒素が入ガスを含む原料ガスをガス供給ポート59から供給する。電源21から、対向電極間に高周波電力が印加される。原料ガス61のプラズマ63が生成されて、金属膜上にシリコン化合物が基板上に堆積される。この成膜中には、基板上だけでなく、プロセスチャンバ5内のフェースプレート9上にもシリコン化合物が堆積される。所望の膜厚のシリコン化合物が堆積された後に、成膜を終了する。終了に際して、高周波電力を停止する。また、原料ガスの供給を停止する。
図8(c)を参照すると、成膜された基板67がチャンバ5から別のチャンバ65に搬送されている。基板の搬送に際して、チャンバ5の真空度は、大気圧にされることない。基板の搬送中も真空排気されており、チャンバ5内の圧力が所定の圧力以下に維持されている。
図9(a)を参照すると、フェースプレート上のシリコン化合物をエッチングするために、フッ素の活性種67にフェースプレートが曝されている。好適な実施例は、リモートプラズマ装置3において、フッ素を構成元素として含むガスから活性種を生成している。生成された活性種は、ポート59を介してプロセスチャンバ5内に導入される。リモートプラズマ装置3には、NF3といったフッ化物ガス及びF2ガスの少なくともいずれかを含むフッ素含有ガスがガス源15から供給される。生成された活性種は、プロセスチャンバ5内のフェースプレート9の表面の反応生成物を除去する。プロセスチャンバ5には、所定の量の活性種がポート59を介して供給されており、排気ポート53を介して排気される。故に、プロセスチャンバ5内に、クリーニング活性に富んだ活性種が存在している。クリーニング終了する際に、活性種の供給は停止される。リモートプラズマを用いるとフッ素クリーニングを効率的に行うことができるので、フッ素クリーニング効率の低下を酸素処理により低減できるという技術的な利点が効果的に発揮される。
図9(b)を参照すると、フェースプレートを曝す工程の後に、フェースプレートが酸化される。フェースプレートを酸化するために、プロセスガス源7から酸素含有ガス69がポート59を介してプロセスチャンバ5に供給される。酸素含有ガス69の供給を開始した後に、フェースプレート9とステージ21との間に電源21から高周波電力71を印加する。高周波電力の印加により、フェースプレート9とステージ21との間には、酸素含有ガスのプラズマが生成される。フェースプレート9が酸素プラズマに曝されるので、フェースプレート9の表面は酸化される。この酸化処理により、フェースプレート9の表面が再生される。
この方法では、成膜によりフェースプレート9上に生成された反応物をフッ素の活性種によりクリーニングした後に、酸素のプラズマによりフェースプレート9の表面が処理される。この酸素処理により、フェースプレート9の表面が、成膜の後に再生処理されている。故に、成膜の回数の増加とともに低下するフッ素クリーニング効率の低下を抑制できる。したがって、フッ素クリーニング工程及び成膜工程の繰り返し数を増加できる。
本実施の形態の成膜方法では、フェースプレート9の材料は、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかであることができる。これらの材料のフェースプレート9によれば、酸素含有ガスのプラズマ処理による技術的な利点が効果的に発揮される。
(第4の実施の形態)
図10(a)〜図10(c)は、成膜方法を示す工程図である。本実施の形態の成膜方法は、図8(a)に示された工程に先立って、図10(a)〜図10(c)の各々に記載された工程を備えることができる。
図10(a)を参照すると、基板生産物73は、基板51と、基板51上に設けられた絶縁膜55と、絶縁膜55上に設けられた金属膜57とを備える。基板生産物73は、金属膜57の形成が完了した直後のものであり、金属膜57の表面にはまだ自然酸化膜は形成されていない。
図10(b)を参照すると、基板生産物73を大気中に所定の時間だけ置いた後に得られる基板生産物75が示されている。基板生産物75は、金属膜57上に酸化膜77が形成される程度に大気中に置かれている。
図10(c)を参照すると、基板生産物75が、成膜装置1内のステージ11上に配置されている。本実施の形態の成膜方法は、基板上にシリコン化合物を形成する工程に先立って、還元性ガス79から形成される還元性雰囲気に基板生産物75を曝す工程と更に備えることができる。基板生産物75は、その主面上に金属膜57を備えている。還元性ガスのプラズマ81といった還元性雰囲気中において、金属膜57上の自然酸化膜77は還元されて金属酸化物は消失する。還元性ガス79のプラズマ81は、対向電極間に高周波電力を印加することにより還元性ガス79から生成される。還元性ガス79は、ポート59から供給される。金属酸化物の還元工程の後に、図8(a)に示された工程が引き続いて行われる。
基板生産物75の金属膜表面だけでなくフェースプレート9も、還元性ガスのプラズマ81に曝される。フェースプレート9の表面の酸化物も還元されるので、フェースプレート9の表面は、酸化物の再生がないときは金属材料が部分的に露出するようになる。酸素含有ガスのプラズマ処理によって、フェースプレート9の表面に酸化物が再生される。したがって、還元工程の後にフェースプレート9の表面を酸化することにより、フッ素活性種によるクリーニング効率の低下を抑制できる。
好適な実施例では、金属膜57は銅を含む。好適な実施例では、還元性雰囲気はアンモニアを含む雰囲気であることができる。アンモニアを用いて、基板生産物75上の金属膜57の表面の金属酸化物を還元することができる。
これまでの説明から理解されるように、本実施の成膜方法は、次のような工程を備えることができる。つまり、成膜方法は、(a)プロセスチャンバ5内にフェースプレート9を備える成膜装置1に、金属膜を備える基板生産物75を置く工程を備えることができる。成膜方法は、(b)プロセスチャンバ5内において基板生産物75を還元雰囲気に曝す工程を備えることができる。成膜方法は、(c)窒素及び酸素の少なくともいずれかを含むシリコン化合物を、還元された金属膜上に堆積する工程を備えることができる。成膜方法は、(d)シリコン化合物を金属膜上に堆積した後に、基板を成膜装置から取り出す工程を備えることができる。成膜方法は、(e)フッ素の活性種にフェースプレート9を曝す工程を備えることができる。成膜方法は、(f)酸素を構成元素として含むガスのプラズマにフェースプレート9を曝す工程を備えることができる。この成膜方法によれば、基板生産物75を還元雰囲気に曝すことにより、金属膜の表面が還元されると共に、フェースプレートの表面も還元される。還元されたフェースプレートの表面はフッ素処理の後に酸素プラズマに曝されるので、フェースプレートの表面が再生される。再生処理されたフェースプレートを有する成膜装置を用いて、引き続き成膜を行うことができる。
この成膜方法は、(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程、(e)工程、(f)工程を繰り返す工程を更に備えることができる。この成膜方法によれば、成膜を繰り返してもクリーニング特性の変動が小さい。
このような成膜方法は、銅膜を配線層として利用するダマシン構造の半導体装置を製造するために好適な工程を備えている。
引き続いて、発明者らが行った実験を示す。
図11は、クリーニング率の変化を示すグラフである。横軸は処理ウエハ数を示しており、縦軸はクリーニング率の変化を示す。A群のデータは、フッ素クリーニング工程と、この後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備える処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。B群のデータは、フッ素クリーニング工程の後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備えない処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。B群のデータは、処理ウエハ数が増加すると共にクリーニング率が低下している。一方、A群のデータは、処理ウエハ数が増加しても、クリーニング率の低下が実質的に現れていない。クリーニング率は、十分に厚いシリコン酸化膜をウエハ上に形成した後に、活性種によるシリコン酸化膜のエッチングレートを示す。図11の結果は、フェースプレートの酸化を行うことの有無により、クリーニング率に著しい差が生じていることを示している。
図12は、パーティクル数の変動を示すグラフである。横軸は処理ウエハ数を示しており、縦軸はパーティクル数の変化を示す。○印及び△印のシンボルにより示されたデータ群は、フッ素クリーニング工程と、この後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備える処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。なお、C群のデータは活性種によりクリーニング時間が100秒であり、D群のデータは活性種によりクリーニング時間が110秒である。なお、処理ウエハ数が400枚の位置におけるパーティクル数が一時的に増加していることは偶発的なものである考えられる。何れのデータも、処理ウエハ数が増加しても、パーティクル数は実質的に変動していないことを示している。
図13は、膜の面内均一性及び成膜レートを示すグラフである。横軸は処理ウエハ数を示しており、右縦軸は面内均一性を示しており、左縦軸は成膜レートを示す。○印及び△印のシンボルにより示されたデータ群は、フッ素クリーニング工程と、この後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備える処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。何れのデータも、処理ウエハ数が増加しても、成膜レート及び膜の面内均一性は実質的に変動していないことを示している。
図14は、膜ストレス及び屈折率を示すグラフである。横軸は処理ウエハ数を示しており、右縦軸は屈折率を示しており、左縦軸は膜ストレスを示す。○印及び△印のシンボルにより示されたデータ群は、フッ素クリーニング工程と、この後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備える処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。何れのデータも、処理ウエハ数が増加しても、膜ストレス及び屈折率は実質的に変動していないことを示している。
図15は、プロセスレシピに対するクリーニング率を示すグラフである。横軸はプロセスレシピを示しており、縦軸はクリーニング率Rの変化△Rを示している。変化△Rは、N2Oプラズマ処理を追加することにより生じたクリーニング率の変化を示す。つまり、△Rは、(Rpresent−Rcomp)の絶対値を示す。
クリーニング率Rpresentのデータは、フッ素クリーニング工程と、この後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備える処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。クリーニング率Rcompのデータは、フッ素クリーニング工程の後にN2Oガスのプラズマにフェースプレートを曝す工程とを備えない処理方法(アンモニア還元工程有り)に対して得られたものである。
プロセスレシピPR1の条件を下記に示す。
N2Oプラズマ処理時間:900秒
N2O流量;4000sccm
N2O圧力:533.3Pa(4Torr)
高周波電力:300ワット
電極間隔:12.7ミリメートル(500mils)。
プロセスレシピPR2の条件は、N2O流量を2000sccmに変更しており、その他はPR1に同じ。プロセスレシピPR3の条件は、N2O流量を6000sccmに変更しており、その他はPR1に同じ。プロセスレシピPR4の条件は、N2O圧力を799.9Pa(6.0Torr)に変更しており、その他はPR1に同じ。プロセスレシピPR5の条件は、高周波電力を1000ワットに変更しており、その他はPR1に同じ。
図15の実験結果によれば、高周波パワーを大きくすることが有効であることを示している。好適な高周波パワーの値は、300ワットを超える値である。更に好適には、1000ワット以上の値である。
以上説明したように、いくつかの実施の形態に示された成膜装置、成膜方法、成膜装置を処理する方法においては、成膜工程の繰り返しにより徐々に失われていくけれどもクリーニング工程においてプラズマ処理によりフェースプレート上の保護膜を補充している。この補充により、クリーニング活性種によるチャンバクリーニングの変動が小さくなる。また、フェースプレートにプラズマ処理を施しているので、成膜速度が速いといった技術的な利点がある。故に、成膜を繰り返したときに、フェースプレートの表面の品質の劣化が少ない。したがって、クリーニングの負担を軽減できる成膜方法、成膜装置及び成膜装置を処理する方法が提供される。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることができることは、当業者によって認識される。本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神から来る全ての修正および変更に権利を請求する。