JP4931594B2 - 動力伝達用リブドベルト - Google Patents

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Description

本発明は、V字のリブ(V‐ribs)を呈する動力伝達のリブドベルト、すなわち「ポリV(Poly‐V)」ベルトとして知られる種類のベルトに関し、さらに詳しくは、そのリブの頂部が円形に丸められた形状を有し、平坦な側面を有するベルトに関する。
そのようなベルトの1つが、米国特許第4,047,446号明細書で提案されている。この特許においては、ベルトが磨耗したときにベルトと滑車との間に有害な接触が生じないようにするため、第1に滑車における突起44の頂部43とベルトにおける溝40の底部45との間に、第2にベルトにおけるリブ35の頂部50と滑車の突起44間における空間の底部51との間に、等しいサイズの空隙52および53を確保するようにリブの頂部が丸められている。このベルトは、かなりの高さの歯を呈しており、曲げ/圧縮応力に対してきわめて敏感である。
往復の曲げに起因する応力によって動力伝達ベルトの歯に生じる割れを回避するため、米国特許第4,904,232号明細書では、円形状を呈する頂部を有する歯であって、頂部のそれぞれが歯の残りの部分よりも低いショアA硬度を有するエラストマで作られている歯を実現することを提案している。
このような構成は、ベルトの製造が相当に複雑になるという欠点を有している。
米国特許第5,803,855号明細書では、隣り合うリブ間に逃げ空間を設け、非線形の接触面を使用することにより、ベルトと滑車との間の接触を改善してベルトの頂部における応力集中を緩和し、これによってリブの割れを低減することを提案している。このベルトにおいては、頂部が円弧の形状であってよく、この頂部は平坦でない側面とつながっている。
この種のベルトは、とくに、良好な動力伝達を保証し、かつリブ間の逃げ空間を確保するように設計されるべき接触面の形状が平坦でないため、実現が容易ではない。
本発明は、例えば動力付きの車両(車、オートバイ、・・・)において、上記従来技術の欠点を回避しつつ、歯の頂部に見られる割れ現象を少なくとも相当程度抑制できるベルトを提供しようとするものである。
本件の出願人は、驚くべきことに、歯の頂部における割れが出現しやすいのは、ベルトが曲げサイクルにさらされる場合に限らないことを発見した。
すなわち、本件出願人は、従来は認識されていなかった他の現象として、歯の頂部の非接触領域における膨張によって構成される現象が存在することを発見した。そのような膨張は、ベルトの張力および曲げ直径に起因しており、とくに接触縁における変形をもたらし、これが割れの発生につながり得る。この現象は、小さな曲げ直径(例えば、オルタネータの滑車に見られるような60ミリメートル(mm)未満の直径)において顕著になる傾向にある。このような小さな直径は、車のベルト駆動システムにしばしば存在する。
米国特許第4,944,717号明細書は、側面が平坦であるVベルトの曲げの問題を、歯に凹状の形状の頂部を設けることによって緩和することを提案している。しかしながら、このような形状は、歯の頂部における最大変位量の増加を引き起こすため、膨張変形の観点からは好ましくない。
さらには、成型によって得られた歯の平坦な頂部を調整するため、側面へと直接つながっている、又は小さな曲率半径(0.6mm以下)を介してつながっている平坦な頂部を機械加工することによって、形を整えることが提案されている。これにより、成型によって生成されるもっとも脆弱な層である平坦な表面層を除去することができるが、これは、付加的な調整工程が必要となる。この形状は高さが低く、張力を達成することによって生じる膨張変形に対し、そのような変形が曲げ直径にも依存するため、敏感であり、したがって以前は認識されていなかった膨張の問題に起因する割れが発生する。
換言すれば、従来技術の課題解決手段は、曲げ現象に直面したベルトの挙動を改善しているが、一般に膨張変形に直面した挙動の悪化をともなっている。
本発明の目的は、リブの頂部において割れを発生させる膨張に関する挙動を改善するベルトを提供することにある。
この目的のため、本発明は、平坦な側面と曲線的な頂部とを有するV字リブを少なくとも呈しているとくには自動車用の動力伝達ベルトであって、前記頂部が、1mmよりも大きくかつ1.5mm以下である平均曲率半径を有する凸状の曲線形状を呈していることを特徴とするベルトを提供する。
歯の頂部の曲線形状は、好ましくは成型によって得られるが機械加工によって得ることも可能であり、特定の曲率半径の範囲においては、成型によって得られる平坦な頂部と比べて変形の有害な集中を回避して、膨張変形の集中に関する挙動を大きく改善することができる。
前記曲率半径は、例えばリブにおける前記頂部を構成している円の半径であるが、1mmよりも大きく、とくには1.1mmよりも大きく、かつ1.5mm以下である。これは、1.05mm〜1.45mmの範囲とすることができ、とくには1.1mm〜1.3mmの範囲、とりわけ1.15mm〜1.25mmの範囲とすることができる。
リブの底部と前記頂部とをつなぐ間について測定される平坦な側面の長さλは、0.7mm〜1.8mmの範囲、とくには0.8mm〜1.7mmの範囲、とりわけ1mm〜1.5mmの範囲、好ましくは1.08mm〜1.36mmの範囲とすることが好ましい。
リブの高さHは、1.8mm〜2.4mmの範囲、とくには1.9mm〜2.3mmの範囲、とりわけ2mm〜2.2mmの範囲とすることが好ましい。
好ましくは、前記曲線形状は、前記側面との接点において、前記側面が当該曲線形状の接線に沿っている。
V字リブは、成型によって形成することができる。あるいは、V字リブの少なくとも頂部が機械加工される。
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ行なわれる以下の説明を理解することで、より明らかになる。
図面において、数値、すなわち、R、λ、P、H、およびHは、ミリメートルを単位として示されている。
今日のV字リブ・ベルトの形状は、例えばK形状について適宜に定められたリブまたは歯の底部およびリブの頂部の半径とともにとくに角度(40°)およびピッチ(3.56mm)を指定するISO 9981などのプーリの規格に従っている。
これらプーリについての制約にかかわらず、ベルト製造業者は、粘着による動力の伝達を可能な限り最良の寿命とともに得るため、ベルトの形状を自由に設計することができる。
動力の伝達は、ベルトの寿命全体を通じて、過度の滑りを生じることなく1つ以上の補機類を駆動し、かつこれを故障なく行なう能力を、ベルトに要求する。この動作上の制約は、一部には、滑りを防止するために必要な張力の作用のもとで、滑車の溝へと当接する接触面に関係している。
とくには、滑車および/または筋のない部品を交互に通過することによって加わる歯の往復の曲げによって引き起こされる頂部における歯の割れの発生によってベルトの寿命の終わりが示される。伝達システムが例えばベルトの背面に接する偏向プーリを備える場合は常に、歯に引っ張りおよび圧縮が交互に作用する。この交互の疲労が、割れにつながる。
さらに、本件の出願人によって発見されたとおり、この割れの発生は、歯の頂部の非接触領域が膨張することによっても起こり、これによってとくには接触面との接続の近傍において変形が引き起こされ、これが同様に割れへとつながる。
種々の外形の形状が、とくに曲げによって生じる影響を軽減するために提案されている。高さが減じられた形状は、基本的には、曲げ応力について改善をもたらす。そのような形状はすべて、歯の頂部によって構成される自由領域(free zone)を有している。この自由領域は、平坦であって、滑車の外形へと接触している接触領域(平坦な側面)へと連続しており、随意によりこの領域間の連続を曲線的な部位を介して行われている。
これらの従来技術の切頭形状においては、引っ張りおよび巻き付けによって、自由領域にかなりの膨張変形が生じる。結果として生じるこの変形が、歯の頂部における割れの発生につながる。この膨張変形は、曲げによる変形よりも大きい。結果として、これらの形状は、曲げに起因する変形によって生じる影響の軽減についてのみ機能し、寿命の問題に対する真の解決策を提供してはいない。
本発明においては、平坦な両側面に接続する完全に曲線的な形状によって、引っ張りの作用下で均一な膨張が得られるようになる。さらに、従来からの形状において歯の頂部と平坦な側面との間の接続部近傍で最大となる膨張変形を、この曲面形状によって少なくすることができる。
所定の歯の高さにおいて、自由状態における幾何学的接触の減少は、曲線的な部位がベルトの引っ張りおよび曲げの作用のもとで変形することよって補償される。第1の近似として、接触面積が同等に保たれる。これにより、公知のベルトと同等の伝達レベルをもたらすことができる。
図1a〜1dは、本発明のK型の成型ベルトの4つのリブ形状3の断面を、3.56mmのピッチPおよび40°の角度αについて示している。歯の頂部は、歯一式以外の部分と同じエラストマで作られている。
これらのリブは、歯の底部と歯の頂部との間で測定した高さHによって特徴付けられる。歯のリブの底部6は、0.25mmの半径で丸められている。この底部が、平坦な両側面4を互いに接続している。各側面4は、ベルトの断面において、歯の底部6への接続点Aと凸状の歯の頂部5への接続点Bとの間を延びる長さλの直線の線分ABをもたらしている。図1a〜1dにおいては、歯の頂部5は、断面においてリブ6の軸に中心Oを置く半径Rの円弧であるとして示されている。
図1aにおいては、R=1.05mm、λ=1.63mm、およびH=2.39mmである(図4および図5の曲線III)。
図1bおよび図3においては、R=1.15mm、λ=1.36mm、およびH=2.2mmである(図4および図5の曲線II)。
図1cにおいては、R=1.25mm、λ=1.08mm、およびH=2mmである。
図1dにおいては、R=1.35mm、λ=0.81mm、およびH=1.81mmである(図4および図5の曲線I)。
好ましい2つの形状は、図1bおよび図1cの形状となる。これは、膨張変形および曲げ変形に関する高いレベルの性能を、高いレベルの動力伝達をもたらす歯の高さに組み合わせているためである。
例として、とくには以下の値を有する他のリブ形状を挙げることができる。すなわち、
R=1.1mm、λ=1.5mm、およびH=2.3mm
R=1.2mm、λ=1.22mm、およびH=2.1mm
R=1.3mm、λ=0.95mm、およびH=1.9mm
である。
図4において、1.81mmおよび2.39mmの高さHに対応する曲線Iおよび曲線IIIについて、最大の変形(16%〜17%の範囲にある)が、高さHが2.2mmの場合よりも大きいことを見て取ることができる。2.4mmを超える高さHにおいては、圧縮変形がより大きくなる。なお、機械加工された側面を有する従来技術のベルトでは、さらに大きくなる(曲線IV)。
それにもかかわらず、上述の形状はすべて、膨張および曲げに起因する応力の観点から、満足できる性能を呈する。
実際には、K型ベルトにおいては、ピッチPは、3.5mm〜3.62mmの範囲であればよく、平坦な側面4間の角度αは、36°〜44°の範囲にあればよく、半径は、0.25mm未満(0.1mmの最小値を有する)であればよい。
上述の形状は円形であるが、同じ平均曲率半径を有する放物線、長円形、・・・などの形状によって近似させてもよい。
歯の高さを小さくすることは、曲げ応力の観点から好ましく、また、半径Rおよび歯の頂部の凸状領域5の幅の増加を伴い、これは膨張変形の観点から好ましい。図2は、所与のレベルの張力(例えば、120N/歯/ストランド)においてベルトによって占められる位置を示している。
図5は、上記指定の3つのベルトについて、接触長さLを張力T(単位は、N/歯/ストランド)の関数として示している。高さ1.8mmのベルト(曲線I)は、動力伝達に充分な接触長さLを呈している。高さ2.2mmのベルト(曲線II)は、変形(図4)と接触長さLとの間に良好なバランスを構成している。高さ2.4mmのベルトは、より大きな長さLを呈するが、曲線IIとくらべて膨張変形のレベルが損なわれている。
L>λとなる接触長さLを得ることができることを、見て取ることができる。これは、頂部の部位5を滑車10の溝11へと押し込むベルトの張力によって、生じる現象のためである。しかしながら、高さHを小さくしすぎることは、同時にλが小さくなり、したがって長さLが小さくなりすぎる傾向にあるため、不可能である。
図3は、図1bの実施形態に相当するK型ベルト(ピッチは3.56mm)の断面である。このベルトは、従来と同様に、例えばポリクロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、水素化ニトリルブタジエンゴム、・・・、などのエラストマ材料からなるベルト本体1と、例えばポリエステルまたはポリアミド4.6、6、または6.6で作られた接触巻きが螺旋に巻き付けられて補強糸を構成している第2の層7と、最後に例えばポリクロロプレンゴム、EPDM、水素化ニトリルブタジエンゴムなどのエラストマ材料からなり、個のリブ3を備えている層8と、を有している。この例においては、ベルトの全高Hは4.3mmであり、歯の高さは2.2mmである。
「コンツログラフ」と称される標準的な器具を使用して、あるいはビデオメータまたは投影機上のベルトのスライスのクリーンな断面から、ベルトを切断することなくリブを測定することができる。
本発明のK型ベルトのリブ形状の4つの実施の形態の断面である。 本発明のK型ベルトのリブ形状の4つの実施の形態の断面である。 本発明のK型ベルトのリブ形状の4つの実施の形態の断面である。 本発明のK型ベルトのリブ形状の4つの実施の形態の断面である。 滑車に取り付けられた本発明のベルトを示す図である。 本発明の好ましい実施の形態におけるベルトを示す図である。 張力が歯1本当たりかつストランド1本当たりで120ニュートン(120N/歯/ストランド)であり、滑車の直径が45mmであるときについて、自由領域における歯の表面(外皮)の膨張変形を、本発明の3つのベルト、すなわち図1dに示したベルト(曲線I)、図1bおよび3に示したベルト(曲線II)、および図1aに示したベルト(曲線III)について、機械加工された平坦な側面を呈する従来技術のベルト(曲線IV)と比較して比べたグラフである。 上述のベルト(それぞれ、曲線I〜III)について、歯の横腹の滑車との接触長さL(単位:mm)を、ベルト張力(単位:N/歯/ストランド)の関数としてプロットした図である。

Claims (12)

  1. 平坦な側面及び曲線的な頂部から構成されるV形状を有するV字リブを有しており、歯の頂部が歯一式の残りの部分と同じエラストマで作られている自動車用のK型の動力伝達ベルトであって、
    前記平坦な側面の間の角度αは、36°〜44°の範囲にあり、
    前記頂部は、1mmよりも大きくかつ1.5mm以下である平均曲率半径を有する凸状の曲線形状を呈しており、
    歯の底部と前記頂部とをつなぐ間で測定される平坦な側面の長さλは、0.7mm〜1.8mmの範囲にあり、
    前記リブの高さHは、1.8mm〜2.4mmの範囲にあることを特徴とするベルト。
  2. 前記曲率半径の範囲は、1.05mm〜1.45mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
  3. 前記曲率半径の範囲は、1.1mm〜1.3mmの範囲、とくには1.15mm〜1.25mmの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のベルト。
  4. 前記曲線形状は、前記曲率半径に等しい半径の円であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のベルト。
  5. 前記長さλは、0.8mm〜1.7mmの範囲にあることを特徴とする請求項に記載のベルト。
  6. 前記長さλは、1mm〜1.5mmの範囲、とくには1.08mm〜1.36mmの範囲に実質的にあることを特徴とする請求項に記載のベルト。
  7. 前記リブの高さHは、1.9mm〜2.3mmの範囲、とくには2mm〜2.2mmの範囲にあることを特徴とする請求項に記載のベルト。
  8. 前記曲率半径は、1.15mmに実質的に等しく、前記リブの高さHは、2.2mmに実質的に等しく、平坦な側面の長さλが、1.35mmに実質的に等しいことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト。
  9. 前記曲線形状は、前記側面との接点において、前記側面が当該曲線形状の接線に沿っていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のベルト。
  10. K型であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のベルト。
  11. 前記V字リブは、成型によって形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のベルト。
  12. 少なくとも前記V字リブの頂部は、機械加工されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のベルト。
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