以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の観察装置の原理を説明する図、図2は本発明の実施の形態1における観察装置の構成を示す断面図、図3は図2に示した観察装置の電気系を示す構成図、図4は図2に示した観察装置を工作機械保持部側から見た図、図5は本実施の形態1に係る観察装置による観察対象の観察を説明する図、図6は本実施の形態1に係る観察装置による観察対象の観察を説明する図、図7は本実施の形態1に係る観察装置による観察対象の観察を説明する図、図8は本実施の形態1に係る観察装置による観察対象の観察を説明する図、図9は本実施の形態1に係る観察装置による観察対象の観察を説明する図である。
本発明の観察装置の原理について図1を参照して説明する。
図1(a)、(b)において、加工物(観察物)10には穴11が形成され、この穴11の壁面12には溝が形成されている。このような加工物10の配置位置から所定の距離離間して対物レンズ40が配置され、この対物レンズ40の配置位置から、加工物10に対し遠ざかる方向で所定の距離離間して、後述する光学像の光量を調節するための絞り50が配置されている。
ここでは、対物レンズ40と絞り50とで観察装置が構成されている。また、穴11や壁面12に形成された溝が加工物10の加工部位(観察部位)に相当する。
図1(a)に示すように、加工物10の物点20の像面の位置で、絞り50が光軸60上に存在するとき、物点20と物点30の像面70での光線の結像点21と結像点31との差が小さいので、壁面12における物点30の溝の側壁はほとんど見えない。
これに対し、図1(b)に示すように絞り50の開口部の中心51を光軸60に対し垂直方向に移動(この例では紙面に対し下側に移動)させることにより(離芯させることにより)、像面70での光線の結像点21と結像点32との差が大きくなり、壁面12における物点20から物点30までの区間13の溝の側壁が傾いたように見える。
次に、このような本発明の観察装置の詳細について、図2を参照して説明する。
ここで、加工物10に対し加工を施す図示しない工作機械(NC工作機械)は、例えばNCフライスマシンであり、X方向およびY方向に移動可能なXYテーブルと、Z軸を中心とする回転軸(基準軸)とを備えている。加工物10は、このXYテーブルの所定の位置に固定されるようになっている。図2では、加工物10には工作機械による加工により加工部位15が形成されていることが示されている。また、この工作機械(NC工作機械)においては、上記回転軸に切削工具が取り付けられ、この切削工具を用いて加工物に対する加工が施される。
本実施の形態1では、加工部位15は、微細な加工状態であり、例えば穴および溝のうち少なくとも1つである。このような加工部位の観察対象は光軸に平行な面であり、例えば加工部位15が穴の場合には当該穴15の側壁であり、加工部位15が溝の場合は当該溝の側壁であり、加工部位15が外壁や内壁の場合にはその壁面である。
さて、図2に示すように、観察装置100は、レンズG1、レンズG2、ハーフミラーG3、反射鏡G4、集光レンズG5、工作機械保持部110、絞り50を含む絞り移動機構120、撮像装置(光電変換装置)130、光源140、筐体(ケース)150、筐体150の外側に設けられる発電コイル160、および弾性体カバー170を備えている。
工作機械保持部110は、図示しない工作機械の基準軸(回転軸)に着脱可能に装着される切削工具の工作機械保持部と同等の形状になっており、切削工具に代替して工作機械(図示せず)の基準軸(回転軸)に容易に着脱可能に装着される。
工作機械保持部110が工作機械の基準軸に装着されたときは、この工作機械の基準軸の中心と観察装置100の光学系の基準軸つまり光軸180(図1(a)、(b)の光軸60に相当)とが一致するようになっている。
本実施の形態1では、レンズG1、レンズG2、ハーフミラーG3、反射鏡G4および集光レンズG5の各光学素子で、加工部位15に対応する光学像を得るための光学系を構成している。しかし、後述する照明系に含まれる光学素子を除いた場合、光学系はレンズG1およびレンズG2であると言える。
また、レンズG1およびレンズG2で対物レンズ12(図1(a)、(b)の対物レンズ40に相当)を構成している。
さらに、光源140、集光レンズG5、反射鏡G4およびハーフミラーG3で照明系つまり同軸落射照明を行う同軸落射照明手段を構成している。
この同軸落射照明手段においては、光源140から出照された光は、集光レンズG5を通過して反射鏡G4で反射し、この反射された光の一部は、ハーフミラーG3で反射して、対物レンズG12から同軸落射照明として加工物10を照明する。すなわち、光源140から出照された光は、同軸落射照明として加工物10を照明する。
加工物10の内部で反射された光は対物レンズG12を通過し、この通過した光の一部は、ハーフミラーG3を通過するとともに絞り50を通過し、撮像装置130によって受光される。
撮像装置130は、受光した光、すなわち光学系、および絞り50特に当該光学系の光軸180に対し垂直方向に移動された状態の絞り50を介して光学的に得られる情報(観察対象の加工物10の加工状態に対応する光学像)を電気信号に光電変換する。具体的には、加工部位15、または加工部位15を含む被写体(加工物10)の光学像を電気信号に変換する。この電気信号に変換された光学像は画像としてデータ化される。
絞り50を含む絞り移動機構(絞り移動手段)120は、絞り50を垂直移動および回動(回転)移動させる構造になっており、例えばネジ(図示せず)を回転させることにより、このネジの回転に従動して絞り50を光軸180に対し垂直方向に移動させるようになっている。図2の例では、絞り50の開口部の中心51(図1)は、光軸180に対し垂直方向に距離dだけ移動されている(離芯している)。
また、絞り移動機構120は、例えば回転移動構造(図示せず)を光軸180に対し垂直な面と平行に回転させることにより、例えば距離d(半径d)を維持した状態で絞り50を回転移動させることができる。つまり、絞り移動機構120の回転移動構造を360度回転させた場合には、絞り50の開口部の中心と光軸180との光軸180上の交点を中心として、例えば半径d(距離d)の円が描かれる。すなわち、絞り50の開口部の中心が円の軌跡を描く。
したがって、加工物10の加工部位15に関し、当該加工部位15に係る穴の側壁、あるいは溝や壁(外壁、内壁)の壁面を360度観察対象とすることができる。
筐体150は、対物レンズG12(レンズG1,G2)、ハーフミラーG3、反射鏡G4、集光レンズG5、絞り50を含む絞り移動機構120、撮像装置130、光源140、後述する電源制御部210、蓄電池220および通信装置230を収容している。
筐体150の撮像装置130側の開口部と工作機械保持部110とが密着されているので、観察装置100は気密構造になっている。
発電コイル160は、筐体150の外側に所定の巻数Nで巻回されており、外部からの電磁誘導により電力が供給されるようになっている。
弾性体カバー170は、弾性体で形成されており、発電コイル160、筐体150、および筐体150と工作機械保持部110との密着部分を覆う、つまり筐体150の略全体を覆う。このように観察装置100の筐体150の略全体を弾性体である弾性体カバー170で覆うことにより、筐体150内に配置されている光学系の保護(軽度の衝撃、切削油、切削粉等からの保護)を実現している。
次に、上述した観察装置100の電気系について、図3を参照して説明する。
観察装置100は、電気系として、図2に示した撮像装置130、光源140および発電コイル160に加えて、電源制御部210、蓄電池220および通信装置230を備えている。
電源制御部210は、外部からの電磁誘導により発電コイル160で発電された電源(電力)を制御、例えば交流電力(AC電圧)を直流電力(DC電圧)へ変換(AC/DC変換)するなどの制御を行う。
蓄電池220は、電源制御部210によって生成された直流電力を蓄積し、この直流電力(直流電源)を、撮像装置130、光源140および通信装置230へ電源として供給する。
通信装置(通信手段)230は、例えば無線通信により、撮像装置130からの画像データ(加工部位に対応する画像データ)を外部通信装置240または外部通信装置260を介して、外部装置、例えばコンピュータ250または表示装置270へ送信する。
具体的には、外部装置をコンピュータ250とした場合では、通信装置230からの画像データは、外部通信装置240によって受信され、さらに、画像処理を行う画像処理装置、NC制御を行うNC制御装置などのコンピュータ250に入力される。コンピュータ250(例えば画像処理装置)では、受信した画像データをデータ処理し、例えば少なくとも観察対象の加工部位(加工部位15)の位置または寸法をNC制御装置のデータを利用して算出する。
なお、加工部位(加工部位15)の位置または寸法の算出に際しては、更に工作機械から出力される寸法情報をも利用するようにして、寸法測定精度を向上させることが望ましい。
また、外部装置をコンピュータ250に代替して表示装置(表示手段)270とした場合では、通信装置230からの画像データは、外部通信装置260を介して表示装置170に入力され、表示装置270によって画像データに対応する表示情報として表示される。勿論、画像データを表示情報として表示する場合、画像データを、外部通信装置240を介してコンピュータ250が受信し、コンピュータ250に接続される表示装置で表示するようにしてもよい。
上述したように外部からの電磁誘導により発電コイル160で発電された電源(電力)を基に得られた直流電源を、撮像装置130、光源140および通信装置230へ供給することができるので、観察装置100は独立した装置として成立し、切削工具と同等に取り扱うことが可能である。
次に、図2に示した観察装置100を工作機械保持部110側から見た様子の概略について、図4を参照して説明する。
観察装置100においては、図4に示すように、部位171、部位172、部位173の3箇所は、外部(弾性体カバー170の外側)から見て凸部状に形成されている。このように3箇所の凸部状の部位171,172,173が存在することにより、観察装置100を工作機械から取り外してテーブル等へ載置したときに、当該観察装置100の安定性が確保される。
部位171近傍の空間171Aには、上述した照明系(同軸落射照明手段)の一部、すなわち図2に示した光源140、集光レンズG5および反射鏡G4が配置される。なお、同軸落射照明手段に含まれるハーフミラーG3は、図4の工作機械保持部110の配置位置に対応する位置に配置される。
また、部位172近傍の空間172Aおよび部位173近傍の空間173Aには、図3の電源制御部210、蓄電池220および通信装置230が配置される。
なお、図4におけるA−A断面の方向から観察装置100を見た様子が、図2に示されている。
ところで、本実施の形態1では、図2に示した観察装置100の構成において、工作機械保持部110および撮像装置130を削除した構成とすることも可能である。この場合、対物レンズG12と対向する側面は開口されている。そのため当該観察装置の開口部から、目視による観察、あるいはカメラによる観察対象(被写体)の写真撮影を行うことができる。
また、本実施の形態1では、光電変換装置の一例として撮像装置130を適用した場合が示されているが、例えば光メディアの読み取りに用いられる光センサを適用し、加工部位の加工状態の良否に応じて出力を異ならせるようにしてもよい。
工作機械に固定された観察物(加工物)は、M3×0.5、全長12mmの六角ナットである。このような六角ナットを観察装置100で観察した様子を、上述した図1および図2、後述する図5〜図9を参照して説明する。
図1(a)に示したように、絞り50の開口部の中心51が光軸60(図2の光軸180に相当)上に存在する状態(第1の観察状態)の観察装置によって、六角ナット(図1(a)の加工物10に相当)の上面を写真撮影した。このときの写真を図5に示す。この図5から分かるように、絞り50の開口部の中心51が光軸60上に存在する場合では、六角ナットの内壁面を観察することはできない。
次に、上記第1の観察状態から、絞り移動機構120(図2参照)を調整して絞り50を光軸60に対し垂直方向に移動させた状態(第2の観察状態)に変化させた。そして、加工状態(六角ナットのねじ部分)を第2の観察状態で写真撮影した。このときの写真を図6に示す。この図6から分かるように、六角ナットの上面近傍の内壁面(図7の内壁面310)を明確に観察することができ、下面側に行くに従って内壁面はぼやけて見える。なお、図7は、図6に示した写真と同様の図であり、内壁面を説明するための図である。
さらに、上記第2の観察状態から、ピントの位置を六角ナットの下面側に合わせた状態(第3の観察状態)に変化させた。そして、加工状態(六角ナットのねじ部分)を第3の観察状態で写真撮影した。このときの写真を図8に示す。この図8から分かるように、六角ナットの下側の内壁面(図9の内壁面310)を明確に観察することができる。なお、図9は、図8に示した写真と同様の図であり、内壁面を説明するための図である。
したがって、六角ナットの内壁面を観察するときは、上述した第2の観察状態および第3の観察状態にして、当該内壁面を観察することで、六角ナットの上面側および下面側のそれぞれの内壁面を明確に観察することができる。
以上説明したように、本実施の形態1では、次の(1)〜(12)の作用効果を得ることができる。
(1)観察装置本体を工作機械の切削工具と同様に取り扱える形状とし、工作機械の基準軸と光学系の基準軸(光軸)とを一致させ、しかも加工物の観察のときに、絞りを光学系の光軸に対し垂直方向に移動させるようにしているので、加工物を工作機械から取り外すことなく、加工物の穴の側壁や溝あるいは壁の壁面の加工状態を、確実にかつ正確に観察することができる(図6〜図9参照)。
(2)特に、従来の技術においては極めて困難であった穴の直径や溝幅よりも深い場所の観察、観測をする場合においては、加工物を工作機械から取り外すこと無く、金属顕微鏡等により観察する場合の観察対象と同等の加工形状(微細な加工状態)を、確実にかつ正確に観察することができる(図6〜図9参照)。
(3)本来であれば光学機器としての観察装置は精密機器であるので慎重に取り扱う必要がある。しかし、本発明に係る観察装置100においては、弾性体カバー170で筐体150の略全体を覆うようにし、この弾性体カバー170により光学系を衝撃から保護するようにしているので、精密機器のため慎重に取り扱わなければならないという、作業者の精神的な負担を軽減することができる。また、弾性体カバー170を設けることにより、光学系の衝撃による不良を軽減させ、しかも光学性能を維持するための保守が容易になるので、保守費用のコストダウン化を図ることができる。
(4)工作機械(NC工作機械)の基準軸に装着されている観察装置100による、XYテーブルに取り付けられた加工物(観察対象)の観察中に、当該加工物がX方向またはY方向に移動されなかった場合は、観察装置100に代替して切削工具を工作機械の基準軸に取り付けることで、当該加工物に対する加工を再開することができる。
(5)工作機械(NC工作機械)の基準軸に装着されている観察装置100による、XYテーブルに取り付けられた加工物(観察対象)の観察中に、当該加工物がX方向またはY方向に移動され場合は、その移動量をNC工作機械により検出することができる。そのため、加工物に接触することなく当該加工物の長さを測定することができる。このことにより、加工物を工作機械から一旦取り外して、長さ測定用の検査装置に移動させる必要性がない。
(6)加工開始時から工作機械(NC工作機械)に固定されている加工物は、加工原点が変化しないため、随時、観察装置による検査(観察)やNC工作機械による追加加工を行うことができる。これにより、加工初期段階における致命的な不良が発見された場合は、その時点で不良となった加工物に対する加工を中止することで、その不良が発見された後の無駄な加工をする必要が無くなり、加工時間の大幅な節約が可能である。
(7)加工寸法の測定基準は工作機械(NC工作機械)に依存しており、工作機械(NC工作機械)に固定された加工物に接触することなく、当該加工物を本発明に係る観察装置100(の撮像装置130)によって撮像された光学像に対応する画像データを基に、画像処理装置等のコンピュータが画像処理することにより当該加工物の寸法測定を行うことができる。そして、コンピュータは、NC工作機械に依存する加工寸法の測定基準と、実際の画像処理により得られた寸法とを比較することで、加工物の正確な測定を行うことができる。
(8)観察装置100の着脱を繰り返し行うことで、加工物に対する寸法測定誤差が発生した場合は、観察装置100の着脱に不備があったと考えられる。このことは切削工具の交換においても同様の現象が発生していると考えられるので、観察装置100による加工物の観察に基づき加工物に対する寸法測定誤差が検出された場合は、この寸法測定誤差の検出以前に加工した加工物の使用を中止(あるいは出荷中止)、切削工具を正確に工作機械に装着するなどの対策を施すことができる。これにより加工物の不良を未然に防止することができ、品質管理の向上を図ることができる。
(9)撮像装置130により光学的に得られる情報(光学像)を電気信号に変換しているため、この電気信号(画像データ)を通信装置230による無線通信により、画像処理装置やNC制御装置などコンピュータを利用した機器との接続が容易である。また、コンピュータの持つ利点、例えば画像データの保存、データ処理(画像処理)、画像処理結果に基づく処理(寸法測定)などを最大限に利用することができる。
(10)弾性体カバー170を装備し、しかも観察装置全体を気密構造にしているので、軽度の衝撃、切削油、切削粉などから、上述した光学系および照明系を保護することができる。
(11)弾性対体カバー170を装備し、しかも観察装置全体を気密構造にしているので、切削工具と同様に取り扱えるため、作業者が誤って切削液などを観察装置100に付着させたとしても、当該観察装置100に付着された切削液などを清掃するときに、誤って光学系の構成要素である光学素子を移動させることがない、すなわち光学系の基準軸(光軸)を狂わせることはない。このため常に正確な光学系の基準軸を維持することができる。
(12)観察装置100では、通信装置230による例えば無線通信により、撮像装置130の光電変換により得られたデータ(画像データ)を外部装置へ送信するようにしているので、この外部装置、例えば画像処理装置やNC制御装置などコンピュータが取得した画像データや、この画像データをデータ処理することで得られた情報を、観察者を含む複数の者で共有することができる。なお、有線通信によりデータを送信するようにしてもよいことはもちろんである。
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における観察装置の原理を説明する図、図11は図10(a)の観察装置でナットのレンズ側に一番近い面を撮影した図、図12は図10(b)の観察装置でナットのレンズ側に一番近い面を撮影した図、図13は図10(b)の観察装置でナットとレンズとの距離を近づけてナットの内壁面を撮影した図、図14は図10(a)の観察装置で方眼紙を撮影した図、図15は図10(b)の観察装置において絞りの開口部の中心を光軸から離れた焦平面に配置して方眼紙を撮影した図、図16は図11〜図13を得た光学系を構成する観察装置のレイアウトを示す図、図17は図14および図15を得た光学系を構成する観察装置のレイアウトを示す図である。
なお、本実施の形態の観察装置は、絞りが光学系(ここでは、対物レンズ40)の像側の焦点を通り当該光学系の光軸に対して垂直な平面である焦平面上に配置され、さらに絞り50の開口部の中心51が光学系の光軸60から距離dだけ離芯している点を除き、上述した実施の形態1と同様であるため、重複した説明は省略されている。
図10(a)は実施の形態1にて説明した図1(a)と略同一のものであり、絞り50の開口部の中心51を光軸60上にある像側の焦点Fに置き、絞り50の開口部の中心51を光軸60と一致させるように配置したものである。
一方、図10(b)は本発明の実施の形態2の観察装置の原理を示すもので、絞り50を、当該絞りの開口部の中心51を光軸60上にある像側の焦点Fを通り、光軸60に対して垂直な平面、すなわち焦平面に配置したもので、さらに絞り50の開口部の中心51が光学系の光軸60から距離dだけ離芯している。
なお、図10(b)において、レンズ40の物体側面、すなわち光学系を構成するレンズで物体に最も近いレンズ面を第1面とした場合、第1面の曲率半径あるいは第1面の光軸近傍の曲率半径が2.5mm以上の凸面となっている。但し、これ以外の曲率半径の凸面、または平面、または凹面となっていてもよい。
このような構成において、図10(a)に示すように、加工物10の物点20の像面の位置で、絞り50が光軸60上に存在するとき、物点20と物点30の像面70での光線の結像点21と結像点31との差がないので、壁面12における物点30の溝の側壁は見えない。
これに対し、図10(b)に示すように、絞り50を焦平面上で、且つその開口部の中心51を光軸60に対して離芯させることにより、像面70での光線の結像点22と結像点32との差が出現し、壁面12における物点20から物点30までの区間13の溝の側壁が傾いたように見える。
図10(a)および図10(b)において、撮像装置として対角6mm縦横比3:4のCCDビデオカメラを用い、この撮像装置を、光軸60をZ軸とした光軸上に像面が光軸と直交するようなXY平面に配置し、光軸60上に配置した観察物としてのナット(M2(P=0.4))、および方眼紙を撮影した。なお、方眼紙は光軸60から約30度傾けて撮影した。
図11は図10(a)の観察装置でナットのレンズ側に一番近い面を撮影した図である。図12は図10(b)の観察装置でナットのレンズ側に一番近い面を撮影した図である。図13は図10(b)の観察装置でナットとレンズとの距離を相互に7mm接近する方向に移動させてナットの内壁面を撮影した図である。
また、図14は図10(a)の観察装置で方眼紙を撮影した図である。図15は図10(b)の観察装置において絞りの開口部の中心を光軸から5mm離れた焦平面に配置して方眼紙を撮影した図である。
図11〜図13を得た光学系を構成する観察装置のレイアウトを図16に示す。
所定の諸特性を持った写真レンズ(レンズ)40を入射側、射出側を逆に用い、図面左側から順に、照明、ナット(加工物)10、絞り50、撮像手段の像面70を配置した。
ここで、ナット10のレンズ側端面より像側に110mm離れた位置にレンズ鏡筒40aの基準を配置した。また、レンズ鏡筒40aの基準から像側に87.5mm離れた位置に、レンズ40の光軸をZ軸とし、当該光軸と直交するXY平面に移動可能で、開口部の大きさを可変可能な絞り50を配置した。さらに、レンズ鏡筒40aの基準から像側に208.6mmの位置に、光軸をZ軸とし、光軸と直交するXY平面上に像面70が位置するようにして撮像手段であるCCDビデオカメラを配置し、このCCDビデオカメラに像を得た。なお、絞り50が配置されているレンズ鏡筒40aの基準から像側に87.5mmの位置は、このレンズ40の像側の焦点の位置と一致する。
絞り50の開口部の直径は3mmであり、開口部の中心を光軸と離芯した焦平面上においた。なお、絞り50の開口部中心の光軸に対する離芯量(移動量)は4mmである。
これにより、図10(b)の状態では、絞り50を光軸に対して垂直に移動させる前の図10(a)の画像に寄与する有効な光線は、完全に遮光されることになる。
さて、本実施の形態2では、次のような作用効果を得ることができる。
図10(a)においては、左側から加工物であるナット10、主点40−1および主点40−1を通り光軸60と直交する平面である主平面40−2を備えたレンズ40、像側焦点Fの位置に配置されて開口部の中心51が光軸60と一致した絞り50、光軸60と垂直に交わる像面70が表されている。そして、具体的な位置関係は、絞り50の開口部の中心51が光軸と一致していることを除いて、図16に示す通りである。
また、図10(a)において、ナット10の中心である物点80、物点80と光軸60に垂直の位置にある物点20、物点20から光軸60に平行にレンズ40から離れる方向にある物点30、物体側の焦点F’、像側の焦点F、物点80の結像点81、物点20の結像点21、物点30の結像点31、および結像に関わる主な光線、像側焦点Fに配置した絞り50の開口部により作られ光軸60上の物体側無限大の位置にできる入射瞳EPが示されている。
図10(a)の場合、物点80は光軸60上の物体側焦点F’、レンズ40の主点40−1、像側焦点Fを通り、光軸60をZ軸とし、この光軸60と直交するXY平面である像面70にある結像点81に像を結ぶ。
また、物点20は光軸60と平行な光線となり、レンズ40の主平面40−2で屈折され、像側焦点Fを通り、像面70にある結像点21に像を結ぶ。
さらに、物点30は物点20と同様の経路を通り、像側焦点Fと像面70上にある結像点13とを結ぶ直線上または延長線上に結像する。
入射瞳EPは光軸60上の像側焦点Fに設けられた絞りから、物体側焦点F’の側の無限大の位置にでき、その中心は光軸60と一致する。
入射瞳EPを通る主光線は、光軸60と平行にレンズ40に入射し、主平面40−2、像側焦点Fを通り、像面70に像を結ぶ。
レンズ40には焦点のズレ等のような多少の誤差(収差)があっても実用上問題なく使用可能な許容範囲が存在し、物点30が許容範囲にあると仮定すると、物点30は物点20と同じ経路を通り像面70に像を結ぶ。しかしながら、物点30は物点20と同様な経路と同様な結像点となるので、結像点21と結像点31とは区別がつかない。
前述のようにレンズ40には実用上問題なく使用可能な許容範囲が存在することと、入射瞳EPが無限大の位置に存在することにより、3次元物体の射影像を2次元の平面である像面に像を結び、3次元物体の寸法を正確に計測することが可能になる。
次に、図10(b)についての説明を行う。
図10(b)においては、左側から加工物であるナット10、主点40−1および主点40−1を通り光軸60と直交する平面である主平面40−2を備えたレンズ40、光軸60の像側焦点Fの位置において開口部の中心51が光軸60と距離dだけ離芯して像側の焦平面上に配置された絞り50、光軸60と直交する平面である像面70が表されており、その具体的な位置関係は図16に示す通りである。
また、図10(b)において、ナット10の中心である物点80、物点80と光軸に垂直の位置にある物点20、物点20から光軸に平行にレンズから離れる位置にある物点30、物体側の焦点F’、像側の焦点F、物点80の結像点82、物点20の結像点22、物点30の結像点32、および結像に関わる主な光線、主点40−1と絞り50の中心を結んだ線と光軸60とからなる角度θ’、レンズ40の諸特性と角度θ’との間で所定の関係を有する角度θ、光軸60から角度θだけ傾いた線である仮想光軸60a、および仮想光軸60a上の無限大の位置にある入射瞳EP’、物点80からの結像に関わる主な光線と主平面40−2との交点85、物点30からの結像に関わる主な光線と主平面40−2との交点35、物点20からの結像に関わる主な光線と主平面40−2との交点25が示されている。
図10(b)の場合、物点80はレンズ40の主平面40−2上の交点85を通り、像側の焦平面に離芯して配置された絞り50を通り、交点85と結像点82とを結ぶ直線上または延長線上に像を結ぶ。
また、物点30はレンズ40の主平面40−2上の交点35から絞り50を通り、交点35と結像点32とを結ぶ直線上または延長線上に像を結ぶ。
さらに、物点20はレンズ40の主平面40−2上の交点25から絞り50をを通り、交点25と結像点22とを結ぶ直線上または延長線上に像を結ぶ。
レンズ40には焦点のズレ等のような多少の誤差(収差)があっても実用上問題なく使用可能な許容範囲が存在し、物点80、物点30、物点20が実用上問題なく使用可能な許容範囲にあると仮定すると、各点は像面70にある結像点82、結像点32、結像点22に結像する。
物体側の焦点Fを通過して光軸60と角度θだけ傾きレンズ40に入射する光線、およびその光線と平行な光線は、像側焦平面に像を結ぶことは良く知られている。また、光学系は一般的には可逆的なことは良く知られている。以上のことから、像側の焦平面を通過することが可能な光線は、物体側の焦点Fを通過して光軸60と角度θだけ傾きを持った光線と、その光線と平行な光線が含まれることが分かる。
光軸60から角度θだけ傾いた線を仮想光軸60aとすると、絞り50の開口部の中心51が像側焦平面にあることにより、物体側の仮想光軸60a上の無限大の位置に入射瞳EP’ができる。
入射瞳EP’を通る光線である主光線は仮想光軸60aと平行になり、投影検査機用レンズと同様に仮想光軸60aと直交する平面から、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲において3次元物体の射影像を2次元の平面である像面に結ぶことが可能であり、3次元物体の寸法を正確に計測することが可能となる。
このように、本実施の形態によれば、レンズ40の光軸60を傾けることなく、光軸60と角度θだけ傾いた仮想光軸60aに投影検査機用レンズを配置した光学系と同等の画像を得ることができる。
そして、像面70に発光点をおくことにより、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲で、3次元物体に2次元の平面である光点を投影することが可能であり、光の持つエネルギーを3次元的に照射することができる。
そして、本実施の形態によれば、レンズ40の光軸60を傾けることなく、光軸60と角度θだけ傾いた仮想光軸60aに直交する平面へ光のエネルギーを照射することができる。
次に、図14および図15を得た光学系を構成する観察装置のレイアウトを図17に示す。
方眼紙90に目印として黒点Pを付け、黒点Pをつけた方眼紙90を光軸60と約30度の角度で交わるように配置し、黒点Pと光軸60を一致させ(Z方向を光軸60とした)、絞り50を像側焦点Fの位置に配置し、開口部の中心51を光軸60と一致させ、物点である黒点Pが像面70であるCCDカメラに像を結ぶように方眼紙90とレンズ40の間隔を調整し、図14に示す像を得た。
図14では、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲では、方眼紙90の目盛りが鮮明に写っており、許容範囲から外れる所では目盛りが不鮮明にぼやけて写っていることが確認できる。
絞り50を像側焦点Fの位置に配置し、開口部の中心51を光軸60と一致させた状態から、光軸方向(Z軸方向)の位置関係を変えることなく、絞り50の開口部の中心51を像側焦平面のY軸方向に距離d(例えば5mm)移動させ、図15に示す像を得た。
図15では、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲では、方眼紙90の目盛りが鮮明に写っており、許容範囲から外れる所では目盛りが不鮮明にぼやけて写っていることが確認できる。
そして、図14および図15においては、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲では像の差異は確認できず、目印とした黒点Pの移動も認められない。
このように、図14および図15で目印とした黒点Pの移動が認められないことから、光軸60と直角に交わるX軸を中心に、光軸60と角度θだけ傾いた投影検査機用レンズを配置した光学系と同等の画像を得ることができる。
さらに、絞り50の開口部の中心51を像側焦平面のX軸方向に移動させることにより、光軸60と直角に交わるY軸を中心に、光軸60と角度θだけ傾いた投影検査機用レンズを配置した光学系と同等の画像を得ることができる。
これにより、物体のXY平面と光軸60が交わる物点80を中心にレンズ40を傾けた場合と同等の画像を得ることができる。
さらに、図14および図15で目印とした黒点Pの移動が認められないことから、物点と一致させた軸を持つ光学系の保持機構が不要になる。
同様に、物体のXY平面と光軸60が交わる物点80を中心に物体を傾けた場合と同等の画像を得ることができる。
これにより、レンズの光軸60と直交する平面を得るために、物体を傾ける機構が不要になる。
さらに、レンズ40に存在する実用上問題なく使用可能な許容範囲で、3次元物体の仮想光軸60aと直交する平面の射影像を2次元の像面に結び、得られた像から正確に寸法を計測することができる。
レンズ40の諸特性と角度θ’との間で所定の関係を有する角度θが求められることにより、像側焦平面に配置された絞り50の移動量から光軸60と仮想光軸60aとのなす角度θを求めることができ、物点80を中心に物体を傾けた場合と同等の画像に対し、高精度な角度補正を行うことができる。このことにより、高精度な計測を行うことが可能になる。
なお、穴の直径や溝幅に比較して深さが深い穴や溝を観察部位とする場合には、一旦焦平面に配置された絞り50の開口部の中心51を光軸60と一致させ、観察物の近傍でレンズ40に近い側の表面の像を得るように調整する。
その後、絞り50の開口部の中心51を像側焦平面のX軸方向やY軸方向に絞り50の開口部の中心51を移動させることにより、光軸60と直角に交わるY軸やX軸を中心に光軸60と角度θだけ傾いた投影検査機用レンズを配置した光学系と同等の画像を得られる。
さらに、ナットなどの観察物とレンズ40との距離を接近させることで、仮想光軸60aと直交する平面の射影像を得ることができる。この場合、光学系全体を動かしているので、光軸60と仮想光軸60aの角度や得られた画像の倍率は変化しない。
このことにより、レンズ40の実用上問題なく使用可能な許容範囲が狭くとも、仮想光軸60aと直交する平面の射影像を連続的に得ることが可能となる。
また、観察部位に違いがあったときは、観察物を光軸60と直交する平面に沿って移動させるか、または光学系全体を光軸60と直交する平面に沿って移動させることにより、光軸60と仮想光軸60aの角度や得られた画像の倍率を変化させることなく、目的の観察対象を観察することや計測することが可能となる。
このことにより、加工物の穴の側壁または溝の側壁を観察や計測するために加工物を傾けたり光学系全体を傾ける必要がなく、レンズの光軸60をZ軸とすると、絞り50の開口部の中心51を光軸60と直交するXY方向へ移動させるのみで、3次元物体の仮想光軸60aと直交する平面上にある穴の側壁または溝の側壁の観察や計測を行うことが可能となる。
ここで、光軸方向をZ方向とした場合、加工物の穴の直径または溝幅はXY平面にあり、穴の深さまたは溝の深さはZ方向になる。このXY平面の大きさと深さの関係がX<Z,Y<Zとなる場合、本実施の形態の観察装置を用いれば、簡単に観察や計測を行うことが可能になる。
なお、レンズ40の諸特性を向上させる目的で補正レンズを光学系に追加する場合には、当該補正レンズは、像側焦点Fと像面70との間の光軸60上に配置する。
また、観察部位が貫通穴の場合には、仮想光軸60aと光軸60とがなす角度θと物点20、物点30の延長線上から、光軸60と角度θでレンズ40から遠い側に角度θの光線を含む照明の光源を配置する。
さらに、照明や像面70に配置した発光点の光源として、レーザ光線等のように自然光と比べて位相の揃った光を放射できる光源を用いることにより、計測精度や照射精度の向上等を図ることができる。