以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、以下では、病理診断用に用いられる正立型であって、対物レンズが観察対象(スライド)の上側に配置され、観察光をスライド下面から投射する透過光観察を行う顕微鏡を本発明の実施形態として説明する。
本実施形態の位置管理顕微鏡システムは、病理診断に要求される所定精度で観察位置の位置管理を行い、過去の観察位置を正確に再現することを可能とする。そのため、位置管理の為の基準を有するスライドを使用し、更に、該スライドを載置した際、載置されたスライドの回転誤差を補正する手段を有する高精度なXYステージを具備する。また、このXYステージは観察位置のXY座標値を直接的に把握する機能を有するとともに、装着されたデジタルカメラ(撮像素子)などとの相対的な位置関係の誤差などを補正する手段を有する。さらに、本実施形態の位置管理顕微鏡システムは、XYステージやスライドのデジタルカメラに対するあおりを補正し、高さ方向(Z方向、デジタルカメラの光軸方向)における観察位置についても病理診断に要求される所定精度での管理を実現する。
ここで、病理診断に要求される所定精度は、関心領域(ROI)の最小サイズとなろう。細胞内の構造物は、μ台からサブμ台の範囲に分布しており、ここで観察される異型が病理診断で求められる最小サイズのROIと考えて良い。一方、通常使用する可視光用対物レンズでは、100倍における分解能は約0.2μm(緑色光:550nmにて)であり、また、紫外光用対物レンズを用いれば約0.1μm(紫外光:200nmにて)まで解像可能である。従って、観察可能なROIのXY方向の最少サイズは、紫外解像限界0.1μmの例えば10倍として1μm角となる。よって、目標とすべきXY方向の位置管理精度は、解像限界の0.1μmであり、座標管理単位は、例えばその1/10として、0.01μm刻みとなる。
一方、対物レンズの最高倍率と考えてよい100倍対物レンズでは、その焦点深度は、緑色光(550nm)にて約0.3μmであり、また、紫外光用対物レンズでは約0.1μm(紫外光:200nmにて)となる。つまり、ROIのZ方向の最小サイズは、紫外光用対物レンズの場合の焦点深度0.1μの例えば10倍として1μmとなる。よって、目標とすべきZ方向の位置管理精度は、最小焦点深度の0.1μmであり、座標管理単位は、例えばその1/10として、0.01μm刻みとなる。従って、ROIの最少サイズは、1μmサイズのCube、そして、位置管理精度は0.1μmのCube 、座標管理単位は、例えばその1/10として、0.01μmのCubeとなる。
以下では、このような位置精度を、顕微鏡による観察対象のスライドを載置して移動するXYステージの移動面であるX,Y方向、およびこの移動面に垂直なZ方向の3次元において実現する位置管理顕微鏡システムについて説明する。又、本実施形態の位置管理顕微鏡システムは、位置管理の為の基準を有さない既存のスライドも、互換性の観点からサポートするべく、所定の対応手段を具備している。
図1は本実施形態による位置管理顕微鏡システム(以下、顕微鏡システム)10の基本構成を示す図である。顕微鏡システム10は、顕微鏡本体100、ステージ200、カメラ装着用のアダプタ部300、デジタルカメラ400、制御ユニット500、ΔZステージ900を備える。ステージ200、アダプタ部300、デジタルカメラ400、ΔZステージ900は本実施形態の位置管理に対応する構成、機能を有する。制御ユニット500は、コントローラ501とディスプレイ502を有する。コントローラ501はCPU511、メモリ512を含む(図25参照)。CPU511は、メモリ512に格納されたプログラムを実行することにより、後述する各種処理を実行する。また、コントローラ501は、表示部としてのディスプレイ502の表示制御を行う。
顕微鏡本体100を構成する鏡基121は、顕微鏡の各種構造物を取り付ける為の堅牢な本体フレームである。接眼鏡基122は鏡基121に固定され、接眼鏡筒123(本例では双眼)を接続する。光源ボックス124は、透過観察用の光源(たとえば、ハロゲンランプまたはLEDなど)を収納し、鏡基121に取り付けられる。Z摘み125は、Zベース130をZ軸方向(上下方向)へ移動させるための摘みである。Zベース130には、Z方向の位置管理機能を提供するΔZステージ900が装着され、ΔZステージ900の上にはXY方向の位置管理機能を提供するステージ200が載置される。Zベース130は,Z摘み125の回転に応じてZベース130をZ方向に移動するZベース移動機構131(図2(a)を参照)により鏡基121に装着されている。ΔZステージ900は、ステージ200の、デジタルカメラ400の光軸あるいは顕微鏡本体のレンズの光軸に対するあおりを補正するとともに、観察位置のZ方向の高精度な位置決めを実現する。126は対物レンズユニットであり、光学倍率に応じた複数種類のユニットが存在する。リボルバ127は、複数種類の対物レンズユニット126を取り付けられる構造を有し、リボルバ127を回転させる事により、所望の対物レンズユニットを顕微鏡による観察のために選択する事が出来る。
ステージ200は、位置基準付きスライド(以下、スライド700)を搭載し、Z軸まわりに回転するΔΘステージ600と、スライド700を載置したΔΘステージ600をX方向とY方向を含むXY面上で移動するXYステージを含む。ΔΘステージ600はスライド700上の位置基準マークを基に回転ずれを補正する機能を提供するとともに、スライド700の面の、デジタルカメラ400の光軸または顕微鏡本体のレンズの光軸(以下、単に光軸という)に対するあおりを補正する機能を提供する。また、ステージ200は、XYステージ上にXY方向の高精度スケールを具備したXYスケール板210を有している。X摘み201、Y摘み202はそれぞれステージ200をX方向、Y方向へ手動で移動するための摘みである。ΔZ摘み904はΔZステージ900を手動でZ方向へ移動するための摘みである。
アダプタ部300は、接眼鏡基122に鏡基マウント128を介してデジタルカメラ400を装着するための装着部として機能する、カメラ装着用のアダプタである。アダプタ部300は、デジタルカメラ400と鏡基マウント128との軸合せ機能を有する。鏡基マウント128は、位置決め基準が付与された、例えばねじ込み等の、所定の装着機構を有する。
デジタルカメラ400は、アダプタ部300及び鏡基マウント128により、接眼鏡基122と所定の位置関係を保って、着脱可能に顕微鏡本体100に取り付けられる。デジタルカメラ400は、顕微鏡本体100により得られる顕微鏡画像を撮像する。デジタルカメラ400は、エビデンス記録を目的とするもので、例えば、USBインタフェースケーブル11を介してコントローラ501に接続され、コントローラ501からの指示により顕微鏡下の観察像を撮影する。撮影された観察像は、コントローラ501の制御下でディスプレイ502に表示される。デジタルカメラ400の撮像機能は、イメージセンサの出力をリアルタイムでモニタに表示する所謂ライブビューを行うためのライブ画像撮像機能と、静止画撮像機能を含む。ライブ画像撮像機能は静止画撮像機能よりも低解像度である。また、ライブ画像撮像機能および静止画撮像機能は、撮影された画像(動画、静止画)を所定のインタフェース(本実施形態ではUSBインタフェース)を介して外部装置へ送信することが可能となっている。
図2は、本実施形態による顕微鏡システム10の光学系を説明する模式図である。図2(a)に示すように、透過観察用の光源141、光源141からの光源光を集光するコレクタレンズ142が光源ボックス124に収納されている。143は視野絞りであり、スライド上の照明径を決める。視野絞り143を通った光源光は、ミラー144、中継レンズ145、開口絞り146、コンデンサレンズ147をとおり、スライド上の検体(組織切片)に照射される。スライドガラス上の検体を透過した光は、対物レンズユニット126内の対物レンズ148へ入る。対物レンズ148をとおった光は結像レンズ149を経てスプリットプリズム150に到達する。なお、コレクタレンズ142、中継レンズ145、コンデンサレンズ147、対物レンズ148、結像レンズ149などは、其々、通常複数枚のレンズの組み合わせで構成されている。
スプリットプリズム150は、ビームスプリッタとも呼ばれ、対物レンズ148からの光学像の光路を接眼光学系または撮像光学系に切り替える機能を有する。たとえば、接眼光学系用反射プリズム、及び、撮像光学系用ストレートプリズムをプッシュプルロッドによって入れ替える構成となっている。これにより、
・デジタルカメラ400(イメージセンサ401)による撮像のみとし、接眼鏡筒123からの観察を行えない状態、
・接眼鏡筒123からの観察のみで、イメージセンサ401による撮像を行えない状態、のいずれかの状態とすることができる。
または、上記構成に替えて、あるいは上記構成に加えて、接眼光学系とカメラ撮像光学系の両方に半分ずつの光量を通すハーフミラースプリットプリズムを配置してもよい。この場合、イメージセンサ401による撮像と接眼鏡筒123からの観察の両方を行える状態を提供可能となる。スプリットプリズム150をカメラ側に切り替えると、組織切片を透過した光はアダプタレンズ301を介して、デジタルカメラ400内のイメージセンサ401上に結像する。イメージセンサ401を有するデジタルカメラ400は、顕微鏡下の画像を撮像する。
接眼系の光路は接眼鏡筒123へ向かう光路である。図2(b)は接眼鏡筒123の接眼光学系の一例を説明する為の図であり、ジーデントップ式双眼鏡筒の例を示している。図2(b)において、右側の光学系は左眼用光学系であり、左眼用スプリットプリズム151により左眼系の一次像の結像面152に像が形成され、左眼用接眼レンズ153を介してユーザにより観察される。一方、図2(b)の左側の光学系は右目用光学系であり、右眼用平行プリズム154により右眼系の一次像の結像面155に像が形成され、右眼用接眼レンズ156を介してユーザにより観察される。
図2(a)に戻り、撮像光学系の光路には、アダプタ部300とデジタルカメラ400の装着により、アダプタレンズ301とイメージセンサ401が配される。アダプタレンズ301は、接眼鏡基122に取り付けられたアダプタ部300内に組込まれたレンズであり、通常、複数枚で構成される。アダプタレンズ301により、デジタルカメラ400内に配設されたイメージセンサ401の撮像面に観察像が形成され、デジタルカメラ400による顕微鏡画像の撮像が可能となる。
次に、ΔZステージ900について説明する。図3(a)は、図1とは異なる方向からの顕微鏡本体100の斜視図であり、図3(b)はΔZステージ900のZベース130への装着状態を示す図である。鏡基121には、Zベース130のZ方向の位置を計測するためのZスケール990が設けられており、ΔZベース901に装着されたZセンサ991による移動量の計測に用いられる。ステージ200は、顕微鏡本体100のZベース130にΔZステージ900を介して装着される。ΔZステージ900は、Zベース130に装着される。また、図3(c)に示すように、Zスケール990はZ初期位置マーク990aとZリニアスケール990bを有する。Zセンサ991はZ初期位置センサ991aとZ軸センサ991bを有し、それぞれZ初期位置マーク990aの検出とZリニアスケール990bの読み取りを行う。なお、Zリニアスケール990bは、後述するXエリアスケール211(図7(c)等)と同様のパターンであり、スケール幅を狭くしてリニアスケールとしたものである。Zリニアスケール990bは、Xエリアスケール211と同様に、例えば、透過部及び遮光部は夫々2μm巾のラインであって、このペアが4μmピッチで配列されている。このZリニアスケール990bとZ軸センサ991bを用いて、例えば2000分の一の内挿演算により、10nm(0.01μm)以下の分解能及び0.1μmの位置精度を実現するものとする。なお、本実施形態では、Zリニアスケール990bとZ軸センサ991bによりインクリメンタルタイプの位置計測が実行されるが、アブソリュートタイプで位置計測を行なってもよい。アブソリュートタイプの場合、Z初期位置マーク990aおよびZ初期位置センサ991aは省略可能となる。
図4は、Zベース130へのΔZステージ900の装着、ΔZステージ900へのステージ200の装着を説明する図である。Zベース130とΔZステージ900とは、ΔZベース901に設けられたZベース取り付け穴902とネジ992により固定される。このとき、Zベース130に設けられた位置決めピン993がΔZベース901の位置決め穴903と嵌合することによって、Zベース130に対するΔZステージ900の装着時の精度を向上させている。ΔZステージ900のΔZベース901には、ステージ200のあおりを調整するためのΔZリフトユニット910が複数個所、本例では3か所、に装着されている。また、ステージ200の最下部にあるステージベース260には、ΔZリフトユニット910のステージ抑えバネ917を引っ掛けるためのバネフック995が設けられている。ステージ200は、3個のΔZリフトユニット910のそれぞれのステージ抑えバネ917をステージベース260に設けられたバネフック995に引っ掛けることで、ΔZステージ900に押しつけられる。また、ステージ200のステージベース260の下面には、球面軸受996が圧入されている。ステージ200がステージ抑えバネ917によりΔZステージ900に押しつけられた状態で、ΔZリフトユニット910のリフトピン914はステージベース260の球面軸受996と嵌合する。この時、センサプレート用ホール997にセンサプレート919が挿入された状態となる。なお、ステージベース260のZベース取り付け穴902aと位置決め穴903aを用いて、Zベース130にステージ200を(ΔZステージ900を介さずに)直接に固定することも可能となっている。これは、より高度な機能を提供するΔZステージをアドオンで、導入可能とする為である。ΔZリフトユニット910のΔZモータ913が駆動されるとリフトピン914が上下に移動する。複数のΔZリフトユニット910のリフトピン914の上下動により、ステージ200のXY面の傾きが制御される。
図5はΔZリフトユニット910の構造を説明する図である。図5(a)〜(c)はそれぞれΔZリフトユニット910の斜視図であり、図5(d)はΔZリフトユニット910の断面図である。ホルダ911はΔZリフトユニット910の各機構を配設する筐体の役割を担う支持機構である。本実施形態では3つのΔZリフトユニット910が図5(e)に示すように配置されている。3つのΔZリフトユニット910のリフトピン914(ΔZリフトピンL1〜L3)のうち、2つ(L1、L2)が鏡基側においてX方向に間隔Rhで並び、他の1つ(L3)は鏡基より遠端側に配置され、例えば、高さがRiの二等辺三角形を形成する如く配置される。ホルダ911には、リニアガイドレール915が固定されており、摺動ブロック916が、リニアガイドレール915に対して摺動可能に取りつけられている。摺動ブロック916にはリフトブロック912が固定されており、摺動ブロック916とともにリニアガイドレール915に沿って移動可能となっている。また、リフトブロック912には、ステージベース260の球面軸受996と当接するリフトピン914が設けられている。
ホルダ911にはΔZモータ913が固定されており、ΔZモータ913の回転軸にはボールネジ918が設けられている。ΔZモータ913としては、たとえば超音波モータを用いることができるが、これに限られるものではない。また、ΔZモータ913の代わりに多層ピエゾ素子を用いてもよい。リフトブロック912は、ボールネジ918の回転により移動するナット918aを有している。この構成により、ΔZモータ913の回転駆動でリフトブロック912をリニアガイドレール915に沿って移動させることができる。ΔZモータ913、ボールネジ918、ナット918a、そして、リニアガイドレール915、摺動ブロック916が、リフトブロック912のリニア駆動機構を構成し、ΔZモータ913の回転をリフトブロック912の上下動に変換する。こうして、リフトピン914のZ方向の位置を任意の位置に移動させることを可能にしている。弾性部材であるステージ抑えバネ917はホルダ911に設けられたホールドピン921にその一端が引っ掛けられ、他端がステージベース260に設けられたバネフック995に引っ掛けられる。これにより、球面軸受996がリフトピン914に押圧された状態となり、ステージベース260をΔZベース901に安定させることができるとともに、リフトピン914の昇降によりステージ200のZ方向位置の微調整、面の傾きの微調整が可能となる。また、ホルダ911には、ステージベース260のセンサプレート用ホール997に設けられたΔZスケール994(図6(b)(c))を読み取るためのΔZセンサ920が装着されたセンサプレート919が固定されている。
図6(a)は、ステージ抑えバネ917によりΔZステージ900をステージベース260に固定した状態の断面図を示す。なお、図6(a)では、ステージ200のうちステージベース260とYステージ240が示されており、位置管理面ステージ(Xステージ)は図示を省略してある。図6(b)は、ΔZステージ900をステージベース260に固定した状態での、ΔZリフトユニット910の部分の詳細を示す図である。上述したように、ステージ抑えバネ917の両端はそれぞれバネフック995とホールドピン921に接続される。これにより、リフトピン914が球面軸受996と当接してステージ200がΔZステージ900に、Z方向へ移動可能に装着される。また、センサプレート919は、センサプレート用ホール997に挿入された状態となり、ΔZセンサ920がステージベース260のセンサプレート用ホール997の壁面に設けられたΔZスケール994を読み取る。
図6(c)はΔZスケール994の一例を示す図である。ΔZ初期位置マーク994aとΔZリニアスケール994bを有する。なお、リフトブロック912によるステージベース260のZ方向の可動範囲は、ΔZ初期位置マーク994aを中心に±2mm程度とするが、これに限られるものではなく、ステージ200のあおりの調整に必要な可動範囲が確保されればよい。ΔZセンサ920はΔZ初期位置センサ920aとΔZ軸センサ920bを含み、それぞれΔZ初期位置マーク994aの検出、ΔZリニアスケール994bの読み取りを行う。なお、各ΔZリフトユニット910のリフトピン914の初期位置はΔZ初期位置マーク994aの位置により決定される。また、ΔZリニアスケール994bは、後述するXエリアスケール211(図7(c)等)と同様のパターンであり、スケール幅を狭くしてリニアスケールとしたものである。ΔZリニアスケール994bは、Xエリアスケール211と同様に、例えば、透過部及び遮光部は夫々2μm巾のラインであって、このペアが4μmピッチで配列されている。このΔZリニアスケール994bとΔZ軸センサ920bを用いて例えば2000分の一の内挿演算により、10nm(0.01μm)以下の分解能及び0.1μmの位置(管理)精度を実現するものとする。
次にステージ200の構成について説明する。図7(a)は、位置管理に対応したステージ200の構成を示す斜視図である。図7(a)において、Xステージとしての位置管理面ステージ220はステージ200の最上面に位置し、Yステージ240上をX方向に移動する。位置管理面ステージ220には、XYスケール板210、ΔΘステージ600が配置、固定されており、ΔΘステージ600にはスライド700が載置される。Yステージ240は、ステージベース260上をY方向に移動する。即ち、ステージ200では、ステージベース260、Yステージ240、位置管理面ステージ220により、XYステージが構成されている。そして、図4を参照して説明したように、ステージベース260は、顕微鏡本体100のZベース130に固定されたΔZステージ900上に、リフトピン914による上下動が可能に装着される。
図7(b)は位置管理面ステージ220の上面を示す図である。上述したように、位置管理面ステージ220の上面には、ΔΘステージ600、XYスケール板210が配設されている。XYスケール板210の上面には、X方向移動時の位置管理に使われるX方向の軸情報を有するXエリアスケール211、及び、Y方向移動時の位置管理に使われるY方向の軸情報を有するYエリアスケール212、及び、XYの軸合せ基準としてのXYクロスハッチ213が極めて高精度に形成されている。なお、高精度位置管理を実現する基準とすべく、XYスケール板210の材質には、熱膨張係数が極めて小さい材質、たとえば合成石英が使用され、一体的に構成されている。
また、XYスケール板210のXエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213における各パターンの作製には、半導体露光装置などのナノ技術が用いられる。たとえば、石英ウエハー上に、X軸及びY軸のラインの集合よりなるXエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213を5nm〜10nmの精度でナノ技術により一体的に作製する。なお、Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213を露光装置で描画することにより作製することも可能であるが、低コスト化を実現するにはナノインプリントを用いることが好適である。その後、機械加工により所定形状に切り出してXYスケール板210とする。この為、Xエリアスケール211のXY軸とXYクロスハッチ213のXY軸の一致度、Yエリアスケール212のXY軸とXYクロスハッチ213のXY軸の一致度、及び、X軸とY軸の直角度はナノレベル台で形成され得る。したがって、XYクロスハッチ213のX軸及びY軸は、Xエリアスケール211及びYエリアスケール212のX軸及びY軸をナノレベル台の精度で代表することが可能となる。なお、Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、XYクロスハッチ213の夫々を個別に切り離したり、又は、個別に作製したりして、夫々を位置管理面ステージ上に所定の位置関係になるように配設する事も可能である。しかしながら、その実現には、機械的な誤差を補正する高度な位置合わせ技術が必要になりコスト増の要因になってしまう。
ΔΘステージ600上にはスライド700が載置される。その載置方向は、図7(b)に示す如く、例えばラベルエリア721が原点マーク701の左側となり、観察対象とカバーガラスの配置領域であるカバーガラスエリア722が原点マーク701の右側となるような方向とする。205で示される破線の領域は顕微鏡による観察対象領域である。観察対象領域205は、対物レンズ148の中心位置(あるいはイメージセンサ401の中心位置(観察位置))がXYステージに対して相対的に移動する範囲であり、スライド700とXYクロスハッチ213とをゆとりを持って包含するサイズとなっている。これにより、どの様な条件下でも、スライド700およびXYクロスハッチ213が観察対象領域205に入るようにしている。すなわち、スライド700のみならずXYクロスハッチ213も、撮像部であるデジタルカメラ400により撮影可能に配置されている。
また、本実施形態では、観察対象領域205の右上端にXYクロスハッチ上のクロスハッチ原点が対応するようにしている。そして、対物レンズ148の中心(あるいはイメージセンサ401の中心(観察位置))とクロスハッチ原点が一致した状態をステージ200のXY座標原点とする。ただし、ステージのXY座標原点として他の場所を定義しても良い事は言うまでもない。また、このステージのXY座標原点とステージ機構の初期化位置とは必ずしも同じものではない。なお、ステージ座標のX軸およびY軸、即ち、ステージX軸203及びステージY軸204は、夫々、XYクロスハッチ213のX及びY軸に平行である。
図7(c)にXエリアスケール211のスケールパターンの例を示す。Xエリアスケール211は、位置を検出するX方向への、透過部と遮光部による透過型回折格子として形成され、例えば、透過部及び遮光部は夫々2μm巾のラインであってこのペアが4μmピッチで配列されている。なお、スケールパターンは、周期的に光路長が異なるように段差が設けられた位相格子であってもよい。
図8(a)は、スライド700と、XYスケール板210上のXエリアスケール211、Yエリアスケール212、及び、XYクロスハッチ213とのZ方向の位置関係を示す図である。図8(a)に示す如く、スライド700の上面とXYスケール板210の上面とが、所定精度で同一平面内になるように、位置管理面ステージ220及びΔΘステージ600が設計される。したがって、ΔΘステージ600の上面は、XYスケール板210の上面よりもスライド700の厚みの分だけ低くなっている。このように、本実施形態では、XYスケール板210の上面(Xエリアスケール211、Yエリアスケール212、及び、XYクロスハッチ213の配置された面)とスライド700の上面を一致させている(ほぼ同一平面としている)。これにより、XYスケール板210上に配置された各マーク(パターン)とスライド700に設けられた各マーク(パターン)のZ方向の位置を一致させることができる。こうする事により、観察面、即ち、スライド700の上面部のXY位置を、外部にある位置基準(Xエリアスケール211及びYエリアスケール212)で高精度に管理する事が可能になる。XYクロスハッチ213は、Xエリアスケール211又はYエリアスケール212を代表する為に、これらと同一平面内に在る事が重要である。なお、実装上は、XYスケール板210の上面(マークが配置された面)とスライド700の上面が、Z方向に概ね0.5mmの範囲内に存在するようにすればよい。
Xエリアスケール211やYエリアスケール212のスケールパターンは、ステージベース260に対して固定された検出センサ(X軸センサ271、Y軸センサ272)により読み出され、ステージ200のXY座標が観察位置そのものに対して直接的に高精度に取得される。即ち、Xステージのリニアエンコーダから得たX方向に対する位置情報とYステージのリニアエンコーダから得たY方向に対する位置情報とを合わせてXYステージの座標値を得るような、XYステージの軸(X軸またはY軸)毎の特定の一軸上の座標で座標値を代表する間接的方法は用いない。本実施例では、XY方向に移動する位置管理面ステージ(Xステージ)220の移動が直接、XYスケール板210により計測される。これにより例えば、機械的なあそびあるいは誤差に伴う、位置管理面ステージ220がX方向に移動する際のY方向への微小な位置ずれや、Yステージ240がY方向に移動する際のX方向への微小な位置ずれについても検出センサで検出できるため、位置管理の精度を大きく向上させることができる。Xエリアスケール211及びYエリアスケール212と、X軸センサ271及びY軸センサ272とのZ方向の位置関係には、図8(b)及び(c)に示すように二通りの方法がある。第1の方法である図8(b)では、X軸センサ271,Y軸センサ272がXYスケール板210の上側(対物レンズ側)に配置される。この場合、遮光膜214をXYスケール板210の下面に設ける必要がある。第2の方法である図8(c)では、X軸センサ271,Y軸センサ272がXYスケール板210の下側(Zベース130側)に配置される。この場合、遮光膜214はXYスケール板210の上面に設けられる。なお、XYクロスハッチ213はデジタルカメラ400により観察される必要があるため、XYクロスハッチ213の位置には遮光膜は配置されない。
第1の方法では、図8(b)に示されるように、X軸センサ271,Y軸センサ272は、ステージベース260に固定されたエル型部材207を介して位置管理面ステージ220上に張り出したセンサ取付け部材208の下面に実装される。X軸センサ271,Y軸センサ272の各々の検出面は、位置管理面ステージ220上のXエリアスケール211、Yエリアスケール212を読むべく下向きとなる。第2の方法では、図8(c)に示されるように、X軸センサ271,Y軸センサ272は、ステージベース260上に検出面を上向きにして、検出面が所定の高さとなるように実装される。最下位に位置するステージベース260上のX軸センサ271、Y軸センサ272は、Yステージ240、位置管理面ステージ220に設けられた所定サイズの孔を通して最上位にあるXエリアスケール211、Yエリアスケール212を下側から読む。
なお、X軸センサ271,Y軸センサ272のXY方向の配置は、第1および第2の方法で共通である。X軸センサ271のY方向の取付け位置は、顕微鏡の観察視野170(実際の観察視野の大きさよりもかなり大きく図示されている)の視野中心(対物レンズ148の中心)を通るX軸上とし、X方向の位置検出精度を担保する。また、Y軸センサ272の取付け位置は、顕微鏡の観察視野170(実際の観察視野の大きさよりもかなり大きく図示されている)の中心(視野中心(対物レンズ148の中心))を通るY軸上とし、Y方向の位置検出精度を担保する。XYスケール板210により、ステージ200のX座標、Y座標を得るためのXエリアスケール211、Yエリアスケール212、及び、イメージセンサ401の軸合わせ(後述)のためのXYクロスハッチが同一部材の同一面上に設けられている。これにより、高精度なピッチ、直角度を有するX,Yエリアスケールと、これらの軸方向に高精度に一致したXYクロスハッチとを得ることができ、高精度な座標の取得が可能となる。
なお、本実施形態では、斜行センサ273が設けられており、位置管理面ステージ220に微小な斜行や蛇行(複雑な斜行)が生じても位置管理精度を維持できるようにしている。図8(b)、(c)の例では、X軸方向で斜行を検知する構成が示されており、斜行センサ273がX軸センサ271の取付け位置のY方向に、所定間隔を置いて実装されている。X軸センサ271と斜行センサ273の間隔は遠い方が高精度となるので、両センサはステージの可動範囲においてXエリアスケール211から外れない限り離れて配置される。なお、斜行はY軸方向で検出してもよく、その場合は、斜行センサ273をY軸センサ272の取付け位置のX方向に所定間隔を置いて実装する。Xエリアスケール211とYエリアスケール212の直交性はその製作法から高精度であることが保証される為、XY方向のうちの一方向の斜行を検出すれば十分である。
なお、X軸センサ271,Y軸センサ272としては、同一出願人による特願2014−079401に記載された検出センサを用いることができる。ナノ技術による高精度エリアスケールとこの検出センサを用いると、例えば、2μm幅、4μmピッチの高精度スケールに対し、2000分の一の内挿演算により、10nm(0.01μm)以下の分解能が得られ、従って、0.1μmの位置(管理)精度が実現され得る。もちろん、これは一例であって、光学レンズを用いた他の市販検出センサをX軸センサ271、Y軸センサ272として用い、周知の内挿演算により、10nm(0.01μm)以下の分解能及び0.1μmの位置(管理)精度を実現しても良い。また、図7(c)に示されるスケールはインクリメンタルタイプの例であるが、アブソリュートタイプであっても良い。即ち、所定精度が得られれば、エンコーダ(スケールとセンサ)の方式は問わない。なお、Yエリアスケール212は、Xエリアスケール211をZ軸まわりに90度回転した形態のスケールパターンである。又、XエリアスケールがY軸情報を含んでいても、逆にYエリアスケールがX軸情報を含んでいても良い。
図9(a)、(b)にX軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273とXエリアスケール211、Yエリアスケール212との位置関係を示す。この関係は、上述した第1の方法によるセンサの配置でも、第2の方法によるセンサの配置でも同様である。
図9(a)は、顕微鏡による観察位置、即ち、顕微鏡による観察視野170(実際の観察視野の大きさよりもかなり大きく図示されている)の中心が、クロスハッチ原点、即ちステージのXY座標原点(ステージ原点206)に有る場合の各センサとスケールの位置関係を示している。この場合、位置管理面ステージ220は、鏡基121に対して左下端(左端かつ遠端)に位置する。一方、図9(b)は、顕微鏡による観察位置、即ち、観察視野170の中心が、観察対象領域205の左下端に有る場合の各センサとスケールの位置関係を示している。この場合、位置管理面ステージ220は、鏡基121に対して右上端(右端かつ近端)に位置する。
図9(a)(b)から、Xエリアスケール211、及び、Yエリアスケール212に必要なサイズが明らかとなる。即ち、
・Xエリアスケール211のサイズは、観察対象領域205のX方向移動量をゆとりを持って包含するサイズと、これに斜行検知の為に同等のサイズを加えた領域、すなわち、観察対象領域205の約2倍のサイズが必要となる。
・Yエリアスケール212のサイズは、観察対象領域205のY方向移動量をゆとりを持って包含するサイズ、即ち、概ね、観察対象領域205と同サイズが必要となる。
ただし、斜行検知をY方向で行う場合には、Yエリアスケール212において観察対象領域の約2倍のサイズが必要となり、Xエリアスケール211に必要なサイズは、観察対象領域205のX方向移動量をゆとりを持って包含するサイズとなる。
ここで、X軸センサ、Y軸センサ、斜行センサの夫々を複数にし、中間で引き継ぐ方式とすると各エリアスケールのサイズを小さくできる。これにより、位置管理面ステージ220の小型化が可能になる。図10(a)(b)に夫々のセンサを2個ずつにした場合の例を示す。なお、本例ではX軸センサ、Y軸センサの両方について引き継ぎを行う複数のセンサを配置したが、X軸センサ、Y軸センサのいずれかについて引き継ぎを行う複数のセンサを配置してもよい。
図10(a)(b)において、X軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273の中間(夫々、X及びY方向移動量が半分の位置)にX軸中間センサ271a、Y軸中間センサ272a、斜行中間センサ273aが配置されている。図10(a)は、観察視野170の中心がクロスハッチ原点、即ちステージ原点206に有る場合を、図10(b)は、観察視野170の中心が観察対象領域205の左下端に有る場合を示している。図9、図10の両図から明らかなように、中間センサとの引き継ぎにより、Xエリアスケール211はX方向に約半分、Yエリアスケール212もY方向に約半分のサイズで済むことになる。すなわち、X軸センサ271とX軸中間センサ271aは、X軸方向に沿って所定の間隔を持って配置されており、Xエリアスケール211のX軸方向の大きさは、上記所定の間隔よりも若干大きいがXYステージのX軸方向の移動範囲よりも小さくできる。Y軸中間センサ272aを設けた場合も同様である。よって、X軸センサ271、Y軸センサ272が一つずつの場合に比べて、XYスケール板210の大きさを小さくすることができる。
次に、XYスケール板210に設けられたXYクロスハッチ213について説明する。図11(a)(b)は、XYクロスハッチ213のパターンを説明する図である。図11(a)に示されるように、XYクロスハッチ213は、クロスハッチ290、クロスハッチ原点291、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293の4種類の位置基準マークを具備する。クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293は、それぞれX方向、Y方向に伸びるライン状のパターンである。
クロスハッチ原点291は、顕微鏡の観察視野170の中心がクロスハッチ原点291にある時をステージのXY座標の原点として設定する(読み替える)ことで、ステージ原点206(ステージ原点基準の座標を得るためのステージ基準位置)として使用される。なお、図11等において観察視野170は実際の観察視野の大きさよりもかなり大きく示されている。また、観察視野170の中心とは、視野中心(対物レンズ148の中心)、すなわち、イメージセンサ401の中心である。ステージ原点206は、観察対象領域205(対物レンズ148の中心が移動する領域)の右上端部に位置する。クロスハッチ290、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293は、ステージ200におけるX軸及びY軸の基準である。ステージ200の各部は、このXYクロスハッチ213のX軸及びY軸に揃うように組み上げられるか、又は、組み上げた後に調整が行なわれる。すなわち、ステージ200のXY移動方向(ステージX軸203、ステージY軸204)とXYクロスハッチ213のXY方向が高精度に一致するように組み上げられる。これにより、ステージ200のXY移動方向が、夫々、Xエリアスケール211のX軸方向、及び、Yエリアスケール212のY軸方向に揃う事になる。こうして、XYスケール板210上のデジタルカメラ400により観察が可能な位置に配置されたXYクロスハッチ213は、ステージのX軸及びY軸の基準として、デジタルカメラ400のイメージセンサ401とステージ200とのXY軸合せに使用可能となる。なお、顕微鏡本体100へステージ200を取付ける際に、鏡基121のXY軸にステージ200のXY軸を合せるのにも、XYクロスハッチ213を利用する事が可能である。
後述するように、本実施形態の顕微鏡システムでは、ステージ200のXY軸方向とステージ200に載置されたスライド700のXY軸方向とを、イメージセンサ401を介して高精度に一致させる。これにより、一つのスライドを置きなおして観察した場合の位置ズレや、異なるデジタル顕微鏡間のステージの特性の影響を受けない、普遍的な位置管理を可能としている。より具体的には、
・XYクロスハッチ213をデジタルカメラ400により撮像して得られた画像(動画、静止画を問わず)に基づいてステージ200とイメージセンサ401のXY軸方向を一致させ、
・スライド700のY軸マークをデジタルカメラ400を用いて撮像して得られた画像(動画、静止画を問わず)に基づいてスライド700とイメージセンサ401のXY軸方向を一致させる、
ことにより、ステージ200のXY軸方向とステージ200に載置されたスライド700のXY軸方向とを一致させるが、処理の詳細については後述する。
図11(b)に、クロスハッチ原点291、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293、クロスハッチ290の4つのマークの寸法関係の具体例を示す。クロスハッチX軸292は複数の異なる太さのX軸ラインの複合体、クロスハッチY軸293は複数の異なる太さのY軸ラインの複合体であり、それぞれX軸方向の軸情報、Y軸方向の軸情報を有する。なお、各ラインの太さは複数の倍率の対物レンズに対応している。すなわち、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293のそれぞれは、幅が異なる複数のラインから構成され、それら複数のラインは中心線(X軸あるいはY軸)を中心として線対象に配置されたラインパターンである。なお、クロスハッチ290は、X軸方向のラインとY軸方向のラインが交差しないように図11(b)のようなパターンを採用しているが、X軸方向のラインとY軸方向のラインが交差するような一般的なクロスハッチパターン、即ち、図11(a)の様でもよい。クロスハッチ原点291は、その中心がクロスハッチX軸292及びクロスハッチY軸293の中心線の交点と一致するように配置される。後述するX初期位置マーク234(図18(b))及びY初期位置マーク253(図19(b))は、本実施形態では、クロスハッチ原点291に合わせて所定精度で実装される。
クロスハッチY軸293のより詳細な構成例を図12(a)、図12(b)に示す。図12(b)は、図12(a)の中心部を拡大した図である。クロスハッチY軸293は、例えば、中心線を線対称軸とする同一幅のラインのペアが、幅を変えて複数対、線対称に配列された構成を有する。なお、中心線上には何らかのラインが存在しても良い。又、ラインとスペースの関係を反転させても良い。これにより、対物レンズ低倍時の画角においても、又、高倍時の画角においても、適切な数と太さのラインがライブ画像撮像機能や静止画撮像機能により撮像され、後述する重心検知において、所定の精度が担保される。クロスハッチX軸292は、クロスハッチY軸293を90度回転した構成を有する。クロスハッチX軸292及びクロスハッチY軸293を構成するライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)の間隔、ライン又はスペースの幅などは、所定の値に設定されており実距離情報として有用である。又、各ラインは、更に、微細ラインとスペースのペアの集合体より構成しても良い。微細ラインの幅は、例えば、マークを構成する複数のラインのうちの最も狭いラインの幅の1/10以下(例えば、1μm)とする。こうすると、より微細な実距離情報を包含可能となる。
クロスハッチ290は、例えば、1mm角の中に0.5mm長のX軸ライン及びY軸ラインを2個ずつ交互に配した小クロスハッチをX方向及びY方向に1mmピッチで配列したものである。小クロスハッチの詳細な構成例を図12(c)に示す。小クロスハッチの0.5mm長のX軸及びY軸ラインは40倍対物レンズの視野サイズ(例えば0.37mm)より大きく、視野内でX軸ライン又はY軸ラインのみを適切な幅で観察でき、重心検知により高精度な位置情報を取得できる。クロスハッチ290は、ステージ移動精度の調整やメンテナンスに有用である。また、観察視野170における周辺部の幾何ひずみ(主に対物レンズの光学系による)を計測するのに用いることができる。計測されたひずみは、撮影画像のひずみ補正に用いることができる。なお、XYクロスハッチ213を構成する基準マークは、夫々の間の間隔、夫々のサイズ、又、夫々の基準マークの構成、基準マークを構成するライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)の間隔、ライン又はスペースの幅などは、所定の値に設定されており実距離情報として有用である。なお、小クロスハッチとして図11(a)の様な一般的なクロスハッチパターンを用いても良い。その場合、その方眼サイズを適切に選ぶ事、また、複数の異なる方眼サイズのクロスハッチを設ける事、また、クロスハッチの方眼ラインをクロスハッチX軸292及びクロスハッチY軸293の様な複合ラインとする事など、多くのバリエーションが可能である。なお、図11(b)に示す如く、各基準マークのサイズ、お互いの距離などは、全て、例えば10倍対物レンズの視野サイズ1.5mmを上回る。即ち、効率的にマーク位置を検出できるように、顕微鏡の同一視野内で、隣接する位置基準マークが同時に観察されないように、其々の間隔が視野サイズに相当する距離以上(本実施形態では、10倍対物レンズの視野サイズ1.5mm以上)離して配設される。なお、クロスハッチ原点291にも、クロスハッチX軸292やクロスハッチY軸293と同様の微細ライン(たとえば、1μm幅の白ラインと黒ラインが交互に並ぶようにする)を入れてもよい。
なお、Xエリアスケール211やYエリアスケール212、XYクロスハッチ213についてXYステージの軸方向に対する精度、X軸方向とY軸方向の直交の精度を維持できるのであれば、一体構成のXYスケール板210を必ずしも用いる必要はない。しかしながら、Y方向の位置を検出するためのリニア(一軸)スケールをYステージに配置し、X方向の位置を検出するためのリニア(一軸)スケールをXステージに配置した一般的なXYステージのように、Y方向の位置を検出するためのYエリアスケールをYステージに配置し、X方向の位置を検出するためのXエリアスケールをXステージに配置するような構成を採用した場合、上述した精度を維持するために高度な機械加工技術及び位置合わせ技術が要求される。これは、顕微鏡のコスト増の要因となるであろう。
次に、位置管理面ステージ220上に配設されるΔΘステージ600の構成について図13〜図17を用いて説明する。位置管理面ステージ220は、ステージ200の最上部のステージであり、Y方向へ移動するYステージ240上をX方向へ移動することで、X方向およびY方向へ移動する。ΔΘステージ600は回転中心601を中心としてZ軸まわりに回転する回転ステージ691を有する。ΔΘステージ600の目的は、スライドの自動ローディング、手動ローディングを問わず、スライドの載置において生じるスライドの回転ズレ、およびスライド上面の光軸に対する傾き(あおり)を補正し、3次元のXYZの各方向について上述した観察位置の位置管理の目標精度である±0.1μmを目指すものである。
図13(a)は、位置管理面ステージ220を上面側から見た斜視図であり、ΔΘステージ600が位置管理面ステージ220に組み込まれた様子を示している。図13(b)は位置管理面ステージ220を下面側から見た斜視図であり、ΔΘステージ600がdZリフトユニット650を介して位置管理面ステージ220に固定された様子が示されている。詳細は後述するが、dZリフトユニット650の取り付け板651が、ネジ651aにより位置管理面ステージ220に固定される。また、バネ押え板652がネジ652aによりΔΘステージ600に固定され、バネ押え板652と位置管理面ステージ220の間に板ばね656(図15、図16)が保持されるようにすることで、dZリフトユニット650へのΔΘステージ600の押圧状態が維持される。こうして、ΔΘステージ600は、dZリフトユニット650を介して位置管理面ステージ220に装着される。
図14(a)、図14(b)は、それぞれΔΘステージ600を下面側、上面側(スライド700を載置する面の側)から見た斜視図である。図14(a)(b)において、ΔΘステージ600は、ΔΘベース692とΔΘカバー693を有し、ΔΘベース692に回転ステージ691が搭載された構成を有する。ΔΘカバー693の側面には、dZスケール640が設けられている。図14(c)は、ΔΘステージ600においてΔΘカバー693を取り外した状態を示す。ΔΘベース692上には、回転ステージ691が回転中心601を中心に回動可能に装着されており、回転駆動機構694の駆動により回動する。また、ΔΘベース692はdZリフトユニット650を介して位置管理面ステージ220に固定される。dZリフトユニット650は図14(c)等に示されるように、複数個所、本例では3か所。でΔΘステージ600と位置管理面ステージ220を接続し、それぞれ独立にΔΘステージ600をZ方向へ移動する。ここで、3つのdZリフトユニット650のリフトピン654(dZ1〜dZ3)のうち、2つ(dZ1、dZ2)は鏡基側でX軸方向に沿った位置に配置され、他の1つ(dZ3)は鏡基より遠端側に配置され、二等辺三角形を形成する如く配置される。また、位置管理面ステージ220のdZスケール640に対向する位置には、dZスケール640を読み取るためのdZセンサ641が設けられている。
図15(a)〜(d)は実施形態によるdZリフトユニット650を示す図である。取り付け板651は、位置管理面ステージ220の下面に延び、ネジ651aにより位置管理面ステージ220に固定される。バネ押え板652は、ネジ652aによりΔΘベース692の下面に固定される。dZモータ653と一体に構成されているモータフランジ657が取り付け板651に固定され、これにより、dZモータ653が取り付け板651に対して固定される。リフトピンガイド658が弾性部材である板ばね656、及び、モータフランジ657を挟んで取り付け板651に固定されている。dZモータ653の回転軸には、ΔΘベース692の下面に圧入された球面軸受655に当接するリフトピン654が設けられている。上述のようにΔΘステージ600の側面にはdZスケール640が設けられており、位置管理面ステージ220の対応する位置にはdZセンサ641が設けられている。
図15(e)に示されるように、dZスケール640は、dZ初期位置マーク640aとdZリニアスケール640bを含む。また、dZセンサ641はdZ初期位置センサ641aとdZ軸センサ641bを含み、それぞれがdZ初期位置マーク640aの検出、dZリニアスケール640bの読み取りを行う。これらdZスケール640とdZセンサ641により、ΔΘステージ600の上下方向の移動量が管理され、スライド700の上面の高精度なあおり補正が実現される。なお、dZリニアスケール640bは、Xエリアスケール211(図7(c)等)と同様のパターンであり、スケール幅を狭くしてリニアスケールとしたものである。dZリニアスケール640bは、Xエリアスケール211と同様に、例えば、透過部及び遮光部は夫々2μm巾のラインであって、このペアが4μmピッチで配列されている。このdZリニアスケール640bとdZ軸センサ641bを用いて例えば2000分の一の内挿演算により、10nm(0.01μm)以下の分解能及び0.1μmの位置管理精度を実現するものとする。また、dZリフトユニット650によるΔΘステージ600のZ方向の可動範囲は、dZ初期位置マーク640aを中心に±0.2mm程度とするが、これに限られるものではない。
図16(a)は、dZリフトユニット650により位置管理面ステージ220とΔΘベース692を接続した状態を示す図である。上述したように、取り付け板651はネジ651aにより位置管理面ステージ220に固定され、バネ押え板652はネジ652aによりΔΘベース692に固定される。図16(b)は図16(a)のF−F断面を示し、図16(c)は図16(a)のE−E断面を示す。板ばね656により、ΔΘベース692がZ軸下方向へ付勢されることにより、ΔΘベース692(球面軸受655)がリフトピン654へ押しつけられ、位置管理面ステージ220にΔΘステージ600が安定的に嵌合される。dZモータ653の回転軸はネジ部656を有し、dZモータ653の駆動によりリフトピン654が回転軸方向に移動する。リフトピン654は板バネ656の付勢力によりΔΘベース692の下面に組み込まれた球面軸受655と当接しており、リフトピン654の上下(dZモータ653の回転軸方向への移動)によりΔΘステージ600が上下することになる。
次に、ΔΘステージ600の回転ステージ691の構成および回転ズレ補正について説明する。スライド回転ズレの最悪値は端部で±0.5mm位と想定され、約±0.4度(±0.38度)の回転ズレに相当する。この様子を図17(c)に示す。このようなスライドの回転ずれを補正するために、ΔΘステージ600の回転ステージ691によりスライドを回転させ、観察可能範囲(56mm)で±0.1μmの垂直誤差(正接誤差、TAN誤差)(±約0.1ミリ度)となるように補正する。なお、実用的には、2mmの観察範囲の両端で±0.1μmの垂直誤差(±約3ミリ度)に収める事が出来れば、病理診断では十二分なレベルと予想される。回転ステージ691の最大可動範囲は、±2〜3度程度で十分である。
図17(a)で、ΔΘステージ600の回転ステージ691上には、スライドの載置位置を規定するスライドホルダ602が配設され、位置基準付きスライド700が載置される。スライドホルダ602に設けられたレバー604は、スライド700をスライドホルダ602の基準位置603に向けて加圧する機能を有しており、これによりスライド700が安定して載置される。
回転ステージ691は、ΔΘベース692に対して固定された回転中心601を回転軸として、ΔΘステージ600のXY平面内で摺動的に回転可能となっており、回転駆動機構694により回転する。回転駆動機構694は、たとえば、図17(a)、(b)に示されるようにΔΘステージ600内に実装されており、ΔΘ駆動モータ611、ボールネジのネジ軸612、ボールネジのナット部613を有する。ネジ軸612は、ΔΘ駆動モータ611の回転軸の先に配設される部材であり、ナット部613はボールネジのネジ軸612の回転によりネジ軸方向に移動する部材である。ΔΘ駆動モータ611を回転させると、ネジ軸612が回転し、ナット部613に取り付けられた駆動リニアギア614が移動するため、回転ステージ691の端部に取り付けられた嵌合相手の被駆動円弧ギア615が移動する。この結果、回転ステージ691は載置されたスライドごと回転中心601を軸として回転し、スライドの回転誤差の補正が為される。図17(b)では、図17(a)の状態から、角度θだけスライド700(回転ステージ691)を時計方向へ回転させた状態が示されている。なお、回転ステージ691の回転駆動は、上述したような駆動モータ、ボールねじ、ギアの組み合わせに限られるものではなく、たとえば、移動体と駆動モータによる摩擦を利用した超音波駆動であってもよい。
又、回転ステージ691の端部には、起動時の初期化に使用されるΔΘの初期位置マーク620が取り付けられており、回転ステージ691の初期位置が規定される。初期位置マーク620の対向面にはΔΘ初期位置センサ621がΔΘベース692側に設けられ、起動時に回転ステージ691の初期位置を検出する。該初期位置をスライドの回転ズレが無い場合の基準位置とすれば、ΔΘステージ600は該基準位置の前後に例えば±2〜3度の範囲で回転すれば十分である。ΔΘステージ600の制御については後述する。
次に、本実施形態のステージ200のXYステージを構成する位置管理面ステージ220、Yステージ240、ステージベース260について詳細に説明する。なお、以下では、図8(c)により説明したセンサ配置方法(ステージベース260上にX軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273を配置する方法)を用いた場合の各ステージの構成を説明する。ただし、図8(b)に示したセンサ配置方法の場合の構成等についても、以下の説明から明らかであろう。
まず、位置管理面ステージ220について、図18を参照して説明する。図18(a)は位置管理面ステージ220の上面図(対物レンズ側からみた図)であり、図18(b)は位置管理面ステージ220の裏面図(Zベース130側から見た図)である。本実施形態では位置管理面ステージ220は、Yステージ240上をX方向に移動するXステージ機能を有する。
XYスケール板210のXエリアスケール211、Yエリアスケール212に対応する位置に、X軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273がエリアスケールにアクセス可能とするための開口221、222が設けられている。開口221,222の大きさはそれぞれXエリアスケール211、Yエリアスケール212を包含する大きさとする。
開口223は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズ147を組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズを有している)の中心が観察対象領域205内の全域にわたってXYステージに対して相対的に移動した場合に、コンデンサレンズ用開口224が位置管理面ステージ220を相対的に移動する範囲に設けられている。この開口223により、位置管理面ステージ220が観察対象領域205のいかなる位置に移動しても、コンデンサレンズユニット(コンデンサレンズを組込んだ筐体)は位置管理面ステージ220と干渉しない。
位置管理面ステージ220の裏側には、X軸クロスローラガイド231が、X軸方向と平行に2本配設されている。X軸クロスローラガイド231と対向するようにYステージ240上にX軸クロスローラガイド241(図19)が取り付けられており、これにより、位置管理面ステージ220がYステージ240によりX方向に摺動可能に支持される。Xスライダ232は、Yステージ240の対向面に組み込まれたX軸駆動モータ242(図19)の移動体であり、X軸駆動モータ242により位置管理面ステージ220はX軸方向に駆動される。すなわち、X軸駆動モータ242とXスライダ232とにより、例えば超音波によるリニアモータが構成される。
X軸ラックギア233はX摘み201と連動して回転するYステージ240上のX軸ピニオンギア244の回転により位置管理面ステージ220をX方向に移動する。なお、手動による位置管理面ステージ220のX方向への移動はラック&ピニオンに限る訳でなく、例えば、ワイヤ&プーリー方式などであっても良い。いずれにしろ、本実施形態では手動駆動、及び、電動駆動の両手段により位置管理面ステージ220をX方向に移動可能である。
X初期位置マーク234は、本実施形態では、ステージ200のXY座標原点(ステージ原点206)となるクロスハッチ原点291のX方向位置に所定の精度で対応している。即ち、本実施形態では、XYクロスハッチ213のクロスハッチ原点291を通るクロスハッチY軸293の中心線の延長上に所定の精度で実装される。なお、ステージの機構上の初期化位置は、他の位置でも構わない。ステージ原点206は、ステージの機構上の初期化位置とは無関係に、カメラのセンサ中心がクロスハッチ原点291に一致した場合で定義される。即ち、ステージ200の初期化位置、即ち、X初期位置マーク234の配設位置は、必ずしも、クロスハッチ原点291あるいはステージ原点206に合せる必要はない。
次に、図19を参照してYステージ240について説明する。図19(a)はYステージ240の上面図(位置管理面ステージ220側からみた図)であり、図19(b)はYステージ240の裏面図(Zベース130側から見た図)である。
図19(a)において、X軸クロスローラガイド241は、位置管理面ステージ220の裏面に配設されたX軸クロスローラガイド231とペアをなし、位置管理面ステージ220をX軸方向に摺動可能に支持する。X軸駆動モータ242は位置管理面ステージ220のXスライダ232を介して、位置管理面ステージ220をX方向に移動する。X軸ピニオンギア244は位置管理面ステージ220の裏面に設けられたX軸ラックギア233と噛み合わさり、その回転により位置管理面ステージ220をX軸方向へ移動する。X軸ピニオンギア244はX摘み201の回転にしたがって回転するので、ユーザはX摘み201を操作することで位置管理面ステージ220をX軸方向へ移動させることができる。X初期位置センサ243は、位置管理面ステージ220の裏面に設けられているX初期位置マーク234を検出する。
開口245は、ステージベース260に配置されたX軸センサ271および斜行センサ273が、位置管理面ステージ220の開口221を介してXエリアスケール211にアクセスするための開口である。Yステージ240はステージベース260に対してXY方向のうちのY方向に移動するので、開口245はY方向に延びた形状となっている。同様に、開口246は、ステージベース260に設けられたY軸センサ272が、位置管理面ステージ220の開口222を介してYエリアスケール212にアクセスするための開口である。また、開口247は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズ147を組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズを有している)の中心(コンデンサレンズ147の中心でもある)が観察対象領域205を移動した場合の、コンデンサレンズ用開口224が移動する領域に対応する。上述したようにYステージ240はXY方向のうちのY方向に移動するので、開口247はX軸方向には延びず、Y軸方向に延びた形状を有している。この開口247により、Yステージ240が観察対象領域205のY方向に移動しても、コンデンサレンズユニットと干渉しない。
Yステージ240の裏面(図19(b))において、Y軸クロスローラガイド251がY軸に平行に2本配設されている。Y軸クロスローラガイド251と対になるクロスローラガイドはステージベース260に取り付けられており、これにより、Yステージ240は、ステージベース260によりY方向に摺動可能に支持される。Yスライダ252は、ステージベース260の対向面に組み込まれたY軸駆動モータ264(図20)の移動体であり、Y軸駆動モータ264によりYステージ240はY軸方向に駆動される。Y軸駆動モータ264とYスライダ252とにより、例えば超音波によるリニアモータが構成される。
Y軸ピニオンギア254はY摘み202の回転にしたがって回転する。Y摘み202の回転により、ステージベース260上に固定されたY軸ラックギア263(図20)をY軸方向へ移動する。したがって、ユーザはY摘み202を操作することで手動によりYステージ240をY軸方向へ移動することができる。なお、手動によるステージのY方向移動はラック&ピニオンに限る訳でなく、例えば、ワイヤ&プーリー方式であっても良い。いずれにしろ、本実施形態では手動駆動、及び、電動駆動の両手段によりYステージ240をY方向に移動可能である。Yステージ240は、位置管理面ステージ220を支持したままで、ステージベース260に対しY方向に移動する。Y初期位置マーク253は、本実施形態では、ステージ200のXY座標原点(ステージ原点206)となるクロスハッチ原点291のY方向位置に所定の精度で対応している。即ち、本実施形態では、XYクロスハッチ213のクロスハッチ原点291を通るクロスハッチX軸292の中心線の延長上にY初期位置マーク253は所定の精度で実装される。なお、ステージの機構上の初期化位置は、他の位置でも構わない。ステージ原点206は、ステージの機構上の初期化位置とは無関係に、カメラのセンサ中心がクロスハッチ原点291に一致した場合で定義される。即ち、ステージ200の初期化位置、即ち、Y初期位置マーク253の配設位置は、必ずしも、クロスハッチ原点291あるいはステージ原点206に合せる必要はない。
次に、図20を参照してステージベース260について説明する。図20は、ステージベース260の上面図(ステージベース260をYステージ240側から見た図)である。ステージベース260上には、Xエリアスケール211を読むためのX軸センサ271と斜行センサ273、Yエリアスケール212を読むためのY軸センサ272が取り付けられている。各センサは、位置管理面ステージ220に設けられたXYスケール板210のXエリアスケール211及びYエリアスケール212に対して所定の距離となるように台座(不図示)により高さ調整が為されている。また、上述のように、X軸センサ271はステージ原点206(クロスハッチ原点291)を通るX軸上に設けられ、Y軸センサ272は、ステージ原点206を通るY軸上に設けられている。又、斜行センサ273は、X軸センサ271の取付け位置のY方向に、所定間隔を置いて実装されている。
Y軸クロスローラガイド262は、Yステージ240の裏面に配設されたY軸クロスローラガイド251とペアを為し、Yステージ240をY軸方向に摺動可能に支持する。Y軸駆動モータ264はYステージ240(Yスライダ252)をY方向に電動により移動するためのモータである。Y軸ラックギア263は、Y軸ピニオンギア254の回転によりYステージ240をY方向に移動する。Y初期位置センサ265は、Yステージ240の裏面に配置されているY初期位置マーク253を検出する。開口261は、コンデンサレンズ用開口224(コンデンサレンズ147を組込んだコンデンサレンズユニットのサイズよりも大きめにゆとりを持たせたサイズ)に対応する。この開口261により、コンデンサレンズユニットはステージベース260と干渉しない。なお、図4の参照により上述したように、ステージベース260には、ΔZステージ900に装着するためのバネフック995、球面軸受996、センサプレート用ホール997が設けられている。また、ステージベース260には、Zベース130へ直接固定することを可能にするZベース取り付け穴902aと位置決め穴903aが設けられている。
開口261、247、223は、スライド上の観察位置にスライド下面からコンデンサレンズユニットを接近可能にするとともに、コンデンサレンズ147により集光された光源光を通過させる。
なお、以上説明した各ステージに設けられた、X軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273、コンデンサレンズ147のための開口のサイズは、機械強度と精度が維持される限り、大きめであっても問題のないことは言うまでもない。
次に、接眼鏡基122とデジタルカメラ400を接続するためのアダプタ部300について説明する。イメージセンサ401(図2)は例えばCMOS素子からなる画素が行列状に、すなわち行方向(X方向)と列方向(Y方向)に整列したエリアセンサ(カメラセンサ)であって、XY軸を有する。一般に、顕微鏡では、観察光学系のXY軸(スプリットプリズム150及び接眼鏡筒123の光学系(図2)で決まる)は鏡基121のX軸に合せて組み上げられている。また、XYステージもZベース130を介して、鏡基121のX軸に合せて所定の精度で取り付けられている。従って、イメージセンサ401のX軸が接眼鏡筒123のX軸(=鏡基121のX軸)に対して回転ズレがあると、そのXY軸は接眼観察像のXY軸及びステージのXY軸との間で回転ずれを生じる。
デジタルカメラ400はアダプタ部300に位置決めピン付きのレンズマウントを介して取り付けられ、アダプタ部300は接眼鏡基122に位置決めピン付きのねじ込みで取り付けられている。位置決めピンではそのメカ精度により、必ず微小な回転ズレが存在すると考えて良い。図44は、撮像画像のXY軸(イメージセンサ401のXY軸)とステージのXY軸との回転ズレの影響を説明する図である。説明の都合上、多少誇張して示している。例えば、図44(a)に示されるように、ステージ200をX軸方向に移動し、ROI全体を隣接する2枚の画像2001,2002で撮像した場合、回転ズレによりそれぞれ同じように斜めに撮像される。
一方、撮像された画像2001、2002(エビデンス画像)は図44(b)の様にイメージセンサのX軸を水平軸として表示される。図44(b)において2011は視野の中心であって、イメージセンサ401の中心と一致する。2012はROIエリア内の注目対象物を想定し、画像2001と画像2002で同一物を示している。ところが、上述した回転ズレのため、左右に隣接する画像2001,2002の間で、そのY座標は違った値になってしまう。これは、エビデンス画像上の座標値が、ステージによる位置座標と異なってしまう事を意味する。とくに、ROIが大きく、その全体がスライド上の切片エリア全域に及ぶ場合を想定すると、観察位置のセンサXY軸による座標とステージのXY軸による座標値とが大きく乖離する事を意味する。位置管理の視点では、エビデンス画像上の注目点のセンサXY軸による座標とステージのXY軸による座標とは、共通である事が望まれる。そして、その一致度の精度目標は、上述したXYステージによる位置管理の目標である0.1μm(0.01μm刻み)と同等となる。
さらに、コントローラ501により2枚の画像を合成し、ROI全体のエビデンス画像を生成しようとすると、画像処理による回転補正が必要になる。しかるに回転ずれの量は不明であり、画像認識処理による高精度な接続は難易度が高く、又、回転演算処理は通常画質の劣化を伴う。しかるに、回転ズレが位置管理の目標である0.1μm内に収まっていれば、2枚の画像は単なる平行移動により高精度で繋がることになる。本実施形態のアダプタ部300は、イメージセンサ401のXY軸とステージ200(XYステージ)のXY軸との位置合わせを行う機構を有し、上述のような課題に対応する。
図21はアダプタ部300の構成を示す図である。一般に、顕微鏡本体100とデジタルカメラ400は異なるメーカにより製造される。アダプタ部300は、このような異なるメーカ間での製品の互換性に配慮し、第1のアダプタ部である光学アダプタ320、第2のアダプタ部であるΔCアダプタ340、及び、第3のアダプタ部であるカメラアダプタ360を有する三体構造とした。これは、接眼鏡基122の鏡基マウント128が顕微鏡メーカ固有の規格であり、デジタルカメラ400のカメラマウントがカメラメーカ固有の規格である為、新たな共通規格になる新マウントを有するΔCアダプタ340を提供するのが好適だからである。
なお、図21の顕微鏡メーカ固有規格になる接眼鏡基122上の鏡基マウント128は、一般に光学アダプタの固定のみを目的とし、回転方向の位置は不定であった。これに対して、本実施形態では、接眼鏡基122と光学アダプタの回転位置が所定の位置関係を有するように位置決め基準穴311が新たに付与されたマウントを搭載する。また、これに対応して、一般に、回転方向の位置が不定であった光学アダプタ320の鏡基側マウント321にも、位置決め基準突起322が新たに付与される。基準突起322が鏡基マウント128の位置決め基準穴311に嵌合して装着されることにより、光学アダプタ320の回転方向の位置(位置決め基準穴311との嵌合位置)が接眼鏡基122に対して所定の精度で一意に決まる。
光学アダプタ320内には、アダプタレンズ301が収容されている。また、光学アダプタ320の鏡基側マウント321と反対側の端部には、新たな共通規格マウントの凹側としてのアダプタ側マウント331が設けられている。アダプタ側マウント331は、位置決め基準穴332を有し、ΔCアダプタ340と接続される。ΔCアダプタ340の新たな共通規格マウントの凸側である鏡基側のマウント341は、位置決め基準突起358を有し、位置決め基準穴332に嵌合して光学アダプタ320のアダプタ側マウント331と接続される。
ΔCアダプタ340のカメラ側のマウント342は、新たな共通規格マウントの凹側としてのマウントであり、位置決め基準穴359を有しており、カメラアダプタ360と接続される。一方、カメラアダプタ360において、アダプタ側マウント361は新たな共通規格マウントの凸側であり、位置決めのための基準突起362を有する。カメラアダプタ360のアダプタ側マウント361は、ΔCアダプタ340のカメラ側のマウント342に装着される。カメラアダプタ360がΔCアダプタ340に装着される際には、ΔCアダプタ340の位置決め基準穴359にカメラアダプタ360の基準突起362が嵌合し、カメラアダプタ360の回転方向がΔCアダプタ340に対して一意に決まる。カメラアダプタ360のカメラレンズマウント363はカメラメーカ固有規格のマウントであり、通常、デジタルカメラ400のカメラマウント402に対して固有規格の位置決め機構を有する。
以上により、
・接眼鏡基122と光学アダプタ320との機械的接続、
・光学アダプタ320とΔCアダプタ340との機械的接続、
・ΔCアダプタ340とカメラアダプタ360との機械的接続、
・カメラアダプタ360とデジタルカメラ400との機械的接続、
を介して、デジタルカメラ400のイメージセンサ401と接眼鏡基122の回転方向の位置が所定精度内で規定される。すなわち、顕微鏡の鏡基121のXY軸とデジタルカメラ400のイメージセンサ401のXY軸との回転方向の位置関係が、機械的精度で決まる所定の精度内で担保される。この場合、上述した接続箇所4か所の機械的精度が合算されるため、回転位置合わせの精度は、例えば50mmΦの外周で最悪±0.5mm(±約1度)となり、これは50mmの観察範囲の両端での±0.5mmの回転ズレに相当する。
以上のような、マウントに設けられた機械的な基準機構による位置決め精度では、目標精度である±0.1μmを実現することができず、図44を参照して上述したようなイメージセンサ401の回転に関する課題に対応しきれない。本実施形態のΔCアダプタ340は、鏡基121とデジタルカメラ400のイメージセンサ401との回転ズレを補正し、高精度な位置管理の目標精度である±0.1μmを実現するものである。56mmの観察範囲の両端で±0.1μmの垂直誤差は±約0.1ミリ度に相当する。従って、ΔCアダプタ340には、±約1度の範囲の誤差を±約0.1ミリ度にまで補正する能力が要求される。なお、実用的には2mmの観察範囲の両端で±0.1μmの垂直誤差(±約3ミリ度)に収めることが出来れば、病理診断では十二分なレベルと予想される。この場合でも、ΔCアダプタ340は、±約1度の範囲の誤差を±約3ミリ度にまで補正することが必要となる。なお、ΔCアダプタ340の最大補正範囲は、±2〜3度程度あれば十分である。ΔCアダプタ340は、このような精度で回転補正を行う機能を実現するための回転機構を有する。
図22(a)にΔCアダプタ340の構造を示す。マウント341は、接続部として位置決め基準突起358を有する共通規格マウント凸側である。凸側の内筒部343は、クロスローラリング344の外輪部345に固定されている。外輪部345の上部には外筒346が組みつけられ、外筒346は、外筒ベース板347を有する。ΔC駆動モータ348、ボールネジ349(図22(b))、及び、駆動制御用の電気基板(図示せず)等が外筒ベース板347に実装されている。クロスローラリング344の内輪部350には、共通規格マウント凹側であるマウント342が組みつけられる。クロスローラリング344の外輪部345と内輪部350との間に配設されたローラベアリング351により、内輪部350は外輪部345に対し滑らかに回転する。即ち、マウント342は、カメラアダプタ360との接続部として共通規格マウント凹側を有し、共通規格マウント凸側であるマウント341に対して回転する。結果的に、鏡基121(接眼鏡基122)に対してデジタルカメラ400が回転することになる。こうして、マウント341とマウント342の配置関係(本実施形態では回転位置関係)を変更する駆動機構が構成される。
図22(b)はΔCアダプタ340における回転駆動法を示す図である。外筒ベース板347上に固定されたΔC駆動モータ348のロータ軸の先にはボールネジ349のネジ軸352が形成され、ネジ軸352の回転によりボールネジのナット部353はΔC駆動モータ348の軸方向にリニアに移動する。このとき、ボールネジのナット部353に固定された駆動リニアギア354も移動する。駆動リニアギア354の嵌合相手は共通規格マウント凹側であるマウント342の外壁に固定された被駆動円弧ギア355であり、これにより、駆動リニアギア354の移動にしたがってマウント342が回転駆動される。こうして、共通規格マウント凸側としてのマウント341に対して、共通規格マウント凹側としてのマウント342の回転補正が為される。ΔC駆動モータ348は不図示の制御回路により、コントローラ501からの駆動指示に応じて所定角度だけマウント342を回転させるように駆動される。なお、マウント342の回転駆動は、駆動モータ、ボールねじ、ギアの組み合わせに限られるものではなく、たとえば、移動体と駆動モータによる摩擦を利用した超音波駆動であってもよい。
共通規格マウント凹側としてのマウント342の外壁には、起動時の初期化に使用されるΔC初期位置マーク356が所定の位置に取り付けられ、ΔCの初期位置を規定する。ΔC初期位置マーク356の対向面にはΔC初期位置センサ357が外筒ベース板347上に配設され、起動時に初期位置の検出を行う。例えば、ΔCの初期位置を位置決め基準穴と位置決め基準突起との嵌合位置とすると、ΔCアダプタ340では、検出された初期位置を基準にして、例えば±2〜3度の範囲でΔC補正を行う事になる。すなわち、本実施形態のΔCアダプタ340は、位置決め基準突起322、358、362と、位置決め基準穴311、332、359を用いた機械的な位置決め機構と、ΔC初期位置センサ357による位置決め機構により、粗な位置決め(第1の調整)を行う。そして、その後に、イメージセンサ401により取得された画像に基づいて、ΔC駆動モータ348を用いた微細な位置合わせ(第2の調整)が行われる。このような2段階の位置決めにより、イメージセンサ401のXY軸方向とステージのXY軸方向を高精度に一致させている。
次に、本実施形態の顕微鏡システム10において用いられる位置基準付きスライド(スライド700)について説明する。図23は本実施形態によるスライド700を説明する図である。図23(a)に示されるように、スライド700は、原点マーク701、予備原点マーク702、Y軸マーク703、フォーカス基準マーク704,705,706を有する。原点マーク701とY軸マーク703のそれぞれはY軸上の特定の位置とX軸上の特定の位置を示すとともに、少なくとも一方のマークはX方向又はY方向の軸情報を示し、これらにより正確にスライド基準位置(原点位置)及び軸方向を特定できるようにしている。本実施形態では、Y軸マーク703がY軸方向を規定している。この様な構成を有する位置基準は、マークを配置する領域として短冊状の狭領域しか利用可能な場所が無い場合に好適である。これら原点マーク701とY軸マーク703は、全て、ラベルエリア721とカバーガラス及び観察対象である検体(組織切片)の配置位置であるカバーガラスエリア722との間の隙間領域に配設される。なお、検体はカバーガラスエリア722の範囲内に載置されなければならないが、カバーガラスに関しては、カバーガラスエリア722より大きなカバーガラスが用いられてもよい。その際に、フォーカス基準マーク704〜706の一部または全部がカバーガラスで蔽われたとしても、後述するように、カバーガラスの屈折率及び厚さで一意に決まる距離だけ焦点位置が変わるのみで、本実施形態のZ方向の位置管理に差支えはない。すなわち、本明細書において、カバーガラスエリア722とは、観察対象が配置されるエリアを示すものであって、カバーガラスの大きさを規定するものではない。また、将来、検体の配置位置が変わり、位置基準マークを配置するために利用可能な空き領域がスライド700の右端部に移動した場合には、右端部に本実施形態になる位置基準マークを配設すれば対応可能となる。
図23(a)において、原点マーク701はスライド700の位置基準マークであり、スライド700上の検体の観察位置を座標管理する為の原点となる。702は予備原点マークであり、原点マーク701が汚れやキズ等により検知不能になった場合の予備の原点である。原点マーク701と予備原点マーク702は一定の位置関係で配設される。703はY軸マークであり、Y方向の軸情報を有するY軸ラインを示す。Y軸マーク703により示される軸方向は、スライド700の長手方向の端面に垂直な方向であり、この方向をY軸方向と称する。原点マーク701、Y軸マーク703、予備原点マーク702は、後述する中心線(軸方向)の検出において用いられる顕微鏡の倍率で観察した際に同時に観察されないように、互いに離間して配置されている。また、原点マーク701と予備原点マーク702は、Y軸マーク703の中心線上の、Y軸マーク703を挟んだ両側に配置されている。なお、後述する様に、原点位置を特定するためにY軸マークの703の中心線を用いるがこれに限られるものでなく、Y軸マーク703によりユニークに特定される、Y軸方向に沿うライン(以下、基準ライン)であればよい。そして、その基準ラインの延長線上における特定の位置を原点位置とすればよい。したがって、原点マーク701(および予備原点マーク702)は、その基準ラインの延長線上における特定の位置を示すように、Y軸マーク703と離間して配置される。以下、原点マーク701、Y軸マーク703、予備原点マーク702を総称して位置基準マークという。
これらの位置基準マークは、其々の間隔が視野サイズに相当する距離以上(例えば10倍対物レンズの視野サイズ=φ1.5mm以上)離して配設されることが望ましい。顕微鏡の同一視野内で、隣接する位置基準マークが混ざって見えることが防止され、効率的にマークを検出できるからである。又、高精度な原点基準とする為、汚れや傷への配慮が重要である。したがって、肉眼検知または画像認識により汚れや傷が見つかった場合は、原点マーク701に代えて予備原点マーク702を使用するなどの対応が必要である。なお、原点マーク701に対する予備原点マーク702の位置は既知であるため、座標値の変換等は容易に行える。但し、以降の説明では、汚れ・キズの影響が無い様配慮された位置基準マークが観察されるものとして説明を行う。ここで、汚れ・キズの影響を防ぐ方法として、大きめのカバーガラスを用いて、積極的に位置基準マークを覆う事を行っても良い。又、大きめのカバーガラスの左端の裏面に位置基準マークを配設し、このカバーガラスでスライド上の検体を載置する領域と隙間領域とを覆うようにしても良い。この場合、スライド自体には位置基準マークは無用である。また、短冊状のカバーガラスの裏面に位置基準マークを配設し、この短冊状の位置基準マーク付きのカバーガラスをスライド上の隙間領域に載置するようにしても良い。この場合も、スライド自体には位置基準マークは無用である。
図23(b)、図23(c)に位置基準マークの具体例を示す。図23(b)において、原点マーク701(及び予備原点マーク702)は、上下の二つの2等辺三角形を使用し、両者の頂点が接する点が原点(及び予備原点)である。また、Y軸マーク703は、図示のように異なる太さのY軸ラインの複合体からなり、その中心線が原点のY軸を示す。なお、Y軸マーク703はスライド700の横枠と所定の精度で垂直となる様に配設される。また、異なる太さのY軸ラインを配置しているのは、対物レンズ倍率の低倍から高倍に対応する為である。
Y軸マーク703はクロスハッチY軸293と同様のパターン構成であり、その構成例について、図12(a)(b)を流用して説明する。Y軸マーク703は、中心線を線対称軸とする同一幅のラインのペアが、幅を変えて複数対、線対称に配列された構成を有する。なお、中心部に関しては、中心線上に何らかのラインが存在しても良い。又、ラインとスペースの関係を反転させても良い。これにより、対物レンズ低倍時の画角においても、又、高倍時の画角においても、適切な数と太さのラインが撮像(ライブでも静止画でも)され、後述する重心検知において、所定の精度が担保される。Y軸マークを構成するライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)、ライン又はスペースの幅などは、所定の値に設定されており実距離情報として有用である。又、Y軸マーク703や原点マーク701、予備原点マーク702は、クロスハッチY軸293やクロスハッチ原点291と同様に、例えば、1μmの微細ラインとスペースのペアの集合体より構成しても良い。こうすると、より微細な実距離情報を包含可能となる。なお、スライド700の位置基準マークは、夫々の間の間隔、夫々のサイズ、又、夫々の基準マークの構成、基準マークを構成するライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)、ライン又はスペースの幅などは、所定の値に設定されており実距離情報としても利用可能である。
図23(c)は原点マーク701(及び予備原点マーク702)の他の例であり、異なる太さのX軸ラインの複合体からなり、そのX軸方向の中心線が原点及び予備原点のX軸を示す。したがって、原点マーク701(予備原点マーク702)から得られるX軸方向の中心線とY軸マーク703から得られるY軸方向の中心線との交点がスライド700の原点(予備原点)となる。なお、図23(c)に示されている原点マーク701(予備原点マーク702)のより詳細な構成は、たとえば、図12(a)(b)を90度回転したものとなる。
また、位置基準マーク間の位置関係は、図23(b)(c)に示すように原点マーク701と予備原点マーク702は、Y軸マーク703の中心線上に配置される。本実施形態では、原点マーク701と予備原点マーク702の各中心線とY軸マークの中心線とを一致させるものとする。又、同図に例を示す寸法関係の如く、基準マークのサイズ、お互いの距離などは、全て、10倍対物レンズの視野サイズφ1.5mmを上回るようにしている。
また、カバーガラスエリア722の3辺(上側、右側、下側)には、フォーカス基準マーク704〜706が配置されている。フォーカス基準マーク704〜706は、カバーガラスエリア722の周囲に沿ってフォーカス位置を計測することにより、スライド700の表面の高さ分布(以下、ΔZ分布ともいう)を求め、これを観察位置の管理に反映させる。これにより、スライドガラスごとの表面のZ方向位置のばらつきを管理することができ、より高精度なZ方向の位置管理が可能となる。なお、スライドガラス表面のZ方向位置のばらつきを得るために、カバーガラスエリア722の4辺についてフォーカス位置を計測する。そのため、カバーガラスエリア722の左辺側については、Y軸マーク703を流用するものとするが、これに限られるものではない。図24(a)に示されるように、カバーガラスエリア722の左側にもフォーカス基準マーク707を設けて、カバーガラスエリア722の4辺について、フォーカス基準マークによるフォーカス位置を計測するようにしてもよい。
図24(b)は、フォーカス基準マークの詳細を示す図である。本実施形態によるフォーカス基準マークは、たとえば1mmの等間隔で、長さ2mmのフォーカス基準ユニットマーク(以下フォーカスユニット)710が配置されている。このようにフォーカス基準マークは、スライド端部から所定距離離れた位置(本例では0.5mm)から、所定の幅以下(本例では2mm以下)で配置されており、フォーカス基準マークで囲われた領域に観察対象が載置されるスペースが確保されるようにしている。また、フォーカス基準マークは、フォーカス基準マークがカバーガラスにより覆われる領域が確保されるように、所定の幅以上となるようにしている。フォーカスユニット710は、複数のラインにより構成されている。たとえば、図24(b)に拡大して示されるように、フォーカスユニット710は、中心線を線対称軸とする同一幅のラインのペアが、幅を変えて複数対、線対称に配列された構成を有する。なお、中心線上には何らかのラインが存在しても良い。又、ラインとスペースの関係を反転させても良い。これにより、対物レンズ低倍時の画角においても、又、対物レンズ高倍時の画角においても、適切な数と太さのラインがライブ画像撮像機能や静止画撮像機能により撮像され、後述するフォーカス検出において、所定の精度が担保される。フォーカスユニット710を構成するライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)の間隔、ライン又はスペースの幅などは、所定の値に設定されており実距離情報として有用である。なお、各ラインは、更に、微細ラインとスペースのペアの集合体より構成しても良い。微細ラインの幅は、例えば、マークを構成する複数のラインのうちの最も狭いライン(本例では、10μm)の幅の1/10以下(例えば、1μm)とする。こうすると、より微細な実距離情報を包含可能となる。
なお、これらの位置基準マークやフォーカス基準マークは、目標精度の達成、及び、消耗品としての低コスト化を実現する為、同一プロセスで、一体的に形成されている。たとえば、位置基準マークやフォーカス基準マークは、ナノインプリント技術を使用し、5nm〜10nmの精度でスライド上に製作される。この為、Y軸マーク703のY方向中心線と原点マーク701,702のY方向中心線の一致度、及び、Y軸マーク703のY方向中心線(原点Y軸)と原点マーク701のX方向中心線との直角度、はナノレベル台となる。よって、Y軸マーク703と原点マーク701,予備原点マーク702で規定されるスライド原点の位置と該原点を基点とするスライドX軸711(図23(b)、(c))、スライドY軸712(同)は、ナノレベル台の精度を持つ事になる。また、本実施形態では、スライド700の長辺に沿ったX方向のフォーカス基準マーク704、706と、スライド700の短辺に沿ったY方向のフォーカス基準マーク705、707とは、ラインの向きが異なるように配置されるものとするが、同じ向きのラインを配置してもよい。
なお、これらの位置基準マークやフォーカス基準マークは、ガラス面への印刷または着色またはエッチング等、その他の方法で形成しても良い。この場合、位置管理精度及びフォーカス精度が低下するが、これらの基準が全く無い場合に比して、効果の度合いこそ減少するが、本実施形態によるのと同様の効果を有する。また、フォーカス基準マークを構成するフォーカスユニット710(フォーカス基準ユニットマーク)のパターン形状は、フォーカス精度が確保できる形状であれば如何なる幾何形状であっても良い。また、フォーカスユニットの繰り返しピッチも上述した1mmでなくても良く、また、複数種類の形状を有するフォーカスユニットが混在しても良い。
図25、図26は本実施形態による顕微鏡システム10の制御構成例を示すブロック図である。ステージ200は、コントローラ501とUSB等のインタフェースケーブル13を介して接続される。ステージ200において、ステージMPU280は、ステージ200の原点位置への復帰や、コントローラ501からの指示にしたがったステージ200の移動を制御する。ΔΘ駆動回路281はステージMPU280からの指示にしたがって、ΔΘステージ600のΔΘ駆動モータ611を駆動する。X軸駆動回路282はステージMPU280からの指示にしたがって、位置管理面ステージ220をX方向へ移動するX軸駆動モータ242を駆動する。Y軸駆動回路283はステージMPU280からの指示にしたがって、Yステージ240をY方向へ移動する事により位置管理面ステージ220をY方向へ移動するY軸駆動モータ264を駆動する。
X軸センサ処理回路284はX軸センサ271がXエリアスケール211を検出した信号に基づいてX座標値を生成し、ステージMPU280に供給する。斜行センサ処理回路285は斜行センサ273がXエリアスケール211を検出した信号に基づいてX座標値を生成し、ステージMPU280に供給する。Y軸センサ処理回路286はY軸センサ272がYエリアスケール212を検出した信号に基づいてY座標値を生成し、ステージMPU280に供給する。また、ΔΘ初期位置センサ621、X初期位置センサ243、Y初期位置センサ265のそれぞれからの検出信号はステージMPU280に供給され、たとえば各ステージの初期化動作に用いられる。
なお、ΔΘ駆動回路281、X軸駆動回路282、Y軸駆動回路283などのモータ駆動回路類、及び、ステージMPU280、電源回路(不図示)等は消費電力が大きめであり、熱源となり得るため熱膨張による位置精度への影響が懸念される。したがってこれらの電気回路類は外部コントローラとして別筐体に収めても良い。また、ステージMPU280の機能をコントローラ501により実現するようにしてもよい。
また、本実施形態の顕微鏡システム10は、ΔZステージ900のΔZベース901に設けられたZセンサ991を有している。したがって、図26に示されるように、Zセンサ991のZ初期位置センサ991aとZ軸センサ991bの信号はそれぞれZ軸センサ処理回路1281で処理され、ステージMPU280に入力される。また、ΔZステージ900のΔZリフトユニット910のΔZモータ913を駆動し、ΔZ初期位置センサ920aやΔZ軸センサ920bの信号を処理するためのΔZ駆動回路1282がステージMPU280に接続されている。さらに、ΔΘステージ600のdZリフトユニット650のdZモータ653を駆動し、dZ初期位置センサ641aやdZ軸センサ641bの信号を処理するためのdZ駆動回路1283がステージMPU280に接続されている。
図25に戻り、アダプタ部300のΔCアダプタ340は、コントローラ501とUSB等のインタフェースケーブル12を介して接続される。ΔCアダプタ340において、ΔCMPU380は、コントローラ501からの指示に応じてΔCアダプタ340におけるマウント342の回転制御等を行う。ΔC駆動回路381は、ΔCMPU380からの指示に応じてΔC駆動モータ348を駆動する。ΔC初期位置センサ357からの信号はΔCMPU380に供給され、たとえばΔCアダプタ340のマウント342を初期位置(回転の原点位置)に復帰させるのに用いられる。なお、ΔC駆動回路381やΔCMPU380、電源回路(不図示)等の電気回路部品は消費電力が大きめの為、熱源となり熱膨張による位置精度への影響が懸念される。したがって、これらの電気部品を外部コントローラとして、別筐体に収めても良い。また、ΔCMPU380の機能をコントローラ501により実現するようにしてもよい。
デジタルカメラ400は、コントローラ501とUSB等のインタフェースケーブル12を介して接続され、イメージセンサ401により撮影された画像をコントローラ501に送信する。デジタルカメラ400において、カメラMPU480は、デジタルカメラ400の各制御を実行する。画像処理回路481はイメージセンサ401により得られた画像信号を処理してデジタルの画像データを生成する。
なお、本実施形態では、デジタルカメラ400として汎用のデジタルカメラを用いて、アダプタ部300により着脱可能な構成としているがこれに限られるものではない。たとえば、イメージセンサ401を有する撮像部が接眼鏡基122に固定されていてもよい。このとき、イメージセンサ401が、ステージのXY軸と高精度に一致した状態に組み立てられていれば、アダプタ部300による回転補正の機構は省略可能である。また、上述したステージMPU280、ΔCMPU380、カメラMPU480は、所定のプログラムを実行することにより各種機能を実現するものであってもよいし、専用のハードウェア回路により構成されてもよい。
コントローラ501は、たとえば、プログラムを格納したメモリ512と、メモリ512に格納されたプログラムを実行することにより種々の処理を実現するCPU511を有し、顕微鏡システム10における計測・制御機能を司るコンピュータ装置である。以下、本実施形態による顕微鏡システム10の動作について詳細に説明する。
図27は、本実施形態の顕微鏡システム10におけるコントローラ501によるステージ制御を説明するフローチャートである。なお、図27に従った動作が実行される前に、本実施形態の顕微鏡システム10では、顕微鏡鏡基の所定位置にZスケール990を配設する事が必要である。配設方法は以下の様である。
Z摘み125によりZベース130をZ方向に移動し、例えば、クロスハッチ290を用いて、合焦点位置を探す。そして、この合焦位置よりも例えば6mmマイナス方向(下方向)に下げ、その位置でZ初期位置センサ991aがZ初期位置マーク990aを検知するようにZスケール990を配設する。ここで、6mmとは、ΔZリフトユニットの最大移動範囲+dZリフトユニットの最大移動範囲+誤差余裕分により決定された値である。上述したようにΔZリフトユニット910のリフトピンの可動範囲は±2mm、dZリフトユニット650のリフトピンの可動範囲は±0.2mmであり、これらによる動作範囲は最大でも4.4mmである。これに、配設時の誤差を想定した余裕分を加え、例えば、6mmが安全範囲となる。なお、この段階では、dZリフトユニットおよびΔZリフトユニットは、初期位置マークで決まる初期位置に移動する前の未初期化状態にある。こうして、以降に説明されるdZリフトユニット650の初期化動作、ΔZリフトユニット910の初期化動作において、それぞれの可動範囲のいかなる位置にあっても顕微鏡本体に装着される対物レンズの先端部とステージの観察面が接触しない位置に、Z初期位置が設定される。
図27による本実施形態の顕微鏡システム10におけるコントローラ501の動作説明に戻る。顕微鏡システム10の各部へ電源が投入され、コントローラ501に位置管理観察モードの実行が指示されると図27のフローチャートに示す動作が開始される。
まずステップS11においてコントローラ501は自身を初期化する。コントローラ501の初期化においては、たとえば、顕微鏡システム10における計測・制御機能を司る位置管理アプリケーションを実行するためのプラットフォームにおける起動時の環境設定が為される。該環境設定が終了すると、例えばWindows(登録商標)の場合であれば、スタートアップフォルダに置かれた起動ショートカットから所望のアプリケーションソフトが自動起動される。本実施形態では、顕微鏡システムの計測・制御機能を実装する位置管理アプリケーションソフト(以下、位置管理アプリ)の起動ショートカットがスタートアップフォルダに置かれており、位置管理アプリが自動起動されるものとする。以上のようにして、位置管理アプリが起動されると、ステップS12において、コントローラ501は、以下に述べる初期化動作の完了の通知を待つ。
図28は、本実施形態の顕微鏡システム10における初期化動作を示すフローチャートである。各部の電源が投入されると、夫々が、コントローラ501からの制御により、図28に示されるような電源起動時の初期化動作を行う。コントローラ501は、まず、図28の初期化プロセスP1において、上述したZ初期位置にZベース130を移動する。Zベース130がZ初期位置にあると、以降の初期化動作において、それぞれの可動範囲のいかなる位置にあっても顕微鏡本体に装着される対物レンズの先端部とステージの観察面が接触しない。なお、顕微鏡のZベース130の移動動作が手動の場合は、コントローラ501はユーザに所定のUIを通して操作を促し、ユーザがZ摘み125の手動操作を行う。電動の場合には、コントローラ501がZベース130の移動制御を行う。そして、ΔZステージ900のΔZベース901に配設されたZセンサ991のZ初期位置センサ991aがZスケール990のZ初期位置マーク990aを検出(S131)すると、コントローラ501はZ座標の読取値Zをゼロにセットする(S132)。こうして、以降の初期化動作において、それぞれの可動範囲のいかなる位置にあっても顕微鏡本体に装着される対物レンズの先端部とステージの観察面が接触しない。
初期化プロセスP1が済むと、初期化プロセスP2において、コントローラ501は、ステージ200、アダプタ部300(ΔCアダプタ340)、デジタルカメラ400、ΔZステージ900(Zベース130を含む)の各部の初期化動作を行う。
・XYステージ(ステージ200)の初期化
ステップS101において、ステージ200のステージMPU280は位置管理面ステージ220とYステージ240を夫々の初期位置(X初期位置マーク234、Y初期位置マーク253)に移動することによりXYステージの初期化を行う。すなわち、ステージMPU280は、X軸駆動回路282及びY軸駆動回路283に所定方向への駆動制御コマンドを送る。この駆動制御コマンドには、例えば、パラメータとして移動方向及び移動速度が付加されている。これを受けて、X軸駆動回路282及びY軸駆動回路283は、夫々、駆動信号をX軸駆動モータ242及びY軸駆動モータ264に送り、Xステージ(位置管理面ステージ220)及びYステージ240を夫々指定された方向と速度にて移動する。
ステージ200は、高精度なXエリアスケール211及びYエリアスケール212を高精度に検出可能なX軸センサ271及びY軸センサ272からの検出信号を内挿処理するX軸センサ処理回路284及びY軸センサ処理回路286を有している。この内挿処理において、たとえば2000分の1の内挿演算を行うと、2μm幅のラインパターンから10nm以下の分解能が得られ、実施形態の位置管理顕微鏡システムが目標としている位置管理精度、すなわち0.1μmの精度が得られる。ステージMPU280は、X軸センサ処理回路284及びY軸センサ処理回路286からの信号に基づいて位置管理面ステージ220のX方向移動量と位置(X座標)、及びYステージ240のY方向移動量と位置(Y座標)を高精度に把握し管理している。
位置管理面ステージ220上のX初期位置マーク234がX初期位置センサ243の検出位置に到達すると、X初期位置センサ243からのステータス変化がステージMPU280に伝達される。同様に、Yステージ240上のY初期位置マーク253がY初期位置センサ265の検出位置に到達すると、Y初期位置センサ265からのステータス変化がステージMPU280に伝達される。ステージMPU280は、ステータス変化の受信に応じてX軸駆動回路282、Y軸駆動回路283に停止制御コマンドを送り、ステージ200のXY駆動を停止する。
次に、ステージMPU280は、より低い移動速度の設定による正逆の微小移動を順次行なう様にX軸駆動回路282、Y軸駆動回路283に制御コマンドを送り、より正確な初期位置を選んで位置管理面ステージ220及びYステージ240を停止する。そして、ステージMPU280は、自身が保持する、X軸センサ処理回路284及びY軸センサ処理回路286からの信号に基づいて得られるX座標値及びY座標値をゼロにリセットし、XYステージのXY座標のXY初期位置(座標(0,0))とする。なお、X初期位置マーク及びY初期位置マークとX初期位置センサ及びY初期位置センサとによるXY初期化位置の検出精度は機械精度による微小な再現性誤差(初期化をし直すと若干ずれる)を含む。しかし、ステージの移動量はエリアスケールと所定の検出部(X軸センサ271、Y軸センサ272、斜行センサ273)により高精度に管理される。本実施形態では、X初期位置マーク及びY初期位置マークをクロスハッチ原点291に合せて配設する事で、このXY初期位置を、所定精度(所定の機構誤差範囲)でクロスハッチ原点291に対応させている。
・ΔΘステージ600の初期化
次に、ステップS102において、ステージMPU280は、ΔΘ駆動回路281に所定方向への駆動制御コマンドを送る。この駆動制御コマンドには、例えば、パラメータとして移動方向及び移動速度が付加されている。この駆動制御コマンドを受けて、ΔΘ駆動回路281は、駆動信号をΔΘ駆動モータ611に送ることによりΔΘステージ600の回転ステージ691を指定の方向と速度にて回転させる。ΔΘ初期位置マーク620が、ΔΘ初期位置センサ621の検出位置に到達すると、ΔΘ初期位置センサからのステータス変化がステージMPU280に伝達される。ステータス変化を受信したステージMPU280は、ΔΘ駆動回路281に停止制御コマンドを送り、ΔΘ駆動を停止する。ついで、ステージMPU280は、より低い移動速度の設定による正逆の微小回転を順次行なう様にΔΘ駆動回路281に制御コマンドを発し、より正確な初期位置を選んでΔΘステージ600を停止する。次いで、ステージMPU280は、自身が保持するΔΘ座標値をゼロにリセットし、ΔΘの中心位置、即ち、回転ズレが無い正位置とする。起動時点でのΔΘステージ600のΔΘ位置が不明な場合(不揮発メモリに残っていない場合等)は、例えば3度一方向に回し、ΔΘ初期位置マーク620が見つからなければ、逆方向に6度戻すというようにΔΘステージ600を駆動する。
・dZリフトユニット650の初期化
ステップS103において、ステージMPU280はdZ駆動回路1283に制御コマンドを送り、ΔΘステージ600のdZモータ653を駆動してΔΘステージ600のdZリフトユニット650のZ方向の位置を初期化する。dZ初期位置センサ641aによりdZスケール640のdZ初期位置マーク640aによるdZの初期位置が検出された位置でdZモータ653を停止することでdZリフトピンの初期位置復帰が行われる。ステップS104において、ステージMPU280は、この状態で、dZ軸センサ641bによるdZリニアスケール640bの読取値(dZ1、dZ2、dZ3)をゼロに初期化する。以上の初期化処理は、3つのdZリフトユニット650のそれぞれについて独立に実行される。なお、dZ軸センサ641bによる読取値は、図14(c)に示すように左上(鏡基側で左)の読取値をdZ1、右上(鏡基側で右)の読取値をdZ2、下側(鏡基と反対側)の読取値をdZ3とする。
以上のようにして、ステージ200のXYステージとΔΘステージ600、dZリフトユニット650の初期化が完了すると、ステージMPU280は、ステップS105において、ステージ初期化終了コマンドをコントローラ501に送信する。
・ΔCアダプタ340の初期化
次に、ΔCアダプタ340(アダプタ部300における第2のアダプタ部)の初期化動作を説明する。ステップS111において、ΔCMPU380は、ΔC駆動回路381に所定方向への駆動制御コマンドを送る。この駆動制御コマンドには、例えば、パラメータとして移動方向及び移動速度が付加されている。これを受けて、ΔC駆動回路381は、駆動信号をΔC駆動モータ348に送る。ΔC駆動モータ348の駆動により、ΔCアダプタ340の共通規格マウント凹側であるマウント342が指定された方向と速度で回転する。共通規格マウント凹側としてのマウント342上のΔC初期位置マーク356がΔC初期位置センサ357の検出位置に到達すると、ΔC初期位置センサ357からステータス変化がΔCMPU380に伝達される。このステータス変化を受けてΔCMPU380は停止制御コマンドをΔC駆動回路381に送り、ΔC駆動モータ348を停止する。
次いで、ΔCMPU380は、より低い移動速度の設定による正逆の微小回転を順次行なう様に制御コマンドをΔC駆動回路381に発して、より正確な初期位置を選んで回転駆動を停止する。次いで、ΔCMPU380は自身が保持するΔC座標値(ΔCアダプタの回転角度)をゼロにリセットし、ΔCの中心位置、即ち、回転ズレが無い正位置とする。なお、起動時点でのΔC位置が不明な場合(不揮発メモリに残っていない場合)は、例えば3度一方向に回し、ΔC初期位置マークが見つからなければ、逆方向に6度戻す。以上のようにしてΔCアダプタ340が初期の回転位置になると、ステップS112において、ΔCMPU380はΔCアダプタ初期化終了コマンドをコントローラ501に送信する。
なお、ステージ200におけるXYステージの位置管理、ΔΘステージ600の回転位置の管理及びdZの位置管理、並びにΔCアダプタ340の回転位置の管理に、アブソリュートタイプのスケールとセンサを使用してもよい。アブソリュートタイプのスケールとセンサを使用すれば、上述したようなステージ200のXY初期位置の検出、及び、ΔΘステージ600やΔCアダプタ340における初期位置、dZ1、dZ2、dZ3の初期位置の検出は省略可能となる。
・デジタルカメラ400の初期化
デジタルカメラ400のカメラMPU480においては、所定の位置管理対応機能(後述)が動作する為の環境設定が為される(ステップS121)。そして、初期化が完了すると、カメラ初期化終了コマンドがコントローラ501へ送信される(ステップS122)。なお、本実施形態では、電源の投入に応じてデジタルカメラ400がカメラ動作初期化を実行し、完了した旨をコントローラ501に送信するようにしたがこれに限られるものでない。たとえば、コントローラ501が、デジタルカメラ400のユーザインタフェースから、所定の位置管理対応機能(後述)が動作する為の環境設定が為される初期化(ステップS121)の指示を行なっても良い。
・ΔZステージ900の初期化
ステップS133において、ΔZ駆動回路1280を介して、ΔZリフトユニット910を駆動してΔZステージ900をΔZ初期位置に移動する。初期化プロセスP1においてZベース130の初期位置が検出されている状態ではステージ200と対物レンズユニット126が十分に離れているので、ΔZステージ900は安全に初期化を実行することができる。
ステップS133について具体的に説明する。ステージMPU280はΔZ駆動回路1282に制御コマンドを送り、ΔZリフトユニット910のΔZモータ913を駆動してリフトピン914をZ方向に移動する。ΔZ初期位置センサ920aによりΔZスケール994のΔZ初期位置マーク994aによる初期位置が検出された位置でΔZモータ913を停止することでリフトピン914の初期位置への復帰が完了する。そして、ステップS134において、ステージMPU280は、ΔZ軸センサ920bによるΔZリニアスケール941bの読取値ΔZ1、ΔZ2、ΔZ3をゼロにセットする。なお、ΔZ軸センサ920bによる読取値は、図5(e)に示すように、ΔZステージ900の上面側からみた場合に、左上(L1)の読取値をΔZ1、右上(L2)の読取値をΔZ2、下側(L3)の読取値をΔZ3とする。上述の初期化処理は、3つのΔZリフトユニット910のそれぞれについて独立に実行される。なお、ΔZの位置管理に、アブソリュートタイプのスケールとセンサを使用してもよい。アブソリュートタイプのスケールとセンサを使用すれば、上述したようなΔZ1、ΔZ2、ΔZ3の初期位置の検出は省略可能となる。その後、ステップS135において、ステージMPU280は、ΔZ初期化終了コマンドをコントローラ501送付する。
コントローラ501は、以上述べた初期化プロセスP2が終了すると、初期化プロセスP3に進む。コントローラ501は、P3のステップS136において、位置管理面ステージ220をZ方向に移動し、XYクロスハッチ213がデジタルカメラ400のフォーカス位置にあるかどうかを判定する。即ち、コントローラ501は所定のUIによりユーザに促し、ユーザはZ摘み125を手動操作することにより、位置管理面ステージ220のZ方向位置を調整してフォーカスを合わせる。ステップS131に関して上述したように、Zベース130のZ方向の移動をモータ等により駆動可能な場合は、コントローラ501は顕微鏡本体に内蔵されたモータを駆動制御する事により、自動的にフォーカス合わせをするようにしてもよい。なお顕微鏡のZ軸がモータ駆動、即ち、電動の場合は、所定のZ駆動インタフェース(不図示)が提供されており、コントローラ501はZ駆動インタフェースを介して制御する。コントローラ501は、XYクロスハッチ213をデジタルカメラ400で撮影して得られた撮影画像からフォーカス状態を判定し、これをステージMPU280に通知する。フォーカスが検出されると、ステージMPU280は、この状態におけるZ軸センサ991bによるZリニアスケール990bの読取値Zをメモリに記憶すると同時にコントローラ501に通知する。なお、フォーカスの検出に使用するXYクロスハッチ213は、クロスハッチ290、クロスハッチ原点291、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293のいずれが用いられてもよい。
図27に戻り、上述のように、コントローラ501は自身の初期化(ステップS11)を終えた後、初期化プロセスP1、初期化プロセスP2、初期化プロセス3を終えると、ステップS12からステップS13に進み、位置管理アプリは位置管理観察の為の準備動作を開始する。
ステップS13において、コントローラ501は、ΔZステージ900(ΔZリフトユニット910)を駆動して、ステージ200(位置管理面ステージ220)の光軸に対する面の傾き(あおり)の補正を行う。このあおり補正では、ステージ200のXY面が、観察光の方向であるZ軸の垂直面と平行になるように調整される。このあおり補正処理を図29のフローチャートを参照して説明する。なお、図29のフローチャートにおいて、コントローラ501がステージ200、ΔZステージ900を駆動する場合は、たとえば、その旨の指示をコントローラ501がステージMPU280に与えることで実現される。
まず、コントローラ501は、観察位置の中心がクロスハッチX軸292の左端となるように位置管理面ステージ220を移動する(ステップS151)。次に、コントローラ501は、3つのΔZリフトユニット910のΔZリフトピン914(以下、図5に示したように、これらを区別するためにΔZリフトピンL1〜L3と記載する)を同期駆動して、クロスハッチX軸292にフォーカスを合わせる(ステップS152)。なお、3つのΔZリフトピンL1〜L3の同期駆動とは、ΔZリフトピンL1〜L3の全てを夫々のΔZの初期位置からZ方向に同一量だけ同時に移動する制御である。コントローラ501は、クロスハッチX軸292の左端においてフォーカスが得られたときのスケール値(ΔZ1〜ΔZ3)をメモリに記憶する(ステップS153)。スケール値ΔZ1〜ΔZ3は、それぞれΔZリフトピンL1〜L3のΔZリフトユニットに設けられたΔZ軸センサ920bにより得られるΔZ初期位置マークを基準(ゼロ)とするスケール値である。なお、ΔZ1〜ΔZ3は同じ値となるので、いずれか1つを記憶すればよく、本実施形態ではΔZ1を用い、以下、この値をΔZc1とする。
次に、コントローラ501は、観察位置の中心がクロスハッチX軸の右端となるように位置管理面ステージ220を移動する(ステップS154)。そして、コントローラ501は、3つのΔZリフトユニット910のΔZリフトピンL1〜L3を同期駆動して、クロスハッチX軸292にフォーカスを合わせる(ステップS155)。コントローラ501は、クロスハッチX軸292の右端においてフォーカスが得られたときのスケール値(ΔZ1〜ΔZ3のいずれか、本実施形態ではΔZ1を用いる)を、ΔZc2としてメモリに記憶する(ステップS156)。次に、コントローラ501は、観察位置の中心がクロスハッチY軸293の下端となるように位置管理面ステージ220を移動する(ステップS157)。そして、コントローラ501は、ΔZリフトピンL1〜L3を同期駆動して、クロスハッチY軸293に対してフォーカス合わせを行う(ステップS158)。コントローラ501は、ΔZリフトピンL1〜L3の同期駆動によりフォーカスが得られた時のスケール値(ΔZ1〜ΔZ3のいずれか、本実施形態ではΔZ1を用いる)をΔZc3としてメモリに記憶する(ステップS159)。
コントローラ501は、ΔZc1とΔZc2との差から、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL2の間の変動量(X方向のあおり量)を推定し、それがゼロとなるようにΔZリフトピンL2を移動する(ステップS160)。たとえば、図5(e)のように、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL2との距離がRhであり、クロスハッチX軸の左右端部の距離(S154における観察位置の中心の移動量)がλhであるとする。この場合、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL2の間の変動量(ΔZ2−ΔZ1)は、
ΔZ2−ΔZ1=(ΔZc2−ΔZc1)×Rh/λh
のように推定される。コントローラ501は、この推定された変動量だけΔZリフトピンL2を移動し、ステージ200のX方向のあおりを解消する。
続いて、コントローラ501は、ΔZc1とΔZc3との差から、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL3の間の変動量(Y方向のあおり量)を推定し、それがゼロとなるようにΔZリフトピンL3を移動する(ステップS161)。たとえば、図5(e)のように、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL3との距離がRiであり、クロスハッチY軸の下端部への移動距離(S157における観察位置の中心の移動量)がλiであるとする。この場合、ΔZリフトピンL1とΔZリフトピンL3の間の変動量(ΔZ3−ΔZ1)は、
ΔZ3−ΔZ1=(ΔZc3−ΔZc1)×Ri/λi
のように推定される。コントローラ501は、この推定された変動量だけΔZリフトピンL3を移動し、ステージ200のY方向のあおりを解消する。
以上の処理により、位置管理面ステージ220のあおりの補正が実現される。以降、ΔZステージの駆動は、ステージ200のあおりが補正された状態を維持するために、ΔZリフトピンL1〜L3を同期駆動してZ方向の位置決めを行う。そして、Z方向の位置管理(Z座標)は、Zリニアスケール990bの読取値Zと、ΔZリフトピンL1〜L3に対応するΔZリニアスケール994bの読取値ΔZ1〜ΔZ3のいずれかの(本実施形態ではΔZ1)読取値との和を用いる。本実施形態では、Z+ΔZ1(+dZ(この段階ではゼロ))を用いる。即ち、XYクロスハッチ213のZ座標は、Z+ΔZ1(+dZ(この段階ではゼロ))となる。なお、Zの値はZ初期位置(ゼロ)からの移動量、ΔZ1の値はΔZ1初期位置(ゼロ)からの移動量である。以上の処理により、位置管理面ステージ220のあおりが補正されるので、光軸方向(Z方向)の位置管理面ステージ220の面の位置が正確に管理される。なお、以降は、Z摘み125を操作する事は行わず、ΔZ摘み904によるΔZリフトユニットの駆動、又は、コントローラ501からのΔZリフトユニットの駆動指示のみでZ方向の移動を行なうものとする。また、ΔZ摘み904は、例えばロータリーエンコーダを用いた電子摘みであり、摘み操作によるロータリーエンコーダの値の変化に応じてΔZリフトピンL1〜L3が同期駆動される。なお、上述したあおり補正の処理(S151〜S161)の処理を、ステップS160、S161で推定される変動量が所定値以下となるまで繰り返すようにしてもよい。
なお、上述したステージ200(位置管理面ステージ220)の光軸に対する面の傾き(あおり)の補正では、X軸及びY軸基準を提供する位置基準マークをフォーカス基準として代用した。すなわち、クロスハッチX軸292の左端と右端、及び、クロスハッチY軸293の下端をフォーカス基準として代用した。しかるに、フォーカス基準を提供するマークはこのような形態に限られるものではなく、撮像を行うデジタルカメラ400の観察可能領域内に設けられ、デジタルカメラ400による焦点検出が可能なマークであればどのようなマークであってもよい。より具体的には、スライド載置位置とは異なる位置の観察視野内のXY面にフォーカス基準を提供するマークが設けられれば良い。
たとえば、図52(a)に示す様に、専用のフォーカス基準マーク294を具備するXYクロスハッチ213を用いても良い。同図に示す様に、フォーカス基準マーク294は、例えば、X軸方向に沿って所定幅を有する平行な2辺と、Y軸方向に沿って所定幅を有する平行な2辺とより構成される矩形である。フォーカス基準マーク294は、クロスハッチX軸292およびクロスハッチY軸293のXY面と同一平面に設けられる。矩形は、XYステージ上のスライド載置面の傾きを代表可能な所定の矩形サイズを有する。この場合、XYスケール板210は、XYステージ上にフォーカス基準マーク294によって形成される矩形面が、XYステージのスライド載置面に平行となる様に配設される。また、フォーカス基準マーク294は、例えば、クロスハッチX軸292とクロスハッチY軸293とクロスハッチ290の間に所定の間隔を置いて配設される(ここでは、図52(b)に示されるように2mm)。即ち、効率的にマーク位置を検出できるように、顕微鏡の同一視野内で、隣接する位置基準マークが同時に観察されないように、其々の間隔が視野サイズに相当する距離以上(本実施形態では、10倍対物レンズの視野サイズ1.5mm以上)離して配設される。フォーカス基準マーク294は、クロスハッチX軸292およびクロスハッチY軸と同様にXYステージ上のスライド載置面の傾きを代表可能なフォーカス基準を為す。
図52(b)は、フォーカス基準マークの詳細を示す図である。X軸方向のフォーカス基準マーク295は、たとえば1mm間隔で、長さ2mmのY軸方向のフォーカス基準ユニットマーク(以下フォーカスユニット)297で構成されている。フォーカスユニット297は、中心線を線対称軸とする同一幅のラインのペアが、幅を変えて複数対、線対称に配列された構成を有する。なお、中心線上には何らかのラインが存在しても良い。又、ラインとスペースの関係を反転させても良い。これにより、対物レンズ低倍時の画角においても、又、高倍時の画角においても、適切な数と太さのラインがライブ画像撮像機能や静止画撮像機能により撮像され、後述するフォーカス合せにおいて、所定の精度が担保される。Y軸方向のフォーカス基準マーク296は、たとえば1mm間隔で、長さ2mmのX軸方向のフォーカス基準ユニットマーク(以下フォーカスユニット)298で構成されている。フォーカスユニット298は、フォーカスユニット297を90度回転したパターンを有する。また、フォーカスユニット297、298は、それぞれ線幅の異なる複数のラインで構成されている。
このような専用のフォーカス基準294を使用すると、上述したステージ200(位置管理面ステージ220)の光軸に対する面の傾き(あおり)の補正(図29)におけるS151、S154、S157は、例えば、図52(c)に示す、上側のX軸方向のフォーカス基準マーク295上の2個所のフォーカスユニット297、及び、下側のX軸方向のフォーカス基準マーク295上の1個所のフォーカスユニット297で行う事が出来る。したがって、必要なフォーカスユニットは、X軸方向に沿って所定距離離れた2個のフォーカスユニットと、それら2個のフォーカスユニットが為す辺からY軸方向へ所定距離離れた位置にある1個のフォーカスユニットの3個のフォーカスユニットである。なお、これらあおりの補正に用いる3つのフォーカスユニットにより形成される三角形は、3つのリフトピン914により形成される三角形と相似形であることが望ましい。また、上記実施形態ではX軸方向に2個のフォーカスユニットを配置したが、Y軸方向に2個のフォーカスユニットを配置してもよい。すなわち、フォーカスユニット297,298を採用する場合も、クロスハッチX軸292やクロスハッチY軸293を使用する場合も、1辺がX軸方向またはY軸方向と一致している三角形の頂点位置においてフォーカス位置を計測できるようにすればよい。
又、ステージ200(位置管理面ステージ220)の光軸に対する面の傾き(あおり)の補正は、スライド面の仕様(平坦度、平行度)が所定精度内に管理されたスライドを用いた、フォーカス基準付きのスライド(図23、図24)を用いて行っても良い。この場合、変動量の推定に用いる値λh、λiとしてλjとλkが用いられる(図14(c))。
図27に戻り、ステップS14において、コントローラ501は、デジタルカメラ400により撮影されるステージ200のXYクロスハッチ213の画像に基づいて、イメージセンサ401のX,Y軸とステージのX、Y軸をそろえるようにΔCアダプタ340を制御する。これにより、ステージ200のステージX軸203、ステージY軸204にイメージセンサ401の画素(ピクセル)の並びを合わせるΔC補正が行われる。
図30はΔC補正の動作を説明するフローチャートである。上述したように、ΔC補正の目的は、イメージセンサ401の画素配列におけるXY軸と、ステージ200のXY軸とを揃える事である。本実施形態では、観察対象領域205に配設された、ステージ200のXY軸を代表するXYクロスハッチ213のXY軸と、イメージセンサ401のXY軸との軸合せを行う。
まず、ステップS201において、位置管理アプリが稼働するコントローラ501は、カメラMPU480に所定の制御コマンドを送り、デジタルカメラ400をカラーライブモードに設定する。カラーライブモードにおいて、デジタルカメラ400のカメラMPU480は、観察画像の低解像度静止画(イメージセンサの全画素を使わない間引き画像)のカラー撮影を行い、所定の時間間隔で随時、コントローラ501に送信する。コントローラ501はデジタルカメラ400から低解像度静止画が送信されるごとにこれをディスプレイ502に表示することでライブ画像を提供する。
次いで、ステップS202において、顕微鏡の対物レンズを低倍(例えば10倍)に変更するよう、例えばディスプレイ502を用いて観察者(操作者、ユーザ)に促す。観察者は、リボルバ127を回転させて10倍対物レンズに変更した後、10倍の対物レンズが使用中になっていることを不図示の入力部(たとえば、キーボード操作あるいはGUI上のマウス操作)によりコントローラ501に通知する。なお、顕微鏡が電動リボルバを有する場合には、コントローラ501が所定の制御コマンドを顕微鏡に送ることで、自動で対物レンズの低倍設定が実行されるようにしてもよい。
ステップS203において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、デジタルカメラ400により撮影可能に配置されたXYクロスハッチ213のクロスハッチX軸292上に観察位置を移動する。なお、クロスハッチX軸292のための観察位置(座標)は、ステージ原点を基準とした既知の座標値である。クロスハッチX軸292は、他の位置基準マークが混ざって見えないように例えば10倍対物レンズの視野サイズ(たとえばφ1.5mm)以上、他のマークから離れている。そのため、ディスプレイ502にはクロスハッチX軸292のみのライブ画像が表示されるようになる。図31(a)において801は、イメージセンサ401による撮像視野である。なお、イメージセンサ401の撮像視野801は、図31(b)に示すように顕微鏡(光学系)の観察視野803より狭い観察視野803の内側の、ひずみがより少なく光量がより均一である領域804に内接する。ただし、より安全を見て、撮像視野801よりも小さい領域802をイメージセンサ401の撮像視野としても良い。なお、イメージセンサ401の観察視野803に対する視野サイズは、光学アダプタ320内のアダプタレンズ301の倍率により調整される。
次いで、ステップS204〜S207により、デジタルカメラ400による撮像のための画角の調整が行われる。たとえば、まず、ステップS204において、コントローラ501は、撮像視野801内のクロスハッチX軸292の黒画像のY方向重心位置(画素値の重心)を計算する。なお、本実施形態では、黒画像のY方向重心位置を求めているがこれに限られるものではなく、白画像のY方向重心位置を求めてもよいし、黒画像と白画像のそれぞれのY方向重心位置の平均値を用いるようにしてもよい。そして、ステップS205において、コントローラ501は、ステップS204で計算された重心が撮像視野の中心に来る様にステージMPU280に制御コマンドを送り、XYステージを移動する。そして、ステップS206において、コントローラ501は、イメージセンサ401による撮像の画角が条件を満たしているかを判定する。本実施形態では、たとえば、40倍対物レンズの場合に対して想定される撮像視野801におけるクロスハッチX軸292の黒または白画像のライン数、および/または、ライン幅のサイズに基づいて画角が条件を満たすかどうかを判定する。判定の結果、画角が条件を満たしていれば処理はステップS206からステップS208へ進み、画角が条件を満たしていなければ処理はステップS206からステップS207へ進む。ステップS207において、コントローラ501は、顕微鏡の対物レンズの倍率を大きくするよう、例えばディスプレイ502を用いて観察者(操作者、ユーザ)に促す。或いは、電動リボルバの場合はコントローラ501が制御コマンドを顕微鏡に送ることで自動的に対物レンズの高倍率への設定が行われる。
以上のステップS204からステップS207を繰り返すことにより、ユーザによる手動操作又は制御コマンドにより対物レンズが低倍(10倍)から高倍に切り替わり、ステップS204において算出された重心位置へステージが移動する。本実施形態では、最終的に40倍対物レンズにより、図31(c)に示すような画角となる。なお、対物レンズの倍率の変更は、10倍→20倍→40倍のように段階的に行われてもよいし、10倍→40倍へ一度に変更されてもよい。
ステップS206において画角が条件を満たしていると判定された場合、画角が40倍対物レンズに対応する画角になったと見做され、処理はステップS208へ進む。ステップS208において、コントローラ501は、カメラMPU480に制御コマンドを送り、デジタルカメラ400を計測モードに切り替える。計測モードとは、イメージセンサ401の画像情報を画素単位で利用する為のモードである。例えば、イメージセンサ401が図31(e)に示すようなカラー撮影のための原色ベイヤー配列のカラーフィルタを使用していれば、画像処理回路481は夫々、R,G,Bの各画素の画像を白黒信号として扱う。その際に、画像処理回路481は、RGB各画素からの画像信号を正規化し、夫々のダイナミックレンジを合わせる。又、ガンマ等の非線形処理は行わず、画素からの画像信号をリニアのままで処理し出力する。該計測モードは、高精度な重心計算などに好適な画像処理を含み、デジタルカメラ400に実装される位置管理対応機能である。
なお、上述した計測モードを使用しなくても、既存のカラーモード、又は、白黒モード(RGB信号から算出する輝度信号を使用)で得られる画像を用いることも可能であるが、重心計算などの演算結果の精度が落ちる。また、カラーフィルタの無い白黒カメラを使用することも出来るが、スライド観察時にカラー観察が出来なくなってしまう。
次いで、ステップS209〜S212において、ΔC補正が実行される。まず、ステップS209において、コントローラ501は、カメラMPU480に制御信号を送り、計測モードで、イメージセンサ401の全画素を用いた静止画撮像を行う。こうして得られるクロスハッチX軸292の静止画像の部分拡大像を図31(c)の右側に示す。イメージセンサ401の各画素によるクロスハッチX軸の画像が両者の軸ズレを反映したモアレ像として得られる。即ち、計測モードでは、画素ごとに情報が得られるため、高精度な演算結果(後述の重心線)を得る事が出来る。
次いで、ステップS210にて、コントローラ501はイメージセンサ401のX軸とクロスハッチX軸292との傾き(軸ズレ)を計測、即ち、回転ズレ角度を計算する。計算法は、図31(d)に示すように、イメージセンサ401の撮像視野内を、同一幅の短冊領域810によりX軸方向に短冊状の部分領域に分割し、各短冊領域毎に(部分領域毎に)重心を計算する。短冊領域の幅が狭いほど検出精度は向上するので、その幅を一画素分としても良い。すなわち、1画素以上の幅の短冊領域を用いることができる。また、イメージセンサ401の画素欠陥の影響を防ぐ為、複数画素分の幅の短冊領域とし、その短冊領域を一画素幅ずつずらして視野内を細分しても良い。回転ズレの角度αは、各短冊領域の重心のY座標値の変化量から高精度で求められる。たとえば、複数の短冊領域から得られた複数の重心位置を通る重心線811を最小二乗法等により求め、重心線811とイメージセンサ401のピクセルの並びのX方向との角度差から回転ズレ角度αが得られる。
次いでステップS211において、ステップS210で計測された傾き(回転ズレ角度)が許容差内か否か(所定の閾値以下か否か)を判定する。傾きが許容差内でない場合、ステップS212において、コントローラ501は、ΔCMPU380に制御コマンドを送り、ΔCアダプタ340のマウント342(すなわちイメージセンサ401)を、所定方向に所定角度だけ回転させる。ここで、所定の閾値は、ΔCアダプタ340について上述したように、3ミリ度であることが好ましく、より好ましくは0.1ミリ度である。また、ΔCアダプタ340では、制御コマンドに応じてΔC駆動モータ348を駆動してマウント342を所定角度ずつ回転させるが、その所定角度は、所定の閾値以下の角度(好ましくは3ミリ度以下、より好ましくは0.1ミリ度以下)とする。その後、処理はステップS209に戻り、静止画撮像の撮影(S209)と傾き計測(S210)を行う。コントローラ501は以上の処理(ステップS209〜S212)をくりかえし、ステップS211で傾きが許容差内に収まったと判定されると、処理はステップS213へ進む。ステップS213において、コントローラ501は、カメラMPU480に制御信号を送り、デジタルカメラ400をカラーライブモードに戻し、ΔC補正を終了する。
なお、ステップS212において、ΔCアダプタ340のマウント342を所定量回転させているがこれに限られるものでない。たとえば、ΔC駆動モータ348によるマウント342の回転量を制御できる構成であれば、ステップS210で計算された傾き(回転ズレに相当する角度差α)の分だけマウント342を回転するように制御してもよい。また、デジタルカメラ400から撮影可能に配置されたパターンとしてクロスハッチX軸292を用いたが、これに限られるものではなく、例えば、クロスハッチY軸293やクロスハッチ290でもよい。また、Xエリアスケール211やYエリアスケール212の一部をデジタルカメラ400から撮影可能に配置して用いるようにしてもよい。また、上記では、イメージセンサ401の顕微鏡本体100に対する配置状態の調整(変更)として、回転の調整(ΔC補正)を行ったがこれに限られるものではない。例えば、ΔCアダプタ340によるΔC補正の機能に加えて、あるいは第4のアダプタとしてZ方向への微小な調整を行う機能が設けられてもよい。例えば、アダプタ部300において、イメージセンサ401のZ軸方向の位置を調整可能とし、微妙なフォーカス調整を行えるようにしてもよい。その場合、例えば、ΔCアダプタ340にZ方向へ駆動する3つのアクチュエータで三点を支持する構造を用いることができる。さらに、XY面に対するイメージセンサ401の撮像面の傾きを調整できるようにしてもよい。これは、たとえば、撮影されたクロスハッチ290の画像における格子パターンのフォーカス変化(格子パターンのボケの変化)を検出することにより撮像面の傾きを判定することで行える。また、撮像面の傾きは、上述した3つのアクチュエータの駆動量を調整することで調整することができる。また、上記ではΔC補正をアダプタ部300にて実現したが、ステージ200にΔC補正のための回転機構を持たせてもよい。
以上のようにしてΔC補正を完了すると、処理は図27のステップS15に進む。ステップS15において、コントローラ501は、クロスハッチ原点291を精確に検出し(0.1μの位置管理精度の基準値の一つを為す)、そこでのXY座標値及びZ座標値(Z+ΔZ+dZ)をステージ原点として設定する。クロスハッチ原点の精確な検出は、たとえば、クロスハッチX軸292とクロスハッチ原点291を用いて実現される。図32はステージ原点検出(クロスハッチ原点を検出し、そこでのXY座標値及びZ座標値をステージ原点として読み替える)の処理を説明するフローチャートである。また、図33は、ステージ原点検出処理におけるデジタルカメラ400による撮影画像の例を示す図である。以下、図32と図33を用いて、ステージ原点検出処理を説明する。
まず、ステップS241において、コントローラ501は、図33(a)の左図に示すように、デジタルカメラ400の撮像視野801にクロスハッチX軸292のラインが入るように、観察位置の中心をクロスハッチX軸292へ移動する。このとき、リフトピンL1〜L3の同期駆動によりフォーカス合わせを行う。フォーカス合せは、手動によるΔZ摘み904の操作でも、デジタルカメラ400による撮影画像から得られるフォーカス情報に基づく自動制御であっても良い。そして、ステップS242において、コントローラ501は、クロスハッチX軸292の静止画撮像を行い、静止画像を短冊領域810に分割し、短冊領域による重心計算からクロスハッチX軸292の重心線812を求め、そのY座標値を求める。そして、コントローラ501は、このY座標値を用いて、計算された重心線がイメージセンサ401の撮像視野801におけるX軸方向の中心線813と一致するように、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステージをY方向に移動する(ステップS243)。こうして、図33(a)の右側に示す如く、クロスハッチX軸292のX方向中心線にイメージセンサ401の撮像視野801のX方向の中心線を一致させる。この状態でステージ原点のY座標が確定するので、コントローラ501は、ステップS244においてY軸センサ272によるYエリアスケール212の読取値をステージ原点のY座標値にセットする。
次に、ステップS245において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、観察位置をクロスハッチ原点291に移動する。このとき、ΔZリフトピンL1〜L3の同期駆動によりフォーカス合わせを行う。フォーカス合せは、手動によるΔZ摘み904の操作でも、デジタルカメラ400の撮影画像から得られるフォーカス情報に基づく自動制御であっても良い。なお、ステップS241でフォーカス合わせを行っているので、観察位置をクロスハッチ原点291に移動しても依然としてフォーカスは良く合っているので、ステップS245ではフォーカス合わせを省略してもよい。位置管理面ステージ220をX方向右方にX初期位置まで(X値はゼロ)所定量移動すれば、図33(b)の上図に示すようにクロスハッチ原点291がイメージセンサ401の撮像視野801に捉えられる。但し、ステージの移動後の位置は、X初期位置マーカーの配設位置の機構誤差を含む(クロスハッチ原点291のX方向位置に合せて、機構的に配設される際の誤差)。そのため、クロスハッチ原点291のY方向の重心線はイメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線からは若干のズレを持つ。
そこで、コントローラ501は、ステップS246において、クロスハッチ原点291を計測モードにて静止画撮像し、短冊領域による重心計算から、クロスハッチ原点291のY方向の重心線814を求める。そして、ステップS247において、コントローラ501は、求めた重心線814がイメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線815と一致するように、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステージをX方向に移動する。こうして、図33(b)の下図に示す如く、クロスハッチ原点291のY方向の重心線とイメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線を一致させることができる。この状態でクロスハッチ原点291のX座標が確定するので、コントローラ501は、ステップS248において、X軸センサ271によるXエリアスケール211の読取値をステージ原点のX座標値としてメモリに記憶する。なお、クロスハッチ原点291の代わりにクロスハッチY軸293を使用しても良く、その場合は、Y方向に所定量移動後、上述した内容と同様の処理により、Y方向の重心線を求め、イメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線を一致させることで、クロスハッチ原点291のX座標が確定する。そして、このX座標値をステージ原点としてメモリに記憶する。以上のようにして、撮像視野801の中心とクロスハッチ原点291が一致した状態で座標が取得され、これがステージ原点(X,Y)として設定される。また、ステップS249において、コントローラ501は、ステップS245でフォーカスが得られた状態のZ+ΔZ1+dZ1(dZ1はこの段階ではゼロ)の読み取り値を取得し、これをステージ原点のZ座標値としてメモリに記憶する。次いで、コントローラ501は、ステップS250においてカメラMPU480に制御コマンドを送り、デジタルカメラ400を計測モードからカラーライブモードに切り替える。
再び図27を参照する。以上のようにしてステージ原点の検出を完了すると、コントローラ501は、ディスプレイ502を用いて観察者にスライドのローディング許可を通知し、ΔΘステージ600にスライドが載置されるのを待つ(ステップS16)。なお、スライドの載置(スライドローディングの有無)の検知は、自動検知(図示せず)でもよいし、手動指示であってもよい。ΔΘステージ600にスライドが載置されると、コントローラ501は、載置されたスライドに原点マークおよびフォーカス基準マークがあるかどうかを判定する(ステップS17)。載置されたスライドに原点マークおよびフォーカス基準マークがある場合、処理はステップS18へ進む。なお、ステージ原点が得られているので、ローディングされたスライドにおいて位置基準マーク(以下、原点マーク)が存在する位置、フォーカス基準マークが存在する位置はある程度の精度で把握できる。したがって、それらマークが観察されるべき位置へステージを移動し、そこにマークが存在するか否かを判定することで、原点マークおよび位置基準マークの存否を判定できる。
ステップS18において、コントローラ501は、スライド700のフォーカス基準マーク704〜706、及びY軸マーク703(またはフォーカス基準マーク707)を用いてスライド面のあおりを補正する。以下、スライドのあおり補正処理について図34のフローチャートを参照して詳細に説明する。
ステップS261において、コントローラ501は、観察位置の中心がY軸マーク703の上端、原点マーク701、左側のフォーカス基準マーク707の上端、または上側のフォーカス基準マーク704の左端となるよう位置管理面ステージ220を移動する。次に、ステップS262において、コントローラ501は、3つのdZリフトユニット650のdZリフトピン654を夫々のdZの初期位置から同期駆動してスライド700上の上述したフォーカスユニットを用いてフォーカスを合わせる。以下、3つのdZリフトピン654を区別するために、図14(c)に示したように、dZリフトピンM1〜M3と記載する。なお、スケール値dZ1〜dZ3は、それぞれdZリフトピンM1〜M3を有するdZリフトユニットの近傍のdZ軸センサ641bにより得られるdZ初期位置マーク640aを基準(ゼロ)とするスケール値である。ステップS263において、コントローラ501は、フォーカスが得られたときのスケール値(dZ1〜dZ3)をdZc1としてメモリに記憶する。なお、dZ1〜dZ3は同じ値となるので、いずれか1つを記憶すればよく、本実施形態ではdZ1の値を用いるものとする。
次に、コントローラ501は、ステップS264において観察位置の中心が右側のフォーカス基準マーク705の上端または上側のフォーカス基準マーク704の右端となるように位置管理面ステージ220をX方向へ移動する。そして、ステップS265において、コントローラ501は、dZリフトピンM1〜M3を同期駆動してスライド700上の上述したフォーカスユニットへフォーカス合わせを行う。そして、ステップS266において、コントローラ501は、フォーカスが得られたときのスケール値(dZ1〜dZ3)を、dZc2としてメモリに記憶する(dZ1〜dZ3は同じ値となるので、いずれか1つを記憶すればよく、本実施形態ではdZ1の値を用いる)。次に、コントローラ501は、ステップS267において観察位置の中心が下側フォーカス基準マーク706の中央となるように位置管理面ステージ220をY方向へ移動する。そして、ステップS268において、コントローラ501は、dZリフトピンM1〜M3を同期駆動して、スライド700上のマークへフォーカス合わせを行う。そして、ステップS269において、コントローラ501は、フォーカスが得られた時のスケール値(dZ1〜dZ3)をdZc3としてメモリに記憶する(dZ1〜dZ3は同じ値となるので、いずれか1つを記憶すればよく、本実施形態ではdZ1の値を用いる)。
次に、ステップS270において、コントローラ501は、dZc1とdZc2との差から、dZリフトピンM1とdZリフトピンM2の間の変動量(X方向のスライドのあおり量)を推定し、それがゼロとなるようにdZリフトピンM2を移動する。たとえば、図14(c)のように、dZリフトピンM1とdZリフトピンM2との距離がRjであり、スライド700上のマークの左右端の距離(S264における観察位置の中心の移動量)がλjであるとする。この場合、dZリフトピンM1とdZリフトピンM2の間の変動量(dZ2−dZ1)は、
dZ2−dZ1=(dZc2−dZc1)×Rj/λj
のように推定される。コントローラ501は、この推定された変動量だけdZリフトピンM2を移動し、スライド700のX方向のあおりを解消する。
続いて、ステップS271において、コントローラ501は、dZc1とdZc3との差から、dZリフトピンM1とdZリフトピンM3の間の変動量(Y方向のあおり量)を推定し、それがゼロとなるようにdZリフトピンM3を移動する。たとえば、図14(c)のように、dZリフトピンM1とdZリフトピンM3との距離がRkであり、スライド700上のマークの下端部への移動距離(S267における観察位置の中心のY方向への移動量)がλkであるとする。この場合、dZリフトピンM1とdZリフトピンM3の間の変動量(dZ3−dZ1)は、
dZ3−dZ1=(dZc3−dZc1)×Rk/λk
のように推定される。コントローラ501は、この推定された変動量だけdZリフトピンM3を移動し、スライド700のY方向のあおりを解消する。
以上の処理により、ΔΘステージ600に載置されたスライド700の上面の光軸に対するあおりが補正される。以降、コントローラ501は、当該スライドの上面のZ座標をZ+ΔZ1+dZ1で管理する。なお、Zの値はZ初期位置(ゼロ)からの移動量、ΔZ1の値はΔZ1初期位置(ゼロ)からの移動量、dZ1の値はdZ1初期位置(ゼロ)からの移動量である。以上の処理により、位置管理面ステージ220のあおりに加えて、更にスライド面のあおりが補正され、光軸方向(Z方向)のスライド面のZ位置が正確に管理される。また、以降のZ方向移動は、ΔZリフトピンL1〜L3の同期駆動のみで行われる。以上の処理により、スライド面に起因したあおりが排除され、より高精度なZ方向の位置管理が実現される。なお、上述したあおり補正の処理(S261〜S271)を、ステップS270、S271で推定される変動量が所定値以下となるまで繰り返すようにしてもよい。
図27に戻り、次に、コントローラ501は、ΔΘステージ600のΔΘ補正を実行して、載置されたスライドの回転ずれを補正する(ステップS19)。上述のように、ΔΘ補正に先立ってΔC補正が実行され、ステージ200とイメージセンサ401のX軸方向とY軸方向が一致している。そして、このΔΘ補正によりスライド700上の位置基準マークとイメージセンサ401のX軸方向、Y軸方向が一致させられる。その結果、イメージセンサ401を介して、ステージ200とスライド700の位置基準のX軸方向、Y軸方向が一致することになる。以下、ΔΘ補正の動作について図35を参照して説明する。
図35は、実施形態によるΔΘ補正動作を説明するフローチャートである。ステップS301において、コントローラ501は、手動操作、又は、顕微鏡に制御コマンドを送ることで、対物レンズを低倍(例えば10倍)に設定する。次に、ステップS302において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ΔΘステージ600に載置されているスライド上のY軸マーク703(図23,図24)上に観察位置を移動する。なお、スライド700上のY軸マーク703の位置(座標)は、スライドの載置状態に基づく回転ズレによる誤差を含むが、Y軸マーク703のステージ原点からの既知の座標値を使用して移動すれば、例えば10倍対物レンズの視野内に捉える事が出来る。また、図23、図24で上述したように、Y軸マーク703は、他の位置基準マークが混ざって見えないよう、例えば10倍対物レンズの視野サイズ(たとえばφ1.5mm)以上、他のマークから離れている。したがって、図36(a)に示されるように、イメージセンサ401の撮像視野801にはY軸マーク703のみが存在し、ディスプレイ502にはY軸マーク703のみのライブ画像が表示される。
次に、ステップS303において、コントローラ501は、撮像視野801内のY軸マーク703の黒画像の重心位置を計算する。なお、本実施形態では、黒画像のX方向重心位置を求めているがこれに限られるものではなく、白画像のX方向重心位置を求めてもよいし、黒画像と白画像のそれぞれのX方向重心位置の平均値を用いるようにしてもよい。そして、ステップS304において、コントローラ501は、その重心位置が視野の中心に来る様、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステージ200を移動する。そして、ステップS305において、コントローラ501は、たとえば40倍の対物レンズの場合に対して想定される撮像視野801におけるY軸ラインマークの黒画像または白画像のライン数、および/または、幅のサイズに基づいて画角を判断する。画角が条件を満たしていない場合、処理はステップS305からステップS306へ進み、コントローラ501は、顕微鏡の対物レンズの倍率を大きくするよう、例えばディスプレイ502を用いて観察者(操作者、ユーザ)に促す。或いは、電動リボルバの場合はコントローラ501が制御コマンドを顕微鏡に送ることで自動的に対物レンズの高倍率への設定を行うようにしてもよい。
以上のステップS303からステップS306を繰り返すことにより、ユーザによる手動操作又は制御コマンドにより対物レンズが低倍(10倍)から高倍に切り替わり、ステップS304において、ステップS303で算出された重心位置へステージが移動する。本実施形態では、最終的に40倍対物レンズにより、図36(b)に示すような画角となる。なお、対物レンズの倍率の変更は、10倍→20倍→40倍のように段階的に行われてもよいし、10倍→40倍へ一度に変更されてもよい。ステップS305において40倍対物レンズの場合に対する画角であると判定されると、処理はステップS307へ進む。
次いで、ステップS307において、コントローラ501は、カメラMPU480に制御コマンドを送り、デジタルカメラ400をステップS208と同様、計測モードに切り替える。次いでステップS308において、コントローラ501は、カメラMPU480に制御信号を送り、計測モードで、イメージセンサ401の全画素を用いた静止画撮像を行う。こうして得られるY軸マーク703の静止画像の部分拡大像を図36(b)の右側に示す。イメージセンサ401の各画素によるY軸ラインの画像が両者の軸ズレを反映したモアレ像として得られる。
次いで、ステップS309において、コントローラ501は、イメージセンサ401のY軸とスライド700のY軸マーク703との傾き(軸ズレ)を計測、即ち、回転ズレ角度を計算する。計算方法は、たとえば図36(c)に示すように、イメージセンサ401の撮像視野内を、同一幅の短冊領域によりY軸方向に細分し、各短冊領域毎に重心を計算する。短冊領域の幅が狭いほど検出精度は向上するので、一画素分の幅としても良い。また、イメージセンサの画素欠陥の影響を防ぐ為、画素複数分の短冊領域とし、該領域を一画素幅ずつずらして視野内を細分しても良い。回転ズレの角度は、各短冊領域の重心のX座標値の変化量から高精度で求められる。たとえば、複数の短冊領域から得られた複数の重心位置を通る重心線822を最小二乗法等により求め、重心線822とイメージセンサ401のピクセルの並びのY方向との回転ズレの角度βが得られる。
次いでステップS310において、コントローラ501は、ステップS309で計測された傾き角が許容差内か否か(所定の閾値以下か否か)を判定する。傾き角が許容差内では無い場合、処理はステップS311へ進み、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ΔΘステージ600を所定方向に所定量だけ回転させる。ここで所定の閾値は、ΔΘステージ600について上述したように、3ミリ度であることが好ましく、より好ましくは0.1ミリ度である。ΔΘステージ600では制御コマンドに応じてΔΘ駆動モータ611を駆動して所定量(所定角度)ずつΔΘステージ600を回転し、その所定角度は、上述した所定の閾値以下の角度(好ましくは3ミリ度以下、より好ましくは0.1ミリ度以下)とする。そして、ステップS308に戻り、コントローラ501は、計測モードで静止画撮像を行い、傾き計測を行ない(ステップS309)、その傾きが許容差内に収まれば、ΔΘ補正を終了する。
なお、ステップS311において、ΔΘステージ600を所定量回転させているがこれに限られるものでない。たとえば、ΔΘ駆動モータ611によるΔΘステージ600(スライド)の回転量を制御できる構成であれば、ステップS309で計算された傾き(回転ズレの角度β)の分だけΔΘステージ600を回転するように制御してもよい。
図27に戻り、以上のようにしてΔΘ補正が完了すると、ステップS20において、コントローラ501は、ΔΘステージ600に載置されているスライドのスライド原点の検出を開始する。検出されたスライド原点は、スライド700上の観察位置(座標)をステージ200の位置(座標)を用いて管理するための基準位置として用いられる。すなわち、ステージ200の位置として測定されたスライド原点のステージ原点を基準とする座標値と、観察位置におけるステージのステージ原点を基準とする座標値との差分をとることにより、スライド原点に依存した(ステージ原点に依存しない)座標値が得られ、これが観察位置の座標として用いられる。換言すれば、ステージ原点を基準としたスライド原点の座標値とステージ原点を基準とした観察位置における座標値との差分により、スライド700上の観察位置(座標)がスライド原点基準で管理される。こうして、スライド上の観察位置の座標は、スライド原点を基準位置とするステージ200の位置(座標)になる。なお、ステップS20の実行時において、(ステップS305、S306、S307により)対物レンズは40倍、デジタルカメラ400は計測モードとなっている。図37に、実施形態による原点検出動作のフローチャートを示す。
コントローラ501は、ステップS401においてΔΘ補正後のY軸マーク703の静止画撮像を行い、ステップS402において短冊領域による重心計算から重心線を求める。なお、念のため、静止画撮像の前にフォーカス合せが行われても良い。そして、ステップS403において、コントローラ501は、計算された重心線がイメージセンサ401の撮像視野におけるY軸方向の中心線と一致するように、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステージをX方向に移動する。こうして、図38(a)に示す如く、Y軸マーク703のY方向中心線841にイメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線842を一致させる。
次いでステップS404において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステップS15で得られたステージ原点を基準とするこの時のステージ座標値を受け取る。なお、XY初期位置を基準とするXY座標をクロスハッチ原点291を基準に読み替えたものがステージ座標であり、その原点がステージ原点である。ステージ座標のステージ原点は座標(0,0)となる。そして、このうちのX座標値が高精度なスライド原点のY方向中心線のX座標値(x0とする)となる。また、それはイメージセンサ401の撮像視野801のY方向の中心線842のX座標値ともなる。
次いで、ステップS405において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、イメージセンサ観察位置をスライド700の原点マーク701上に移動する。このとき、ΔZリフトピンL1〜L3の同時駆動により、フォーカス合わせを実施する。フォーカス合せは、手動操作でも、フォーカス情報に基づく自動動作でも良い。ΔΘ補正によりスライドY軸712(図23(b)、(c))の軸ズレは無くなっており、この為、ステージをY方向上方に所定量移動すれば、図38(b)に示すように原点マーク701がイメージセンサ401の撮像視野801に捉えられる。但し、ステージの移動位置は、スライドの回転ズレに対するΔΘ補正後に残るY軸方向の位置ズレ誤差を含む(合せて0.1〜0.2mm程度)ため、原点マークのX方向の重心線851はイメージセンサ401の撮像視野801のX方向の中心線852からは若干のズレを持つ。
そこで、ステップS406にて、コントローラ501は、図38(b)の状態の原点マーク701を計測モードにて静止画撮像し、ステップS407において短冊領域による重心計算からY方向の重心位置を求める。そして、ステップS408において、コントローラ501は、求めた重心線851がイメージセンサ401の撮像視野801のX方向の中心線852と一致するように、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステージをY方向に移動する。こうして、図38(c)に示す如く、原点マーク701のX方向の重心線851とイメージセンサ401の撮像視野801のX方向の中心線852を一致させることができる。なお、図38(b)(c)は図23(b)に示した原点マークを用いた場合を示し、図38(d)(e)は図23(c)に示した原点マークを用いた場合を示している。
次いでステップS409にて、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステップS15で得られたステージ原点(座標(0,0))を基準とするこの時のステージ座標値を受け取る。このうちのY座標値が高精度なスライド原点のX方向中心線のY座標値(y0とする)となる。また、それはイメージセンサ401の観察視野のX方向の中心線のY座標値ともなる。
次いで、ステップS410において、コントローラ501は、ステージMPU280に制御コマンドを送り、ステップS405で得られたZ座標値(Z+ΔZ1+dZ1)を受け取る。この受け取ったZ座標値が高精度なスライド原点のZ方向の座標値(スライドZ原点、z0とする)となる。なお、この時、念のため再度、焦点の合い具合を確認する事を行っても良い。再度の確認で、ΔZ1の数値に若干の変化があれば、その数値になるZ+ΔZ1+dZ1が、スライド原点のZ方向の座標値(スライドZ原点、z0)となる。
次いでステップS411において、コントローラ501は、観察位置の位置管理の基準を、ステップS15で得られたステージ原点(XY座標は(0,0)、Z座標はZ+ΔZ1+dZ1)から、ステップS405で得られたスライド原点(x0,y0,z0)に置き換える。次いで、コントローラ501は、ステップS412においてカメラMPU480に制御コマンドを送り、デジタルカメラ400を計測モードからカラーライブモードに切り替える。なお、ステップS20のスライド原点の検出は、対物レンズ(倍率)が変更される毎に実施されるのが好ましい。対物レンズの切り替えにより光軸がずれる場合があるからである。この点については後述する。
図27に戻り、ステップS21で、コントローラ501は、ΔΘステージ600に載置されているスライド700の、スライド面のδZ分布を測定する。スライド面のδZ分布の測定処理を図39のフローチャートにより説明する。まず、ステップS441において、コントローラ501は、観察位置を、ステップS20で検出したスライド原点の位置へ移動する。次に、ステップS442において、コントローラ501は、ΔZリフトユニット910の駆動によりΔZリフトピンL1〜L3を同期駆動して、デジタルカメラ400による撮影画像に基づくフォーカス合わせを行う。そして、ステップS443において、コントローラ501は、フォーカスが合った状態で、スケール値ΔZ1を読み取り、Z+ΔZ1+dZ1をスライドZ原点z0とする。なお、以上のステップS441〜S443の処理は、図37により説明したスライド原点検出処理において求めたスライドZ原点を流用するのであれば省略可能である。
次に、ステップS444において、コントローラ501は、観察位置をフォーカス基準マーク(本実施形態では例えば1mmおきのフォーカスユニット710の集合)704〜706とY軸マーク703またはフォーカス基準マーク707の4辺上の最初にフォーカス位置を計測するフォーカスユニットまたは位置基準マーク上へ移動する。そして、ステップS445において、コントローラ501は、ΔZリフトユニット910の駆動によりΔZリフトピンL1〜L3を同期駆動して、デジタルカメラ400による撮影画像に基づくフォーカス合わせを行う。そして、ステップS446において、コントローラ501は、フォーカスが合った状態のΔZ1のスケール値とスライドZ原点におけるΔZ1のスケール値との差分δZを読み取り、現在の観察位置のXY座標と、読み取られたZ座標の差分(δZ)を記憶する。以上のステップS444〜S446の処理を、各辺について例えば1mm間隔のフォーカスユニット710で計測を繰り返し、予定された全てのフォーカスユニット710の位置についてδZの計測を終えると処理はステップS447からステップS448へ進む。ステップS448において、コントローラ501は、4辺(上側・下側・左側・右側)のフォーカス基準マーク(位置基準マークも含む)の各辺4個所における各フォーカスユニットのδZから線形補間によりスライド面(カバーガラスエリア722)上の、スライドZ原点に対するZ座標の分布(以下、δZ分布)を推定する。
例えば、図50(a)、(b)に示す様に、X軸上に沿う2個所とY軸上に沿う2個所の合計4個所におけるδZの値(δZx左、δZx右、δZy上、δZy下)からδZが推定される。たとえば、コントローラ501は、δZx左とδZx右のX方向内挿演算及びδZy上とδZy下のY方向内挿演算を行い、両内挿値の平均を取ることで、δZを推定する。これにより、カバーガラスエリア722のスライド面上の例えば1mmピッチ(フォーカスユニットの配設ピッチ)の任意の格子点におけるδZ分布が得られる。更に、例えば、図51(a)、(b)に示す様に1mmピッチの格子内の任意の位置について、同様の内挿処理を行うことによって、カバーガラスエリア722のスライド面上の任意の位置(x,y)のδZ分布が得られる。これをδZ=δZ(x,y)で表す。なお、上記の例ではδZ分布を線形補間により求めたが、これは、スライド表面の変化がなだらかであり、十分な精度が得られるためである。勿論、多次元での補間やその他の演算処理を行っても良い。
上述のδZ分布を用いることにより、スライド面上の任意の位置(x、y)へ観察位置を移動した際に、Z座標にδZ(x、y)を反映させることで、観察位置のZスライド面からの高さを概ね一定に維持することができる。たとえば、XYステージを(x1、y1)から(x2、y2)へ移動した際に、δZ(x2、y2)−δZ(x1、y1)のようにΔZステージを制御してZ座標を移動することで、観察位置のスライド面からの高さをより均一に維持することが出来る。
なお、各辺1mm間隔でのフォーカス基準マークのフォーカスユニットの計測において、カバーガラスの有無が影響する。カバーガラスがあると焦点距離は長くなる方向に変化する。即ち、顕微鏡用カバーガラスの屈折率は概ね1.53であるが、厚さは0.12〜0.17mmの間でばらつくので、変化量も42μm(厚さ0.12mmの場合)〜60μm(厚さ0.17mmの場合)の間でばらつく。これがδZの値に反映される。従って、使用するカバーガラスのサイズがδZの面分布の測定に影響する。カバーガラスのサイズには、たとえば、高さは24mmまたは25mm、長さは32mm〜60mmと複数種類がある。これらのカバーガラスのサイズとスライド700上のフォーカス基準との位置関係で、以下の様な場合分けが生じる。
(1)カバーガラスの高さ25mm、長さ55mm〜60mm
(2)カバーガラスの高さ25mm、長さ50mm
(3)カバーガラスの高さ25mm、長さ45mm〜32mm
(4)カバーガラスの高さ24mm
なお、カバーガラスのサイズは載置される検体のサイズに合わせて選ばれ、又、カバーガラスはスライドガラスの概ね右端に合せて載置するものとする。
(1)では、スライド700の位置基準マーク(701〜703)と、3個のフォーカス基準マーク(704〜706)または4個のフォーカス基準マーク(704〜707)が全てカバーガラスで覆われ、上述したδZ分布の計測方法が適用される。
(2)では、スライド700の位置基準マークのみがカバーガラスから外れ、3個のフォーカス基準マークまたは4個のフォーカス基準マークがカバーガラスで覆われる。この場合、位置基準マークにはカバーガラスが無い為、フォーカス位置が42〜60μ対物レンズ側に近づくことになる。したがって、位置基準マークのフォーカス位置とカバーガラスで覆われたフォーカス基準マーク704〜707のフォーカス位置とではカバーガラスの有無によるフォーカス位置の変動が生じ、位置基準マークはフォーカス合わせに使用できない。通常、スライドのあおりは20μ内外に納まる為、これを超えるδZの変化は、カバーガラスの有無の違いとして、コントローラ501は認識可能である。従って、この場合、カバーガラスで覆われた左側のフォーカス基準マーク707が検知されれば、これを選択し、上述したδZ分布の計測方法が適用される。一方、フォーカス基準マーク707が無い場合は、スライド700の上下に配設されたフォーカス基準マーク(704、706)を用いて、上下のフォーカス位置の計測結果から補完処理によりδZ分布を求める。
(3)では、スライドの上下に配設されたフォーカス基準マーク(704、706)の左側がカバーガラスのカバー範囲から外れる。外れる範囲は、上述したようにδZの変化量で検知できるので、カバーガラスのある範囲で、上下のフォーカス基準マーク(704、706)のδZから補完処理を行う。
(4)では、カバーガラスの高さが24mmである為、上下のフォーカス基準マークの一部がカバーガラスのカバー範囲から外れる。仮に、カバーガラスがスライドガラスの上辺に沿って載置された場合でも、下辺では0.5mm幅、フォーカス基準マークがカバーガラスで覆われる。従って、上下のフォーカス基準マークのδZ計測に際に、カバーガラスで覆われるフォーカス基準マークの幅(本来は2mm)の中で、ステージのXY方向の移動を行い、δZの値の変化量からカバーガラスのある範囲を特定し、そこでのδZを使用する。こうする事により、カバーガラスの長さ方向のサイズに応じて(1)〜(3)の場合と同様なδZの分布の計測処理が適用可能になる。
なお、検体サイズの高さが大きく、上下のフォーカス基準マークの位置にまで載置範囲を確保したい場合には、上下のフォーカス基準マークを有しないスライドを用いるようにしても良い。ただし、この場合でも、カバーガラスの長さを50mm以上とする事で、左右のフォーカス基準がカバーガラスで覆われる為、左右のフォーカス基準のδZから補完処理を行う事が出来る。
また、上記(1)では位置基準マークもカバーガラスに覆われるため、δZ分布の任意の位置(x、y)における値は、スライド原点のZ座標からのZ方向位置となる。したがって、δZ分布はスライド面のZ座標を表す。他方、上記(2)〜(4)の場合は、位置基準マークがカバーガラスから外れるため、δZ分布はスライド面の相対的な変動を示すが、スライド面そのもののZ方向位置とはならない。図49(c)に示されるように、カバーガラスにより、焦点距離L2は長くなり、カバーガラスが無い位置の焦点距離をL1、カバーガラスによる焦点距離の変化量をΔLとするとL2=L1+ΔLとなる。カバーガラスの有無による変化量ΔLは、フォーカス基準マークや位置基準マークについてカバーガラスが存在する部分とその近傍でカバーガラスが存在しない部分とのフォーカス位置を計測しそれらの差を計算することで得られる。たとえば、スライドに装着されているカバーガラスの境界付近で、カバーガラスに覆われたフォーカス基準マークのフォーカス位置とカバーガラスに覆われていないフォーカス基準マークのフォーカス位置を計測し、それらの差を計算しΔLとする。この変化量ΔLをδZ分布から減算することで、δZ分布はスライド原点のZ位置を基準としたスライド面のZ方向位置の分布となる。なお、上述した(2)や(3)の場合で、カバーガラスに覆われたマークのフォーカス位置からΔLを差し引き、カバーガラスに覆われていないマークのフォーカス位置をそのまま用いてδZ分布を求めるようにしてもよい。こうすれば、カバーガラスに覆われている部分とそうでない部分とに関わらず、全てのフォーカス基準マークを使用してδZ分布を計測できる。
図27に戻り、ステップS17でスライドに原点マークまたはフォーカス基準マークが存在しない場合は、処理はステップS22へ進む。ステップS22において、スライドにフォーカス基準マークは無いが原点マークが存在すると判定された場合は、コントローラ501は、ステップS23においてステップS19と同様のΔΘ補正を実行する。また、ステップS24において、ステップS20と同様のスライド原点の検出処理を実行する。フォーカス基準マークも原点マークもない場合は、ステップS22からステップS25へ進む。
ステップS25でコントローラ501(位置管理アプリが稼働)は、観察モードに移行する。そして、ステップS26にて、コントローラ501は、対物レンズを低倍に切り替えるようディスプレイ502により通知するか、制御コマンドを顕微鏡に送り対物レンズを低倍に切り替える。そして、ステップS27において、コントローラ501は、位置管理観察の準備完了をディスプレイ502により観察者に伝える。この後、ステージを移動し、観察位置(撮像視野の中心)をスライド原点上とすると便利である。
なお、対物レンズが切り替わると視野の中心が微妙にずれる事があるので、使用される対物レンズに応じたスライド原点を用いるような構成を設けることが好ましい。これを実現するために、たとえば、対物レンズが切り替わるたびにステージ原点やスライド原点を検出しなおすべく、図48に示される処理の実行を開始する。図48のステップS4801において、コントローラ501は、対物レンズの切り替わりがあったか否かを判定する。対物レンズの切り替わりは、リボルバ127により対物レンズを切り替えたことを検出するセンサを設けることにより検出することができる。あるいは、ユーザが対物レンズの切り替えを行ったことを所定のユーザインタフェースを介してコントローラ501に通知することにより、対物レンズの切り替わりが検出されてもよい。
対物レンズの切り替わりが検出されると、ステップS4802において、コントローラ501は、ステージ原点を再度検出する。この処理は、図27のステップS15と同様である。そして、コントローラ501は、ステップS4803において現在載置されているスライドに原点マークがあるかどうかを判定し、原点マークがある場合には、ステップS4804においてスライド原点の検出を行う。原点マークの有無は、図27のステップS17、S22における判定結果を記憶しておいてもよいし、原点マークが存在するべき位置に観察位置を移動して、原点マークの有無を確認してもよい。スライド原点の検出は、図27のステップS20で説明したとおりである。ここでは、スライドに変更は無いため、スライド面のあおりの補正やΔZ分布の測定は不要である。
また、新たにスライドがロードされたことが検出されると、処理はステップS4805からステップS4806へ進む。ステップS4806では、新たにロードされたスライドについて、図27のステップS17〜ステップS24の処理を行う。
なお、リボルバ127の機構精度が高く、視野中心やフォーカス位置の微妙なズレが主に対物レンズの倍率に依存する場合は、対物レンズの倍率毎にスライド原点を求め、これらを記憶しておく事でステップS4804の処理を省略しても良い。なお、その場合、コントローラ501は、たとえば、顕微鏡本体100から不図示の信号線を介して、対物レンズの倍率を示す情報を取得し、ステップS4804で得られたスライド原点の座標をその検出時に使用していた対物レンズの倍率と対応付けてメモリ512に記憶しておく。そして、対物レンズの切り替えが検出された際には、コントローラ501は、切替後の対物レンズの倍率に対応したスライド原点の座標がメモリ512に記憶されていればその記憶されている座標を使用する。切替後の対物レンズの倍率に対応したスライド原点が記憶されていない場合は、コントローラ501は、上述したようにスライド原点の検出(ステップS4804)を実行する。
以上のようにして、ΔCアダプタ340による補正、ΔΘステージ600による補正、スライド700の原点検出などを終えると、コントローラ501は、顕微鏡システム10を観察モードで動作させる。図40は、観察モードにおける観察位置の位置管理ならびに、デジタルカメラ400を用いた静止画撮影と記録を制御するコントローラ501の処理を説明するフローチャートである。
まず、ステップS501において、コントローラ501は、上述のステップS20またはS24(図27)で取得されたスライド原点のステージ原点を基準とした位置(x、y、z座標値)をスライド原点の座標としてメモリに記憶する。以下、このステージ原点を基準とするスライド原点の座標を(x0,y0,z0)とし、このスライド原点を基準にスライド上の観察エリアの観察位置を管理する。即ち、ある観察位置のステージ原点を基準とする座標値を(x,y,z)とすると(x0−x,y−y0,z−z0)がスライド原点を基準とするその観察位置の座標値になる。
次に、ステップS502において、コントローラ501は、間隔が既知である2つのマーク、または、一つのマークを構成する間隔が既知であるライン又はスペースの中心線の間隔、ラインとスペースの境界(エッジ)、ライン又はスペースの幅などを用いて、ステージ200のx、y座標値と実距離との間の変換係数を取得する。ステージの実際の移動量とスケール座標による移動量との精確な対応関係(変換係数)を持てば、スケール座標による移動量から実距離が算出できる。また、ステージ移動を伴わない同一観察画面内の2点間の距離も、実距離との対応関係を取得しておけば実距離で把握できる。これらの対応関係は観察対象の実寸を把握する上で重要である。本実施形態では、クロスハッチX軸292、クロスハッチY軸293、クロスハッチ290、スライドのY軸マーク703などを用いることができる。取得された変換係数(x、y座標に関する第1係数)はメモリ512に記憶される。なお、z座標に関しては、たとえば、所定の厚さ方法(Z方向)の段差を有するリニアゲージによりΔZリフトユニットの同期駆動によるステージ200の上面の移動距離を測定し、z座標の変化量と移動距離の関係を取得し、z座標値と実距離との間の変換係数(z座標に関する第1係数)を求めることが出来る。その場合、こうして求められたz座標に関する第1係数は、x、y座標に関する第1係数と同様に、例えばメモリ512に記憶される。
なお、x座標およびy座標に関する第1係数の取得は、たとえば、以下のようになされる。まず、XYクロスハッチ213あるいはスライド700の位置基準マークのうち、間隔が既知である2つのマーク、または、一つのマーク内の2つのライン(パターン)のそれぞれの中央部へイメージセンサ401の所定位置(たとえば観察位置)が来るように、コントローラ501はステージ200を移動する。そして、コントローラ501は、それぞれの位置の座標の差分と、それら2つのマークまたはラインのそれぞれの中心線の間隔の実距離に基づいて、座標値と実距離の間の変換を行う第1係数を算出する。たとえば、XYクロスハッチ213のクロスハッチ290の右上端部に位置する小クロスハッチにおいて、左のY軸方向のマークと右のY軸方向のマークのライン幅方向のそれぞれの中央の位置に観察位置を順次に合わせる。このときの、X座標の変化量とそれらマーク間の実距離(たとえば0.5mm)とに基づいて第1係数が求まる。あるいは、たとえば、XYクロスハッチ213のクロスハッチY軸293の中心部の2本の10μmライン(図12(b))を用い、それぞれのラインの中央位置にステージ200を移動して順次に観察位置を合わせる。そして、そのときの、X座標の変化量とそれらライン間の実距離(20μm)とに基づいて第1係数が求まる。なお、本実施形態では、X座標について第1係数を取得しているが、Y座標について第1係数を取得するようにしてもよい。また、本実施形態では、X座標について取得された第1係数をY座標に流用するが、X座標用の第1係数、Y座標用の第1係数を個別に計測して保持し、X,Y座標それぞれに個別の変換係数が用いられるようにしてもよい。また、変換係数の取得に用いる2つのマーク/パターンが同一の視野に収まらなくてもよい。たとえば、クロスハッチ290の最右端のY軸方向のマークと最左端のY軸方向のマークを用いてもよい。
次に、ステップS503において、コントローラ501は、間隔が既知である2つのマークが1つの画像に収まるように静止画撮影を実行する。そして、コントローラ501は、得られた画像を用いて、イメージセンサ401のピクセル距離と実距離との間の変換係数(第2係数)を取得し、これをメモリに記憶する。
第2係数の取得は、たとえば、以下のようになされる。まず、XYクロスハッチ213あるいはスライド700の位置基準マークのうち、間隔が既知である一つのマーク内の2つのラインが撮影視野に収まるようにして、静止画撮影を行う。そして、コントローラ501は、静止画像を解析し、2つのラインの間のピクセル数をカウントし、そのカウント値とそれら2つのラインの間隔の実距離に基づいて、ピクセル距離と実距離の間の変換を行う第2係数を算出する。たとえば、クロスハッチY軸293の外側の両ラインが画面内に入るように撮影し、それら両ラインの間隔に相当する画素数と既知の実距離から第2係数が求まる。なお、上記では一つのマーク内の2つのラインを用いたが、間隔が既知である2つのマークを用いるようにしてもよい。
ステップS504では、ステージMPU280から得られるステージ200のステージ原点を基準とする座標値(x,y,z)を、スライド原点を基準とした座標値(x0−x,y−y0,z−z0)に変換し、スライド原点を基準とした座標値により位置管理を行う。ここで、(x0,y0,z0)は、ステップS501で記憶されたステージ原点を基準とするスライド原点の座標である。
なお、ユーザは、ΔZ摘み904を操作することでZ方向の位置を調整することとする。ΔZ摘み904の回転操作は、ステージMPU280によりΔZリフトユニット910へのリフトピン914を上下動するΔZモータ913への駆動信号に変換され、ΔZリフトピンL1〜L3の同期駆動によりステージ200の上下動が制御される。上述したようにZ座標(zの値)は、[Zリニアスケール990bの読取値Z]+[ΔZリニアスケール994bの読取値ΔZ]+[dZリニアスケール640bの読取値dZ]である。
その後、ユーザがコントローラ501に静止画撮影を指示すると、処理はステップS505からステップS506へ進み、コントローラ501はデジタルカメラ400に静止画撮影を指示する。観察モードにおけるデジタルカメラ400は、コントローラ501から静止画撮影の指示を受けると、直ちに静止画を撮影し、その画像データをコントローラ501に送信する。ステップS507、S508において、コントローラ501はデジタルカメラ400から受信した画像データを含む画像ファイルを生成し、記憶する。
ステップS507において、画像ファイルに付加する付帯情報を生成する。付帯情報には、上述した第1係数、第2係数、観察位置(スライド原点を基準とした座標値(x0−x,y−y0,z−z0)が含まれる。なお、その他、使用している顕微鏡を識別する顕微鏡IDや、その時の対物レンズ倍率、観察対象のスライドを識別するスライドID、更にステップS21(27図)で測定されたδZ分布情報等が付帯情報として含まれてもよい。これら付帯情報の一部(顕微鏡IDや対物レンズ倍率など)は、たとえば、不図示の信号線を介して顕微鏡本体100からコントローラ501に通知される。なお、スライドIDの取得は、たとえばバーコードを利用して実現することがあげられる。この場合、ラベルエリア721に添付されるラベルにバーコードなどで固有番号を付しておくか、または、ラベルエリア721のスライドガラスに直接バーコードを印字し、バーコードリーダ(不図示)またはイメージセンサ401によりこれを読み取るようにする。
また、δZ分布情報は、
・フォーカス基準マークを構成するフォーカスユニット(本実施形態では1mm間隔)の中心のx、y座標とその時のフォーカス位置δZの測定結果、
・カバーガラスエリア内の1mm間隔の格子点(格子点のX方向またはY方向の先には、フォーカスユニットの中心がある)のx、y座標とδZ(x,y)の推定結果のテーブル、
・δZ分布を近似する曲面のパラメータ、などのいずれの形態であってもよい。すなわち、δZ分布情報は、ステップS448におけるδZ分布の推定と同じまたは同様の結果を得られる情報であれば、どのような形態でもよい。
次にステップS508において、コントローラ501は、ステップS506で受信した画像データを用いて、ステップS507で生成した付帯情報がファイルヘッダに記録された画像ファイルを生成し、記録する。図41に画像ファイルのデータ構成の一例を示す。画像ファイルのヘッダには、ファイル名2501の他に、上述した画像データ2608の付帯情報、すなわち、観察位置2502、第1係数2503、第2係数2504、顕微鏡ID2505、対物レンズ倍率2506、スライドID2507、δZ分布情報2508等が格納される。こうして、付帯情報と画像データ2510が関連付けられて記録されることになる。なお、付帯情報の格納は画像ファイルのヘッダに限られるものではなく、フッタに格納されてもよい。また、付帯情報を別ファイルとして記録し、参照のためのリンク情報を画像データのヘッダまたはフッタに付帯してもよい。なお、観察位置2052には、原点マーク701が示す位置を基準とした座標値、即ち、(x0−x,y−y0,z−z0)が記録される。原点マーク701が汚れて使用できない場合には予備原点マーク702が用いられることになるが、その場合でも座標値は原点マーク701が示す原点位置を基準とした値に換算されて記録されようにすることが好ましい。なお、原点マーク701と予備原点マーク702との位置関係は高精度で規定されているので、予備原点マーク702を用いて、原点マーク701による基準位置を特定することができる。もちろん、予備原点マーク702を用いた場合に予備原点マーク702が示す位置(原点マーク701が示す位置とは異なる位置)を原点とするようにしてもよいが、その場合は付帯情報としてどちらの原点マークを用いたかを座標と共に記録する必要がある。
なお、本実施形態では斜行センサ273を有しており、ステージ200の位置管理の精度をより向上させている。斜行センサ273による斜行検出と斜行補正については、後述する。
次に、コントローラ501による静止画ファイルの表示とステージ200の同期について説明する。本実施形態では、スライド700上の検体の観察位置((x、y、z)座標)を精度よく管理できるため、スライド700を用いて撮影された静止画の撮影時の観察位置を顕微鏡側で容易に再現することができる。また、静止画が表示されているディスプレイ502からステージ200の移動を指示したり、ステージ200の移動に同期して撮影済みの静止画を切り替えて表示したりすることができる。
図42は、コントローラ501による静止画像の表示とステージ200の移動制御の連携を説明するフローチャートである。また、図43は表示画面とステージ200の位置の同期を説明する図である。
ステップS601において、コントローラ501は、選択された画像ファイルの画像データをディスプレイ502に表示する。このときコントローラ501は、ディスプレイ502における画像データの表示サイズから、画像データの1ピクセルの大きさとディスプレイ502の表示画素の大きさの関係(イメージセンサの1画素がディスプレイ上の何画素に対応するか)を把握できる。
ステップS602において、コントローラ501は、付帯情報に含まれているスライド原点を基準とする観察位置(座標)(xorg,yorg,zorg)に顕微鏡の観察位置が一致するように、ステージ200及びΔZステージ900を移動する。なお、ステップS602の前に、表示中の画像の撮影に用いられたスライド700はステージ200にロードされ、図27の各ステップにより、スライド原点検出が済んでいるものとする。また、これにより、当該スライドのスライド原点のステージ原点を基準とする座標値(x0,y0,z0)をコントローラ501は保持している。即ち、コントローラ501は、スライド原点基準の観察位置(座標)(xorg,yorg,zorg)とステージ原点基準のスライド原点座標(x0,y0,z0)とから、(x0−xorg,y0+yorg,z0+zorg)によりステージ原点を基準とする観察位置の座標値を計算する。更に、コントローラ501は、このステージ原点を基準とする座標値から、ステージの初期化位置を基準とする座標値に置き換え、ステージ200及びΔZステージ900を制御する。本実施形態では各ステージ内部の位置管理は各ステージの初期化位置を基準とする。但し、上述したスライド原点基準からステージ原点基準へ、更に初期化位置基準への観察位置の座標変換を、ステージ200及びΔZステージ900の内部において行っても良い事は言うまでもない。こうして、スライド700に対する観察位置と、ディスプレイ502に表示中の画像の観察位置とを高精度に一致させることができる。更に、コントローラ501は、画像ファイルから取得した観察位置(xorg,yorg,zorg)とスライド原点座標(x0,y0,z0)をその画像ファイルから取得される第1係数を用いて実距離に変換し、実距離でもってステージ200及びΔZステージ900に移動指示を行うこともできる。このように実距離を用いれば、静止画撮影時の顕微鏡(ステージ200)と現在使用している顕微鏡(ステージ)が異なる場合に対応できる。実距離で観察位置を受け取ったステージ200及びΔZステージ900は、コントローラ501からステージMPU280に通知される自身の第1係数を用いて実距離を座標値へ変換し、ステージ200を移動する。
なお、実距離対応がステージMPU280にとって負担になる場合は、位置管理アプリが稼働しているコントローラ501において実距離と座標値との間の変換が実行されるようにしてもよい。たとえば、コントローラ501において稼働するステージドライバ(ステージMPU280と制御ユニット500とが、例えば、USBで接続されている場合は、ステージMPU280のためのUSBドライバソフト)が上記変換を代行しても良い。
即ち、図43に示されるように、コントローラ501のCPU511は、表示されている画像1100の画像ファイルのヘッダから付帯情報として記録されている(スライド原点基準の)観察位置座標(xorg,yorg,zorg)を読出す。なお、この表示されている画像1100は、たとえばコントローラ501に接続されている不図示の操作部からユーザにより入力された3次元座標(x、y、z)をCPU511が取得し、この3次元座標を観察位置座標として含むヘッダの画像ファイルを読み出し、ディスプレイ502に表示したものである。そして、これを付帯情報として記録されている記録時のステージの第1係数を用いて実距離の座標(Lx,Ly,Lz)に変換する(S701、図43)。これにより、スライド原点から観察位置までの実距離Lx、Ly、Lzが得られる。このように実距離で表された座標(Lx,Ly,Lz)を、現在使用中のステージの第1係数を用いてステージ座標値へ変換することで、使用中のステージに対応した(スライド原点基準の)観察位置の座標(xs,ys,zs)が得られる。次いで、現在使用中のステージのステージ原点を基準とするスライド原点座標(x0,y0,z0)から、ステージ原点基準の観察位置(x,y,z)=(x0−xs,y0+ys,z0+zs)が得られる(ステップS702)。コントローラ501は、こうして得られたステージ原点基準の観察位置の座標(x,y,z)にイメージセンサ401の撮像中心が位置するように、ステージ200及びΔZステージ900の移動を指示する(ステップS703)。なお、Z座標に関して実距離への変換を行わない構成では、zorg=zsとなる。
なお、上述のように、Z方向へのステージ200の移動は、3つのΔZリフトユニット910が同期駆動することによりなされる。以上により、表示中の画像の観察位置と顕微鏡におけるスライド700の観察位置をX,Y,Zの3方向で一致させることができる。すなわち、静止画撮影されたときの観察位置が3次元空間において正確に再現されることになる。
次に、コントローラ501は、ディスプレイ502の画面上で観察位置の移動指示が発生したか(ステップS603)、ステージ200及びΔZステージ900の移動が発生したか(ステップS606)を判定する。ディスプレイ502の画面上で観察位置の移動指示が発生した場合、処理はステップS603からステップS604へ進む。なお、画面上の観察位置の移動指示は、たとえば、XY方向に関しては、マウスによるドラッグ操作の開始点と終了点を検出することにより行われる。ステップS604では、たとえば、図43において、マウスによるドラッグの開始点1001、終了点1002が検出されると、画面の移動方向と移動量を有するベクトル1003が得られ、これがXY方向の移動指示として得られる。これは、表示されている画像1100の(スライド原点基準の)観察位置(xorg,yorg,zorg)を、ベクトル1003に相当する分移動する事を意味する。
即ち、コントローラ501は、ディスプレイ502上の画面のXY方向の移動指示を検出すると、そのX、Y方向の移動量をXYステージの移動量に変換する。たとえば、図43において、ベクトル1003から、ディスプレイ502上の表示画素距離を取得する。表示画素距離は、X方向の移動量ΔxdispとY方向の移動量Δydispであり、これらをイメージセンサ401におけるピクセル距離(Δxpix、Δypix)に変換する(ステップS711)。続いて、コントローラ501は、第2係数を用いてピクセル距離を実距離(ΔLx,ΔLy)に変換する(ステップS712)。そして、コントローラ501は、この実距離を現在使用しているステージ200の第1係数(ステップS502で得られる。図40)を用いてステージの移動量(Δx、Δy)に変換する(ステップS713)。こうして得られた移動量(Δx、Δy)によりステージ200を現在の(x,y)位置から移動する(S605)ことにより、ステージ200がベクトル1004で示されるように移動する。その結果、ディスプレイ502における新たな観察位置(ベクトル1003だけ移動した観察位置)とステージ200による観察位置(ベクトル1004だけ移動した観察位置)が同期する。
なお、上記マウスによる操作ではZ方向についての移動は指示されないので、ステージ200はZ方向へ移動しない。なお、ステージ200がX,Y方向へ移動する際に、δZ分布を用いてスライド面からの観察位置を維持するようにしもてよい。この場合、スライド面からの観察位置の高さを維持するために、ステージ200のXY座標が(x,y)から(x+Δx,y+Δy)へ移動したことに応じたスライド表面のZ座標の変化をスライドのδZ分布から、δZ=δZ(x+Δx,y+Δy)−δZ(x,y)により求める。そして、ステージ200を(x+Δx,y+Δy)へ移動するのに伴ってこのδZの変化分だけZ方向にステージ200を移動する。これにより、Z方向の観察位置がスライド表面から概ね一定の距離に維持される。なお、ステージ200を、Z座標を一定に維持して移動するか、スライド上面からの観察位置の高さを維持して移動するかをユーザが設定できるようにしてもよい。
なお、ステップS603における画面上での移動指示に関して、XY方向への移動については上述のとおりマウスのドラッグ操作が用いられる。他方、Z方向への移動指示は、たとえば、表示画面上に上向き矢印及び下向き矢印を表示しこれをマウスで操作することによりなされる。この場合、マウスで上向き矢印にアクセスするとステージがZ軸正方向(上方向)へ移動し、下向き矢印にアクセスするとステージがZ軸負方向(下方向)へ移動する。この場合のステージ200のZ方向への移動は、ΔZステージ900の3つのΔZリフトユニット910のリフトピン914を同期駆動することで実現される。この場合、ステージ200の上方向への移動の制限に関しては、たとえば、スライド表面のδZ分布δZ(x,y)+10μmが設定される。検体厚には、ばらつきがあるものの10μmより厚くなることは無いからである。また、ステージ200の下方向への移動の制限に関しては、例えば、スライド表面のδZ分布δZ(x,y)が設定される。或いは、スライダーバーや摘みを表示し、Z方向の移動をマウス等で指示するようなインタフェースとしてもよい。この場合、上限値および下限値は、たとえば、それぞれ「スライド表面のδZ分布δZ(x,y)+10μm」および「スライド表面のδZ分布δZ(x,y)」とする。
一方、X摘み201、Y摘み202、ΔZ摘み904の操作により、あるいは、ステージ200用及びΔZステージ900用の制御操作卓(図示せず)による(電動)移動指示により、ステージ200及びΔZステージ900の移動が生じた場合は、処理はステップS606からステップS607へ進む。ステップS607で、コントローラ501は、ステージの移動量に応じてディスプレイ502の表示を移動する。XY方向の移動に関しては、これは上述したステップS604の処理を逆方向に実行するものである。すなわち、コントローラ501は、図43において、ステージ200がベクトル1004で表されるように移動した場合、その移動量(Δx,Δy)を、ステップS502で取得した第1係数を用いて実距離(ΔLx,ΔLy)に変換する(ステップS713)。そして、コントローラ501は、XY方向の実距離を現在表示中の画像ファイルの付帯情報に記録されている第2係数を用いてピクセル距離(Δxpix,Δypix)に変換する(ステップS712)。そして、ピクセル距離をディスプレイ502における表示画素距離(Δxdisp,Δydisp)に変換し(ステップS711)、ベクトル1003だけ画像を移動するように制御される。
なお、XY方向の移動に際し、ステージ200のZ方向の位置に関しては、例えば、Z方向の観察位置をスライド面上から一定の距離に維持するための自動調整が行われる。この自動調整では、ステージ200のXY座標が(x,y)から(x+Δx,y+Δy)へ移動したことに応じたδZ分布の値の変化、δZ=δZ(x+Δx,y+Δy)−δZ(x,y)を求める。そして、このδZだけZ方向にステージ200をΔZステージ900を制御して移動する。これにより、Z方向の観察位置がスライド面から一定の位置に維持される。なお、自動調整を行わずに、ステージ200のZ座標が維持されるようにしてもよい。また、自動調整を行うか否かをユーザが設定できるようにしてもよい。
また、Z方向への移動に関しては、ΔZ摘み904の手動操作により、あるいは、ΔZステージ900用の制御操作卓(図示せず)による(電動)移動指示により、観察位置のZ座標の移動が生じる。この時、上方向への移動の制限に関しては、たとえば、スライド表面のδZ分布δZ(x,y)+10μmが設定される。検体厚には、ばらつきがあるものの10μmより厚くなることは無いからである。また、下方向への移動の制限に関しては、例えば、スライド表面のδZ分布δZ(x,y)が設定される。
次に、XY方向の移動に関しては、ステップS608において、ステップS604またはS607で得たベクトル1003にしたがって表示内容を更新する。この場合、現在表示している画像1100の表示範囲を画像1101の表示範囲に更新することになる。ただし、画像1101の表示範囲では、画像1100の表示範囲の画像データで画像1101の表示範囲と重複する部分のみの画像データしか表示できない。即ち、画像1101の表示画面は、画像1100と重ならない部分は不足(空白)部分となる。このため、不足部分を含む他の画像ファイルから画像を取得して合成する。使用すべき画像ファイルは、対物レンズ倍率、スライドID、顕微鏡IDが共通な画像ファイルから、観察位置に基づいて選択される。なお、ステージが移動した結果、観察位置に対応する画像ファイルが存在しない場合に、自動的にライブビューに切り替わるようにしてもよい。合成可能な画像ファイルが存在する場合には(ステップS609:NO)、該当する画像ファイルを選択し、これを用いて画像の合成を行う(ステップS611)。
合成可能な画像ファイルが無い場合は、画像表示のために新たな画像が必要である(ステップS609:YES)。そのため、コントローラ501は、ステージ200の移動後に静止画撮影を行って新たな画像ファイルを生成し、これを表示するか、上述の不足部分(空白部分)を補うように既存の重複部分との画像合成を行う(ステップS610、S611)。なお、新たな画像ファイルを表示する場合も、不足部分を補うように合成する場合も、画像1100と画像1101を合成した画像を取得していく。ただし、画像1100と画像1101の合成の仕方については特に制限はない。たとえば、画像1100の周辺に画像1101の一部を合成してもよいし、画像1101の周辺に画像1100の一部を合成してもよいし、画像が重複する領域を半分に分割するような位置で合成するようにしてもよい。このような合成処理により、スライド上の検体の切れ目の無い観察画像を得ることができる。画像(またはXYステージ)の移動により生じた不足部分に対して、このような構成により逐次合成していくことにより、観察位置を移動していく間に、合成画像が成長していくことになる。
Z方向の移動に関しては、現在表示している画像1100の表示範囲を新たなZ位置での画像に更新することになる。そして、該当する画像ファイルが存在する場合には、該当する画像ファイルを選択し、これを用いて画像の更新を行う。該当する画像ファイルが無い場合は、画像表示のために新たな画像が必要である。そのため、コントローラ501は、ステージ200のZ方向の移動後に静止画撮影を行って新たな画像ファイルを生成し、これを表示する。
以上説明したように、上記実施形態によれば、スライド上の基準位置を基準とした座標による観察位置の管理を行えるため、観察位置の再現を容易に行うことができる。即ち、位置精度としてXYスケール板210による高精度な位置検出により、0.1μmの精度でステージをXY方向に移動制御することができる。又、Z方向に関しては、Zリニアスケール990b、ΔZリニアスケール994b、dZリニアスケール640bによる高精度な位置検出により、0.1μmの精度でZ方向に移動制御できる。Z方向に関しては、加えて、ステージ及びスライド表面のあおり補正、及び、δZ分布の把握を行っている。これらにより、病理診断における正確な観察位置の特定、観察位置の再現が、検体の面方向(XY)及び厚さ方向(Z)で可能となる。すなわち、従来は記憶に頼っていたROIの観察位置の再現をより正確に且つ迅速に行える。また、ΔΘステージ600の採用によりスライドをいったんステージから取り出した後でも、スライドの載置状態(たとえば回転ズレ)による影響が低減され、観察位置を正確に再現できる。
上述したように、位置管理観察では、表示画像の位置座標とステージ上の位置座標とが、高精度で同期するので、観察者はディスプレイにより、常時、観察位置のスライド原点を基準とする座標値を高精度で知ることが出来る。又、所定のアプリケーションソフトにより、観察位置の移動経過を記録することが可能になり、又、座標値の指定により、任意の観察位置を高精度で再現する事が可能になる。又、記録されているエビデンス画像を再生し、表示された画像に対応するスライド上の観察位置を正確に、顕微鏡で再観察することができる。この機能は、表示中の画像ファイルの付帯情報に記録されているスライドIDと現在ステージに載置されているスライドのラベルから読み取ったIDが一致する場合に実行される。
これにより、コントローラは診断時の観察位置(x、y、z座標)の移動経路を経路ログとしてスライドIDに関連付けて記録する事が出来る。また、途中で対物レンズ等の変更、ROIの撮像等を行った場合も、それらの情報を経路ログに付加して記録する事が出来、有用である。更に、コントローラは経路ログに基づく観察経緯の再現を行う事も可能であり、これは、スライドIDから対応する経路ログを選択し、それに従ったステージの自動駆動、また、顕微鏡の対物レンズの制御等により実現される。
これにより、形態診断において、例えば、厚み方向に隣接する複数の切片より作製された複数のスライドの画像を重畳して表示し、組織の厚み方向の変化を観察するなど、本来、病理診断として行なえれば価値がある事が実現できる。この場合に必要な追加的な処理は、例えば、複数のスライドの同じ位置座標における複数の画像を、垂直に重ね、垂直方向(厚み方向)への送り操作により、表示する画像を随時切り替えられる様にする。あるいは、複数のスライドの画像を並べて表示し、同じ位置を所定のマークにて示したり、それら複数の画像間で観察箇所の移動を同期して行なわせたりするようにしても良い。あるいは、より多くの連続切片画像を用いることで、既存の3D化アルゴリズムを活用し、3D表示を行う事も可能である。これらは、コントローラ501上で、ソフトウェアにて実行される。
更にまた、機能診断において、同様なソフトウェア処理により、コントローラ501は染色状態の異なる複数の画像を、重畳してディスプレイ502に表示させることができる。たとえば、形態染色を行ったスライドで観察を行った後、そのスライドを用いて機能染色を行って観察を行い、形態染色と機能染色で撮影した顕微鏡画像を所定精度で合成表示することが可能になる。
例えば、顕微鏡システムは、第一の染色状態である、第一のスライド上の観察対象の画像1100(第一の画像)を取得する。この画像は、コントローラ501の不図示のメモリに記憶される。その後、第一のスライドについて染色状態が第二の染色状態に変更され、再度顕微鏡システムのΔΘステージ600上に載置される。この、第二の染色状態の観察対象を、再度顕微鏡システムにより撮像し、顕微鏡システムは画像(第二の画像)を取得する。このとき、CPU511は画像1100(第一の画像)をメモリから読み出し、画像1100のヘッダに格納された観察位置座標(xorg,yorg,zorg)を取得する。顕微鏡システムは、かかる観察位置座標の値に基づいて、上述したステージの位置制御を行い、第二の画像の観察位置を設定する。このようにすることで、第一の画像と第二の画像は撮影範囲を同様とすることが出来る。CPU501は、かかる第一の画像と、第二の画像を上述の通りディスプレイ502に表示させる。このようなステージ制御と、表示制御とにより、病理医は、染色状態の異なる同一の観察対象の観察を、ステージを手動で調整する手間を低減しつつ容易に行うことが出来る。
あるいは、連続切片になる形態画像と(複数の)機能染色による機能画像とを重畳して表示し、形態異型と機能変化とを比較観察することなどが可能になる。これらは、本来、病理診断として行なえれば価値があるが、従来、実現できなかった事である。
また、イメージセンサの素子の並びとステージのXY方向、スライドのXY方向を正確に一致させるので、複数の静止画像の回転ズレが解消され、観察位置の異なる複数の撮影画像を容易に合成することができる。
また、実距離を介して座標を管理できるようにしているので、座標値と実距離の関係が異なるステージ200が用いられても、観察位置を正確に特定することができる。なお、付帯情報として記録する(スライド原点基準の)観察位置の座標値に実距離を使用しても良い事は言うまでもない。その場合、上述した第1係数(ステージ200の座標値と実距離との間の変換係数)は付帯情報から省略されてもよい。また、座標値とともに、それが実距離による記述なのか、あるいは、ステージ上の距離なのかを付帯記録して置いても良い。
また、上記ではデジタルカメラ400を装着した形態を説明したが、イメージセンサ401が顕微鏡本体100に組み込まれたものであってもよい。その場合、ΔCアダプタ340による回転ズレの補正は省略可能となる。
なお、以上述べた動作フローにおいて、デジタルカメラ400が、電源起動時にカラーライブモードとなる設定を有したり、計測モード固有の画像処理をライブモードでも実現する機能を有していてもよい。また、デジタルカメラ400がいずれのライブモードからでも静止画撮像を行い、その後、自動でライブモードに戻る機能を有していてもよい。
なお、以上の動作フローにおいて、デジタルカメラでの計測モードにおける各種画像処理、CPUでの短冊幅の設定、重心計算、画角判断などの各種処理として、両者の役割分担を明記した。しかしながら、それらの処理の部分又は全部を別の装置で実現する事も可能である。
又、以上述べた実施形態では、通常サイズ(1インチx3インチ)のスライドのみを扱ったが、大サイズ(2インチx3インチ)であっても同様である事は明らかであろう。
又、以上述べた実施形態において、高倍対物レンズにおける画角判断(S206、S305)、静止画撮像(S209、S308、S401、406)等では、焦点合せが必要となる場合がある。そのような焦点合わせは上述したΔZステージ900に設けられたΔZリフトユニット910によってリフトピン914を同期駆動することで達成される。
また、原点マークなどの位置基準マークが存在しない一般的なスライドを利用した場合は、高精度なステージの原点位置となり得るクロスハッチ原点291を基準としてステージの位置管理が行われる。すなわち、クロスハッチ原点291を用いたステージ原点のXY方向位置合わせにより、クロスハッチ原点基準のXY方向の観察位置の座標管理が実現する。また、クロスハッチ原点291にフォーカスを合わせた場合のZ軸方向の位置がZ軸方向の観察位置の位置管理の基準となる。この方法によれば、X、YおよびZ初期位置マークとX、YおよびZ初期位置センサとによる機械的誤差を含むステージの初期位置を基準とする座標管理に比べて、格段に精度が向上する。このように、スライドが原点マークを有していなくても、ステージ原点(クロスハッチ原点291)により高精度に位置合わせされるため、ステージ200、ΔZステージ900、アダプタ部300(ΔCアダプタ340)による高精度な位置管理能力を生かした位置管理が可能となる。たとえば、原点マークを有していないスライドを載置したまま、ステージ200への電源がオフされ、その後再びオンされたような場合、ステップS15によりステージ原点の位置合わせが高精度に実施されるため、より精度のよい位置管理を継続することができる。
また、原点マークは存在するがフォーカス基準マークが存在しないスライドの場合は、δZ分布を測定することができない。そこで、コントローラ501は、カバーガラスエリア722の全体のδZ分布が原点マークのフォーカス位置と等しいものして、すなわちδZ(x,y)=0として位置管理を行う。
上述したように、Zリニアスケール990b、ΔZリニアスケール994b、dZリニアスケール640bによる位置管理精度は、0.1μmを実現するようにしている。100倍対物レンズでは、光学顕微鏡で観察可能な最短波長である紫外光(200nm)で、焦点深度は例えば約0.1μmであり、垂直(Z)方向の位置管理精度の目標値としてXY方向と同様に0.1μmに設定するのが妥当だからである。また、Z方向で、0.1μm精度での位置管理が実現すると、組織切片内の観察位置を0.1μmの精度で管理することが可能になる。これにより、組織切片の例えば0.1μmおきのZスタック撮影による垂直方向の画像合成(3D化)なども実現することができる。また、連続切片スライドにおいて、各スライドの同一XY位置のZ方向に0.1μmおきのZスタック撮影を行い、それらをXY方向の位置同期により重ねる事が可能となる。これにより、連続スライスにより、スライドを作製した分の厚さの組織の3D画像合成を作成することができる。即ち、それぞれのスライド内の組織画像の撮像をZスタックにて行い、連続切片に対して、夫々のスライドのZスタック画像を更に合成して行くと、スライドを作製した分の厚さの組織全体の3D画像の合成が実現する。
なお、Zスタック時において、推定したδZ分布を基に、一視野内でのあおりをdZリフトピンM1〜M3を制御して除去することにより、その視野(観察範囲)においてスライド表面に沿ったZスタックを実現することができる。この場合、コントローラ501が、推定されたδZ分布に基づいて顕微鏡本体による観察範囲におけるスライドの上面の傾きを決定する。たとえば、観察範囲内のδZ分布から平面を近似し、近似された平面の傾きを決定することによりスライド上面の傾きが得られる。コントローラ501は、こうして得られたスライド上面の傾きを解消するように、dZリフトピンを駆動し、スライドの載置面の傾きを調整する。
なお、コントローラ501のCPU511によるディスプレイ502への表示は、複数の観察対象を撮影して得られた複数の画像を同時にまたは切り換えて行うようにしてもよい。その場合に、染色状態の異なる観察対象を撮像して得られる複数の画像を表示させるようにしてもよい。あるいは、同一の検体からスライスされ取得された、スライス面と直交する方向に隣接する2の観察対象を撮像して得られる第1の画像及び第2の画像をコントローラ501のCPU511がディスプレイ502に表示させるようにしてもよい。
また、図49(a)に示されるように、カバーガラス4901の裏面(スライドの上面に対向する側)の周囲の4辺にフォーカス基準マーク4902〜4905を配置するようにしてもよい。フォーカス基準マーク4902〜4905は、スライド700のフォーカス基準マーク704〜707と同様である。フォーカス基準マーク4902〜4905を用いることにより、スライド700のδZ分布と同様に、カバーガラスの下面のδZ分布を測定することができる。これにより、図49(b)に示されるように、観察位置におけるスライド700上面のZ座標(zf1)とカバーガラス4901裏面のZ座標(zf2)を得ることができる。そして、それらの値の差異(zf2−zf1)から、観察位置における組織切片4910の厚さ(スライド面上にカバーガラスを固定する透明の封入剤の影響が含まれる)を知る事が出来る。
なお、zf1、zf2の値としては、スライド面のδZ分布、δZ1、及びカバーガラスの下面のδZ分布、δZ2を用いることにより、フォーカス基準マークが無い検体領域に対しても、組織切片4910の厚さの予想値を得ることができる。また、zf1およびzf2を、Z方向のステップ撮影(Zスタック)における、撮影の分割ステップの設定に利用することができる。たとえば、「観察に使われる対物レンズに対応する焦点深度の値(Δzf)」と「組織切片の上下端のZ座標zf2、zf1」を用いて、zf1からΔzfずつZ方向へ移動して撮影を行い、Z位置が最初にzf2を超えた位置で撮影を行い、記録した後、処理を終える。あるいは、((zf2−zf1)/Δzf)+1の整数部を分割数nとし、(zf2−zf1)/nをZ方向の分割ステップとする。そして、例えば、スライド上面(zf1)からカバーガラス下面(zf2)まで、順次、該分割ステップ毎に撮像を行い記録する。以上のように、撮影位置におけるスライドの上面の位置とカバーガラスの下面の位置が推定された分布に基づいて得られる。そして、スライドの上面の位置を下限、カバーガラスの下面の位置を上限として、Z軸方向に所定間隔ごとにデジタルカメラ400による撮影を行うことで適切なスタック撮影を行える。
以上のようにして得られた複数画像は、上述したようにXY方向に位置同期が取れているので、垂直方向に重ねることで合成が可能であって、例えば、3D画像の構築も可能となる。なお、カバーガラスのフォーカス基準マークの軸方向は、例えば、対応するスライド上のフォーカス基準マークの軸方向に対して90度異なるようにする。これにより、スライド上面のフォーカス基準マークとカバーガラス下面のフォーカス基準マークとが重なった位置になった場合でも、どちらのフォーカスユニットに焦点が合っているかが、向きの違いにより識別可能になる。また、上述したスライドの位置基準マークとフォーカス基準マークは低倍の対物レンズの画角のサイズ以上離間して配置される。また、スライドの所定位置にカバーガラスが載置された際には、スライドの基準マークとカバーガラスのフォーカス基準マークは低倍の対物レンズの画角のサイズ以上離間して配置される。
また、上述した高精度なZ位置管理の実現により、以下の様なシステム上の付加価値が提供される。たとえば、対物レンズの回転時の衝突回避のための退避(ステージ200を下方向へ下げる操作)を無用化できる。対物レンズのワーキングディスタンス(対物レンズの先端部からカバーガラスの上面までの距離)は、たとえば、4倍で13mm、10倍で3.1mm、20倍で0.6mm、40倍で180μm、油浸100倍で130μmである。ここで、Z座標の移動上限をスライド上面から10μ(検体分)+170μ(カバーガラスの最大厚)と設定することで、100倍対物の場合でも、概ね130μm−10μm=120μmほど、対物レンズとカバーガラス上面とは離れる。したがって、対物レンズの切り替え時に、対物レンズがカバーガラス上面へ衝突することは発生しない。
また、Z方向操作時、対物レンズの観察面への衝突を回避することができる。たとえば、ΔZ摘み904のユーザ操作によりZ位置を調整する場合、コントローラ501が、スライドZ原点より所定量を超えて上方へステージが移動しないようにする。或いは、Zベース130のZ位置をZ摘み125の操作により調整する場合に、ステージ200上のスライドガラスのZ位置がスライドZ原点より所定量を超えて対物レンズに近づいた場合に、警報を行うようにしてもよいし、また、移動を強制的に止めるようにしても良い。
以上では、斜行センサに関連する処理動作を含めずに説明を行ったが、本実施形態では斜行センサ273を有しており、ステージ200の位置管理の精度をより向上させている。以下、斜行センサの役割、斜行補正処理について説明する。
スライド700が載置される位置管理面ステージ220は、ステージ200のX軸及びY軸方向駆動に際し、μ台の微小な軸変動を生じる場合がある。これは、ステージ機構の微小な歪、及び、X軸及びY軸クロスローラガイドの機械加工精度に起因する微小な斜行や蛇行(複雑な斜行)に起因するものである。このようなμ台の微小な軸変動により、結果的に図45(a)に示す様な微小な回転ズレになって現れる可能性がある。
図45(a)で、2102は移動前の位置管理面ステージ220の位置、2103は回転ズレを生じた移動後の位置管理面ステージ220の位置を示す。位置2103の状態をより具体的に示したのが図45(b)である。図45(b)では、X軸センサ271及び斜行センサ273が配設されたステージベース260に対して、微小な回転ズレを含む位置管理面ステージ220の位置2104が示されている。図46(a)に、図45(b)におけるX軸センサ271と、観察視野170の中心と、観察視野170の中心を通る位置管理面ステージ220の位置2104におけるX方向の軸1105との関係を示す。
図46(a)に示されるように、軸1105は、観察視野170の中心とX軸センサ271の検知中心を通る線1106に対し垂直方向にシフトしている。本例では、X軸センサ271の検知中心において例えば垂直方向に2μmシフトとしているものとする。この垂直方向シフト量をt、このシフトによる微小な回転ズレ角をdとすると、この回転ズレに伴うX軸センサ271によるX座標の変化eは、0.025nmであり、Xセンサの分解能10nmに比べて、極めて小さく検知不能である。因みにeの計算式の例は、
d = ASIN(t/L1)、e =L1*(1-COSd)
であり、ここで、L1は観察視野170の中心とX軸センサ271の検出中心との距離であり、この例では80mmとしている。即ち、X軸センサ271は観察視野170の中心の精確な座標を得る為に観察視野170の中心を通る軸線上に配設されており、そのようなX軸センサ271では、微小な回転ズレの影響を受ける事が無く、従って微小な回転ズレを検知する事はできない。
これに対し、斜行センサ273は、観察視野170の中心を通る軸線上から離れて、X軸センサ271の垂直上方に配設されている為、回転ズレを検知する事が出来る。図46(b)は、斜行センサ273における変化量を説明する為の図である。同図でfは、回転ズレdに対する斜行センサ273におけるX座標の変化量であり、fは、X軸センサ271と斜行センサ273との距離S(同図の例では40mm)から、
f =(S2+L12)1/2 (COSD-COS(D+d))
ここで、D=ATAN(S/L1)、d = ASIN(t/L1)
により算出される。該計算式により、垂直方向に2μm(t)のシフトに対して、fは1μmとなる。これはセンサの分解能10nmに比べて十分な変化量であり、斜行センサ273によれば、位置管理面ステージ220の微小な回転ズレ角dが検知可能となる。
さて、位置管理面ステージ220が微小な回転ズレを有すると、載置されたスライド700も微小な回転ズレを有する事になり、位置2103の撮像画像は回転ズレを含む。図45(a)で示した位置2102及び位置2103におけるスライド700の撮像画像の表示画像を図47(a)に示す。図47(a)で、2107は位置2102に対する撮像画像の表示画像、2108は位置2103に対する撮像画像の表示画像である。表示画像2108は、回転ズレを有し、表示画像2107との位置座標に基づく画像合成において微小な不一致を生じる。これに伴い、表示画面とステージ200の位置の同期にも微小な回転ズレを生じる。本実施形態では、0.1μmの位置管理精度を目標としており、この回転ズレにより、所定の観察範囲(例えば、観察対象領域205)で0.1μmを超える垂直方向シフトが生じない様、斜行補正が必要となる。この回転ズレは、デジタルカメラ400の回転ズレ(ΔC)、スライド載置の際のスライド自体の回転ズレ(ΔΘ)など、所定の対象に対する一度の補正で済むものと異なり、所定のスレショルドを判定基準として、ステージの移動に応じて適宜、補正を行う事が必要である。
例えば、垂直方向シフト量t=0.1μmとして、上述の計算式より、fを計算すると、f=50nmとなる。したがって、本実施形態では、0.1μmの位置管理精度を実現するために、f=50nmを斜行補正を行うか否かのスレショルドとする。このスレショルド例は、観察視野170の中心とX軸センサ271の検出中心との距離L1が80mmの場合である。一方、原点マーク701から、スライド700の最遠端までの距離は53mm(図23(a)参照)であり、80mmより小さく、従って、スライド原点を基準とする観察視野170の中心の座標(x0−x,y−y0)は0.1μm以内の位置管理精度となる。
斜行センサ273は、例えば、XYステージの初期化時において、その座標値をゼロにリセットし、その後、コントローラは、常にX軸センサ271によるX座標値と斜行センサ273によるX座標値との差分値を変化量(f)として常に監視する。なお、変化量(f)は初期化時はゼロである。後のスライド原点の検知において、又は、クロスハッチ原点291の検知において差分値が生じた場合は、その差分値を基準値として再設定し、再設定された基準値からの斜行センサ273のX座標変化量(f)を常時監視する。そして、該変化量fがスレショルド(例えば50nm)以下に収まっている場合は、斜行無しとして上述した図27、図40〜図43の処理が行われる。一方、変化量fがスレショルドを超える場合は、斜行有りと判定され、以下に記述する斜行処理が行なわれてから、上述した図27、図40〜図43の処理が行われる。
斜行処理では、まず、fから回転ズレ角dを、逆方向の計算式、
d=ACOS(COSD-f/L2)-D、
ここでD=ATAN(S/L1)、
L2は、観察視野170の中心から斜行センサ273の検出中心との距離
により求め、表示画像2108を表示画像の中心(観察視野170の中心に対応する)を回転軸として回転ズレ角d回転する。即ち、図47(b)に示す如く、図47(a)の回転ズレを含む表示画像2108をdだけ回転し、表示画像2109とする。回転方向は、図45(a)における位置管理面ステージ220の位置2103の回転ズレとは逆の方向である。以上述べた斜行処理により、ステージ機構の微小な歪、及び、X軸及びY軸クロスローラガイドが有する微小な軸変動などにより生じる微小な回転ズレが補正され、必要な位置管理精度が担保される。
なお、他のスレショルドの例として、変化量fより得られる回転ズレ角dから、原点マーク701を基準とする観察視野170の中心位置の回転によるシフト量を計算し、X方向及びY方向シフト量が0.1μm以内である事としても良い。また、斜行補正の他の例として、斜行量がスレショルドを超えた場合は、直近のスレショルド以下の位置に移動し、そこで撮像を行い、その移動量を補正して位置同期を行っても良い。また、機械加工精度が向上し、斜行補正が行われる頻度が稀となった場合には、斜行補正を行わず、斜行検知をステージの故障検知として利用しても良い。
また、本発明の実施形態には、以下の処理を実行する装置や当該処理の方法も含まれる。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。