JP4926340B2 - ケーブル接続部のモールド構造及びモールド方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)等のケーブルの接続部のモールド構造及びモールド方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一般住宅用あるいは業務用のソーラーシステムが種々開発されている。ソーラーシステムは、例えば複数個の太陽電池セルからなる太陽電池モジュール(ソーラーパネル)を建物の屋根や屋上に複数配列し、それらをケーブル接続することによって構築されている。
【0003】
各ソーラーパネルの接続は、図15に示すように、幹線ケーブル1から分岐ケーブル2を分岐し、その分岐ケーブル2をソーラーパネル400にコネクタ401を介して接続するという方式が採られている。
【0004】
このように幹線から分岐線を分岐する場合、一般に、図16に示すように、幹線ケーブル1の導体1aに分岐ケーブル2の導体2aを端子3にて接続した後、その導体接続部(分岐部)の絶縁を確保するため、ケーブル分岐部を、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂406によってモールドしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図16に示したケーブル接続部のモールド構造によれば、端子や電線(導体+絶縁体)などの位置が固定されていないため、分岐部(導体の接続部)を成形金型内に配置して樹脂モールドを行う際に、端子や電線の位置ずれ(樹脂の偏肉)が生じ、成形完了後にモールド部表面に端子や電線などが露出して(図16(B))、防水性・絶縁性が損なわれるおそれがある。
【0006】
このような問題点を解消する方法として、従来、端子や電線の位置ずれが生じても、それら周辺の樹脂の肉厚を確保できるように、モールド部の肉厚寸法に位置ずれを吸収できるマージンを考慮して、モールド部の設計を行うという方法が採られているが、この場合、モールド部の厚み方向の寸法が大きくなる。
【0007】
他の方法として、ケーブルの接続部の樹脂モールドを行った後、そのモールド部を覆うように樹脂モールドを行ってモールド部を2重構造にするという方法も考えられるが、この場合、成形工程が2度必要となりモールドに要する工数が多くなる。また、上記した方法と同様に、モールド部の厚み方向の寸法が大きくなる。
【0008】
さらに別の方法として、ケーブルの接続部を覆う形状に成形された半割構造の中子を用い、その中子で端子等を挟み込んだ後に樹脂モールドを行うという方法もあるが、この場合、中子の部品点数が2点となる上、中子の組立工数が必要になる。しかも、中子を構成する2つの半割部品の合わせ部などに寸法精度が要求される。
【0009】
ここで、ソーラーパネルの設置においては、分岐モールド部の形状寸法、特にモールド部の厚み方向の寸法を小さくすることが要求されているが、前記したような対処方では、それを満足することが難しい。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、防水性・絶縁性に優れているとともに、モールド部がコンパクトな形状のケーブル接続部のモールド構造を提供することを目的とする。また、そのようなモールド構造を簡単に得ることのできるケーブル接続部のモールド方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ケーブルの導体同士を接続した接続部を絶縁・保護するモールド部の構造であって、位置決め用の基体片の面に、位置決め用の一対もしくは複数対の側壁片が一体形成されてなる中子が用いられており、この中子の側壁片の間に前記導体の接続部が挿入され、その接続部が基体片上に配置され、ケーブルの電線が平面的に見て重なることなく間隔を隔てて配置された状態で、導体の接続部及び中子が樹脂にてモールドされ、基体片の裏面には、中子をモールド部に対して位置決めするための板状の位置決め片が一体形成されていることによって特徴づけられる。
【0012】
本発明のモールド構造によれば、基体片と側壁片を備えた中子を用いてケーブル接続部(端子や電線など)を位置決めした状態で樹脂モールドを行っているので、端子や電線の位置ずれ(樹脂の偏肉)が生じることがなくなる。その結果、優れた防水性・絶縁性を確保することができる。
【0013】
しかも、中子の基体片上に置くだけの作業で、端子や電線などの接続部を成形金型にセットすることができるので、従来行われていた作業つまり端子などを中子に挟み込んで中子を組み立てるという作業を省略することができる。
【0014】
また、位置決め用の基体片と側壁片からなる1部品の中子を用いているので、中子の製品コストが安くつくとともに、モールド部の厚み方向の寸法を小さく抑えることも可能になる。さらに、中子の基体片上に接続部を単に配置するという簡単な構造であるので、中子の寸法精度が粗くても十分な耐水性・絶縁性を得ることができる。
【0015】
また、中子の基体片の裏面、中子をモールド部に対して位置決めするための板状の位置決め片が一体形成されている。このような位置決めを設けておくと、樹脂モールド時において中子を常に正しい位置に配置でき、中子に対する偏肉が生じるおそれがなくなる。また、このような位置決め方式を採用する場合に、中子のモールド部表面への露出量を最小限に抑えることができるという利点もある。
【0016】
本発明のモールド方法は、ケーブルの導体同士を接続した接続部をモールドする方法であって、位置決め用の基体片の面に、位置決め用の一対もしくは複数対の側壁片が一体形成されてなる中子を用い、この中子の基体片上に前記導体の接続部を配置して、基体片の裏面に形成された位置決め片を成形金型のスリット溝に差し込み、成形金型のキャビティ内の所定位置に中子を位置決めすることにより、導体の接続部をキャビティ内に位置決めし、成形金型に設けられたピンをケーブルの電線間に差し込み、この状態でキャビティ内に樹脂を注入してモールド部を成形することによって特徴づけられる。
【0017】
本発明のモールド方法によれば、基体片と側壁片を備えた中子を用いてケーブルの接続部(端子や電線など)を位置決めした状態で樹脂モールドを行っているので、端子や電線の位置ずれ(樹脂の偏肉)が生じることがなくなる。その結果、優れた防水性・絶縁性を確保することができる。
【0018】
本発明のモールド方法において、モールド部の成形時に、導体の接続部を基体片に押しつける向きに樹脂が流れるように樹脂注入を行うことが好ましい。このようにすれば、導体の接続部(端子や電線等)が基体片にて常に正しい位置に位置決めされるので、防水性・絶縁性を常に安定して確保することができる。
【0020】
なお、本発明に用いる中子の材質は、モールド樹脂と同じ樹脂、もしくはモールド樹脂と密着性の良い材料であることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、本発明を適用するCVケーブル(ソーラーパネル接続用)の分岐部の構造を図10を参照しながら説明する。
【0023】
図10の例においてケーブルの分岐は、2極の幹線ケーブル(2心)1の各シース材(PVC)1c及び電線10の絶縁体(PE)1bを剥がして、分岐接続部の導体1aを露出させる。
【0024】
次に、ソーラーパネル(図示せず)側の2本(2極)の分岐ケーブル(1心))2のうちの一方の端部のシース材(PVC)2c及び電線20の絶縁体(PE)2bを剥がして導体2aを露出させ、その導体2aを幹線ケーブル1の一方の導体1aに端子3にて接続する。また、他方の分岐ケーブル2のシース材2c及び電線20の絶縁体2bを剥がして導体2aを露出させ、その導体2aを、ダイオード4を介して幹線ケーブル1の他方の導体1aに端子3にて接続するという要領にて行う。
【0025】
本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
まず、本実施形態に用いる中子を図6及び図7を参照しながら説明する。
【0027】
中子5は、ポリエチレン(PE)などの樹脂成形品で、位置決め用の基体片51と、その基体片51の両端から立ち上がる一対の側壁片52とが一体形成されている。中子5の内面角部にはアールが加工されており、また外面角部には面取りが施されている。
【0028】
中子5の裏面(側壁片52の形成面とは反対側の面)には、中央の位置決め片53と左右一対の凸部54が一体形成されている。位置決め片53の高さ(基体片51の裏面からの突出高さ)は、各凸部54の高さよりも所定量(例えば1.5mm)だけ大きい寸法に加工されている。
【0029】
そして、本実施形態では、以上のような中子5を用い、図1〜図3に示すように、中子5の一対の側壁片52間に、図10に示したCVケーブルの分岐部(接続部)を入れ、基体片51上に配置した状態で、分岐部の端子3、電線10,20及び中子5などが樹脂(PE)にてモールドされており、そのモールド部6にて、分岐部の耐水性・絶縁性が確保されている。なお、モールド部6の外観形状を図4及び図5に示す。
【0030】
次に、図1〜図5に示したモールド構造の成形方法の具体例を、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0031】
まず、モールドに用いる成形金型7は、図8に示すように、上型71と下型72からなり、型閉め状態で上型71と下型72との間にモールド部成形用のキャビティ70が形成される。成形金型7の下型72には、図10に示す端子3同士の接触などを防止するためのピン72bが4箇所(図1に示す4つの孔6aに対応する位置)に設けられている。各ピン72bは、上型71のキャビティ70の上部にまで延びている。
【0032】
また、下型72には、前記した中子5の位置決め片53の下端部を嵌め込むためのスリット溝72aが加工されており、このスリット溝72aに中子5の位置決め片53を差し込むとともに、中子5の凸部54を下型72のキャビティ面に置くことにより、中子5がキャビティ70内の所定位置に位置決めされる。
【0033】
成形金型7の樹脂注入口7aは、上型71の略中央位置で、キャビティ70内に配置された中子5の基体片51と対向する位置(基体片51の中央上方位置)に設けられている。
【0034】
次に、具体的な成形手順を説明する。
【0035】
まず、図10に示した要領にて、2極の幹線ケーブル1の各導体1aと2本の分岐ケーブル2の各導体2aとをそれぞれ接続しておく。
【0036】
図8(A)及び(B)に示すように、導体1a、2aの接続部つまり端子3及び電線10,20の端部等を、図6に示した中子5の一対の側壁片52間に入れて基体片51上に置く。次に、中子5を成形金型7の下型72にセットする。
【0037】
このとき、中子5裏面側の位置決め片53を下型72のスリット溝72aに嵌め込み、2つの凸部54を下型72のキャビティ面に載せて、中子5を下型72に対して位置決めする。また、下型72に設けられた4本のピン72bを、幹線ケーブル1及び分岐ケーブル2の各配線10,20間に差し込んで、端子3同士の接触や、導体1a,2a同士の接触を防止しておく。
【0038】
次に、成形金型7の上型71と下型72との型閉めを行った状態で、キャビティ70内に溶融樹脂(PE)を樹脂注入口7aから注入してモールド部6を成形した後(図9(A)及び(B))、成形金型7の型開きを行う。これにより、図1〜図5に示したモールド構造を得ることができる。
【0039】
なお、この例の手順では、中子5に端子3及び電線10,20の端部等を配置した状態で、中子5を下型72にセットしているが、本発明はこれに限られることなく、中子5を下型72にセットした後に、端子3及び電線10,20の端部等を中子5に配置するようにしてもよい。
【0040】
ここで、本発明に用いる中子としては、図6に示した形状に限られることなく、様々な形状を考えることができる。そのいくつかの例を図11、図12及び図13に示す。
【0041】
図11(A)の例は、図6に示した中子5の構成に加えて、中子5の上部開放部を塞ぐ蓋体150を設けたものであり、図11(B)の例は、そのような蓋体150を中子105の側壁片152の先端部に一体形成した点に特徴がある。
【0042】
図11(C)の例は、一対の側壁片252の間の中央位置に仕切片255を設けるとともに、それら側壁片252及び仕切片255の先端部に、端子抜け止め用の係止爪252a,255aを形成したところに特徴がある。
【0043】
図11(D)の例は、中子305の縦断面形状を略H形としたところに特徴がある。このように中子305の形状を略H形とすると、基体片351の表裏の一方側に形成された一対の片352,352を側壁片とし、他方側に形成された一対の片353,353を位置決め片として使用することができ、また、その逆の形態の使用法、つまり基体片351の他方側に形成された一対の片353,353を側壁片とし、一方側に形成された一対の片352,352を位置決め片として使用することができる。
【0044】
図12の例は、前記した図11(A)の構造(蓋体150付き)に加えて、一対の側壁片452,452の各側面に、それぞれ外方に向けて突出する位置決め片455,455を一体形成したところに特徴がある。このように側壁片452,452に位置決め片455,455を設けておくと、モールド時において位置決め片455,455を、成形金型107の上型171と下型172との間に挟み込むことにより、中子405の上下方向(基体片51と直交する方向)の位置を固定することができるので、中子405の位置決めを更に正確に行うことができる。
【0045】
図13の例は、前記した図11(A)の構造(蓋体150付き)において、位置決め片53の構成に替えて、基体片551の底面の中央部に、位置決め用凹部551aを設けたところに特徴がある。この例の場合、成形金型207の下型272に、中子505側の位置決め用凹部551aに嵌まり合う突起部272aを設けるとともに、上型271に、中子505の上下方向(基体片551と直交する方向)の位置を規制する突起部271aを設けることにより、中子505を成形金型207に対して正確に位置決めすることができる。
【0046】
なお、図12及び図13の中子405,505において、図11(B)の例のように、蓋体150,150を中子405,505の側壁片452,552の先端部に一体形成しておいてもよい。
【0047】
以上の実施形態では、中子に一対の側壁片を設けた例を示しているが、本発明はこれに限られることなく、1つの中子に対して複数対の側壁片を設けておいてもよい。
【0048】
本発明は、図10に示したようなケーブルの分岐部のモールドに限られることなく、例えば図14に示すように、1心の幹線ケーブル101と分岐ケーブル102との接続部のモールドなど、他の任意の接続形態のケーブル分岐部に適用することができる。
【0049】
本発明は、太陽電池モジュールの接続に用いるCVケーブルの分岐部のモールドほか、融雪瓦用モジュールあるいはテープヒータ用モジュールなどの電気機器の接続等に用いる各種ケーブルの接続部のモールドにも適用できる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基体片と一対の側壁片を備えた中子を用いてケーブルの接続部を位置決めした状態で樹脂モールドを行っているので、端子や電線の位置ずれが生じることがなくなる。その結果、優れた防水性・絶縁性を常に安定して確保することができる。また、モールド部の厚み方向の寸法を小さく抑えることも可能になる。さらに、中子が安価であり、樹脂モールドに要する工数も少なくて済むので、コストダウンを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の水平断面図である。
【図2】本発明の実施形態の縦断面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】本発明の実施形態の平面図(A)、側面図(B)及び裏面図(C)である。
【図5】図4のY矢視図である。
【図6】本発明の実施形態に用いる中子の正面図(A)、側面図(B)及び底面図(C)である。
【図7】図6に示す中子の中央縦断面図である。
【図8】図1〜図5に示す実施形態の成形方法の説明図である。
【図9】同じく成形方法の説明図である。
【図10】ケーブル分岐部の一例を模式的に示す図である。
【図11】中子の変形例を示す図である。
【図12】中子の変形例を示す図である。
【図13】中子の変形例を示す図である。
【図14】ケーブル分岐部の他の例を模式的に示す図である。
【図15】ソーラーパネルとケーブルとの接続例を示す模式図である。
【図16】ケーブル分岐部のモールド構造の従来例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 幹線ケーブル(CVケーブル)
10 電線
1a 導体
1b 絶縁体
1c シース材
2 分岐ケーブル(CVケーブル)
20 電線
2a 導体
2b 絶縁体
2c シース材
3 端子
4 ダイオード
5 中子
51 基体片
52 側壁片
53 位置決め片
54 凸部
6 モールド部
7 成形金型
70 キャビティ
71 上型
72 下型
72a スリット溝
72b ピン

Claims (3)

  1. ケーブルの導体同士を接続した接続部を絶縁・保護するモールド部の構造であって、
    位置決め用の基体片の表面に、位置決め用の一対もしくは複数対の側壁片が一体形成されてなる中子が用いられており、この中子の側壁片の間に前記導体の接続部が挿入され、その接続部が基体片上に配置され、ケーブルの電線が平面的に見て重なることなく間隔を隔てて配置された状態で、導体の接続部及び中子が樹脂にてモールドされ、前記基体片の裏面には、前記中子を前記モールド部に対して位置決めするための板状の位置決め片が一体形成されていることを特徴とするケーブル接続部のモールド構造。
  2. ケーブルの導体同士を接続した接続部をモールドする方法であって、
    位置決め用の基体片の面に、位置決め用の一対もしくは複数対の側壁片が一体形成されてなる中子を用い、この中子の基体片上に前記導体の接続部を配置して、前記基体片の裏面に形成された板状の位置決め片を成形金型のスリット溝に差し込み、前記成形金型のキャビティ内の所定位置に前記中子を位置決めすることにより、導体の接続部を成形金型のキャビティ内に位置決めし、成形金型に設けられたピンをケーブルの電線間に差し込み、この状態でキャビティ内に樹脂を注入してモールド部を成形することを特徴とするケーブル接続部のモールド方法。
  3. モールド部の成形時において、導体の接続部を基体片に押しつける向きに樹脂が流れるように、樹脂注入を行うことを特徴とする請求項記載のケーブル接続部のモールド方法。
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