JP4926061B2 - イソプレノイド化合物の産生を促進する方法 - Google Patents

イソプレノイド化合物の産生を促進する方法 Download PDF

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Description

相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2004年5月21日に出願された米国仮特許出願第60/573,492号の利益を主張する。
連邦政府資金による研究に関する記述
米国政府は、米国立科学財団から供与された助成金番号BES-9911463、および海軍研究事務所から供与された助成金番号FDN00014-99-0182に従って、本発明に一定の権利を有する場合がある。
発明の分野
本発明は、イソプレノイド化合物の産生、および特にイソプレノイド化合物を産生するように遺伝的に修飾された宿主細胞の領域に関する。
発明の背景
イソプレノイドは、共通の生合成起源、すなわち1つの代謝前駆体であるイソペンテニル二リン酸(IPP)を有する、極めて多種多様な一群の天然産物を含む。少なくとも20,000種類のイソプレノイドの存在が明らかにされている。定義上、イソプレノイドは、いわゆるイソプレン(C5)単位から作られる。イソプレノイド中に存在するC原子の数は、典型的には5で割り切れる数(C5、C10、C15、C20、C25、C30、およびC40)であるが、不規則なイソプレノイドおよびポリテルペンが報告されている。イソプレノイド化合物は、「テルペン」または「テルペノイド」とも呼ばれる。イソプレノイドの重要な成員は、カロテノイド、セスキテルペノイド、ジテルペノイド、およびヘミテルペンを含む。カロテノイドは例えば、多くが酸化防止剤として機能する、リコピン、β-カロテンなどを含む。セスキテルペノイドは例えば、抗マラリア活性を有する化合物であるアルテミシニンを含む。ジテルペノイドは例えば、癌の化学療法剤であるタキソールを含む。
イソプレノイドは、非常に数多くの、かつ構造的に多様なファミリーの天然産物を含む。このファミリーのなかでは、植物および他の天然供給源から単離されるテルペノイドは、市販の香料および芳香剤、ならびに抗マラリア薬および抗癌剤として使用されている。今日、使用されているテルペノイド化合物の大半は、天然産物またはこの誘導体である。これらの天然産物の多くの供給源となる生物(例えば、樹木、海洋無脊椎動物)は、商業的に意味のある量の産生に必要な大規模培養にも、このような化合物の産生または誘導体化を高めるための遺伝的操作にも適していない。したがって、天然産物は、類似体から半合成的に、または従来の化学合成法で合成的に製造されなければならない。さらに、多くの天然産物は複雑な構造を有し、結果的に、現時点で経済的ではないか、または合成が不可能である。このような天然産物は、樹木、海綿、サンゴ、および海洋微生物などの、その天然供給源から抽出するか;または、より多量に存在する前駆体から合成的もしくは半合成的に製造するしかない。天然供給源からの天然産物の抽出は、天然供給源の利用可能性によって制限されており;ならびに天然産物の合成または半合成による製造には低収量および/または高費用という難点がある。こうした製造上の問題、および天然供給源の利用可能性の限界は、このような産物の商業的開発および臨床開発を制限していると言える。
改変微生物におけるイソプレノイドの天然産物の生合成は、このような天然資源では実現化されない商業的および治療的な可能性を拓き、および、より安価で、かつ、より広く利用可能な精製化学製品および薬物が得られる可能性がある。高レベルのテルペノイド生合成に対する主な問題は、テルペン前駆体の産生である。過去の研究では、メバロン酸経路を大腸菌で発現させると、商業的価値のあるイソプレノイドおよびテルペンへの異性体化および重合化が可能なイソペンテニルピロリン酸(IPP)の産生が可能となることが明らかにされている。イソプレノイドの産生に向けた微生物代謝の最適な方向転換には、導入された生合成経路が、炭素をIPPに効率的に供給し、かつ毒性を示す恐れのある中間体を蓄積をさせないように適切に改変されることが必要である。実際に、メバロン酸産生酵素の発現は、細胞成長を阻害する可能性があり、および微生物培養の生産性を制限し得ることが報告されている。IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、およびテルペンシンターゼの非存在下におけるメバロン酸経路の発現による、過去に報告された成長阻害が、毒性レベルのIPPの蓄積を招くことが示唆されている。
当技術分野では、頑健な宿主細胞の成長、ならびにイソプレノイド化合物、およびこのような化合物のポリプレニル二リン酸前駆体の高レベルの産生の両方を可能とする、イソプレノイドを産生する、またはイソプレノイド前駆体を産生する、改善された宿主細胞が求められている。本発明は、こうしたニーズについて説明し、関連する利点について言及する。
文献
米国特許公開第2004/005678号;米国特許公開第2003/0148479号;Martin et al.(2003) Nat. Biotech. 21(7): 796-802;Polakowski et al.(1998) Appl. Microbiol. Biotechnol. 49: 67-71;Wilding et al.(2000) J Bacteriol 182(15): 4319-27;米国特許公開第2004/0194162号;Donald et al.(1997) Appl. Env. Microbiol. 63: 3341-3344;Jackson et al.(2003) Organ. Lett. 5: 1629-1632;米国特許公開第2004/0072323号;米国特許公開第2004/0029239号;米国特許公開第2004/0110259号;米国特許公開第2004/0063182号;米国特許第5,460,949号;米国特許公開第2004/0077039号;米国特許第6,531,303号;米国特許第6,689,593号;Hamano et al.(2001) Biosci. Biotechnol. Biochem. 65: 1627-1635;T. Kuzuyama.(2004) Biosci. Biotechnol. Biochem. 68(4): 931-934;T. Kazuhiko.(2004) Biotechnology Letters. 26: 1487-1491;Brock et al.(2004) Eur J. Biochem. 271: 3227-3241;Choi, et al.(1999) Appl. Environ. Microbio. 65 4363-4368;Parke et al., (2004) Appl. Environ. Microbio. 70: 2974-2983;Subrahmanyam et al.(1998) J. Bact. 180: 4596-4602;Murli et al.(2003) J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 30: 500-509。
発明の概要
本発明は、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を、遺伝的に修飾された宿主細胞で産生させる方法を提供する。この方法は一般に、細胞内のヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)のレベルを、HMG-CoAのレベルが、細胞に毒性を示さないか、および/または細胞成長を実質的に阻害しないが、メバロン酸、IPP、およびイソプレノイドもしくはイソプレノイドの経路の他の下流産物、例えばポリプレニル二リン酸化合物およびイソプレノイド化合物の高レベルの産生を可能とするレベルで維持されるように調節する段階を含む。本発明はさらに、本発明の方法における使用に適した、遺伝的に修飾された宿主細胞を提供する。本発明はさらに、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む組換え核酸コンストラクトを含む、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞、およびこれを含む組換えベクター(例えば組換え発現ベクター)の作製に使用される組換え核酸コンストラクトを提供する。本発明はさらに、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和を可能とするHMG-CoA還元酵素(HMGR)の変種をコードする核酸を同定する方法を提供する。本発明はさらに、HMG-CoAの細胞内蓄積を減少させる薬剤を同定する方法を提供する。
定義
「イソプレノイド」、「イソプレノイド化合物」、「テルペン」、「テルペン化合物」、「テルペノイド」、および「テルペノイド化合物」という表現は、本明細書で互換的に使用される。イソプレノイド化合物は、さまざまな数の、いわゆるイソプレン(C5)単位から作られる。イソプレノイド中に存在するC原子の数は典型的には、5で割り切れる数(例えばC5、C10、C15、C20、C25、C30、およびC40)である。不規則なイソプレノイドおよびポリテルペンが報告されており、これらも「イソプレノイド」の定義に含まれる。イソプレノイド化合物は、モノテルペン、セスキテルペン、トリテルペン、ポリテルペン、およびジテルペンを含むがこれらに限定されない。
本明細書で用いる「プレニル二リン酸」という表現は、「プレニルピロリン酸」と互換的に使用され、1つのプレニル基を有するモノプレニル二リン酸(例えばIPPおよびDMAPP)、ならびに2つまたはこれ以上のプレニル基を含むポリプレニル二リン酸を含む。モノプレニル二リン酸は、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、およびその異性体であるジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)を含む。
本明細書で用いる「テルペンシンターゼ」という表現は、テルペノイド化合物が産生されるように、IPP、DMAPP、またはポリプレニルピロリン酸を酵素的に修飾する任意の酵素を意味する。「テルペンシンターゼ」という表現は、プレニル二リン酸のイソプレノイドへの変換を触媒する酵素を含む。
「ピロリン酸」という用語は、本明細書で「二リン酸」と互換的に使用される。したがって、例えば「プレニル二リン酸」および「プレニルピロリン酸」という表現は互換的に使用可能であり;「イソペンテニルピロリン酸」および「イソペンテニル二リン酸」という表現は互換的に使用可能であり;「ファルネシル二リン酸」および「ファルネシルピロリン酸」という表現などは互換的に使用可能である。
「メバロン酸経路」または「MEV経路」という表現は、本明細書で、アセチル-CoAをIPPに変換する生合成経路を意味するように使用される。メバロン酸経路は、以下の段階を触媒する酵素を含む:(a)アセチル-CoAの2つの分子をアセトアセチル-CoAに縮合させる段階;(b)アセトアセチル-CoAとアセチル-CoAを縮合させてHMG-CoAを生成させる段階;(c)HMG-CoAをメバロン酸に変換する段階;(d)メバロン酸をメバロン酸5-リン酸にリン酸化する段階;(e)メバロン酸5-リン酸をメバロン酸5-ピロリン酸に変換する段階;および(f)メバロン酸5-ピロリン酸をイソペンテニルピロリン酸に変換する段階。メバロン酸経路を図2に図解的に示す。メバロン酸経路の「前半部」とは、アセチル-CoAのメバロン酸への、MEV経路中間体を介した変換に関与する酵素群を意味する。
「1-デオキシ-D-キシルロース5-二リン酸経路」または「DXP経路」という表現は本明細書で、グリセルアルデヒド-3-リン酸およびピルビン酸をIPPおよびDMAPPに、DXP経路中間体を介して変換する経路を意味するように使用され、DXP経路は、図3に図解的に記載された反応を触媒する酵素群を含む。
本明細書で用いる「プレニルトランスフェラーゼ」という表現は、「イソプレニル二リン酸シンターゼ」という表現と互換的に使用され、および「ポリプレニルシンターゼ」(例えば「GPPシンターゼ」、「FPPシンターゼ」、「OPPシンターゼ」など)という表現は、さまざまな鎖長のプレニル二リン酸を生成する、イソペンテニル二リン酸とアリルのプライマー基質の連続的な1'-4縮合を触媒する酵素を意味する。
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」および「核酸」という表現は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのポリマー状のヌクレオチドを意味する。したがって、この表現は、1本鎖、2本鎖、または多重鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリン塩基およびピリミジン塩基、または他の天然のヌクレオチド塩基、化学的に、もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含むが、これらに限らない。
本明細書で用いる「オペロン」および「1転写単位」という表現は、1つもしくは複数の制御エレメント(例えばプロモーター)によって協調的に調節される、2つまたはこれ以上の隣接コード領域(RNAもしくはタンパク質などの遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列)を意味するように互換的に使用される。本明細書で用いる「遺伝子産物」という表現は、DNAにコードされるRNA(もしくはこの逆)、またはRNAもしくはDNAにコードされるタンパク質を意味し、遺伝子は典型的には、タンパク質をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含み、ならびにイントロンおよび他の非コードヌクレオチド配列を含む場合もある。
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という表現は本明細書で互換的に使用され、ならびにコードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾もしくは誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む場合のある任意の長さのポリマー状のアミノ酸を意味する。
核酸、細胞、または生物体について言われる、本明細書で用いる「天然の」という表現は、天然の状態で存在する核酸、細胞、または生物体を意味する。例えば、天然の供給源から単離され可能であって、および実験室において人間の手によって意図的に修飾されていない生物体(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は天然の配列である。
本明細書で用いる「異種核酸」という表現は、以下の事項の少なくとも1つが真である核酸を意味する:(a)核酸が、(すなわち天然の状態でない状態で見出される)任意の宿主微生物または宿主細胞に対して外来性である(「外因性(exogenous)」である)こと;(b)核酸が、任意の宿主微生物もしくは宿主細胞に対して天然の状態で見出される(例えば「内因的」である)ヌクレオチド配列を含む(例えば核酸が、宿主微生物もしくは宿主細胞に内因的なヌクレオチド配列を含む)こと;しかしながら、異種核酸に関しては、内因的に見出される同じヌクレオチド配列は、細胞内で非天然の量(例えば、推定量よりも多いか、もしくは天然の状態で見出される量より多い量)で産生されるか、または配列が、内因性のヌクレオチド配列とは異なるが、内因的に見出されるような(同じか、もしくは実質的に同じアミノ酸配列を有する)同じタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸が、細胞内で非天然の量(例えば、推定量より多いか、もしくは天然の状態で見出される量より多い量)で産生される量であること;(c)核酸が、天然の状態における関係と相互に同じ関係で見出されない2つもしくはこれ以上のヌクレオチド配列を含むこと、例えば核酸が組換え型である場合こと。異種核酸の一例は、内因性(天然)のHMGRのコード配列が通常は使用可能に連結されていない転写制御エレメント(例えばプロモーター)に使用可能に連結されたHMGRをコードするヌクレオチド配列である。異種核酸の別の例は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む高コピー数のプラスミドである。異種核酸の別の例は、HMGRを通常産生しない宿主細胞がHMGRをコードする核酸で遺伝的に修飾されている、HMGRをコードする核酸である;HMGRのコード核酸は、天然の状態では宿主細胞中に見出されないので、このような核酸は、遺伝的に修飾された宿主細胞に対して異種である。
本明細書で用いる「組換え体」は、特定の核酸(DNAもしくはRNA)が、天然の系に見出される内因性の核酸とは区別される、構造的なコード配列もしくは非コード配列を有するコンストラクトを生じるクローニング段階、制限酵素処理段階、および/または連結段階のさまざまな組み合わせの産物であることを意味する。一般に、構造的なコード配列をコードするDNA配列は、細胞に、または無細胞の転写系および翻訳系に含まれる組換え転写単位から発現され得る合成核酸を提供するように、cDNA断片および短いオリゴヌクレオチドリンカーから、または一連の合成オリゴヌクレオチドから集合させることができる。このような配列は、典型的には真核生物の遺伝子中に存在する内部の非翻訳配列すなわちイントロンによって分断されていないオープンリーディングフレームの状態で提供され得る。重要な配列を含むゲノムDNAも、組換え遺伝子または転写単位の生成に使用することができる。翻訳されないDNAの配列が、オープンリーディングフレームの5'側または3'側に位置する場合があり、このような配列は、コード領域の操作または発現に干渉せず、および実際には、さまざまな機構によって所望の産物の産生を調節するように作用する可能性がある(以下の「DNA調節配列」を参照)。
したがって例えば、「組換え体」のポリヌクレオチドまたは核酸という表現は、天然ではないポリヌクレオチドまたは核酸、例えば2つの通常は別個の配列セグメントの、ヒトの介入による人工的な組み合わせによって作られるポリヌクレオチドまたは核酸を意味する。このような人工的な組み合わせはしばしば、化学合成手段によって、または単離された核酸セグメントの人工的な操作によって、例えば遺伝子工学的手法のいずれかによって達成される。これは通常、コドンを同じアミノ酸か、または保存的なアミノ酸をコードする縮重コドンと、典型的には配列認識部位を導入もしくは除去しながら置き換えるように実施される。または、所望の機能を有する核酸セグメントをまとめて連結することで、機能の所望の組み合わせを生じさせることが行われる。このような人工的な組み合わせは、しばしば、化学合成手段によって、または単離された核酸セグメントの人工的な操作によって、例えば遺伝子工学的手法のいずれかによって達成される。
「コンストラクト」は、特定のヌクレオチド配列(群)を発現させる目的で作製された組換え核酸、一般的には組換えDNAを意味するほか、他の組換えヌクレオチド配列の構築に使用される。
本明細書で用いる「外因性核酸」という表現は、天然の任意の細菌、生物体、または細胞には通常または天然の状態では見出されない核酸か、および/または天然の任意の細菌、生物体、または細胞では作られない核酸を意味する。本明細書で用いる「内因性核酸」という表現は、天然の状態で、天然の任意の細菌、生物体、もしくは細胞に通常見出される核酸か、および/または天然の任意の細菌、生物体、もしくは細胞で作られる核酸を意味する。「内因性核酸」は、「天然の核酸」、すなわち任意の細菌、生物体、または細胞に対して「天然である」核酸とも表記される。例えば、実施例1における、HMGS、メバロン酸キナーゼ、およびホスホメバロン酸キナーゼをコードする核酸は、大腸菌に対して外因性の核酸である。このようなメバロン酸経路の核酸は、出芽酵母(Sacchromyces cerevisiae)からクローニングされた。出芽酵母では、染色体上にHMGS、MK、およびPMKをコードする遺伝子配列は「内因性」の核酸である。
本明細書で互換的に使用される、「DNA調節配列」、「制御エレメント」、および「調節エレメント」という表現は、宿主細胞におけるコード配列の発現、および/またはコードされたポリペプチドの産生を可能とするか、および/または調節するプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの、転写および翻訳の制御配列を意味する。
「形質転換」という表現は、本明細書で「遺伝的修飾」と互換的に使用され、新しい核酸(すなわち細胞に対して外因性のDNA)の導入によって細胞内で誘導される恒久的または一過的な遺伝的変化を意味する。遺伝的変化(「修飾」)は、新しいDNAを宿主細胞のゲノム中に組み入れることによる、またはエピソームエレメントとしての新しいDNAの一過的もしくは安定な維持による、いずれかによって達成可能である。細胞が真核細胞の場合、恒久的な遺伝的変化は一般に、細胞のゲノムへのDNAの導入によって達成される。原核細胞の場合、恒久的な変化は、染色体中に、または組換え宿主細胞内における維持を目的とする1つもしくは複数の選択マーカーを含む場合があるプラスミドおよび発現ベクターなどの染色体外エレメントを介して導入され得る。
「使用可能に連結された」という表現は、記載された成分が、意図された様式における機能を可能とする関係性をもって並置されることを意味する。例えばプロモーターは、仮にプロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合に、コード配列に使用可能に連結されている。本明細書で用いる、「異種プロモーター」および「異種制御領域」という表現は、天然の状態で特定の核酸とは通常は結合していないプロモーターおよび他の制御領域を意味する。例えば、「コード領域に対して異種である転写制御領域」は、天然の状態では、通常はコード配列と結合していない転写制御領域である。
本明細書で用いる「宿主細胞」は、インビボまたはインビトロにおける真核細胞、原核細胞、または単細胞体として培養された多細胞生物に由来する細胞(例えば細胞系列)を意味し、真核細胞もしくは原核細胞は、核酸(例えば、メバロン酸経路の遺伝子産物などの生合成経路の1つもしくは複数の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター)のレシピエントとして使用可能であるか、または使用されたことがあり、および核酸によって遺伝的に修飾された当初の細胞の子孫を含む。1つの細胞の子孫は、形態に関して、またはゲノム中において、または総DNA相補物が、天然の変異、偶発的な変異、もしくは過失による変異のために、当初の親と必ずしも完全に同一である必要はない可能性があると理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝的に修飾された宿主細胞」とも呼ばれる)は、異種核酸、例えば発現ベクターが導入された宿主細胞である。例えば、本発明の原核宿主細胞は、原核宿主細胞に対して異物である(通常は天然には見出されない)異種核酸、例えば外因性核酸、または原核宿主細胞には通常は見出されない組換え核酸の、適切な原核宿主細胞への導入によって遺伝的に修飾された原核宿主細胞(例えば細菌)であり;および、本発明の真核宿主細胞は、異種核酸、例えば真核宿主細胞に対して異物である外因性核酸、または真核宿主細胞には通常は見出されない組換え核酸の、適切な真核宿主細胞への導入によって遺伝的に修飾された真核宿主細胞である。
本明細書で用いる「単離された」という表現は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞が、天然の状態で存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞とは異なる環境中に存在することを意味する。単離された遺伝的に修飾された宿主細胞は、遺伝的に修飾された宿主細胞の混合集団中に存在する場合がある。
発現カセットは、転写開始領域(群)または転写制御領域(群)(例えばプロモーター)、対象タンパク質のコード領域、および転写終結領域を含むように作製することができる。転写制御領域は、遺伝的に修飾された宿主細胞における対象タンパク質の過剰発現を可能とする領域;誘導薬剤が培地に添加された場合に、対象タンパク質のコード領域の転写が誘導されるか、または誘導前の状態より高いレベルに上昇するような、誘導的な発現を可能とする領域を含む。
核酸は、1本鎖型の核酸が、温度および溶液のイオン強度が適切な条件で他の核酸とアニーリング可能な場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(1989)、特に第11章および同章の表11.1;ならびにSambrook, J. and Russell, W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(2001)に例示されている。温度およびイオン強度の条件が、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシーの条件は、遠縁の生物に由来する相同配列などの、類似性が中程度の断片から、近縁の生物に由来する機能性酵素を重複する遺伝子などの類似性の高い断片のスクリーニングを行うために調整できる。ハイブリダイゼーションの条件、およびハイブリダイゼーション後の洗浄は、ハイブリダイゼーションについて望ましいと決定されたストリンジェンシー条件を得るために有用である。1組の説明目的のハイブリダイゼーション後の洗浄は、6xSSC(SSCは0.15 M NaClおよび15 mMクエン酸の緩衝液)、0.5% SDSによる室温で15分間の洗浄で開始され、これに続く2xSSC、0.5% SDSによる45℃で30分間の反復と、これに続く0.2xSSC、0.5% SDSによる50℃で30分間の2回の反復を行う一連の洗浄である。他のストリンジェントな条件は、洗浄が上記の洗浄と、0.2xSSC、0.5% SDSで2回行う最後の30分間の洗浄における温度を60℃に上昇させる以外は同一である、より高い温度を使用することによって得られる。別の一連の高ストリンジェント条件では、0.1xSSC、0.1% SDSによる65℃における2回の最終洗浄を行う。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、50℃またはこれ以上における、0.1xSSC(15 mM塩化ナトリウム/1.5 mMクエン酸ナトリウム)によるハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、50%ホルムアミド、5xSSC(150 mM NaCl、15 mMクエン酸三ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5xデンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中における42℃で一晩のインキュベーションと、これに続く0.1xSSCによる約65℃におけるフィルターの洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、およびハイブリダイゼーション後の洗浄の条件は、上記の代表的条件と少なくともほぼ同等にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件およびハイブリダイゼーション後の洗浄の条件である。
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間のミスマッチが生じ得る。核酸をハイブリダイズさせる際の適切なストリンジェンシーは、当技術分野で周知の変数である、核酸の長さ、および相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高くなるほど、このような配列を有する核酸のハイブリッドの溶解温度(Tm)の値は大きくなる。核酸のハイブリダイゼーションの相対安定性(より高いTmに対応する)は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAの順に低下する。長さが100ヌクレオチドを上回るハイブリッドに関しては、Tmを計算する方程式が導かれている(前掲のSambrook et al.の9.50〜9.51を参照)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに関しては、ミスマッチの位置が、より重要となり、およびオリゴヌクレオチドの長さが、その特異性を決定する(前掲のSambrook et al.の11.7〜11.8を参照)。典型的には、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の説明目的の最短の長さは:少なくとも約15ヌクレオチド;少なくとも約20ヌクレオチド;および少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに当業者であれば、温度および洗浄液の塩濃度が、必要に応じて、プローブ長などの因子に応じて調節可能なことを理解するであろう。
「保存的アミノ酸置換」という表現は、類似の側鎖を有する、タンパク質のアミノ酸残基の可換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有する一群のアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンからなり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有する一群のアミノ酸はセリンおよびトレオニンからなり;アミド含有側鎖を有する一群のアミノ酸はアスパラギンおよびグルタミンからなり;芳香族側鎖を有する一群のアミノ酸はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンからなり;塩基性側鎖を有する一群のアミノ酸はリシン、アルギニン、およびヒスチジンからなり;ならびに硫黄含有側鎖を有する一群のアミノ酸はシステインおよびメチオニンからなる。例示的な保存的アミノ酸置換のグループは、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。
「合成核酸」は、当業者に既知の手順で化学的に合成されるオリゴヌクレオチドの構成要素から集合させることができる。このような構成要素は、連結され、およびアニーリングされて、遺伝子セグメントを形成し、これが後に、酵素的に集合されて遺伝子全体を構築する。DNAの配列に関して、「化学的に合成された」という表現は、成分ヌクレオチドがインビトロで集合されたことを意味する。DNAのマニュアルの化学合成は、十分に確立された手順で達成することが可能であるほか、いくつかの市販の装置の1つを使用した自動化学合成を実施することができる。核酸のヌクレオチド配列は、宿主細胞のコドンの偏りを反映するようなヌクレオチド配列の最適化を元に、最適に発現されるように修飾され得る。当業者であれば、仮にコドン使用に関して、宿主が好むコドンにバイアスがある場合に、良好な発現の可能性が高くなることを理解する。好ましいコドンの決定は、配列情報が利用可能な宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づく場合がある。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して、ある程度のパーセント「配列同一性」を有する。つまり、アライメントさせたときに、2つの配列を比較した時に、塩基またはアミノ酸のパーセンテージが同じであり、および同じ相対位置で同じであることになる。配列の類似性は多種多様な手段で決定できる。配列同一性を決定するためには、配列を、ワールドワイドウェブ(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)経由で入手可能な、BLASTを含む方法およびコンピュータプログラムでアライメントさせることができる。これについては例えば、Altschul et al.(1990), J Mol. Biol. 215: 403-10を参照されたい。別のアラインメントアルゴリズムに、Oxford Molecular Group, Inc.の完全子会社であるGenetics Computing Group(GCG)(米国ウィスコンシン州マジソン)のパッケージとして入手可能なFASTAがある。アラインメントの他の手法は、Methods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc., a division of Harcourt Brace & Co., San Diego, California, USAに記載されている。特に関心が寄せられるのは、配列中のギャップを許容するアラインメントプログラムである。スミス-ウォーターマン(Smith-Waterman)の方法は、配列アライメント中のギャップを許容する1つのタイプのアルゴリズムである。これについては、Meth. Mol. Biol. 70: 173-187(1997)を参照されたい。ニードルマン(Needleman)およびワンチ(Wunsch)のアラインメント法を使用するGAPプログラムも配列のアライメントに利用可能である。J. Mol. Biol. 48: 443-453(1970)を参照されたい。
本発明を詳述する前に、本発明が、記載された特定の態様に制限されることなく、変化するのは言うまでもないことを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、本明細書で使用される用語・表現が、特定の態様を説明することのみを目的としており、制限する意図はないことも理解されたい。
数値の範囲が示される場合、文中で特に断らない限り、個々の介在する値は、下限の単位の10分の1まで、対象範囲の上限と下限の間、および任意の他の指定された値または指定された範囲の介在値が、本発明に含まれることを理解されたい。このような、より小さな範囲の上限および下限は、より小さな範囲に独立に含まれる場合があり、かつ指定された範囲内の任意の特異的に除外される限界に従って本発明にも含まれる。指定された範囲が、限界の一方または両方を含む場合、このような含まれる限界の一方または両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
文中で特に断らない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される用語と同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と同等または等価である任意の方法および材料は、本発明の実施または検討に使用することもできるが、好ましい方法および材料について以下に述べる。本明細書で言及された全ての出版物は、引用される出版物に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書で用いられるように、および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形の「1つの」、および「その」は、文中で明記しない限り、複数の対象を含むことに注意しなければならない。したがって例えば、「遺伝的に修飾された宿主細胞」と記載する場合、複数の対象宿主細胞を含み、ならびに「HMG-CoA還元酵素」と表現する場合、1つもしくは複数のHMG-CoA還元酵素および当業者に既知のその等価物の対象などを含む。クレームが任意の要素を除外するように記載されている可能性があることにも注意されたい。したがって、この表現は、クレーム項と関連して、「〜だけ」、「〜のみ」などといった排他的な表現の使用、または「負の」制限の使用に関する先行的な基礎であることを意味することが意図される。
本明細書に記載された出版物は、説明目的でのみ本出願の出願日に先立って提供される。本発明は、先行発明により、それらの開示を事前の日付にする権利を有することを了承したものとして制限されない。さらに、提供された公開日は、独立した確認の必要のある場合のある実際の公開日とは異なる場合がある。
発明の詳細な説明
本発明は、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生に有用な、遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMG-CoAの阻害的な蓄積を減じる方法、およびこのような宿主細胞において、この毒性を除去することでイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生を高める方法を提供する。こうした方法は一般に、宿主細胞におけるヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)のレベルを、HMG-CoAのレベルが宿主細胞に毒性を示さないか、および/または宿主細胞の細胞の成長を実質的に阻害しないように調節する段階を含む。本発明はさらに、本発明の方法における使用に適した、遺伝的に修飾された宿主細胞を提供する。本発明はさらに、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞の作製に使用される組換え核酸コンストラクトを提供する。本発明はさらに、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和をもたらす変種HMGRポリペプチドを同定する方法を提供する。この方法は一般に、試験HMGR変種が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞毒性に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。本発明はさらに、HMGSの阻害剤を同定する方法を提供する。この方法は一般に、試験化合物が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞毒性に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。
本発明は部分的には、メバロン酸経路の中間体であるHMG-CoAが、遺伝的に修飾された微生物宿主中に蓄積してイソプレニルピロリン酸(IPP)またはIPP前駆体をメバロン酸経路を介して産生すると毒性を示すという予想外の観察に基づく。この観察は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸によって形質転換された(「遺伝的に修飾された」)宿主細胞(例えば宿主微生物)におけるイソプレノイド化合物(および/またはメバロン酸、IPP、およびポリプレニル二リン酸などの前駆体)の産生の増加の検討によってなされた。メバロン酸経路の酵素群を図2に示す。メバロン酸経路は、以下の酵素反応を含む:(a)アセチル-CoAの2つの分子がアセトアセチル-CoAに縮合する反応;(b)アセトアセチル-CoAとアセチル-CoAが縮合してHMG-CoAを生成する反応;(c)HMG-CoAをメバロン酸に変換する反応;(d)メバロン酸をメバロン酸5-リン酸にリン酸化する反応;(e)メバロン酸5-リン酸をメバロン酸5-ピロリン酸に変換する反応;および(f)メバロン酸5-ピロリン酸をイソペンテニルピロリン酸に変換する反応。メバロン酸経路の発現レベルの上昇が細胞成長阻害を生じるという観察は予想外であった。
イソプレノイド化合物は、メバロン酸経路を細菌で発現させることで生成可能である(適切なコンストラクトおよび方法に関しては、米国特許公開第20030148479号、および第20040005678号;ならびにMartin et al.(2003) Nature Biotech. 21(7): 796-802を参照)。IPPの産生に必要なメバロン酸経路の酵素は、培養条件に依存してさまざまである。例えば、いくつかの態様では、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体化合物を産生する宿主細胞は、メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、およびメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ(MPD)(および任意でイソペンテニルピロリン酸イソメラーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含む2つまたはこれ以上の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞であり;ならびに宿主細胞は、メバロン酸を含む培地で培養される。他の態様では、イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物を産生する宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)、ヒドロキシメチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGR)、MK、PMK、およびMPDを(ならびに任意でIPPイソメラーゼも)コードするヌクレオチド配列を含む2つまたはこれ以上の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。
イソプレノイド産生のレベルを、外因性のメバロン酸経路を含むように遺伝的に改変された宿主で、または天然の(内因性の)メバロン酸経路を既に含む宿主で高めるためには、経路中の個々の酵素の活性のレベルを細胞内で高めることができる。改変酵素の活性のレベルを細胞内で調節する際に使用される一般的なツールは、酵素をコードするmRNAの転写速度を調節することである。この目的の達成は、プロモーター(転写開始または転写制御の配列)を、より強いプロモーターに変えることで試みることができる。
メバロン酸経路を発現する宿主細胞では、メバロン酸経路全体の発現を制御するプロモーターの強度の変化が、イソプレノイドの産生レベルを変化させる可能性があることが一般に予想される。例えば、pBluescriptおよびpBBR1MCSといったプラスミド中に見出されるような修飾型の乳糖誘導型のプロモーターを、コンセンサスのアラビノースプロモーターまたは乳糖誘導型プロモーターなどの、より強いプロモーターに変えることで、個々の酵素の発現が増加することで、イソプレノイド産生のレベルが高まることが一般に予想される。メバロン酸経路は、多量に存在する細胞内前駆体であるアセチル-CoAを消費するので、IPPの産生が前駆体の産生によって制限されることは予想されない。予想に反して、メバロン酸経路の前半部の発現レベルを高めること(すなわちアセトアセチルCoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRの発現レベルの上昇)によって、細胞成長阻害がもたらされたが、所望のイソプレノイド産物の量は増加しなかったことが観察された。
酵素の産生を目的として組換えDNA分子を生物体に導入する場合、酵素が細胞内で触媒的に使用されるか否か、または細胞から精製されるか否かに関わらず、毒性作用が観察される場合がある(B.R. Glick.(1995) Biotech Advances. 13(12): 247-261)。このような作用は、宿主の細胞内資源の利用、酵素の予想外の活性、または毒性中間体の蓄積に起因する場合がある。後者は、同経路の最終産物のレベルの上昇によって引き起こされる可能性があるほか、活性が、経路内の他の酵素とバランスを崩すことで、中間体の蓄積が細胞に毒性を示すレベルに至る1つの酵素に特異的な可能性がある。さらに、導入された経路のどのレベルの代謝物が毒性を示すかということ、または化学的に類似の中間体が、さまざまな細胞内作用を劇的に有する場合があるとともに毒性作用を示し始めるレベルをアプリオリに推定することは困難である。
例えばアセチル-CoAのレベルは、任意の毒性作用なしに細胞内でかなり高くなることがある。プロピオニル-CoAは、グルコース上で成長させたアスペルギルス・ニドゥランス(Aspirgillus nidulans)に毒性を示すことが報告されている(Brock et al. Eur J. Biochem. 271, 3227-3241(2004))。プロピオニル-CoA合成酵素を使用して、PHAを蓄積するように改変した大腸菌は、プロピオニル-CoAによって誘導される明瞭な成長阻害を示さず、高細胞密度に成長させることができる(Choi, et al. Appl. Environ. Microbio. 65, 4363-4368(1999))。コーヒー酸、p-クマル酸、およびフェルラ酸に対する感受性が、ヒドロキシシンナモイル-CoAの蓄積に起因すると考えられており、ヒドロキシシンナモイル-CoAヒドラターゼ/リアーゼがノックアウトされたアシネトバクター(Acinetobacter)株で認められている(Parke et al., Appl. Environ. Microbio. 70, 2974-2983(2004))。同じ文献では、hcaCの過剰発現時の、大腸菌における同じ3種類の基質に対する感受性が、ヒドロキシシンナモイル-CoAの蓄積に潜在的に起因することも明らかにされている。大腸菌におけるβ-ケトアシルキャリアタンパク質合成酵素II(KAS II)の過剰産生は、マロニル-CoAの成長阻害レベルの蓄積を導いた。KAS IIとともに、マロニル-CoAのマロニル-ACPへの変換を触媒する酵素であるマロニル-CoA:ACPアシル基転移酵素の発現は、この毒性をある程度緩和した(Subrahmanyam et al. J. Bact. 180 4596-4602(1998))。マロン酸メチルの供給と組み合わせた、大腸菌におけるマロニル/メチルマロニル-CoAリガーゼの発現は、メチルマロニル-CoAの、90%ものアシル-CoAのプールとなっての蓄積に至った。この株における成長阻害は報告されなかった(Murli et al. J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 30, 500-509(2003))。
メバロン酸経路を含む大半の生物体、例えばヒト(Homo sapiens)はHMGRを、イソプレノイドの産生における調節点として利用する。イソプレノイドの産生を制限するために、このような生物体は、天然の状態では前駆体であるHMG-CoAの蓄積を促す可能性のあるHMGRの活性を低下させる。このようなHMG-CoAの蓄積はおそらく、HMGRの活性を阻害するコレステロール低下薬[(スタチンであるアトルバスタチン(Lipitor)、フルバスタチン(Lescol)、ロバスタチン(Altocor, Mevacor)、プラバスタチン(Pravachol)、ロスバスタチン(Crestor)、およびシンバスタチン(Zocor)など)]を服用する患者でも生じていると考えられる。HMG-CoAの蓄積に起因する全身毒性を生じないスタチン系薬剤の広範囲の使用は、HMG-CoAが、ヒトにとって非毒性の代謝物であることを意味すると考えられる。
メバロン酸経路の酵素の発現に起因する毒性の事例に関しては、液体クロマトグラフィー-質量分析による代謝物解析で、成長阻害の表現型が、経路の中間体である3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A(HMG-CoA)の蓄積に関連づけられている。この知見は、改変された(「遺伝的に修飾された」)微生物宿主細胞では、中間体HMG-CoAが蓄積可能であり、かつ細胞死を引き起こすか、または細胞のさらなる成長を妨げることで、細胞の成長を制限すること、および/または所望のイソプレノイドへの炭素の流れのボトルネックを示すことの両方によって、IPPの産生を妨げる可能性があることを意味する。
HMG-CoAの蓄積は、改変メバロン酸経路における、HMG-CoAの産生と、後のHMG-CoAのメバロン酸への変換が不均衡であることを意味する。HMG-CoAをメバロン酸に変換する酵素であるHMG-CoA還元酵素(HMGR)の総活性を高めることで、この毒性は克服され、結果的にメバロン酸およびメバロン酸から合成されるイソプレノイドの産生の増加がもたらされる。HMG-CoAの蓄積を減少させる別の方法は、アセトアセチル-CoAをHMG-CoAに変換する酵素であるHMG-CoAシンターゼ(HMGS)の総活性を低下させることでHMG-CoAの産生を制限することである。HMG-CoAの蓄積を減少させる、さらに別の方法は、HMG-CoAの直接の前駆体であるアセトアセチル-CoAの産生に影響を及ぼすアセトアセチル-CoAチオラーゼなどの酵素のレベルおよび/または活性を弱めることである。
本発明の方法に従って、HMG-CoAのレベルを、毒性を除去して、かつ微生物細胞の適切な成長を可能とすることで、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生の有意な増加を可能とするレベルに調節することができる。HMG-CoAのレベルを調節しても、1個の細胞あたりに産生されるイソプレノイドの増加に至らず、むしろ減少に至る可能性がある場合がある一方で、細胞成長の昂進が、培養物中における、より多くのイソプレノイドの産生もたらす、このような喪失を相殺する以上の作用を有することに注目することは重要である。例えば、かつ説明目的で、仮にHMGSの活性が、HMG-CoAのレベルが細胞内で低下し、および細胞1個あたりのイソプレノイドのレベルが10%低下するものの、細胞の成長は培養物の総生産性(細胞1個あたりの活性に、培養物中の細胞数を乗じたもの)を倍加させるように修飾されると、事実上、増加する。したがって、IPPまたはイソプレノイド化合物の産生は、HMG-CoAシンターゼ活性のレベルを低下させることで、および/または細胞内のHMG-CoA還元酵素活性のレベルを高めることで上昇する場合がある。
細胞内のHMGS活性および/またはHMGR活性のレベルの調節(上昇または低下)は:1)同酵素をコードする核酸の転写を調節する(上昇または低下させる)こと;2)同酵素をコードするmRNAの翻訳を調節する(上昇または低下させる)こと;3)同酵素をコードするmRNAの安定性を調節する(上昇または低下させる)こと;4)酵素そのものの安定性を調節する(上昇または低下させる)こと;ならびに5)同酵素の酵素活性を調節する(上昇または低下させる)ことで達成される。HMG-CoAによる毒性作用を減じるか、もしくは除去し、ならびにイソプレノイドおよび/またはイソプレノイド前駆体の産生を高めるために本発明は、メバロン酸経路がHMG-CoAのレベルが毒性を示さないように再設計された細胞、ならびに、このような細胞の調製に有用な核酸および発現ベクターも提供する。
より高いIPPの産生を達成するための取り組みは、内因性のメバロン酸経路を含む細胞内における、HMGRを含む仮想的な律速酵素の過剰発現に集中してきた。これについては例えば、Polakowski et al.(1998) Appl. Microbiol. Biotechnol. 49: 67-71(イソプレノイドスクアレンの産生);Donald et al.(1997) Appl. Env. Microbiol. 63: 3341-3344(イソプレノイドスクアレンの産生);およびJackson et al. (2003) Org. Letters 5: 1629-1632(イソプレノイドエピ-セドロールの産生)を参照されたい。以上の報告は、HMGRの発現を介したHMG-CoAによって誘導される毒性の緩和については論じていないかわりに、多くの生物体において、HMGRが、天然の状態ではメバロン酸経路を利用してイソプレノイドを産生する生物体におけるイソプレノイドの産生の進化した調節点であるという観察が研究の動機となっている。このような場合、個々のイソプレノイドの産生は、HMGRの過剰発現に伴って3〜10倍増加した。
以下に示す研究では、大腸菌におけるメバロン酸経路の酵素が注目された。Hamanoら((2001) Biosci. Biotechnol. Biochem. 65: 1627-1635)は、大腸菌株DYM1を、ストレプトマイセス(Streptomyces)に由来するメバロン酸経路クラスターを含む高コピーコンストラクトpGEM-MEVで形質転換する試みが不成功であったことを報告している。同じ株を、同じメバロン酸経路クラスターを含む低コピーコンストラクトであるpMW-MEVで形質転換する試みは成功した。著者らは、大腸菌におけるストレプトマイセスのメバロン酸経路遺伝子群の高発現が致死的に作用する可能性があることを示唆している。Wildingら((2000) J Bacteriol 182(15): 4319-27))は、メバロン酸の存在下では、HMG-CoAシンターゼおよびHMG-CoA還元酵素の両方を欠くグラム陽性細菌である肺炎球菌(S. pneumoniae)の変異体は生存可能であったが、HMG-CoAシンターゼのみを欠く変異体は生存不能であったことを報告している。
加えて本発明は、HMG-CoA無毒化活性を有する遺伝子産物を同定するスクリーニング法を提供する。この方法は一般に、a)遺伝的に修飾された宿主細胞に、候補遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を導入することで試験細胞を作製する段階(遺伝的に修飾された宿主細胞は、このような外因性核酸の非存在下で、遺伝的に修飾された宿主細胞の成長を阻害するのに有効なレベルでHMG-CoAを産生する);ならびにb)候補遺伝子産物の発現が試験細胞の成長に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。成長阻害の低下は、外因性核酸がHMG-CoAによる毒性を緩和するのに十分な活性を有する遺伝子産物をコードすることを意味する。
加えて本発明は、HMG-CoAの蓄積を阻害する化合物を同定するスクリーニング法を提供する。この方法は一般に、a)成長を阻害するのに有効なレベルでHMG-CoAを産生する試験細胞に試験化合物を接触させる段階;およびb)試験化合物を細胞に接触させることが細胞の成長に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。成長阻害の低下は、外因性化合物がHMG-CoAによる毒性を緩和するのに十分な活性を有することを意味する。
上述したように、メバロン酸経路を含む大半の生物体、例えばヒトは、HMGRをイソプレノイドの産生における調節点として利用している。イソプレノイドの産生を制限するために、このような生物体はHMGRの活性を弱め、その前駆体HMG-CoAの蓄積が引き起こされていると考えられる。このようなHMG-CoAの蓄積は、HMGRの活性を阻害するコレステロール低下薬を服用する患者でも生じていると考えられる。
本発明の理解を促すために、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生に至る生合成経路を図解的に説明する図1〜3を提供する。
図1は、プレニルトランスフェラーゼによる、イソペンテニル二リン酸(IPP)、および/またはその異性体であるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の修飾による、ポリプレニル二リン酸ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、およびゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)の生成に関与するイソプレノイド経路を示す。GPPおよびFPPは、さらにテルペンシンターゼによって修飾されて、それぞれモノテルペンおよびセスキテルペンを生じ;ならびにGGPPはさらにテルペンシンターゼによって修飾されて、ジテルペンおよびカロテノイドを生じる。IPPおよびDMAPPは、メバロン酸(MEV)経路および1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸(DXP)経路の2つの経路の1つによって産生される。
図2は、アセチル-CoAが一連の反応を介してIPPに変換されるMEV経路を図解的に示す。
図3は、ピルビン酸およびD-グリセルアルデヒド-3-リン酸が一連の反応を介してIPPおよびDMAPPに変換されるDXP経路を図解的に示す。植物細胞を除く真核細胞は、アセチル-補酵素A(アセチル-CoA)をIPPに変換し、後にDMAPPに異性化するために、もっぱらMEVイソプレノイド経路を利用する。植物は、MEV経路およびメバロン酸非依存性の経路すなわちDXP経路の両方をイソプレノイド合成に利用している。原核生物は、いくつかの例外はあるものの、分岐点を介してIPPとDMAPPを個別に産生するためにDXP経路を利用している。
HMG-CoAによる毒性を緩和し、イソプレノイドおよびイソプレノイド前駆体の産生を促進する方法
本発明は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾された宿主細胞でイソプレノイドもしくはイソプレノイド前駆体を産生する方法を提供する。この方法は一般に、HMG-CoAのレベルが細胞に毒性を示さないか、および/または細胞の成長を実質的に阻害しないように、さらにはHMG-CoAのレベルが、細胞によるイソプレノイドもしくはイソプレノイド前駆体の産生の昂進をもたらすように、細胞内のHMG-CoAのレベルを調節する段階を含む。この方法は一般に、遺伝的に修飾された宿主細胞を適切な培地で培養する段階を含む(遺伝的に修飾された宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞であり、1つもしくは複数の核酸は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害または毒性の緩和もしくは低下をもたらす1つもしくは複数のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む)。HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害または毒性の緩和もしくは低下をもたらすポリペプチドは、HMG-CoA還元酵素(HMGR)、HMG-CoAシンターゼ(HMGS)、およびアセトアセチル-CoA(HMG-CoAの前駆体)またはメバロン酸のレベルに影響を及ぼす酵素を含むがこれらに限定されない。遺伝的に修飾された宿主細胞で産生される、イソプレノイド化合物(および/または、メバロン酸、イソプレニルピロリン酸(IPP)、もしくはポリプレニル二リン酸などのHMG-CoAの下流のイソプレノイド前駆体)のレベルは、HMGSおよび/またはHMGRをコードする1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾されていない対照となる(「親」)宿主細胞で産生されるイソプレノイド化合物(および/または、メバロン酸、IPP、もしくはポリプレニル二リン酸などのHMG-CoAの下流のイソプレノイド前駆体)のレベルより高い。本発明はさらに、本発明の方法における使用に適した、遺伝的に修飾された宿主細胞を提供する。本発明はさらに、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞の作製に使用される組換え核酸コンストラクトを提供する。
いくつかの態様では、本発明は、HMG-CoAによる毒性を低下させ、宿主細胞におけるイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生をメバロン酸経路を介して促進する方法を提供する(宿主細胞は、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体をメバロン酸経路を介して産生する)。この方法は一般に、(a)宿主細胞を遺伝的に修飾する段階であって、異種核酸によって遺伝的に修飾されていない対照となる親宿主細胞と比較して、細胞内で産生されるとHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害が低下する1つもしくは複数の酵素をコードする1つもしくは複数の異種核酸を含むようにする段階;ならびに(b)遺伝的に修飾された宿主細胞を、遺伝的に修飾された宿主細胞で産生されるイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体のレベルが、対照となる親宿主細胞で産生されるイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体のレベルより高くなるような条件で培養する段階を含む。
親宿主細胞におけるHMG-CoAのレベルは、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞毒性が緩和されるように、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させることによって、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることで、および/またはHMGS活性とHMGR活性のレベルのバランスをとることで調節される。親宿主細胞におけるHMG-CoAのレベルは、以下に詳述するように、メバロン酸経路を介した代謝物のバランスのとれた流れを促進する遺伝的修飾によっても調節される。
本発明は、IPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する宿主細胞に応用可能である。このような宿主細胞は本明細書で、「親」宿主細胞と呼ばれ、およびメバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾されている(したがってIPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する)。親宿主細胞は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を示し(HMG-CoAの細胞内レベルは、本明細書で後述する追加的な遺伝的修飾の非存在下で、細胞の成長を阻害する);したがって、例えば親宿主細胞は、本明細書に記載された遺伝的修飾を別にすれば、HMG-CoAを細胞内に蓄積し、およびHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を示す宿主細胞である。親宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾されている(1つもしくは複数の核酸は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含み、ならびに細胞内のHMGR活性のレベルの上昇、および/またはHMGS活性のレベルの低下をもたらす)。HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞における、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾されていない親宿主細胞と比較して低い。HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で宿主細胞を遺伝的に修飾することは:a)細胞内のHMGS活性のレベルの低下;b)細胞内のHMGR活性のレベルの上昇;c)細胞内のHMGS活性のレベルの低下およびHMGR活性のレベルの上昇;またはd)細胞内のHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性が緩和されるような、HMGS活性のレベルとHMGR活性のバランスをもたらす。
したがって例えば、「親」(すなわち「親となる(parental)」)宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾される(1つもしくは複数の核酸は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む)。親宿主細胞は、IPPをメバロン酸経路を介して産生する宿主細胞、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する宿主細胞である。親細胞は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾されており(ならびに、IPPをメバロン酸経路を介して産生し、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する)。親細胞は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す。
宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾された親細胞(1つもしくは複数の核酸は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む)は、「遺伝的に修飾された宿主細胞」と呼ばれる。遺伝的に修飾された親宿主細胞において、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾されていない親宿主細胞と比較して減じる。加えて、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞では、親宿主細胞と比較して上昇する。したがって例えば、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生は、親宿主細胞と比較して、遺伝的に修飾された宿主細胞では少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、または少なくとも約500倍、もしくはこれ以上、増加する。
HMGS活性のレベルの低下、および/またはHMGR活性のレベルの上昇
いくつかの態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞毒性を宿主細胞で低下させる本発明の方法は、HMGS活性のレベルを細胞で低下させる段階、および/またはHMGR活性のレベルを細胞で上昇させる段階を含む。HMGS活性のレベルを細胞で低下させる段階は、細胞内のHMGSポリペプチドの総量を減少させる段階;ならびに細胞内のHMGSポリペプチドの比活性を低下させる段階を含む。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを、細胞内のHMGSの総量を減少させることで低下させる。他の態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを、細胞内のHMGSの比活性を低下させることで低下させる。同様に、細胞内のHMGR活性のレベルを上昇させる段階は、細胞内のHMGRポリペプチドの総量を増加させる段階;および細胞内のHMGRポリペプチドの比活性を高める段階を含む。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGR活性のレベルを、HMGRの総量を細胞内で増加させることで上昇させる。他の態様では、細胞内のHMGR活性のレベルを、細胞内のHMGRの比活性を高めることで上昇させる。
細胞内のHMGS活性のレベルを低下させる段階は、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法で達成される:1)HMGSをコードする核酸の転写を低下させる方法;2)HMGSをコードするmRNAの翻訳を低下させる方法;3)HMGSをコードするmRNAの安定性を低下させる方法;4)HMGSポリペプチドの安定性を低下させる方法;および5)HMGS酵素の酵素活性を低下させる方法。細胞内のHMGR活性のレベルを上昇させることは、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法で達成される:1)HMGRをコードする核酸の転写を上昇させる方法;2)HMGRをコードするmRNAの翻訳を上昇させる方法;3)HMGRをコードするmRNAの安定性を高める方法;4)HMGR酵素の安定性を高める方法;および5)HMGR酵素の酵素活性を高める方法。
したがって、本発明のいくつかの態様では、HMG-CoAの所望の非毒性レベルは、細胞内のHMG-CoAシンターゼおよびHMG-CoA還元酵素活性の両方の調節によって達成される。1つの態様では、親宿主細胞は、HMGSおよびHMGRのコード配列を含む1つのベクターもしくは複数のベクターで遺伝的に修飾された天然の酵母細胞または大腸菌の宿主細胞である。コードされたHMGS酵素およびHMGR酵素は、HMG-CoAによる毒性のレベルに達せず、および高収量の所望の産物(イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物)をもたらす経路を介した最適な流れが達成されるように細胞で産生される。1つの態様では、HMGSおよびHMGRのコード領域は、異なるプロモーターによって制御される。別の態様では、HMGSおよびHMGRのコード配列は異なるベクター上に存在し、HMGSのコード配列は低コピー数のベクター上に任意で位置する、1つの態様では、HMGSおよびHMGRのコード配列は同じオペロン上に存在するが、HMGRのコード配列はHMGSのコード配列の上流に位置し、ならびにこの配置は、HMGSおよびHMGRのコード配列の両方を含む天然のオペロンとは異なる。
いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、HMG-CoAのレベルの毒性および/または成長阻害が低下されるように、細胞内のHMG-CoAのレベルを低下させる。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、HMG-CoAのレベルを、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す対照となる親細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。細胞内のHMG-CoAのレベルは、液体クロマトグラフィー-質量分析などで容易に決定される。
いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、細胞内のHMG-CoAの蓄積による成長阻害を低下させる。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、HMG-CoAの蓄積が関与する成長阻害を、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す対照細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下させる。遺伝的に修飾された宿主細胞の成長は、周知の方法、例えば細菌の液体培養物の光学密度(OD)の約600 nmにおける測定(OD600);コロニーの大きさ;成長速度;ほかの点で容易に決定される。
1つの例示的な態様では、対照となる親細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された原核宿主細胞であり、HMG-CoAが産生されて、細胞の成長を阻害するレベルまたは細胞毒性を示すレベルで細胞内に蓄積する。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、プラスミド上または染色体上の1つのポリシストロニックなオペロン中にアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRを、この順序でコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに、遺伝的に修飾された宿主細胞は、プラスミド上または染色体上の1つのポリシストロニックなオペロン中にアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGR、およびHMGSを、この順序でコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。別の非制限的な例として、対照となる親細胞は、中コピーのプラスミド上の1つのポリシストロニックなオペロン中にアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRを、この順序でコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、低コピーのプラスミド上にアセトアセチル-CoAチオラーゼおよびHMGSを、この順序でコードするヌクレオチド配列を含み、かつHMGRのヌクレオチド配列を別個の高コピーのプラスミド上に含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。別の非制限的な例として、対照となる親細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRを中コピーのプラスミド上の1つのポリシストロニックなオペロン中に、この順序でコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトによって遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、リボソーム結合部位が翻訳を低下するように改変されている中コピーのプラスミド上に、アセトアセチル-CoAチオラーゼおよびHMGSを、この順序でコードするヌクレオチド配列、およびプロモーターが、より強いバージョンに改変された別個の中コピーのプラスミド上のHMGRのヌクレオチド配列を含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。別の非制限的な例として、対照となる親細胞は、中コピーのプラスミド上の1つのポリシストロニックなオペロン中に、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRを、この順序でコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、改変されたプロテアーゼ切断部位を有するHMGS、およびグルタチオントランスフェラーゼなどの高可溶性のタンパク質と融合されたHMGRが、中コピーのプラスミド上に、この順序でコードされるヌクレオチド配列を含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。
上記のような、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらす遺伝的改変は、HMGSおよびHMGRの(VmaxまたはVmax/Kmで測定される)相対触媒活性に変化を生じる。したがって、いくつかの態様では、HMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、細胞ベースのHMGRあたりの、HMGS触媒活性に対するHMGR触媒活性の比の、親宿主細胞と比較して、遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMGSより少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、または少なくとも約500倍、もしくはこれ以上の増加を生じる。遺伝的に修飾された宿主細胞の成長は、周知の方法、例えば細菌の液体培養物の約600 nm(OD600)における光学密度(OD)の測定;コロニーの大きさ;成長速度;ほかの方法で容易に決定される。
別の態様では、対照となる親細胞は、真核細胞、例えば出芽酵母などの酵母細胞である。このような態様のいくつかでは、対照となる親真核細胞は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が機能的に損なわれるように、およびHMG-CoAが、細胞の成長を阻害するレベルまたは細胞に毒性を示すレベルで細胞内に蓄積するように、内因性のピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子に1つもしくは複数の変異を含む。本発明の実施にあたって、対照となる親細胞はさらに、HMGRをコードする核酸、または転写、翻訳、または比活性のレベルを高めて、制御エレメントに対する修飾によって修飾され、遺伝的に修飾された宿主細胞が得られる。1つの態様では、対照となる親細胞はさらに、HMGRをプラスミド中の、誘導型プロモーターの制御下へ導入することで修飾される。
HMG-CoAシンターゼの活性のレベルを低下させることでHMG-CoAの蓄積を減少させる修飾
当業者であれば、この開示で意図されるように、HMG-CoAのレベルが少なくとも部分的には、細胞内のHMGS活性のレベルに依存することを理解するであろう。上述した、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害の低下、および/またはHMG-CoAの細胞内レベルの低下は、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性レベルの調節によって達成されている。したがって、いくつかの態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性、および/またはHMG-CoAの非毒性レベルの緩和は、細胞内のHMG-CoAシンターゼ活性のレベルの調節を介して達成される。このような態様では、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素(ならびにIPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する酵素)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾された親宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である核酸を含むように遺伝的に修飾されており、核酸はHMGSをコードするヌクレオチド配列を含み、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害は、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸で遺伝的に修飾されていない親宿主細胞と比較して低下されている。
1つの態様では、内因性のHMGS遺伝子の全体または一部を置換するために、異種のHMGSをコードする核酸が使用される。別の態様では、親宿主細胞は、外因性のHMGS遺伝子を含むように遺伝的に修飾された宿主細胞であり;ならびに親宿主細胞の外因性のHMGS遺伝子は、低レベルのHMGS活性を提供する、例えばHMGSの量および/またはHMGSの活性が親宿主細胞より低い、修飾型HMGS遺伝子と置換される。別の態様では、HMGSの活性レベルを低下させる異種核酸は、HMGS転写物の翻訳を低下させるHMGS阻害因子またはアンチセンスのRNAをコードする。いずれの場合も、修飾された宿主細胞の特異的なイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生速度が、親株と比較して低下する可能性がある一方で、結果として生じるHMG-CoA関連の成長阻害の緩和は、より大きな細胞密度を招き、ひいては産生の全体的な増加をもたらす可能性がある。
いくつかの態様では、異種核酸が親宿主細胞に導入され、および異種核酸が、HMGSをコードする内因性の核酸と組換えを生じることで、親宿主細胞が遺伝的に修飾される。いくつかの態様では、異種核酸は、内因性のHMGSの転写を制御する内因性のプロモーターと比較して、プロモーターの強度を低下させるプロモーターを含み、および組換え事象は、内因性のプロモーターと異種プロモーターの置換を生じる。他の態様では、異種核酸は、内因性のHMGSと比較して低い酵素活性を示すHMGSをコードするヌクレオチド配列を含み、組換え事象が、内因性のHMGSのコード配列と異種HMGSのコード配列との置換を生じる。
本発明の方法における使用に適切な、遺伝的に修飾された宿主細胞は、細胞内のHMGS活性のレベルが低下するように、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾されている。HMGS活性のレベルは細胞内で、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾されていない親宿主細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低下される。親宿主細胞は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す。
1つの例示的な態様では、対照となる親細胞は、HMG-CoAが産生され、および成長を阻害するレベルまたは細胞に毒性を示すレベルで細胞内に蓄積する、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された原核宿主細胞である。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;および遺伝的に修飾された宿主細胞は、HMGSの上流のリボソーム結合部位が、翻訳が低下するように改変された、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列の修飾型バージョンを含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;および遺伝的に修飾された宿主細胞は、RNase切断部位がHMGSのコード領域に導入された、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列の修飾型バージョンを含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;および遺伝的に修飾された宿主細胞は、SEQ ID NO:2に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。これらについては例えば、図5および実施例2を参照されたい。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:8に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクト(群)で遺伝的に修飾された大腸菌である。
別の態様では、対照となる親細胞は真核細胞、例えば出芽酵母などの酵母細胞である。このような態様のいくつかでは、対照となる親真核細胞は、内因性のピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子中に、ピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が機能的に損なわれるように、およびHMG-CoAが、成長を阻害するレベルまたは細胞に毒性を示すレベルで細胞内に蓄積するように、1つもしくは複数の変異を含む。
遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMGS活性のレベルは、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法で低下させることができる:1)HMGSのコード領域が使用可能に連結されているプロモーターのプロモーター強度を低下させる方法;2)HMGSをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドのコピー数を減少させる方法;3)HMGSのmRNAの安定性(「HMGSのmRNA」は、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含むmRNAである)を低下させる方法;4)HMGSのmRNAの翻訳レベルが低下するように、HMGSのmRNAのリボソーム結合部位の配列を修飾する方法;5)HMGSのmRNAの翻訳レベルが低下するように、HMGSのmRNAのリボソーム結合部位と、HMGSのコード配列の開始コドン間の距離および/または配列を修飾する方法;6)HMGSのmRNAの翻訳レベルが低下するように、HMGSのコード配列の開始コドンの5'側のシストロン間領域全体を修飾する方法;7)HMGSのmRNAの翻訳レベルが低下するように、HMGSのコドン使用を修飾する方法;8)HMGSの酵素安定性を低下させる方法;9)HMGSの比活性(単位タンパク質あたりの単位活性)を低下させる方法;ならびに10)HMGSが、オペロン上にコードされている場合、ポリシストロニックなmRNA上のコード領域の順序を変える方法。遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMGS活性のレベルを低下させるためには、前述の修飾の2つもしくはこれ以上を作製することができる。
いくつかの態様では、HMGS活性のレベルは、HMGSをコードするヌクレオチド配列を含む低コピー数のプラスミドを使用することで、対照となる親細胞におけるHMGS活性に対して低下する。HMGSをコードするヌクレオチド配列を含むベクターのプラスミドのコピー数の減少は、低コピー数のプラスミドであることが既知であるプラスミドの主鎖を選択することで達成される。低コピー数のプラスミドは一般に、約20プラスミドコピー/細胞未満の、例えば約5プラスミドコピー/細胞〜約20プラスミドコピー/細胞を提供する。適切な低コピー数のプラスミドは、pACYC184、pBR332、pBAD33、pBBR1MCS、およびpSC101を含むがこれらに限定されない。例えばpSC101は一般に、細胞内に約5コピー/細胞で存在する。本発明の1つの態様では、HMGSおよびHMGRのレベルは、この2つの遺伝子を2つの異なる発現ベクター上に、HMGSのコード配列が低コピーのベクター上に存在し、およびHMGRのコード配列が高コピーのベクター上に存在するように配置することで調節される。本発明の別の態様では、これらの遺伝子は同じベクター上に存在するが、異なるプロモーターの制御下にあり、HMGSのコード配列は、2つのプロモーターのうち弱い方の制御下にある。
HMG-CoA還元酵素活性のレベルを高めることで細胞内のHMG-CoAの蓄積を減少させる修飾
当業者であれば、この開示で意図されるように、HMG-CoAのレベルが、少なくとも部分的には、細胞内のHMGR活性のレベルに依存することを理解するであろう。前述した、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害の低下、および/またはHMG-CoAの細胞内レベルの低下は、細胞内のHMGR活性レベルを調節することで本発明の方法で達成され得る。したがって本発明の1つの態様では、非毒性レベルのHMG-CoA、および/またはHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和は、細胞内のHMG-CoA還元酵素の活性レベルを調節することで達成される。このような態様では、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾され、ならびにIPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する親宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である核酸を含むように遺伝的に修飾され、核酸はHMGRをコードするヌクレオチド配列を含み、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸で遺伝的に修飾されていない、対照となる親宿主細胞と比較して低下される。
本発明の方法における使用に適した、遺伝的に修飾された宿主細胞は、細胞内のHMGR活性のレベルが上昇するように、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む、1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾されている。HMGR活性のレベルは細胞内で、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾されていない対照となる親細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%上昇する。
1つの例示的な態様では、対照となる親細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された原核宿主細胞であり、HMG-CoAが産生されて、成長を阻害するレベルまたは細胞に毒性を示すレベルで細胞内に蓄積する。1つの態様では、対照となる親細胞は、天然の状態でメバロン酸経路を含まない原核宿主細胞であり、およびメバロン酸を産生するように遺伝的に修飾された原核宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞はさらに、HMG-CoAの細胞内レベルが阻害性を示さないか、または細胞に毒性を示さないようにHMGR活性を変化するように改変される。1つの例示的な態様では、対照となる親細胞は、メバロン酸を産生するように遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、以下の参考文献に列挙されたコンストラクト以外のコンストラクトによって増強された、対照となる親細胞の遺伝的に修飾されたバージョンの大腸菌である:Kato-Emori et al. Mol Genet Genomics(2001) 265: 135-42, Learned RM, et al. PNAS.(1989) 86: 2779-83, T. Dairi, et al. Mol Gen Genet(2000) 262: 957-964, Allen, et al. Appl Environ. Microbio.(1997), 63: 3341-3344, Hedl, et al. J. Bacteriol.,(2002), 184: 2116-2122, Jackson, et al. Org. Lett.(2003) 5: 1629-1632, Randolph Y. Hampton, et al.(1994) Cell, 125: 299-312, Markus Veen, et al. FEMS Yeast Res(2003) 4: 87-95, Beach MJ, et al. J Bacteriol(1989) 171: 2994-3001, Bischoff KM, et al. Protein Sci(1997) 6: 156-161, Friesen JA, et al. Biochemistry.(1997) 36: 2173-7, Frimpong, et al. J Biol Chem.(1994) 269: 11478-83, Panda, et al. Appl Microbiol Biotechnol(2004) 66: 143-152。
1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:8に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌である。これについては例えば、図6および図7、ならびに実施例3および実施例4を参照されたい。1つの非制限的な例として、対照となる親細胞は、SEQ ID NO:2に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌の宿主細胞であり;ならびに遺伝的に修飾された宿主細胞は、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:9に記載されたヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌である。これについては例えば、図10および実施例6を参照されたい。
別の態様では、対照となる親細胞は真核細胞、例えば出芽酵母などの酵母細胞である。このような態様のいくつかでは、対照となる親真核細胞は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が機能的に損なわれるように、およびHMG-CoAが、成長を阻害するレベルまたは細胞に毒性を示すレベルで細胞内に蓄積するように、内因性のピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子に1つもしくは複数の変異を含む。
遺伝的に修飾された宿主細胞におけるHMGR活性のレベルは、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法で高めることができる:1)HMGRのコード領域が使用可能に連結されているプロモーターのプロモーター強度を高める方法;2)HMGRをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドのコピー数を増やす方法;3)HMGRのmRNAの安定性を高める方法(「HMGRのmRNA」は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含むmRNAである);4)HMGRのmRNAの翻訳レベルが上昇するように、HMGRのmRNAのリボソーム結合部位の配列を修飾する方法;5)HMGRのmRNAの翻訳レベルが上昇するように、HMGRのmRNAのリボソーム結合部位と、HMGRのコード配列の開始コドン間の配列を修飾する方法;6)HMGRのmRNAの翻訳が上昇するように、HMGRのコード領域の開始コドンの5'側のシストロン間領域の全体を修飾する方法;7)HMGRのmRNAの翻訳レベルが上昇するように、HMGRのコドン使用を修飾する方法;8)HMGRのmRNAの翻訳レベルが上昇するように、HMGRに使用される、まれなコドンのtRNAを発現させる方法;9)HMGRの酵素安定性を高める方法;または10)HMGRの比活性(単位タンパク質あたりの単位活性)を高める方法。HMGR活性のレベルの上昇を可能とするために、前述の2つもしくはこれ以上の修飾が作られる可能性がある。
SEQ ID NO:2に記載されたヌクレオチド配列では、HMGRのコード領域は、pBADプロモーターの転写制御下にある。いくつかの態様では、HMGRのコード領域に使用可能に連結されるプロモーターは、pBADプロモーターより、例えばpBADプロモーターを使用して転写されるmRNAのレベルより、転写されるmRNAのレベルが、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、またはこれ以上高い、強いプロモーターである。適切なプロモーターは、コンセンサスのlacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、ラムダプロモーター、およびT7プロモーターを含むがこれらに限定されない。
プラスミドのコピー数の増加は、中コピー数または高コピー数のプラスミドであることが既知であるプラスミドの主鎖を選択することで達成される。低コピー数のプラスミドは一般に、約20プラスミドコピー/細胞未満を提供する。中コピー数のプラスミドは一般に、約20プラスミドコピー/細胞〜約50プラスミドコピー/細胞、または約20プラスミドコピー/細胞〜約80プラスミドコピー/細胞を提供する。高コピー数のプラスミドは一般に、約80プラスミドコピー/細胞〜約200プラスミドコピー/細胞、またはこれ以上を提供する。多くの態様で、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む高コピー数のプラスミドベクターである。適切な高コピー数のプラスミドは、pUCベクター(例えばpUC8、pUC18、pUC19など)、pBluescriptベクター、pGEMベクター、およびpTZベクターを含むがこれらに限定されない。
当業者であれば、この開示で意図されるように、細胞内のHMG-CoAのレベルが、細胞内のHMGS活性とHMGR活性の相対レベルを調節することで修飾可能なことを理解することであろう。したがって、本発明の1つの態様では、HMG-CoAの所望の非毒性レベルは、細胞内のHMG-CoAシンターゼ活性とHMG-CoA還元酵素活性の両方を調節することで達成される。1つの態様では、親宿主細胞は、HMGSおよびHMGRのコード配列を含むベクターまたはベクター群で遺伝的に修飾された、天然の酵母または大腸菌の宿主細胞である。コードされるHMGS酵素およびHMGR酵素は、HMG-CoAによる毒性のレベルに至らず、かつ経路内の最適な流れが達成されて、高収量の所望の産物(イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物)が提供されるように、細胞内で産生される。1つの態様では、HMGSおよびHMGRのコード領域は異なるプロモーターによって制御される。別の態様では、HMGSおよびHMGRのコード配列は、異なるベクター上に存在し、HMGSのコード配列は低コピー数のベクター上に任意で位置する。1つの態様では、HMGSおよびHMGRのコード配列は同じオペロン上に存在するが、HMGRのコード配列はHMGSのコード配列の上流に位置し、ならびにこの配置は、HMGSおよびHMGRの両コード配列を含む天然のオペロンとは異なる。
メバロン酸経路の全体の流れのバランスをとることでHMG-CoAの蓄積を減少させる修飾
いくつかの態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害または毒性は、経路全体における代謝物の流れのバランスをとることで減じる。代謝物の流れは、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法でバランスをとることができる:1)酵素が利用可能な基質(アセトアセチル-CoA)を制限する、HMGSの上流の酵素における変異(すなわちAtoB、AtoC、AtoA、AtoD);2)酵素が利用可能な基質(アセトアセチル-CoA)を制限する、HMGSの上流の酵素の発現の変化(例えばAtoC、AtoA、AtoD、および脂肪酸生合成に関与する酵素);3)メバロン酸の供給を枯渇させることでHMG-CoAのメバロン酸への変換を促す、HMGRの下流の酵素の発現の変化(すなわちMK、PMK、MVD);4)メバロン酸の供給を枯渇させることでHMG-CoAのメバロン酸への変換を促す、HMGRの下流の酵素の触媒特性を変化させる変異(すなわちMK、PMK、MVD);5)HMG-CoA産生酵素の発現をHMGRにマッチさせるための、HMGRと上流の酵素(すなわちアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS)のタンパク質融合;6)HMG-CoA産生酵素の発現を、HMG-CoAから遠ざかる代謝物の移動に関与する酵素にマッチさせるための、HMGSと下流の酵素(すなわちMK)のタンパク質融合。
イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生の上昇
上記の方法は、細胞におけるHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性および/または細胞の成長阻害の緩和をもたらし;ならびに細胞内のイソプレノイド化合物の産生の上昇、および/またはイソプレノイド前駆体化合物の増加を提供する。したがって本発明は、細胞内のイソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物の産生を高める方法を提供し、この方法は一般に、HMG-CoAのレベルが、毒性レベルまたは成長阻害レベルに満たないレベルで維持されるが、イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物の産生の増加をもたらすのに十分高いレベルにあるように、細胞内のHMG-CoAのレベルを調節する段階を含む。
本発明は、細胞または細胞の培養物によるイソプレノイド化合物、またはイソプレノイド化合物の前駆体(例えばメバロン酸、IPP、ポリプレニル二リン酸など)の産生を高める方法を提供する。この方法は一般に、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す細胞においてHMGR活性のレベルを上昇させる段階、および/またはHMGS活性のレベルを低下させる段階を含む。HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す細胞は、いくつかの態様では、通常はIPPまたはメバロン酸をメバロン酸経路を介して合成せず、およびメバロン酸経路の酵素(群)をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾された親宿主細胞である(同酵素群は、細胞内のHMG-CoAによる毒性レベルもしくは成長阻害レベルの蓄積をもたらすレベルで産生される)。HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す細胞は、いくつかの態様では、通常はIPPまたはメバロン酸をメバロン酸経路を介して合成するが、細胞内にHMG-CoAが、成長阻害レベルまたは毒性レベルで蓄積するように遺伝的に修飾されている親宿主細胞である。1つの態様では、このような化合物は、イソプレノイドの前駆体化合物IPPである。1つの態様では、宿主細胞は大腸菌の細胞である。別の態様では、宿主細胞は酵母の細胞である。
いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、遺伝的に修飾された宿主細胞による、もしくは遺伝的に修飾された宿主細胞の培養物によるメバロン酸の産生を高める。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、メバロン酸の産生を、遺伝的に修飾された宿主細胞において、親宿主細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、もしくは少なくとも約500倍、またはこれ以上、高める。メバロン酸の産生は、周知の方法、例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析、液体クロマトグラフィー-質量分析、イオンクロマトグラフィー-質量分析、薄層クロマトグラフィー、パルスアンペロメトリー検出、uv-vis分光光度法などで容易に決定される。
いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、遺伝的に修飾された宿主細胞による、または遺伝的に修飾された宿主細胞の培養物によるIPPの産生を高める。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、IPPの産生を、遺伝的に修飾された宿主細胞において、親宿主細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、もしくは少なくとも約500倍、またはこれ以上、高める。IPPの産生は、周知の方法、例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析、薄層クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー-質量分析、パルスアンペロメトリー検出、uv-vis分光光度法などで容易に決定される。
いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、遺伝的に修飾された宿主細胞によるイソプレノイドの産生を高める。したがって、いくつかの態様では、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させること、および/またはHMGR活性のレベルを上昇させることは、メバロン酸の産生を、遺伝的に修飾された宿主細胞において、親宿主細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、もしくは少なくとも約500倍、またはこれ以上、高める。イソプレノイドの産生は、周知の方法、例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析、液体クロマトグラフィー-質量分析、イオンクロマトグラフィー-質量分析、パルスアンペロメトリー検出、uv-vis分光光度法などで容易に決定される。
いくつかの態様では、本発明の方法は、細胞1個あたりのイソプレノイドもしくはイソプレノイド前駆体の産生の促進を提供し、例えば、本発明の方法で産生されるイソプレノイド化合物もしくはイソプレノイド前駆体化合物の量は、対照となる親細胞で産生されるイソプレノイド化合物もしくはイソプレノイド前駆体化合物の量より、1個の細胞ベースで、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、もしくは少なくとも約500倍、またはこれ以上多い。細胞の量は、乾燥細胞重量を測定することで、または細胞培養物の光学密度を測定することで測定される。
他の態様では、本発明の方法は、細胞培養物の単位体積あたりのイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生の促進をもたらし、例えば、本発明の方法で産生されるイソプレノイド化合物もしくはイソプレノイド前駆体化合物の量は、対照となる親細胞で産生されるイソプレノイド化合物もしくはイソプレノイド前駆体化合物の量より、細胞培養物の単位体積ベースで、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、もしくは少なくとも約500倍、またはこれ以上多い。
いくつかの態様では、イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物の産生を高める本発明の方法は、メバロン酸経路の中間体(例えばアセチル-CoA)のレベルが上昇するように、宿主細胞が培養される培地の組成を調節する段階を含む。いくつかの態様では、培地は、細胞内のアセチル-CoAのレベルを高め、続いてHMG-CoAのレベルを高める酢酸を含む。
本発明の方法で産生可能なイソプレノイドは、リモネン、シトラネオール(citranellol)、ゲラニオール、メントール、ペリリルアルコール、リナロール、ツジョンを含むが、これらに限定されないモノテルペン;ペリプラノンB、ギンコライド(gingkolide)B、アモルファジエン、アルテミシニン、アルテミシニック酸、バレンセン、ヌートカトン、エピ-セドロール(epi-cedrol)、エピ-アリストロチェン、ファルネソール、ゴッシポール、サノニン(sanonin)、ペリプラノン、およびフォルスコリンを含むがこれらに限定されないセスキテルペン;カスベン(casbene)、エレウセルビン(eleutherobin)、パクリタキセル、プロストラチン、およびシュードプテロシン(pseudopterosin)を含むがこれらに限定されないジテルペン;アルブルシド(arbruside)E、ブルセアンチン(bruceantin)、テストステロン、プロゲステロン、コルチゾン、ジギトキシンを含むがこれらに限定されないトリテルペンを含むがこれらに限定されない。イソプレノイドは、リコピン、α-およびβ-カロテン、α-およびβ-クリプトキサンチン、ビキシン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、およびルテインなどのカロテノイドも含むがこれらに限定されない。イソプレノイドは、トリテルペン、ステロイド化合物、および混合型のテルペン-アルカロイドなどの他の官能基によって修飾されたイソプレノイド、ならびに補酵素Q-10を含む化合物も含むがこれらに限定されない。
遺伝的に修飾された宿主細胞
本発明は、遺伝的に修飾された宿主細胞;および遺伝的に修飾された宿主細胞を含む組成物を提供する。遺伝的に修飾された宿主細胞は、上述したように、イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体化合物の産生に有用である。
上述したように、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を産生する本発明の方法は一般に、遺伝的に修飾された宿主細胞を適切な培地で培養する段階を含む。遺伝的に修飾された宿主細胞は、細胞内で産生されると細胞内のHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害(毒性)を緩和する1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。親細胞(例えば、細胞内で産生されると細胞内のHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害および/または毒性を緩和する1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾されていない細胞)は、IPPをメバロン酸経路を介して産生するか、または産生するように遺伝的に修飾されている細胞である。
したがって例えば、「親」(すなわち「パレンタル(parental)な」)宿主細胞は、宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾されており、1つもしくは複数の核酸は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む。親宿主細胞は、IPPをメバロン酸経路を介して産生するか、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する。親細胞は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、または含むように遺伝的に修飾されている(ならびに、IPPをメバロン酸経路を介して産生し、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生する)。宿主細胞に対して異種である1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾されていて、1つもしくは複数の核酸が、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む親細胞は、「遺伝的に修飾された宿主細胞」と呼ばれる。遺伝的に修飾された親宿主細胞における、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害は、HMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾されていない親宿主細胞と比較して低下する。さらに、遺伝的に修飾された宿主細胞は、細胞1個あたりのメバロン酸の産生の上昇、および/または細胞生存能の上昇の組み合わせに由来する、高レベルのメバロン酸産物またはイソプレノイド産物を示す。本発明は、イソプレノイド化合物の産生を付加的に高めるために、繰り返し応用することができることが理解されており、1つの状況では、特定の細胞系列は、遺伝的に修飾された宿主細胞である可能性があり、および後の状況では、これは一層の改善のための出発点として利用される親宿主細胞である可能性がある。または本発明は、HMG-CoAの蓄積の毒性に関し、ならびに遺伝系、および高レベルのイソプレノイド産生に通常は伴うHMG-CoAによる毒性を回避する、関連する宿主細胞のデノボにおける構築を可能とする。したがって仮に、遺伝的に修飾された宿主細胞が、HMG-CoAの蓄積による低い細胞生存能を示す細胞を産生するように、さらに遺伝的に修飾可能であれば、さらなる遺伝的に修飾された細胞は、実際に、当初の遺伝的に修飾された宿主細胞に対して親宿主細胞となる。
いくつかの態様では、親細胞は、IPPまたはメバロン酸をメバロン酸経路を介して通常産生しない細胞であり;例えば親細胞は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された細胞である。一例として親細胞は、IPPまたはメバロン酸をメバロン酸経路を介して通常産生しない原核細胞であり、ならびにアセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された原核細胞であり、アセトアセチル-CoAチオラーゼおよびHMGS活性のレベルは、HMG-CoAが、成長を阻害するレベルまたは毒性を示すレベルで細胞内に蓄積するようになっている。一例は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の第2の例は、SEQ ID NO:2に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。
他の態様では、親細胞は、IPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して通常産生する細胞であり;例えば親細胞は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードする内因性の核酸を含む細胞である。このような態様では、親細胞は、細胞内に蓄積するHMG-CoAのレベルが細胞に毒性または成長阻害を示すように遺伝的に修飾されている。一例として、1つもしくは複数の変異が、ピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が機能的に損なわれるように、およびHMG-CoAが細胞内に、細胞に毒性を示すレベルで蓄積するように、IPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して通常産生する宿主細胞のピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子に導入される。このような場合の親細胞は、IPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して通常産生する宿主細胞であり、およびピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子が機能的に損なわれるように、1つもしくは複数の変異を、内因性のピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子中に導入するために遺伝的に修飾された宿主細胞である。
本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞を作製するために、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を緩和する酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸を、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポソームによるトランスフェクションなどを含むがこれらに限定されない確立された手法で、安定に、または一過的に親宿主細胞に導入する。安定な形質転換に関しては、核酸は一般に、選択マーカー、例えばネオマイシン耐性、アンピシリン耐性、テトラサイクリン耐性、クロラムフェニコール耐性、カナマイシン耐性などの複数の周知の任意の選択マーカーをさらに含む。
メバロン酸経路の酵素
上述したように、親細胞は、IPPをメバロン酸経路を介して、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生するか、または産生するように遺伝的に修飾された宿主細胞であり、およびHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性もしくは成長阻害を示す宿主細胞である。メバロン酸経路は、(a)アセチル-CoAの2つの分子をアセトアセチル-CoAに縮合させる段階;(b)アセトアセチル-CoAとアセチル-CoAを縮合させてHMG-CoAを生成させる段階;(c)HMG-CoAをメバロン酸に変換する段階;(d)メバロン酸をメバロン酸5-リン酸にリン酸化する段階;(e)メバロン酸5-リン酸をメバロン酸5-ピロリン酸に変換する段階;および(f)メバロン酸5-ピロリン酸をイソペンテニルピロリン酸に変換する段階を含む。IPPの産生に必要なメバロン酸経路の酵素は、培養条件に依存して多様である。
いくつかの態様では、親宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞であり、ならびに親宿主細胞は、メバロン酸を産生する宿主細胞である。親宿主細胞の非制限的な例は、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:1にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:2に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:2にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:7に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:7にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された酵母細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:6に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:6にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数のコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:7に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:7にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数のコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:11に記載されたヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:11にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数のコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7にコードされたメバロン酸経路遺伝子を含むヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7にコードされたメバロン酸経路の酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された酵母細胞である。親宿主細胞の別の非制限的な例は、SEQ ID NO:11にコードされたメバロン酸経路の酵素を含むヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:11にコードされた酵素と機能的に類似の酵素をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された酵母細胞である。
他の態様では、親宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、HMGR、メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、およびメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ(MPD)(ならびに任意でIPPイソメラーゼも)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。親宿主細胞の一例は、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。親宿主細胞の別の例は、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。
いくつかの態様では、親宿主細胞は、メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、およびメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ(MPD)(ならびに任意でイソペンテニルピロリン酸イソメラーゼも)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞であり;ならびに親宿主細胞は、メバロン酸を含む培地で培養される。
他の態様では、親宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)、ヒドロキシメチルグルタリル-CoA還元酵素(HMGR)、MK、PMK、ならびにMPD(および任意でIPPイソメラーゼも)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。
他の態様では、親宿主細胞は、MK、PMK、MPD、IPPイソメラーゼ、およびプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。他の態様では、親宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、HMGR、MK、PMK、MPD、IPPイソメラーゼ、およびプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。親宿主細胞の一例は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。別の例は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:5に記載されたヌクレオチド配列を含むコンストラクトで遺伝的に修飾された大腸菌細胞である。
他の態様では、親宿主細胞は、天然の(内因性の)メバロン酸経路を有し、かつHMG-CoAのレベルが非修飾型の宿主細胞に対して上昇するように、およびHMG-CoAの蓄積が成長阻害を引き起こすように遺伝的に修飾された宿主細胞である。例示的な態様では、親株は、ホスホトランスアセチラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびピルビン酸デカルボキシラーゼの1つもしくは複数が、(例えばノックアウトによって)機能が損なわれるように、1つもしくは複数の遺伝的修飾を導入することでアセチル-CoAの産生を高めるために遺伝的に修飾された出芽酵母である。
宿主細胞(親宿主細胞および遺伝的に修飾された宿主細胞を含む)は、多くの態様で、単細胞生物であるか、または培養物中で1種類の細胞として成長する。いくつかの態様では、宿主細胞は真核細胞である。適切な真核宿主細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌細胞、および藻類細胞を含むがこれらに限定されない。適切な真核宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・オプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピキア・ピジペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア属(Pichia sp.)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス属(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリヴェロミセス属(Kluyveromyces sp.)、クリヴェロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルクノヴェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナトゥム(Fusarium venenatum)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、クラミドモナス・レインハルトチイ(Chlamydomonas reinhardtii)などを含むがこれらに限定されない。いくつかの態様では、宿主細胞は、植物細胞以外の真核細胞である。
他の態様では、宿主細胞は原核細胞である。適切な原核細胞は、大腸菌、乳酸菌属(Lactobacillus sp.)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、赤痢菌属(Shigella sp.)などの任意のさまざまな実験室株を含むがこれらに限定されない。これについては例えば、Carrier et al.(1992) J Immunol. 148: 1176-1181;米国特許第6,447,784号;およびSizemore et al.(1995) Science 270: 299-302を参照されたい。本発明で利用可能なサルモネラ株の例は、チフス菌(Salmonella typhi)およびネズミチフス菌(S. typhimurium)を含むがこれらに限定されない。適切な赤痢菌株は、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、およびシゲラ・ディセンテリエ(Shigella disenteriae)を含むがこれらに限定されない。典型的には、実験室株は非病原性の株である。他の適切な細菌の非制限的な例は、枯草菌(Bacillus subtilis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas pudita)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・メバロニイ(Pseudomonas mevalonii)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドスピリルム・ルブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)などを含むがこれらに限定されない。いくつかの態様では、宿主細胞は大腸菌である。
上述したように、いくつかの態様では、親宿主細胞は、メバロン酸経路の酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の異種核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。IPPをメバロン酸経路を介して産生するように、および/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生するように、親宿主細胞を遺伝的に修飾するためには、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸を、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポソームによるトランスフェクションなどを含むがこれらに限定されない確立された手法で宿主細胞に安定に、または一過的に導入する。安定に形質転換するためには、核酸は一般に、例えばネオマイシン耐性、アンピシリン耐性、テトラサイクリン耐性、クロラムフェニコール耐性、カナマイシン耐性などの任意の複数の周知の選択マーカーなどの選択マーカーをさらに含む。
多くの態様では、IPPおよび/またはメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生するように宿主細胞が遺伝的に修飾されている核酸は、メバロン酸経路の酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む発現ベクターである。同様に、多くの態様では、親宿主細胞が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性、および/または細胞成長阻害が低下するように遺伝的に修飾されている核酸は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和、および/または細胞成長阻害を生じる1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を産生する発現ベクターである。適切な発現ベクターは、バキュロウイルスベクター、バクテリオファージベクター、プラスミド、ファジミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルスなどに基づくウイルスベクター)、P1ベースの人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、ならびに対象となる特定の宿主(大腸菌および酵母など)に特異的な任意の他のベクターを含むがこれらに限定されない。したがって例えば、メバロン酸経路の遺伝子産物(群)をコードする核酸は、メバロン酸経路の遺伝子産物(群)を発現させるためのさまざまな発現ベクターの任意の1つに含まれる。このようなベクターは、染色体のDNA配列、非染色体のDNA配列、および合成のDNA配列を含む。
数多くの適切な発現ベクターが当業者に既知であり、および多くは市販されている。以下のベクターを例として挙げる;細菌宿主細胞用として:pQEベクター(Qiagen)、pBluescriptプラスミド、pNHベクター、ラムダ-ZAPベクター(Stratagene);pTrc99a、pKK223-3、pDR540、およびpRIT2T(Pharmacia);真核宿主細胞用として:pXT1、pSG5(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(Pharmacia)。しかしながら、宿主細胞と適合する限りにおいて、他の任意のプラスミドまたは他のベクターを使用することができる。
メバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列をコードする1つもしくは複数の異種核酸を含む親宿主細胞を作製するためには、メバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入する。発現ベクター中のメバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列は、コードされた遺伝子産物の合成を誘導するために、適切な発現制御配列(群)(例えばプロモーター)に使用可能に連結されている。同様に、親宿主細胞から、遺伝的に修飾された宿主細胞を作製するためには、例えばHMGSおよび/またはHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを使用する。コードされた遺伝子産物の合成を誘導するためには、HMGSおよび/またはHMGRのコード配列が、適切な発現制御配列(群)に使用可能に連結される。利用される宿主/ベクター系に依存して、構成的および誘導型のプロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、任意のいくつかの適切な転写および翻訳の制御エレメントを発現ベクターに使用することができる(例えば、Bitter et al.(1987) Methods in Enzymology, 153: 516-544を参照)。
原核宿主細胞において使用される適切なプロモーターは、バクテリオファージT7のRNAポリメラーゼのプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えばlac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;ssaGプロモーターまたは関連プロモーターなどのインビボで調節されるプロモーター(例えば米国特許公開第20040131637号参照)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller, J Bacteriol., 1991: 173(1): 86-93;Alpuche-Aranda et al., PNAS, 1992: 89(21): 10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al.(1992) Mol. Micro. 6: 2805-2813)など(例えば、Dunstan et al.(1999) Infect. Immun. 67: 5133-5141;McKelvie et al.(2004) Vaccine 22: 3243-3255;およびChatfield et al.(1992) Biotechnol. 10: 888-892を参照);シグマ70プロモーター、例えばコンセンサスのシグマ70プロモーター(例えばGenBankアクセッション番号AX798980、AX798961、およびAX798183参照);定常期プロモーター、例えばdpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性遺伝子群SPI-2に由来するプロモーター(例えばWO96/17951参照);actAプロモーター(例えばShetron-Rama et al. (2002) Infect. Immun. 70: 1087-1096参照);rpsMプロモーター(例えばValdivia and Falkow (1996). Mol. Microbiol. 22: 367-378参照)、tetプロモーター(例えばHillen,W. and Wissmann,A. (1989) In Saenger,W. and Heinemann,U. (eds), Topics in Molecular and Structural Biology, Protein-Nucleic Acid Interaction. Macmillan, London, UK, Vol. 10, pp.143-162参照);SP6プロモーター(例えばMelton et al. (1984) Nucl. Acids Res. 12: 7035-7056参照);ほかのプロモーターを含むがこれらに限定されない。
適切な真核プロモーターの非制限的な例は、CMVの最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期のSV40、レトロウイルスのLTR、ならびにマウスのメタロチオネイン-Iのプロモーターを含む。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者のレベルの範囲内にある。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターを含む場合もある。発現ベクターは、発現を増幅するための適切な配列を含む場合もある。
加えて、発現ベクターは多くの態様で、形質転換された宿主細胞を選択するための、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性などの表現型形質、または大腸菌などの原核宿主細胞におけるテトラサイクリン耐性もしくはアンピシリン耐性などの表現型形質を提供するために、1つもしくは複数の選択マーカーの遺伝子を含む。
組換え発現ベクターは一般に、複製起点および宿主細胞の形質転換を可能とする選択マーカー、例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子、出芽酵母のTRP1遺伝子など;ならびにコード配列の転写を誘導するための高発現遺伝子に由来するプロモーターを含む。このようなプロモーターは、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α-因子、酸ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質などの解糖系酵素群をコードするオペロンに由来する場合がある。
多くの態様では、親宿主細胞は、誘導型プロモーターに使用可能に連結された、メバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む。同様に、多くの態様で、遺伝的に修飾された宿主細胞は、誘導型プロモーターに使用可能に連結されたHMGRおよび/またはHMGSをコードするヌクレオチド配列を含む。誘導型プロモーターは当技術分野で周知である。適切な誘導型プロモーターは、バクテリオファージλのpL;Plac;Ptrp;Ptac(Ptrp-lacのハイブリッドプロモーター);イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導型プロモーター、例えばlacZプロモーター;テトラサイクリン誘導型プロモーター;アラビノース誘導型プロモーター、例えばPBAD(例えばGuzman et al.(1995) J Bacteriol. 177: 4121-4130参照);キシロース誘導型プロモーター、例えばPxyl(例えばKim et al.(1996) Gene 181: 71-76参照);GAL1プロモーター;トリプトファンプロモーター;lacプロモーター;アルコール誘導型プロモーター、例えばメタノール誘導型プロモーター、エタノール誘導型プロモーター;ラフィノース誘導型プロモーター;熱誘導型プロモーター、例えば熱誘導型のラムダPLプロモーター、熱感受性リプレッサーの制御を受けるプロモーター(例えば、CI857抑制型のラムダベースの発現ベクター;例えばHoffmann et al. (1999) FEMS Microbiol Lett. 177(2): 327-34参照;ならびに他のプロモーターを含むがこれらに限定されない。
多くの態様で、親宿主細胞は、宿主細胞を、メバロン酸経路の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾することによって作製される(メバロン酸経路の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに使用可能に連結されている)。同様に、いくつかの態様では、HMGSおよび/またはHMGRのコード配列は、構成的プロモーターに使用可能に連結されている。原核細胞に使用される適切な構成的プロモーターは当技術分野で既知であり、およびシグマ70プロモーター、例えばコンセンサスのシグマ70プロモーターを含むがこれらに限定されない。
酵母では、構成的または誘導型のプロモーターを含むいくつかのベクターを使用することができる。総説として、Current Protocols in Molecular Biology, Vol.2, 1988, Ed. Ausubel, et al., Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch.13;Grant, et al., 1987, Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Eds. Wu & Grossman, 31987, Acad. Press, N.Y., Vol.153, pp.516-544;Glover, 1986, DNA Cloning, Vol.II, IRL Press, Wash., D.C, Ch.3;およびBitter, 1987, Heterologous Gene Expression in Yeast, Methods in Enzymology, Eds. Berger & Kimmel, Acad. Press, N.Y., Vol.152, pp.673-684;ならびにThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, 1982, Eds. Strathern et al., Cold Spring Harbor Pressの第I巻および第II巻を参照されたい。ADHもしくはLEU2などの構成的な酵母プロモーター、またはGALなどの誘導型プロモーターを使用することができる(Cloning in Yeast, Ch.3, R. Rothstein In: DNA Cloning Vol.11, A Practical Approach, Ed. DM Glover, 1986, IRL Press, Wash., D.C.)。または、外来DNA配列の酵母染色体への組込みを促すベクターを使用することができる。
親宿主細胞が、メバロン酸経路の2つまたはこれ以上の酵素を産生するように遺伝的に修飾されている場合、2つまたはこれ以上の酵素をコードするヌクレオチド配列は、いくつかの態様では、それぞれ、別個の発現ベクター中に含まれる。宿主細胞が、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素を発現するように遺伝的に修飾されている場合は、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列は、いくつかの態様では1つの発現ベクター中に含まれる。メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列が、1つの発現ベクター中に含まれる場合、いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、共通の制御エレメント(例えばプロモーター)に使用可能に連結され、例えば共通の制御エレメントは、1つの発現ベクター上のメバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列の全ての発現を制御する。
メバロン酸経路の酵素(群)をコードするヌクレオチド配列が1つの発現ベクターに含まれる場合、いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、異なる制御エレメント(例えばプロモーター)に使用可能に連結され、例えば、異なる制御エレメントは、1つの発現ベクター上に分かれて位置するメバロン酸経路の酵素をコードする個々のヌクレオチド配列の発現を制御する。
親宿主細胞が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和をもたらす酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾される場合、いくつかの態様では、このような酵素は、2つの異なる(別個の)発現コンストラクト上にコードされる。例えば、いくつかの態様では、HMGRは高コピーのプラスミドから、HMGSは低コピーのプラスミドから、同一のプロモーターの制御下で発現される。他の態様では、HMGRおよびHMGSは、類似のコピー数のプラスミドから発現され、HMGRは、HMGSより強いプロモーターによって発現される。親宿主細胞が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和をもたらす酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾される場合、いくつかの態様では、酵素(群)は、1つの発現コンストラクト上にコードされる。例えば、いくつかの態様では、HMGRおよびHMGSは、HMGRの改変転写物の安定性が、HMGSの転写物の安定性を上回るように、1つのプラスミドから、1つのプロモーターの制御下で発現される。
HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和をもたらす酵素(群)をコードするヌクレオチド配列が、1つの発現コンストラクト中に含まれる場合、いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、異なる制御エレメント(例えばプロモーター)に使用可能に連結され、例えば異なる制御エレメントは、1つの発現コンストラクト上に個別に存在する、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和をもたらす個々の酵素(群)の発現を制御する。例えば、いくつかの態様では、HMGRおよびHMGSは1つのプラスミドから発現され、HMGRはHMGSより強いプロモーターによって発現される。
メバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列
MEV経路の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は当技術分野で既知であり、およびMEV経路の任意の既知の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を、本発明の遺伝的に修飾される宿主細胞の作製に使用することができる。例えば、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、HMGR、MK、PMK、MPD、およびIDIをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で既知である。以下に、MEV経路の遺伝子産物をコードする既知のヌクレオチド配列の非制限的な例を、GenBankアクセッション番号とともに、括弧内に生物名をMEV経路の各酵素名に続いて記す:アセトアセチル-CoAチオラーゼ:(NC_000913 REGION:2324131..2325315;大腸菌)、(D49362;パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans))、および(L20428;出芽酵母);HMGS:(NC_001145.相補物19061..20536;出芽酵母)、(X96617;出芽酵母)、(X83882;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ(Kitasatospora griseola))、および(BT007302;ヒト(Homo sapiens)));HMGR:(NM_206548;ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、(NM_204485;ニワトリ(Gallus gallus))、(AB015627;ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.) KO-3988)、(AF542543;タバコ(Nicotiana attenuata))、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ)、(AX128213、短縮型HMGRのコード配列を提供;出芽酵母)、および(NC_001145:相補物(115734..118898;出芽酵母));MK:(L77688;シロイヌナズナ)、および(X55875;出芽酵母);PMK:(AF429385;パラゴムノキ(Hevea brasiliensis))、(NM_006556;ヒト)、(NC_001145.相補物712315..713670;出芽酵母);MPD:(X97557;出芽酵母)、(AF290095;エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium))、および(U49260;ヒト);ならびにIDI:(NC_000913、3031087..3031635;大腸菌)および(AF082326;ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis))。
いくつかの態様では、HMGRのコード領域は、野生型HMGRの膜貫通ドメインを欠く短縮型HMGR(「tHMGR」)をコードするSEQ ID NO:13に記載されている。HMGRの膜貫通ドメインは、同酵素の調節部分を含み、かつ触媒活性を含まない。
任意の既知のMEV経路の酵素のコード配列は、コードされた酵素のアミノ酸配列中における標的変化を作製するために、当技術分野で既知のさまざまな方法で改変可能である。変種MEV経路酵素のアミノ酸は一般に、任意の既知のMEV経路の酵素のアミノ酸配列に実質的に類似しており、すなわち少なくとも1アミノ酸が異なり、および少なくとも2アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、または少なくとも20アミノ酸が異なるが、典型的には約50アミノ酸を越えて異ならない。配列の変化は、置換、挿入、または欠失の場合がある。例えば、後述するように、ヌクレオチド配列は、特定の宿主細胞のコドンバイアスのために改変する可能である。加えて、コードされたタンパク質中における保存的なアミノ酸変化につながる、1つもしくは複数のヌクレオチド配列の差を導入することができる。1つの態様では、HMGSとHMGRの所望の相対レベル、およびHMG-CoAの非毒性レベルは、改変されたHMGSタンパク質もしくはHMGRタンパク質、またはこの両方を発現させることで達成される。
プレニルトランスフェラーゼ
いくつかの態様では、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞は、上述するように、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列(群)を含む1つもしくは複数の核酸;およびプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むように遺伝的に修飾される。
プレニルトランスフェラーゼは、さまざまな鎖長のプレニル二リン酸の生成を生じる、IPPの連続的な縮合を触媒する広範囲の酵素を含む。適切なプレニルトランスフェラーゼは、IPPとアリルのプライマー基質の縮合を触媒して、約2イソプレン単位〜約6000イソプレン単位もしくはこれ以上、例えば2イソプレン単位(ゲラニルピロリン酸シンターゼ)、3イソプレン単位(ファルネシルピロリン酸シンターゼ)、4イソプレン単位(ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ)、5イソプレン単位、6イソプレン単位(ヘキサデシルピロリン酸シンターゼ)、7イソプレン単位、8イソプレン単位(フィトエンシンターゼ、オクタプレニルピロリン酸シンターゼ)、9イソプレン単位(ノナプレニルピロリン酸シンターゼ、10イソプレン単位(デカプレニルピロリン酸シンターゼ)、約10イソプレン単位〜約15イソプレン単位、約15イソプレン単位〜約20イソプレン単位、約20イソプレン単位〜約25イソプレン単位、約25イソプレン単位〜約30イソプレン単位、約30イソプレン単位〜約40イソプレン単位、約40イソプレン単位〜約50イソプレン単位、約50イソプレン単位〜約100イソプレン単位、約100イソプレン単位〜約250イソプレン単位、約250イソプレン単位〜約500イソプレン単位、約500イソプレン単位〜約1000イソプレン単位、約1000イソプレン単位〜約2000イソプレン単位、約2000イソプレン単位〜約3000イソプレン単位、約3000イソプレン単位〜約4000イソプレン単位、約4000イソプレン単位〜約5000イソプレン単位、または約5000イソプレン単位〜約6000イソプレン単位もしくはこれ以上のイソプレノイド化合物を生成する酵素を含む。
適切なプレニルトランスフェラーゼは、ゲラニル二リン酸(GPP)シンターゼ、ファルネシル二リン酸(FPP)シンターゼ、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)シンターゼ、ヘキサプレニル二リン酸(HexPP)シンターゼ、ヘプタプレニル二リン酸(HepPP)シンターゼ、オクタプレニル(OPP)二リン酸シンターゼ、ソラネシル二リン酸(SPP)シンターゼ、デカプレニル二リン酸(DPP)シンターゼ、チクル(chicle)シンターゼ、およびガッタパーチャ(gutta-percha)シンターゼを含むがこれらに限定されないE-イソプレニル二リン酸シンターゼ;ならびにノナプレニル二リン酸(NPP)シンターゼ、ウンデカプレニル二リン酸(UPP)シンターゼ、デヒドロドリチル(dehydrodolichyl)二リン酸シンターゼ、エイコサプレニル二リン酸シンターゼ、天然ゴムシンターゼ、および他のZ-イソプレニル二リン酸シンターゼを含むがこれらに限定されないZ-イソプレニル二リン酸シンターゼを含むがこれらに限定されない。
さまざまな種に由来する、数多くのプレニルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列が知られており、および本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞の作製用に使用または修飾可能である。プレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で既知である。これについては例えば、ヒトのファルネシルピロリン酸合成酵素のmRNA(GenBankアクセッション番号J05262;ヒト);ファルネシル二リン酸合成酵素(FPP)の遺伝子(GenBankアクセッション番号J05091;出芽酵母);イソペンテニル二リン酸:ジメチルアリル二リン酸イソメラーゼの遺伝子(J05090;出芽酵母);Wang and Ohnuma(2000) Biochim. Biophys. Acta 1529: 33-48;米国特許第6,645,747号;シロイヌナズナのファルネシルピロリン酸合成酵素2(FPS2)/FPP合成酵素2/ファルネシル二リン酸シンターゼ2(At4gl7190)のmRNA(GenBankアクセッション番号NM_202836);イチョウ(Ginkgo biloba)のゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ(ggpps)のmRNA(GenBankアクセッション番号AY371321);シロイヌナズナのゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ(GGPS1)/GGPP合成酵素/ファルネシルトランストランスフェラーゼ(At4g36810)のmRNA(GenBankアクセッション番号NM_119845);シネチョコッカス・エロンガトゥス(Synechococcus elongatus)のファルネシルシンターゼ、ゲラニルゲラニルシンターゼ、ゲラニルファルネシルシンターゼ、ヘキサプレニルシンターゼ、ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(SelF-HepPS)の遺伝子(GenBankアクセッション番号AB016095)などを参照されたい。
コドン使用
いくつかの態様では、メバロン酸経路の酵素をコードするヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列が、特定の宿主細胞のコドンの好みを反映するように修飾される。例えば、ヌクレオチド配列は、いくつかの態様では、酵母のコドン優先性に合わせて修飾される。これについては例えば、Bennetzen and Hall(1982) J. Biol. Chem. 257(6): 3026-3031を参照されたい。別の非制限的な例として、ヌクレオチド配列は、他の態様では、大腸菌のコドン優先性に合わせて修飾される。これについては例えば、Gouy and Gautier(1982) Nucleic Acids Res. 10(22): 7055-7074;Eyre-Walker(1996) Mol. Biol. Evol. 13(6): 864-872を参照されたい。Nakamura et al.(2000) Nucleic Acids Res. 28(1): 292も参照されたい。
上述したように、いくつかの態様では、HMGSのコード配列のコドン使用は、HMGSのmRNAの翻訳のレベルが低下するように修飾される。コドン使用の修飾によるHMGSのmRNAの翻訳のレベルの低下は、配列をまれなコドンか、または宿主細胞が一般に使用しないコドンを含むように修飾することで達成される。特定の生物が、あるアミノ酸をコードする際に特定のコドンを使用する回数のパーセンテージを要約した、多くの生物体に関するコドン使用表が入手可能である。あるコドンは、他の「まれな」コドンより頻繁に使用される。配列中における「まれな」コドンの使用は一般に翻訳速度を減速させる。したがって例えば、コード配列は、翻訳速度には影響するが、翻訳される酵素のアミノ酸配列には影響しない1つもしくは複数のまれなコドンを導入することで修飾される。例えば、アルギニンをコードするコドンはCGT、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGの6つが存在する。大腸菌では、(個々の大腸菌におけるアルギニンの約40%をコードする)コドンCGTおよびコドンCGCが、(大腸菌におけるアルギニンの約2%をコードする)コドンAGGより高頻度で使用される。遺伝子の配列中のCGTコドンをAGGコドンに修飾しても、酵素の配列を変えないと考えられるが、遺伝子の翻訳速度を減速させる可能性は高い。
他の遺伝的修飾
いくつかの態様では、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を緩和する酵素をコードするヌクレオチド配列(群)を含む1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾された宿主細胞;ならびにテルペン生合成経路の中間体の促進された産生を達成するように、さらに遺伝的に修飾された宿主細胞、および/またはイソプレノイドもしくはイソプレノイド前駆体の産生を高めるように、さらに遺伝的に修飾された宿主細胞、および/または内因性のテルペン生合成経路の遺伝子が機能的に損なわれるように、さらに遺伝的に修飾された宿主細胞である。本明細書で用いる、「機能的に損なわれる(functionally disabled)」という表現は、修飾が、正常レベル未満で産生されるか、および/または、非機能的な核酸にコードされた遺伝子産物の産生をもたらす核酸の遺伝的修飾を意味する。このような遺伝的修飾(群)は、親株と比較して、特定のIPP、または株のメバロン酸の生産性(細胞1個あたりの産生量)を低下させる可能性があるが、HMG-CoAによって誘導される毒性の緩和は、培養物の総生産性(培養物の細胞密度を乗じた比生産性)が上昇するように細胞密度を高めると考えられる。
内因性のテルペン生合成経路の中間体の産生を促す遺伝的修飾は、宿主細胞におけるホスホトランスアセチラーゼのレベルおよび/または活性の低下を生じる遺伝的修飾を含むがこれらに限定されない。イソプレノイド生合成経路の中間体の細胞内濃度は、アセチル-CoAの細胞内濃度を増やすことで高められる。大腸菌は、細胞内のアセチル-CoAのかなりの部分を酢酸の状態で培地中に分泌する。アセチル-CoAの酢酸への変換に関与する最初の酵素であるホスホトランスアセチラーゼをコードする遺伝子ptaを欠失させると、酢酸の分泌は低下する。原核宿主細胞においてホスホトランスアセチラーゼのレベルおよび/または活性を低下させる遺伝的修飾は、親宿主細胞が、MEV経路の1つもしくは複数の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾される宿主細胞である場合に、特に有用である。
アセチル-CoAは、HMG-CoAの合成において、アセトアセチル-CoAチオラーゼとHMGSの両方に使用される反応物なので、一部の宿主細胞では、アセチル-CoAの細胞内プールの増大は、HMG-CoAの細胞内プールの増大に至る可能性があり、ひいては毒性作用に至る可能性がある。したがって、ホスホトランスアセチラーゼの総活性を低下させる遺伝的修飾は、HMG-CoAの蓄積に起因する、成長速度または最終細胞密度の低下に至る可能性があり、本発明の方法で修飾され得る親株を生じる可能性がある。または、ホスホトランスアセチラーゼの総活性を高める遺伝的修飾は、HMG-CoAの蓄積によって引き起こされる毒性作用を克服するために使用することができると考えられる。
いくつかの態様では、原核宿主細胞におけるホスホトランスアセチラーゼのレベルの低下を招く遺伝的修飾は、ホスホトランスアセチラーゼをコードする、原核宿主細胞の内因性のpta遺伝子を機能的に損なう遺伝的変異である。pta遺伝子は、可動遺伝因子(例えばトランスポゾンなど)の挿入;遺伝子産物が作られないか、または短縮されるか、およびアセチル-CoAの酢酸への変換に関して非機能性となるような、遺伝子の全体もしくは一部の欠失;遺伝子産物が作られないか、または短縮されるか、およびアセチル-CoAの酢酸への変換に関して非機能性となるような遺伝子の変異;遺伝子産物が作られないような、pta遺伝子の発現を制御する1つもしくは複数の制御エレメントの欠失または変異;ならびに他の変異を含む、任意のさまざまな方法で機能的に欠損させることができる。
いくつかの態様では、遺伝的に修飾された宿主細胞の内因性のpta遺伝子は欠失される。遺伝子を欠失させる任意の方法を使用することができる。pta遺伝子を欠失させる方法の1つの非制限的な例は、λRed組換え系を使用することである。Datsenko and Wanner(2000) Proc Natl Acad Sci USA 97(12): p.6640-5。pta遺伝子は、いくつかの態様では、MK、PMK、MPD、およびIDIをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞(例えば大腸菌)から欠失される。pta遺伝子は、いくつかの態様では、MK、PMK、MPD、およびIPPをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞(例えば大腸菌)から欠失される。pta遺伝子は、いくつかの態様では、MK、PMK、MPD、IPP、およびプレニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞(例えば大腸菌)から欠失される。
細胞内のアセチル-CoAのレベルを高めると考えられる他の修飾は、細胞内の乳酸デヒドロゲナーゼの総活性を低下させると考えられる修飾、細胞内の酢酸キナーゼの総活性を低下させると考えられる修飾、細胞内のアルコールデヒドロゲナーゼの総活性を低下させると考えられる修飾、2-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの総活性を低下させるような、トリカルボン酸サイクルに干渉すると考えられる修飾、もしくは(F1F0)H+-ATPシンターゼの総活性を低下させると考えられるような、酸化的リン酸化を妨げると考えられる修飾、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
細胞内のアセチル-CoAのレベルを低下させると考えられる他の修飾は、細胞内の乳酸デヒドロゲナーゼの総活性を高めると考えられる修飾、細胞内の酢酸キナーゼの総活性を高めると考えられる修飾、および細胞内のアルコールデヒドロゲナーゼの総活性を高めると考えられる修飾、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
いくつかの態様では、親宿主細胞は、HMG-CoAのレベルを高めるように上述したように遺伝的に修飾された宿主細胞であり;および内因性のDXP生合成経路の遺伝子が機能的に損なわれるようにさらに遺伝的に修飾された宿主細胞である。このような遺伝的に修飾された宿主細胞は、以下に詳述するようにHMG-CoAをメバロン酸に変換する酵素のスクリーニングに有用である。というのは、HMG-CoAによる毒性は、必要なイソプレノイドの産生に関して細胞がメバロン酸経路に依存することで悪化すると考えられるからである。
他の態様では、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞は、DXP生合成経路の遺伝子産物(群)をコードするヌクレオチド配列(群)を含む1つもしくは複数の核酸を含むように遺伝的に修飾された宿主細胞であり;および内因性のMEV生合成経路の遺伝子が機能的に損なわれるように、さらに遺伝的に修飾された宿主細胞である。このような宿主細胞は、技術的な理由のために、HMG-CoAによる毒性に関連する酵素のスクリーニングが、天然の状態でメバロン酸経路をイソプレノイドの産生に利用する生物体で最も容易に実施されるような状況で有用であると考えられる。
いくつかの態様では、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞が、MEV経路の1つもしくは複数の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸(群)で遺伝的に修飾された原核細胞の場合、宿主細胞は、内因性のDXP経路の1つもしくは複数の遺伝子が機能的に損なわれるように、さらに遺伝的に修飾される。機能的に損なわれ得るDXP経路の遺伝子は、以下の任意のDXP遺伝子産物をコードする遺伝子1つもしくは複数の遺伝子を含む:1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼ、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸還元イソメラーゼ、4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールシンターゼ、4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼ、2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-環状二リン酸シンターゼ、および1-ヒドロキシ-2-メチル-2-(E)-ブテニル4-二リン酸シンターゼ。
内因性のDXP経路の遺伝子は、可動遺伝因子(例えばトランスポゾンなど)の挿入;遺伝子産物が作られないか、または短縮されて酵素的に不活性となるような、遺伝子の全体もしくは一部の欠失;遺伝子産物が作られないか、または短縮されて酵素的に非機能性となるような、遺伝子の変異;遺伝子産物が作られないような、遺伝子の発現を制御する1つもしくは複数の制御エレメントの欠失もしくは変異;ほかの変異を含む、任意のさまざまな方法で機能的に損なわれ得る。
本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞を含む組成物
本発明はさらに、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞を含む組成物を提供する。本発明の組成物は、本発明の遺伝的に修飾された宿主細胞を含み;および、いくつかの態様では、部分的には、遺伝的に修飾された宿主細胞の意図された使用を元に選択される1つまたは複数のさらなる成分を含む場合がある。適切な成分は、塩類;緩衝剤;安定剤;プロテアーゼ阻害剤;細胞膜および/または細胞壁を保存するような化合物、例えばグリセロール、ジメチルスルフォキシドなど;細胞に適した栄養培地;ほかを含むがこれらに限定されない。
核酸
本発明は、HMGSおよび/またはHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(群)を提供する。核酸(群)は、含むか、または含むように遺伝的に修飾された親宿主細胞に導入されると、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性もしくは成長阻害を緩和する。したがって本発明の核酸は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を示す宿主細胞に導入されると、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性または成長阻害を緩和する。いくつかの態様では、本発明の核酸は、強力なプロモーターに使用可能に連結されたHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む。
いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトである。いくつかの態様では、発現コンストラクトは、コードされたHMGRの原核細胞における合成を可能とするコンストラクトである。いくつかの態様では、発現コンストラクトは、コードされたHMGRの真核細胞における合成を可能とするコンストラクトである。いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む(核酸は中コピー数のプラスミドである)。いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む(核酸は高コピー数のプラスミドである)。いくつかの態様では、本発明の核酸は、強力なプロモーターに使用可能に連結されたHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む(核酸は高コピー数のプラスミドである)。いくつかの態様では、本発明の核酸は、強力なプロモーターに使用可能に連結されたHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む(核酸は中コピー数のプラスミドである)。いくつかの態様では、本発明の核酸は、中コピーのプラスミド上で弱いプロモーターに使用可能に連結されたHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む。
いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGRに使用可能に連結されたアセトアセチル-CoAチオラーゼを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoA/HMGR融合タンパク質をコードする核酸は、アセトアセチル-CoAチオラーゼのコード配列をHMGRのコード配列と連結することで作られる。いくつかの態様では、融合タンパク質は、天然に存在する融合タンパク質である。他の態様では、融合タンパク質は天然に存在する融合タンパク質であり、およびHedl et al.((2002) J. Bacteriol. 184: 2116-2122)に記載されている融合タンパク質以外の融合タンパク質である。いくつかの態様では、本発明の核酸は、アセトアセチル-CoAチオラーゼおよびHMGSを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本発明の核酸は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGSおよびHMGRを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
いくつかの態様では、本発明の核酸は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトであり、発現コンストラクトは、以下の任意の参考文献に記載された発現コンストラクト以外の発現コンストラクトである:Kato-Emori et al. Mol Genet Genomics (2001) 265: 135-42、Learned RM, et al. PNAS. (1989) 86: 2779-83、T. Dairi, et al. Mol Gen Genet (2000) 262: 957-964、Allen, et al. Appl Environ. Microbio. (1997) 63: 3341-3344、Hedl, et al. J. Bacteriol.,(2002), 184: 2116-2122、Jackson, et al. Org. Lett.(2003) 5: 1629-1632、Randolph Y. Hampton, et al. (1994) Cell, 125: 299-312、Markus Veen, et al. FEMS Yeast Res (2003) 4: 87-95、Beach MJ, et al. J. Bacteriol (1989) 171: 2994-3001、Bischoff KM, et al. Protein Sci (1997) 6: 156-161、Friesen JA, et al. Biochemistry.(1997) 36: 2173-7、Frimpong, et al. J Biol Chem.(1994) 269: 11478-83、Panda, et al. Appl Microbiol Biotechnol (2004) 66: 143-152。
スクリーニング法
本発明は、HMG-CoA無毒化活性を有する遺伝子産物を同定するためのスクリーニング法;およびHMG-CoAの蓄積を阻害する薬剤を同定するための方法を提供する。1つの態様では、同定される遺伝子産物は、HMGR、例えば変種HMGRをコードする遺伝子産物である。1つの態様では、同定される遺伝子産物は、変種HMGRをコードする遺伝子産物であり、変種HMGRは、細胞内の総HMGR活性の上昇をもたらす。別の態様では、同定される遺伝子産物は、HMGS活性を低下させる産物を産生する。別の態様では、同定される遺伝子産物は、基質としてメバロン酸を利用する産物を産生する。別の態様では、同定される遺伝子産物は、MKをコードする産物を産生する。別の例では、同定される遺伝子産物は、細胞からのメバロン酸の輸送を可能とする。別の態様では、同定される遺伝子産物は、HMG-CoAリアーゼであるか、またはHMG-CoAリアーゼをコードする。別の態様では、同定される遺伝子産物は、コハク酸-ヒドロキシメチルグルタレートCoA-トランスフェラーゼをコードするか、またはコハク酸-ヒドロキシメチルグルタレートCoA-トランスフェラーゼである。
HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を低下させる遺伝子産物を同定するために、この方法は一般に、以下の段階を含む:a)候補遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を宿主細胞に導入することで試験細胞を作製する段階(宿主細胞はHMG-CoAを宿主細胞の成長を阻害するのに有効なレベルで産生する);ならびにb)候補遺伝子産物の発現が試験細胞の成長に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階。細胞内のHMG-CoAの蓄積を減少させる薬剤、および/または細胞内のHMGS活性のレベルを低下させる薬剤を同定するために、この方法は一般に、a)試験細胞に試験薬剤を接触させる段階(試験細胞はメバロン酸をメバロン酸経路を介して合成し、および試験細胞はHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す);ならびにb)試験薬剤が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。本明細書で用いる「判定する」という表現は、定量的な判定と定性的な判定の両方を意味し、したがって「判定する」という表現は本明細書で、「調べる」、「測定する」などと互換的に使用される。
本発明のスクリーニング法は、インビトロにおける細胞ベースのアッセイ法である。任意のさまざまな細胞を使用することができる。アッセイ法に使用される細胞は、いくつかの態様では、上記のような真核細胞である。他の態様では、アッセイ法に使用される細胞は、上記のような原核細胞である。
HMG-CoA無毒化活性を有する遺伝子産物の同定法
本発明は、HMG-CoA無毒化活性を有する遺伝子産物を同定するインビトロにおけるスクリーニング法を提供する。このように同定された遺伝子産物は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性の緩和に有用であり、したがって、イソプレノイド化合物またはイソプレノイド前駆体を産生させる方法に有用である。この方法は一般に、a)候補遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を宿主細胞に導入することで試験細胞を作製する段階(宿主細胞はHMG-CoAを、宿主細胞の成長を阻害するのに有効なレベルで産生する);ならびにb)候補遺伝子産物の発現が試験細胞の成長に及ぼす作用(もしあれば)を、宿主細胞と比較して判定する段階を含む。候補遺伝子産物がHMG-CoAの蓄積を減少させる能力、およびHMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を緩和する能力は、候補遺伝子産物の、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を低下させる能力によって判定される。宿主細胞と比較して試験細胞における成長阻害の低下は、外因性核酸が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を緩和するのに十分な活性を有する遺伝子産物をコードすることを意味する。宿主細胞は、HMG-CoAが産生される、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素を産生する宿主細胞である。いくつかの態様では、宿主細胞は、通常はメバロン酸をメバロン酸経路を介して産生せず、およびHMG-CoAが細胞内で産生されて、成長を阻害するレベルで蓄積するように、メバロン酸経路の1つもしくは複数の酵素をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された宿主細胞である。他の態様では、宿主細胞は、天然の状態でHMG-CoAを、成長を阻害するレベルで産生する宿主細胞であるか、または外因性のMEV経路の1つもしくは複数の遺伝子の導入以外の手段で同様に遺伝的に修飾された宿主細胞である。
HMG-CoAは宿主細胞で、宿主細胞の成長を阻害する量で産生され、例えばHMG-CoAの細胞内濃度は宿主細胞の成長を阻害する。典型的には、HMG-CoAは宿主細胞中に、HMG-CoAを産生しない対照宿主細胞の成長速度と比較して、または成長阻害量のHMG-CoAの合成につながらない条件で培養される宿主細胞の成長速度と比較して、宿主細胞の成長を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、またはこれ以上、阻害する量で蓄積する。いくつかの態様では、HMG-CoAは宿主細胞の細胞内に、宿主細胞に致死的に作用する量で、例えば宿主細胞の細胞死を誘導する量で蓄積する。
いくつかの態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す宿主細胞は、メバロン酸またはIPPを通常、メバロン酸経路を介して合成しない細胞であり、およびメバロン酸経路の酵素(群)をコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された細胞である。例えば、いくつかの態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す宿主細胞は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の核酸で遺伝的に修飾された原核細胞であり、アセトアセチル-CoAチオラーゼ、HMGS、およびHMGRは細胞内で、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を生じる量で産生される。
他の態様では、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を示す宿主細胞は、メバロン酸またはIPPをメバロン酸経路を介して通常産生する細胞であり、および細胞内のHMG-CoAのレベルが上昇して、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を生じるように遺伝的に修飾された細胞である。
試験細胞はインビトロで、HMG-CoAが細胞内に、成長を阻害する量および/または細胞死を誘導する量で蓄積するような条件で培養される。いくつかの態様では、試験細胞は、HMGSまたはHMGRをコードするヌクレオチド配列の発現を誘導する誘導物質の存在下で培養され、同ヌクレオチド配列は、誘導型プロモーターの制御下に配置される。HMG-CoAが試験細胞中に、試験細胞の成長を阻害する量で存在するか否かは、細胞成長阻害を検出する任意の標準的な方法で判定可能である。例えば成長は、細胞を液体培養で成長させる場合は、光学密度の上昇として測定されることが多く;および成長阻害は、成長阻害量のHMG-CoAを産生する宿主細胞の液体培養物の(例えば600 nmにおける)光学密度を、成長阻害量の中間体を産生する同じ宿主細胞の液体培養物の光学密度と比較することで検出可能である。成長阻害は、適切な成長培地を含む寒天上にプレーティングされた細胞のコロニーの大きさを視覚的に精査することで検出することも可能でもある。
本発明のスクリーニング法は、外因性核酸を宿主細胞に導入して試験細胞を作製する段階を含み、宿主細胞は、HMG-CoAが成長阻害量で産生される場合は、成長阻害を示す細胞である。HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸が宿主細胞に導入されると、試験細胞の成長阻害は緩和される。したがって、成長阻害の低下は、外因性核酸がHMGRをコードし、コードされたHMGRが、HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を緩和するレベルで産生されるか、および/またはHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を緩和する活性を有することを意味する。成長阻害の低下は、成長阻害の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはこれ以上の低下を含む。いくつかの態様では、外因性核酸にコードされたHMGRは、細胞成長速度が、HMG-CoAが成長阻害量で産生されないような条件で成長させたときに、宿主細胞の細胞成長速度に回復されるように成長阻害を低下させる。
いくつかの態様では、例えば、外因性核酸が複数の外因性核酸(例えば、cDNAライブラリー、ゲノムライブラリー、それぞれ異なるアミノ酸配列を有するHMGRをコードする核酸の集団など)である場合、外因性核酸は、複数の宿主細胞に導入されて、複数の試験細胞が形成される。試験細胞は、いくつかの態様では、液体培養で、HMG-CoAが細胞内に成長阻害量および/または細胞死誘導量で蓄積するような条件で成長され:HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む試験細胞は、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含まない試験細胞が死滅する一方で、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含まない試験細胞、またはHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸を含む試験細胞より速く成長する。
いくつかの態様では、このような方法はさらに外因性核酸を試験細胞から単離する段階を含み、外因性核酸は、本発明のスクリーニング法で成長阻害を緩和する核酸である。外因性核酸を試験細胞から単離する方法は当技術分野で周知である。適切な方法は、当技術分野で標準的な任意のいくつかのアルカリ溶解法を含むがこれらに限定されない。
いくつかの態様では、本発明のスクリーニング法はさらに、候補遺伝子産物の特徴を解析する段階を含む。このような態様では、HMGRをコードするヌクレオチド配列(群)を含む外因性核酸は試験細胞から単離され;遺伝子産物(群)は細胞内で、および/またはインビトロの無細胞転写/翻訳系で発現される。いくつかの態様では、外因性核酸を対象にヌクレオチド配列解析を行い、遺伝子産物のアミノ酸配列をヌクレオチド配列から推定する。いくつかの態様では、遺伝子産物のアミノ酸配列はアミノ酸配列の公的データベースに収載された他のアミノ酸配列と比較されて、既知のタンパク質のアミノ酸配列に対して任意の有意なアミノ酸配列同一性が存在するか否かが判定される。加えて、遺伝子産物(群)を細胞内で、および/またはインビトロの無細胞転写/翻訳系で発現させ;ならびに遺伝子産物(群)が代謝経路の中間体もしくは他の代謝物に及ぼす作用を解析する。
試験細胞を作製するために、宿主細胞への導入に適した外因性核酸は、細胞から単離された天然の核酸;細胞からの単離の前もしくは後に(例えば変異によって)修飾された天然の核酸;合成核酸、例えば、実験室で核酸の化学合成の標準的な方法で合成された、または組換え法で作製された核酸;インビトロにおいて、細胞内または無細胞系で増幅された合成もしくは天然の核酸;および他の核酸を含むがこれらに限定されない。
宿主細胞への導入に適した外因性核酸は、ゲノムDNA;RNA;細胞から単離されたmRNAの相補的DNA(cDNA)コピー;組換えDNA;およびインビトロで、例えばインビトロにおける標準的な無細胞DNA合成法で合成されたDNAを含むがこれらに限定されない。いくつかの態様では、外因性核酸は、原核細胞または真核細胞のいずれかの細胞から作製されたcDNAライブラリーである。いくつかの態様では、外因性核酸は、原核細胞または真核細胞のいずれかの細胞から作製されたゲノムDNAライブラリーである。
核酸は、いくつかの態様では、宿主細胞への導入前に変異が導入される。核酸に変異を導入する方法は当技術分野で周知であり、および十分確立された化学的な変異導入法、放射線による変異誘発、および合成中に核酸に変異を導入する方法を含む。DNAに変異を導入する化学的な方法は、化学的変異原、例えばエチルメタンスルホン酸(EMS)、メチルメタンスルホン酸(MMS)、N-ニトロソ尿素(ENU)、N-メチル-N-ニトロ-N'-ニトロソグアニジン、4-ニトロキノリンN-オキシド、硫酸ジエチル、ベンゾピレン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、トリエチルメラミン、アクリルアミドの単量体、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジエポキシアルカン(例えばジエポキシブタン)、ICR-170、ホルムアルデヒド、塩酸プロカルバジン、酸化エチレン、ジメチルニトロソアミン、7,12ジメチルベンツ(a)アントラセン、クロランブシル、ヘキサメチルホスホラミド、ビスルファン(bisulfan)などへのDNAの曝露を含む。放射線による変異誘導剤は、紫外線照射、γ-照射、X線、および高速中性子衝撃を含む。変異は例えば、トリメチルソラレンを紫外光とともに使用することで核酸中に導入することもできる。可動DNA因子、例えば転移因子のランダム挿入または標的挿入は、変異を生じさせる別の適切な方法である。変異は、無細胞のインビトロ系における増幅中に、例えば誤りの多いポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのPCR法で核酸中に導入することができる。変異は、DNAシャッフリング法(例えば、エクソンシャッフリング、ドメインスワッピングなど)で、インビトロにおいて核酸中に導入することができる。変異は、細胞内のDNA修復酵素の欠損の結果として核酸に導入することも可能であり、例えば、細胞内における、変異型DNA修復酵素をコードする変異遺伝子の存在は、細胞のゲノム上における高頻度の変異(すなわち約1つの変異/100の遺伝子〜1つの変異/10,000の遺伝子)を生じると予想される。DNA修復酵素をコードする遺伝子の例は、Mut H、Mut S、Mut L、およびMut U、ならびに他の種におけるこれらの相同物(例えばMSH 1-6、PMS 1-2、MLH 1、GTBP、ERCC-1など)を含むがこれらに限定されない。核酸に変異を導入する方法は当技術分野で周知であり、任意の既知の方法が使用に適している。これについては例えば、Stemple (2004) Nature 5: 1-6;Chiang et al.(1993) PCR Methods Appl 2(3): 210-217;Stemmer (1994) Proc. Natl. Acad. Sci USA 91: 10747-51;ならびに米国特許第6,033,861号および第6,773,900号を参照されたい。
多くの態様では、外因性核酸は発現ベクター中に挿入される。原核宿主細胞および真核宿主細胞における使用に適切な発現ベクターは当技術分野で既知であり、および任意の適切な発現ベクターを使用することができる。適切な発現ベクターについては既に説明した。
上述したように、外因性核酸は、いくつかの態様では、細胞から、または天然の環境に存在する生物体から単離される。いくつかの態様では、細胞または生物体の核酸に、核酸が細胞または生物体から単離される前に変異が導入される。他の態様では、外因性核酸は、インビトロにおいて無細胞系で合成される。
宿主細胞への導入に適した外因性核酸は、さまざまな種の細胞または生物体から単離された核酸を含む。外因性核酸の適切な供給源は、6つの生物界、例えば細菌(例えば真正細菌);古細菌;原生生物;真菌;植物界;および動物界の任意の細胞または生物体を含むがこれらに限定されない。外因性核酸の適切な供給源は、藻類(例えば緑藻類、紅藻類、灰色植物、ラン藻)を含むがこれらに限定されない原生生物界の植物様の成員;原生生物の真菌様の成員、例えば、粘菌、水生菌類など;原生生物の動物用の成員、例えば鞭毛藻類(例えばミドリムシ)、アメーバ様生物(例えばアメーバ)、胞子虫類(例えばアピコンプレックス門、ミクソゾア門、微胞子虫類)、および繊毛虫類(例えばゾウリムシ)を含む。外因性核酸の適切な供給源は、以下の任意の門の成員を含むがこれらに限定されない真菌界の成員を含む:担子菌門(ホウキタケ;例えば、ハラタケ科、テングダケ科、イグチ科(Boletus)、アンズタケ科などの成員);子嚢菌(例えばサッカロミセス属を含む子嚢菌類);Mycophycophyta(地衣類);接合菌類(接合菌);および不完全菌門を含む。外因性核酸の適切な供給源は、以下の任意の門の成員を含むがこれらに限定されない植物界の成員を含む:コケ類(例えばコケ)、ツノゴケ類(例えばツノゴケ)、Hepaticophyta(例えばゼニゴケ)、ヒカゲノカズラ門(例えばヒカゲノカズラ)、有節植物門(例えばトクサ類)、Psilophyta(例えばマツバラン)、ハナヤスリ門、シダ門(例えばシダ)、ソテツ門、イチョウ門、球果植物門、マオウ門、および被子植物(例えば顕花植物)を含む。外因性核酸の適切な供給源は、以下の任意の門の成員を含むがこれらに限定されない動物界の成員を含む:海綿動物門(カイメン);板形動物門;直泳動物門(海洋無脊椎動物の寄生虫);菱形動物門;刺胞動物門(サンゴ、イソギンチャク、クラゲ、ウミエラ、ウミシイタケ、シーワスプ(sea wasp));有櫛動物門(クシクラゲ);扁形動物門(扁形動物);紐形動物門(紐形動物);Ngathostomulida (jawed worm);腹毛動物門;輪形動物門;鰓曳動物門;動吻動物門;胴甲動物門;鉤頭動物門;内肛動物門;線虫門;類線形動物門;有輪動物門;軟体動物門(軟体動物);星口動物門(ホシムシ);環形動物門(体節をもつ動物);緩歩動物門(緩歩動物);有爪動物門(ベルベットウォーム);節足動物門(鋏角亜門、多足類、六脚類、および甲殻網類の亜門を含み、鋏角亜門は例えばクモ類、節口類、およびウミグモ類を含み、多足類は例えばムカデ類(ムカデ)、ヤスデ類(ヤスデ)、Paropoda、およびコムカデ類を含み、六脚類は昆虫を含み、および甲殻網は、エビ、オキアミ、フジツボなどを含む);箒虫動物門;苔虫動物門(moss animal);腕足動物門;棘皮動物門(例えばヒトデ、sea daisies、ウミシダ(feather star)、ウニ、ナマコ、クモヒトデ類、brittle basketなど);毛顎動物門(ヤムシ);半索動物門(キボシムシ);および脊索動物門を含む。脊索動物門の適切な成員は、尾索動物亜門(尾索動物;尾索動物(Ascidiacea)、タリア網、および幼形綱を含む);頭索動物亜門(ナメクジウオ);メクラウナギ網(メクラウナギ);および脊椎動物亜門の亜門の任意の成因を含み、脊椎動物亜門の成員は例えば、Petromyzontida(ヤツメウナギ)、Chondrichthyces(軟骨魚類)、条鰭亜綱(条鰭類)、Actinista (coelocanths)、肺魚亜綱(ハイギョ)、爬虫類(爬虫類、例えばヘビ、ワニ、クロコダイル、トカゲなど)、鳥類(鳥);ならびに哺乳類(哺乳類)の成員を含む。適切な植物は、任意の単子葉植物および任意の双子葉植物を含む。
したがって例えば、適切な細胞は、原生動物、植物、真菌、藻細胞、酵母、爬虫類、両生類、哺乳類、海洋微生物、海洋無脊椎動物、節足動物、等脚類、昆虫、クモ網、古細菌、および真正細菌を含むがこれらに限定されない生物体に由来する細胞を含む。
いくつかの態様では、外因性核酸は、生物体から回収された組織から;生物体から単離された特定の細胞または細胞群から;ほかの供給源から単離される。例えば生物体が植物の場合、外因性核酸は、いくつかの態様では、木部、師部、形成層(cambium layer)、葉、根などから単離される。生物体が動物の場合、外因性核酸は、いくつかの態様では、特定の組織(例えば、肺、肝臓、心臓、腎臓、脳、脾臓、皮膚、胎児組織など)から、または特定の細胞のタイプ(例えば、神経細胞、上皮細胞、内皮の細胞、星状細胞、マクロファージ、グリア細胞、島細胞、Tリンパ球、Bリンパ球など)から単離される。
いくつかの態様では、外因性核酸は合成核酸である。いくつかの態様では、合成核酸は、変種HMGR、例えば、天然のHMGRまたは他の親HMGRに由来するアミノ酸とは1つもしくは複数のアミノ酸配列が異なるHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、変種HMGRはアミノ酸配列が、天然の親HMGRのアミノ酸配列と比較して1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、もしくはアミノ酸、またはこれ以上異なる。いくつかの態様では、変種HMGRはアミノ酸配列が、天然の親HMGRのアミノ酸配列と比較して約10アミノ酸〜約15アミノ酸、約15アミノ酸〜約20アミノ酸、約20アミノ酸〜約25アミノ酸、約25アミノ酸〜約30アミノ酸、約30アミノ酸〜約35アミノ酸、約35アミノ酸〜約40アミノ酸、約40アミノ酸〜約50アミノ酸、もしくは約50アミノ酸〜約60アミノ酸、またはこれ以上異なる。
いくつかの態様では、変種HMGRは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、既知のHMGRをコードする核酸とハイブリダイズする核酸にコードされる。他の態様では、変種HMGRは、中程度のハイブリダイゼーション条件で、既知のHMGRをコードする核酸とハイブリダイズする核酸にコードされる。他の態様では、変種HMGRは、低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件で、既知のHMGRをコードする核酸とハイブリダイズする核酸にコードされる。
いくつかの態様では、天然のHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に、任意のさまざまな確立した方法で変異が導入されて、変種HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が得られる。適切な変異誘発法は、前述したように、化学的変異法、放射線誘導による変異誘発、および合成中に核酸に変異を導入する方法を含むがこれらに限定されない。したがって例えば、天然のHMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、上述した手順で化学的突然変異誘発要因に曝露されるか、または放射線による変異の対象となるか、もしくは誤りの多いPCRの対象となり、および変異が導入された核酸が、遺伝的に修飾された宿主細胞(群)に上記の手順で導入される。「変異誘発型(mutator)」の細菌株を使用するランダム変異誘発法も当技術分野で周知であり、および変種HMGRの作製に使用可能である。これについては例えば、Greener et al., 「An Efficient Random Mutagenesis Technique Using an E. coli Mutator Strain」、Methods in Molecular Biology, 57: 375-385(1995)を参照されたい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する飽和突然変異誘発法も周知であり、使用可能である。これについては例えば米国特許第6,171,820号を参照されたい。変種HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、HMG-CoAの蓄積によって引き起こされる成長阻害を緩和する能力を元に同定される。
HMGRをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で既知であり、およびHMGRをコードする任意の既知のヌクレオチド配列を変化させることで、本発明の方法に使用される合成核酸を得ることができる。
いくつかの態様で特に関心が寄せられるのは、高い酵素活性を示し、したがってHMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を低下させる変種HMGRの同定である。高い酵素活性を示す変種HMGRは、親HMGRと比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、もしくは少なくとも約25倍、またはこれ以上、大きい酵素活性を示す。
HMG-CoAの蓄積を減少させる薬剤の同定法
本発明はさらにHMG-CoAの蓄積を阻害するか、または減少させる薬剤を同定するインビトロスクリーニング法;細胞内のHMGS活性のレベルを低下させる薬剤を同定する方法;HMG-CoAの産生を阻害する薬剤を同定する方法;およびHMG-CoAを別に化合物へ変換するか、または変換を加速する薬剤を同定する方法を提供する。これらの方法は一般に、a)メバロン酸をメバロン酸経路を介して合成し、およびHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す試験細胞に試験薬剤を接触させる段階;ならびにb)試験薬剤がHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害に及ぼす作用(もしあれば)を判定する段階を含む。成長阻害の低下は、薬剤が、成長阻害レベルのHMG-CoAの細胞内における蓄積を減少させることを意味する。
細胞内のHMG-CoAの蓄積を阻害または減少させ、かつ細胞の成長を促進する薬剤は、本明細書に記載されているように、イソプレノイド化合物の産生を高めるのに有用である。細胞内のHMG-CoAの蓄積を阻害または減少させ、かつ細胞内のHMGS活性のレベルを低下させる薬剤は、コレステロール生合成を低下させるのにも有用であり、したがって、高血中コレステロールレベルに関連するさまざまな疾患の治療に有用である。
「候補薬剤」、「試験薬剤」、「薬剤」、「物質」、および「化合物」という表現は、本明細書で互換的に使用される。候補薬剤は、数多くの化合物クラスの、典型的には合成、半合成、または天然の無機分子もしくは有機分子を含む。候補薬剤は、合成化合物または天然化合物の大規模ライブラリーに存在する薬剤を含む。例えば、合成化合物ライブラリーはMaybridge Chemical Co.(Trevillet, Cornwall, UK)、ComGenex (South San Francisco, CA)、およびMicroSource (New Milford, CT)から市販されている。まれな化合物ライブラリーはAldrich (Milwaukee, Wis.)から入手可能であり、使用することもできる。または、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の状態の天然化合物のライブラリーはPan Labs(Bothell, WA)から入手可能なほか、または容易に作製することができる。
候補薬剤は、分子量が50ダルトンを上回り、かつ約2,500ダルトン未満の低分子量の有機化合物または無機化合物の場合がある。候補薬剤は、タンパク質との構造的な相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含む場合があり、および少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含む場合があり、ならびに少なくとも2つの官能基を含む場合がある。候補薬剤は、環状炭素もしくは複素環の構造、および/または上記の官能基の1つもしくは複数が置換された芳香族構造もしくはポリ芳香族の構造を含む場合がある。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはこれらの組み合わせを含む生体分子中にも見出される。
本発明のアッセイ法は対照を含み、適切な対照は、試験薬剤の非存在下でHMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す細胞を含む。一般に、さまざまな濃度に対するさまざまな反応を見るために、複数のアッセイ法用の混合物が、さまざまな薬剤濃度について平行に処理される。典型的には、このような濃度の1つは、負の対照、すなわちゼロ濃度または検出レベル未満の対照となる。
薬剤を細胞に接触させる適切な期間は、経験的に決定することが可能であり、および一般に、薬剤の細胞内への侵入を可能とする、および薬剤が、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害に測定可能な作用を有することを可能とするのに十分な期間である。一般に適切な時間は10分〜24時間であるか、または約1時間〜約8時間である。
スクリーニング法は、多種多様な方法で設計可能であり、当技術分野で既知であるように、さまざまなアッセイ法の構成およびプロトコルを使用することができる。例えば、試験細胞(HMG-CoAの蓄積によって誘導される成長阻害を示す細胞)を、マルチウェルプレート(例えば96ウェルプレート、384ウェルプレートなど)のウェルにプレーティングし、および、さまざまな試験薬剤をプレートのウェルに個別に添加することができる。スクリーニング法は、自動化することができる。
候補薬剤は、アッセイ法で使用される細胞に対して示す可能性のある任意の細胞毒性活性に関して、トリパンブルー色素排除法、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド)アッセイ法ほかの周知のアッセイ法で評価される。細胞毒性活性を示さない薬剤が候補薬剤とみなされる。
対象となる試験薬剤は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を、試験薬剤の非存在下において、対照と比較時に少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはこれ以上低下させる薬剤である。試験薬剤が細胞成長阻害に対する作用を有するか否かは、上述した標準的な方法で容易に判定される。
いくつかの態様では、試験薬剤は、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させる薬剤である。対象となる試験薬剤は、HMGS活性のレベルを、試験薬剤の非存在下において、対照と比較時に少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはこれ以上低下させる薬剤である。
試験薬剤が、細胞内のHMGS活性のレベルを低下させるか否かは、さまざまなアッセイ法で容易に判定される。1つの非制限的な例として、HMGSの酵素活性は、試験薬剤がHMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を低下させる、細胞試料に由来する細胞溶解物を対象に測定される。HMGSは、過剰なアセチル-CoAおよびアセトアセチル-CoAを、細胞抽出物または精製済みの酵素を含む緩衝液(例えば100 mMのTris-HCl)に添加することで調べることができる。5分後に、(例えば試料を凍結して)反応を停止させ、生成したHMG-CoAをLC-MSで測定することができる。
別の例として、細胞内のHMGSのmRNAのレベルを測定する。細胞内の特定のmRNAの存在および/またはレベルに関する核酸の解析には、いくつかの方法が利用できる。mRNAは、直接調べることができるほか、cDNAに逆転写して解析することができる。核酸は、解析用に十分な量を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手法で増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応の使用については、Saiki, et al.(1985), Science 239: 487;手法の総説はSambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press 1989, pp.14.2-14.33に記載されており;さまざまなPCRプロトコルが、例えばPCR Protocols J. Bartlett and D. Stirling, eds.(2003) Humana Pressを含むいくつかの教科書で詳述されている。
検出可能な標識を増幅反応に含めることができる。適切な標識は、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、またはN,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば32P、35S、3H;などを含む。標識は2段階のシステムとすることが可能であり、増幅されたDNAに、高親和性の結合パートナー(例えばアビジン、特異的抗体など)を有するビオチン、ハプテンなどを結合させ、結合パートナーが検出可能な標識に結合されるようにする。標識は、一方または両方のプライマーに結合させることができる。または、増幅に使用されるヌクレオチドのプールを、増幅産物中に標識が取り込まれるように標識する。
試料中の核酸量を決定する多種多様な方法は当業者に既知であり、対象となる特定の方法には、Pietu et al., Genome Res.(June 1996) 6: 492-503;Zhao et al., Gene (April 24, 1995) 156: 207-213;Soares, Curr. Opin. Biotechnol.(October 1997) 8: 542-546;Raval, J. Pharmacol Toxicol Methods (November 1994) 32: 125-127;Chalifour et al., Anal. Biochem(February 1, 1994) 216: 299-304;Stolz & Tuan, Mol. Biotechnol.(December 1996) 6: 225-230;Hong et al., Bioscience Reports (1982) 2: 907;およびMcGraw, Anal. Biochem.(1984) 143: 298に記載された方法がある。参照により本明細書に組み入れられるWO 97/27317に開示された方法も対象となる。
特定の試料中のタンパク質の発現レベルを決定する、いくつかの方法が利用できる。例えば、検出には、細胞または組織切片の、対象タンパク質に特異的な標識抗体による、従来の方法で実施される染色を利用することができる。細胞質内の分子を染色するために、細胞を透過性とする。対象となる抗体が細胞試料に添加され、およびエピトープとの結合を可能とするように十分な期間、通常は少なくとも約10分間、インキュベートする。抗体は、放射性同位元素、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または直接検出用の他の標識で標識することができる。または、第2段階の抗体または試薬を使用してシグナルを増幅する。このような試薬は当技術分野で周知である。例えば、一次抗体にビオチンを結合させ、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させたアビジンを第2段階の試薬として添加する。最終的な検出では、ペルオキシダーゼの存在下で色が変化する基質を使用する。または、二次抗体に蛍光化合物、例えばフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなどを結合させる。抗体結合の有無は、解離済みの細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡観察、放射線撮影、シンチレーション測定などを含む、さまざまな方法で判定することができる。
実施例
以下の実施例は、本発明の作製法および使用法の完全な開示および記述を当業者に提供するために示すものであり、発明者らが、発明者らの発明と見なす範囲を限定することを意図したものではなく、以下に示す実験が、実施された全てまたは唯一の実験であることを示すことを意図したものでもない。使用された数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期すように努力したが、ある程度の実験誤差および偏差は考慮されねばならない。特に示された部分を除き、割合(part)は重量の割合、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏、圧力はほぼ大気圧である。標準的な省略形を使用することができる。例えば、bp、塩基対;kb、キロ塩基対;pl、ピコリットル;sまたはsec、秒;min、分;hもしくはhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロ塩基;bp、塩基対;nt、ヌクレオチド;i.m.、筋肉内;i.p.、腹腔内;s.c、皮下;など。
実施例1:メバロン酸のインビボにおける産生はアモルファジエンの産生を制限する
以下の株、ベクター、成長条件、および解析法を、以下の例で使用した。
株、プラスミド構築、および成長培地

いずれもInvitrogenから入手した大腸菌株TOP10およびDH10Bをクローニングおよびプラスミド構築に使用した。大腸菌DH10Bを、イソプレノイドの産生、成長、および代謝物のアッセイ法に使用した。
成長培地
本明細書に記載された、さまざまな組換えベクターを有する大腸菌株のクローニングおよび増殖に関しては、ミラー(Miller)の改変が施されたルリアブロス(Sigma-Aldrich)にプラスミド選択用の適切な抗生物質を添加して使用した。産生、成長、および代謝物のアッセイ法に関しては、改変された(「遺伝的に修飾された」または「組換え型の」)大腸菌株を、ミラーの改変を施し、1%(wt/vol)のグリセロール、および適切な抗生物質を含むルリアブロス(LB)で成長させた。培地の補給(media supplementation)に使用したDL-メバロン酸は、1容の2 MのDL-メバロノラクトン(Sigma-Aldrich)を1.02容の2 MのKOHと混合し、37℃で30分間インキュベートすることで調製した(Campos et al.(2001) Biochem. J. 353: 59-67)。プラスミドを維持するために、適切であれば、必要な抗生物質を成長培地に添加した。Rocheから入手したイソプロピル-ベータ-D-チオガラクトシド(IPTG)、およびSigma-Aldrichから入手したL-アラビノースをプロモーター系の誘導に使用した。
プラスミド/オペロンの構築
異種メバロン酸経路の多重遺伝子オペロンを米国特許出願公開第20030148479号および第20040005678号、ならびにMartin et al.(2003) Nat. Biotech. 21(7): 796-802に記載された手順で集合させた。MevTオペロンは、大腸菌由来の遺伝子AtoB、出芽酵母由来のHMGS、および「tHMGR」と命名された出芽酵母由来の短縮型HMGR1をコードする。MevTオペロンは、アセチル-CoAのメバロン酸への変換に関与する酵素をコードする(図2)。集合されたオペロンを、配列の決定を目的として、Invitrogen TOPO TAクローニングシステム(Carlsbad, CA)を用いてpCR4 TOPOベクターにクローニングした。pCR4 TOPOベクターへの連結、および大腸菌TOP10細胞の形質転換は、製造業者の指示書に従って実施した。
生化学的経路の発現は、しばしば特定の発現レベルで最適となるので、プラスミドのコピー数およびプロモーターの強度が、クローニングされた経路の発現に及ぼす作用を決定するために、MevTオペロンを、さまざまな発現ベクターにクローニングした。MevTオペロンを、中コピー数のアラビノース誘導型のプラスミドpBAD24(Guzman et al.(1995) J Bacteriology 177: 4121-4130, M. Ehrmann et al., (1997) Proc. Natl. Acad Sci USA 94: 13111-13115)のSalI切断部位に、空のベクターとpCR4 TOPO中のMevTオペロンの両方をSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpBAD24MevT(SEQ ID NO:1)と命名した(米国特許出願公開第20030148479号、第20040005678号)。
MevTオペロンを、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33(Guzman et al.(1995) J. Bacteriology 177: 4121-4130;Hiszczynska-Sawicka.(1997) PLASMID 38: 174-179)のXmaI-PstI切断部位にも、空のベクターとpCR4 TOPO中のMevTオペロンの両方をXmaI制限酵素およびPstI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpBAD33MevT(SEQ ID NO:2)と命名した(前掲のMartin et al.(2003)を参照)。
MevTオペロンを、修飾型のPLACプロモーター(より弱いプロモーター)の制御下に配置するために、pBAD33MevTのaraC-PBADのNsiI-XmaI断片を、修飾型のPLACプロモーターを含むpBBR1MCS(Kovach et al.(1995) Gene 166: 175-176)のNsiI-XmaI断片と置換した。pBAD33MevTとpBBR1MCSの両方の切断をNsiI制限酵素およびXmaI制限酵素を使用して行ってT4 DNAリガーゼを用いて連結した。結果として得られたプラスミドをpMevT(SEQ ID NO:3)と命名した(米国特許出願公開第20040005678号、および前掲のMartin et al.(2003)を参照)。
pMevT用の空のプラスミドの対照を作製するために、pMevTからMevTオペロンをSalI制限酵素を使用して切り出した。PLACプロモーターのみを含む結果として得られたプラスミドをpLac33と呼ぶことにした(Martin et al.(2003)、前掲)。
メバロン酸からFPP、IPP、およびDMAPPを作るために、MBISと呼ばれるオペロンを、米国特許出願公開第20030148479号、第20040005678号、および前掲のMartin et al.(2003)に記載された手順で構築した。MBISは、出芽酵母由来の遺伝子群であるMK、PMK、およびMPD、ならびに大腸菌由来のidiおよびispAを含む(図2)。既に述べたように、MBISオペロンは、プラスミドpBBR1MCS-3(Kovach et al. (1995)、前掲)中に、修飾型のPLACプロモーターの制御下に集合された。このIPTG誘導型のプラスミドをpMBIS(SEQ ID NO:4)と命名した。
FPPからアモルファ-4,11-ジエンを作るために、合成アモルファジンシンターゼの遺伝子を、米国特許出願公開第20040005678号、および前掲のMartin et al.(2003)に記載された手順で作製した。合成遺伝子を、上記の手順でベクターpTrc99A(Amann et al.(1988) Gene 69: 301-315)にクローニングし、このIPTG誘導型のプラスミドをpADS(SEQ ID NO:5)と命名した。
MevTオペロンの発現増加によって引き起こされる毒性の源を決定するために、MevTオペロンの個々の遺伝子、およびこれらの組み合わせを増幅して発現ベクターにクローニングした。
pBAD24MevTからAtoBを、標準的なPCRプロトコルで、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。AtoBを、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpAtoB(SEQ ID NO:6)と命名した。
pBAD24MevTからHMGSを、標準的なPCRプロトコルで、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。HMGSを、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpHMGS(SEQ ID NO:7)と命名した。
短縮型HMGRを、pBAD24MevTから、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコル、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。短縮型HMGR(tHMGR)を、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33、および中コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD18(Guzman et al.(1995) J. Bacteriology 177: 4121-4130)のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られた低コピー数のプラスミドをpHMGR(SEQ ID NO:8)と命名し、および結果として得られた中コピー数のプラスミドをpBAD18HMGR(SEQ ID NO:9)と命名した。
HMGSおよび短縮型HMGRのみを含むオペロンを、標準的なPCRプロトコル、ならびにHMGSの5'端およびHMGRの3'端に相補的なプライマーを使用してpBAD24MevTから2つの遺伝子セグメントを増幅することで作製した。HMGSおよびHMGRの断片を、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のSalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpHMGSR(SEQ ID NO:10)と命名した。
実施例に記載されたプラスミドコンストラクトのヌクレオチド配列を図13のA〜Cから図24のA〜Cに示し;および、さまざまな特徴を強調して示す。コード配列、ターミネーター、および起点を太字の文字、または太字の下線で示す。プロモーター配列にはボックスを付す。図13のA〜Cおよび図21のA〜Cに記載された「修飾型pBR322起点」は、短縮型のrop遺伝子を含み、したがって、(非修飾型の)pBR322起点より多いコピー数のプラスミドを提供し;修飾型pBR322起点を含むプラスミドのプラスミドのコピー数は、約30コピー/細胞〜約50コピー/細胞と推定される。これについては例えば、Guzman et al.((1995) J. Bacteriol. 177: 4121-4130;およびEhrmann et al.((1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 13111-13115)を参照されたい。
細胞成長の測定
大腸菌の培養物の細胞成長を、600 nmにおける培養物の光学密度(OD600)を調べることで測定した。バッフル付フラスコ中の培養物から回収した試料のOD600を、UV分光光度計(Beckman)を使用して測定する一方で、マイクロタイター96ウェルプレート中の培養物のOD600をマイクロタイタープレートリーダー(SpectraMax, Molecular Devices)を使用して測定した。
アモルファ-4,11-ジエンの測定
アモルファ-4,11-ジエンの濃度を、ガラス製のガスクロマトグラフィー(GC)用のバイアル内で0.7 mLの試料を0.7 mlの酢酸エチル(Sigma-Aldrich)で抽出することで決定した。次に試料を、Fisher Vortex Genie2 ミキサー(Fischer Scientific)の最大速度で3分間、振盪した。試料を静置して沈殿を生じさせ、酢酸エチル-水の乳濁液を分離した。
酢酸エチル培養物の抽出物をHewlett-Packard 6890ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)で解析した。LEAP Technologiesのオートインジェクターを、2つの相混合物の酢酸エチル層中にサンプリングニードルを伸長するようにプログラムした。DB-5カラム(例えばAgilent Technologies, Inc., Palo Alto, Calif.から入手可能)およびヘリウムのキャリアガスを使用したGCで1μLの試料を分離した。各試料のオーブンサイクルは、80℃で2分間、30℃/分で温度を160℃温度まで上昇させ、3℃/分で温度を170℃の温度まで上昇させ、50℃/分で温度を300℃まで上昇させ、および300℃で2分間維持するようにした。分離済みの試料を、イオンを189 m/zおよび204 m/zで追跡するHewlett-Packardのモデル5973質量選択検出器で解析した。過去の質量スペクトルは、このGCプロトコルで、アモルファ-4,11-ジエンシンターゼの産物がアモルファジエンであること、およびアモルファジエンの保持時間が7.9分であることを示していた。アモルファ-4,11-ジエンの純粋な標準物質は入手できないので、濃度をカリオフィレン同等物に関して定量しなければならない。カリオフィレンの標準曲線は、Sigma (St. Louis, Mo.)の純粋な標準物質を元に既に決定されている。アモルファ-4,11-ジエン濃度は、2つの化合物の質量スペクトルにおける、総イオン数に対する189 m/zおよび204 m/zのイオンの相対量に基づく。
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A(HMG-CoA)の測定
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A(HMG-CoA)の細胞内レベルを、大腸菌細胞を成長培地から分離し、細胞の代謝を停止させ、およびHMG-CoAを細胞からトリクロロ酢酸(TCA)を用いて抽出し、ならびにHMG-CoAの濃度を液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)で測定することで決定した。細胞の代謝を速やかに停止させ、および細胞を培地から分離するために、レイヤード層別化TCA抽出を利用した。細胞培養物のサンプリングに先立ち、層別化TCAおよびシリコーン油試料チューブを準備した。15 mlのFalconチューブ(Fischer Scientific)内に、500μlの10%トリクロロ酢酸(溶媒は重水)(いずれもSigma-Adrich)をチューブの底に添加後に2 mlのシリコーン油(AR200、Fluka)の層を添加した。準備した試料チューブを氷浴/水浴にセットして、シリコーン油層の粘性を、サンプリング時における層の逆転を避けるために高めた。
10 mlの細胞培養物を、15 mlの試料チューブに、シリコーン油層上に慎重に添加した。試料チューブを、Alegra遠心器を使用して最高速度で4℃で速やかに3分間、遠心分離した。この期間中、遠心力が、細胞をシリコーン油層内を通過させてTCA層内へと移動させることで、細胞が培地から分離され同時に細胞が溶解して代謝が停止する。
細胞を遠心分離して沈殿させた後に、培地の層を吸引して除去した。次にTCA層を2 mlの遠心分離用チューブに移し、および1 mlの0.5 Mのトリ-n-オクチル-アミン1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(いずれもAldrich)で中和した。水層を除去し、フィルターで濾過してLC/MSでアッセイ法を行った。
水性のTCA抽出物をHewlett-Packard 1100 LC/MSで解析した。50μLの試料をC-18逆相HPLCカラム(Varian)で2成分勾配溶媒系を使用して分離した。溶媒Aは100 mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH 6)とし、溶媒Bを70% 100 mM酢酸アンモニウム緩衝液および30%アセトニトリルとした。HPLCカラムは、各試行において、8%の溶媒B(溶媒Aは92%)で10分間かけて平衡化した。勾配プロファイルは、8%溶媒B(0分の時点)〜100%溶媒B(15分の時点)とし、および28分後まで100%溶媒Bによるイソクラティックとした。
分離されたHMG-CoA試料を、イオン912 m/zを追跡する質量選択検出器で解析した。抽出されたHMG-CoAの保持時間および質量スペクトルは、市販のHMG-CoA(Sigma)を用いて確認した。
メバロン酸塩(メバロン酸)の測定
改変大腸菌の培養物のメバロン酸塩(メバロン酸)の濃度をGC/MS解析で決定した。560μLの大腸菌培養物を、ガラス製のGCバイアル中で140μLの300 mM HClと混合し、メバロン酸塩を酸からラクトン型へ、メバロン酸からメバロノラクトンへ変換した。700μLの酢酸エチルを各バイアルに添加した後に、試料をFisher Vortex Genie 2ミキサー(Fischer Scientific)で最大速度で3分間、振盪した。
酸性化培養物の酢酸エチル抽出物を、Hewlett-Packard 6890ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)で解析した。LEAP Technologiesのオートインジェクターを、サンプリングニードルを2つの相混合物の酢酸エチル層中に伸長するようにプログラムした。1μLの試料を、DB-5カラム(例えばAgilent Technologies, Inc., Palo Alto, Calif.から入手可)、およびヘリウムキャリアガスを使用してGCで分離した。各試料のオーブンサイクルは、B.H. Woollenら(B.H. Woollen et al. J Chromatogr. B. 760(2001) 179-184)に記載された方法を一部改変した。各試料のオーブンサイクルは、75℃で2分間、温度を20℃/分で150℃の温度に上昇させ、温度を15℃/分で250℃に上昇させ、温度を50℃/分で300℃に上昇させ、および300℃で2分間かけて停止した。分離された試料を、イオン71 m/zを追跡するHewlett-Packardモデル5973質量選択検出器で解析した。抽出されたメバロノラクトンの保持時間および質量スペクトルを、市販のDL-メバロノラクトン(Sigma)を使用して確認した。
結果
外因性のメバロン酸経路を含むように改変された大腸菌におけるイソプレノイド産生は、メバロン酸の産生によって、しばしば制限される。メバロン酸の産生の増加は、産生するように改変された宿主細胞で、イソプレノイドの増加に至る可能性がある。したがって、メバロン酸の産生の増加につながるHMG-CoAによる毒性の緩和は、イソプレノイドの産生の上昇に至る。
大腸菌におけるメバロン酸経路に由来するイソプレノイド産生を改善するために、異種経路の限定的な段階を決定する必要があった。これを行うために、上記のプラスミドpMevT、pMBIS、およびpADSで、大腸菌の1つの株DH10Bを標準的な方法で形質転換した。形質転換体を、50μg/mlのカルベニシリン、5μg/mlのテトラサイクリン、および25μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。株の1個のコロニーを、LB寒天プレートから、同じ抗生物質を含む5 mlのLB液体培地に移した。この種培養物を37℃で攪拌しながら、成長が定常期に至るまでインキュベートした。
IPTGによるオペロンおよびADSの両方の発現を誘導することで、大腸菌からのアセチル-CoAの供給によってアモルファジエンの産生が可能となる。どちらのオペロンが、アモルファジエンの産生を制限しているのかを判定するために、全3種類のプラスミドを含む大腸菌を、LB培地および1%(wt/vol)のグリセロールならびに適切な抗生物質からなる液体培地を含む多数の振盪フラスコ内でインキュベートした。振盪フラスコに、5 mlの種培養物から播種した。培養物を37℃で、連続攪拌しながらインキュベートした。播種の2時間後に、0.5 mMのIPTGを各培養物に添加して、オペロンの発現を誘導した。加えて、10 mMおよび20 mMのメバロン酸を播種の2時間後に、個々の培養物に添加した。同培養物を37℃で、連続攪拌しながらインキュベートした。複数の時点において、株の細胞成長およびアモルファジエン産生のアッセイ法を行った。
図4に示すように、培養物に添加するメバロン酸の量を増やすと、3つ全てのオペロンを発現する大腸菌株に由来するアモルファジエンの産生が増した。この結果は、MevTオペロンによるインビボにおけるメバロン酸の産生が、このような試験系においては、セスキテルペンであるアモルファジエンの産生を制限することを示している。
図4.外因性メバロン酸のさまざまな濃度の培養物に由来する改変メバロン酸経路[pMevT、pMBIS、pADS]を使用した大腸菌株におけるアモルファジエン産生の比較。1%のグリセロールを含むLB培地に、メバロン酸を添加しないか(0 mM)、10 mMのメバロン酸、または20 mMのメバロン酸を添加した。
実施例2:より強いプロモーター系からのMevTオペロンの発現の増加、および、より多いコピー数のプラスミドベクターは成長阻害を生じる。
以下の例は、メバロン酸経路の「前半部」(アセトアセチルチオラーゼ、HMGS、およびHMGR)の過剰発現の増加が、修飾型宿主細胞の成長阻害に至る可能性があることを示す。
大腸菌におけるメバロン酸のインビボにおける産生を高めるために、MevTオペロンを、MevT遺伝子の発現増加をもたらすと考えられる発現系に移した。大腸菌DH10Bを、以下のMevTプラスミド(発現を高める順に記載)で形質転換した:pMevTおよびpTrc99A(pMevTおよびpTrc99Aの両方で同じ宿主細胞を形質転換した)、pBAD33MevT、およびpBAD24MevT。加えて、対応する空の対照プラスミドで大腸菌DH10Bを形質転換した:pLac33とpTrc99A(同じ宿主に2つのプラスミド)、pBAD33とpBAD24。pMevTおよびpLac33の修飾型PLACプロモーターを、pTrc99A上のLacIQのコピーによって対照とするために、pMevTおよびpLac33をpTrc99Aと共に形質転換した。
pMevTおよびpTrc99A、またはpLac33およびpTrc99Aを含む株の形質転換体を、50μg/mlのカルベニシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。残りの株の形質転換体を、50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。各株の1個のコロニーを、LB寒天プレートから、同じ抗生物質を含む5 mlのLB液体培地に移した。この種培養物を、37℃で攪拌しながら、成長が定常期に至るまでインキュベートした。6つの種培養物を使用して、LB培地に1%(wt/vol)のグリセロールと抗生物質を含むものを含む96ウェルのタイタープレートに播種した。マイクロタイタープレートリーダー内における37℃での連続攪拌の2時間後に、株を、0.5 mMのIPTG(pMevTおよびpLac33の誘導用)、または2 mMのアラビノース(pBAD33MevT、pBAD24MevT、pBAD33、およびpBAD24の誘導用)のいずれかによって誘導した。誘導後に、培養物のインキュベートを37℃で連続的に攪拌しながら継続した。各0.2 mLの培養物の細胞成長を、10分毎にマイクロタイタープレートリーダーで測定した。
図5に示すように、pMevTに含まれる弱い修飾型のPLACプロモーターからのMevTの誘導は、空のプラスミド対照(pLac33/pTrc99A、pBAD33、およびpBAD24)と比較して、細胞成長に実質的な変化を引き起こさなかった。しかしながら、pBAD33MevTのaraC-pBADプロモーター系からのMevTオペロンの発現増加は成長阻害を引き起こした。pBAD24MevTの場合のように、araC-PBADプロモーター系を保持しながらプラスミドのコピー数を増やすことでMevTの総発現をさらに増やすことは、成長阻害の問題を悪化させるだけである。これらのデータからわかるように、MevTオペロンの発現を、修飾型のPLACプロモーター系を有する中コピーのプラスミドから、araC-PBADプロモーター系を有する中コピーのプラスミドに、および最終的には、araC-PBADプロモーター系を有する高コピーのプラスミドに高めることは、毒性の昂進を改変株に引き起こす。
図5.大腸菌細胞の成長に対するMevTオペロンの発現増加の効果。空プラスミドpLac33+pTrc99A、pBad33、およびpBAD24を有する大腸菌と、MevTオペロンpMevT+pTrc99A、pBAD33MevT、およびpBAD24MevT(発現が増加する順に記載)を有する大腸菌の比較。
実施例3:HMGSの発現増加は成長阻害を引き起こすが、HMGSおよびHMGRの同時の発現増加は成長阻害を引き起こさない。
以下の例は、実施例2で説明したように、メバロン酸経路の前半部の発現増加によって引き起こされる成長阻害が、HMG-CoAの産生を触媒するHMGSの発現に起因することを示す。本発明の方法で提供されるような、HMGSとともにHMG-CoAが反応物である反応を触媒するHMGRの発現は、この毒性を避ける。
MevTオペロンの発現増加によって引き起こされる毒性の源を決定するために、MevTオペロンの個々の遺伝子、およびこれらの組み合わせを増幅して発現ベクターにクローニングした。AtoBをpBAD24MevTから、標準的なPCRプロトコル、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。AtoBを、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpAtoB(SEQ ID NO:6)と命名した。HMGSをpBAD24MevTから、標準的なPCRプロトコル、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。HMGSを、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpHMGS(SEQ ID NO:7)と命名した。短縮型HMGRをpBAD24MevTから、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコル、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。短縮型HMGR(tHMGR)を、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33、および中コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD18(Guzman et al.(1995) J Bacteriology 177: 4121-4130)のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られた低コピー数のプラスミドをpHMGR(SEQ ID NO:8)と命名し、結果として得られた中コピー数のプラスミドをpBAD18HMGR(SEQ ID NO:9)と命名した。
HMGSおよび短縮型HMGRのみを含むオペロンを、pBAD24MevTに由来する2つの遺伝子セグメントを標準的なPCRプロトコル、ならびにHMGSの5'端およびHMGRの3'端に相補的なプライマーを使用して増幅することで作製した。HMGS断片およびHMGR断片を、低コピーのアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のSalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpHMGSR(SEQ ID NO:10)と命名した。
MevTオペロンの発現増加に関連する成長阻害の原因を決定するために、同オペロンを個々の成分に分けた。個々の遺伝子をそれぞれ発現するプラスミドpAtoB、pHMGS、およびpHMGR、ならびにHMGSとHMGRの組み合わせを発現するpHMGSRを上述の手順で構築した。pBAD33(空のプラスミド対照)およびpBAD33MevTとともに、これら4種類のプラスミドで大腸菌DH10Bを標準的な手順で形質転換した。形質転換体を、50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。LB寒天プレートから各株の1個のコロニーを、同じ抗生物質を含む5 mlのLB液体培地に移した。この種培養物を37℃で振盪しながら、成長が定常期に至るまでインキュベートした。
6つの種培養物を使用して、0.2 ml容のLB培地、1%(wt/vol)のグリセロール、および抗生物質を含む96ウェルのマイクロタイタープレートに播種した。96ウェルプレート上の培養物を、マイクロタイタープレートリーダー内で37℃で連続的に振盪し、および播種の2時間後に2 mMのアラビノースで誘導した。各培養物の細胞成長を図6に示す。
図6に示すように、空のプラスミド対照と比較して、大腸菌(それぞれプラスミドpAtoBおよびpHMGRを有する株)におけるAtoBおよびHMGRの発現増加は細胞成長に有意な作用を示していない。しかしながら、(pHMGSを有する株における)HMGSの発現増加は実質的な成長阻害を引き起こしている。興味深いことに、(pHMGSRを有する株に見られるような)HMGSとHMGRの両方の同時発現の増加に関しては、細胞成長は、空のプラスミド対照の場合と同程度に回復されている。毒性のこのような緩和は、HMGRが、HMGSによって産生されたHMG-CoAを、(大腸菌の任意の既知の酵素によって分解されるのではなく)メバロン酸に変換可能なことに起因すると仮定される。続いてメバロン酸は、文献(Campos et al.(2001) Biochem. J. 353: 59-67;およびMartin et al.(2003) Nature Biotech. 21(7): 796-802)に記載されているように、細胞膜を通過して培地中に放出された。しかしながら、(pBAD33MevTを有する株に見られるような)MevTオペロン中の3つ全ての遺伝子の発現増加も細胞成長を阻害する。このデータは、AtoBのみの発現増加が成長阻害を引き起こさないことを示すので、HMGSおよびHMGRとのAtoBの同時発現の増加によって引き起こされた毒性は、AtoBによるアセトアセチル-CoAの産生の増加に起因する可能性が高い。大腸菌のケトチオラーゼ(AtoB)の発現増加によるアセトアセチル-CoAの産生の増加は、HMGSに追加的な基質を提供し、およびメバロン酸の産生を劇的に増加させる(T. Kuzuyama.(2004) Biosci. Biotechnol. Biochem. 68(4): 931-934)。しかしながら、仮にHMGSの総活性がHMGRの総活性より大きければ、HMG-CoAが蓄積して成長阻害を引き起こす可能性が高くなる。このような仮説を検証するために、改変株におけるアシル-CoA経路の中間体を測定した。
図6.個々のMevT遺伝子、およびこれらの組み合わせを高レベルで発現する大腸菌の細胞成長の比較。プラスミドpBad33(空のプラスミド対照)、pAtoB、pHMGR、pHMGS、pHMGSR、およびpBAD33MevTを有する大腸菌の細胞成長。
実施例4:HMGSの発現増加によって引き起こされる毒性は、同タンパク質の酵素活性の上昇に起因し、単にタンパク質そのものの産生増加に起因するのではない。
以下の例は、HMGSの発現によって観察される毒性が、同酵素の発現に起因するのではなく、その活性、すなわちアセトアセチル-CoAおよびアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生に起因することを示す。すなわち、観察される成長阻害は、追加的な酵素の産生が招く代謝的な負荷に起因するのではなく、むしろ、細胞内の酵素の作用による。
完全長ではあるが触媒的に不活性なHMGSの作製
大腸菌における出芽酵母のHMGS単独の高発現によって引き起こされる毒性は、HMGSの代謝活性とは対照的に、異種タンパク質の高レベルの産生によって引き起こされる毒性に起因する可能性がある(B.R. Glick.(1995) Biotech Advances. 13(12): 247-261)。この2つの可能性を区別するために、完全長ではあるが触媒的に不活性なHMGSを作製した。野生型の出芽酵母のHMGSタンパク質の活性部位を、酵母HMGSのタンパク質配列を文献(L.L. Rokosz et al.((1994) Arch. Biochem. Biophysics. 312(1), 1-13)に挙げられた複数の哺乳類のHMGSタンパク質の活性部位の配列と比較することで決定した。出芽酵母のHMGSの活性部位の残基は、哺乳類のHMG-CoAシンターゼの活性部位のアミノ酸残基と同一であった。
Rokoszら((1994)、前掲)は、ヒトのHMG-CoAシンターゼの触媒性システインアミノ酸をアラニンに変化させると、触媒的に不活性な完全長のHMG-CoAシンターゼタンパク質が得られることを報告している。したがって、pBAD33MevT中における、出芽酵母のHMGSの活性部位の触媒性システインアミノ酸を、部位特異的変異導入(QuickChange部位特異的変異導入キット、Stratagene)でアラニンアミノ酸と置換した。HMGS(C159A)と命名した、酵母HMGSの159位のアミノ酸をアラニンと置換した変異体を、オペロン全体のDNA配列によって検証した。HMGS(C159A)変異体を含むプラスミドpBad33MevTをpBAD33MevT(C159A)(SEQ ID NO:11)と命名した。大腸菌DH10BにおけるpBAD33MevT(C159A)の高発現は、LCタンデムMS(液体クロマトグラフィータンデム質量分析)による測定で、検出可能なメバロン酸を産生せず、液体クロマトグラフィー-質量分析による測定でMHG-CoAを産生しなかった。この結果は、HMGS(C159A)変異体も触媒的に不活性であることを示している。
変異型のHMG-CoAシンターゼのみを発現するプラスミドを構築するために、HMGS(C159A)をpBAD33MevT(C159A)から、標準的なPCRプロトコル、ならびに遺伝子の5'端および3'端に相補的なプライマーを使用して増幅した。HMGS(C159A)遺伝子を、低コピー数のアラビノース誘導型のプラスミドpBAD33のXmaI-SalI切断部位に、空のベクターとPCR産物の両方をXmaI制限酵素およびSalI制限酵素で切断してT4 DNAリガーゼで連結することでクローニングした。結果として得られたプラスミドをpHMGS(C159A)(SEQ ID NO:12)と命名した。
成長阻害の原因の見極め
大腸菌におけるHMGSの高発現が成長阻害を引き起こす原因を見極めるために、野生型HMGSの高発現の作用を、完全長で触媒的に不活性なHMGSであるHMGS(C159A)の高発現の作用と比較した。プラスミドpBAD33(空のプラスミド対照)、pHMGS、pHMGS(C159A)、pBAD33MevT、およびpBAD33MevT(C159A)で大腸菌DH10Bを標準的な手順で形質転換した。形質転換体を、50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。各株の1個のコロニーを、LB寒天プレートから、同じ抗生物質を含む5 mlのLB液体培地に移した。この種培養物を37℃で攪拌しながら、成長が定常期に至るまでインキュベートした。
5つの異なる種培養物を、0.2 ml容のLB培地、1%(wt/vol)のグリセロール、および抗生物質を含む96ウェルのマイクロタイタープレートへの播種に使用した。96ウェルプレートの培養物をマイクロタイタープレートリーダー内で37℃で連続的に振盪し、および播種の2時間後に2 mMのアラビノースで誘導した。各培養物の細胞成長を図7に示す。
図7からわかるように、対照(pBAD33を有する株)と比較して、大腸菌(pHMGSを有する株)におけるHMGSの高発現が成長阻害を引き起こすが、大腸菌(pHMGS(C159A)を有する株)におけるHMGS(C159A)変異体の高発現は成長阻害を引き起こさない。pHMGSとpHMGS(C159A)間の唯一の差は、触媒性システインのアラニンへの変換なので、得られた結果は、野生型HMGSの高発現によって引き起こされた毒性が、同タンパク質の酵素活性に起因し、単に、異種タンパク質の高発現によって引き起こされ得る成長阻害ではないことを示している(B.R. Glick.(1995) Biotech Advances. 13(12): 247-261)。さらに、不活性なMevTオペロンを高レベルで発現する大腸菌(pBAD33MevT(C159A)を有する株)は、対照と同じ成長プロファイルを示すが、(pBAD33MevTを有する株における)機能性のMevTオペロンの高発現は細胞成長を阻害する。この結果は、MevTオペロンの全ての遺伝子の高発現によって引き起こされる成長阻害が、異種タンパク質の高発現によって引き起こされる成長阻害に起因するのではないことを示している。
加えて図7は、HMG-CoAの細胞内蓄積によって引き起こされたMevTオペロンの高発現に由来する毒性(上記の実施例5および実施例6を参照)が、HMGSの活性を低下させることで緩和され得ることを示している。この例では、HMGSの活性はゼロまで低下されているが、メバロン酸の産生を可能としながら成長阻害を緩和するHMGS活性のレベルの低下が見られる。酵素活性に関してバランスの取れた経路の高発現は、細胞培養物の単位容積あたりのメバロン酸の産生の増加を生じる。
図7.触媒的に不活性なHMGSの高発現が大腸菌の細胞成長に及ぼす作用。プラスミドpBad33(空のプラスミド対照)、pBAD33MevT、pBAD33MevT(C159A)(不活性なHMGSを含む)、pHMGS、およびpHMGS(C159A)(不活性なHMGSを含む)を有する大腸菌の細胞成長の比較。
実施例5:MevTオペロンの発現に関する大腸菌の成長阻害はHMG-CoAの細胞内蓄積に起因する。
以下の例は、MevTオペロンの発現時に見られる成長阻害がHMG-CoAの蓄積に起因することを示している。
プラスミドpBAD33(空のプラスミド対照)、pHMGS、pHMGSR、およびpBAD33MevTを有する大腸菌DH10B株を非誘導性の条件で、5 mlのLB培地(抗生物質を含む)中で37℃で一晩成長させた。一晩培養物を、100 mlのLB培地、1%(wt/vol)のグリセロール、および抗生物質を含むバッフル付振盪フラスコへの播種に使用した。培養物を37℃で連続的に振盪し、および播種の2時間後に2 mMのアラビノースで誘導した。各株におけるHMG-CoAの細胞内レベル、および各培養物の細胞成長を測定し、得られた結果を、それぞれ図8および図9に示した。
図8および図9からわかるように、空のベクター対照(pBAD33を有する株)と比較して、(pHMGSを有する株における)HMGSの高発現はHMG-CoAの蓄積および成長阻害を引き起こす。興味深いことに、(pHMGSRを有する株における)HMGSとHMGRの両方の高レベルの同時発現は、成長阻害を引き起こさず、および検出可能なレベルのHMG-CoAを蓄積せず、ならびに全般的に、これらの点に関して対照と類似している。しかしながら、(pBAD33MevTを有する株における)大腸菌におけるMevTオペロンにおけるAtoB、HMGS、およびHMGRの相対的な同時高発現は、後の時点で成長阻害およびHMG-CoAの蓄積を引き起こす。
大腸菌は天然の状態で、AtoBの天然の発現、および短鎖脂肪酸の分解からアセトアセチル-CoAを低レベルで産生する。図8および図9に示す結果から、大腸菌におけるHMGSのみの高発現が、アセトアセチル-CoAの天然の供給源に由来するHMG-CoAを産生することがわかる。HMG-CoAは大腸菌にとって天然の存在ではないので、大腸菌における任意の酵素が作用するか否か、および細胞膜を通過するか否かは不明であり;したがってHMG-CoAは細胞内に蓄積する。あるレベルでHMG-CoAは細胞過程を阻害する。しかしながら、HMGSおよびHMGRがともに高発現されると、HMGSによるアセトアセチル-CoAの天然の供給源から産生されるHMG-CoAのメバロン酸への変換が可能となる。メバロン酸は細胞膜を通過し、および培地中に蓄積することになる。これに加えて、細胞外濃度の高いメバロン酸は大腸菌の成長に有意な作用を及ぼさないようである(Martin et al.(2003)、前掲)。
図8.メバロン酸経路コンストラクトを発現する大腸菌株のHMG-CoAの細胞内レベル。pBad33(空のプラスミド対照)、pHMGS、pHMGSR、およびpBAD33MevTを有する大腸菌におけるHMG-CoAの蓄積
図9.メバロン酸経路コンストラクトを発現する大腸菌株の細胞成長。プラスミドpBad33(空のプラスミド対照)、pHMGS、pHMGSR、およびpBAD33MevTを有する大腸菌の細胞成長の比較。
HMGSおよびHMGRに付随するAtoBの高発現は、HMGSの基質の増加をもたらし、およびメバロン酸の産生を実質的に高める(T. Kuzuyama.(2004) Biosci. Biotechnol. Biochem. 68(4): 931-934);しかしながら、仮にHMGSの総活性がHMGRの総活性より大きいならば、中間体であるHMG-CoAも蓄積して成長阻害を引き起こすであろう。したがって1つの態様では、本発明は、細胞をHMGSに対してHMGRの発現を高めるように修飾する段階を含む、細胞内のHMG-CoAの蓄積による成長阻害毒性を緩和する方法を提供する。1つの態様では、HMGR活性はHMGS活性とほぼ等しいレベルに高められる。他の態様では、HMGR活性はHMGS活性の1.5倍、2倍、5倍、および10倍のレベルに高められる。
実施例6:HMGRの発現増加は、MevTの高発現によって引き起こされる成長阻害を緩和し、HMG-CoAの蓄積を減少させ、およびメバロン酸の産生を高める。
以下の例は、メバロン酸の産生を高め、かつHMGRの過剰発現に起因するHMG-CoAの蓄積によって引き起こされる毒性問題を克服することを可能とする方法を示す。
HMG-CoAの細胞内蓄積が大腸菌に毒性を示すことを明らかにし、および、この問題を修正する経路の最適化を開始するために、HMGRの活性を、MevTオペロンを高レベルで発現する株で高めた。大腸菌DH10Bを、2つのプラスミドの以下の組み合わせで形質転換し、pBAD33とpBAD18(空のプラスミド対照株)、pBAD33MevTとpBAD18、およびpBAD33MevTとpBAD18HMGRの3つの2重プラスミド系を作製した。形質転換体を、50μg/mlのカルベニシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートで選択した。各株の1個のコロニーを、LB寒天プレートから、同じ抗生物質を含む5 mlのLB液体培地に移した。この種培養物を37℃で振盪しながら、成長が定常期に至るまでインキュベートした。
3種類の異なる種培養物を使用して、100 mlのLB培地、1%(wt/vol)のグリセロール、および抗生物質を含むバッフル付振盪フラスコに播種した。培養物を37℃で連続的に振盪し、および播種の2時間後に、2 mMのアラビノースで誘導した。各培養物の細胞成長、各株におけるHMG-CoAの細胞内レベル、および各培養物で産生されたメバロン酸を、実施例1に記載された方法で測定した。3つの2重プラスミド系に関する結果を、それぞれ図10、図11、図12に示す。
図10および図11からわかるように、対照株(pBAD33およびpBAD18を有する株)と比較して、pBAD33MevTおよびpBAD18を有する株におけるMevTの高発現も、成長阻害およびHMG-CoAの蓄積を引き起こす。しかしながら、MevTを高レベルで発現する株(pBAD33MevTおよびpBAD18HMGRを有する株)におけるHMGRの発現増加は、成長阻害をある程度緩和し、およびHMG-CoAの蓄積を減少させる。加えて図12からわかるように、HMGRの発現増加はメバロン酸の産生上昇に至る。HMGRの発現を増加させることは、大腸菌細胞におけるHMGRの活性を高めるための、本発明の唯一の説明目的の方法である。HMGRの活性を高める本発明の他の方法によって類似の結果が得られる可能性がある。
HMGRの活性が高められ、およびMevTの発現が高い株におけるMBISおよびADSの発現は、アモルファジエンの産生の増加を生じる可能性がある。加えて、HMGRの活性の上昇、およびMevTの高発現によって引き起こされる毒性の緩和は、メバロン酸から対象イソプレノイドへの酵素経路が同時に発現されることを考えれば、任意のイソプレノイドの産生を高める可能性がある。
図10.HMGRの発現増加が、MevTオペロンを発現する大腸菌の細胞成長に及ぼす作用。プラスミドpBad33+pBad18(空のベクター対照)、pBad33MevT+pBad18、およびpBad33MevT+pBad18HMGRを有する大腸菌の細胞成長。
図11.HMGRの発現増加が、MevTオペロンを発現する大腸菌のHMG-CoAレベルに及ぼす作用。プラスミドpBad33+pBad18(空のベクター対照)、pBad33MevT+pBad18、およびpBad33MevT+pBad18HMGRを有する大腸菌のHMG-CoAの細胞内レベル。
図12.HMGRの発現増加が、MevTオペロンを発現する大腸菌のメバロン酸産生に及ぼす作用。プラスミドpBad33+pBad18(空のベクター対照)、pBad33MevT+pBad18、およびpBad33MevT+pBad18HMGRを有する大腸菌の培養物のメバロン酸レベル。
実施例7:メバロン酸を産生する宿主細胞に対する本発明の方法の応用
この実施例では、本発明の方法が、HMG-CoAレベルが毒性レベルに蓄積する、メバロン酸を産生する任意の宿主株にどのように応用可能かについて説明する。一般に宿主細胞は、「親」細胞を作製するために、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体(例えばメバロン酸、IPP、ポリプレニル二リン酸など)のより高いレベルを達成するようにいくつかの方法で修飾される。適切な修飾は例えば、アセチル-CoAの細胞内プールを増加させる修飾、アセトアセチル-CoAチオラーゼ活性のレベルを高める修飾、およびHMGS活性のレベルを高める修飾を含む。これらの修飾は、遺伝的もしくは化学的な改変、または転写物レベル、酵素レベル、または酵素の比活性の修飾を意図した処理によって達成可能であると考えられる。
親宿主細胞の成長特性が観察されれば、非修飾型の宿主細胞の成長特性と比較する。仮に親宿主細胞が、非修飾型の宿主細胞より成長が有意に遅い場合、観察される成長阻害は、HMG-CoAによる毒性に起因する可能性があり、および、結果として生じるメバロン酸またはイソプレノイドの産生のレベルは最適以下となると考えられる。
宿主細胞および親細胞におけるHMG-CoAのレベルは、成長阻害の推定理由を検証する、確立された抽出法およびLC-MS法(実施例1参照)によって決定される。仮に、HMG-CoAの単位バイオマス(乾燥細胞重量として測定される、または例えば600 nmにおける光学密度で測定されるバイオマス)あたりのレベルが修飾型の宿主細胞で高ければ、こうした測定値は、毒性がHMG-CoAの蓄積に起因するという結論を支持し、そして仮にそうであれば、細胞内のレベルを低下させることは、この毒性を緩和するように、および総メバロン酸、IPP、またはイソプレノイドの産生を高めるように作用するであろう。成長が阻害されるHMG-CoA産生細胞におけるHMG-CoAレベルの測定は、HMG-CoAの蓄積によって誘導される毒性を緩和する本発明の方法における必要な段階ではないが、このような測定は、ある態様では、時に実施される場合がある。
HMG-CoAによる毒性およびイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の産生の改善は、本発明を実施することで軽減可能である。例えば親宿主細胞は、いくつかの方法で遺伝的に修飾可能であり、結果的に、親宿主細胞と比較して高レベルのHMGRを産生する、遺伝的に修飾された宿主細胞が得られる。例えば、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含むベクターのコピー数は、例えば、プロモーターの制御下でHMGRを発現する高コピー数のプラスミドで親宿主細胞を遺伝的に修飾することで、親宿主細胞内で増える。別の例として、親細胞におけるHMGRのmRNAのレベルは、例えば、より強いプロモーターの制御下にあるHMGRをコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトで親細胞を遺伝的に修飾することで高まる。別の例として、親宿主細胞のhmgRの上流に位置するリボソーム結合部位を修飾して、高レベルのHMGRを産生する、遺伝的に修飾された宿主細胞を得る。遺伝的に修飾された宿主細胞の成長特性を観察し、および親宿主細胞の成長特性と比較することで、遺伝的に修飾された宿主細胞が、親細胞の成長阻害をわずかに示すか、または全く示さない際に方法が成功したか否かを判定できる。HMG-CoAによる毒性の緩和は、成長速度の上昇、および/または培養物の最終細胞密度の増加として観察される。
別の例として、親宿主細胞を、内因性のメバロン酸経路を有する細胞内のHMG-CoAのレベルを高めることで作製する。例えば、出芽酵母などの酵母細胞内のアセチル-CoAの細胞内レベルは、酵母細胞に変異を導入する(遺伝的に修飾する)ことで高められ、「親」宿主細胞が得られる。例えば、アセチル-CoAの細胞内レベルは、染色体上のピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子内に変異を導入することで高められる。これは、ピルビン酸デカルボキシラーゼを破壊する1段階遺伝子破壊(Rothstein、RJ.(1983) Methods Enzymol. 101, 202-211 One-step gene disruption in yeast)によって達成される。同様に、ピルビン酸デカルボキシラーゼの不活性な、または部分的に活性な対立遺伝子は、酵母を対象とした組込み型DNA形質転換によって作られる(Rothstein, R.(1991) Methods Enzymol. 194 281-301)。ピルビン酸デカルボキシラーゼのPCRベースの破壊は、株S288Cなどの、さまざまな出芽酵母株の事前ノックアウトによって達成される(Reid et al. Yeast. 2002 Mar 15; 19(4): 319-28., Mehdi, K. Yeast 2002 Jun 30; 19(9): 803)。このような改変は、ピルビン酸からアセトアルデヒドを介してエタノールに至る流れを低下させ、アセチル-CoAのレベルを間接的に高める。
アセチル-CoAの細胞内レベルの上昇は、次にアセトアセチル-CoAレベルの上昇をもたらす可能性がある。そしてこれは、HMG-CoAの細胞内レベルの上昇につながる可能性がある。HMG-CoAレベルの上昇を達成するために、アセトアセチルCoAチオラーゼ活性のレベル、および/またはHMGS活性のレベルを細胞内で高めることで、アセチル-CoAのHMG-CoAへの変換を増やすように、宿主細胞をさらに遺伝学的に修飾することが可能であり、最終的に、HMG-CoAの高い細胞内レベルを示す親酵母宿主細胞が得られる。酵母における複製および選択を可能とするために、ならびに酵母で活性を示すプロモーターを組み入れるように設計された任意のベクター(典型的には、プロモーターの下流の酵母のターミネーターも含む)が遺伝子を酵母で発現させるために使用される。酵母レプリコンの例は、2μまたはCEN6/ARSH4などのCENレプリコンを含み;選択マーカーの例はHIS3、TRP1、LEU2、またはURA3の各マーカーを含み;酵母プロモーターの例はCYC1、ADH、TEF、またはGPDの各プロモーターを含み;酵母ターミネーターの一例は、酵母のCYC1ターミネーターである。発現ベクターの例は、Mumberg D, Muller R, Funk M., Gene. 1995 Apr 14;156(1): 119-22に記載されている。さまざまな酵母ベクターを、さまざまな遺伝的背景における異種タンパク質の制御型発現に利用することができる。酵母の発現ベクターの別の例はpYES2(Invitrogen Corporation)である。
非修飾型の宿主酵母細胞に対する親宿主酵母細胞の成長特性は、各細胞を標準的な条件で、対象遺伝子を発現するプラスミドに対する選択を用いて、標準的な成長培地で個別に成長させることで比較される。酵母用培地の例は、酵母抽出物ペプトンデキストロース(YPD)、合成デキストロース最小培地(SD)、添加最小培地(SMM)、および合成完全(SCもしくはCM)培地を含む(Sambrook and Russell(2001) Molecular Cloning: A laboratory manual. ISBN 0-87969-577-3)。
仮に親宿主細胞の成長速度が、非修飾型の宿主酵母細胞の成長速度より有意に遅い場合、HMG-CoAの蓄積は、この毒性/成長阻害の原因となり得る。HMG-CoAの蓄積によって誘導される細胞成長阻害を克服するために、親酵母細胞を本発明の方法で遺伝的に修飾する。例えば、親酵母宿主細胞を、出芽酵母の染色体上の内因性のHMGR遺伝子を、同酵素のN末端の調節領域を欠くHMGRをコードする核酸と置換することで遺伝的に修飾する(Donald et al. Appl Environ Microbiol. 1997 Sep; 63(9): 3341-4. Polakowski et al. Appl Microbiol Biotechnol. 1998 Jan; 49(1): 66-71)ことで、細胞内のHMG-CoA活性のレベルを高める。仮に、遺伝的に修飾された宿主酵母細胞の成長特性と、親宿主酵母細胞の成長特性の比較が、成長速度の有意な上昇を示すならば、成長速度の上昇を、毒性のあるHMG-CoAの細胞内レベルの低下に帰することができる。
結果として、遺伝的に修飾された宿主株が産生するイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体の総レベルは、親宿主株が産生するレベルと比較して上昇することになる。
例えば、親出芽酵母および遺伝的に修飾された出芽酵母は、アモルファジエンシンターゼを発現するように改変される。例えば、アモルファジエンシンターゼの遺伝子(天然の青蒿(Artemisia annua)の遺伝子、大腸菌のコドンに最適化された遺伝子(Martin et al., 2003)、または酵母のコドンに最適化された遺伝子のいずれか)を、GAL1プロモーターの制御下でアモルファジエンシンターゼ遺伝子が転写されるように、pYES2のマルチクローニングサイトにクローニングする。宿主酵母細胞を、ウラシル栄養要求性を選択する組換えプラスミドで形質転換する。ウラシルおよびグルコースを含まない培地における成長後に、アモルファジエンシンターゼの発現を、ガラクトースの添加によって誘導する。HMG-CoAの細胞内レベルは、上述の1つもしくは複数の変異を導入することで、アモルファジエンシンターゼ産生酵母細胞では上昇し、親宿主酵母細胞が得られる。親宿主酵母細胞は、上述したように、例えば細胞内のHMGRのレベルを高めるように遺伝的に修飾される。親宿主酵母細胞、および遺伝的に修飾された宿主酵母細胞の培養物におけるアモルファジエンの産生を比較し;遺伝的に修飾された宿主細胞が産生するアモルファジエンのレベルは、親宿主細胞が産生するアモルファジエンのレベルより高い。アモルファジエンのレベルは、GC-MS解析で容易に測定される。
別の例として、HMG-CoAによる毒性は、メバロン酸経路を発現するように改変された親大腸菌細胞で観察される。HMG-CoAによる毒性は、例えば細胞内のHMGRのレベルを高めるように親細胞を遺伝的に修飾することで緩和される。この例は、上記の実施例1〜6で概説されている。当業者であれば、この方法が、本開示に鑑みて、任意の宿主細胞、または任意のコンストラクトを対象に実施可能なことを理解するであろう。
本発明を、本発明の特定の態様を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の真の意図および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えることが可能であること、および同等物で置き換えることが可能なことを理解すべきである。加えて、本発明の目的、意図、および範囲に対して、特定の状況、材料、組成物、工程、工程段階もしくは複数の過程に適合させるために多くの変更が可能である。このようなあらゆる変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
イソプレノイド生合成経路の中間体である、いずれもイソペンテニル二リン酸(IPP)およびジメチルアリル二リン酸(DMAPP)に由来する、ポリプレニル二リン酸、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ならびにゲラニルゲラニル二リン酸(GGPPP)を産生するイソプレノイド代謝経路の略図。 IPPの産生用のメバロン酸(MEV)経路の略図。 IPPおよびジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)の産生用のDXP経路の略図。 メバロン酸を添加しなかった培地、10 mMのメバロン酸を添加した培地、または20 mMのメバロン酸を添加した培地で培養された、IPPをメバロン酸経路を介して産生するように遺伝的に修飾された大腸菌(E. coli)株におけるアモルファジエンの産生を示す。 MevTオペロンの発現増加が、MevTオペロンが遺伝的に修飾された大腸菌の細胞成長に及ぼす阻害作用を示す。 発現増加が、MevTオペロンに含まれる個々の遺伝子、およびこれらの組み合わせが、細胞の成長に及ぼす作用を示す。 触媒的に不活性なHMGSが、大腸菌の細胞の成長に及ぼす作用を示す。 毒性メバロン酸経路コンストラクトを発現する大腸菌株におけるHMG-CoAの細胞内蓄積を示す。 HMG-CoAの蓄積が細胞の成長に及ぼす作用を示す。 tHMGRの発現上昇が細胞の成長に及ぼす作用を示す。 tHMGRの発現上昇がHMG-CoAの蓄積に及ぼす作用を示す。 tHMGRの発現上昇がメバロン酸の産生に及ぼす作用を示す。 A〜Cは、pBAD24MevTプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)を示す。 A〜Cは、pBAD33MevTプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2)を示す。 A〜Cは、pMevTプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3)を示す。 A〜Dは、pMBISプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:4)を示す。 A〜Bは、pADSプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:5)を示す。 A〜Bは、pAtoBプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:6)を示す。 A〜Bは、pHMGSプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:7)を示す。 A〜Cは、pHMGRプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:8)を示す。 A〜Cは、pBAD18HMGRプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:9)を示す。 A〜Cは、pHMGSRプラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:10)を示す。 A〜Cは、pBAD33MevT(C159A)プラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:11)を示す。 A〜Cは、pHMGS(C159A)プラスミドのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:12)を示す。

Claims (15)

  1. 以下の段階を含む、イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を大腸菌(Escherichia coli)におけるメバロン酸経路を介して産生する方法:
    (i) 異種ヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)合成酵素(HMGS)および異種HMG-CoA還元酵素(HMGR)を産生するように遺伝的に修飾された大腸菌細胞を適した培地で培養する段階であって、遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、
    (a) アセトアセチル-CoAチオラーゼ;
    (b) メバロン酸キナーゼ;
    (c) ホスホメバロン酸キナーゼ;および、
    (d) メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ;
    から選択される1つまたは複数のさらなるメバロン酸経路の異種酵素を産生するようにさらに遺伝的に修飾され、
    ここで、該異種HMGRの非存在下において、細胞内で産生されるHMG-CoAのレベルが細胞に毒性を示し、さらにここで、細胞内に存在するHMG-CoAのレベルが細胞に毒性を示さないか、および/または細胞成長を実質的に阻害しないように、遺伝的に修飾された大腸菌細胞内で産生されるHMGRの相対活性レベルが、遺伝的に修飾された大腸菌細胞内で産生されるHMGSの相対活性レベルよりも高い、段階;ならびに
    (ii) 産生されたイソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を回収する段階。
  2. アセトアセチル-CoAチオラーゼが、遺伝的に修飾された大腸菌細胞に対して異種である、請求項1記載の方法。
  3. 遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸の2つまたはそれ以上のコピーを含む、請求項1記載の方法。
  4. 遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、HMGSをコードするポリヌクレオチド配列を含む低コピー数のプラスミドを含む、請求項1記載の方法。
  5. 遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、内因性のHMGS遺伝子を置換する異種核酸を含み、ここで、該異種核酸は内因性HMGS遺伝子より低レベルの活性を有する、請求項1記載の方法。
  6. 遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列の修飾型バージョンを含む発現コンストラクトを含み、ここで、SEQ ID NO:1が改変されていない大腸菌と比較して翻訳が低下するようにHMGSコード領域の上流のリボソーム結合部位が改変された、請求項1記載の方法。
  7. 遺伝的に修飾された大腸菌細胞が、HMGRおよびHMGSをコードするベクターを含み、ここで、該HMGRおよびHMGSのコード領域が異なるプロモーターの制御下にある、請求項1記載の方法。
  8. イソプレノイドまたはイソプレノイド前駆体を産生する遺伝的に修飾された宿主細胞であって、
    遺伝的に修飾された宿主細胞が、メバロン酸経路を介してイソペンテニルピロリン酸を正常に産生しない原核宿主細胞であり、遺伝的に修飾された宿主細胞が、異種ヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)合成酵素(HMGS)および異種HMG-CoA還元酵素(HMGR)を産生するように遺伝的に修飾されており、遺伝的に修飾された宿主細胞が、
    (a) アセトアセチル-CoAチオラーゼ;
    (b) メバロン酸キナーゼ;
    (c) ホスホメバロン酸キナーゼ;および、
    (d) メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ;
    から選択される1つまたは複数のさらなるメバロン酸経路の異種酵素を産生するようにさらに遺伝的に修飾され、
    ここで、該異種HMGRの非存在下において、細胞内で産生されるHMG-CoAのレベルが細胞に毒性を示し、さらにここで、細胞内に存在するHMG-CoAのレベルが細胞に毒性を示さないか、および/または細胞成長を実質的に阻害しないように、遺伝的に修飾された宿主細胞内で産生されるHMGRの相対活性レベルが、遺伝的に修飾された宿主細胞内で産生されるHMGSの相対活性レベルよりも高い、遺伝的に修飾された宿主細胞。
  9. 宿主細胞が大腸菌株である、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  10. アセトアセチル-CoAチオラーゼが、遺伝的に修飾された宿主細胞に対して異種である、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  11. 遺伝的に修飾された宿主細胞が、HMGRをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸の2つまたはそれ以上のコピーを含む、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  12. 遺伝的に修飾された宿主細胞が、HMGSをコードするポリヌクレオチド配列を含む低コピー数のプラスミドを含む、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  13. 遺伝的に修飾された宿主細胞が、内因性のHMGS遺伝子を置換する異種核酸を含み、ここで、該異種核酸が内因性HMGS遺伝子より低レベルの活性を有する、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  14. 遺伝的に修飾された宿主細胞が、SEQ ID NO:1に記載されたヌクレオチド配列の修飾型バージョンを含む発現コンストラクトを含み、ここで、SEQ ID NO:1が改変されていない宿主細胞と比較して翻訳が低下するようにHMGSコード領域の上流のリボソーム結合部位が改変された、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
  15. 遺伝的に修飾された宿主細胞が、HMGRおよびHMGSをコードするベクターを含み、ここで、該HMGRおよびHMGSのコード領域が異なるプロモーターの制御下にある、請求項8記載の遺伝的に修飾された宿主細胞。
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