JP4925598B2 - 太陽電池素子及びこれを用いた太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池素子及びこれを用いた太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池素子及びこれを用いた太陽電池モジュールに関するものであり、特に太陽電池素子の耐荷重性能を向上させ、荷重作用後の太陽電池素子の損傷を軽減するためのバスバー電極の位置に関するものである。
太陽電池素子は単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製することが多い。
太陽電池素子の一般的な構造を図2および図3に示す。図2(a)は、太陽電池素子の断面の構造を示す図であり、図2(b)は太陽電池モジュールの断面の構造を示す図である。また、図3は、電極形状の一例を示す図であり、(a)は受光面側(表面)、(b)は非受光面側(裏面)である。
このような太陽電池素子は次のようにして作製される。
まず、厚み0.2〜0.5mm程度、大きさ100〜150mm角程度の単結晶シリコンや多結晶シリコン等からなるp型半導体基板を準備する。そして、半導体基板1の表面(受光面)側の表面近傍に一定の深さまで逆導電型のn型不純物を拡散させて、n型を呈する逆導電型拡散領域2を設け、p型の半導体基板1との間にpn接合を形成する。
そして、太陽電池素子7の受光面側には、例えば窒化シリコン膜からなる反射防止膜3が形成される。
これらの太陽電池素子7の表面側電極4、裏面側電極5は、金属を主成分とする電極材料を塗布して焼成することによって得ることができ、例えば、以下に示す方法により形成する。
(1)裏面集電電極5bを形成するために、アルミニウム等を主成分とする電極材料を半導体基板1の裏面の一部を除いた大部分に塗布して乾燥する。
(2)裏面バスバー電極5aを形成するために、(1)で電極材料を塗布しなかった部分に対して銀等を主成分とする電極材料を塗布して乾燥する。なお、(1)で形成した電極材料の一部(例えば周縁部)と重ね合わせておく。
(3)表面側電極4(バスバー電極4a、集電電極4b)を形成するために、半導体基板1の表面に銀等を主成分とする電極材料を塗布して乾燥する。
(4)表面と裏面に塗布された電極材料を同時に焼成し、表面側電極4及び裏面側電極5を得る。
上述のような方法により、図2、3に示されるように銀を主成分とする半田濡れ性の良好な表面側電極4(表面から出力を取り出すための表面バスバー電極4aと、これに直交するように設けられた集電用の表面集電電極4b)及び裏面側電極5(銀を主成分とする半田濡れ性の良好な裏面バスバー電極5aとアルミニウムを主成分とする裏面集電電極5b)が形成される。このとき、裏面の略全面に形成された裏面集電電極5bは、シリコンの半導体基板1に対してp型不純物元素として作用するアルミニウムを主成分としているので、裏面バスバー電極5bと接した部分には、高濃度の裏面電界領域6が形成される。
このように作製された太陽電池素子7は、物理的負荷・衝撃に弱く、さらに長期間使用するものであるから、特に野外に太陽電池を取り付ける場合は雨・雪などからこれを保護する必要がある。また、太陽電池素子一枚では発生する電気出力が小さいため、複数の太陽電池素子7を直並列に接続して実用的な電気出力を取り出せるようにする必要がある。図2(b)に示すように、複数の太陽電池素子7は、インナーリード8によって電気的に接続され、受光面側の透光性部材9と裏面保護材11の間にエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などを主成分とする充填材10で被覆・封入されて配置された太陽電池モジュールとして使用するのが一般的である。
太陽電池モジュール14の出力は、裏面保護材11を貫通する出力配線12を経て端子ボックス13に接続されている。
この複数の太陽電池素子7は、銅などからなる帯状の金属箔に半田を被覆したインナーリード8を太陽電池素子7のバスバー電極4a、5a上に半田などで溶着させることによって接続されるのが一般的である。(例えば、特許文献1参照)
図4はインナーリード8によって接続された太陽電池素子7を示した図である。図4(b)は図4(a)のA−Aにおける断面図であり、図4(c)は図4(a)のB−Bにおける断面図である。図4において、7は太陽電池素子、4aは表面側のバスバー電極、5aは裏面側のバスバー電極、8はインナーリードを示す。
太陽電池素子7の表面側のバスバー電極4aに溶着されたインナーリード8の一端は、隣接する太陽電池素子7の裏面側のバスバー電極5aに半田接合し、これを繰り返すことによって複数の太陽電池素子7がインナーリード8により接続される。これを透光性部材9、充填材10、裏面保護材11で封入することで太陽電池モジュール14が形成される。透光性部材9および充填材10、裏面保護材11は、風雨、湿気等から太陽電池素子7を保護すると同時に、雹や積雪または太陽電池上に人が載ることによって太陽電池素子7が損傷しないための緩衝材の役割を果たす。
特開2004−200515号公報
しかしながら、積雪や人などの荷重が太陽電池モジュール上に作用したときの半導体基板1に着目すると、バスバー電極4a、5a上に充填材10よりも剛性が大きいインナーリード8が溶着されていることで、インナーリード8が荷重に対して支点として作用するため、荷重による応力はインナーリード8が溶着されているバスバー電極4a、5aの近傍で大きくなる。また、荷重作用後のクラックが太陽電池素子7を構成する半導体基板1において特に最端部側のインナーリード8近傍に多く発生していた。
この問題に鑑み、発明者が鋭意検討を行ったところ、次のような事実が判明した。
バスバー電極4a、5aが太陽電池素子7(半導体基板1)の一辺に対して略垂直に3本設けられた場合を例に上げて説明する。図7(a)において、半導体基板1の端部から端部側に設けられたバスバー電極4a、5aの距離をAとし、隣接するバスバー電極4a−4a、5a−5aの間隔の距離をCとしたとき、半導体基板1表面から出力される電流を、集電電極4b、5bによってバスバー電極4a、5aに効率よく拾うためには、通常、用いられる太陽電池素子7のバスバー電極4a、5aは隣接するバスバー電極4a、5a同士の間隔が略同一としており、C=2Aを満たす位置に設けられるのが一般的である。
上記位置にバスバー電極4a、5aを設けることによって、各バスバー電極4a、5aが集電する範囲が均等かつ最小となるため、集電電極4b、5bによる抵抗損失を最小に抑え、各バスバー電極4a、5aから取り出される出力が全て等しくなるため、発電効率は最大となる。
次に、図7(b)は半導体基板1を一本の梁、インナーリード8を支点として等分布荷重を作用させた時に梁(半導体基板1)に発生する曲げモーメントを示した図である。このとき、梁には曲げモーメントだけでなく、せん断力も発生するが、梁に発生する応力は一般的に曲げモーメントによる曲げ応力が支配的なため、せん断力およびせん断応力の説明については省略する。
図7(b)において、曲げモーメントおよび曲げ応力は最端部側の支点近傍で最大となる。このことは、半導体基板1において荷重作用後のクラックが特に最端部側のインナーリード4近傍に多く発生することからも明らかである。
バスバー電極4a、5aが半導体基板1の一辺に対して略垂直にn本(nは2以上)設けられた場合においても、発電効率が最大となるようにバスバー電極4a、5aが配置されている。
つまり、図8に示すように、たとえば半導体基板1の一方主面に5本(n=5)のバスバー電極4a、5aを形成する場合、半導体基板1の一辺を均等に10個(2n個)に分割する9本(2n−1)本の分割線15のうち半導体基板1の一方の最端部側に位置する分割線を一番目の分割線とすると、その奇数番目にあたる分割線の位置にバスバー電極4a、5aの中心線がくるように設けられることとなる。このような配置をとると、3本のバスバー電極4a、5aからなる太陽電池素子2と同様に、曲げモーメントおよび曲げ応力は最端部側の支点(インナーリード8)近傍で最大となる。
この問題を解決するためには、透光性部材9や充填材10を厚くすることで半導体基板1に発生する応力を分散、軽減することができ、半導体基板1の損傷、特にクラックの発生を抑えることができる。
しかし、透光性部材9や充填材10を厚くすると、材料の増大により太陽電池モジュールのコストが上がる。また、太陽電池モジュールの重量も大きくなり、太陽電池設置時に作業者が太陽電池を持ちにくくなるなど施工性の低下を招く。さらに、設置される屋根面への負荷が大きくなり、地震時に屋根が倒壊しやすくなるなどの危険もある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、従来よりも太陽電池素子にクラックが発生しにくく、耐荷重性能に優れた太陽電池素子を提案するものである。
矩形の半導体基板の受光面側及び非受光面側のそれぞれに同数設けられたバスバー電極と、該バスバー電極に電気的に接続された出力を集めるための集電電極とを備えた太陽電池素子であって、前記半導体基板の受光面側のバスバー電極と前記非受光面側のバスバー電極とは平面透視で互いに重なり合い、前記半導体基板の受光面側及び非受光面側のそれぞれにおいて、前記バスバー電極が前記半導体基板の一辺に対して略垂直にn本設けられ(nは2以上)、n本のバスバー電極のうち半導体基板の最端部側に設けられるバスバー電極の中心線が、半導体基板の一辺を均等に2n個に分割する分割線(2n−1)本のうち半導体基板の最端部側に位置する分割線よりも端部側にずらすようにして前記最端部側のバスバー電極を設け、前記最端部側のバスバー電極と半導体基板の端部との距離をA、
最端部側に設けられるバスバー電極間の距離をn−1で割った距離をBとしたとき、A/Bが0.33以上0.5未満であることを特徴とする。
また、前記隣接するバスバー電極間で構成される間隔が、複数有する太陽電池素子であって、前記間隔が略同一となるようにバスバー電極を設けたことを特徴とする。
また、前記最端部側のバスバー電極と半導体基板の端部との距離をA、最端部側に設けられるバスバー電極間の距離をn−1で割った距離をBとしたとき、A/Bが0.33以上0.5未満であることを特徴とする。
本発明の太陽電池素子によれば、矩形の半導体基板1の受光面側及び/又は非受光面側に設けられた、出力を外部へ取り出すためのバスバー電極と、該バスバー電極に電気的に接続された、出力を集めるための集電電極と、を備えた太陽電池素子であって、前記バスバー電極が前記半導体基板の一辺に対して略垂直にn本設けられ(nは2以上)、n本のバスバー電極のうち半導体基板1の最端部側に設けられるバスバー電極の中心線を、半導体基板1の一辺を均等に2n個に分割する分割線(2n−1)本のうち半導体基板1の最端部側に位置する分割線よりも端部側にずらすようにして前記最端部側のバスバー電極を設けることで、基板端部のインナーリード近傍に発生する曲げ応力を小さくすることができる。
また、前記n本のバスバー電極において、隣接するバスバー電極同士の間隔が略同一となるようにバスバー電極を設け、かつ前記n本のバスバー電極が、前記半導体基板の一辺の中央を通る中央線に対して対称な位置に設けることで、各インナーリード近傍に発生する曲げ応力を均等化することができるだけでなく、太陽電池素子および太陽電池モジュールの外観を損なうこともない。
このように本発明によれば、材料の増大によるコストアップ、太陽電池重量の増加を招くことなく、従来よりもクラックが発生しにくく、耐荷重性能に優れた太陽電池素子を作製することができるようになる。従って、従来と同コストで耐荷重性に優れた太陽電池モジュールが実現する。また、本発明は将来的に半導体基板が大きくなり、バスバー電極の本数が多くなった場合にも有効である。
以下、本発明に係る太陽電池素子および太陽電池モジュールを添付図面に基づき詳細に説明する。尚、従来と同一部分は同一符号を付す。
図2(a)は太陽電池素子の断面構造を示す概略図であり、図2(b)は太陽電池モジュールの断面構造を示す概略図である。図3(a)は太陽電池素子の表面側の電極を示す平面図、図3(b)は本発明に係る裏面側の電極の例を示す平明図である。
なお、図中、1は半導体基板、2は逆導電型拡散領域、3は反射防止膜、4は表面側電極、4aは表面側のバスバー電極、4bは表面側の集電電極、5は裏面側電極、5aは裏面側のバスバー電極、5bは裏面側の集電電極、6は裏面電界領域、7は太陽電池素子、8はインナーリード、9は透光性部材、10は充填材、11は裏面保護材、12は配線材、13は端子ボックス、14は太陽電池モジュールを示す。
先に、図2(a)に示す太陽電池素子の一般的な作用について簡単に説明する。
太陽電池素子7の表面側である反射防止膜3の側から光が入射すると、主にp型半導体である半導体基板1のバルク領域で吸収・光電変換されて電子−正孔対(電子キャリア及び正孔キャリア)が生成される。この光励起起源の電子キャリア及び正孔キャリア(光生成キャリア)によって、太陽電池素子7の表側に設けられた表面側電極4と、裏側に設けられた裏面側電極5との間に光起電力を生ずる。なお、反射防止膜3は、膜の屈折率と膜厚とによって所望の光波長領域で反射率を低減させて、光生成キャリア量を増大させる役割を果たし、太陽電池素子7の光電流密度Jscを向上させる。
また、通常、太陽電池素子7を構成する半導体基板(たとえばシリコン基板)1に対してp型不純物元素として作用するアルミニウムをシリコン基板の非受光面側である裏面に拡散させ、シリコン基板の裏面側表層部にp領域となった裏面電界領域6が形成されている。裏面電界領域6は、BSF(Back Surface Field)領域とも呼ばれ、半導体基板1の裏面近くで光生成キャリアによる再結合による効率の低下を防ぐ。そのため半導体基板1の裏面近くで発生した光生成キャリアが、この電界によって加速される結果、電力が有効に取り出されることとなり、特に長波長の光感度が増加する。この結果、光電流密度Jscが向上し、またこの裏面電界領域6では少数キャリア(電子)密度が低減されるので、裏面側電極5に接する領域でのダイオード電流量(暗電流量)を低減する働きをすることで、開放電圧Vocが向上する。
次に上述の構造を有する太陽電池素子の製造工程について説明する。半導体基板1は、単結晶又は多結晶シリコン等からなる。この半導体基板1として半導体シリコンを用いる場合、ボロン(B)等のp型の導電型を呈する半導体不純物を含有した基板が好適に用いられる。単結晶シリコン基板の場合は引き上げ法等によって形成され、多結晶シリコン基板の場合は鋳造法等によって形成される。多結晶シリコン基板は、大量生産が可能であり製造コスト面で単結晶シリコン基板よりも有利であるので、ここでは多結晶シリコンを用いた例によって説明する。
多結晶シリコンのインゴットは、例えば、鋳造法によって形成され、10cm×10cm又は15cm×15cm程度の大きさに切断され、所定厚み、例えば350μm以下の厚みにスライスして、半導体基板1とする。
次に、半導体基板1を拡散炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl)等の不純物元素を含むガス中で熱処理することによって、半導体基板1の外表面部分にリン原子を拡散させてn型の導電型を呈する逆導電型拡散領域2を形成する。
そして太陽電池素子7の受光面側である、半導体基板1の受光面側の逆導電型拡散領域2を残して他の部分を除去した後、純水で洗浄する。この除去方法としては、例えば、半導体基板1の表面側にフッ酸に耐性を有するレジスト膜を塗布し、フッ酸と硝酸の混合液を用いてこのシリコン基板1の受光面側以外の逆導電型拡散領域をエッチング除去した後、レジスト膜を除去すれば良い。
次に、半導体基板1の受光面側に反射防止膜3を形成する。この反射防止膜3は例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等から成り、例えば窒化シリコン膜はシラン(SiH)とアンモニア(NH)との混合ガスをグロー放電分解でプラズマ化させて堆積させるプラズマCVD法等で形成される。この反射防止膜3は、半導体基板1との屈折率差等を考慮して、屈折率が1.8〜2.3程度になるように形成され、厚み500〜1000Å程度の厚みに形成される。このように窒化シリコン膜を、水素プラズマの存在下で成膜して形成した場合、パッシベーション効果も同時に有するので、反射防止の機能と併せて、太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
次に表面側電極4と、裏面側電極5を形成する。裏面側電極5を構成する裏面側の集電電極5bは、例えばアルミニウム粉末等からなる金属を主成分とし、有機ビヒクルとガラスフリットをアルミニウム100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部添加してペースト状にした第一金属を主成分とする電極材料を用いる。具体的な形状としては、例えば、図3(b)に示すように、裏面側のバスバー電極5aを形成する部位を除いた開口部を設けて裏面のほぼ全面とする。塗布方法としては、スクリーン印刷法等の周知の方法を用いることができ、塗布後、所定の温度で溶剤を蒸散させて乾燥させる。
裏面側電極5を構成する裏面側のバスバー電極5a及び表面側電極4を構成する表面側のバスバー電極4aおよび集電電極4bは、第一金属より半田濡れ性の良い金属材料、例えば銀粉末等を主成分とし、有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部を添加してペースト状にした第二金属を主成分とする電極材料を用いる。
なお、表面側電極4については、図3(a)に示すように、一般的な太陽電池素子として表面から出力を取り出すためのバスバー電極4aと、これに直交するように設けられた集電用の集電電極4bによって格子状に形成すれば良い。
なお、塗布方法としては、スクリーン印刷法等の周知の方法を用いることができ、塗布後、所定の温度で溶剤を蒸散させて乾燥させる。
上述のようにして塗布・乾燥した表面側電極4、裏面側電極5を、最高温度を600〜800℃として1〜30分程度焼成する焼成工程を経ることによって、半導体基板1に対して電極を焼き付けて形成することができる。また、裏面側の集電電極5bを形成すると同時に、半導体基板1中にアルミニウムが拡散して、裏面で発生したキャリアが再結合することを防ぐ裏面電界領域6が形成される。なお、あらかじめ反射防止膜3の表面側電極4に相当する部分をエッチングし、その箇所に第二金属を主成分とする電極材料(銀ペースト等)を塗布し焼成して逆導電型拡散領域2と導通を取るようにしても良いし、反射防止膜3の上に直接、第二金属を主成分とする電極材料(銀ペースト等)を塗布して焼成し、いわゆるファイアースルー法によって反射防止膜3を貫通させて逆導電型拡散領域2と導通を取るようにしても良い。
以上のようにして、太陽電池素子7を作製することができる。
そして、太陽電池素子一枚では発生する電気出力が小さいため、複数の太陽電池素子7を直並列に接続して、実用的な電気出力が取り出せるようにする必要がある。
図2(b)に示すように、複数の太陽電池素子7は、インナーリード8によって電気的に接続され、例えば、ガラスなどからなる透光性部材9とポリエチレンテレフタレート(PET)や金属箔をポリフッ化ビニル樹脂(PVF)で挟みこんだ裏面保護材11の間にエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などを主成分とする充填材10で気密に封入されて、太陽電池モジュール14を構成している。その後、必要に応じてアルミニウムなどのフレーム(不図示)を周囲にはめ込む。太陽電池モジュール14の出力は、出力配線12を経て端子ボックス13に接続されている。
太陽電池素子7の表面側のバスバー電極4aに溶着されたインナーリード8の一端は、隣接する太陽電池素子7の裏面バスバー電極5aに半田接合し、これを繰り返すことによって太陽電池素子群となる。インナーリード8は表面側のバスバー電極4aと裏面側のバスバー電極5aの部分的、全長もしくは複数箇所をホットエアーなどの熱溶着により接続されている。すなわち、インナーリード8は、例えば、その表面全体に20〜50μm程度の半田を被覆した厚さ100〜400μm程度の銅箔を所定の長さに切断したものを用いる。
図1(a)は本発明に基づいてバスバー電極が設けられている一例を示す図である。また、図1(b)は図1(a)の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントを示す図である。
図1において、バスバー電極4a、5aが太陽電池素子7を構成する半導体基板1の一辺に対して略垂直に3本設けられ、半導体基板1の端部から端部側に設けられたバスバー電極4a、5aの距離をAとし、隣接するバスバー電極4a、5aの間隔の距離をCとしたとき、端部側に設けられたバスバー電極4a、5aはC>2Aを満たす位置に設けられている。つまり、発明者が鋭意検討を行ったところ、本発明においてはバスバー電極4a、5aが半導体基板1の一辺に対して略垂直にn(nは2以上)本設けられた場合、n本のバスバー電極4a、5aのうち半導体基板1の最端部側に設けられるバスバー電極4a、5aの中心線が、半導体基板1の一辺を均等に2n個に分割する分割線(2n−1)本のうち半導体基板1の最端部側に位置する分割線よりも端部側にずらすようにして最端部側のバスバー電極4a、5aを設けている。このようにすることによって、本発明の曲げモーメントの最大値をMa、従来技術における曲げモーメントの最大値をMbとすると、図1(b)に示すように、従来では最端部側のインナーリード8近傍で最大となっていた曲げモーメントを小さくすることができ、曲げ応力も小さくなる。さらに、各インナーリード8の近傍に発生する曲げモーメントの較差を小さくすることができ、半導体基板1に発生する最大曲げモーメントおよび最大曲げ応力が小さくなることが確認された。
よって、太陽電池素子7を構成する半導体基板1にクラックが発生しにくく、耐荷重性能に優れた太陽電池素子7とすることができ、太陽電池モジュール14においては透光性部材9や充填材10を厚くする必要が無く、材料の増大により太陽電池モジュール14のコストが上がるという問題を防ぐことができる。
また、太陽電池モジュール14の重量が大きくなったり、太陽電池モジュールの設置時に作業者が太陽電池モジュール14を持ちにくくなるなど施工性の低下を招くこともない。
さらに、設置される屋根面への負荷が大きくならず、地震時に屋根が倒壊しやすくなるなどの危険も増大せず、風圧、積雪等の影響を考慮すれば、本発明の太陽電池素子7のように耐荷重性を上げることで、長期的に発電能力が保証される。特に、バスバー電極4a、5aが3本以上の場合においては、各インナーリード8の近傍に発生する曲げモーメントの較差を小さくすることがより重要となり、本発明の太陽電池素子7におけるバスバー電極4a、5aの配置、すなわち半導体基板1の受光面側のバスバー電極と非受光面側のバスバー電極とを平面透視で互いに重なり合うようにし、半導体基板1の受光面側及び非受光面側のそれぞれにおいて、バスバー電極が半導体基板1の一辺に対して略垂直にn本設けられ(nは2以上)、n本のバスバー電極のうち半導体基板1の最端部側に設けられるバスバー電極の中心線が、半導体基板1の一辺を均等に2n個に分割する分割線(2n−1)本のうち半導体基板1の最端部側に位置する分割線よりも端部側にずらすようにして前記最端部側のバスバー電極を設けるようにすることでよりよい効果が得られることとなる。
さらに、鋭意検討を行なった結果、n本のバスバー電極4a、5aにおいて、隣接するバスバー電極4a−4a、5a−5a同士の間隔が略同一となるようにバスバー電極4a、5aを設けたほうが好ましい。図5に示すように、隣接するバスバー電極4a−4a、5a−5a同士の間隔C、C、CがC=C=Cとなるようにすることによって、半導体基板1に発生する最大曲げモーメントおよび最大曲げ応力をより小さくすることができることを知見した。このように、隣接するバスバー電極4a−4a、5a−5a同士の間隔を略同一とすることによって、半導体基板1にかかる応力を均等に分散することができ、さらに半導体基板1表面から出力される電流を集電電極4b、5bによってバスバー電極4a、5aに効率よく集電することができる。
また、最端部側に設けられた両端のバスバー電極4a、5aは半導体基板1の端部からの距離A、Aが同じでなくも構わないが、半導体基板1にかかる応力をより均等に分散させるためにA=Aとなるようバスバー電極を設けたほうが好ましく、さらに、n本のバスバー電極4a、5aは半導体基板1の一辺の中央を通る中央線16に対して、対称な位置に設けることが望ましい。つまり、図5に示されるように、中央線16を境に左右2本ずつのバスバー電極4a、5aが存在し、中央線16からバスバー電極4a、5aまでの距離が左右において同じである。このような配置にすることによって、各インナーリード8近傍に発生する曲げ応力を均等化することができるだけでなく、太陽電池素子7および太陽電池モジュール14の外観を損なうこともない。
また、最端部側のバスバー電極4a、5aと半導体基板1の端部との距離Aと、最端部側に設けられるバスバー電極4a、5a間の距離をn−1で割った距離Bとの関係は、A/Bが0.33以上0.5未満、好ましくはn=2のとき0.33以上0.45以下、n≧3のとき0.36以上0.46以下であることが望ましい。各インナーリード8近傍に発生する曲げモーメントおよび曲げ応力が従来よりも軽減され、また均等に分散されることなり、半導体基板1に発生する最大曲げ応力を小さくすることができるので、太陽電池素子を構成する半導体基板1にクラックが発生しにくく、耐荷重性能に優れた太陽電池モジュール14となる。
しかしながら、A/Bが0.3よりも小さい場合、0.5以上の場合には、各インナーリード8近傍に発生する曲げモーメントおよび曲げ応力が分散されず、最大曲げ応力が大きくなり、太陽電池モジュール14に荷重を作用させるとバスバー電極近傍でクラックが発生する可能性があるため好ましくない。
また、さらなる鋭意検討を行った結果、図6に示されるように、最端部側のバスバー電極4a、5aと半導体基板1の端部との距離Aと、最端部側に設けられるバスバー電極4a、5a間の距離をn−1で割った距離Bとの比率が、n=2のとき、A/Bが約0.35、n=3以上のとき、A/Bが約0.41となるときに、太陽電池素子7に等分布荷重が作用したときに発生する最大曲げモーメントおよび最大曲げ応力が最小となる、すなわち各インナーリード8の近傍に発生する曲げモーメントが均等になることが分かった。また、各々の図において、n本のバスバー電極4a、5aは隣接するバスバー電極4a−4a、5a−5a同士の間隔が略同一、かつ半導体基板1の一辺の中央を通る中央線16に対して、対称な位置に設けられている。また、バスバー電極4a、5aの数を増やすことで、支点が多くなり応力が分散するため、これにより太陽電池素子7に発生するクラックも減少させることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加えることができる。例えば、半導体基板1は単結晶や多結晶シリコンなどの結晶系太陽電池に限定されるものではなく、薄膜系太陽電池素子などでも太陽電池素子7を太陽電池素子7の電極部表面の一部とインナーリード8表面の一部を溶融することによって接続する太陽電池モジュールであれば適用される。また、半導体基板1とインナーリード8が接続可能であれば、インナーリード8の表面に半田を被覆しなくてもよい。
また、上記に示した方法では表面側電極4と裏面側電極5を同時に焼成する、1回焼成によって電極を形成したが、複数の焼成工程によって電極を形成しても構わない。例えば2回焼成により、1回目の焼成工程で裏面側電極5(裏面側の集電電極5bと裏面側のバスバー電極5a)を形成し、2回目の焼成工程で表面側電極4を形成しても良いし、1回目の焼成工程で裏面側の集電電極5bを形成し、2回目の焼成工程で裏面側のバスバー電極5aと表面側電極4(バスバー電極4a、集電電極4b)を形成してもよく、それ以外の焼成の順番、組み合わせであっても構わない。また、電極材料を塗布した後の乾燥は、次の電極材料を塗布するときに印刷機の作業テーブルやスクリーンに前の電極材料が付着するといった問題がなければ省略しても構わない。
また、裏面側電極5は表面側電極4と同様に格子状に形成しても構わない。
図2(a)に示すように、厚さが300μmで、外形が15cm×15cmのp型の多結晶シリコンからなる半導体基板1表面のダメージ層をNaOHでエッチングして洗浄した。次に、この半導体基板1を拡散炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl)の中で加熱することによって、半導体基板1の表面にリン原子を拡散させて、n型の逆導電型拡散領域2を形成した。その上にプラズマCVD法によって反射防止膜3となる厚み850Åの窒化シリコン膜を形成した。
この半導体基板1の裏面側に集電電極5bを形成するために、アルミニウム粉末と有機ビヒクルとガラスフリットをアルミニウム100重量部に対してそれぞれ20重量部、3重量部を添加してペースト状にした電極材料をスクリーン印刷法によって、図3(b)に示されるようにほぼ裏面全面に塗布して乾燥させた。
そして、裏面側にバスバー電極5aを、表面側に電極4(バスバー電極4a、集電電極4b)を形成するために、銀粉末と有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ20重量部、3重量部を添加してペースト状にした電極材料をスクリーン印刷法によって、図3(a)、(b)に示される形状に塗布して乾燥させた。その後、焼成炉に最高温度を800℃として15分間焼き付けて、同時に表面側電極4と裏面側電極5を形成した。
次に、約30μmの厚みを有する半田層を設けた厚さ200μmの銅箔製のインナーリード8を、それぞれのバスバー電極4a、5aの全長にわたってホットエアーの熱溶着により貼り付けて、上述の太陽電池素子7同士を接続した。
その後、上述のようにして太陽電池素子7同士を接続したものを図2(b)に示すように、透光性パネル9と裏面保護材11との間に充填材10として、EVA(エチレンビニルアセテート共重合体)を用いて封入して図2に示した断面構造を有する太陽電池モジュール14を形成した。
そして、最端部側のバスバー電極4a、5aと半導体基板1の端部との距離Aと、最端部側に設けられるバスバー電極4a、5a間の距離をn−1で割った距離Bとの比率A/Bを0.3から0.5に変化させた太陽電池素子7を用いて太陽電池モジュール14を作製した。このようにして各条件を変更した試料No.1〜7について、太陽電池モジュールに3000N/mの圧力をかける静荷重試験において封入した太陽電池素子7のマイクロクラック発生率を調べた。マイクロクラック発生率は、倍率40倍の双眼顕微鏡を用いて調べ、静荷重試験10回行った際に用いた太陽電池モジュール14中の太陽電池素子7の全枚数に対するマイクロクラックが発生した太陽電池素子7の枚数を割合で示したものである。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0004925598
表1に示されるように、A/Bが0.3または0.5である試料No.1、9においては、マイクロクラックの発生率が10%を越え、不満足な結果となった。
しかしながら、A/Bが0.33以上0.5未満の範囲に当たる試料No.2〜8においては、マイクロクラックの発生率が7%以下の値となり、発明の効果が確認された。
さらに、A/Bが0.36以上0.46以下の範囲に当たる試料No.3〜7においては、マイクロクラックの発生率が5%以下の値となり、満足のいく結果となった。
(a)は本発明に係る太陽電池素子の一実施形態を示す断面図であり、(b)は(a)の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントを示す図である。 (a)は一般的な太陽電池素子を示す断面図であり、(b)は一般的な太陽電池モジュールを示す断面図である。 一般的な太陽電池素子の電極形状の一例を示す図であり、(a)は受光面側(表面)、(b)は非受光面側(裏面)である。 (a)はインナーリードによって接続された太陽電池素子を示した図であり、(b)は(a)のA−Aにおける断面図であり、(c)は(a)のB−Bにおける断面図である。 (a)は本発明に係る太陽電池素子の他の実施形態を示す断面図であり、(b)は(a)の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントを示す図である。 本発明に係るバスバー電極がn本の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントを示す図であり、(a)n=2、(b)n=3、(c)n=4、(d)n=5のときの曲げモーメントを示す図である。 (a)は従来における太陽電池素子の一実施形態を示す断面図であり、(b)は(a)の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントを示す図である。 従来における太陽電池素子のバスバー電極の配置を示す図である。
符号の説明
1:半導体基板
2:逆導電型拡散領域
3:反射防止膜
4:表面側電極
4a:表面側のバスバー電極
4b:表面側の集電電極
5:裏面側電極
5a:裏面側バスバー電極
5b:裏面側の集電電極
6:裏面電界領域
7:太陽電池素子
8:インナーリード
9:透光性パネル
10:充填材
11:裏面保護材
12:出力配線
13:端子ボックス
14:太陽電池モジュール
15:分割線
16:中央線
A:最端部側のバスバー電極と半導体基板の端部との距離、
B:最端部側に設けられるバスバー電極間の距離をn−1で割った距離
C:隣接するバスバー電極の間隔の距離
Ma:本発明の3本バスバー電極の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントの最大値
Mb:従来の3本バスバー電極の太陽電池素子に等分布荷重が作用したときの曲げモーメントの最大値

Claims (3)

  1. 矩形の半導体基板の受光面側及び非受光面側のそれぞれに同数設けられたバスバー電極と、該バスバー電極に電気的に接続された出力を集めるための集電電極とを備えた太陽電池素子であって、
    前記半導体基板の受光面側のバスバー電極と前記非受光面側のバスバー電極とは平面透視で互いに重なり合い、前記半導体基板の受光面側及び非受光面側のそれぞれにおいて、前記バスバー電極が前記半導体基板の一辺に対して略垂直にn本設けられ(nは2以上)、n本のバスバー電極のうち半導体基板の最端部側に設けられるバスバー電極の中心線が、半導体基板の一辺を均等に2n個に分割する分割線(2n−1)本のうち半導体基板の最端部側に位置する分割線よりも端部側にずらすようにして前記最端部側のバスバー電極を設け
    前記最端部側のバスバー電極と半導体基板の端部との距離をA、最端部側に設けられるバスバー電極間の距離をn−1で割った距離をBとしたとき、A/Bが0.33以上0.5未満である、太陽電池素子。
  2. 前記バスバー電極は3本以上設けられており、前記隣接するバスバー電極間における間隔が略同一であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の太陽電池素子を含む太陽電池モジュール。
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