以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、車両1は、前席シート2と、前席シート2の後方に配設された2列目シート3と、2列目シート3の後方に配設された3列目シート4とを有する。また、この車両1は、乗員昇降用のサイドドアとして、前席シート2用のサイドドア5と、2列目シート3用のサイドドア6とを有すると共に、ピラーとして、前側から順に、Aピラー7、Bピラー8、Cピラー9、Dピラー10を有する。ここで、Cピラー9は、特許請求の範囲における中間ピラーに相当し、Dピラー10は、特許請求の範囲における後部ピラーに相当する。
前記サイドドア5は、Aピラー7とBピラー8との間の乗降用開口11を開閉するもので、上下方向に開閉駆動されるサイドウインドガラス12を有する。また、前記サイドドア6は、Bピラー8とCピラー9との間の乗降用開口13を開閉するもので、上下方向に開閉駆動されるサイドウインドガラス14を有する。Cピラー9とDピラー10との間には、後部サイド開口15が設けられ、該後部サイド開口15がサイドウインドガラス16で覆われている。ここで、サイドウインドガラス14,16、及びピラー9,10及びその周辺部が特許請求の範囲のサイドウインド部に相当する。
前記3つのサイドウインドガラス12,14,16は、例えば側方衝突時あるいはその予知時や、横転時あるいはその予知時等に作動されるカーテンエアバッグ17によって、ほぼ全体的に車室内から覆われるようになっている。このカーテンエアバッグ17は、収納状態では、蛇腹状に折りたたまれて1本の棒状体とされ、前記3つのサイドウインドガラス12,14,16の縁部に沿ってかつその直近において車体に固定されている。詳しくは、カーテンエアバッグ17は、前端部がAピラー7の下部に固定され、後端部がDピラー10の下部に固定され、前端部から後端部までの間の中間部分は、サイドウインドガラス12,14,16の上縁部付近を前後方向に結んだ線上において車体に固定されている。
カーテンエアバッグ17は、その膨張、展開時には、図2に示すように、サイドウインドガラス12,14,16に沿うようにして車室内に展開し、全てのサイドウインドガラス12,14,16を車室内側から覆うようにされている。そして、カーテンエアバッグ17の下端が、各サイドウインドガラス12,14,16の下縁部よりも若干下方に位置するようにその大きさが設定されている。
カーテンエアバッグ17は、重ね合わせた略同一形状の2枚の基布の外縁近傍に沿って縫製を施す(図示省略)ことにより袋状に形成され、ガス導入口17mを介してインフレータ18からのガスが充填可能になっている。また、上記2枚の基布には、図2に示すように重ね合わせた状態で曲線状または閉ループ状の縫製17a〜17eが施されている。縫成17b,17dで囲まれた領域はガスが充填されない非膨張部17f,17gを形成し、それ以外の部位が膨張部を構成している。なお、このような非膨張部17f,17gの形成位置は、各シート2〜4に着座する乗員の頭部から離れた位置に設定される。このような非膨張部を設けておくことによりカーテンエアバッグ17の膨張、展開を早期に行うことができる。また、縫成17a,17c,17eは、ガス充填時のカーテンエアバッグ17の車幅方向の厚みが大きくなりすぎるのを抑制するために設けられている。カーテンエアバッグ17の上縁部には、サイドウインドガラス12,14,16の上縁に沿って複数の固定部P…Pが設けられている。また、カーテンエアバッグ17の前端部にはテザー17hが設けられ、該テザー17hがAピラー7の下部に下部に固定されている。
このように収納されたカーテンエアバッグ17において、展開指向方向とは、カーテンエアバッグ17を車体に対して通常の取付固定箇所で固定した場合に、収納された状態から率先して展開する方向であり、例えば、カーテンエアバッグ17が展開した状態でその下端(展開した状態での下端)から蛇腹状に折り畳んだ場合は、蛇腹の延設する方向の展開先端側が展開指向方向となる。
図1、図2に示すように、Cピラー9の上部前方には、インフレータ18が設けられており、カーテンエアバッグ17に対して膨張、展開用のガス圧を供給する。インフレータ18が起爆されることによって発生したガス圧は、供給系路19を介して収納状態にあるカーテンエアバッグ17に供給される。供給系路19の下流端は、収納状態にあるカーテンエアバッグ17の前後方向略中間位置のガス導入口17mに中間ピラー9の前方側で接続されている。
前述した各ピラー7〜10は、それぞれピラートリムによって車室内側から覆われている。例えば、図3、図4に示すように、Cピラー9は、Cピラートリム56によって覆われ、Dピラー10は、Dピラートリム26によって覆われている。また、ルーフパネル30(図5参照)の車室側は、ルーフトリム37によって覆われている。ルーフトリム37は、弾性体等の軟質材、例えば発砲ウレタン等の表面を不織布で覆ったもの等によって形成されており、手指で押圧した程度の外力でもって比較的容易に変形し得るものとされている。Cピラートリム56やDピラートリム26等の各ピラートリムは、ルーフトリム37よりも硬質とされており、それぞれ硬質の合成樹脂、例えばポリプロピレンで形成されている。特にDピラートリム26については、低温(例えば−20度C以下)でも破損しにくいTP0(サーモ・プラスチックオレフィンで構成したポリプロピレン)によって形成されており、手指で押圧した程度の外力では容易には変形しにくいものとされている。このように、特にDピラートリム26は、ルーフトリム37よりも硬質(十分に硬質)とされていて、荷物等が接触しても容易には傷つかないようにされている。なお、Dピラートリム26のうち、カーテンエアバッグ17からの膨張、展開時の圧力を受ける部分およびその近傍のみを部分的に、前記のような破損しにくい合成樹脂によって構成しておくこともできる。
図6に示すように、ルーフパネル30の車幅方向外側端部には、ルーフサイドインナパネル31と、ルーフサイドアウタパネル32とで構成され、前後方向に伸びる閉断面状の強度部材としてのルーフサイドレール30Rが設けられている。このルーフサイドレール30Rの下端部には、下方に短く延びる接合フランジ部33が設けられており、この接合フランジ部33に対して、サイドウインドガラス16の上縁部が接着剤34によって固定されている。図4、図6に示すように、ルーフトリム37は、その車幅方向外側端縁部が、Cピラートリム56とDピラートリム26との間において、車幅方向外側に若干突出して、サイドウインドガラス16直近に位置している。そして、該ルーフトリム37の車幅方向外側端部が、エッジモール35によって、接合フランジ部33に保持されている。
Dピラー10は、図7に示すように、インナパネル21とアウタパネル22とによって閉断面状に形成されており、その前端部には、前方へ短く伸びる接合フランジ部23が形成されている。サイドウインドガラス16の後縁部は、図8に示すように、接着剤24を介して接合フランジ部23の外面に固定されている。このようなDピラー10を覆うDピラートリム26は、図7に示すように、水平方向での断面形状が略L字状とされており、前後方向に幅広く伸びる側面部26bと、側面部26bの前端から車幅方向外側に延長され、車幅方向に幅広く広がる前面部26cとを有する。そして、前面部26cの車幅方向外側端縁部26a(以下、所定端縁部26aという)は、サイドウインドガラス16の後縁部直近に位置し、前記接合フランジ部23近傍まで延設されている。また、前面部26cは、所定端縁部26a付近が、図5に示すように、平面視において(車体上方から見たとき)、車幅方向外側に向かうにつれて徐々に後方に位置するように若干傾斜設定されている。
Cピラー9は、図9〜図11に示すように、インナパネル51とアウタパネル52とによって閉断面状に形成されており、このCピラー9を車室内側から覆うCピラートリム56の上端は、Cピラー9の車幅方向内面(インナパネル51)から若干離間していて、Cピラー9とCピラートリム56との間には、車幅方向に間隔を有する隙間が形成されている。
図6、図7,図11に示すように、収納状態にあるカーテンエアバッグ17は、取付ブラケット41、42等を介して、車体に固定される。図7に示す取付ブラケット41は、Dピラー10への取付用であり、図11に示す取付ブラケット42は、ルーフサイドレール30Rに対する固定用である。取付ブラケット42は、下方へ伸びる延長部42aを有している。この延長部42aは、下方側ほど車幅方向内方側に位置するように傾斜設定されていて、その指向方向が、Cピラートリム56の車幅方向内端位置よりも若干車幅方向内方側に指向するように設定されている。このような延長部42aを設けておくことにより、膨張、展開されるカーテンエアバッグ17は、延長部42aのガイド作用によって、Cピラートリム56となんら干渉することなく、確実に車室内に展開されることになる。
サイドウインドガラス16の上縁部から後縁部に渡る部分での収納状態にあるカーテンエアバッグ17の配設例を図5に示す。図5では、カーテンエアバッグ17の配設状態を明瞭に示すために、前記取付ブラケット41、42は図示を略してある。図5から明らかなように、収納状態にあるカーテンエアバッグ17は、平面視において、サイドウインドガラス16の上縁部の前端部付近から後端部付近まではほぼ前後方向に伸びるようにされ、サイドウインドガラス16の後縁部に沿う部分がもっとも車幅方向外方側に位置するように設定されている。前後方向に細長く伸びるインフレータ18は、図示しない取付ブラケットを介してルーフサイドレール30Rに固定されている。
図1に示すように、シート2,3,4の側方には、それぞれシートベルト61,71,81が設けられている。これらのシートベルト61,71,81の一端側はB,C,Dピラー8,9,10に取り付けられたシートベルトアンカ62,72,82を介してリトラクタ63,73,83にそれぞれ収容されている。
ここで、本発明において対象とするCピラー9に設けられたシートベルトアンカ72の構造について詳しく説明する。このシートベルトアンカ72は、図12に示すように、インナパネル51に一端部が固着され、他端部がCピラートリム56に設けられた孔部56aを貫通するボス部材74と、シートベルト71が挿通される孔75aを有するシートベルト係止部材75と、該係止部材75を回動可能にボス部材74に固定するボルト76と、シートベルト係止部材75及びボルト76の頭部を覆うケース77とを有している。該ケース77の内面には、複数のリブ77aが形成されている。このリブ77aは、シートベルトアンカ72に人体等が当たったときに、衝撃を吸収するためのものである。したがって、シートベルトアンカ72は、車幅方向の幅(厚み)を小さくすることには限度がある。また、Cピラートリム56の下面部56bとケース77におけるCピラートリム56に対向する面である上面部77cとの間には、所定量の隙間Sが設けられている。これは、シートベルトアンカ72の回転をスムーズに行わせることと、これらの部材の製造誤差の吸収及びこれらの部材の当接による異音の防止を目的としている。つまり、シートベルトアンカ72は、Cピラートリム56の車内側の面からこれらの条件を満足可能な量だけ比較的大きく突出することとなる。
ここで、シートベルトアンカ72のケース77の表面部77bの上部には、下側ほど車幅方向において車内側に位置するように形成され、Cピラートリム56で面直方向が車幅方向と略同一となる車室側を指向する面に対して傾斜する傾斜面77dが設けられている。また、側部にも、該傾斜面77dよりも急勾配の傾斜面77eが設けられている。つまり、上下方向が鉛直にある状態を前方から見たときのシートベルトアンカ72の上部の傾斜が、その上下方向が鉛直にある状態を平面上で上から見たときのシートベルトアンカ72の前部の傾斜より緩やかとなるよう形成されている。そして、シートベルトアンカ72は、前記傾斜面77dの角度を急勾配としないために、回転中心から上端までの長さが、回転中心から前後端までの長さよりも長くされている。また、このように各傾斜面を構成することにより、乗員の頭部等が該シートベルトアンカ72に対して前後方向例えば斜め上方から当接したような場合に、傾斜面77dに当接しやすくなり、衝撃吸収性が向上することとなる。
ここで、傾斜面77dの角度は、図11に示すように、Cピラートリム56における後述する段差部56eよりも上側の下面部56bを傾斜面77d方向に伸ばした場合に、該傾斜面77dに交わる箇所とDピラートリム26の前縁上端26uとを結んだ線と、傾斜面77dの傾斜方向線とが交わった角度θが略120°から200°の間の角度になるように設定される。なお、本図の場合は、150°程度に設定されている。
また、傾斜面77dは、乗員がシートベルト72を装着したことによりシートベルトアンカ72が所定角度(例えば図9の状態から図13の状態まで反時計回りに60°)回転した状態において、運転席からの後方視界に対するシートベルトアンカ72による遮蔽が少なくなるように形成されている。具体的には、シートベルトアンカ72が所定角度回転した状態のときに略上端となる部位にまで表面部77bの外縁部に沿うように傾斜面77dが形成されており、これにより、傾斜面77dが設けられておらず表面部77bの上部が車内側により多く飛び出した状態の場合と比べ、シートベルトアンカ72による遮蔽が少なくなるようになっている。なお、前記所定角度は、例えば、シートベルトアンカ72と2列目シート3との前後位置関係を考慮して設定される。
Cピラートリム56は、車体側面にほぼ平行な下面部56bと、該下面部56bの前後に設けられ、下面部56bから前後に離れるにつれて車幅方向外方側となる前傾斜面部56c及び後傾斜面部56dを有し、前後方向中間部が車内側に膨出して湾曲するように形成されている。
Cピラートリムの下面部56b、及びシートベルトアンカ77の上面部77cは、それぞれ平らな面であり、ほぼ平行な状態で対向し、前述の通り一定の隙間Sを有している。また、Cピラートリム56の下面部56bの前後幅は、図13のようにシートベルトアンカ77が回転した状態において、該アンカ77の表面部77bの外縁が前傾斜面部56c及び後傾斜面部56dにはみ出さないように設定されており、これにより、乗員がシートベルト71を装着したことによりシートベルトアンカ72が図13に示すように反時計回りに所定角度(例えば前述のように60°)回転した状態においても、Cピラートリム56の下面部56bとシートベルトアンカ72の上面部77cとの間の車幅方向の隙間Sが大きくならないようになっている。なお、シートベルトアンカ72の外縁の形状を、前傾斜面部56c及び後傾斜面部56dにはみ出さないように形成してもよい。
図3に示すように、車両後部の車内側の面を構成するクォータトリム91には、Cピラー9の下方において、シートベルト保持部材74が設けられている。このシートベルト保持部材74は、平面視で前方が開口したU字クリップ状のものであり、シートベルト71の非装着状態において、該隙間にシートベルト71が挿入されることにより、図19に示すように、シートベルトアンカ72が、その上下方向がカーテンエアバッグ17のCピラートリム56に摺接する部分における展開方向(カーテンエアバッグ17の下端ライン17L2に直交した方向)に対して±30°以内の所定角度となった状態で保持されるようになっている。
Cピラー9のCピラートリム56の下面部56bには、シートベルトアンカ72の上縁近傍において、上部側が下部側よりも車幅方向において車内側に位置するように形成された段差部56eが設けられている。また、段差部56eの上部側の車内側端は、シートベルトアンカ72の上端部の車外側端よりも車内側に位置している。換言すれば、段差部56eの上部側の車内側への突出量は、前記隙間Sの大きさよりも大きくされている。この段差部56eは、前後にほぼ水平に延びており、その後端56gは、該後端56gより前方でシートベルトアンカ72の上方に当たる部位56hに対して、車両上下方向において同高さに設定されている。
図14に示すように、Bピラー8のシートベルトアンカ62は、Dピラートリム26の上端とカーテンエアバッグ17の前端固定部Pfとを結んだ直線TL1より下方で、かつ段差部56eの後端とカーテンエアバッグ17の前端固定部Pfとを結んだ直線L1よりも上方に設けられている。
次に、以上のような構成の作用について説明する。カーテンエアバッグ17が収納状態のときに、側方衝突が検出されたときあるいは予知されたときや、車両の横転が検出されたときあるいは予知されたとき等の所定条件が満足されると、インフレータ18が起爆される。インフレータ18の起爆によって発生されたガス圧が収納状態にあるカーテンエアバッグ17に供給されて、カーテンエアバッグ17が、図2に示すように車室内に膨張、展開される。
カーテンエアバッグ17の車室内への膨張、展開は、ルーフトリム37の車幅方向外側縁部を図6に矢印αで示すように下方へ変位させつつ行われる(膨張、展開されたカーテンエアバッグ17が一点鎖縁で示される)。ルーフトリム37は軟質なので、容易に下方へ変形させることができる。また、車両後部側においては、カーテンエアバッグ17の膨張、展開は、Dピラートリム26の所定端縁部26aの少なくとも上部を、図7に矢印βで示すように前方へ変位(変形)させつつ行われる(膨張、展開されたカーテンエアバッグ17が一点鎖縁で示される)。図7において、カーテンエアバッグ17は、サイドウインドガラス16と所定端縁部26aとの間にできる隙間を通って車室内へと膨張、展開されるが、カーテンエアバッグ17は、所定端縁部26a部分において車幅方向に膨張される膨張部を有しており、したがって、所定端縁部26aの上部を前方へ変位させつつ十分に車幅方向内方側へと変位させる必要が生じる。収納状態にあるカーテンエアバッグ17のうちサイドウインドガラス16の後縁部に沿う部分においては、図7に矢印γで示すように大きく車幅方向外方側に指向されているので、所定端縁部26aとサイドウインドガラス16との間に形成されるべきカーテンエアバッグ17の通り道となる隙間は必要最小限ですむ。
ところで、カーテンエアバッグ17のガス導入口17mが中間ピラー9よりも前方に位置していると、前部側中心にガスが導入される。また、Dピラートリム9が比較的硬質の合成樹脂製であると、カーテンエアバッグ17の後端部が展開しにくく、カーテンエアバッグの前部側は外部空間に展開しているにもかかわらず、後端部はいまだ後部ピラートリムの内方に残った状態が存在することとなる。つまり、カーテンエアバッグ17の展開開始の初期に、カーテンエアバッグ17の非膨張部17f,17gや縫成17a,c,eにより、カーテンエアバッグ17の前部(例えば前席シート2に対応する部位)にガスを優先して導入させる場合には、例えば図14に示すような展開状態が生じる。このとき、カーテンエアバッグ17の後端部の上部は、Dピラートリム26の上端部の前縁部に引っ掛かったような状態であるので、前端の固定点Pfと、Dピラートリム26の上端部の前縁部Xとを結んだ線上に張力ラインTL1が生じる。
そして、このときの状態を平面で説明すると、図16に示すように、Dピラートリム26の所定端縁部26aはCピラー9のCピラートリム56の車内側の面よりも車幅方向外側に位置しているので、前記張力によりカーテンエアバッグ17がCピラートリム56に押さえつけられたような状態で摺接しながら下降することとなる。この場合、カーテンエアバッグ17が図14のように展開する前の状態では、カーテンエアバッグ17の車外側の面がCピラートリム56に接することはあるかもしれないが、その後カーテンエアバッグ17がDピラートリム26の下部に向かって展開する場合に比してCピラートリム56への押圧力は小さい。つまり、カーテンエアバッグ17が、Dピラートリム26の上端部より前方のルーフトリム37を車室側に押圧して展開する時には、Cピラートリム56におけるTL1より上に対して第1の押圧力で展開し、Dピラートリム26の上端部から下方に向けて展開する時には、Cピラートリム56におけるTL1より下に対して第1の押圧力より大きい第2の押圧力で展開することとなる。したがって、この張力ラインTL1上またはそれよりも下方にシートベルトアンカ72を設けると、更なる展開に際して、該アンカ72にカーテンエアバッグ17が引っ掛かりやすくなる。また、カーテンエアバッグ17の下縁部が、シートベルトアンカ72のケース77とCピラートリム56との隙間Sに入り込みやすくなる。
そこで、本実施の形態においては、前述のように、シートベルトアンカ72のケース77に、下側ほど車幅方向において車内側となるように形成された傾斜面77dを設けたものであり、これにより、展開時にカーテンエアバッグ17の下端がシートベルトアンカ72の車内側の面に当接しても、該アンカ72に引っ掛かりにくくなり、展開不良となるのが防止されることとなる。
また、本実施の形態においては、前述のように、Cピラートリム56の下面部56bに、シートベルトアンカ72の上縁近傍において、上部側が下部側よりも車内側に位置するように形成された段差部56eを設けると共に、該段差部56eの上部側を、シートベルトアンカ72の上縁部の車幅方向外側端部よりも車内側に位置させたものであり、これにより、上方から見たときに、シートベルトアンカ72とCピラートリム56との隙間Sが段差部56eの上部側により隠されることとなる。すなわち、カーテンエアバッグ17が、隙間Sに入り込みにくくなり、これによっても、シートベルトアンカ72に引っ掛かるのが抑制されることとなる。このような隙間Sを小さくしたり、傾斜面を形成することは、シートベルトアンカ72を張力ラインTL1上またはそれよりも下方に位置させた場合に、特に有効になる。
そして、図15に示す状態まで展開完了したときに(所定の展開状態)、カーテンエアバッグ17は前端部の固定点Pfと、後端部の固定点Prとを結んだ線上に張力ラインTL3を生じ、車両の横転等に対して十分な対抗力を生じることとなる。
また、本実施の形態においては、シートベルトアンカ72は、略車幅方向に延設された軸74を中心として回転可能に設けられており、前記傾斜面77dは、乗員がシートベルトを装着したことによりシートベルトアンカ72が所定角度回転した状態において、運転席からサイドウインドガラス16を介した後方視界に対するシートベルトアンカ72による遮蔽が少なくなるように形成されているから、前記効果以外にも、運転席からの後方視認性が向上するという効果が得られる。
また、シートベルトアンカ72は、乗員がシートベルト71を装着したことにより図13のように回転した状態において、Cピラートリム56の下面部56bとアンカ72における前記トリム56の下面部56bに対向する面である上面部77cとの間の車幅方向の隙間Sが非装着状態のときの隙よりも大きくならないように形成されているから、本実施の形態のもののように傾斜面77dを設けるために回転中心からシートベルトアンカ72の上端までの長さを回転中心から該アンカ72の前後端までの長さよりも長くしたようなものにおいて、シートベルトアンカ72が回転したとしても、隙間S内にカーテンエアバッグ17の下端が入るのが防止され、したがって、これによる引っ掛かりが防止されることとなる。
つまり、Cピラートリム56の下面部56bの前後方向の長さを短くすると、特にCピラートリム56が前傾している場合にも、シートベルトアンカ72の回動により、シートベルトアンカ72の回動状態での後端が下面部56bよりも後方にはみ出て後傾斜面部56dに対応するため隙間Sが大きくなるが、本実施の形態ではこのようなことがない。
さらに、シートベルト71の非装着状態において、シートベルトアンカ72の上下方向がカーテンエアバッグ17の展開方向に向くように回転した状態で保持させるボス部材でなる保持部材74が設けられているから、展開時にカーテンエアバッグ17の下端がシートベルトアンカ72の車内側の面に当接すると、該面に沿って滑らかに滑り落ちることとなり、その結果、シートベルトアンカ72に引っ掛かるのが効果的に防止されることとなる。
ところで、本実施の形態に係るカーテンエアバッグ17の場合、前述のように、展開初期においては、Dピラートリム26からカーテンエアバッグ17の後端部側が外方空間に展開するまでの間は、前部側が先に展開するので、カーテンエアバッグ17の下端ライン17Lは、図3に示すように、Dピラートリム26の前縁上端26uから延びるラインとなり、展開とともに前縁上端26uを中心として反時計回りに回転する。
そのような場合に、本実施の形態においては、前記段差部56eの後端56gは、該後端56gより前方でシートベルトアンカ72の上方に当たる部位56hに対して、車両上下方向において同高さに設定されているから、図9に拡大して示す下端ライン17Lから明らかなように、カーテンエアバッグ17の下端ライン17Lが段差部56eの後端56gに下がったときには、シートベルトアンカ部分においては、その下端は該シートベルトアンカ72の上端よりも低い位置にまで下降して、シートベルトアンカ72の車内側に位置している。したがって、展開時に、カーテンエアバッグ17がシートベルトアンカ72に一層引っ掛かりにくくなる。
さらに、Bピラー8の車内側の面に車内側に突出するシートベルトアンカ62が設けられているが、本実施の形態においてはCピラー9に段差部56eが設けられているので、Bピラー8の位置においてもカーテンエアバッグ17が車内側に移動させられることとなり、シートベルトアンカ62に対する引っ掛かり防止効果も得られることとなる。
ところで、後部ピラートリム26の上端とカーテンエアバッグ17の前端固定点Pfとを結んだ直線上に、前述のようにカーテンエアバッグ17の展開初期に張力ラインTL1が生じる場合でも、Bピラー8のシートベルトアンカ62を、張力ラインTL1より下側で、かつ段差部56eの後端とカーテンエアバッグ17の前端固定部Pfとを結んだ直線L1よりも上方に設けることにより、確実にシートベルトアンカ62が存在する位置においてカーテンエアバッグ17が車内側に移動させられることとなり、カーテンエアバッグ17の下端がシートベルトアンカ62に引っ掛かるのが一層確実に防止されることとなる。なお、本発明は、シートベルトアンカ62が、公知の上下スライド可能式のものに対しても適用可能である。
なお、段差部56eの形成態様は、前記実施の形態のものだけでなく、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記実施の形態においては、前記Cピラー9の段差部56eは、Cピラー9の下面部56bの前後端にわたって設けられていたが、図17、図18に示す変形例においては、Cピラートリム56′の段差部56e′は、下面部56b′の車両後側にのみ形成されている。この場合においても、前述の実施の形態同様、カーテンエアバッグ17は車内側に移動させられることになり、同様の作用が得られる。もちろん、これよりもさらに後側にのみ、または前方にまで形成してもよく、Cピラートリムのデザインの自由度が向上することとなる。
また、さらに別の変形例を説明すると、図19に示すように、Cピラー9のCピラートリム56″の段差部56e″は、後側に下方に延びる下方延長部57f″を有している。この下方延長部57f″の下端(後端)57g″は、該後端″より前方でシートベルトアンカ72の上方に当たる部位57h″に対して、車両上下方向において低い位置まで延びている。これによれば、カーテンエアバッグ17は、展開時に、シートベルトアンカ72の略中間高さ位置まで段差部56e″により持ち上げれられた状態となり、より一層確実に引っ掛かりが防止されることとなる。
以下、カーテンエアバッグ17のDピラー10からの展開を容易化させるための構造を3例説明する。
まず、1例目は、図20に示すように、Dピラートリム26に対して前方への所定以上の押圧力を受けたときに、Dピラートリム26がほぼ全体的にDピラー10に対して前方へ変位できるようにしたものである。すなわち、前面部26cの背面側から突設された支持ステー29の先端部に係止突起部29aが形成されて、この係止突起部29aがDピラー10に係止されている。このような構成によれば、前面部26cに所定以上の前方への押圧力が作用したときに、係止突起部29aのDピラー10に対する係止作用が容易に解除されて、図20に一点鎖線で示すように、Dピラートリム26がほぼ全体的に前方へ容易に変位されることになって、カーテンエアバッグ17の展開性が良好になる。
また、2例目においては、図21に示すように、Dピラートリム26における前面部26cのうち、所定端縁部26aを含む所定部分、より具体的には、前面部26cのうち車幅方向外方側寄りの部分でかつ上下方向略中間位置よりも上方部分が、別体に形成されたカバー部材27によって構成されている。このカバー部材27は、前面部26cが面一となるようにして、ヒンジ28を介してDピラートリム26の他の部分(本体部分)と一体化されている。ヒンジ28は、例えば軟質の合成樹脂等によってループ状に形成され、カバー部材27がヒンジ28を中心として前方へ容易に揺動可能に構成されている。そして、カバー部材27は、その背面から突設された支持ステー27aの先端部に形成された係止突起部27bを利用して、Dピラー10に係止されている。このような構成によれば、カーテンエアバッグ17が膨張、展開するときに、係止突起部27bのDピラー10に対する係止作用が容易に解除されて、一点鎖線で示すように、カバー部材27がヒンジ28を中心にして前方へ容易に揺動し、カーテンエアバッグ17の展開性が極めて良好となる。
図22は、2例目の変形例である第3の例を示す。すなわち、この第3の例では、カバー部材27に相当する部分を、Dビラートリム26の前面部26に一体成形するようにしたものである。すなわち、カバー部材27に相当するカバー部27’と他の部分との境界線部位に、前面部26の背面側からヒンジ28の機能を果たす溝26dを形成したものとなっている。カーテンエアバッグ17が収納状態にあるときの状態が図22に実線で示され、カーテンエアバッグ17が膨張、展開されたときの状態が図22に一点鎖線で示される。
なお、前記実施の形態においては、シート3用のシートベルト71のシートベルトアンカー72がCピラー9に設けられている場合について説明したが、本発明は、Cピラー9そのものでなく、その近傍に設けられたものに対しても適用可能である。例えば、ルーフサイドサイドレール30Rに、Cピラー9の後近傍位置において、下方の車室内のサイドウインドガラス16に車幅方向で近接する位置まで延びるブラケットを取付け、該ブラケットにシートベルトアンカー72を取り付けるようなものに対しても適用可能である。
また、本実施の形態では、図23に示すような張力ラインTL2が生じる場合にも適用可能である。つまり、また、カーテンエアバッグ17の前後方向略中心部にガスを優先して導入させる場合には、該エアバッグ17の下縁部における車両前後方向でガス導入口17mの下方に当たる部位には、勢い良くガスが吹き込まれるので、カーテンエアバッグ17の後端部側はまだ展開していないにもかかわらず、前部側は大きく展開した図13に示すような展開状態が生じる(請求項2における所定の展開状態)。そして、この状態においては、やはり同様に、カーテンエアバッグ17には、該エアバッグ17の下縁部における車両前後方向でガス導入口17mの下方に当たる部位Yと、後部ピラートリムの上端部の前縁部Xとを結んだ線上に張力ラインTL2が生じることとなる。この場合、カーテンエアバッグ17が図13のように展開する前の状態では、カーテンエアバッグ17の車外側の面がCピラートリム56に接することはあるかもしれないが、その後カーテンエアバッグ17がDピラートリム26の下部に向かって展開する場合に比してCピラートリム56への押圧力は小さい。したがって、Cピラートリム56において、この張力ラインTL2上またはそれよりも下方にシートベルトアンカ72を設けると、更なる展開に際して、張力ラインTL1同様の問題が生じる。しかし、このような場合においても、前述のような同様の効果が奏される。