JP3893887B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルーフサイドレールに沿って格納配置され、かつ車両の側突時等に、インフレータの作動により車室の側壁面に沿って拡張展開するエアバッグを備えた車両の乗員保護装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平11−91490号公報に示されるように、ピラーとルーフサイドレールとに跨ってカーテン状に拡張展開する頭部保護エアバッグの配設構造において、ルーフサイドレールに沿って折畳まれた状態で格納されたエアバッグの下方にジャンプ台等からなるガイド手段を設け、車両の側突時等に、エアバッグをジャブ台の壁面に沿って膨張させることにより、ピラートリムおよびルーフトリム(ルーフヘッドライニング)の車幅方向外側部を押し開いて、ルーフサイドレールの下方にエアバッグをカーテン状に拡張展開させることが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように車両の側突時等に、エアバッグをジャブ台の壁面に沿って膨張させることにより、ピラートリムおよびルーフトリムの車幅方向外側部を押し開くように、上記ガイド手段によるエアバッグの案内方向を設定した場合には、上記ピラートリムの押し開きが少しでも阻害されると、このピラートリムとピラーの車室内側壁面との間にエアバッグが入り込むことが避けられず、このエアバッグを適正状態で拡張展開させることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、車両の側突時等に拡張展開するエアバッグがピラートリムの干渉するのを防止してエアバッグを適正状態で拡張展開させることができる車両の乗員保護装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、車体のルーフサイドレールに沿って格納配置され、かつ車両の側突時等に、インフレータの作動により車室の側壁面に沿って拡張展開するエアバッグと、ルーフサイドレールおよびピラーの車室内側の壁面を覆うルーフトリムおよびピラートリムとを備えた車両の乗員保護装置であって、上記ルーフトリムの側端部と、ピラートリムの上端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部に対向するルーフサイドレールの壁面に、上記エアバッグを車室内に向けて案内するためのガイド部材を固定し、このガイド部材は、エアバッグの案内面を構成するガイド部と、その先端部から車外側に向けて延びる折返し部とを有し、この折返し部は、その延長方向がピラートリムと干渉を生じない方向に設定されるとともに、上記ガイド部の車室側先端部から、このガイド部の車外側端部より下方に位置する車外側の壁面に向かって延設されることにより、エアバッグの拡張展開時にエアバッグの押圧力による上記ガイド部の変形を規制するように構成され、かつルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部とを線接触させることにより、ルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部とを互いに重合させたものである。
【0006】
上記構成によれば、車両の側突時等に上記インフレータが作動することにより、上記ルーフサイドレールに沿って格納配置されたエアバッグが拡張展開する際に、このエアバッグがガイド部材により案内され、上記ピラートリムの上端部よりも上方で、かつ上記ルーフトリムの車外側壁面に向けて拡張展開するため、上記エアバッグとピラートリムとの干渉が防止され、ピラートリムとピラーとの間にエアバッグが入り込むことが確実に防止されることになる。また、車両の側突時等に上記エアバッグが拡張展開する際に、上記ピラートリムの上端部よりも上方において、上記ルーフトリムの車外側壁面に当接してこのルーフトリムが変形することにより、ルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部との重合部が容易に離間し、この離間部から車室内にエアバッグがスムーズに膨出することになる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の車両の乗員保護装置において、ルーフトリムの側端部に、車外側に向けて湾曲する湾曲部を設け、この湾曲部の車室内側壁面に上記ピラートリムの上端部を当接させるように構成したものである。
【0008】
上記構成によれば、車両の側突時等に上記エアバッグが拡張展開する際に、上記ピラートリムの上端部よりも上方において、上記ルーフトリムの車外側壁面に当接してこのルーフトリムが変形する際に、上記湾曲部がガイド面となってルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部との重合部が容易に離間し、この離間部から車室内にエアバッグがスムーズに膨出することになる。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の乗員保護装置において、ガイド部材に設けられた折返し部の車外側先端部が、ルーフサイドレールの壁面から離間した状態で配設されるとともに、上記ガイド部には、車両の前後方向に延びる切欠き部が形成されたものである。
【0010】
上記構成によれば、車両の側突時等に、乗員の頭部等がルーフトリムの側辺部に当接して上記ガイド部材の設置部に所定の荷重が作用すると、上記離間部に対応した距離だけガイド部材のガイド部が容易に変形して衝撃が緩和されるとともに、その後に上記ガイド部および折返し部が変形することにより、衝撃エネルギーが効果的に吸収されることになる。また、乗員の頭部等がルーフトリムの側辺部に当接した当初に、上記ガイド部材のガイド部が容易に変形して乗員の頭部等に作用する衝撃力が効果的に緩和されることになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は、本発明に係る車両の乗員保護装置の実施形態を示している。この乗員保護装置は、車両の側突等を検出する衝突検出センサ(図示せず)の検出信号に応じて作動するインフレータ1と、車両のフロントピラー2の上端部からルーフサイドレール3およびリヤピラー4に沿って配置されるとともに、蛇腹状に折畳まれた状態で格納されたエアバッグ5と、上記インフレータ1の作動時に発生したガスを上記エアバッグ5に供給してエアバッグ5を拡張展開させるガス供給パイプ6と、上記ルーフサイドレール3およびリヤピラー4の車室内側の壁面を覆うルーフトリム7およびリヤピラートリム8とを備えている。
【0016】
上記エアバッグ5は、フロントピラー2の上端部からルーフサイドレール3の車室内側壁面に沿って車体の後方側に延びるように格納配置されるとともに、このエアバッグ5の格納配置部が、上記ルーフトリム7の側辺部7aによって覆われている。このルーフトリム7の側辺部7aは、その側端部が、上記ルーフサイドレール3のフランジ部3aに取り付けられたウェザーストリップ9に対して係脱可能に係止されている(図2参照)。
【0017】
上記エアバッグ5の後部5aは、リヤピラー4の後辺部に沿って車体の下方側に延びるように格納配置されるとともに、その下方側に上記インフレータ1が配設されている。上記エアバッグ5の後端部は、固定ボルト11等により上記ガス供給パイプ6とともにリヤピラー4の車室内側壁面、つまりリヤピラー4のインナパネル4aに固定されている(図3参照)。なお、図3において、20は、リヤサイドドアである。
【0018】
また、上記リヤピラー4の後辺部に沿って車体の下方側に延びるように格納配置されたエアバッグ5の後部5aを覆う略平行四辺形状の延出部7bが、上記ルーフトリム7の後端部に連設されている(図1参照)。このルーフトリム7の延出部7bは、その上下寸法がリヤピラー4の略半分に設定されるとともに、幅寸法がリヤピラー4の略半分に設定されることにより、このリヤピラー4の上部後辺部を覆うように構成されている。
【0019】
上記リヤピラートリム8の上部には、上記ルーフトリム7の延出部7bに対応する略L字状の切欠き部が形成され、上記リヤピラー4の後辺部を除く部分、つまりリヤピラー4の前辺部が、上記リヤピラートリム8の上方部8aにより覆われるようになっている。また、上記ルーフトリム7の延出部7bの前縁には、斜め外方側に傾斜したフランジ部7cが形成され、通常時には、このフランジ部7cに、上記リヤピラートリム8の上方部8aの後縁が線接触することにより、両部材が重合した状態となるように構成されている。
【0020】
上記リヤピラー4の車室内側壁面には、エアバッグ5の拡張展開時に、上記ルーフトリム7の延出部7bの前縁と、リヤピラートリム8の上方部8aの後縁との重合部から車室内側にエアバッグ5を膨出させるように案内するガイド部材12が、上記ルーフトリム7の延出部7bの前縁と、リヤピラートリム8の上方部8aの後縁との重合部に対応した位置に固着されている。
【0021】
上記ルーフトリム7の延出部7bの下縁と、この延出部7bに対応して上記リヤピラートリム8に形成された切欠き部の下縁との間には、上記ルーフトリム7の延出部7bの前縁と、リヤピラートリム8の上方部8aの後縁との間に形成された重合部と同様の重合部が設けられている。また、上記リヤピラートリム8の上方部8aの上縁と、これに対応するルーフトリム7の下縁との間にも、同様の重合部が設けられている。
【0022】
上記フロントピラー2とリヤピラー4との間にはセンタピラー10が配設され、このセンタピラー10の車室内側には、図4に示すように、センタピラートリム14が設置されている。このセンタピラートリム14は、センタピラー10の車室内側壁面、つまりセンタピラー10のインナパネル15と所定間隔を置いて相対向するように配置されるとともに、係止具23によってセンタピラー10に係止されることにより、その車室内側の壁面を覆うように構成されている。
【0023】
また、上記ルーフサイドレール3の車室内側壁面を覆う上記ルーフトリム7の側辺部7cの側端部は、車外側に向けて湾曲する湾曲部7dが形成され、通常時には、この湾曲部7dの下面に、上記センタピラートリム14の上端部が線接触することにより、上記ルーフトリム7の側端部と、センタピラートリム14の上端部とが重合した状態となるように構成されている。
【0024】
そして、上記ルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部との重合部に対向するルーフサイドレール3の壁面(インナパネル15)には、車両の側突時等に拡張展開するエアバッグ5を案内するためのガイド部材16が設けられている。
【0025】
上記ガイド部材16は、ルーフサイドレール3の壁面に固着される所定幅の取付基板17と、この取付基板17の下端部から車室内側に向けて延びるガイド部18と、このガイド部18の先端部から車外側に向けて延びる折返し部19とを有し、上記ガイド部18によるエアバッグ5の案内方向を、上記センタピラートリム14の上端部よりも上方で、かつ車室内側の位置における上記ルーフトリム7の側辺部7aの車外側壁面に向けるように構成されている。すなわち、上記ガイド部18の先端部が、センターピラートリム14の上端部よりも上方で、かつ車室内側を指向するように設定されている。
【0026】
上記ガイド部材16の取付基板17とガイド部18とがなす角度θは鈍角に設定されるとともに、上記折返し部19の先端部がルーフサイドレール3の壁面から所定距離Sだけ離間するように、上記折返し部19の寸法が設定されている。これにより上記ルーフトリム7の側辺部7aに乗員の頭部が当接する等により、この側辺部7aが車外側に押圧されて上記ガイド部材16の設置部に所定の荷重が作用した場合に、上記折返し部19の先端部がルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接するまでは、ガイド部18のみが変形し、上記折返し部19の先端部がルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接した後は、上記折返し部19とガイド部18との両方が変形するようになっている。
【0027】
また、上記センタピラートリム15の所定位置には、図5に示すように、シートベルト21の上端部を支持するベルトアンカーの設置部を覆うアンカーカバー22が設置され、このアンカーカバー22の上端部には、内下がりの傾斜面22aが形成されている。そして、後述するエアバッグ5の拡張展開時に、上記アンカーカバー22の上記傾斜面22aが、エアバッグ5を案内する案内面となるように構成されている。図例では、センタピラートリム15の車室内側壁面と直交する面に対する上記傾斜面22aの傾斜角度γが30°程度に設定されている。
【0028】
上記フロントピラー2の車室内側には、図6に示すように、フロントピラートリム24が設置されている。このフロントピラートリム24と、上記フロントピラー2との間には、後述する係止具25により一端部がフロントピラー2の車室内側壁面に係止されるとともに、他端部が上記エアバッグ5の前端部に縫着される等の手段で固着された帯状部材からなる固定部材26が配設されている。なお、図6において27はフロントガラス、28はフロントサイドドアである。
【0029】
そして、エアバッグ5の拡張展開時には、図7に示すように、上記固定部材26によりフロントピラー2に固定されるエアバッグ5の前端部の固定位置が、上記固定ボルト11等によりリヤピラー4に固定されるエアバッグ5の後端部の固定位置とが略同一高さとなるように、上記固定部材26の一端部の固定位置、つまり係止具25によってフロントピラー2に係止される固定部材26の係止位置が設定されている。
【0030】
上記構成において、衝突検出センサにより車両に側突等が発生したことが検出されると、上記インフレータ1が作動することにより発生したガスが上記ガス供給管6を介して上記エアバッグ5内に供給される。この結果、上記ルーフサイドレール3に沿って格納配置されたエアバッグ5が下方に膨出することにより、図7に示すように、車室の側壁面をカーテン状に覆うように拡張展開する。
【0031】
すなわち、上記リーフサイドレール3に沿って配設されたエアバッグ5が膨出すると、上記ガイド部材16のガイド部18により案内され、上記センタピラートリム14の上端部よりも上方において、エアバッグ5が上記ルーフトリム7の側辺部7aの車外側壁面に当接し、このルーフトリム7の側辺部7aが車体の内方側に押圧される。この結果、図8に示すように、上記ルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部との重合部が離間し、この離間部から外方側にエアバッグ5が膨出することになる。
【0032】
また、上記リヤピラー4の後辺部に沿って配設されたエアバッグ5の後部5aが膨張すると、上記ガイド部材12により案内されて上記エアバッグ5の後部5aがルーフトリム7の延出部7bに当接し、この延出部7bが車体の内方側に押圧される。この結果、図9に示すように、上記延出部7bの前縁と、リヤピラートリム8の上方部8aの後縁との重合部が離間し、この離間部から外方側にエアバッグ5の後部5aが膨出することになる。
【0033】
また、上記エアバッグ5の展開状態では、その前端部が上記固定部材26によりフロントピラー2の上下方向の略中間部に固定された状態となる。なお、図例では、上記エアバッグ5の膨出部を、フロントピラー2からセンターピラー10の設置部を含む範囲を覆う前部5bと、上記リヤピラー4の設置部を含む範囲を覆う後部5aとに分割し、このエアバッグ5の前部5bと後部5aとを、シート状の連結部5cによって連結しているが、この構成に代えて、上記エアバッグ5の全体を膨出させるように構成してもよい。
【0034】
上記のようにルーフサイドレール3に沿ってエアバッグ5を格納配置し、かつ上記ルーフサイドレール3およびセンタピラー10の車室内側の壁面を覆うルーフトリム7およびセンタピラートリム14とを備えた車両の乗員保護装置において、上記ルーフトリム7の側端部と、センタピラートリム14の上端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部に対向するルーフサイドレール3の壁面に、上記エアバッグ5を案内するためのガイド部材16を設け、このガイド部材16によるエアバッグ5の案内方向を、上記センタピラートリム14の上端部よりも上方で、かつ車室内側の位置における上記ルーフトリム7の側辺部7aの車外側壁面に向けて設定したため、上記エアバッグ5とセンタピラートリム14との干渉を防止して、このセンタピラートリム14とセンタピラー10との間にエアバッグ5が入り込むという事態の発生を確実に防止することができる。
【0035】
すなわち、車両の側突時等に上記インフレータ1が作動することにより、上記ルーフサイドレール3に沿って格納配置されたエアバッグ5が拡張展開する際に、このエアバッグ5が上記ガイド部材16により案内され、センタピラートリム14の上端部よりも上方で、かつ上記ルーフトリム7の側辺部7aの車外側壁面に向けて拡張展開するため、上記エアバッグ5がセンタピラートリム14の上端部に当接することが防止される。したがって、上記エアバッグ5の車室内への膨出がセンタピラートリム14の上端部により規制されることに起因して、センタピラートリム14とセンタピラー15との間にエアバッグ5が入り込むという事態の発生を確実に防止し、上記センタピラートリム14の車室内側壁面に沿って上記エアバッグ5を適正かつスムーズに拡張展開させることにより、乗員の頭部等を効果的に保護することができる。
【0036】
また、上記のようにルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部とを線接触させることにより、ルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部とを互いに重合させるように構成したため、これらを面接触させるように構成した場合に比べ、車両の側突時等に拡張展開する上記エアバッグ5の押圧力に応じて、上記ルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部との重合部を離間させる際の抵抗力を小さくすることができ、これによって上記重合部から車室内にエアバッグ5をスムーズに膨出させることができるという利点がある。
【0037】
また、上記のようにルーフトリム7の側端部に、車外側に向けて湾曲する湾曲部7dを設け、この湾曲部7dの車室内側壁面に上記センタピラートリム14の上端部を当接させるように構成した場合には、車両の側突時等に拡張展開するエアバッグ5の押圧力に応じてルーフトリム7の側辺部7aが車室内側に変形する際に、上記湾曲部7dがガイド面となって上記ルーフトリム7の側端部とセンタピラートリム14の上端部との重合部が容易に離間するため、この離間部から車室内にエアバッグ5をスムーズに膨出させることができる。
【0038】
上記実施形態では、ガイド部材16に、エアバッグ5の案内面を構成するガイド部18と、その先端部から車外側に向けて延びる折返し部19とを設けたため、上記エアバッグ5の拡張展開時に、このエアバッグ5の押圧力による上記ガイド部18の過大な変形が上記折返し部19によって規制されることになる。したがって、上記ガイド部材16のガイド部18によるエアバッグ5のガイド機能が、簡単な構成で効果的に確保され、車両の側突時等に、上記エアバッグ5を、センタピラートリム14の上端部よりも上方で、かつ上記ルーフトリム7の側辺部7aの車外側壁面に向けて確実に拡張展開させることができる。
【0039】
特に、上記実施形態(図4参照)に示すように、ガイド部材16に設けられた折返し部19の先端部を、ルーフサイドレール3の車室内側壁面から所定距離Sだけ離間させるようにした構成によると、車両の側突時等に、乗員の頭部等がルーフトリム7の側辺部7aに当接することにより作用する押圧力に応じ、上記折返し部19がルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接するまで、上記ガイド部材16のガイド部18を容易に変形させることができるため、上記乗員の頭部等が衝撃を受けるのを効果的に防止することができる。そして、上記ガイド部18の変形に応じて上記折返し部19の先端部がルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接した時点以降は、上記折返し部19とガイド部18との両方が変形することになるため、衝撃エネルギーの吸収作用が充分に発揮されるという利点がある。
【0040】
なお、乗員の頭部等がルーフトリム7の側辺部7aに当接した当初に、上記ガイド部材16のガイド部18を容易に変形させて、乗員の頭部等に作用する衝撃力を、さらに効果的に緩和し得るようにするためには、図10に示すように、上記ガイド部18に長孔等からなる切欠き24を設けた構造とすることが望ましく、このように構成した場合には、上記ガイド部材16の軽量化を図ることができるという利点がある。
【0041】
また、上記実施形態では、ガイド部材16の取付基板17の全体をルーフサイドレール3の車室内側壁面に固着した例について説明したが、図11に示すように、ルーフサイドレール3の車室内側壁面に固着された固着部17aと、上記車室内側壁面から離間した離間部17bとを上記取付基板17に設け、この離間部17bの先端に折返し部19を設けた構造としてもよい。
【0042】
上記構成によると、乗員の頭部等がルーフトリム7の側辺部7aに当接した当初には、上記ガイド部材16の設置部に入力される荷重に応じて上記取付基板17が主に変形し、上記取付基板18の離間部17aがルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接した時点からは、上記ガイド部18が主に変形することになる。さらに、上記折返し部19の先端部がルーフサイドレール3の車室内側壁面に当接した時点以降は、上記折返し部19とガイド部18との両方が変形し、衝撃エネルギーの吸収作用が段階的に増大することになるため、乗員の頭部等に作用する衝撃力を効果的に緩和しつつ、上記衝撃エネルギーの吸収効果が充分に得られることになる。
【0043】
また、図5に示すように、センタピラートリム15に設置された上記アンカーカバー22の上端部に内下がりの傾斜面22aを形成し、上記エアバッグ5の拡張展開時に、上記アンカーカバー22の上記傾斜面22aに沿ってエアバッグ5を拡張展開させるように構成した場合には、上記エアバッグ5の膨出がアンカーカバー22によって阻害されるのを防止することができる。したがって、センタピラートリム15の上部に、上記アンカーカバー22を設けたにも拘わらず、車両の側突時等に上記エアバッグ5をスムーズに拡張展開させることができるという利点がある。
【0044】
なお、上記ルーフトリム7の側端部と、センタピラートリム14の上端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部の上方に対応する位置に上記ガイド部材16を設けてなる上記実施形態に代え、フロントピラー2とリヤピラー4との間に配設された複数の中間ピラーが配設された車両において、この中間ピラーの車室内側の壁面を覆うピラートリムと、上記ルーフトリム7の側端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部の上方に対応する位置に上記ガイド部材16を設けた構造としてもよい。また、上記フロントピラートリム24またはリヤピラートリム8と、上記ルーフトリム7の側端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部の上方に対応する位置に上記ガイド部材16を設けた構造としてもよい。
【0045】
上記実施形態では、エアバッグ5の後部5aをリヤピラー4の後辺部に沿って格納配置し、かつこのリヤピラー4の後辺部に沿って下方に延びる延出部7bを上記ルーフトリム7の後端部に設けるとともに、このルーフトリム7の延出部7bの前縁とリヤピラートリム8の上方部8bの後縁とを互いに重合させた状態で配設し、エアバッグ5の拡張展開時に、上記ルーフトリム7の延出部7bとリヤピラートリム8の上方部8aとの重合部から車室内側にエアバッグ5を膨出させるように構成したため、車両の側突時等に、上記ルーフサイドレール3に沿って格納配置されたエアバッグ5を下方に拡張展開させるとともに、上記リヤピラー4の後辺部に沿って格納配置されたエアバッグ5の後部5aを、上記ルーフトリム7の延出部7bの前縁(フランジ部7c)と、リヤピラートリム8の上方部8aの後縁との重合部から車体の前方側に膨出させることができる。
【0046】
したがって、車両の側突時等に、上記リヤピラー4の後辺部を含む車室内の側壁面を、上記エアバッグ5により広範囲に亘って覆うことができ、乗員が側方に付勢されてその頭部が上記リヤピラー4の設置部に向けて押圧された場合等に、上記エアバッグ5によって乗員を効果的に保護することができる。しかも、上記のようにエアバッグ5の後部5aをリヤピラー4の後辺部に沿って格納配置したため、上記エアバッグ5の後部5aをリヤピラー4の側壁面に係止することにより、エアバッグ5の展開状態を安定して保持することができるため、上記エアバッグの上辺部のみを支持してルーフサイドレール3から垂下させた場合のように、上記エアバッグに押し付けられる乗員の頭部に対する支持力が不足する等の問題が生じることなく、乗員の頭部を安定して支持できるという利点がある。
【0047】
特に、上記実施形態では、ルーフトリム7の後端部に設けられた上記延出部7bの下端部近傍に位置するリヤピラー4の壁面に、上記エアバッグ5の後端部を固定ボルト11等により固定したため、車両の側突時等に、エアバッグ5の後端部が車体の下方側においてリアピラー4の壁面(インナパネル4a)に固定されることにより、エアバッグ5の展開状態が安定して保持され、このエアバッグ5の後部5aに乗員の頭部が押し付けられた場合等に、この押し付け力に対する支持力を充分に確保することができる。
【0048】
さらに、上記実施形態に示すように、エアバッグ5の前端部をフロントピラー2に固定する固定部材26を設けるとともに、この固定部材26のフロントピラー2に対するエアバッグ5の前端部の固定位置、つまり上記係止具25により係止される固定部材26の先端部の位置を、上記リヤピラー4に対するエアバッグ5の後端部の固定位置、つまり上記固定ボルト11等によるエアバッグ5の後部5aの固定位置とを、略同一高さに設定した場合には、車両の側突時等に、エアバッグ5の前端部および後端部を車体の下方側においてフロントピラー2およびリアピラー4の壁面にそれぞれ固定した状態で、車室の側壁面に沿って拡張展開させることができる。したがって、上記エアバッグ5の後部5aに乗員の頭部が押し付けられた場合等に、この押し付け力に対する支持力をより増大させることができるという利点がある。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ルーフサイドレールに沿って格納配置され、かつ車両の側突時等に、インフレータの作動により車室の側壁面に沿って拡張展開するエアバッグと、ルーフサイドレールおよびピラーの車室内側の壁面を覆うルーフトリムおよびピラートリムとを備えた車両の乗員保護装置であって、上記ルーフトリムの側端部と、ピラートリムの上端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部に対向するルーフサイドレールの壁面に、上記エアバッグを案内するためのガイド部材を設け、このガイド部材によるエアバッグの案内方向を、上記ピラートリムの上端部よりも上方で、かつ車室内側の位置における上記ルーフトリムの車外側壁面に向けて設定したため、上記エアバッグとセンタピラートリムとの干渉を防止して、このセンタピラートリムとセンタピラーとの間にエアバッグが入り込むという事態の発生を確実に防止し、上記センターピラートリムの車室内側壁面に沿って上記エアバッグを適正状態で拡張展開させ、このエアバッグによって乗員の頭部等を効果的に保護できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の乗員保護装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】アンカーカバーの具体的構成を示す説明図である。
【図6】図1のVI−VI線断面図である。
【図7】エアバッグの展開状態を示す説明図である。
【図8】エアバッグの展開状態を示す図4相当図である。
【図9】エアバッグの展開状態を示す図3相当図である。
【図10】ガイド部材の変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態を示す図4相当図である。
【符号の説明】
1 インフレータ
3 ルーフサイドレール
4 リヤピラー
5 エアバッグ
7 ルーフトリム
7d 湾曲部
10 センタピラー
14 センタピラートリム
16 ガイド部材
18 ガイド部
19 折返し部
Claims (3)
- 車体のルーフサイドレールに沿って格納配置され、かつ車両の側突時等に、インフレータの作動により車室の側壁面に沿って拡張展開するエアバッグと、ルーフサイドレールおよびピラーの車室内側の壁面を覆うルーフトリムおよびピラートリムとを備えた車両の乗員保護装置であって、上記ルーフトリムの側端部と、ピラートリムの上端部とを互いに重合させた状態で配設するとともに、この重合部に対向するルーフサイドレールの壁面に、上記エアバッグを車室内に向けて案内するためのガイド部材を固定し、このガイド部材は、エアバッグの案内面を構成するガイド部と、その先端部から車外側に向けて延びる折返し部とを有し、この折返し部は、その延長方向がピラートリムと干渉を生じない方向に設定されるとともに、上記ガイド部の車室側先端部から、このガイド部の車外側端部より下方に位置する車外側の壁面に向かって延設されることにより、エアバッグの拡張展開時にエアバッグの押圧力による上記ガイド部の変形を規制するように構成され、かつルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部とを線接触させることにより、ルーフトリムの側端部とピラートリムの上端部とを互いに重合させたことを特徴とする車両の乗員保護装置。
- 請求項1記載の車両の乗員保護装置において、ルーフトリムの側端部に、車外側に向けて湾曲する湾曲部を設け、この湾曲部の車室内側壁面に上記ピラートリムの上端部を当接させるように構成したことを特徴とする車両の乗員保護装置。
- ガイド部材に設けられた折返し部の車外側先端部が、ルーフサイドレールの壁面から離間した状態で配設されるとともに、上記ガイド部には、車両の前後方向に延びる切欠き部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
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