JP4923898B2 - マウントシステム - Google Patents
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Description
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、ブラケット等の支持部材を追加することなく、エンジンの振動によって車室内に発生する振動及び騒音を低減させることが可能なマウントシステムを提供することを課題とする。
前記弾性支持部材は、前記パワープラントの重心に対して車幅方向右側に配置された右マウントと、前記パワープラントの重心に対して車幅方向左側に配置された左マウントと、前記パワープラントの重心に対して車幅方向の一方にオフセットして配置され、且つ車両前後方向に延在するトルクロッドと、を備えたマウントシステムであって、
前記右マウント及び前記左マウントのうち、少なくとも前記トルクロッドとの車幅方向の距離が短いマウントは他方のマウントよりも車両前後方向への剛性が低く、前記車体側部材に固定される車体側固定部材と、前記パワープラントに固定されるパワープラント側固定部材と、前記車体側固定部材と前記パワープラント側固定部材との間に介装される弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記車体側固定部材から前記パワープラント側固定部材へ向かうにつれて車両前後方向後方へ傾斜する第一突起部と、当該第一突起部よりも車両前後方向後方に配置され、且つ前記車体側固定部材から前記パワープラント側固定部材へ向かうにつれて車両前後方向前方へ傾斜する第二突起部と、を備えることを特徴とするマウントシステムを提供するものである。
(構成)
図1は、本実施形態のマウントシステム1を示す図である。
図1中に示すように、本実施形態のマウントシステム1は、パワープラント2を車体側部材4に支持する弾性支持部材6を備えている。
パワープラント2は、エンジン8と、トランスミッション10とを備えている。
エンジン8は、四つのシリンダ(図示せず)を有しており、各シリンダは、それぞれ、車幅方向に並んでいる。
トランスミッション10は、エンジン8に連結されており、駆動力の取出部に設けられたディファレンシャルギヤ(図示せず)を介して、左右の車輪(図示せず)に駆動力を伝達している。
ダッシュパネル14は、エンジンルーム18と車室20との間に配置されており、エンジンルーム18と車室20とを隔離している。なお、本実施形態では、車室20の車両前後方向前方側に、エンジンルーム18が配置されている車両について説明する。
サイドメンバ16は、パワープラント2の重心Cに対して車幅方向右側に配置された右サイドメンバ16Rと、パワープラント2の重心Cに対して車幅方向左側に配置された左サイドメンバ16Lとを備えている。
トルクロッド22は、パワープラント2とダッシュパネル14とを連結して、パワープラント2をダッシュパネル14に対して車両前後方向に支持している。また、トルクロッド22は、車両前後方向に延在しており、パワープラント2の重心Cに対して、車幅方向の一方にオフセットして配置されている。なお、本実施形態では、一例として、トルクロッド22が、パワープラント2の重心Cに対して、車幅方向左側にオフセットして配置されており、右マウント24及び左マウント26のうち左マウント26が、トルクロッド22との車幅方向の距離が短くなっている場合について説明する。
右マウント24は、パワープラント2の重心Cに対して車幅方向右側に配置されており、パワープラント2と右サイドメンバ16Rとを連結して、パワープラント2を右サイドメンバ16Rに支持している。
左マウント26は、パワープラント2の重心Cに対して車幅方向左側に配置されており、パワープラント2と左サイドメンバ16Lとを連結して、パワープラント2を左サイドメンバ16Lに支持している。
図2中に示すように、トルクロッド22は、本体部28と、外筒30と、内筒32と、筒状体連結部材34とを備えている。
本体部28は、板状に形成されており、両端部側に、それぞれ、円形の取付け孔36a,36bが形成されている。なお、図2中では、説明のために、車両前後方向前方側に形成された取付け孔36を、取付け孔36aと記載し、車両前後方向後方側に形成された取付け孔36を、取付け孔36bと記載している。
外筒30は、筒状の部材であり、取付け孔36a,36b内に配置されて、本体部28に取り付けられている。
内筒32a内には、パワープラント2とトルクロッド22とを結合する際に用いる結合部材が挿通される。内筒32b内には、トルクロッド22とダッシュパネル14とを結合する際に用いるブラケットを、トルクロッド22に結合する結合部材が挿通される。
すなわち、取付け孔36a,36b共に、外筒30と内筒32との間には、車両前後方向の前方側と後方側に、それぞれ、空隙部38が形成されている。
図3中に示すように、左マウント26は、車体側固定部材40と、パワープラント側固定部材42と、弾性部材44とを備えている。
車体側固定部材40は、板状に形成されており、車体側固定孔46と、弾性部材取付け孔48とを備えている。
車体側固定孔46は、車体側固定部材40の車両前後方向の前方側と後方側に、それぞれ、形成されており、これらの車体側固定孔46内に挿通されるボルト等の結合部材を用いて、車体側固定部材40がサイドメンバ16に固定される。
パワープラント側固定部材42は、車体側固定部材40と同様、板状に形成されており、パワープラント側固定孔50を備えている。
パワープラント側固定孔50は、パワープラント側固定部材42の中心付近に形成されており、パワープラント側固定孔50内に挿通されるボルト等の結合部材を用いて、パワープラント側固定部材42がパワープラント2に固定される。
また、パワープラント側固定部材42の上下方向の下方側の面には、弾性部材44の上端面が、接着等によって固定されている。
第一突起部52は、ゴム等の弾性材料によって形成されており、車体側固定部材40からパワープラント側固定部材42へ向かうにつれて、車両前後方向後方へ傾斜している。
第二突起部54は、第一突起部52と同様、ゴム等の弾性材料によって形成されており、車体側固定部材40からパワープラント側固定部材42へ向かうにつれて車両前後方向前方へ傾斜している。また、第二突起部54は、第一突起部52よりも車両前後方向後方に配置されている。
すなわち、第一突起部52及び第二突起部54は、車体側固定部材40及びパワープラント側固定部材42に対して、側面視で八の字状に配置されている。
図4は、パワープラント2と右マウント24及び左マウント26との位置関係を示す図であり、パワープラント2、右マウント24及び左マウント26を、車両前後方向後方から見た図である。なお、図4中では、説明のために、パワープラント2、右マウント24及び左マウント26を、簡略化して示している。
具体的には、左マウント26の車両前後方向への剛性は、図5に示すように、右マウント24、左マウント26及びトルクロッド22の位置に応じて、エンジン8の振動によって左マウント26で生じる車両前後方向への入力をF1とし、エンジン8の振動によって右マウント24で生じる車両前後方向への入力をF2とし、エンジン8の振動によってトルクロッド22で生じる車両前後方向への入力をF3としたときに、F2=F1+F3の条件式が成立するように設定されている。
次に、本実施形態のマウントシステムの動作について説明する。
上述したようなマウントシステム1では、エンジン8の駆動時においてエンジン8が振動すると、パワープラント2に、パワープラント2の重心Cを通過し、且つ車両前後方向へ延在する中心軸Xの軸回り方向への回転運動が発生する(図4参照)。なお、図4中では、説明のために、中心軸Xの軸回り方向への回転運動の方向を、双方向矢印によって示している。
また、上述したようなマウントシステム1では、エンジン8の駆動時においてエンジン8が振動すると、パワープラント2に、パワープラント2の重心Cを通過し、且つ上下方向へ延在する中心軸Yの軸回り方向への回転運動が発生する(図5参照)。なお、図5中では、説明のために、中心軸Yの軸回り方向への回転運動の方向を、双方向矢印によって示している。
また、左マウント26が備える弾性部材44は、車体側固定部材40及びパワープラント側固定部材42に対して、側面視で八の字状に配置された第一突起部52及び第二突起部54から構成されている(図3参照)。
このため、パワープラント2の上下方向及び車幅方向への変位に対しては、パワープラント2が筒状体連結部材34によってダッシュパネル14に弾性支持されるため、パワープラント2の上下方向及び車幅方向への振動を減少させることが可能となる。
これに対し、エンジン8の振動が大きい場合、すなわち、パワープラント2の車両前後方向への変位量が多い場合は、空隙部38内において、内筒32が外筒30と接触するため、エンジン8の車両前後方向への変位を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態のマウントシステム1では、トルクロッド22が、パワープラント2の重心Cに対して、車幅方向左側にオフセットして配置されており、右マウント24及び左マウント26のうち左マウント26が、トルクロッド22との車幅方向の距離が短くなっているが、マウントシステム1の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、図6に示すように、トルクロッド22が、パワープラント2の重心Cに対して、車幅方向右側にオフセットして配置されており、右マウント24及び左マウント26のうち右マウント24が、トルクロッド22との車幅方向の距離が短くなっている構成としてもよい。なお、図6は、パワープラント2と、トルクロッド22、右マウント24及び左マウント26との位置関係を示す図であり、パワープラント2と、トルクロッド22、右マウント24及び左マウント26を、車両上方から見た図である。また、図6中では、図4及び図5と同様、説明のために、パワープラント2、トルクロッド22、右マウント24及び左マウント26を、簡略化して示している。
この場合、右マウント24は、左マウント26よりも車両前後方向への剛性が低くなっている。
要は、右マウント24及び左マウント26のうち、トルクロッド22との車幅方向の距離が短いマウントが、他方のマウントよりも車両前後方向への剛性が低くなっていればよい。
また、本実施形態のマウントシステム1では、弾性部材44の構成を、第一突起部52と、第二突起部54とを備え、第一突起部52及び第二突起部54が、車体側固定部材40及びパワープラント側固定部材42に対して、側面視で八の字状に配置されている構成としたが、弾性部材44の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、弾性部材44を、一体物の弾性材料によって形成してもよい。
また、本実施形態のマウントシステム1では、四つのシリンダの全てが、それぞれ、車幅方向に並んでいる構成としたが、これに限定されるものではなく、複数のシリンダのうち、少なくとも二つが車幅方向に並んでいればよい。
また、本実施形態のマウントシステム1では、マウントシステム1を、エンジンルーム18が、車室20の車両前後方向前方側に配置されている車両に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、マウントシステム1を、エンジンルーム18が、車室20の車両前後方向後方側に配置されている車両に適用してもよい。
(1)本実施形態のマウントシステムでは、右マウント及び左マウントのうちトルクロッドとの車幅方向の距離が左マウントは、右マウントよりも車両前後方向への剛性が低くなっている。
このため、エンジンの振動によって左マウント及びトルクロッドで生じる車両前後方向への入力との和と、エンジンの振動によって右マウントで生じる車両前後方向への入力との差を、減少させることが可能となる。
また、左マウントの車両前後方向への剛性を、右マウントの車両前後方向への剛性よりも低くすることにより、パワープラントの位置を車幅方向に移動させることなく、車室内に発生する振動及び騒音を低減させることが可能となるため、車両レイアウトの自由度を向上させることが可能となる。
このため、左マウント及びトルクロッドを介して車体へ入力される車両前後方向への振動と、右マウントを介して車体へ入力される車両前後方向への振動とは、互いに逆位相となって効率的に打ち消し合うこととなる。
その結果、車室内に発生する振動及び騒音を、効率的に低減させることが可能となる。
このため、左マウントを介して車体へ入力される上下方向への振動と、右マウントを介して車体へ入力される上下方向への振動とは、互いに逆位相となって効率的に打ち消し合うこととなる。
その結果、車室内に発生する振動及び騒音を、効率的に低減させることが可能となる。
このため、左マウントの上下方向への剛性は、弾性部材の圧縮方向への変形に対する剛性となり、左マウントの車両前後方向への剛性は、弾性部材のせん断方向への変形に対する剛性となるため、左マウントの上下方向への剛性を、左マウントの車両前後方向への剛性よりも高くすることが容易となっている。
その結果、左マウントの構成を簡易化することが可能となるため、左マウントの製造コストを低減することが可能となるとともに、左マウントの製造効率を向上させることが可能となる。
このため、パワープラントの車両前後方向への変位量が少ない場合は、空隙部内において、内筒が外筒と非接触状態で移動することとなるため、エンジンの振動が車室に伝達されることを防止することが可能となり、パワープラントの車両前後方向への変位量が多い場合は、空隙部内において、内筒が外筒と接触するため、エンジンの車両前後方向への変位を抑制することが可能となる。
その結果、車室内に発生する振動及び騒音を低減させることが可能となる。
図7に、本発明例のマウントシステム及び比較例のマウントシステムを用い、エンジンの駆動時、特にアイドリング時において、車室内の前席付近において発生する振動を測定した結果を示す。なお、図7の縦軸は、車室内の前席付近における振動加速度レベル(図中では、「Acceleration[dB]」と記載している)を示しており、一目盛りが10dBを表している。また、図7の横軸は、エンジンの毎分回転数(図中では、「Revolutions[rpm]」と記載している)を示している。
比較例のマウントシステムとしては、左マウントの車両前後方向への剛性、及び右マウント及び左マウントの上下方向への剛性が、上述した各条件式を成立するように設定されておらず、且つ各条件式に近似していない構造のマウントシステムを用いた。
図7中に示されているように、本発明例のマウントシステムでは、比較例のマウントシステムと比較して、振動加速度レベルの最大値が10.68dB低減されている。
以上の測定結果から、本発明例のマウントシステムは、比較例のマウントシステムと比較して、車室内の前席付近において発生する振動の低減効果が高いことが確認された。
2 パワープラント
4 車体側部材
6 弾性支持部材
8 エンジン
10 トランスミッション
14 ダッシュパネル
16 サイドメンバ
18 エンジンルーム
20 車室
22 トルクロッド
24 右マウント
26 左マウント
28 本体部
30 外筒
32 内筒
34 筒状体連結部材
36 取付け孔
38 空隙部
40 車体側固定部材
42 パワープラント側固定部材
44 弾性部材
46 車体側固定孔
48 弾性部材取付け孔
50 パワープラント側固定孔
52 第一突起部
54 第二突起部
C パワープラント2の重心
X 回転運動の中心軸
Y 回転運動の中心軸
Claims (3)
- パワープラントを車体側部材に支持する弾性支持部材を備え、
前記弾性支持部材は、車両前後方向に延在するトルクロッドと、前記パワープラントの重心に対して車幅方向右側に配置された右マウントと、前記パワープラントの重心に対して車幅方向左側に配置された左マウントと、を備え、
前記トルクロッドが、前記パワープラントの重心に対して車幅方向の一方にオフセットして配置されたマウントシステムであって、
前記右マウント及び前記左マウントのうち、少なくとも前記トルクロッドとの車幅方向の距離が短いマウントは他方のマウントよりも車両前後方向への剛性が低く、前記車体側部材に固定される車体側固定部材と、前記パワープラントに固定されるパワープラント側固定部材と、前記車体側固定部材と前記パワープラント側固定部材との間に介装される弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記車体側固定部材から前記パワープラント側固定部材へ向かうにつれて車両前後方向後方へ傾斜する第一突起部と、当該第一突起部よりも車両前後方向後方に配置され、且つ前記車体側固定部材から前記パワープラント側固定部材へ向かうにつれて車両前後方向前方へ傾斜する第二突起部と、を備えることを特徴とするマウントシステム。 - 前記パワープラントの振動によって前記トルクロッドとの車幅方向の距離が短いマウントで生じる車両前後方向への入力をF1とし、前記パワープラントの振動によって他方のマウントで生じる車両前後方向への入力をF2とし、前記パワープラントの振動によって前記トルクロッドで生じる車両前後方向への入力をF3としたときに、F2=F1+F3またはF2≒F1+F3の条件式が成立するように、前記トルクロッドとの車幅方向の距離が短いマウントの車両前後方向への剛性を設定したことを特徴とする請求項1に記載したマウントシステム。
- 前記パワープラントの振動によって前記左マウントで生じる上下方向への入力をFLとし、前記パワープラントの振動によって前記右マウントで生じる上下方向への入力をFRとしたときに、FL=FRまたはFL≒FRの条件式が成立するように、前記左マウント及び前記右マウントの上下方向への剛性を設定したことを特徴とする請求項1または2に記載したマウントシステム。
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