JP4922810B2 - 圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法 - Google Patents
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Description
しかし、センサー検出面が溶液と接触状態にある場合には、前記周波数は、検出面に接触する物質の質量だけではなく、溶液の粘性の変化によっても変化してしまう。質量の変化による周波数変化を質量効果とよび、液の粘性の変化による周波数変化を粘性効果とよぶとすると、共振周波数で測定する前記測定方法では、両方の効果の分離は困難であった。
しかし、金電極を備えた27MHzの水晶振動子を溶液に接触させて、3倍波や5倍波の周波数により測定を行う場合、例えば、3倍波のアドミタンス円線図は、図1に示すように、高周波数側の半値周波数(f2)付近にスプリアスが発生してしまい、コンダクタンス(G)とサセプタンス(B)の測定点より得られる円線図が理想的な円とはならず、正確な高周波側の第2の周波数(f2)を求めることができない。
尚、コンダクタンス(G)とサセプタンス(B)の測定点から円線図の円近似を行い、共振周波数や中心周波数や半値周波数を求めることをしなくても、コンダクタンス(G)が最大値を示す領域付近で再スキャンし、コンダクタンス(G)が最大値を示す周波数を求めることやこのコンダクタンス(G)の最大値を基準として、G/2となる周波数(f2)を求めることは可能である。
しかし、この方法では周波数分解能が低い為に正確な周波数が測定できない為に、共振周波数付近で周波数を細かくスキャンする必要があり、また、周波数を細かくスキャンすると長い測定時間を要するという問題がある。また、半値周波数(f1,f2)を求めるには、更このコンダクタンスの最大値を基にこの値の1/2となるコンダクタンスをとる周波数を求める為に、最大値のコンダクタンスの変動を受け易くなってしまう問題もある。
即ち、本発明の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法は、請求項1に記載の通り、圧電素子又は表面弾性波素子に対する質量負荷の変化を所定の周波数の変化に基づいて測定する方法であって、前記圧電素子の共振周波数近傍又は前記表面弾性波素子の中心周波数近傍のコンダクタンス(G)及びサセプタンス(B)を測定し、その結果得られたアドミタンス円線図(以下「円線図」とする。)から前記所定の周波数を求める際に、測定された共振周波数(fs')より高周波側のスプリアスを除く測定点から、円近似により前記円線図を求め、前記円線図において、コンダクタンス(G)の最大値(Gmax)、サセプタンス(B)の最大値(Bmax)及び測定されたコンダクタンス(G)とサセプタンス(B)を使い、コンダクタンスの最大値(Gmax)を与える計算上の周波数(共振周波数:fs')とサセプタンス(B)の最大値(Bmax)を与える周波数(第1の半値周波数:f1)を決定し、その後サセプタンス(B)の最小値(Bmin)を与える周波数(第2の半値周波数:f2)を求めるようにし、少なくとも第2の半値周波数(f2)の変化を測定することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法において、前記円線図は、測定されたコンダクタンス(G)の最大値(G'max)から、測定されたサセプタンス(B)の最大値(B'max)方向の測定点から円近似することにより求め、前記円線図において、コンダクタンス(G)の最大値を与えるサセプタンス(Bs)と、サセプタンス(B)の最大値を与えるコンダクタンス(G1)とを決定し、前記測定されたサセプタンス(B)を線形補間してサセプタンス(Bs)を与える計算上の共振周波数(fs)を決定し、前記測定されたコンダクタンス(G)を線形補間してコンダクタンス(G1)を与える第1の半値周波数(f1)を決定することを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法において、前記円線図の円近似は、B'maxよりも低周波数側の測定点とG'maxよりも高周波数側の測定点を含むようにして抽出されたB'maxからG'max方向の測定点から行い、計算上の共振周波数(fs)と第1の半値周波数(f1)とを、内挿により求めることを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法において、B'maxよりも低周波数側の測定点とG'maxよりも高周波数側の測定点数は、それぞれ1以上であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法において、前記圧電素子は、N倍波(N=3,5,7・・・)で測定することを特徴とする。
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法において、前記円近似は、最小二乗法により行うことを特徴とする。
尚、本明細書において、スプリアスとは、測定された共振周波数(fs')より高周波側の極値近傍の測定点をいうものとする。
上記水晶振動子を、実際にネットワークアナライザーやインピーダンスアナライザーに接続して、各周波数におけるコンダクタンス(G)とサセプタンス(B)を取得した場合に、アドミタンス円線図は図1に示すようにスプリアスが発生するために、第2の半値周波数(f2)を測定することができない。
このため、図2(a)及び(b)から、それぞれ、測定上のコンダクタンス(G)の最大値(G'max)とサセプタンス(B)の最大値(B'max)を決定する。
具体例を示すと、図1及び図2において、コンダクタンス(G)とサセプタンス(B)と周波数の要素を持つ測定点の中から、B'maxからG'max方向の測定点を抽出してアドミタンス円線図を円近似により求める。この場合に、抽出される測定点は少なくとも3点あれば、円近似は可能である。
そして、図5に示すように、測定されたサセプタンス(B)と周波数の関係から、測定点を直線近似等の線形補間を行い、サセプタンス(Bs)を与える計算上の共振周波数(fs、図では、81.24156182MHz)を求める。同様にして、図示しないが、測定されたコンダクタンス(G)と周波数の関係から、測定点を線形補間して、コンダクタンス(G)を与える第1の半値周波数(f1)を求める。尚、これらの周波数を求める場合には、少なくとも、B'max近傍及びG'max近傍の測定点があればよい。
上記の2つの周波数を用いて、図1において、測定上はスプリアスにより得ることができない、第2の半値周波数(f2=2fs-f1)を求めることが可能となる。
そして、上記のようにして選ばれた測定点は、アドミタンス円線図上のBmaxとGmaxも挟む測定点であるため、図5に示したように、コンダクタンス(G)の最大値を与えるサセプタンス(Bs)を挟む測定点を直線近似等の線形補間を行うこと、即ち内挿することにより、サセプタンス(Bs)を与える共振周波数(fs)を正確に求めることができる。同様にして、サセプタンス(B)の最大値を与えるコンダクタンス(G1)挟む測定点を直線近似等の線形補間を行うこと、即ち内挿することにより、コンダクタンス(G1)を与える第1の半値周波数を正確に求めることができる。
尚、スキャンする周波数については、特に制限するものではなく、通常、共振周波数や中心周波数を中心に両側に数百kHzの幅内において等間隔で測定点を取得するようにする。また、円近似を行う時の測定点の数としては、好ましくは、20個〜120個とする。円近似する際に高速に演算することができるからである。
また、円近似の方法について、特に制限するものではないが、最小二乗法により円近似を行うことが好ましい。
まず、水晶板の両面に金電極を備えた27MHzの水晶振動子を底部に備えた円筒形状のセル内にバッファー液を注入した状態で、ネットワークアナライザーにより信号の印加と得られた測定信号の解析を行うようにした。尚、本実施例では、3倍波を使用し、27MHzを中心として両側250kHzの範囲内の測定点を等間隔で200個測定した。
この状態で得られた測定点について、周波数とコンダクタンス(G)との関係をプロットしたものを図2(a)に、周波数とサセプタンス(B)との関係をプロットしたものを図2(b)に示す。また、同測定点を、アドミタンス平面上にプロットした結果、図1に示すように、サセプタンス(B)の最小値(B'min)は測定できていなかった。
そして、測定点の中から、図3に示すように、コンダクタンス(G)の最大値(G'max)を持つ測定点から高周波数側に5個までを演算用に取り込み、それより高周波側の測定点を消去し、サセプタンス(B)の最大値(B'max)を持つ測定点から低周波数側に5個までを演算用に取り込み、それより低周波側の測定点は消去した。
残された測定点を最小二乗法により、円近似して、図1(点線で示す。)及び図4に示すアドミタンス円線図を得た。
この円線図において、各軸(G軸,B軸)との交点をそれぞれ、図4に示すように、コンダクタンス(G)の最大値の座標(Gmax,Bs),サセプタンス(B)の最大値の座標(G1,Bmax)を決定した。
同様にサセプタンスの最大値(Bmax)を挟む任意の測定点から、コンダクタンス値と周波数で線形近似を行い、サセプタンスの最大値(Bmax)が持つコンダクタンス値(G1)を内挿して求め、この周波数を第1の半値周波数(f1)とした。
上記の方法によって得られた共振周波数(fs)と第1の半値周波数(f1)を、式(f2=2fs−f1)に代入して第2の半値周波数(f2)を求めた。
尚、この第2の半値周波数(f2)は、特開2004−251873号公報や特開2004−325257号公報で述べられている高周波側の半値周波数(f2)と概念的に共通するものである。
f's 測定上の共振周波数
G'max 測定上のコンダクタンス(G)の最大値
B'max 測定上のサセプタンス(B)の最大値
Gmax アドミタンス円線図上のコンダクタンス(G)の最大値
Bmax アドミタンス円線図上のサセプタンス(B)の最大値
G1 Bmaxの時のサセプタンス
G2 Bminの時のサセプタンス
Bs Gmax時のサセプタンス
Claims (6)
- 圧電素子又は表面弾性波素子に対する質量負荷の変化を所定の周波数の変化に基づいて測定する方法であって、
前記圧電素子の共振周波数近傍又は前記表面弾性波素子の中心周波数近傍のコンダクタンス(G)及びサセプタンス(B)を測定し、その結果得られたアドミタンス円線図(以下「円線図」とする。)から前記所定の周波数を求める際に、
測定された共振周波数(fs')より高周波側のスプリアスを除く測定点から、円近似により前記円線図を求め、前記円線図におけるコンダクタンス(G)の最大値(Gmax)、サセプタンス(B)の最大値(Bmax)及び測定されたコンダクタンス(G)とサセプタンス(B)を使い、コンダクタンスの最大値(Gmax)を与える計算上の周波数(共振周波数:fs)とサセプタンス(B)の最大値(Bmax)を与える周波数(第1の半値周波数:f1)を決定し、その後サセプタンス(B)の最小値(Bmin)を与える周波数(第2の半値周波数:f2)を求め、
少なくとも第2の半値周波数(f2)の変化を測定することを特徴とする圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。 - 前記円線図は、測定されたコンダクタンス(G)の最大値(G'max)から、測定されたサセプタンス(B)の最大値(B'max)方向の測定点から円近似することにより求め、
前記円線図において、コンダクタンス(G)の最大値を与えるサセプタンス(Bs)と、サセプタンス(B)の最大値を与えるコンダクタンス(G1)とを決定し、
前記測定されたサセプタンス(B)を線形補間してサセプタンス(Bs)を与える計算上の共振周波数(fs)を決定し、
前記測定されたコンダクタンス(G)を線形補間してコンダクタンス(G1)を与える第1の半値周波数(f1)を決定することを特徴とする請求項1に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。 - 前記円線図の円近似は、B'maxよりも低周波数側の測定点とG'maxよりも高周波数側の測定点を含むようにして抽出されたB'maxからG'max方向の測定点から行い、
計算上の共振周波数(fs)と第1の半値周波数(f1)とを、内挿により求めることを特徴とする請求項2に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。 - B'maxよりも低周波数側の測定点とG'maxよりも高周波数側の測定点数は、それぞれ1以上であることを特徴とする請求項3に記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。
- 前記圧電素子は、N倍波(N=3,5,7・・・)で測定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。
- 前記円近似は、最小二乗法により行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の圧電素子又は表面弾性波素子の質量負荷の変化を測定する方法。
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