JP5066404B2 - バイオセンサを使用した物性の測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、DNAやタンパク質など生体物質の相互作用の測定や抗原抗体反応を利用した分子認識に利用される水晶振動子を利用した測定方法に関する。
水晶振動子を利用したバイオセンサでは、測定対象となる液状物を水晶振動子の片面に接触させるとともに発振回路により発振させて、その周波数変化をカウンタにより測定、或いは、ネットワークアナライザーやインピーダンスアナライザを用いて共振周波数付近の反射電力や周波数特性を測定して、前記液状物の物性を測定するようにしている。
しかしながら、測定の際に液状物の粘性変化や液温変化の影響を受けやすいという問題がある。
この問題に対して、本出願人は、特許文献1に開示されるように、水晶振動子のN倍波のうちの少なくとも2つの周波数を使用して、各周波数による共振点付近のコンダクタンスの最大値の1/2を与える周波数を用いて、前記物質の物性を測定することを提案した。
しかしながら、先に提案した方法では、水晶振動子を発振させてその周波数変化を測定するものではないため、ネットワークアナライザやインピーダンスアナライザが測定に必要となり、測定のためのコストがかかり、装置が大型化するという問題があった。
特開2007−010519号公報
そこで、本発明は、水晶振動子を用いて測定対象となる液状物の物性を、液状物の粘性や液温変化の影響を受けず、しかも、比較的簡素なシステムで、小型化及び低コスト化を測ることが可能なバイオセンサを使用した物性の測定方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、前記水晶振動子を発振させ、その位相等を異ならせて、少なくとも2つの周波数を測定すれば、測定対象となる液状物の粘性や温度の変化を受けることなく、前記液状物による質量変化を正確に測定することができるという知見に基づき、下記の通り、解決手段を見出した。
即ち、本発明のバイオセンサを使用した物性の測定方法は、請求項1に記載の通り、水晶振動子の片面に測定対象となる液状物を接触させ、前記水晶振動子を発振させるとともに前記水晶振動子の周波数の変動を測定することにより、前記液状物の物性を測定するためのバイオセンサを使用した測定方法であって、前記水晶振動子を粘性負荷の異なる2以上の発振点において発振させ、前記各発振点の周波数変化に基づいて質量負荷と粘性負荷とを分離して測定することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の測定方法において、前記水晶振動子に直列にコンデンサを接続し、前記コンデンサの静電容量を変化させることにより、前記水晶振動子に印加される電圧の位相を変化させることを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の測定方法において、前記水晶振動子に異なる位相の電圧を印加するために少なくとも2個以上の発振器により前記水晶振動子の発振点を異なるようにすることを特徴とする。
本発明によれば、比較的簡単な方法により、粘性変化と質量負荷とを分離して測定することができるので、液温変化による粘性変化の影響を受けることがない。このため、ペルチェ素子などをコントロールするためにセンサを設ける必要がない。
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、一般的な水晶振動子の等価回路を示す。この等価回路は、通常、図2に示すアドミッタンス線図上の位相ゼロの周波数frで発振する。しかし、実際には、発振器を含む回路において位相のずれ等が生じるために、周波数fr(位相ズレが0の周波数)の近辺で発振する。
ところで、アドミッタンス線図上の周波数において、質量負荷は全て同じ変化を示し、粘性負荷は異なる変化を示すという性質を有する。周波数f1の変化分(Δf1)の粘性負荷の成分は、周波数fsの変化分(Δfs)の粘性負荷の成分の2倍となり、周波数f2の変化分(Δf2)は、ほとんど粘性負荷の影響を受けない周波数である。つまり、周波数f1より高い周波数f2までの間の周波数において、周波数の変化分における粘性負荷の成分は、図3において、水晶振動子を大気から純水に接触させた際の周波数変動を示すように、2倍から、周波数fsで1倍、周波数f2でほぼゼロと変化する(図3)。
よって、f2とf1の2点で交互に発振させることで、質量負荷を、周波数f2の変化分(Δf2)、粘性負荷を、周波数f1及び周波数f2の差の変化分(Δ(f1−f2)/2)として得ることができる。尚、2点の周波数に関しては、周波数f2と周波数f1とに限定するものではなく、周波数f1と周波数fs、周波数fsと周波数f2であってもよい。更に、上記以外の周波数でも、周波数f1から周波数f2の間においてあらかじめfsの粘性負荷に対しての比率が解っている周波数であれば、どの周波数でも交互に発振させることにより、質量負荷による周波数変化Δf2、粘性負荷による周波数変化Δ(f1−f2)/2を求めることことができる。
次に、本発明の測定方法を図4を用いて説明する。バイオセンサーを有するシステム1は、センサー部2と、コンピュータ4とを有している。センサー部2とコンピュータ4とは、ケーブル6を介して接続されている。また、センサー部2は、水晶振動子を備えている。
センサー部2の水晶振動子は、図5(a)、(b)にその平面図と断面図とをそれぞれ示すように、円形状に形成された石英製の結晶板8の表面側と裏面側とにそれぞれ第一の金電極9aと第二の金電極10aと備えている。尚、図示される金電極9a、10aは、円形状に構成され、それぞれにリード線9b、10bが連接されている。裏面側の第二の金電極10aは、図5(b)に示すように樹脂カバー11により被覆されており、水晶振動子7を溶液中に入れた状態でも、裏面側の第二の金電極10aが溶液に曝されず、発振できるように構成されている。他方、表面側の第一の金電極9a表面には、特定の成分と反応し、その成分を吸着するように構成された反応材12が配置されており、測定時に試料溶液と接触することになる。
コンピュータ4は、測定された水晶振動子7の周波数特性等の電気的特性に基づいて、試料溶液中の成分の反応速度などを求め、成分の分析をすることができるように構成されている。
そして、上記構成において、水晶振動子7には、図示しないが、発振回路(発振器)が接続されており、この中には、水晶振動子と直列になるように可変容量のコンデンサが接続され、これにより、位相を切り換えることが可能となっている。これにより、水晶振動子の発振周波数を変化させる。
上述した構成により、例えば、血液等試料溶液中の特定成分と、水晶振動子の表面に配置された反応材との反応状態を分析する手順について以下に説明する。
まず、図7に示すように、水晶振動子7を底部に備えた円筒形状のセル15内に試料溶液8を注入し、水晶振動子7が試料溶液8中に浸漬された状態で、発振回路16を起動するとともに、前記コンデンサにより位相を変化させ、少なくとも2つの周波数において、水晶振動子7を交互に発振させる。
そして、この水晶振動子7の2つの周波数の変化をコンピュータ4により記録するとともに演算等を行う。
これにより、水晶振動子を発振させて状態で、他の物質等を添加して粘性負荷が生じた場合であっても、質量負荷と粘性負荷とを独立して測定することができる。従って、この粘性負荷を評価することで、粘性の高い血液の検査や食品に含まれる菌の検査において極めて正確に質量負荷を測定することが可能となる。また、各液の液温が異なっているために粘性が変化したとしても同様である。
尚、上記構成において、水晶振動子7の発振周波数を変化させるためにコンデンサを接続したが、2つの発振器を使用してもよい。
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図8に示すように、水晶振動子に2つの発振回路16(OSC1,OSC2)をリレー17により切り替えられるように接続した回路構成とし、水晶振動子を共振周波数fr付近の異なる2つの周波数(fr’=−8000Hz,fr’’=−11030Hz)において発振させるようにした。
この状態において、水晶振動子の片面に純水を接触させ、fr’及びfr’’の周波数変動を周波数カウンタ18により測定した。
また、比較のために、同様に水晶振動子の片面に純水を接触させた際に、図2におけるアドミッタンス線図上のf1,fs,fr,f2の変動をネットワークアナライザを使用して測定した。
上記結果を、下記表1に示す。
上記結果を検証すると、
Δ(f1−f2)/2=(fr’−fr’’)×C1・・・(式1)
Δfs=C2×fr’+C3×fr’’・・・(式2)
Δf2=Δfs−Δ(f1−f2)/2・・・(式3)
=C2×fr’+C3×fr’’−(fr’’−fr’)×C1
の関係式は、C1≒3、C2=C3≒1/2とすれば成立することになり、ネットワークアナライザを用いなければ測定できなかった、質量負荷を示す周波数変化Δf2、粘性負荷を示す周波数変化Δ(f1−f2)/2を得ることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
図7に示す回路構成で、大気中、純水、5%・10%・20%グリセロール溶液を接触させ、リレー17を切り換えて各発振回路16(OSC1,OSC2)により発振させて、その際の周波数変化(fr’,fr’’)を測定した結果を図8に示す。また、上記測定結果と、上記式(1)及び式(2)をプロットした結果を図9に示す。
比較のために、図9において、ネットワークアナライザにより、Δ(f1−f2)/2及びΔf2を求めた結果を同様にプロットしているが、ネットワークアナライザを使用しなくとも同様の結果が得られることがわかった。
本発明は、DNAやタンパク質等の生体物質の相互作用や抗原抗体反応を利用した測定等に利用することができる。
水晶振動子の等価回路の説明図 同回路のアドミッタンス線図 同回路における各周波数の変動を示すグラフ 本発明の測定方法を実施するための装置構成の説明図 同装置の水晶振動子の平面図(a)、同断面図(b) バイオセンサー装置のセルの説明図 本発明の他の実施の形態における装置構成の説明図 本発明の実施例における周波数変動を示すグラフ 同実施例とネットワークアナライザを使用した測定結果を比較するためのグラフ
符号の説明
1 バイオセンサー装置
2 センサー部
4 コンピュータ
5 ケーブル
6 ケーブル
7 水晶振動子
8 円形状の結晶板
9a 第一の金電極
10a 第二の金電極
11 樹脂カバー
12 反応材
15 セル
16 発振回路
17 リレー

Claims (3)

  1. 水晶振動子の片面に測定対象となる液状物を接触させ、前記水晶振動子を発振させるとともに前記水晶振動子の周波数の変動を測定することにより、前記液状物の物性を測定するためのバイオセンサを使用した測定方法であって、前記水晶振動子を粘性負荷の異なる2以上の発振点において発振させ、前記各発振点の周波数変化に基づいて質量負荷と粘性負荷とを分離して測定することを特徴するバイオセンサを使用した物性の測定方法。
  2. 前記水晶振動子に直列にコンデンサを接続し、前記コンデンサの静電容量を変化させることにより、前記水晶振動子に印加される電圧の位相を変化させることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサを使用した物性の測定方法。
  3. 前記水晶振動子に異なる位相の電圧を印加するために少なくとも2個以上の発振器により前記水晶振動子の発振点を異なるようにすることを特徴とする請求項1に記載のバイオセンサを使用した物性の測定方法。
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