<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成の概略が正面図(後述するウエビングベルト24のみ断面)により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は平板状の背板14を備えており、この背板14が車両の座席の近傍で、図示しないボルト等の締結手段により車体の所定部位に締結固定されることでウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる。
背板14の幅方向一方の側(図1の左側)の端部からは、平板状の脚板16が背板14の厚さ方向一方へ向けて延出されている。これに対して、背板14の幅方向他方の側(図1の右側)の端部からは、平板状の脚板18が背板14の幅方向に沿って脚板16と対向するように背板14の厚さ方向一方へ向けて延出されている。また、背板14の厚さ方向一方の側にはスプール20が配置されている。スプール20はスプール本体22を備えている。
スプール本体22は脚板16と脚板18との対向方向に沿って軸方向とされた略円柱形状とされている。このスプール本体22には長尺帯状のウエビングベルト24の長手方向基端側が係止されており、ウエビングベルト24の長手方向基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られた状態で格納されている。スプール本体22の軸方向一端側(脚板16の側)にはフランジ部26が形成されている。フランジ部26は外径寸法がスプール本体22の外径寸法よりも大きな円板状とされている。
フランジ部26の外径寸法はスプール本体22の外径寸法よりも大径の円板状とされてスプール本体22に対して同軸的且つ一体的に形成されている。また、脚板16にはスプール本体22の軸方向一端部に対応して略円形の孔部(図示省略)が形成されている。この孔部の内径寸法は、スプール本体22の外径寸法よりは大きいが、フランジ部26の外径寸法よりは小さい。したがって、フランジ部26よりも一端側でスプール本体22はこの孔部を通過することができるものの、フランジ部26は孔部を通過できない。すなわち、孔部の近傍で脚板16にフランジ部26が当接することで、脚板16の側へのそれ以上のスプール本体22の変位が規制されている。
一方、スプール本体22の軸方向他端側(脚板18の側)にはフランジ部30が形成されている。フランジ部30は外径寸法がスプール本体22の外径寸法よりも大きな円板状とされており、スプール本体22に対して同軸的且つ一体的にスプール本体22に形成されている。フランジ部30に対応して脚板16には孔部32が形成されている。孔部32はフランジ部30よりも内径寸法が大きく、フランジ部30の軸方向中間部よりも一方の側(すなわち、スプール本体22とは反対側)が孔部32を貫通している。
また、図2に示されるように、スプール本体22には貫通孔34が形成されている。図9に示されるように、貫通孔34はスプール本体22の中心軸線上に形成されており、スプール本体22の軸方向両端にて開口している。貫通孔34は装着部36を備えている。装着部36はスプール本体22の中心軸線に沿った向きの貫通孔34の中間部に形成されている。また、貫通孔34はテーパ部38を備えている。テーパ部38は装着部36に対してスプール本体22の軸方向に沿った他方の側で装着部36に隣り合うように形成されている。
テーパ部38の内周形状は装着部36と同じ形状とされているが、スプール本体22の軸方向他端側へ向けて漸次内径寸法が大きくなっている。テーパ部38の装着部36とは反対側にはロックベース装着部40が形成されている。ロックベース装着部40は内周形状がテーパ部38よりも充分に大きくスプール本体22の中心軸線に対して略同軸の円形に形成されており、更に、スプール本体22の軸方向他端部(スプール本体22の脚板18の側の端部)で開口している。
これに対して、装着部36のテーパ部38とは反対側にはスリーブ装着部42が形成されている。スリーブ装着部42は内周形状がスプール本体22の中心軸線に対して略同軸の円形に形成されており、スプール本体22の軸方向一端部(スプール本体22の脚板16の側の端部)で開口している。また、スリーブ装着部42の内周形状は、装着部36の内周形状よりも充分に大きく、このため、スリーブ装着部42の装着部36の側には底壁部44が形成されている。
以上の構成の貫通孔34の内側にはエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト50が配置される。トーションシャフト50は、エネルギー吸収部材としてのメインシャフト52を備えている。メインシャフト52は略円柱形状の本体54を備えている。図9に示されるように、本体54の軸方向一端部には被保持部56が形成されている。図2に示されるように、本体54の軸方向(長手方向)に対して直交する方向に沿って切った被保持部56の断面形状は、装着部36の内周形状と相似形状で且つ装着部36の内周形状よりも小さな正六角形状とされている。また、図9に示されるように、被保持部56の断面形状を正六角形状とみなした際の互いに対向する辺の間隔は本体54の外径寸法よりも大きく、装着部36に対して同軸的に形成されている。
一方、本体54の被保持部56とは反対側の端部には、外径寸法が本体54の外径寸法よりも大きくロックベース装着部40の内径寸法よりも小さなストッパ58が形成されている。ストッパ58の被保持部56とは反対側の端部からはシャフト60が本体54に対して同軸的に形成されている。図1に示されるように、脚板18の外側(脚板18の脚板16とは反対側)にはロック手段を構成する第1ロック機構62のハウジング64が脚板18に取り付けられており、上記のシャフト60の先端側はハウジング64の内側に入り込んでいる。
ハウジング64の内側には第1ロック機構62の先端に形成されたスプライン部66に嵌合するギヤに噛み合うギヤ等の回転伝達機構や、車両の急減速状態を検出する加速度センサ、スプール本体22に巻き取られているウエビングベルト24が急激に引き出された際に作動する引出検知機構等が収容されている。また、図9に示されるように、本体54のストッパ58の側には第1ロック機構62を構成するロックベース68が取り付けられている。ロックベース68はスプール本体22の軸方向に沿ってスプール本体22と対向する側の一部がロックベース装着部40の内側に入り込んでおり、スプール本体22に対して同軸的に相対回転可能である。
また、本体54に取り付けられたロックベース68にはストッパ58が係合しており、本体54に対するロックベース68の相対回転は不能とされている。ロックベース68の外周部には外歯のラチェット歯70が形成されている。ラチェット歯70に対応してフレーム12には第1ロック機構62を構成する図示しないロックプレートが設けられている。このロックプレートはラチェット歯70に対して接離移動可能とされており、車両の急減速状態や引出方向へスプール本体22が急激に回転することで第1ロック機構62が作動した際には、ロックプレートがラチェット歯70に噛み合い、引出方向へのラチェット歯70の回転を規制する構成になっている。
また、図9に示されるように、トーションシャフト50はエネルギー吸収部材としてのサブシャフト82を備えている。サブシャフト82は略円柱形状の本体84を備えている。図9に示されるように、本実施の形態では、本体84の外径寸法はメインシャフト52を構成する本体54の外径寸法よりも小径とされており、また、本体84の軸方向長さは本体54の軸方向長さよりも短い。但し、本体84の外径寸法が本体54の外径寸法以上であってもよいし、本体84の軸方向長さが本体54の軸方向長さ以上であってもよい。
サブシャフト82はメインシャフト52の軸方向他端側(すなわち、被保持部56の本体54とは反対側)で本体84と本体54とが同軸的に並ぶように配置される。本体84のメインシャフト52の側の端部に被保持部86が形成されている。本体84の軸方向に対して直交する向きに切った被保持部86の断面形状は、メインシャフト52を構成する被保持部56の断面形状と同一とされている。
一方、本体84の被保持部86とは反対側の端部には装着部88が形成されている。本体84の軸方向に対して直交する向きに切った装着部88の断面形状は本体84よりも大きな非円形で、特に、本実施の形態では対向する辺の間隔が本体84の外径寸法よりも大きな多角形(更に言えば、本実施の形態で正六角形)とされ、装着部88は本体84に対して同軸的に形成されている。また、サブシャフト82にはスリーブ90が装着される。スリーブ90は外径寸法がスリーブ装着部42の内径寸法に略等しい(厳密には極僅かに小さい)円形部92を備えている。
この円形部92の軸方向一方の端面には外周形状が非円形で、特に、本実施の形態では対向する辺の間隔が円形部92の外径寸法よりも小さな多角形(更に言えば、本実施の形態で正六角形)の支持部94が円形部92に対して同軸的に形成されている。スリーブ90にはスリーブ90の両端で開口した嵌挿孔96が形成されている。嵌挿孔96の内周形状は装着部88の外周形状に等しい形状(厳密には極僅かに大きな相似形状)とされており、装着部88が嵌挿孔96に挿し込まれた状態ではサブシャフト82に対するスリーブ90の相対回転が不能とされている。さらに、装着部88と本体84の一部が円形部92の側から嵌挿孔96に挿し込まれた状態で、円形部92は支持部94とは反対側の端面が底壁部44に突き当たるまでスリーブ装着部42に入り込むことができる。
また、サブシャフト82にスリーブ90が装着された状態でサブシャフト82にはストッパ100が取り付けられる。ストッパ100はフランジ部102を備えている。フランジ部102は外周形状が嵌挿孔96の内周形状よりも大きな円板状とされている。フランジ部102の一方の端面には雄ねじ部104がフランジ部102に対して同軸的に形成されている。雄ねじ部104は所謂「逆ねじ」とされている。これに対して、上記の装着部88には装着部88の本体84とは反対側の端部で開口した雄ねじ部106が本体84に対して同軸的に形成されている。この雄ねじ部106は雄ねじ部104の螺合が可能な「逆ねじ」とされている。フランジ部102の雄ねじ部104とは反対側の端部にはスプライン部108がフランジ部102や雄ねじ部104に対して同軸的に形成されている。
図1に示されるように、脚板16の外側(脚板16の脚板18とは反対側)にはロック手段を構成する第2ロック機構110のハウジング112が脚板16に取り付けられており、スリーブ90やストッパ100を含めてサブシャフト82の先端側がハウジング112の内側に入り込んでいる。上記の支持部94には、支持部94と共に一体的に回転する回転体が嵌め込まれ、この回転体に直接又は間接的に係合し、この回転体の引出方向への回転を規制する構成がハウジング112の内側に収容されている。
さらに、本実施の形態では、第1ロック機構62に連動して第2ロック機構110が作動可能な構成になっていると共に、例えば、本ウエビング巻取装置10に対応した座席に着座した乗員の体重等の体格情報を検出する体格検知手段での検出結果に基づき第2ロック機構110が作動可能な状態又は作動不可能な状態を切り換えることができるような構成になっている。
一方、図9に示されるように、スプール20は回転規制手段及び連結手段としてのホルダ120を備えている。図3に示されるように、ホルダ120は複数枚(本実施の形態では2枚)の保持片122を備えている。保持片122は平板状に形成されている。保持片122の厚さ寸法は、メインシャフト52の被保持部56及びサブシャフト82の被保持部86を装着部36に対して同軸的に配置した状態で被保持部56及び被保持部86の外周部と装着部36の内周部との間に生じる隙間に略等しくなる(厳密には僅かに小さくなる)ように設定されている。保持片122は長方形状の基部124を備えている。スプール本体22の軸方向に沿った基部124の長手方向両端部からは保持部126が延出されている。保持部126は基部124から離間する方向へ向けて漸次幅寸法が小さくなるテーパ状とされている。
また、ホルダ120は複数枚(本実施の形態では3枚)の係合片132を備えている。係合片132は全体的に長手方向が保持片122の長手方向に沿った長方形の平板状に形成されている。係合片132の幅寸法は基部124の幅寸法に略等しく、また、係合片132の厚さ寸法は基本的に保持片122と同じに設定されている。係合片132の長手方向略中央部は基部134とされている。係合片132の長手方向に沿った基部134の両端部からよりも係合片132の長手方向両側は弾性部136とされている。
係合片132の長手方向に沿った弾性部136の中間部には略長方形状の矩形孔138が形成されている。係合片132の外周形状及び矩形孔138の内周形状の双方を長方形とみなした場合、矩形孔138の各辺と、この矩形孔138の各辺に対応する係合片132の各辺とが互いに平行になるように矩形孔138が形成されている。また、各矩形孔138の内周部からは係合部としての爪部140が延出されている。
爪部140は外周形状が矩形孔138の内周形状よりも小さな略長方形状とされている。各爪部140は、矩形孔138の内周部のうち基部134とは反対側に位置する部分(すなわち、係合片132の長手方向中央側を向く部分)にから延出されている。さらに、爪部140は矩形孔138の内周部との境界部分を中心にして係合片132の幅方向を軸方向とする軸周りに係合片132の厚さ方向一方側へ屈曲している。
以上の保持片122及び係合片132を有するホルダ120はブリッジ142を備えている。ブリッジ142は保持片122及び係合片132の幅方向端部に形成されており、これらのブリッジ142より保持片122と係合片132とが交互に繋がれている。また、ホルダ120はブリッジ142において保持片122及び係合片132の長手方向を軸方向とする軸周りに屈曲している。保持片122及び係合片132の長手方向に沿ってホルダ120を見た場合のホルダ120の形状は、基本的に装着部36の内周形状に倣っている。
但し、ホルダ120は、装着部36の内周方向に沿った一部(特に、本実施の形態では、正六角形の一辺)が欠落しているため環状にはなっていない。また、各爪部140の先端側を結ぶような被保持部56、86の外周形状に対する相似形状は被保持部56、86の外周形状よりも小さくなるように爪部140が形成されている。
さらに、係合片132の長手方向に沿った一方の側の爪部140の先端部と他方の側の爪部140の先端部との間隔は、本体54の軸方向に沿った被保持部56の寸法と、本体84の軸方向に沿った被保持部86の寸法との和以上となるように、係合片132の長さや爪部140の形成位置等が設定されている。以上の構成のホルダ120の内側には、係合片132の長手方向一方の側の爪部140の先端部と他方の側の爪部140の先端部と間に被保持部56と被保持部86とが位置するように被保持部56と保持片122の長手方向一方の側からサブシャフト82の被保持部86の側が入り込み、保持片122の長手方向他方の側からメインシャフト52の被保持部56の側が入り込んでいる。
さらに、ホルダ120の内側に被保持部56の側と被保持部86の側が入り込んだ状態のメインシャフト52及びサブシャフト82は、上記のストッパ58がロックベース装着部40の底部に突き当たる位置まで貫通孔34の内側に入り込んでいる。ストッパ58がロックベース装着部40の底部に突き当たった状態で、被保持部86が一方の爪部140に当接し、被保持部56が他方の爪部140に当接するまでサブシャフト82をメインシャフト52から離間させた際の、装着部36の端部からのサブシャフト82の突出寸法(すなわち、貫通孔34の軸方向に沿った底壁部44から装着部88の端部までの長さ)は、スリーブ90の軸方向寸法以下に設定されている。
<第1の実施の形態の作用、効果>
(ウエビング巻取装置10の機能面での作用、効果)
次に、本ウエビング巻取装置10の機能面での作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、車両が急減速状態を第1ロック機構62の加速度センサが検出し、又は、このような急減速の慣性で車両前方側へ急速に移動しようとする乗員の身体が、装着されているウエビングベルト24を急速に引っ張ることでスプール20が急速に引出方向に回転すると、先ず、第1ロック機構62のロックベース68のラチェット歯70にロックプレートが噛み合い、これにより、第1ロック状態となり、引出方向へのロックベース68の回転が規制される。ロックベース68はストッパ58でトーションシャフト50のメインシャフト52に回り止めされた状態で組み付けられている。このため、ロックベース68の引出方向への回転が規制されることで、メインシャフト52の引出方向への回転が規制される。
また、メインシャフト52の被保持部56の外周形状と貫通孔34の装着部36の内周形状とは、非円形の相似形状で、しかも、被保持部56と貫通孔34との間に介在するホルダ120の保持片122及び係合片132の厚さは被保持部56と貫通孔34との間の隙間に略同じである。このため、メインシャフト52とスプール本体22とは互いに回り止めされている。したがって、上記のように、メインシャフト52の引出方向への回転が規制されることで、スプール本体22の引出方向への回転が規制される。
この状態で、メインシャフト52の本体54の捩じり剛性を超える大きさの引出方向への回転力がスプール本体22に付与され、スプール本体22がメインシャフト52の被保持部56を引出方向へ回転させて本体54を捩じり変形させる。この本体54の捩じり変形分だけスプール本体22の回転が許容され、この回転分だけスプール本体22からウエビングベルト24が引き出されると共に、本体54の捩じり変形にウエビングベルト24の引っ張り力が供されて、引っ張り力の一部が吸収される。
一方、第1ロック機構62が作動した状態で、第2ロック機構110が作動すると、第2ロック状態となり、支持部94と共に一体的に回転する回転体の引出方向への回転が規制される。支持部94を有するスリーブ90には勘挿孔96にサブシャフト82の装着部88が入り込んでおり、装着部88とスリーブ90とは互いに回り止めされている。したがって、回転体と共にスリーブ90の引出方向への回転が規制されることで、サブシャフト82の引出方向への回転が規制される。
また、サブシャフト82の被保持部86の外周形状と貫通孔34の装着部36の内周形状とは、非円形の相似形状で、しかも、被保持部86と貫通孔34との間に介在するホルダ120の保持片122及び係合片132の厚さは被保持部86と貫通孔34との間の隙間に略同じである。このため、サブシャフト82とスプール本体22とは互いに回り止めされている。したがって、上記のように、サブシャフト82の引出方向への回転が規制されることで、スプール本体22の引出方向への回転が規制される。
この状態では第1ロック機構62も作動していることから、メインシャフト52の本体54及びサブシャフト82の本体84の双方の捩じり剛性の和を超える大きさの引出方向への回転力がスプール本体22に付与され、スプール本体22がメインシャフト52の被保持部56とサブシャフト82の被保持部86とを引出方向へ回転させて本体54及び本体84の双方を捩じり変形させる。この本体54及び本体84の捩じり変形分だけスプール本体22の回転が許容され、この回転分だけスプール本体22からウエビングベルト24が引き出されると共に、本体54の捩じり変形にウエビングベルト24の引っ張り力が供されて、引っ張り力の一部が吸収される。
上記のように、第2ロック機構110は第1ロック機構62に連動する構成で、しかも、例えば、本ウエビング巻取装置10に対応した座席に着座した乗員の体重等の体格情報を検出する体格検知手段での検出結果に基づき第2ロック機構110は作動可能な状態又は作動不可能な状態を切り換えることができる。このため、第2ロック機構110を作動可能な状態とした場合には、メインシャフト52の本体54及びサブシャフト82の本体84の双方の捩じり剛性の和を超える大きさの引出方向への回転力でスプール本体22の回転が許容され、第2ロック機構110を作動不可能な状態とした場合には、メインシャフト52の本体54の捩じり剛性を超える大きさの引出方向への回転力でスプール本体22の回転が許容されることになり、吸収できるエネルギーの大きさも変えることができる。
(ウエビング巻取装置10の組み立て面での作用、効果)
次に、スプール20の組立工程の説明を通して、組み立て面での本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
スプール20の組立工程は第1連結工程を備えている。この第1連結工程では、ロックベース68が組み付けられたメインシャフト52とホルダ120とが連結される。図4に示されるように、第1連結工程では、先ず、保持片122の長手方向に沿った一方の側の保持片122及び係合片132の端部が突き当て具162に突き当てられる。この状態で、本体54の長手方向と保持片122の長手方向とが略同方向になり、この方向に沿ってホルダ120の突き当て具162とは反対側の端部と被保持部56とが対向するようにメインシャフト52が配置される。
本体54及び保持片122の長手方向に沿ってメインシャフト52がホルダ120に接近させられる(すなわち、相対的にはホルダ120がメインシャフト52に接近する)。このようにしてホルダ120の突き当て具162とは反対側の端部からホルダ120の内側に被保持部56を入り込ませると、図5の(A)に示されるように、被保持部56が爪部140に当接する。この状態で更にメインシャフト52をホルダ120の側へ移動させると、被保持部56の軸方向に対して直交した放射方向(すなわち、被保持部56の軸心から離れる向き)に被保持部56が爪部140を押圧する。
被保持部56に爪部140が押圧されると、図5の(B)に示されるように、基部134の幅方向を軸方向とする軸周りに弾性部136が弾性変形し、この弾性部136の弾性変形に伴い爪部140が移動する。この状態から更にメインシャフト52を移動させることで、図5の(C)に示されるように、被保持部56よりも本体54の側に爪部140が位置すると、爪部140に対する被保持部56からの干渉が解消され、弾性部136は元の形状に復元する。
これにより、爪部140はその先端側が被保持部56の外周部よりも本体54の軸心側に位置する。このため、この状態で、ホルダ120の内側に被保持部56を入り込ませる際のホルダ120に対するメインシャフト52の移動方向とは反対の向きにメインシャフト52を移動させようとすると、被保持部56の本体54の側の端部に爪部140に当接し、メインシャフト52の移動が規制される。このため、基本的にはホルダ120の内側に被保持部56を入り込ませる際のホルダ120に対するメインシャフト52の移動方向とは反対の向きにメインシャフト52を移動させることができない。
また、スプール20の組立工程は第2連結工程を備えている。図6に示されるように、第2連結工程では、被保持部56が入り込む側とは反対側のホルダ120の端部から被保持部86がホルダ120の内側に入り込んでホルダ120とサブシャフト82とが連結される。なお、この第2連結工程は、被保持部56が入り込む側とは反対側の端部が突き当て具162に代わる突き当て具164に突き当てられる点、ホルダ120に対するサブシャフト82の接近方向がホルダ120に対するメインシャフト52の接近方向とは反対向きになる点、及び、爪部140に干渉したり爪部140を押圧したりする部位が被保持部56ではなく被保持部86になる点以外は基本的に第1連結工程と同じであるため第2連結工程の詳細に関しては説明を省略する。
なお、以上の第1連結工程と第2連結工程との順序は特に関係はなく、第1連結工程に次いで第2連結工程が行なわれてもよいし、第2連結工程に次いで第1連結工程が行なわれてもよい。
このように、第1連結工程及び第2連結工程を経ることでメインシャフト52とサブシャフト82とはホルダ120によって繋げられる。ここで、上記のように、被保持部56や被保持部86に爪部140が干渉することで、ホルダ120から抜け出る方向へのメインシャフト52やサブシャフト82の移動が規制されるため、被保持部56及び被保持部86に爪部140が当接した状態以上にメインシャフト52とサブシャフト82とが離間することはない。
しかも、一部が欠落しているとはいえ、ホルダ120の内周形状は被保持部56や被保持部86の外周形状に倣っているので、ホルダ120の内側に被保持部56や被保持部86が入り込んだ状態では、被保持部56や被保持部86に保持片122や係合片132が当接する。これにより、被保持部56や被保持部86は保持片122や係合片132によって保持され、本体54の軸方向と本体84の軸方向とが交差するようにメインシャフト52及びサブシャフト82の何れか一方が他方に対して傾くことが制限される。
また、スプール20の組立工程はトーションシャフト挿入工程を備えている。このトーションシャフト挿入工程では、ホルダ120によってメインシャフト52に繋げられたサブシャフト82が装着部36の側から貫通孔34に挿入される。図7に示されるように、このトーションシャフト挿入工程では、スプール本体22の軸方向とサブシャフト82の軸方向とが略同軸的に揃えられた状態で、スプール本体22のフランジ部30の側の端部と装着部88とが対向させられ、この状態でテーパ部38の装着部36とは反対側の開口部からサブシャフト82が貫通孔34へ入り込む。
ここで、保持片122や係合片132の厚さ寸法は、被保持部56、86を装着部36に対して同軸的に配置した状態で被保持部56、86の外周部と装着部36の内周部との間に生じる隙間に略等しい。したがって、ホルダ120の内側に被保持部56、86が入り込んだ状態でのホルダ120の外周形状は装着部36の内周形状に略同じである。しかしながら、テーパ部38は装着部36とは反対側へ向けて漸次内周形状が大きくなるため、テーパ部38の装着部36とは反対側の開口端では、ホルダ120の外周面とテーパ部38の内周面との間に隙間が形成される。このため、ホルダ120は比較的容易に貫通孔34の内側に入り込むことができる。
しかも、テーパ部38は装着部36の側へ向けて漸次装着部36の内周形状に近くなるため、テーパ部38と装着部36との境界部分からホルダ120が容易に装着部36に入り込み、ホルダ120の全部又は大部分が装着部36に収容される。
また、被保持部56や被保持部86がホルダ120の内側に入り込む際に弾性部136が弾性変形したが、サブシャフト82を貫通孔34の内側に入り込ませる際に、弾性部136が完全に元の形状に復元していなくても、テーパ部38の装着部36とは反対側の開口端でのテーパ部38の内周形状は装着部36の内周形状よりも大きい。したがって、弾性部136の端部が大きく干渉したりすることなくホルダ120がテーパ部38の内側に入り込み、テーパ状のテーパ部38の内周面に弾性部136の端部が干渉されることで、貫通孔34の内側へメインシャフト52が入り込むにつれて弾性部136が強制的に元の形状に戻されることになる。
このように、貫通孔34にテーパ部38を形成していることで、メインシャフト52を貫通孔34の内側へ入り込ませるにあたり、ホルダ120が大きな障害になることがなく、簡単にメインシャフト52やホルダ120、更にはサブシャフト82を貫通孔34の内側へ入り込ませることができる。
このようにしてホルダ120の全部又は大部分が装着部36に入り込み、更に、ラチェット歯70がロックベース装着部40の底部に突き当たると、トーションシャフト挿入工程が終了する。この状態では、被保持部56や被保持部86の外周部に保持片122や係合片132が密着し、しかも、装着部36の内周部が保持片122や係合片132に密着する。このため、メインシャフト52やサブシャフト82の軸心から離間する向き(すなわち、被保持部56や被保持部86の外周部から離間する向き)への弾性部136の弾性変形が防止される。
したがって、この状態では、被保持部56の本体54とは反対側の端部と爪部140との対向状態及び被保持部86の本体84とは反対側の端部と爪部140との対向状態が維持されるため、ホルダ120から被保持部56や被保持部86が抜け出ることはない。また、被保持部56や被保持部86の外周形状、ホルダ120の内周形状、ホルダ120の外周形状、及び装着部36の内周形状は非円形であるため、被保持部56や被保持部86の外周部に保持片122や係合片132が密着し、装着部36の内周部が保持片122や係合片132に密着した状態では、被保持部56、86と、ホルダ120と、スプール本体22とが同軸的に相対回転することはない。したがって、基本的にはスプール本体22の回転力はメインシャフト52及びサブシャフト82に伝わり、メインシャフト52やサブシャフト82にて回転が規制されればスプール本体22の回転も規制される。
また、スプール20の組立工程は締結工程を備えている。この締結工程では、図8に示されるように、装着部36のテーパ部38とは反対側の端部から突出したメインシャフト52に装着部88の側から嵌挿孔96が嵌め合わされ、更に、ストッパ100の雄ねじ部104が装着部88の雄ねじ部106に螺合させられる。雄ねじ部106に螺合させると、ストッパ100のフランジ部102が支持部94の円形部92とは反対側の端部を押圧する。このように、フランジ部102からの押圧力をスリーブ90が受けることで、スプール本体22はスリーブ装着部42の底壁部44に接した円形部92と、ロックベース装着部40の底部に接したラチェット歯70とで挟み付けられ、これにより、スプール本体22の軸方向に沿ったメインシャフト52やサブシャフト82の受けた移動が規制される。
このように、本実施の形態では、トーションシャフト50がメインシャフト52とサブシャフト82とを有する構成であるにも関わらず、メインシャフト52とサブシャフト82とをホルダ120で繋ぐことで、擬似的に1本のシャフトになるため、スプール本体22への組み付けが簡単になる。
しかも、ホルダ120で繋がれたメインシャフト52とサブシャフト82とは軸周りの相対回転がし難くい。したがって、これによっても更にスプール本体22への組み付けが簡単になる。
さらに、本実施の形態では、ホルダ120へのメインシャフト52及びサブシャフト82の組み付けは、単純にホルダ120の端部からメインシャフト52及びサブシャフト82を押し込むだけでよいので、ホルダ120へのメインシャフト52及びサブシャフト82の組み付けが簡単である。
また、ホルダ120は金属平板を打ち抜きと曲げだけで製造可能であるので、コストも安価である。
さらに、メインシャフト52とサブシャフト82とは基本的にその軸方向寸法の和が同じであれば本体54や本体84の個々の長さや太さを変えても同一のホルダ120を適用できる。このため、吸収するエネルギーの量を簡単に変えることも可能である。
また、本実施の形態は、メインシャフト52とサブシャフト82とをホルダ120で連結する構成であるので、メインシャフト52とサブシャフト82との長さの比を自由に設定でき、しかも、メインシャフト52とサブシャフト82との長さの比を変えてもメインシャフト52とサブシャフト82との軸方向寸法の和が同じであればスプール本体22の構成を変えなくても流用が可能である。
なお、本実施の形態では、保持片122と係合片132とが交互に並ぶ構成であったが、保持片122と係合片132とは交互に並んでいなくてもよく、保持片122に代わり係合片132を設ける構成であってもよいし、係合片132を1枚だけ設けて他を保持片122で構成してもよい。
さらに、図3に示されるように、本実施の形態では、ホルダ120の保持片122及び係合片132は平板状で、基部124の厚さ方向と保持部126の厚さ方向とは同じ向きとされ、基部134の厚さ方向と弾性部136の厚さ方向とは同じ向きとされている。しかしながら、複数枚の保持片122のうち少なくとも1枚以上の保持片122は基部124の厚さ方向に対して保持部126の厚さ方向が傾いていてもよいし、また、複数枚の係合片132のうち少なくとも1枚以上の係合片132は基部134の厚さ方向に対して弾性部136の厚さ方向が傾いていてもよい。
このような構成の一例を図11に示す。この図に示されるホルダ120の保持片122は、基部124と保持部126との境を中心として保持片122の幅方向を軸方向とする軸周りに保持部126が基部124に対して屈曲している。さらに、係合片132は、基部134と弾性部136との境を中心として係合片132の幅方向を軸方向とする軸周りに弾性部136が基部134に対して屈曲している。
トーションシャフト50(図11では図示省略)の軸方向に沿ってホルダ120を見た場合、上記のように保持片122及び係合片132が屈曲されたホルダ120は、トーションシャフト50(図11では図示省略)の軸方向に沿ってホルダ120を見た場合のホルダ120の形状を六角形とみなすと、保持部126及び弾性部136の各先端(基部124や基部134とは反対側の端部)における六角形が、基部124及び基部134における六角形よりも大きくなる。
基部124及び基部134においてはメインシャフト52の被保持部56やサブシャフト82の被保持部86が接するように基部124や基部134の幅寸法が設定されているのであれば、保持部126及び係合片132の各先端(基部124や基部134とは反対側の端部)における六角形は被保持部56や被保持部86の外周形状よりも大きくなる。したがって、このように、基部124に対して保持部126を屈曲させて基部134に対して弾性部136を屈曲させると、保持部126や弾性部136の先端側からメインシャフト52やサブシャフト82を嵌め込みやすくなる。
また、保持部126及び弾性部136の各先端における六角形を、基部124及び基部134における六角形よりも大きくする場合には、テーパ部38の装着部36とは反対側の端部におけるテーパ部38の内周形状よりも保持部126及び弾性部136の各先端における六角形を小さくした方が、当然、テーパ部38にホルダ120を入れ易くなることは言うまでもない。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態ついて説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するに際して、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図11には本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置180の要部である回転規制手段及び連結手段としてのホルダ182が斜視図により示されている。この図に示されるように、本ウエビング巻取装置180のホルダ182は、スプール184のテーパ部38(貫通孔34)の内周形状である六角形の各辺に対応して3枚の保持片122と3枚の係合片132とを備えている。ホルダ182における保持片122と係合片132は前記第1の実施の形態におけるホルダ120と同様に貫通孔34の内周方向に沿って保持片122と係合片132とが交互に設けられており、しかも、保持片122と係合片132とがブリッジ142とにより繋げられている。
但し、複数の保持片122のうち、1枚の保持片122Aと、複数の係合片132のうち、貫通孔34の内周方向一方の側で前記保持片122Aに隣り合う係合片132Aとの間にはブリッジ142が設けられておらず、この保持片122Aと係合片132Aとは繋がっていない。
一方、図12の(B)に示されるように、本ウエビング巻取装置180を構成するスプール184にはウエビング挿通孔188が形成されている。ウエビング挿通孔188はスプール184の軸方向に対して直交する1つの向きに沿ってスプール184の中心よりも外周側に変位した位置に形成されている。このウエビング挿通孔188はスプール184の軸方向に沿ったウエビング挿通孔188の開口寸法がウエビングベルト24の幅寸法よりも大きく、しかも、スプール184の周方向に沿ったウエビング挿通孔188の開口寸法がウエビングベルト24の厚さ寸法の2倍よりも大きい。
ウエビング挿通孔188の一端はスプール184のスプール本体186の外周面にて開口している。これに対して、ウエビング挿通孔188の他端はストッパ収容孔190の内面にて開口している。ストッパ収容孔190はスプール184の軸方向に沿ったストッパ収容孔190の開口寸法がウエビングベルト24の幅寸法以上に設定されており、スプール184の周方向に沿ったストッパ収容孔190の開口寸法はスプール184の周方向に沿ったウエビング挿通孔188の開口寸法よりも充分に大きい。このように他端側にストッパ収容孔190が形成されたウエビング挿通孔188は、一端から他端への向きが貫通孔34の内周形状である六角形の一辺に対して平行とされており、この一辺の部分でウエビング挿通孔188と貫通孔34とが連通している。
このウエビング挿通孔188には一端側からウエビングベルト24が通される。ウエビングベルト24の基端側は先端側に折り返され、折り返し状態でのウエビングベルト24の長手方向基端部近傍に形成される筒状のストッパ挿通部192を除いて縫合されている。このストッパ挿通部192にはストッパ194が挿通される。ストッパ194は軸方向がスプール184の軸方向に沿った円柱形状とされている。
さらに、ストッパ194の外径(直径)寸法はスプール184の周方向に沿ったウエビング挿通孔188の開口寸法よりも充分に大きく、且つ、スプール184の周方向に沿ったストッパ収容孔190の開口寸法よりも小さい。ストッパ挿通部192にストッパ194が挿通されることでストッパ挿通部192はウエビング挿通孔188を通過できず、これにより、ウエビングベルト24の長手方向基端側がスプール本体186に係止されている。
このように、ウエビング挿通孔188に連通した貫通孔34には、前記第1の実施の形態と同様にホルダ182が配置される。ここで、図12の(A)に示されるように、複数枚の保持片122のうち保持片122Aは、貫通孔34の内周部のうちウエビング挿通孔188との連通部分以外の部位で貫通孔34の内周部に接している。さらに、複数枚の係合片132のうち係合片132Aは、貫通孔34の内周部のうちウエビング挿通孔188との連通部分以外の部位で貫通孔34の内周部に接している。
<第2の実施の形態の作用、効果>
以上の構成を特徴とする本実施の形態に係るウエビング巻取装置180は、前記第1の実施の形態におけるホルダ120に代わりホルダ182を用いている。しかしながら、ホルダ182をホルダ120と比べた場合、ホルダ182は係合片132が1枚増え、これにより、トーションシャフト50の軸方向に沿ってみたホルダ182の形状が貫通孔34の内周形状と同じ六角形になる点以外は基本的にホルダ182とホルダ120は同じ構成である。更には、ホルダ120に代わりホルダ182を用いている点以外、ウエビング巻取装置180は基本的に前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10と同じ構成である。このため、ウエビング巻取装置180は基本的にウエビング巻取装置10と同様の作用を奏し、ウエビング巻取装置10と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態に係るウエビング巻取装置180のホルダ182は、保持片122Aと係合片132Aとが繋がっていないものの、ホルダ120とは異なりトーションシャフト50の軸方向に沿ってみた形状が貫通孔34の内周形状と同じ六角形になる。しかも、保持片122Aと係合片132Aは何れも貫通孔34の内周部のうちウエビング挿通孔188との連通部分以外の部位で貫通孔34の内周部に接している。このため、保持片122Aと係合片132Aとが互いに離間するように、すなわち、トーションシャフト50の軸方向に沿ってみた場合に、ホルダ182が開くようにホルダ182が変形することがない。
例えば、トーションシャフト50の軸方向に沿ってみた場合に、貫通孔34とウエビング挿通孔188との連通部分でホルダ182が開くようにホルダ182が変形した場合には、保持片122Aや係合片132Aがウエビング挿通孔188に入り込むため、ウエビングベルト24をウエビング挿通孔188に挿通するに際して保持片122Aや係合片132Aがウエビングベルト24の基端部に干渉する。このため、ウエビング挿通孔188へのウエビングベルト24の挿通作業の作業性が悪くなる。しかしながら、本実施の形態に係るウエビング巻取装置180では、上記のように貫通孔34とウエビング挿通孔188との連通部分でホルダ182が開くようにホルダ182が変形することがないので、ウエビング挿通孔188へのウエビングベルト24の挿通作業の作業性が悪くなることがない。
なお、本実施の形態は、スプール184のテーパ部38(貫通孔34)の内周形状である六角形の各辺に対応して3枚の保持片122と3枚の係合片132とを備えたホルダ182を適用する構成であった。
しかしながら、例えば、前記第1の実施の形態における3枚の保持片122と2枚の係合片132とを備えたホルダ120を用いた構成であっても、貫通孔34の内周方向に沿った両端に位置する係合片132(すなわち、間に保持片122が設けられない両係合片132)の保持片122とは反対側の端部(すなわち、ホルダ120の断面形状を略正六角形とみなした場合に、唯一辺が存在しない部位)をウエビング挿通孔188と貫通孔34との連通部分に位置させず、貫通孔34の内周部のうちウエビング挿通孔188との連通部分以外の部位で上記の両端に位置する係合片132の保持片122とは反対側の端部を貫通孔34の内周部に当接させれば、両端の係合片132が互いに開くようなホルダ120の変形を防止又は効果的に抑制でき、上記のホルダ182と同様の効果を得ることもできる。
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図13には本実施の形態に係るウエビング巻取装置210の要部である回転規制手段及び連結手段としてのホルダ212が斜視図により示されている。この図に示されるように、本ウエビング巻取装置210のホルダ212は、前記第2の実施の形態における保持片122Aを含む3枚の122に代わり、保持片214、216、218を備えている。トーションシャフト50の軸方向に沿ってホルダ212を見た場合、ホルダ212はスプール20に代わるスプール220がウエビングベルト24を巻き取る際の回転方向である巻取方向(図14の矢印C方向とは反対方向)側の端に保持片214が位置し、保持片214に対して上記の巻取方向とは反対の引出方向側でブリッジ142を介して係合片132が繋がっている。
また、保持片214に隣り合う係合片132の保持片214とは反対側で保持片216がブリッジ142を介して繋がっている。さらに、保持片216の引出方向側にはブリッジ142を介して係合片132が繋がっており、この係合片132の保持片216とは反対側にはブリッジ142を介して保持片218が繋がっている。また、保持片218の引出方向側にはブリッジ142を介して係合片132Aが繋がっている。
図13に示されるように、保持片214は保持部126に代わる保持部222を備えている。保持部222は平板状ではあるものの、保持部126とは異なりテーパ状には形成されておらず、保持部222の厚さ方向に沿って保持部222をみた場合、保持部222は略長方形状とされている。また、保持部222は幅方向中間部を中心にして保持部222の長手方向(トーションシャフト50の軸方向)を軸方向とする軸周りに屈曲されており、この屈曲された部分は係合爪224とされている。
一方、保持片216は保持部126に代わる保持部226を備えている。保持部226は、保持部222と同様に厚さ方向に沿ってみた形状が略長方形状とされている。但し、保持部226は保持部222と異なり屈曲されておらず、したがって、係合爪224も保持片216には形成されていない。
また、保持片218は保持部126に代わる保持部228を備えている。保持部228は、保持部226と同様に厚さ方向に沿ってみた形状が略長方形状とされている。但し、保持部226とはと異なり保持部228には切欠部230が形成されている。切欠部230は保持部228の基部124との境界部分に形成されている。切欠部230は長手方向が保持部228の幅方向に沿っており、巻取方向側での保持部228の幅方向端部で開口している。保持部228は切欠部230の開口していない引出方向側の端部(すなわち、保持部228の幅方向中間部における切欠部230の端部)にて、保持部228の長手方向を軸方向とする軸周りに屈曲されており、この屈曲された部分は係合爪232とされている。
以上の係合爪224、232とは、何れも保持部222、228の幅方向中間部よりも巻取方向側が屈曲されており、しかも、係合爪224、232を除いたホルダ212をトーションシャフト50の軸方向に沿ってみた場合の形状を六角形状とみなした場合、係合爪224、232の先端側はこの六角形よりも外側に突出しいる。
スプール220のスプール本体234には係合爪224に対応して係合溝236が形成されており、また、スプール本体234には係合爪232に対応して係合溝238が形成されている。係合溝236、238の各々は断面形状が略三角形状とされている。係合溝236、238の各々の断面形状を三角形状とみなした場合、この三角形の一辺は貫通孔34の内周部にて開口している。さらに、この三角形の他の二辺のうちの一辺は、係合爪224、232の各々の厚さ方向外側面に対応している。さらに、この三角形の残りの一辺は、係合爪224、係合爪232の各先端部に巻取方向側で対向する壁部となっている。
<第3の実施の形態の作用、効果>
以上の構成を特徴とする本実施の形態に係るウエビング巻取装置210は、前記第2の実施の形態におけるホルダ182に代わりホルダ212を用いている。しかしながら、ホルダ212をホルダ182と比べた場合、ホルダ212には係合爪224、232が形成されている。しかしながら、これらの係合爪224、232が形成されている点以外は、基本的にホルダ212とホルダ182は同じ構成である。しかも、ホルダ182に代えてホルダ212を用いた点以外は、ウエビング巻取装置210とウエビング巻取装置180とは基本的に同じ構成である。したがって、ウエビング巻取装置210は基本的にウエビング巻取装置180と同様の作用を奏し、ウエビング巻取装置180と同様の効果を得ることができる。
また、本ウエビング巻取装置210においても貫通孔34は断面形状が及びトーションシャフト50の軸方向に沿ってホルダ212を見た場合のホルダ212の形状は何れも六角形(すなわち、非円形)である。したがって、スプール220のスプール本体234の中心軸線周りにスプール本体234に対してホルダ212が相対回転することはない。
さらに、これに加え、本実施の形態に係るウエビング巻取装置210では、上述したように、係合溝236の内壁の一部が係合爪224の先端部に対して巻取方向側で対向しており、係合溝238の内壁の一部が係合爪232の先端部に対して巻取方向側で対向している。このため、スプール本体234が引出方向に回転した際にホルダ212がスプール本体234に追従しようとしなかった場合、係合溝236の内壁のうち係合爪224の先端部に対向する部分が係合爪224の先端部を引出方向側へ押圧し、係合溝238の内壁のうち係合爪232の先端部に対向する部分が係合爪232の先端部を引出方向側へ押圧する。
これにより、スプール本体234に対するホルダ212の引出方向側への回転遅れを防止でき、この結果、スプール本体234に対するホルダ212が相対回転を更に確実に防止できる。
なお、上記の各実施の形態において、保持片122及び係合片132はブリッジ142により基部124と基部134とが連結され、弾性部126と弾性部136とは直接連結されていない構成であった。しかしながら、メインシャフト52の被保持部56や、サブシャフト82の被保持部86の挿し込みが可能で、しかも、被保持部56、86の挿し込みで係合部としての爪部140が被保持部56、86に係合できさえすれば、基部124、134のように弾性部126と弾性部136とが直接連結されていても構わない。