JP4921806B2 - タングステン超微粉及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、焼結材料若しくは電子部品の電極材料等として好適なタングステン超微粉、及びその製造方法に関する。
従来から、金属タングステン(以下、単にタングステンとも記載)の粉末は、焼結材料あるいは電子部品の電極材料等として幅広く利用されている。しかしながら、タングステンは高融点金属であることから焼結温度が高く、そのためタングステン粉末の利用も制限されていた。
一般に、金属は超微粉化することで表面が活性化し、低融点化現象が見られ、焼結温度も低温度化する。タングステン粉も例外ではなく、超微粉化による焼結性の改善により様々な用途への展開が期待されている。しかしながら、従来のタングステン超微粉の製造方法は生産性が低く、高コストであることから十分利用されておらず、工業的で低コストな製造方法の開発が望まれていた。
金属の超微粉を効率よく製造できる方法として、例えば、液相法及び気相法が知られている。液相法については、例えば、特開2000−87121号公報に記載されているように、金属塩をヒドラジンなどで還元する方法があり、粒径100nm以下の金属超微粒子を得ることができる。しかし、このような液相法では、タングステンの超微粉を得ることは不可能であった。
一方、気相法については、特開昭56−9304号公報や特開昭63−266008号公報に、プラズマを利用した金属微粉の製造方法が記載されている。しかし、前者の方法はアークプラズマを利用したものであり、高融点金属の超微粉を得ることはできるが、生産性が低く連続生産に不向きであるばかりか、電極から不純物が混入するという問題があった。また、後者の方法では、タングステン超微粉を得るために原料にとして高融点・高沸点の純タングステンを用いるため、全量を蒸発するまでに至らず、原料粉に近い大きな粒径の粒子が混入する。それらの大きな粒子を分級したとしても、効率よく超微粉を作製できる方法とはいえず、コストとしても高くなることが避けられなかった。
また、特開平6−91162号公報には、高周波プラズマによる旋回運動を利用して、原料粉末の蒸発を改善する装置が開示されている。しかし、この公報に記載された方法でも、原料として高融点・高沸点のタングステンを用いていることに変わりはなく、上記した粗大粒子の混入問題を根本的に解決できたとは言い難い。また、旋回運動を発生させるために、装置及びその制御も複雑化するという問題がある。
更に、特開平2−6339号公報には、減圧下で窒素ガス雰囲気での熱プラズマによるタングステン超微粉又は酸化タングステン超微粉の製造法が記載されている。また、酸化タングステンを原料として用いることで、タングステン超微粉と酸化タングステン超微粉の混合物が得られることが記載されている。しかし、この混合物からタングステン超微粉のみを得るためには、更に別工程として還元工程が必要となるため、還元中に微粒子が凝集する恐れがあるうえ、別工程の付加によって高コストとなることが避けられない。
尚、石川博之、大塚研一、新田稔、米花康典、「塩化物の気相水素還元による金属超微粉の生成」、川崎製鉄技報、Vol.21、No.4、(1989)59−64には、タングステンの塩化物を気相で水素還元することにより、タングステン超微粉を製造する方法が記載されている。しかしながら、この気相水素還元法では、塩化物を原料として用いているため、得られるタングステン超微粉中に塩化物が残留し、高純度のタングステン超微粉を得ることはできない。
特開2000−87121号公報 特開昭56−9304号公報 特開昭63−266008号公報 特開平6−91162号公報 特開平2−6339号公報 石川博之、大塚研一、新田稔、米花康典、「塩化物の気相水素還元による金属超微粉の生成」、川崎製鉄技報、Vol.21、No.4、(1989)59−64
本発明は、焼結材料若しくは電子部品電極材料等に好適な、平均粒径100nm以下で高純度のタングステン超微粉、及びその工業的な低コストでの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明が提供するタングステン超微粉の製造方法は、アルゴンガスをプラズマガスとして供給すると共に、水素ガスとアルゴンガスをシースガスとして供給することによって提供される、アルゴンガスと水素ガスを含む還元性雰囲気中において、タングステン酸化物を高周波プラズマにより気化させ、得られたタングステン蒸気を凝縮させて微粉化させることを特徴とするものである。
上記本発明によるタングステン超微粉の製造方法においては、得られたタングステン超微粉を、酸素を含む不活性ガス雰囲気中で徐酸化処理することが好ましい
本発明は、また、上記した本発明の製造方法により得られたタングステン超微粉を提供するものであり、そのタングステン超微粉は、平均粒径が100nm以下であり、粒径の幾何標準偏差が1.35以下であることを特徴とする。
更に、上記本発明のタングステン超微粉は、上記した本発明の製造方法において徐酸化処理を行うことにより、平均粒径が100nm以下、粒径の幾何標準偏差が1.35以下であって、表面がタングステン酸化物の薄膜で覆われていることを特徴とする。
本発明によれば、原料であるタングステン化合物を熱プラズマで気化、凝縮させるという工業的且つ低コストの方法により、平均粒径が100nm以下であって、高純度で且つ焼結特性に優れたタングステン超微粉を提供することができる。従って、本発明のタングステン超微粉は、焼結材料あるいは電子部品の電極材料等として好適なものである。
本発明のタングステン超微粉の製造方法では、熱プラズマによってタングステン化合物を気化させ、得られたタングステン蒸気を凝縮させて微粉化させる。高周波プラズマやアークプラズマのような熱プラズマは、プラズマ領域が10000℃以上の温度を有するため、その中に導入されたタングステン化合物は瞬時に気化する。また、タングステン化合物の気化は不活性ガス及び水素ガスを含む還元性雰囲気中で行われるため、気化したタングステン化合物は分解、還元され、タングステン原子(蒸気)となる。
気化したタングステン蒸気は、急冷凝縮させて微粉化する。即ち、熱プラズマは外部加熱方式等と比較すると高温領域が狭いため、気化したタングステン蒸気はプラズマ尾炎部への移動中に凝縮し、プラズマ領域から出ると急冷凝固されるため、強制的な冷却を行わなくても微粉化される。原料のタングステン化合物として、特に酸化物を使用する場合、タングステン蒸気が凝縮中に化合物元素、特に酸素と再結合する可能性があるが、不活性ガス及び水素ガスを含む還元性雰囲気中では酸素との結合が阻害され、タングステンの超微粉を得ることができる。
一般にタングステンは沸点が高く、高温の熱プラズマでも未気化の原料タングステンが残る傾向があるが、本発明方法で原料として用いるタングステン化合物はタングステンに比べて沸点が低く、容易に気化させることが可能である。タングステン化合物としては、特に三酸化タングステンなどの酸化物が好ましい。タングステン酸化物は沸点が金属タングステンよりも低く、気化が容易であるばかりか、低コストで安定的に入手できるため好ましい。
また、三酸化タングステンなどのタングステン酸化物は、熱プラズマ中でタングステンと酸素に分解するため、例えばアークプラズマ法では生成した酸素によって電極材(一般的にタングステン−トリウムが用いられる)の消耗が起こり、不純物となってタングステン超微粉に混入することがある。不活性ガスなどのシールドガスを流すなどの工夫によって不純物の混入を防ぐこともできるが、連続的な量産には不向きである。一方、高周波プラズマ法は、無電極であるから上記のような不純物混入の問題がなく、高純度のタングステン超微粉を連続的に量産することができるため特に好ましい。
本発明方法によれば、平均粒径が100nm以下のタングステン超微粉を得ることができる。しかも、凝縮により微粉化させるため、結晶性の高いタングステン超微粉を容易に得ることができる。従って、本発明のタングステン超微粉は、従来よりも低い温度での焼結が可能であるだけでなく、焼結体の熱収縮特性改善にも有利である。尚、本発明方法によって得られるタングステン超微粉の粒径は、プラズマの出力、雰囲気ガス圧力、プラズマガス流量、投入原料量などにより、容易に制御することができる。
更に、本発明のタングステン超微粉では、粒径の幾何標準偏差を1.35以下とすることができる。粒径の幾何標準偏差とは、平均粒径を積算篩した15.87%径で除したもの、あるいは、積算篩した84.13%径を平均粒径で除したものであり、粒径分布の均一度を示す指標として広く用いられている。この幾何標準偏差が1.35以下のタングステン超微粉は、ペースト等として塗布する際に均一な膜形成が可能となり、焼結時にも収縮が均一でクラック等の発生を防止することができる。塗布時の均一性並びに焼結時のクラック防止を考慮すると、粒径の幾何標準偏差は1.30以下であることが更に好ましい。
また、タングステン超微粉は活性であり、大気中では発火の恐れがある。そのため、上記の方法により得られたタングステン超微粉は、酸素を含む不活性ガス雰囲気、例えばアルゴン−1〜5%酸素雰囲気中において、一定時間保持して酸化する徐酸化処理を行うことが好ましい。この徐酸化処理により、表面に酸化物の薄膜が形成されたタングステン超微粉が得られる。このタングステン酸化物の薄膜が表面に形成されたタングステン超微粉は、表面が安定しているため発火の恐れがなく、取り扱いが極めて容易になる。
[実施例1]
図1に示した高周波プラズマ微粉製造装置を用いて、タングステン超微粉を製造した。即ち、プラズマガス供給口2からプラズマガスとしてアルゴンを30リットル/分で供給すると共に、シースガス供給口3からシースガスとしてアルゴンガスを85リットル/分及び水素ガスを5リットル/分の流量で混合して供給し、プラズマトーチ1に約40kWの入力で高周波プラズマを点火して、安定したプラズマ炎5を得た。
原料粉末供給口4から、三酸化タングステン粉末((株)高純度化学研究所製、WWO03PB、粒径0.35μm、純度99.9%)を導入して、約1g/分の割合でプラズマ炎5の内部に供給した。このプラズマ炎5は10000℃以上であるため、原料粉末は瞬時に蒸発気化し、温度が低くなるプラズマ尾炎部6で凝縮し、微粉化した。得られたタングステン超微粉は、プラズマトーチ1から反応チャンバー7、冷却チャンバー8に移動し、配管内を搬送されて、大気雰囲気に暴露することなく回収装置9に到達した。得られたタングステン超微粉は、回収装置9内にて、アルゴン−5%酸素雰囲気中で2時間保持する徐酸化処理を行った後、装置から回収した。
回収したタングステン超微粉について、走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−4700:以下SEMと記載)による30000倍での観察結果から、粒子500個を測定して求めた平均粒径は49.5nmであり、幾何標準偏差は1.27であった。この結果から、微細で且つ粒径が極めて均一なタングステン超微粉が得られたことが分る。また、このタングステン超微粉のSEM写真を図2に示した。
このタングステン超微粉をX線回折装置((株)リガク製、RINT−1400:以下XRDと記載)により解析し、そのXRD測定チャートを図3に示した。この図3から、リファレンスとして示した三酸化タングステンのチャートと比較して、本実施例1で得られたタングステン超微粉は、プラズマ処理により金属タングステンに還元されていることが確認できる。尚、計算上では、水素ガスを1リットル/分以上導入すれば、三酸化タングステンを完全に還元することができる。
また、図3には微量にβ−タングステン(化学式WO)のピークが見られるが、これは徐酸化処理により表面に形成されたタングステン酸化物の薄膜と考えられる。更に、このタングステン超微粉の酸素分析(LECO社製、酸素・窒素・アルゴン分析装置、TC−336)を行ったところ、酸素含有量は2.3重量%であった。
[実施例2]
シースガス供給口3からシースガスとしてアルゴンガスを80リットル/分及び水素ガスを10リットル/分の流量で混合して供給した以外は、上記実施例1と同様にしてタングテン超微粉を製造した。
得られたタングステン超微粉について、上記実施例1と同様に測定したところ、平均粒径は47.6nm、幾何標準偏差は1.29であり、酸素含有量は2.3重量%であった。また、図3のXRD測定チャートに、本実施例2の測定結果も併せて示した。
[比較例]
原料粉末として、金属タングステン粉末((株)高純度化学研究所製、WWE06PB、粒径3μm、純度99.9%)を用いた以外は、上記実施例1と同様にしてタングステン超微粉を製造した。
上記実施例1では、原料粉末のほぼ全量を平均粒径100nm以下のタングステン超微粉とすることができたのに対し、この比較例では、タングステン超微粉と共に、溶融凝固してできた原料粉末と同等粒径の球状粉が混入していた。超微粉化されなかった球状粉の割合は、プラズマ条件にもよるが、この比較例においては49.8%であった。
原料粉末として金属タングステン粉末を用いた上記比較例では、粗大なタングステン粉末が混入し、タングステン超微粉として使用するためには分級する必要があった。これに対して、上記した実施例1〜2では、原料粉末としてタングステン酸化物を用いるため、粗大なタングステン粉末の混入がなく、平均粒径100nm以下で且つ粒径が非常に均一なタングステン超微末を効率よく製造できることが確認できた。
実施例で用いた高周波プラズマ微粉製造装置を模式的に示した側面図である。 本発明のタングステン超微粉のSEM写真である。 本発明のタングステン超微粉及びWOのXRDチャートである。
符号の説明
1 プラズマトーチ
2 プラズマガス供給口
3 シースガス供給口
4 原料粉末供給口
5 プラズマ炎
6 プラズマ尾炎部
7 反応チャンバー
8 冷却チャンバー
9 回収装置


Claims (4)

  1. アルゴンガスをプラズマガスとして供給すると共に、水素ガスとアルゴンガスをシースガスとして供給することによって提供される、アルゴンガスと水素ガスを含む還元性雰囲気中において、タングステン酸化物を高周波プラズマにより気化させ、得られたタングステン蒸気を凝縮させて微粉化させることを特徴とするタングステン超微粉の製造方法。
  2. 得られたタングステン超微粉を、酸素を含むアルゴンガス雰囲気中で徐酸化処理することを特徴とする、請求項に記載のタングステン超微粉の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法で得られたタングステン超微粉であって、平均粒径が100nm以下であり、粒径の幾何標準偏差が1.35以下であることを特徴とするタングステン超微粉。
  4. 請求項に記載の製造方法で得られたタングステン超微粉であって、平均粒径が100nm以下、粒径の幾何標準偏差が1.35以下であり、表面がタングステン酸化物の薄膜で覆われていることを特徴とするタングステン超微粉。
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