JP4920206B2 - 外用剤組成物及び貼付剤、並びに薬物の経皮吸収組成物 - Google Patents
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Description
したがって、薬剤を効率的に経皮吸収させ、薬剤の有効性を向上させることが、経皮投与製剤の課題となる。
また、含水系の貼付剤において、インドメタシンの経皮吸収性の向上策としてポリエチレングリコール(PEG)を使用する提案等がされている(特許文献2参照)。
また、多価アルコールと、多価アルコール可溶性高分子と、高吸水性高分子と、カルボキシビニルポリマーとを含有する非水ゲルを有する貼付剤等が提案されている(特許文献5参照)。
また、特許文献3〜11においては、外用剤組成物中に比較的多量に薬物を溶解させることができるという利点があるものの、上記と同様に薬物の経皮吸収性、特に初期の経皮吸収性が不充分である。
すなわち、本発明は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは0又は1の整数である。]
で表されるエステル、滞留性向上剤及び薬物を含有し、水分量が25質量%以下であることを特徴とする外用剤組成物である。
また、本発明の外用剤組成物において、前記多価アルコールが、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールを含むことが好ましい。
また、本発明は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは0又は1の整数である。]
で表されるエステル、粘着剤及び薬物を含有し、水分量が25質量%以下であることを特徴とする貼付剤である。
また、本発明の貼付剤において、前記多価アルコールが、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールを含むことが好ましい。
また、本発明の貼付剤において、前記粘着剤が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤及び酢酸ビニル系粘着剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の貼付剤において、前記粘着剤に含まれる成分がカルボキシ基を有することが好ましい。
また、本発明は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは0又は1の整数である。]
で表されるエステル、滞留性向上剤及び/又は粘着剤、及び薬物を含有し、水分量が25質量%以下であることを特徴とする薬物の経皮吸収組成物である。
また、本発明の薬物の経皮吸収組成物において、前記多価アルコールが、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールを含むことが好ましい。
「薬物の経皮吸収組成物」とは、薬物の経皮吸収効果を有する組成物であり、「外用剤組成物」の対象から毛髪、口腔(粘膜を含む。)を除いた、皮膚を対象としたものをいう。
本発明の外用剤組成物は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%と、上記一般式(1)で表されるエステルと、滞留性向上剤及び薬物を含有し、水分量が25質量%以下である。
多価アルコールは、少なくともポリエチレングリコールを含む。
ポリエチレングリコールを含む多価アルコールは、組成物中、20〜90質量%含まれる。本発明の外用剤組成物は、水分量が25質量%以下であり、多価アルコールを主剤とした非含水系の組成物である。
多価アルコールは、組成物中、20〜90質量%であり、好ましくは30〜90質量%、 より好ましくは40〜90質量%である。該範囲であれば、薬物の組成物への溶解性が良好となるとともに、経皮吸収性が向上する。
水分量は、組成物中、25質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは5質量%以下、実質的には0.1質量%以上である。該範囲であれば、薬物の組成物への溶解性が良好となり、経皮吸収性も良好となる。
ポリエチレングリコールは、本発明において必須成分であり、薬物(特に水に難溶性薬物)の溶解性が高い成分である。
具体的には、(A)質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレン換算した値)200〜2000のポリエチレングリコールが好ましく用いられる。中でも、薬物の溶解性が高く、経皮吸収性も良好なことから、質量平均分子量200〜1500のポリエチレングリコールがより好ましく、質量平均分子量200〜1000のポリエチレングリコールがさらに好ましく、質量平均分子量200〜600のポリエチレングリコールが特に好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ヘキシレングリコールなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、などの三価アルコール;エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの四価アルコール;キシリトールなどの五価アルコール;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの六価アルコール;グルコース、マンノース、ショ糖、ソルビタン、トレハロース、アルキルグリコシドなどの糖類;ポリプロピレングリコール、ポリグリセリンなどの重合物、およびこれら多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物等が好ましく用いられる。中でも、ポリエチレングリコールとの相溶性が良好であり、薬物の経皮吸収性がより高まることから、2〜6価の多価アルコールがより好ましい。その中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコールがさらに好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの二価アルコールが特に好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールを除く多価アルコールとの混合割合は、質量比で1:9〜10:0が好ましく、1:9〜9:1がより好ましく、2:8〜8:2がさらに好ましい。該範囲であれば、薬物の溶解性が高く、薬物の経皮吸収性がより高まる。
本発明で用いるエステルは、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは0又は1の整数である。]
で表されるエステルである。該エステルを用いることにより、薬物の経皮吸収性、特に初期の経皮吸収性が向上する。
R1は、炭素数3〜36の炭化水素基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。炭素数は、薬物の経皮吸収性及びポリエチレングリコールを含む多価アルコールに対する溶解性が良好なことから、4〜20であることが好ましい。また、nが0のときは、炭素数は10〜36であることが好ましく、nが1のときは、炭素数は3〜20であることが好ましい。
R2は、炭素数1〜20、好ましくは1〜18の炭化水素基を示し、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。また、nが0のときは、炭素数は1〜18であることが好ましい。nが1のときは、炭素数は1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。
R3は、水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜8の炭化水素基を示し、該炭化水素基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。なお、R2とR3は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
nは、0又は1の整数である。前記式(1)は、nが0のときはモノエステルであり、nが1のときはジエステルである。
これらエステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステルの配合量は、組成物中、1〜50質量%が好ましく、3〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。該範囲であれば、薬物の経皮吸収性が良好となる。
本発明の外用剤組成物には、滞留性向上剤が用いられる。
滞留性向上剤は、組成物が塗布した部位から流れ落ちないようにするために、組成物に粘着性を付与するものである。これにより、塗布した部位での組成物の薬効を持続させることができる。
滞留性向上剤としては、多価アルコールに溶解するか、もしくは膨潤する化合物が用いられる。例えば、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸部の一部加水分解物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(好ましくはナトリウム塩)、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。中でも、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。なお、アルキルビニルエーテルにおけるアルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは炭素数1のメチル基である。
上記滞留性向上剤の質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレン換算した値)は、10000〜10000000であることが好ましく、50000〜5000000であることがより好ましい。
これら滞留性向上剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
滞留性向上剤の配合量は、組成物中、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。該範囲であれば、塗布した部位での組成物の滞留性が良好となり、薬効の持続性を高めることができる。
薬物としては、特に限定されず、例えばポリエチレングリコールに可溶なものが好ましく用いられる。具体的には、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク等の非ステロイド系抗炎症剤及びそのエステル誘導体;ジフェンヒドラミン等の抗ヒスタミン剤、塩酸イソプレナリン等の中枢神経作用薬、エストラジオール及びテストステロン等のホルモン剤;アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン等の鎮痛剤;リン酸ジソピラミド等の抗不整脈用剤、塩酸トラゾリン等の冠血管拡張剤、リドカイン等の局所麻酔剤、塩化スキサメトニウム等の筋弛緩剤、クロトリマゾール等の抗真菌剤、フルオロウラシル等の抗悪性腫瘍剤、塩酸タムスロシン等の排尿障害剤、ジアゼパム等の抗てんかん剤、メシル酸ブロモクリプチン等の抗パーキンソン病剤、フロセミド、クロニジン等の降圧剤、ニトログリセリン及び硝酸イソソルビド等の血管拡張剤、ニコチン等の禁煙補助剤、ツロブテール等の気管支拡張剤、フェノバルビタール、トリアゾラム等の催眠鎮静剤、フルフェナジン、テオリタジン等の精神安定剤;ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、オクトチアシン、リボフラビン酪酸エステル等のビタミン剤;プロスタグランジン類、スコポラミン、フェンタニール等が挙げられる。中でも、本発明の効果が特に顕著なことから水難溶性薬物が好ましく、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク等の非ステロイド系抗炎症剤;エストラジオール及びテストステロン等のホルモン剤、フロセミド、クロニジン等の降圧剤、ニトログリセリン及び硝酸イソソルビド等の血管拡張剤、ニコチン等の禁煙補助剤、ツロブテール等の気管支拡張剤、スコポラミン、フェンタニールがより好ましい。さらに好ましくは、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェンである。
なお、「水難溶性薬物」とは、難溶性の指標として、例えば日局の性状試験に準じて水に対する溶解性を示す時に、「極めて溶けにくい」又は「ほとんど溶けない」の用語が用いられる薬物のことをいう。
これら薬物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これら薬物は、特に消炎鎮痛や鎮痒など即効性・持続性が期待される医薬製剤において好ましく用いられる。
薬物の配合量は、それぞれの薬物における有効量を配合することができる。薬物の配合量としては、例えば、組成物中、0.05〜70質量%程度が好ましい。
その他の成分としては、通常用いられる清涼化剤、温感剤、色素、香料などが挙げられる。
製剤とした際の剤型としては、特に限定されず、液剤、軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤等が挙げられる。外用剤組成物の塗布量としては、用いる薬物や滞留性向上剤等の種類によるが、例えば0.01〜1g/cm2程度が好ましい。
本発明の貼付剤は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%と、前記一般式(1)で表されるエステルと、粘着剤及び薬物を含有し、水分量が25質量%以下の組成物を、支持体上に、層状に塗工等して得られるものである。該組成物としては、例えば粘着剤を配合した本発明の外用剤組成物を用いることができる。
組成物中に配合する多価アルコール、エステル及び薬物は、いずれも前記外用剤組成物に用いられるものと同様である。前記外用剤組成物と共通する構成については、説明を省略する。
粘着剤としては、特に限定されず、種々のものを用いることができる。中でも、組成物に粘着性を付与する効果が高いことから、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)等のエラストマーに、ロジンエステル、脂環族系樹脂、ポリテルペン樹脂等の粘着付与剤を配合したゴム系粘着剤;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(好ましくはナトリウム塩)、アクリル酸/メタクリル酸共重合体等のアクリル系粘着剤;ポリシロキサンの誘導体等のシリコン系粘着剤;アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸部の一部加水分解物等のビニルエーテル系粘着剤;アクリル酸エステル/酢酸ビニルコポリマー等の酢酸ビニル系粘着剤等が好ましく、アクリル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤がより好ましく用いられる。
また、ヒドロキシプロピルセルロースなどの上記粘着剤に含まれない滞留性向上剤を併用することができる。
具体的には、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸部の一部加水分解物が好ましく挙げられる。
メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体において、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのモル分率が、好ましくは40/60〜60/40であるものが、本発明に用いる粘着剤として好ましい。
また、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸部の一部加水分解物において、無水マレイン酸とマレイン酸とのモル分率が、好ましくは15/85〜85/15であり、より好ましくは15/85〜80/20であり、さらに好ましくは20/80〜70/30であるものが、本発明に用いる粘着剤として好ましい。
上記粘着剤に含まれる成分の質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレン換算した値)は、10000〜10000000であることが好ましく、100000〜5000000であることがより好ましい。
これら粘着剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着剤の配合量は、組成物中、1〜78質量%が好ましく、5〜75質量%がより好ましい。該範囲の下限値以上であれば、貼付剤の使用部位への密着性が充分に得られ、上限値以下であれば、貼付剤の使用部位からの剥離性が良好となる。
支持体への前記組成物の塗工量としては、用いる薬物や粘着剤等の種類によるが、例えば0.005〜0.2g/cm2程度が好ましい。
ライナー(膏面被覆物)は、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、薬添規 ポリエチレンテレフタレートセパレータ、剥離紙(離型紙)等が好ましく用いられる。
貼付剤における粘着力は、粘着剤の選択や配合量の制御などにより調整することができる。
本発明の薬物の経皮吸収組成物は、ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%と、前記一般式(1)で表されるエステルと、滞留性向上剤及び/又は粘着剤と、薬物を含有し、水分量が25質量%以下である。
組成物中に配合する多価アルコール、エステル、滞留性向上剤及び/又は粘着剤、及び薬物は、いずれも前記外用剤組成物及び貼付剤に用いられるものと同様である。
滞留性向上剤及び/又は粘着剤は、滞留性向上剤と粘着剤の両方を用いてもよく、滞留性向上剤と粘着剤のいずれか一方だけを用いてもよい。
滞留性向上剤と粘着剤の合計の配合量は、組成物中、1〜78質量%が好ましく、5〜75質量%がより好ましい。該範囲であれば、前記の滞留性向上剤と粘着剤それぞれの効果が充分に得られる。
前記外用剤組成物及び貼付剤と共通する構成については、説明を省略する。製造方法については、前記外用剤組成物と同様である。
本発明で得られる効果には、主に特定のエステルの作用が影響しているものと考えられる。
本発明の多価アルコールを主剤とした非含水系においては、薬物は、主剤である多価アルコール(本発明においてポリエチレングリコール)により充分に溶解される。
しかしながら、特定のエステルを含有しない場合、薬物の経皮吸収性は低いものとなる。
これは、多価アルコールによる薬物の溶解性が高すぎるために、多価アルコールに取り込まれた水難溶性薬物が、多価アルコールから放出されず、薬物が皮膚側へ移行できないことによるものと考えられる。
一方、特定のエステルを含有する場合、薬物の経皮吸収性、好ましくは初期の経皮吸収性が良好なものとなる。これは、特定のエステルを含有することにより、多価アルコールと水難溶性薬物との親和性が弱まり、多価アルコールに取り込まれた薬物が、多価アルコールから放出されるようになり、薬物が皮膚側へ移行できるようになったものと考えられる。
さらに、多価アルコールに対する溶解性も良好なことから、多価アルコールに取り込まれた薬物を効率的に皮膚側へ移行させることができると推測される。
また、本発明によれば、ポリエチレングリコールを含む多価アルコールにより薬物の溶解性が良好であり、水難溶性薬物、分子量が大きい薬物等であっても充分に溶解することができる。したがって、組成物中の薬物の配合量を多くすることができる。
また、一般に外用剤として経皮吸収し難い薬物に対して、本発明は有用である。
なお、本発明は、例えば薬物含有液体をゲル体から染み出させたり、あるいは発熱性を有する成分を利用して温感を付与する等の従来の製剤とは異なり、使用性が良好であり、種々の製剤への適用が可能である。
評価試料として、表1〜5に示す組成からなる貼付剤と液剤(外用剤組成物及び薬物の経皮吸収組成物の代表例)をそれぞれ調製した。但し、実施例4、6、7、12、13、15、18、24、26、29はいずれも参考例である。
なお、表中の「ポリエチレングリコール300」とは、質量平均分子量が300のポリエチレングリコールをいう。同様に、「ポリエチレングリコール400」とは、質量平均分子量が400のポリエチレングリコールをいう。
ポリエチレングリコールを含む多価アルコールに薬物を溶解した後、エステルを混合し、滞留性向上剤、粘着剤を順に分散混合して各外用剤組成物を調製した。
支持体には、ポリウレタンフィルム/ニット積層支持体を用い、支持体への塗工量が0.7(g/70cm2)となるように、上記外用剤組成物を塗工し、加熱処理した。次いで、縦×横の長さ7cm×10cmの大きさに裁断し、貼付剤を得た。
実施例1と同様にして、実施例2〜18、比較例1〜2の貼付剤をそれぞれ調製した。
なお、貼付剤の調製に用いた粘着剤の詳細について下記に示す。
[ゴム系粘着剤]
ゴム系粘着剤1:SIS(商品名「クレイトンD−1107」、クレイトンポリマージャパン社製)45部、脂環族炭化水素(商品名「アルコンP−100」、荒川化学社製)55部
ゴム系粘着剤2:SIS(商品名「クレイトンD−1107」、クレイトンポリマージャパン社製)40部、SIS(商品名「クレイトンD−1117P」、同上)25部、ロジンエステル(商品名「パインクリスタルKE−311」、荒川化学社製)35部
ゴム系粘着剤3:SIS(商品名「クレイトンD−1107」、クレイトンポリマージャパン社製)30部、ポリブテン(商品名「HV−300」、新日本石油化学社製)35部、脂環族炭化水素(商品名「アルコンP−100」、荒川化学社製)35部
アクリル系粘着剤1:アクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸2−エチルヘキシル/メタクリル酸ドデシル=10/80/10(部)
アクリル系粘着剤2:アクリル酸エチル/アクリル酸オクチル/n−ビニルピロリドン=50/40/10(部)
アクリル系粘着剤3:アクリル酸/アクリル酸オクチル=7/93(部)
((1)〜(3)共通 重合開始剤:過酸化ラウロイル 0.10部、重合溶媒:酢酸エチル)
アクリル系粘着剤4:アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン(商品名「ニカゾールTS620」、日本カーバイド社製)100部
エステルとポリエチレングリコールを含む多価アルコールとを混合した溶液に、滞留性向上剤を配合して各液剤を調製した。
実施例21と同様にして、実施例22〜31、比較例21の液剤をそれぞれ調製した。
調製した貼付剤と液剤を用いて、
a)エステルの有無、
b)ポリエチレングリコール(PEG)とPEGを除く多価アルコールとの混合割合、及びエステルの配合量、
c)エステルの種類、
d)PEGを除く多価アルコールの種類、
e)粘着剤の種類
を変えて、下記に説明する皮膚透過試験により薬物皮膚透過量をそれぞれ評価した。
なお、表2と表3中の「PEG/多価アルコール」は、PEGと、PEGを除く多価アルコールとの混合割合(質量比)を表す。
Hos:HR−1雌性へアレスマウス(7週齢)の背部から採取した皮膚を、37℃のリン酸バッファ(pH7.4等張緩衝液)を循環させたフランツ型拡散セル(適用面積4.91cm2)に装着した。
該装着した皮膚上に、貼付剤(実施例1等)を積層し、又は液剤(実施例21等)を適量(500μL)塗布し、単位時間毎にセル内の試料を採取した。
採取した試料は、高速液体クロマトグラフィー分析に供し、2時間後の皮膚を透過した各薬物の量(薬物皮膚透過量、μg/cm2)を求めた。結果を表1〜5に示した。
なお、「2時間後」の薬物皮膚透過量が多いことは、初期の経皮吸収性に優れることを表す。本評価系では、2時間後の薬物皮膚透過量が0.5μg/cm2以上であれば初期の経皮吸収性に優れる。
一方、特定のエステルを含有しない比較例は、いずれも2時間後の薬物皮膚透過量が少なく、初期の経皮吸収性が劣っていた。
Claims (8)
- ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは1である。]
で表されるエステル、滞留性向上剤及び薬物を含有し、
水分量が25質量%以下であり、
前記多価アルコールは、ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコールを除く多価アルコールで表される質量比が1:9〜8:2であり、かつ、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールとを含むことを特徴とする外用剤組成物。 - 前記多価アルコール:前記エステルで表される質量比が1:9〜9:1である請求項1記載の外用剤組成物。
- ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは1である。]
で表されるエステル、粘着剤及び薬物を含有し、
水分量が25質量%以下であり、
前記多価アルコールは、ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコールを除く多価アルコールで表される質量比が1:9〜8:2であり、かつ、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールとを含むことを特徴とする貼付剤。 - 前記多価アルコール:前記エステルで表される質量比が1:9〜9:1である請求項3記載の貼付剤。
- 前記粘着剤が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤及び酢酸ビニル系粘着剤から選ばれる少なくとも1種である請求項3又は4記載の貼付剤。
- 前記粘着剤に含まれる成分がカルボキシ基を有する請求項5記載の貼付剤。
- ポリエチレングリコールを含む多価アルコール20〜90質量%、下記一般式(1)
(R2OOC)−R1−(COOR3)n ・・・(1)
[式中、R1は炭素数3〜36の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、nは1である。]
で表されるエステル、滞留性向上剤及び/又は粘着剤、及び薬物を含有し、
水分量が25質量%以下であり、
前記多価アルコールは、ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコールを除く多価アルコールで表される質量比が1:9〜8:2であり、かつ、(A)質量平均分子量200〜2000のポリエチレングリコールと、(B)(A)成分を除く2〜6価の多価アルコールとを含むことを特徴とする薬物の経皮吸収組成物。 - 前記多価アルコール:前記エステルで表される質量比が1:9〜9:1である請求項7記載の薬物の経皮吸収組成物。
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