JP4919479B2 - 高齢者用靴 - Google Patents

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Description

本発明は、歩行の際に用いる高齢者用靴に関するものである。
人が靴を履いて歩行をする際は、上げた足が踵側で着地した後、爪先側に向かって靴の外足側(小指側)から内足側(親指側)の順に着地し、体重(重心)を移動する所謂「ローリング動作」をすることが知られている。
このため、このローリング動作(特許文献1では「あおり動作」と呼んでいる)を阻害させないための提案がなされている(例えば、特許文献1)。具体的には、足指の付け根部分やその近傍の靴底を屈曲し易くするための凹部等を形成している。
特開2004−254902号公報(図6等)
しかし、上述のローリング動作は、上げた足が踵で着地した後、爪先側へ体重を移動して、蹴りだすまでの足裏(靴底部)の全体に関する動作であるため、特許文献1のように部分的に凹部等を形成するだけでは不十分であり、歩行に際し行われるローリング動作を依然として阻害するという問題があった。
一方、特に、安定した歩行が困難な高齢者や幼児等については、歩行に際し行われる「ローリング動作」が一般人に比べ行い難いという事情があるため、このような高齢者等の要介護者が、従来の靴を用いて歩行をすると、一般人以上にローリング動作による歩行をし難いという問題があった。
そこで、本発明は、歩行に際し行われるローリング動作を妨げないのみならず、さらに進んで、その動作を促すことができる高齢者用靴を提供することを目的とする。
前記課題は、請求項1の発明によれば、使用者が歩行に際し接地する靴底面を有する靴底部と、前記靴底部から立ち上がるように、且つ使用者の足を包むように形成されると共に、使用者の足を挿入するための履き口部を有するアッパー本体部と、を備える高齢者用靴であって、前記靴底部は、使用者の足の踵領域が配置される踵部と、前記踵部に連接され、使用者の足の中足領域が配置されるアーチ部と、前記アーチ部に連接され、使用者の足の踏みつけ領域が配置される踏み付け部と、前記踏み付け部に連接され、使用者の足の爪先領域を配置する爪先部と、を有し、前記靴底面には、少なくとも、前記アーチ部、前記踏み付け部及び前記爪先部を区画するための区画部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、少なくとも、前記踵部における後端部には踵側滑り止め部が形成され、前記踏み付け部には、踏み付け部の屈曲を促進するための踏み付け屈曲部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、前記踏み付け部の少なくとも一部には、踏み付け滑り止め部が形成され、前記靴底面には、その長手方向に沿って前記踵部から前記爪先部にかけて連続して、ローリング溝部が形成され、前記ローリング溝部は、前記踵部から前記アーチ部の領域では、前記靴底面の短手方向の外足側に配置され、前記踏み付け部では、前記アーチ部における前記ローリング溝部が、前記短手方向の前記外足側から内足側に向かって変位するように延伸され、前記爪先部では、前記ローリング溝部が前記短手方向の前記内足側に配置され、前記ローリング溝部は、前記踵部の最後端では前記靴底面の略中央部に形成されると共に、前記踵部の前記アーチ部寄りでは、前記外足側に変位して配置され、前記アーチ部の上層には、前記アーチ部の剛性を高めるためのアーチ剛性部が形成され、前記アーチ剛性部の上層には、前記アーチ部及び前記踵部の剛性を高めるためのボード部が形成され、前記踵部の前記内足側には、前記踵部の剛性を高めるための内足踵剛性部が形成され、前記踵部に相当する前記アッパー本体部に、剛性の高いアッパー剛性層が配置され、高齢者の足の前記踵部における重心を前記外足側に移動させるために、前記アッパー剛性層の前記内足側が、前記外足側より長く形成されていることを特徴とする高齢者用靴により解決される。
前記構成によれば、靴底面には、少なくとも、アーチ部、踏み付け部及び爪先部を区画するための区画部が靴底面の長手方向に交差する方向に形成されている。また、踏み付け部には、踏み付け部の屈曲を促進するための踏み付け屈曲部が靴底面の長手方向に交差する方向に形成されている。
このため、使用者の足のローリング動作に対応して長手方向が屈曲するよう変形等する靴となり、かかるローリング動作を妨げず、むしろ、かかる動作を促進する構成となっている。したがって、使用者の歩行時における自然な足の運びを可能としている。
また、前記構成によれば、少なくとも、踵部における後端部には踵側滑り止め部が形成され、踏み付け部の少なくとも一部には、踏み付け滑り止め部が形成されている。
このため、使用者がローリング動作を行う歩行時に特にグリップを必要とする、着地時に接地する踵部分に踵側滑り止め部が、踏み出し時に力がかかる踏み付け部分に踏み付け滑り止め部が形成されているので、安定してローリング動作を行い易い靴となっている。
また、前記構成によれば、靴底面には、その長手方向に沿って踵部から爪先部にかけて連続して、ローリング溝部が形成され、ローリング溝部は、踵部からアーチ部の領域では、靴底面の短手方向の外足側に配置され、踏み付け部では、アーチ部におけるローリング溝部が、短手方向の外足側から内足側に向かって変位するように延伸され、爪先部では、ローリング溝部が短手方向の内足側に配置されている。
このため、靴底面には、実際のローリング動作における使用者の重心の移動に沿って、ローリング溝部が形成されているので、連続した動きとして使用者の適正な重心の移動を促し、適正なローリング動作を促す構成となっている。
前記構成によれば、ローリング溝部は、踵部の最後端では靴底面の略中央部に形成されている。一般人が使用する靴では、ローリング動作の開始は、踵部の外足側となっているが、高齢者等のように足があまり上がらず、足の運びがゆっくりとなる使用者の場合は、ローリング動作は踵部の中央部から接地することとなる。
このように、前記構成では、高齢者等の足の運びが衰え始めた使用者のローリング動作を適正に促す構成となっている。
前記構成によれば、アーチ部には、アーチ部の剛性を高めるアーチ剛性部が形成されている。使用者がローリング動作により重心の移動をして歩行する際、この重心移動や足の屈曲等により、靴に対してねじれ方向の力が加わることになる。このような力が加わると歩行に「ぶれ」が生じ、円滑な歩行動作を妨げることとなる。この「ぶれ」は特に、接地しないアーチ部で発生し易い。
そこで、このアーチ部にアーチ剛性部を配置し、かかる「ぶれ」の発生を未然に防ぎ、使用者のローリング動作をし易くする構成となっている。
また、特に、アーチ剛性部があることで、足を屈曲させ、踏み付け部に力を加えて踏み出すとき、アーチ剛性部の復元力によって、この足の踏み出す動作を補助する働きをすることになる。したがって、踏み出し動作をし易い靴ともなっている。
前記構成によれば、踵部の内足側には、踵部の剛性を高める踵剛性部が形成されている。使用者の歩行動作であるローリング動作では、踵部が接地した後に、外足側に重心が移動されることが望ましい。そこで、前記構成のように踵部の内足側の剛性を外足側より高くすることで、使用者の歩行における重心の外足側への移動を促す構成となっている。
前記構成によれば、アッパー本体部の踵部側にアッパー剛性層が設けられ、踵を確実に保持できる構成とされており、しかも、アッパー剛性層の内足側が、外足側より長く形成されている。使用者の歩行動作であるローリング動作では、踵部では、接地した後に外足側に重心が移動されることが望ましい。そこで、前記構成のようにアッパー本体部の踵部側におけるアッパー剛性層の内足側が、外足側より長く形成されることで、アッパー本体部の踵部の内足側を、外足側より長く保持することができる。これにより、使用者の歩行における重心の外足側への移動を促す構成となっている。
本発明は、歩行に際し行われるローリング動作を妨げないのみならず、さらに進んで、その動作を促すことができる高齢者用靴を提供することができるという利点がある。
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の靴の実施の形態に係る例えば、高齢者用靴10を示す概略断面図である。
高齢者用靴10の構成等について説明する前に、このような高齢者用靴10の必要性について説明する。
通常の一般成人の場合、二足歩行をするために背面筋肉が発達しているため、歩行に際し、前傾姿勢となることがなく、足を適正に上げながら歩行することができる。しかし、高齢者等は、その加齢により背筋を中心とする背面筋肉が衰えて、体が前傾姿勢となり、膝の屈曲も行い難い状態となる。このため、足を上げて歩行するという行為が困難となり、対応して歩幅が狭くなる。
特に、歩行する際の足の「踵から着地し、順次、爪先側に向けて足の力(重心や体重)を移行させて、最後、親指で蹴り出す」という歩行のローリング動作を行い難くなる。
このローリング動作が適正にできないと、その結果、歩行が不安定となり、歩行動作自体に悪影響が出ることになる。
そこで、本実施の形態の高齢者用靴10は、加齢によりローリング動作が行い難くなっている高齢者に対して、ローリング動作を行い易くさせる構成となっている。
以下、具体的な構成について説明する。先ず、図1に示すように、高齢者用靴10は、使用者が歩行に際し接地する靴底部20と、使用者である例えば、高齢者等がその足を挿入配置するアッパー部30と、を有している。
このアッパー部30には、高齢者の足を挿入するための開口を有する履き口部30が備わっている。また、アッパー部30には、挿入された足を甲側から押さえ、足を高齢者用靴10に固定させる舌部32とベルト部33が形成されている。
具体的には、足の甲側に配置される舌部32をベルト部33で固定する構成となっている。このベルト部33は、面ファスナー等により着脱可能な構成となっており、高齢者が高齢者用靴10を履く際や、脱ぐ際には、舌部32を固定せず、非固定状態とすることができる構成となっている。
また、図1に示すように、舌部32とアッパー部本体35とは、糸等で縫合され、縫合部が脆弱部34となっている。このため、ベルト部33を外し、舌部32を非固定状態とすると、舌部33を図1の矢印R1方向に揺動させることができ、この舌部33の揺動で、履き口部31の開口を大きくすることができる構成となっている。
したがって、高齢者にとって履きやすく、且つ脱ぎやすい高齢者用靴10となっている。
つまり、アッパー部30は、靴底部20から立ち上がるように、かつ使用者(高齢者)の足を包むように形成されると共に、使用者の足を挿入するための履き口部31を有するアッパー本体部の一例となっているが、その他、各種構成を採用してもよい。
また、アッパー部30の内部の靴底部20側には、中敷きであるインソール40が配置されている。
このインソール40は、図1に示すように、3層からなり、その表面(高齢者の足側)は第1層41で、低反発クッションからなっている。このため、その上に足をおいた高齢者は、足とインソール40との密着感が高まり、いわゆるフィット感が高まり、履き心地が良くなる構成となっている。また、第1層41の図1の下側には、第2層42が形成され、この第2層42は、クッション層となり、歩行に際し、高齢者の足に加わる衝撃を吸収する構成となっている。
この第2層42の下には、第3層43が配置され、この第3層43は、後述する踵部21からアーチ部22にかけて配置され、比較的硬い素材から成っており、また、踵部21からアーチ部22に亘って、外周が起立したカップ状の保持部43aとされている。このため、インソール40は、高齢者の足の特に踵側をしっかり保持することができる構成となっている。
このため、第3層43は、高齢者の足の踵側を保持する構成ともなっている。したがって、高齢者用靴10内に挿入された足が安定的に靴内に保持される構成となっている。
続いて、図1の靴底部20について説明する。図2は、図1の靴底部20の概略底面図である。靴底部20についての説明の前提として、図3を用いて高齢者の足の部位とその名称について説明する。図3は、人体の足の概略説明図である。
図3の内足側(図において左側)に示すように、足の先端部分が足指等の部分であり、爪先領域である。この足指等の付け根部分等が図3の踏み付け領域である。また、所謂、土踏まず等を含む部分が中足領域であり、踵の周辺が踵領域となっている。
この前提で、靴底部20の全体の概略を説明する。図1及び図2に示すように、靴底部20の踵側(図1の右側)には、図3の踵領域に対応する踵部21が形成されている。この踵部21に連接して爪先側(図1の左側)には、図3の中足領域に対応するアーチ部22が形成されている。このアーチ部22に連接した爪先側には、足指の根本付近等であって歩行に際し踏み付けを行う部分である図3の踏み付け領域に対応する踏み付け部23が形成されている。さらに、踏み付け部23の爪先側には、図3の爪先領域に対応する爪先部24が連接されている。
このように、踵部21は、使用者(高齢者)の足の踵領域が配置される靴底部の踵部の一例であり、アーチ部23は、踵部21に連接され、使用者の足の中足領域が配置されるアーチ部の一例であり、踏み付け部23は、アーチ部23に連接され、使用者の足の踏み付け領域が配置される踏み付け部の一例である。さらに、爪先部24は、踏み付け部23に連接され、使用者の足の爪先領域を配置する爪先部の一例となっている。
ところで、図1及び図2の踵部21は、歩行に際し、高齢者が先ず最初に着地する部分であるため、この踵部21を含む靴底部20は、剛性のある素材により形成され、着地に際する衝撃に対してもアッパー部30内の足が「ぶれ」ることがなく、確実に踵を保持できる構成となっている。
また、図1の踵部21の右端であり、最初に着地する部分である踵コーナー21aは、角ではなく、丸くなるように曲面状に形成されている。このため、歩行の着地が、よりスムーズとなると共に、確実に接地できるような構成となっている。
また、図2に示すように、靴底部20の靴底面には、踵部21、アーチ部22、踏み付け部23及び爪先部24を区画するための溝である3本の区画溝50a、50b、50cが靴底面の長手方向に交差する短手方向にそれぞれ形成されている。
また、図2に示すように、踵部21には、踵部の屈曲を促進するため、靴底面の長手方向に交差する方向に踵屈曲溝21bが形成されている。
この踵屈曲溝21bは、アーチ部22と区画するための区画溝50cと共に、僅かな変形を許容することで、踵部21が確実に接地するように、なじませる程度の変形を行うものであり、踵コーナー21aと同様に確実に接地するための溝であって、例えば、アーチ部22との区画溝50cは設けないで構成することもできる。
さらに、図2の踏み付け部23には、踏み付け部23の屈曲を促進するための2本の踏み付け屈曲溝23a、23b(踏み付け屈曲部の一例)が靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成されており、アーチ部22と踏み付け部23の区画溝50bや、踏み付け部23と爪先部24の区画溝50aと協同して、踏み付け部23近傍で積極的に屈曲を促す溝として構成されている。なお、これらの各溝部23a,23b,50a,50は、内足側から外足側に向かって間隔が広くなる略放射状に配置されている。
このように、歩行に際し、着地の衝撃に耐え得る剛性を有する材質からなる靴底部20であっても、図2に示すように、踵部21側の区画溝50cや踵屈曲溝21bでは、踵部21を確実に接地できる程度に変形できる構成とし、踏み付け部23側の区画溝50a,50bや踏み付け屈曲溝23a,23bでは、積極的な屈曲を促す構成とするように、これらを靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成することで、足に対応した位置で適切な屈曲をし易い構成となっている。
したがって、図1の高齢者用靴10を履いた高齢者が、上述の歩行のローリング動作に際して足を屈曲させるとき、この踏み付け部23側の区画溝50a等で靴底部20がより屈曲、変形する構成となっており、踵部21側の踵屈曲溝21b等で確実に踵部21が接する構成とされているため、高齢者の足の屈曲やローリング動作を妨げず、むしろ、これらの動作を促進させる構成となっている。したがって、高齢者の歩行時における自然な足の運びを可能にしている。
また、図1及び図2に示すように、靴底部20の踵部21の後端部側には、靴底部20の材質よりも摩擦抵抗が大きい踵側滑り止め部21cが形成され、その表面には滑り止め用の凹凸が形成されている。
また、図2に示すように、踵部21の表面のうち、踵側滑り止め部21cが形成されない部分には、踵側滑り止め用凹凸部21dが例えば、円形で3個、形成されている。
したがって、高齢者が歩行に際し、踵部21で着地するとき、摩擦力が働き、高齢者用靴10が滑ることがなく、グリップ力が働き、歩き易い構成となっている。
また、図1及び図2に示すように、靴底部20の踏み付け部23の表面には、靴底部20の材質よりも摩擦抵抗が大きい踏み付け滑り止め部23cが、長手方向に沿って2列形成され、その表面には滑り止め用の凹凸も形成されている。
この踏み付け滑り止め部23cは、区画溝50aと踏み付け屈曲溝23a,23bの間の区間にそれぞれ配置されており、図3に示す拇趾丘Sに対応した位置に配置されている。
また、図2の踏み付け部23の踏み付け滑り止め部23cの近傍には、踏み付け滑り止め用凹凸部23dが例えば、円形で4個ずつ形成されている。
したがって、高齢者が歩行に際し行う、上述のローリング動作のうち、「親指で蹴り出す」等の動作に際し、接地していて力がかかる踏み付け部23では、蹴り出すためグリップ力が必要となる。この点、本実施の形態では、踏み付け部23に踏み付け滑り止め部23c等が配置されているため、充分なグリップ力が働き、高齢者がローリング動作による踏み出しを行い易くなる。
これらの各滑り止め部21c,23cは、靴底部20よりも弾性を有する材料が、靴底部20の対応する窪みに対して、一体成形または接着等によって一体に形成されている。
また、図1及び図2に示すように、爪先部24には、爪先側滑り止め用凹凸部24aが筋状の溝として形成されている。したがって、上述の踏み付け部23に加えて、この爪先側滑り止め用凹凸部24aによって、よりグリップ力が発揮され、歩行し易い構成となっている。
なお、図1に示すように爪先部24の先端側が高く、後端側に向かって徐々に低くなるようトゥスプリングがなされた構成とされており、足が上がりづらい高齢者であっても躓きづらい構成とされている。
また、本実施の形態では、図2に示すように、靴底部20の靴底面には、その長手方向に沿って踵部21から爪先部24にかけて連続してローリング溝25が形成されている。すなわち、ローリング溝25は、図2の踵部21及びアーチ部22では、靴底面の短手方向の外足側に配置され、その後、踏み付け部23では、外足側から内足側に曲がって配置されて(外足側から内足側に変位して延伸している一例)、爪先部24では、内足側に配置されている。
より詳細にローリング溝25の位置を説明すると、ローリング溝25は、踵部21における後端部では略中央領域に位置し、踵部21の先端側になるに従って外足側に変位して、アーチ部22ではそのまま外足側に位置し、踏み付け部23では先端側になるに従って、外足側から内足側に曲線状に曲がって変位して、さらに爪先部24では先端側になるに従って、略中央領域に変位するよう配置されている。
このような、ローリング溝25の配置は、高齢者が歩行に際し、重心の移動を行うべき適切な位置とも一致する。
ところで、図2に示すように、ローリング溝25で、例えば踵部21を分断すると、図2の分断された踵部21の外足側と内足側(図における上側と下側)では、その面積が相違し、内足側の方が大きくなる。
このような状況で、高齢者が歩行のために重心を踵部21にかけると、面積の小さい方がより変形しやすくなり、重心はローリング溝25の外足側により移動し易くなり、重心はこのローリング溝25にほぼ沿ってかかるようになる。
これは、図2の踏み付け部23や爪先部24も同様であり、踏み付け部23で外足側から内足側に徐々に重心が移動し、踏み付け部23先端側や爪先部24では、踏み出すために最も力のかかる親指側(内足側)に重心が移動するように促されることになる。
このように靴底面にローリング溝25を形成することで、高齢者に歩行において適正な連続した重心移動を促し、適正なローリング動作と適正な歩行を促す構成となっている。
また、本実施の形態では、ローリング溝25のうち、踵部21の最後端部分であるローリング溝最後端部25aは、図2に示すように、靴底面の略中央部に配置されていると共に、踵部21のアーチ部22側寄り(図2の左側)では、ローリング溝25は、外足側に変位している。
高齢者ではない、一般人では、歩行におけるローリング動作の開始であり、踵部の最後端では、外足側となるのが通常である。
しかし、高齢者の場合は、足の運びが一般人より緩慢になるため、ローリング動作の開始点は、踵部21の最後端の中央部とした方が安定する。そこで、本実施の形態では、図2に示すように、踵部21の最後端の中央部にローリング溝後端部25aを形成した。
したがって、高齢者用靴10は、高齢者にとって、より好ましいローリング動作を促し易い構成となっている。
また、図1に示すように靴底部20のアーチ部22の上層には、アーチ部22の剛性を高めるためのアーチ剛性部22aが配置されている。また、このアーチ剛性部22aの上には、アーチ部及び踵部21の剛性を高めるためのボード部26が形成されている。
図4は、図1のアーチ剛性部22a及びボード部26等を示す概略図である。
図4に示すように、踵部21からアーチ部22に亘っては、ボード部26で、その剛性が高められ、変形しづらい構成とされ、高齢者の足を確実に保持する構成となっている。さらに、アーチ部22は、このボード部26の他に、アーチ剛性部22aが配置されているため、さらに剛性が高くなり、変形しづらい構成とされている。
この、ボード26や後述するカウンター部28により、踵を安定的に保持できる構成とすることで、まっすぐに立って、ぐらつかずに安定した着地を可能としている。
そして、高齢者等の安定した歩行が困難な使用者にとって、歩行におけるローリング動作で重心移動をし、これと共に足を屈曲させていくことで、アーチ部22に対して、ねじれ方向の力が加わることがある。このような力がアーチ部22加わり、アーチ部22が「ぶれ」ると、歩行が「ぶれ」て、円滑な歩行動作を妨げることになる。特に、歩行時に接地する面積が小さい、アーチ部22では、「ぶれ」が生じ易い構成となっている。
そこで、本実施の形態では、アーチ部22にアーチ剛性部22aを配置することで、この「ぶれ」の発生を未然に防ぎ、アーチ部22での変形を必要最低限に抑え、高齢者に適切なローリング動作をし易い構成としている。つまり、アーチ部22が中折れせず、高齢者は足の運びを真っ直ぐにすることが容易となる。
また、アーチ部22に、アーチ剛性部22aを設けたことで、歩行に際し、足を屈曲させ蹴り出すとき、僅かに屈曲したアーチ部22が復元力を発揮するため、足の蹴り出しの動作を補助し、促す機能も発揮する。したがって、蹴り出し(踏みだし)易く、歩行しやすい高齢者用靴10となっている。
また、本実施の形態では、図4に示すように、踵部21の内足側20aには、踵部21の剛性を高めるための内足踵剛性部27(踵剛性部の一例)が配置されている。
また、図1及び図4に示すようにアッパー部30の踵部21には、踵部21の剛性を高めるカウンター部28(アッパー剛性部の一例)が形成され、このカウンター部28は、図4に示すように内足側20aが外足側20bより長く形成されている。
つまり、高齢者が行うローリング動作は図2に示すように、踵部21では、接地後にその重心が外足側20bに移動していくことが好ましい。しかし、特に高齢者の場合、ローリング動作の開始時であり、着地時である踵部21では、その重心の移動が内足側20aに誤って移動することが多い。
そこで、本実施の形態では、踵部21の内足側20aに剛性の高い内足踵剛性部27を配置し、さらに、踵部21に相当するアッパー部30に剛性の高いカウンター部28を配置し、そのカウンター部28を内足側20aに長く形成している。このように構成することで、ローリング溝25の配置とあいまって、高齢者の足の踵部21における重心を剛性の低い外足側20bに移動させやすい構成となっている。
したがって、高齢者が図2のローリング溝25に沿った重心の移動をし易い高齢者用靴10となる。
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。また、本実施の形態では、高齢者用靴10を例に説明したが、これに限らず、例えば、幼児用靴等の歩行が不安定な使用者用の靴に適用しても構わない。また、踏み付け屈曲溝23a,23bや区画溝50a,50b等の各溝部は、屈曲を促すための脆弱部として機能するものであればよく、各溝部に柔軟な材料を配置して変形しやすい構成としてもよい。
本発明の靴の実施の形態に係る例えば、高齢者用靴を示す概略断面図である。 図1の靴底部の概略底面図である。 人体の足の概略説明図である。 図1のアーチ剛性部及びボード部等を示す概略図である。
符号の説明
10・・・高齢者用靴、20・・・靴底部、21・・・踵部、21c・・・踵側滑り止め部、22・・・アーチ部、23・・・踏み付け部、23a・・・踏み付け屈曲溝、23c・・・踏み付け滑り止め部、24・・・爪先部、25・・・ローリング溝、50a乃至50c・・・区画溝

Claims (1)

  1. 使用者が歩行に際し接地する靴底面を有する靴底部と、
    前記靴底部から立ち上がるように、且つ使用者の足を包むように形成されると共に、使用者の足を挿入するための履き口部を有するアッパー本体部と、を備える高齢者用靴であって、
    前記靴底部は、使用者の足の踵領域が配置される踵部と、
    前記踵部に連接され、使用者の足の中足領域が配置されるアーチ部と、
    前記アーチ部に連接され、使用者の足の踏みつけ領域が配置される踏み付け部と、
    前記踏み付け部に連接され、使用者の足の爪先領域を配置する爪先部と、を有し、
    前記靴底面には、少なくとも、前記アーチ部、前記踏み付け部及び前記爪先部を区画するための区画部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、
    少なくとも、前記踵部における後端部には踵側滑り止め部が形成され、
    前記踏み付け部には、踏み付け部の屈曲を促進するための踏み付け屈曲部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、
    前記踏み付け部の少なくとも一部には、踏み付け滑り止め部が形成され、
    前記靴底面には、その長手方向に沿って前記踵部から前記爪先部にかけて連続して、ローリング溝部が形成され、
    前記ローリング溝部は、前記踵部から前記アーチ部の領域では、前記靴底面の短手方向の外足側に配置され、
    前記踏み付け部では、前記アーチ部における前記ローリング溝部が、前記短手方向の前記外足側から内足側に向かって変位するように延伸され、
    前記爪先部では、前記ローリング溝部が前記短手方向の前記内足側に配置され
    前記ローリング溝部は、前記踵部の最後端では前記靴底面の略中央部に形成されると共に、前記踵部の前記アーチ部寄りでは、前記外足側に変位して配置され、
    前記アーチ部の上層には、前記アーチ部の剛性を高めるためのアーチ剛性部が形成され、
    前記アーチ剛性部の上層には、前記アーチ部及び前記踵部の剛性を高めるためのボード部が形成され、
    前記踵部の前記内足側には、前記踵部の剛性を高めるための内足踵剛性部が形成され、
    前記踵部に相当する前記アッパー本体部に、剛性の高いアッパー剛性層が配置され、高齢者の足の前記踵部における重心を前記外足側に移動させるために、前記アッパー剛性層の前記内足側が、前記外足側より長く形成されていることを特徴とする高齢者用靴。
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