JP4919479B2 - 高齢者用靴 - Google Patents
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Description
このため、このローリング動作(特許文献1では「あおり動作」と呼んでいる)を阻害させないための提案がなされている(例えば、特許文献1)。具体的には、足指の付け根部分やその近傍の靴底を屈曲し易くするための凹部等を形成している。
一方、特に、安定した歩行が困難な高齢者や幼児等については、歩行に際し行われる「ローリング動作」が一般人に比べ行い難いという事情があるため、このような高齢者等の要介護者が、従来の靴を用いて歩行をすると、一般人以上にローリング動作による歩行をし難いという問題があった。
このため、使用者の足のローリング動作に対応して長手方向が屈曲するよう変形等する靴となり、かかるローリング動作を妨げず、むしろ、かかる動作を促進する構成となっている。したがって、使用者の歩行時における自然な足の運びを可能としている。
このため、使用者がローリング動作を行う歩行時に特にグリップを必要とする、着地時に接地する踵部分に踵側滑り止め部が、踏み出し時に力がかかる踏み付け部分に踏み付け滑り止め部が形成されているので、安定してローリング動作を行い易い靴となっている。
このため、靴底面には、実際のローリング動作における使用者の重心の移動に沿って、ローリング溝部が形成されているので、連続した動きとして使用者の適正な重心の移動を促し、適正なローリング動作を促す構成となっている。
このように、前記構成では、高齢者等の足の運びが衰え始めた使用者のローリング動作を適正に促す構成となっている。
そこで、このアーチ部にアーチ剛性部を配置し、かかる「ぶれ」の発生を未然に防ぎ、使用者のローリング動作をし易くする構成となっている。
また、特に、アーチ剛性部があることで、足を屈曲させ、踏み付け部に力を加えて踏み出すとき、アーチ剛性部の復元力によって、この足の踏み出す動作を補助する働きをすることになる。したがって、踏み出し動作をし易い靴ともなっている。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
高齢者用靴10の構成等について説明する前に、このような高齢者用靴10の必要性について説明する。
通常の一般成人の場合、二足歩行をするために背面筋肉が発達しているため、歩行に際し、前傾姿勢となることがなく、足を適正に上げながら歩行することができる。しかし、高齢者等は、その加齢により背筋を中心とする背面筋肉が衰えて、体が前傾姿勢となり、膝の屈曲も行い難い状態となる。このため、足を上げて歩行するという行為が困難となり、対応して歩幅が狭くなる。
特に、歩行する際の足の「踵から着地し、順次、爪先側に向けて足の力(重心や体重)を移行させて、最後、親指で蹴り出す」という歩行のローリング動作を行い難くなる。
このローリング動作が適正にできないと、その結果、歩行が不安定となり、歩行動作自体に悪影響が出ることになる。
そこで、本実施の形態の高齢者用靴10は、加齢によりローリング動作が行い難くなっている高齢者に対して、ローリング動作を行い易くさせる構成となっている。
このアッパー部30には、高齢者の足を挿入するための開口を有する履き口部30が備わっている。また、アッパー部30には、挿入された足を甲側から押さえ、足を高齢者用靴10に固定させる舌部32とベルト部33が形成されている。
具体的には、足の甲側に配置される舌部32をベルト部33で固定する構成となっている。このベルト部33は、面ファスナー等により着脱可能な構成となっており、高齢者が高齢者用靴10を履く際や、脱ぐ際には、舌部32を固定せず、非固定状態とすることができる構成となっている。
また、図1に示すように、舌部32とアッパー部本体35とは、糸等で縫合され、縫合部が脆弱部34となっている。このため、ベルト部33を外し、舌部32を非固定状態とすると、舌部33を図1の矢印R1方向に揺動させることができ、この舌部33の揺動で、履き口部31の開口を大きくすることができる構成となっている。
したがって、高齢者にとって履きやすく、且つ脱ぎやすい高齢者用靴10となっている。
このインソール40は、図1に示すように、3層からなり、その表面(高齢者の足側)は第1層41で、低反発クッションからなっている。このため、その上に足をおいた高齢者は、足とインソール40との密着感が高まり、いわゆるフィット感が高まり、履き心地が良くなる構成となっている。また、第1層41の図1の下側には、第2層42が形成され、この第2層42は、クッション層となり、歩行に際し、高齢者の足に加わる衝撃を吸収する構成となっている。
この第2層42の下には、第3層43が配置され、この第3層43は、後述する踵部21からアーチ部22にかけて配置され、比較的硬い素材から成っており、また、踵部21からアーチ部22に亘って、外周が起立したカップ状の保持部43aとされている。このため、インソール40は、高齢者の足の特に踵側をしっかり保持することができる構成となっている。
このため、第3層43は、高齢者の足の踵側を保持する構成ともなっている。したがって、高齢者用靴10内に挿入された足が安定的に靴内に保持される構成となっている。
図3の内足側(図において左側)に示すように、足の先端部分が足指等の部分であり、爪先領域である。この足指等の付け根部分等が図3の踏み付け領域である。また、所謂、土踏まず等を含む部分が中足領域であり、踵の周辺が踵領域となっている。
この前提で、靴底部20の全体の概略を説明する。図1及び図2に示すように、靴底部20の踵側(図1の右側)には、図3の踵領域に対応する踵部21が形成されている。この踵部21に連接して爪先側(図1の左側)には、図3の中足領域に対応するアーチ部22が形成されている。このアーチ部22に連接した爪先側には、足指の根本付近等であって歩行に際し踏み付けを行う部分である図3の踏み付け領域に対応する踏み付け部23が形成されている。さらに、踏み付け部23の爪先側には、図3の爪先領域に対応する爪先部24が連接されている。
また、図1の踵部21の右端であり、最初に着地する部分である踵コーナー21aは、角ではなく、丸くなるように曲面状に形成されている。このため、歩行の着地が、よりスムーズとなると共に、確実に接地できるような構成となっている。
また、図2に示すように、踵部21には、踵部の屈曲を促進するため、靴底面の長手方向に交差する方向に踵屈曲溝21bが形成されている。
この踵屈曲溝21bは、アーチ部22と区画するための区画溝50cと共に、僅かな変形を許容することで、踵部21が確実に接地するように、なじませる程度の変形を行うものであり、踵コーナー21aと同様に確実に接地するための溝であって、例えば、アーチ部22との区画溝50cは設けないで構成することもできる。
さらに、図2の踏み付け部23には、踏み付け部23の屈曲を促進するための2本の踏み付け屈曲溝23a、23b(踏み付け屈曲部の一例)が靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成されており、アーチ部22と踏み付け部23の区画溝50bや、踏み付け部23と爪先部24の区画溝50aと協同して、踏み付け部23近傍で積極的に屈曲を促す溝として構成されている。なお、これらの各溝部23a,23b,50a,50は、内足側から外足側に向かって間隔が広くなる略放射状に配置されている。
したがって、図1の高齢者用靴10を履いた高齢者が、上述の歩行のローリング動作に際して足を屈曲させるとき、この踏み付け部23側の区画溝50a等で靴底部20がより屈曲、変形する構成となっており、踵部21側の踵屈曲溝21b等で確実に踵部21が接する構成とされているため、高齢者の足の屈曲やローリング動作を妨げず、むしろ、これらの動作を促進させる構成となっている。したがって、高齢者の歩行時における自然な足の運びを可能にしている。
また、図2に示すように、踵部21の表面のうち、踵側滑り止め部21cが形成されない部分には、踵側滑り止め用凹凸部21dが例えば、円形で3個、形成されている。
したがって、高齢者が歩行に際し、踵部21で着地するとき、摩擦力が働き、高齢者用靴10が滑ることがなく、グリップ力が働き、歩き易い構成となっている。
この踏み付け滑り止め部23cは、区画溝50aと踏み付け屈曲溝23a,23bの間の区間にそれぞれ配置されており、図3に示す拇趾丘Sに対応した位置に配置されている。
また、図2の踏み付け部23の踏み付け滑り止め部23cの近傍には、踏み付け滑り止め用凹凸部23dが例えば、円形で4個ずつ形成されている。
これらの各滑り止め部21c,23cは、靴底部20よりも弾性を有する材料が、靴底部20の対応する窪みに対して、一体成形または接着等によって一体に形成されている。
なお、図1に示すように爪先部24の先端側が高く、後端側に向かって徐々に低くなるようトゥスプリングがなされた構成とされており、足が上がりづらい高齢者であっても躓きづらい構成とされている。
より詳細にローリング溝25の位置を説明すると、ローリング溝25は、踵部21における後端部では略中央領域に位置し、踵部21の先端側になるに従って外足側に変位して、アーチ部22ではそのまま外足側に位置し、踏み付け部23では先端側になるに従って、外足側から内足側に曲線状に曲がって変位して、さらに爪先部24では先端側になるに従って、略中央領域に変位するよう配置されている。
このような、ローリング溝25の配置は、高齢者が歩行に際し、重心の移動を行うべき適切な位置とも一致する。
ところで、図2に示すように、ローリング溝25で、例えば踵部21を分断すると、図2の分断された踵部21の外足側と内足側(図における上側と下側)では、その面積が相違し、内足側の方が大きくなる。
このような状況で、高齢者が歩行のために重心を踵部21にかけると、面積の小さい方がより変形しやすくなり、重心はローリング溝25の外足側により移動し易くなり、重心はこのローリング溝25にほぼ沿ってかかるようになる。
これは、図2の踏み付け部23や爪先部24も同様であり、踏み付け部23で外足側から内足側に徐々に重心が移動し、踏み付け部23先端側や爪先部24では、踏み出すために最も力のかかる親指側(内足側)に重心が移動するように促されることになる。
高齢者ではない、一般人では、歩行におけるローリング動作の開始であり、踵部の最後端では、外足側となるのが通常である。
しかし、高齢者の場合は、足の運びが一般人より緩慢になるため、ローリング動作の開始点は、踵部21の最後端の中央部とした方が安定する。そこで、本実施の形態では、図2に示すように、踵部21の最後端の中央部にローリング溝後端部25aを形成した。
したがって、高齢者用靴10は、高齢者にとって、より好ましいローリング動作を促し易い構成となっている。
図4は、図1のアーチ剛性部22a及びボード部26等を示す概略図である。
図4に示すように、踵部21からアーチ部22に亘っては、ボード部26で、その剛性が高められ、変形しづらい構成とされ、高齢者の足を確実に保持する構成となっている。さらに、アーチ部22は、このボード部26の他に、アーチ剛性部22aが配置されているため、さらに剛性が高くなり、変形しづらい構成とされている。
この、ボード26や後述するカウンター部28により、踵を安定的に保持できる構成とすることで、まっすぐに立って、ぐらつかずに安定した着地を可能としている。
そして、高齢者等の安定した歩行が困難な使用者にとって、歩行におけるローリング動作で重心移動をし、これと共に足を屈曲させていくことで、アーチ部22に対して、ねじれ方向の力が加わることがある。このような力がアーチ部22加わり、アーチ部22が「ぶれ」ると、歩行が「ぶれ」て、円滑な歩行動作を妨げることになる。特に、歩行時に接地する面積が小さい、アーチ部22では、「ぶれ」が生じ易い構成となっている。
そこで、本実施の形態では、アーチ部22にアーチ剛性部22aを配置することで、この「ぶれ」の発生を未然に防ぎ、アーチ部22での変形を必要最低限に抑え、高齢者に適切なローリング動作をし易い構成としている。つまり、アーチ部22が中折れせず、高齢者は足の運びを真っ直ぐにすることが容易となる。
また、図1及び図4に示すようにアッパー部30の踵部21には、踵部21の剛性を高めるカウンター部28(アッパー剛性部の一例)が形成され、このカウンター部28は、図4に示すように内足側20aが外足側20bより長く形成されている。
つまり、高齢者が行うローリング動作は図2に示すように、踵部21では、接地後にその重心が外足側20bに移動していくことが好ましい。しかし、特に高齢者の場合、ローリング動作の開始時であり、着地時である踵部21では、その重心の移動が内足側20aに誤って移動することが多い。
そこで、本実施の形態では、踵部21の内足側20aに剛性の高い内足踵剛性部27を配置し、さらに、踵部21に相当するアッパー部30に剛性の高いカウンター部28を配置し、そのカウンター部28を内足側20aに長く形成している。このように構成することで、ローリング溝25の配置とあいまって、高齢者の足の踵部21における重心を剛性の低い外足側20bに移動させやすい構成となっている。
したがって、高齢者が図2のローリング溝25に沿った重心の移動をし易い高齢者用靴10となる。
Claims (1)
- 使用者が歩行に際し接地する靴底面を有する靴底部と、
前記靴底部から立ち上がるように、且つ使用者の足を包むように形成されると共に、使用者の足を挿入するための履き口部を有するアッパー本体部と、を備える高齢者用靴であって、
前記靴底部は、使用者の足の踵領域が配置される踵部と、
前記踵部に連接され、使用者の足の中足領域が配置されるアーチ部と、
前記アーチ部に連接され、使用者の足の踏みつけ領域が配置される踏み付け部と、
前記踏み付け部に連接され、使用者の足の爪先領域を配置する爪先部と、を有し、
前記靴底面には、少なくとも、前記アーチ部、前記踏み付け部及び前記爪先部を区画するための区画部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、
少なくとも、前記踵部における後端部には踵側滑り止め部が形成され、
前記踏み付け部には、踏み付け部の屈曲を促進するための踏み付け屈曲部が前記靴底面の長手方向に交差する短手方向に形成され、
前記踏み付け部の少なくとも一部には、踏み付け滑り止め部が形成され、
前記靴底面には、その長手方向に沿って前記踵部から前記爪先部にかけて連続して、ローリング溝部が形成され、
前記ローリング溝部は、前記踵部から前記アーチ部の領域では、前記靴底面の短手方向の外足側に配置され、
前記踏み付け部では、前記アーチ部における前記ローリング溝部が、前記短手方向の前記外足側から内足側に向かって変位するように延伸され、
前記爪先部では、前記ローリング溝部が前記短手方向の前記内足側に配置され、
前記ローリング溝部は、前記踵部の最後端では前記靴底面の略中央部に形成されると共に、前記踵部の前記アーチ部寄りでは、前記外足側に変位して配置され、
前記アーチ部の上層には、前記アーチ部の剛性を高めるためのアーチ剛性部が形成され、
前記アーチ剛性部の上層には、前記アーチ部及び前記踵部の剛性を高めるためのボード部が形成され、
前記踵部の前記内足側には、前記踵部の剛性を高めるための内足踵剛性部が形成され、
前記踵部に相当する前記アッパー本体部に、剛性の高いアッパー剛性層が配置され、高齢者の足の前記踵部における重心を前記外足側に移動させるために、前記アッパー剛性層の前記内足側が、前記外足側より長く形成されていることを特徴とする高齢者用靴。
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