JP4917992B2 - 芯鞘型複合繊維 - Google Patents

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本発明は、赤外線吸収剤を含有するポリエステルを芯部に配した芯鞘型複合繊維であって、赤外線吸収効果を有し、加工性に優れ、優れた保温性を有する布帛を得ることができる芯鞘型複合繊維に関するものである。
防寒衣料、スキー、登山等のスポーツ衣料等には、中綿を用いた三層構造の衣料を用いることが多かった。このような衣料は、表層、中綿、裏地の三層により構成され、中綿により空気保温層を作り保温性能を高めるものであるが、三層構造で構成される衣料は重く、スポーティー性に欠けるものであった。
また、アルミニウムやクロム等の金属を布帛にコーティングした保温用布帛も知られているが、このような布帛を衣料用途に用いると、コーティングによるゴワつきがあり、柔軟性に欠けるという欠点があった。また、繰り返し使用することによりコーティングが剥がれ落ち、保温性能の低下も生じるものであった。
そこで、上記した問題点を解消するものとして、芯鞘複合繊維の芯部に炭化ジルコニウム、珪化ジルコニウム、酸化錫等の赤外線吸収効果を有する機能性無機粒子を配し、鞘部の熱可塑性樹脂で芯部を被覆した複合繊維が提案されている(特許文献1参照)。この複合繊維は、芯部に配した機能性無機微粒子の赤外線を吸収する効果によって、保温効果を発現させている。
しかしながら、この複合繊維は繊維の一部にしか無機粒子を配しておらず、また、無機粒子を含有させた部分の表面積が小さいため、赤外線の吸収率が悪く、充分な保温効果を得ることができなかった。
また、赤外線の吸収率を上げるために、繊維全体に機能性無機粒子を分散させると、製糸性や加工性が著しく悪くなるという欠点があるため、赤外線吸収剤を後加工により布帛に付着させる方法も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような方法で得られた布帛は、洗濯を繰り返し行うことによって、布帛に付着した赤外線吸収剤が徐々に脱落し、赤外線吸収性能が低下するという問題があった。
特開平5−9804 特開2003−96663
本発明は、上記したような問題点を解決し、優れた赤外線吸収性能を有し、保温性能を有するとともに、製糸性よく得ることができ、かつ加工性にも優れ、衣料用に好適な優れた保温性を有する布帛を得ることができる芯鞘型複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、金属炭化物系微粒子又は金属酸化物系微粒子の赤外線吸収剤を5〜25質量%含有するポリエステルを芯部に用いた芯鞘型の複合繊維であって、芯鞘質量比率(芯/鞘)が10/90〜60/40であり、繊維の長手方向に対して垂直に切断した横断面形状において、芯部の形状が突起部を5〜30個有する異形断面形状を呈し、かつ鞘部の形状が凸部を2〜6個有する異形断面形状を呈していることを特徴とする芯鞘型複合繊維を要旨とするものである。

本発明の芯鞘型複合繊維は、優れた赤外線吸収性能を有し、保温性能を有するとともに、製糸性よく得ることができ、かつ加工性にも優れている。このため、本発明の芯鞘型複合繊維を用いると、衣料用に好適な優れた保温性を有する布帛を得ることが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の芯鞘型複合繊維は、製糸性や加工性をよくするため、芯部のポリマーに赤外線吸収剤を含有させ、鞘部のポリマーで芯部のポリマーを完全に覆う芯鞘形状とするものである。芯部のポリマーが表面に露出した形状であると製糸性や加工性が著しく悪くなるため好ましくない。
芯部のポリマーは、ポリエステルであれば特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を単独で用いたり、あるいは複数併用することができる。また共重合ポリエステルであってもよく、共重合成分としては、イソフタル酸、5−アルカリイソフタル酸、3,3'−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,4シクロヘキサンジオールなどの脂肪族、脂環式ジオール、P-ヒドロキシ安息香酸などの共重合成分が挙げられる。
鞘部のポリマーは、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定するものではないが、芯部ポリマーとの相溶性を考慮すると、芯部ポリマーと同じポリエステルを用いることが好ましい。
芯部のポリマーは、芯部のポリマー中に金属炭化物系微粒子又は金属酸化物系微粒子の赤外線吸収剤を5〜25質量%含有し、中でも7〜17質量%含有することが好ましい。赤外線吸収剤の含有量が5質量%未満では、繊維中の含有量が少ないために十分な赤外線吸収効果が発現しなくなる。一方、含有量が25質量%を超えると、繊維中の含有量が多くなりすぎるため、繊維の柔軟性が乏しくなり、脆い繊維となり、製糸性や加工性が著しく悪化する。
本発明において芯部に含有させる赤外線吸収剤は、金属炭化物系微粒子又は金属酸化物系微粒子のものであるが、中でも、金属炭化物系微粒子としては、炭化ジルコニウム微粒子や炭化ケイ素微粒子が好ましく、金属酸化物微粒子としては、アンチモンドープ酸化錫やスズドープ酸化インジューム、酸化チタンと酸化錫の混合物が好ましい。
また、芯部と鞘部のポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、添加剤、艶消剤、制電剤、酸化防止剤等が含まれてもよい。
さらに、本発明の芯鞘型複合繊維の芯鞘質量比率(芯/鞘)は、10/90〜60/40であり、中でも20/80〜50/50であることが好ましい。芯部の比率が10質量%未満では、単糸に占める芯部の割合が低くなり、十分な赤外線吸収性能が得られなくなる。一方、芯部の比率が60%を超えると、赤外線吸収剤を含有する芯部の割合が多くなるため、繊維の柔軟性が乏しくなり、脆い繊維となり、製糸性や加工性が著しく悪化する。
次に、本発明の芯鞘型複合繊維の形状を図面を用いて説明する。図1は本発明の芯鞘型複合繊維の一実施態様を示す横断面模式図である。
図1は、鞘部2が円形断面形状で凸部4を有しておらず、芯部1が16個の突起部3を有するものである。図2は、鞘部2が凸部4を3個有する3葉断面形状で、芯部1が12個の突起部3を有するものである。
本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維の長手方向に対して垂直に切断した横断面形状において、芯部1の形状が突起部3を5〜30個有する異形断面形状を呈している。
芯部の形状をこのような異形断面形状のものとすることにより、赤外線吸収剤を含有する芯部の表面積を大きくすることができるため、芯部の形状が丸断面形状の場合と比較すると、赤外線吸収面が大きくなり、赤外線吸収量が増える。
さらに、隣接する突起部間に赤外線領域の波長が入射した際、赤外線が乱反射することにより、赤外線がより吸収されやすくなり、赤外線吸収量が増える。
突起部の数は5〜30個とする必要があり、より好ましくは8〜20個とする。突起部の数が5個未満であると、上記した効果のなかでも乱反射による赤外線の吸収効果が不十分となる。一方、30個を超えると、形状が丸断面と近似した形状となり、表面積の増加が図れず、赤外線の吸収効果が不十分となる。なお、突起部の幅や大きさ等は特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜変更する。
さらに、鞘部の横断面形状は、凸部を2〜6個有する異形断面形状のものとすることが好ましい。鞘部の横断面形状をこのような異形形状とすることによって、繊維を集束した際に繊維束の密度が高く空隙の少ない繊維束となるため、布帛にした際に赤外線の透過量が減少し、赤外線吸収量が増加する。
凸部4の数が2個である場合は扁平断面形状となり、3〜6個の場合は3葉〜6葉の多葉断面形状のものとなる。凸部4の数が7個を超えると、断面形状が丸断面に近似した形状となったり、形状によっては、繊維束の密度が低くなるため、上記したような赤外線吸収量の増加の効果が乏しくなり好ましくない。
次に、本発明の芯鞘型複合繊維の製造方法について説明する。
本発明の芯鞘型複合繊維は、紡糸速度が2000m/分以上の高速紡糸により、半未延伸糸を得るPOY法、あるいは、一旦2000m/分未満の低速紡糸または2000m/分以上の高速紡糸で溶融紡糸し、一旦巻き取った後、別工程で糸条を延伸熱処理する方法、一旦巻き取ることなく続いて延伸を行う直接紡糸延伸法により得ることができる。
赤外線吸収剤を含有する芯部ポリマーを得る方法としては、ポリマーの重合段階で赤外線吸剤を添加する方法や、赤外線吸収剤を後工程でポリマーに添加して溶融混練する方法があるが、重合段階で赤外線吸収剤を添加した場合、赤外線吸収剤の凝集や製糸性の悪化を生じる場合があるため、後工程で溶融混練する方法が好ましい。
そして、芯鞘複合ノズルプレートを載置した溶融紡糸装置を用いて溶融紡糸することにより、上記したような芯部における突起部や鞘部における凸部を有する異形形状のものを得ることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例中の各種の値の測定及び評価は次の通りに行った。
1.赤外線吸収性能
得られた芯鞘型複合繊維を筒編地とし、次のようにして赤外線吸収率を測定した。島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用い、布帛の700〜2000nmの波長の赤外線吸収率及び赤外線透過率を測定した。1700nmの波長の吸収率及び透過率の値により、下記に示すように評価を行い、吸収率及び透過率の評価が○以上を合格とした。
<赤外線吸収率の評価>
36%以上 :◎
26%〜36%未満:○
16%〜26%未満:△
16%未満 :×
<赤外線透過率の評価>
16%未満 :○
16〜21%未満 :△
21%以上 :×
2.紡糸性
24時間連続して紡糸した際の1錘あたりの切糸回数にて下記のように評価を行った。○のものを合格とした。
0〜2回:○
3〜5回:△
6回以上:×
3.相対粘度
フェノールと四塩化エタンの等質量混合溶媒を用い、20℃にて測定した。
実施例1
鞘部ポリマーとして相対粘度が1.38のポリエチレンテレフタレートを常法によりチップ化し、乾燥したものを用いた。芯部ポリマーとして相対粘度が1.41のポリエチレンテレフタレートに、赤外線吸収剤として金属酸化物系微粒子であるアンチモンドーピング酸化錫を10質量%(芯部ポリマー中の含有量)を溶融混練したものを用い、常法によりチップ化して乾燥したものを用いた。
そして、横断面形状が図2に示す形状(鞘部の形状が凸部を3個有し、芯部の形状が突起部を12個有する)となる芯鞘複合ノズルプレート(48孔)を用いて、鞘部ポリマーと芯部ポリマーの質量比率(芯/鞘)を40/60とし、紡糸速度3500m/分、紡糸温度290℃、吐出量43g/分で紡糸し、半未延伸糸を捲き取った。
続いて得られた半未延伸糸を延伸倍率1.5倍、熱処理温度140℃で延伸し、84デシテックス/48フィラメントの芯鞘型複合繊維を得た。
実施例2
芯部ポリマー中の赤外線吸収剤の含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
比較例1、3
芯部ポリマー中の赤外線吸収剤の含有量及び芯部の突起部の数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
実施例3、比較例2、4
鞘部ポリマーと芯部ポリマーの芯鞘質量比率及び芯部の突起部の数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
実施例4
芯部ポリマー中に含有する赤外線吸収剤の種類を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
比較例5
芯部ポリマー中の赤外線吸収剤に代えて酸化チタンを含有させ、芯部の突起部の数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
実施例5、比較例6、7
芯部の突起部の数を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
実施例6
鞘部の凸部の数を6個とし、鞘部の形状を6葉断面形状に変更した以外は、実施例1と同様に行って芯鞘型複合繊維を得た。
実施例1〜6、比較例1〜7で得られた芯鞘型複合繊維の評価結果を表1に示す。
実施例1〜6の芯鞘型複合繊維から得られた編物は、赤外線吸収率が高く、赤外線透過率が低く、優れた赤外線吸収性能を有しており、紡糸性も良好であった。
一方、比較例1の芯鞘型複合繊維は、芯部ポリマー中の赤外線吸収剤の含有率が少なかったため、また、比較例2の芯鞘型複合繊維は、芯部の質量比率が低かったため、十分な赤外線吸収性能を得ることができなかった。比較例3では、芯部ポリマー中の赤外線吸収剤の含有量が多すぎたため、また、比較例4では、芯部の質量比率が高すぎたため、紡糸性が非常に悪く、繊維を採取することができなかった。比較例5の芯鞘型複合繊維は、芯部ポリマーに赤外線吸収性能を有していない酸化チタンを含有させたものであったため、赤外線吸収性能を有していなかった。比較例6の芯鞘型複合繊維は、芯部形状が突起部の数が3個のものであったため、比較例7の芯鞘型複合繊維は、芯部形状が突起部の数が36個のものであったため、ともに十分な赤外線吸収性能を得ることができなかった。
本発明の芯鞘型複合繊維の一実施態様を示す横断面模式図である。 本発明の芯鞘型複合繊維の他の実施態様を示す横断面模式図である。

Claims (1)

  1. 金属炭化物系微粒子又は金属酸化物系微粒子の赤外線吸収剤を5〜25質量%含有するポリエステルを芯部に用いた芯鞘型の複合繊維であって、芯鞘質量比率(芯/鞘)が10/90〜60/40であり、繊維の長手方向に対して垂直に切断した横断面形状において、芯部の形状が突起部を5〜30個有する異形断面形状を呈し、かつ鞘部の形状が凸部を2〜6個有する異形断面形状を呈していることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
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