JP4916977B2 - 感熱ラベル貼着ガラス製品 - Google Patents

感熱ラベル貼着ガラス製品 Download PDF

Info

Publication number
JP4916977B2
JP4916977B2 JP2007213426A JP2007213426A JP4916977B2 JP 4916977 B2 JP4916977 B2 JP 4916977B2 JP 2007213426 A JP2007213426 A JP 2007213426A JP 2007213426 A JP2007213426 A JP 2007213426A JP 4916977 B2 JP4916977 B2 JP 4916977B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
label
resin
coating composition
glass
glass product
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007213426A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009046348A (ja
Inventor
浩之 西野
陽一 有田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nihon Yamamura Glass Co Ltd
Original Assignee
Nihon Yamamura Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nihon Yamamura Glass Co Ltd filed Critical Nihon Yamamura Glass Co Ltd
Priority to JP2007213426A priority Critical patent/JP4916977B2/ja
Publication of JP2009046348A publication Critical patent/JP2009046348A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4916977B2 publication Critical patent/JP4916977B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Details Of Rigid Or Semi-Rigid Containers (AREA)
  • Surface Treatment Of Glass (AREA)

Description

本発明は,水性コーティング組成物でコートされ,ラベルを貼着されたガラス製品に関し,特に水性コーティング組成物でコートされ,感熱性糊により紙製ラベルを貼着されたガラス製品に関する。
紙製ラベルが,ガラス容器(ガラス瓶等)その他のガラス製品に,その商品名を含む種々の情報を表示することを目的として,ガラス製品に貼着して使用されている。紙製ラベルをガラス製品に貼着する方法としては,ガラス製品の表面に貼り付ける直前にラベル裏面に糊を塗布し,圧をかけて貼り付ける方式(グルー糊方式),粘着性を有する糊が予めラベル製造時にラベルの裏面に塗布されており,圧をかけて貼り付ける方式(タック糊方式),加熱されると粘着性が発現するディレードタック糊が予めラベルの裏面に塗布されており,貼り付ける直前に熱風などでラベルを加熱して糊に粘着性を発現させ,これに圧をかけて貼り付ける方式(ヒート糊方式)等がある。
これらの方式のうち,グルー糊方式では,糊の塗布量の設定,糊の追加・交換,使用後の糊の清掃等に煩雑な手間を要し,また糊量の調整,粘度管理等に作業者の熟練を要するという不便がある。
また,タック糊方式では,ラベルの裏面に予めタック糊が塗布されているため,ラベルが貼り付けられる直前まで他に付着しないよう,特殊な処理を施した合紙(離型紙)を必要とする。離型紙は,ラベルを剥がして使用した後はゴミとして廃棄されるため,廃棄物の増加と資源の浪費を招くという難点がある。また,離型紙は高価であるため,ガラス製品へのラベルの貼着におけるコストアップの要因ともなっている。更に,タック糊方式では,ラベルを貼るスピードが遅く,大量にラベルを貼り付けるのには不向きである。
これらに対し,ヒート糊方式では,常温では裏面に粘着性のないラベルを用い,これを加熱して裏面に粘着性を発現させガラス製品の表面に押し当てるだけで,ラベル貼着を完了することができる。このため,作業者の熟練を必要とせず,ラベルの貼着を迅速に行うことができ,作業終了後の清掃にも特段の手間を要しない。この方式のラベルは離型紙を伴わないため,使用により多量の廃棄物が発生することもない。このような利便性のため,ヒート糊方式のラベルが近年広く用いられるようになってきた(特許文献1参照)。
更には,ガラス製品表面へのラベルの貼着(ラベリング)については,従来,ラベル易剥離性(リサイクル時ラベルを剥がそうとするときは容易に剥がすことができるという特徴)に重点をおいて改良がなされてきたが,生産ラインの高速化に伴い,これに適応できる従来よりも一層安定したラベリング技術が求められるようになっている。
近年,ごみの減量と分別回収によるリサイクルの必要性から,使用済みのガラスびん等のガラス製品からラベルを剥がして回収することを推奨する自治体が増えている。また,消費者サイドでも,リサイクルに対する意識の高まりから,回収に出すガラス製品から消費者が自発的にラベルを剥がすようになってきた。
こうした事情から,ラベルの易剥離性が一層求められるようになっている。しかしながら,例えば,従来のヒート糊方式のラベルを単に使用するのみでは,ディレードタック型感熱性ラベルとガラス製品との接着強度が強すぎることがあり,ラベルを手で剥離する際にラベルが破れてしまい,剥がすのが極めて困難になる,という問題がある。これに対して,ディレードタック型感熱性糊の凝集力を低下させることにより,接着強度が大きくなりすぎるのを防止し,貼着されたラベルが容易に剥がせるようにした糊も開発されているが,そのような糊を使用してガラス製品にラベルを貼着した場合,ラベルは容易に剥がせるようになるものの,今度は糊がラベルから離れて,ガラス製品の表面に大量に糊残りが生じてしまうという問題がある。ラベルの易剥離性は,ラベルの糊自身の性質と当該ラベルが貼着されるガラス製品の表面(コーティングされている場合,そのコーティングされた状態での表面)の性質,更には糊が塗布されているラベル基材の性質にも依存すると考えられるが,これら三者がどのように組み合わさったときにラベルの優れた易剥離性が得られるかについては十分に知られていない。
一方,従来ガラス製品表面の滑性を増大させて擦り傷等がつき難くし,それにより擦り傷等に起因する強度劣化を防止するために,アニオン系界面活性剤,非イオン系界面活性剤,ポリエチレンワックスの水性エマルジョン等を含有するコーティング剤が用いられている。特にガラスびん等のガラス容器では,ライン上や輸送途中で衝撃が加わっても割れにくいよう強度を持たせる必要が大きい。それらの製造においては,この種のコーティング剤は「コールドエンドコーティング剤」と呼ばれている。ガラス容器の場合,内容物の充填前に洗浄され,また内容物の殺菌の目的で充填後熱水処理を行うことが多い。施したコーティングがこのとき脱離するのを防止するには,水に不溶のポリエチレンワックスを水性エマルジョンの形で含有するコールドエンドコーティング剤を使用するのが好ましく,この種のコールドエンドコーティング剤としては,ポリエチレンワックスをアニオン系界面活性剤(高級脂肪酸のカリウム塩)で乳化した組成物が知られている(特許文献2参照)。
近年のガラス容器製造ライン,食品メーカー等のガラス容器ユーザーにおける充填ラインの高速化に伴い,ガラス容器に施されたコールドエンドコーティングのガラス容器表面からの摩耗,脱落に起因する搬送ラインの汚染という問題が顕在化してきた。
これらの問題を解決するため,ポリエチレンワックスとシランカップリング剤を含有するコールドエンドコーティング剤の開発も行われており(特許文献3参照),一定の成果が得られているものの,ガラス容器ユーザーでのラインの更なる高速化に伴い,磨耗や脱落がこれまでより一層起こりにくいコーティングを可能にする,改良されたコールドエンドコーティング剤が更に求められている。
従来,コールドエンドコーティング剤以外に,ガラス容器のコーティング剤として,樹脂(ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリウレタン,塩化ビニル樹脂,アクリル樹脂,エポキシ樹脂,アイオノマー樹脂)とシランカップリング剤とを含む組成物が刊行物に記載されている(特許文献4,5)。しかしながら,同記載によれば,それらのコーティング剤は最低でも約2〜50μmといった厚い膜を形成するためのコーティング剤であり,また,それらによりびん表面にコーティングを施した場合,その表面滑り角度は20°以上と大きい(すなわち,滑性が悪い)ことが示されている。同文献には,アイオノマー樹脂の例として,炭素数2〜7の低級オレフィンとマレイン酸その他の不飽和カルボン酸との共重合体であって少なくとも一部を中和(アルカリ金属又はアルカリ土類金属で)したもの,その他種々の樹脂が列挙されているものの,コーティング剤の具体例としては,樹脂成分としてポリウレタン樹脂エマルジョン又はメタクリル酸とエチレンとの共重合体(ケミパールS−100(登録商標))を用いたものが記載されているに止まる。
また,α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体やその部分エステル体を分散安定剤として含む塗工用吸水性樹脂分散体(特許文献6)や該樹脂からなる顔料分散剤(特許文献7),該樹脂の水性分散体の存在下,顔料を分散させた水性インキ(特許文献8,9)が知られている。しかし,これらの分散体や分散剤,水性インキはシランカップリング剤を併用しておらず,基材,特にガラス製品に強固に接着したコーティングを形成することを目的としたものではない。
特開2003−84673号公報 特公昭42−1758号公報(第3頁右欄ほか) 特開2002−241145号公報 特開昭57−165466号公報 特開昭57−3869号公報 特開平4−255704号公報 特開平1−261474号公報 特開2004−91519号公報 特開2004−91520号公報
上記背景のもとで,本発明は,(1)熱水処理に付されてもガラス製品表面に残存して傷付き防止に機能でき,(2)摩耗やガラス容器表面からの脱落に起因する特にコンベアガイド等の搬送ラインの汚染を防止でき,且つ(3)表面にラベルが貼着されており,該ラベルが,流通過程で自然に剥離するおそれはないがリサイクル時ラベルを剥がそうとするときは常温乾燥状態において糊残りなく容易に剥がすことができるという特徴(易剥離性)を備えたものである,ラベル貼着ガラス製品を提供することを目的とする。
本発明者らは,上記の課題を解決するために研究を重ねた結果:
(1)樹脂として,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び該共重合体の部分反応物(すなわち,無水マレイン酸モノマー単位の少なくとも一部をアルコール系化合物又はアミンやアミノ酸等と反応させてエステル体,アミド体又はイミド体とすることによりグラフト変性させたもの)のうちの少なくとも1種を用い,これにシランカップリング剤を併用して水性コーティング組成物とすれば,これでガラス表面を処理したとき,該樹脂を従来のガラス用コーティング組成物よりも一層安定してガラス表面に接着させておくことができ,このため,形成された摩擦係数の低い表面が維持され,従ってガラス製品(ガラス容器,板ガラス等)の強度劣化を防止機能が維持できること,
(2)上記水性コーティング組成物をコールドエンドコーティング組成物としてガラス容器の表面に適度に塗布したガラス製品では,ガラス容器製造ラインやユーザーサイド(食品工場等)での,コーティングの摩耗や脱落に起因するコンベアガイド等搬送ラインの汚染が防止できること,及び
(3)そのようなコーティングを施したガラス製品の表面に,酸性紙(pH6以下)に所定のディレードタック型感熱性糊を塗布して製したラベルを貼着したときは,ラベルの確実な貼着が行え,そのため流通過程でラベルが自然に剥離するおそれはないが,リサイクル時それらを剥がそうとするときは常温乾燥状態において糊残りなく容易に剥がすことができることを見出した。
本発明は,これらの発見に基づき完成されたものである。
すなわち本発明は,以下を提供する。
1.コーティング組成物によりコーティングされた表面にラベルを貼着してなるガラス製品であって,
該コーティング組成物が,塩基の存在下,水中に樹脂を分散した状態で含有させ,且つシランカップリング剤を含有させてなる水性コーティング組成物であって,該樹脂が,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び該共重合体の部分反応物のうちの少なくとも1種である水性コーティング組成物であり,そして
該ラベルが,アクリル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊が裏面に塗布された,少なくとも当該裏面が紙よりなるラベルであって,該紙が酸性紙である
ことを特徴とする,ラベル貼着ガラス製品。
2.該コーティング組成物に含有させた樹脂の酸価が100〜300mg−KOH/gである,上記1のラベル貼着ガラス製品。
3.該コーティング組成物に含有させた樹脂のケン化価が150〜320mg−KOH/gである,上記1又は2のラベル貼着ガラス製品。
4.該コーティング組成物に含有させた樹脂の数平均分子量が1500〜4000である,上記1ないし3の何れかのラベル貼着ガラス製品。
5.該コーティング組成物に含有させた樹脂におけるα−オレフィンの炭素数が10〜50である,上記1ないし4の何れかのラベル貼着ガラス製品。
6.該コーティング組成物に含有させた樹脂である該共重合体の部分反応物が,少なくとも一部の無水マレイン酸モノマー単位においてアルキルエステル化によりグラフト変性されてなるものである,上記1ないし5の何れかのラベル貼着ガラス製品。
7.該アルキルエステル化がモノアルキルエステル化である,上記6のラベル貼着ガラス製品。
8.該コーティング組成物に含有させたシランカップリング剤がアミノ基を有するものである,上記1ないし7の何れかのラベル貼着ガラス製品。
9.該コーティング組成物における樹脂と塩基の合計濃度が0.05〜1重量%である,上記1ないし8の何れかのラベル貼着ガラス製品。
10.該コーティング組成物における樹脂の濃度が0.03〜0.6重量%である,上記1ないし9の何れかのラベル貼着ガラス製品。
11.該コーティング組成物におけるシランカップリング剤の濃度が0.01〜1重量%である,上記1ないし10の何れかのラベル貼着ガラス製品。
12.該コーティング組成物が該樹脂以外の界面活性剤を含有しないものである,上記1ないし11の何れかのラベル貼着ガラス製品。
13.該紙のステキヒト・サイズ度が35秒以上である,上記1ないし12の何れかのラベル貼着ガラス製品。
14.該紙が,サイズ剤としてロジン及び硫酸バンドを使用したものである,上記1ないし13の何れかのラベル貼着ガラス製品。
15.該ディレードタック型感熱性糊が,アクリル系熱可塑性樹脂,フタル酸系固体可塑剤,及びテルペン樹脂系又はロジン系タッキファイヤーを含んでなるものであることを特徴とする,上記1ないし14の何れかのラベル貼着ガラス製品。
16.該水性コーティング組成物を表面にコーティングした該ガラス製品が,該表面を,該コーティングより前にホットエンドコーティングしてあるものである,上記1ないし15の何れかのラベル貼着ガラス製品。
17.ガラス容器である,上記1ないし16の何れかのラベル貼着ガラス製品。
18.板ガラスである,請求項1ないし15の何れかのラベル貼着ガラス製品。
本発明のラベル貼着ガラス製品は,ガラス表面に樹脂としてα−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び/又は該共重合体の部分反応物が安定にコーティングされている。このためガラス表面の摩擦係数がこれらの樹脂の作用で低下し,ガラス表面の傷付き防止効果がそれにより発現し,その結果,ガラス製品の強度劣化が防止される。また,該水性コーティング組成物により表面処理を施したガラス容器は,その製造ラインやユーザーサイド(食品工場等)でコンベアガイド等の搬送ラインを汚染することがないという,際立った特徴を有する。しかも,本発明によれば,ディレードタック型感熱性糊を用いたラベルの貼着が確実に行え,且つラベルは,流通過程で自然に剥離するおそれはないがリサイクル時に剥がそうとするときは常温乾燥状態において糊残りなく容易に剥がすことができる,という優れた特性(易剥離性)を現す。
本明細書において「ガラス製品」は,ガラスで形成された物品を限定なく包含する。また,「ガラス容器」は,ガラスびん,ガラス製の食器や花瓶等を含む。
本発明において,水性コーティング組成物において用いられるα−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び/又は該共重合体の部分反応物である樹脂は,塩基の存在下において超微粒子状態で安定に水中に分散させることができる。本発明において水性コーティング組成物の調製に用いるためには,上記樹脂は,先ず塩基の存在下で水中に分散させた,固形分10〜20重量%程度の水分散体とすればよい。
本発明において,水性コーティング組成物に含有させる上記樹脂(水に分散前の樹脂そのものをいう。以下同じ。)の酸価は,100〜300mg−KOH/gであることが好ましい。酸価が100mg−KOH/g未満であると,水性コーティング組成物の分散安定性が低下すると共に,コーティング表面へのラベルやシールの接着性が不十分となる恐れがある。逆に酸価が300mg−KOH/gを超えると,コーティングの耐水性が低下すると共に,ラベルやシールの易剥離性が得られなくなる恐れがある。水性コーティング組成物の分散安定性,ラベルやシールの接着性,易剥離性,コーティングの耐水性等を考慮すると,樹脂の酸価は120〜250mg−KOH/gであることがより好ましい。なおここに,「酸価」とは,樹脂1g中に含まれるカルボキシル基を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
また本発明において,水性コーティング組成物に含有させる上記樹脂のケン化価は,150〜320mg−KOH/gであることが好ましく,160〜270mg−KOH/gであることがより好ましい。なおここに,「ケン化価」とは,樹脂1gをケン化するに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい,酸価とエステル価の和に相当する。
また,本発明において,水性コーティング組成物に含有させる上記樹脂の数平均分子量(GPC法,標準物質:ポリアクリル酸メチル)は,1500〜4000であることが好ましい。数平均分子量が1500未満であると,コーティングの耐摩耗性が低下する恐れがある。逆に,4000を超えると当該樹脂の軟化点が高くなり,コーティングしたときのガラス製品表面への広がりが制限され,表面の摩擦係数を十分に低下させられないおそれがある。樹脂は,スプレー等による塗布時のガラス製品表面への付着性を考慮すると,60〜130℃の軟化点(ASTM D127法)を有することが好ましい。
また,本発明において,水性コーティング組成物に含有させる上記樹脂の構成モノマーであるα−オレフィンの炭素数は,10〜50であることが好ましい。炭素数が10未満では,コーティング表面の摩擦係数が高くなり,ガラス製品表面の傷付き防止効果が低下する恐れがあり,炭素数が50を超える場合は,水への分散性が低下すると共に表面自由エネルギーが低くなりすぎ,ラベルやシールが貼着できなくなる恐れがあるためである。表面の摩擦係数,分散性,ラベリング適性等を考慮すると,α−オレフィンの炭素数は14〜40であることがより好ましく,18〜34であることが特に好ましい。α−オレフィンは単独で用いても良いが,2種以上の混合物を用いることもできる。α−オレフィンと無水マレイン酸及び/又は無水マレイン酸部分反応物との共重合方法は無溶剤で行ってもまた溶剤を併用して行ってもよく,ラジカル重合法等,常法に従って行うことができる。
本発明において,水性コーティング組成物に用いられる,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体の部分反応物としては,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体の無水マレイン酸モノマー単位の少なくとも一部を,アルコール系化合物又はアミンやアミノ酸等と反応させてエステル体,アミド体又はイミド体とすることによりグラフト変性させたものが挙げられる。酸価を制御する上で,アルコール系化合物との反応物であるエステル体とすることが好ましい。すなわち,無水マレイン酸由来の構成単位としてマレイン酸モノアルキルエステル又はジアルキルエステルを有するものが好ましく,モノアルキルエステルをジアルキルエステルより多く含むものがより好ましい。実質的にモノアルキルエステルを主体としジアルキルエステルを実質的に含まないものであってもよい。ここにアルコール系化合物としては特に制限はないが,好ましい例として炭素数1〜20,より好ましくは炭素数1〜16,特に好ましくは炭素数1〜8のアルコールを挙げることができる。具体例としては,メタノール,エタノール,1−プロパノール,2−プロパノール,1−ブタノール,2−ブタノール,tert−ブチルアルコール,ペンタノール,ヘキサノール,ヘプタノール,オクタノール,並びに,より炭素数の多いアルコール,例えばデシルアルコール,ラウリルアルコール,ミリスチルアルコール,セチルアルコール等が挙げられる。なお,エステル化等の変性方法としては,無水マレイン酸がモノマーのうちにアルコール系化合物等を反応させ,その後重合させて所望の樹脂としてもよいし,重合してからグラフト変性してもよい。 また,アルキル側鎖にカルボキシル基を別途導入する等の方法で,酸価を増大させてもよい。
本発明において,水性コーティング組成物に含有させる上記樹脂は,塩基の存在下,該樹脂以外の界面活性剤を添加せずに水中に分散させることが好ましい。上記範囲の酸価及び分子量を有する樹脂であれば,分散させるのに別途界面活性剤を添加することは不要である。本発明において,水性コーティング組成物に該樹脂以外の界面活性剤を含有させないことにより,コーティングの表面状態が洗びんやパストライザーによる熱水殺菌処理の条件に依存し難くなるため,ラベリングや易剥離性が安定すると共に,コンベアガイドの汚れ防止にも有利である。また,洗びん後の水の泡立ち防止にも有利である。樹脂の分散に際して用いられる塩基の種類に特に制限はないが,アンモニア,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,N,N−ジメチルアミノエタノール,N,N−ジエチルアミノエタノール,NaOH,KOH等が好ましいものの代表例として挙げられる。
本発明において,水性コーティング組成物における上記樹脂と塩基の合計濃度は,0.05〜1重量%であることが好ましい。合計濃度が0.05重量%未満では,十分な滑性が得られなくなるおそれがあると共にガラス製品表面の露出割合が増大し,ラベルやシールの易剥離性が達成できなくなるおそれがある。逆に合計濃度が1重量%を超えると,ガラス製品表面が若干不透明になり,外観が悪化するおそれがあるほか経済性も悪く,更に,コンベアガイドの汚染の問題も顕在化する恐れがある。また,ラベルやシールが流通過程で剥離するおそれもある。ガラス製品表面の傷付き防止,ラベルやシールの適度の接着力,外観,コンベアガイドの汚染等を考慮すると,本発明においては,水性コーティング組成物における上記合計濃度は,0.07〜0.5重量%であることがより好ましい。なお,本発明において水性コーティング組成物における上記樹脂の濃度は,好ましくは0.03〜0.6重量%,より好ましくは0.04〜0.45重量%,更に好ましくは0.05〜0.3重量%,特に好ましくは0.06〜0.2重量%である。
本発明において,水性コーティング組成物に含まれるシランカップリング剤としては,アミノ基を有するものが好ましい。シランカップリング剤は,一般式,RnSiX4-n(nは1,2又は3。nが2または3の場合は,Rは全て同一でも異なっていてもよい)で表され,有機物及び無機物の双方に親和性を有する化合物として種々の用途に用いられている化合物であり,多種のものが市販されている。該一般式中Xは,加水分解性の基であり,例えば,アルコキシ基,アセトキシ基,オキシム基,エノキシ基又はイソシアナート基等が挙げられ,nは1ないし3の整数を表す。またRは,Siに直接に結合した炭素原子を有する種々の有機基であり,例えば,置換されていてよいアルキル基,置換されていてよいアルケニル基等や,炭素以外の原子例えば酸素,窒素等を介して2個以上の,置換されていてよいアルキル基や置換されていてよいアルケニル基等が連結したものが挙げられる。シランカップリング剤が有する置換基としては種々のものが知られている。それら種々のシランカップリング剤のうち,本発明においては,置換基としてアミノ基を有するものを用いることが特に好ましい。シランカップリング剤RnSiX4-nは,その分子中の基Xが水中で加水分解を受け,徐々に又は速やかに基OHに変換される性質を有する。本発明において,「アミノ基を有するシランカップリング剤」というときは,RnSiX4-nの形のもの及び,また部分的に若しくは完全に加水分解が進行したもの,それが一部縮重合したもの全てを包含する。
アミノ基を有するシランカップリング剤は,酸価が100〜300mg−KOH/gの上記樹脂をガラス表面に強固に接着させるのに極めて有効であることが本発明者らによって見出された。本発明において用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤としては特に制限はないが,例として,γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
本発明の水性コーティング組成物中のシランカップリング剤の濃度は,0.01〜1重量%であることが好ましく,0.05〜0.5重量%であることがより好ましい。シランカップリング剤濃度が0.01重量%未満では,上記樹脂のガラス表面への接着強度が弱まって,コーティングの耐久性が低下する恐れがある。他方,シランカップリング剤濃度を1重量%より高めても効果は変わらず,経済的でない。
本明細書において,「水性コーティング組成物」は,水を主たる媒質とする組成物を意味しており,その限りにおいて,水と混和性の他の媒質が共存することを排除しない。
なお,ガラス容器は,強度とその上に施す有機系コーティングの接着力を増す目的で,成形後徐冷前に三塩化ブチル錫,四塩化錫,四塩化チタン等の蒸気に接触させることによるホットエンドコーティング(酸化錫又は酸化チタンによる表面処理)が,多くの場合に行われるが,本発明におけるコールドエンドコーティング組成物は,ホットエンドコーティング処理の有無に関わりなく,ガラス容器に広く好適に用いることができる。
本発明において,水性コーティング組成物によりガラス製品にコーティングを行うには,ガラス容器や板ガラス等のガラス製品の外表面に,熱時に該水性組成物を接触させればよい。これは,例えば該組成物を単に吹き付けるだけでよいが,これに限定されず,他の方法によってもよい。作業効率及びコーティングの付着効率等を考慮すれば,外表面温度は通常約80〜約130℃の範囲とするのが好ましく,約90〜約120℃の範囲とするのがより好ましい。こうしてコーティングを施されたガラス製品は,コーティング組成物に用いられていた樹脂を,従来の同用途の組成物に比して一層安定してガラス製品の表面にコーティングさせておくことができ,このため,形成された摩擦係数の低い表面が維持され,従ってガラス製品(ガラス容器,板ガラス等)の強度劣化を防止できる上,ガラス容器製造ラインやユーザーサイド(食品工場等)において,コーティングの摩耗や脱落に起因するコンベアガイド等搬送ラインの汚染が防止できる。
本発明において,水性コーティング組成物でコーティングされたガラス製品には,そのまま又は水洗された後に,アクリル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊を裏面(紙製面)に塗布したラベルが貼着される。貼着されたラベルは,優れた易剥離性を示す。ラベルの少なくとも裏面を形作る紙としては,酸性紙(pH6以下)が好ましい。また該酸性紙は,好ましくは,サイズ剤としてロジン及び硫酸バンドが使用されているものである。その他の点においては,ラベルの材質は任意であり,例えば表面側は,適宜なコーティングや印刷などを任意に施したものであっても,また裏面側を構成する紙とは別の材料になるシートを貼り合せて得られたものであってもよい。
また上記ラベルの裏面を形作る紙としては,好ましくは,ステキヒト・サイズ度(耐水度:Stoeckigt Sizing Degree)が35秒以上のものが用いられる。ステキヒト・サイズ度の測定は,JIS P 8122(及びこれに引用のJIS P 8111)により,具体的には以下の手順により行われる。すなわち:
1.試験片(紙)
試験片としては,試験紙の異なった部分から折り目,しわ,すき入れ,汚点などのないものを大きさ50mm角に10枚とる。これにつき,JIS P 8111(試験用紙の前処理)の条件に従い、相対湿度10%〜35%及び温度40℃以下の空気中で24時間前処置する。
2.調湿
試験片の水分と標準状態〔23±1℃,(50±2)%r.h.,JIS P 8111〕にある試験室内の水蒸気を平衡させるために,調湿空気が試験片の表面と自由に接触するようにし,1時間以上の間隔をおいて測定した連続2回の試験片計量値の差が,全質量の0.25%以下になったとき,平衡に達したものとみなす。
3.測定操作
これらの試験片について,上記標準状態の空気中で,試験片の四周を折って箱形にし,シャーレに入れた20±1℃の2%チオシアン酸アンモニウム溶液上に浮かべると同時に,同じ温度の1%塩化第二鉄の溶液をピペットで1滴落としてから,3個の赤色の斑点が現われるまでの時間を秒時計で測り,その秒数をもってステキヒト・サイズ度とする。
アクリル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊は,アクリル系熱可塑性樹脂,フタル酸系固体可塑剤,及び110〜180℃付近に軟化点を有するタッキファイヤー(粘着性付与剤)を含んでなるものであることが好ましい。アクリル系熱可塑性樹脂の例としては,(メタ)アクリル酸エステル重合体,スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体,(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体,スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体,スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるが,これらに限定されない。また,これらはそれぞれ単独で用いてもよく,2種以上を併用しても良い。
上記ディレードタック型感熱性糊を構成するフタル酸系固体可塑剤としては,常温で固体のものを用いることができ,好ましくは融点が50〜180℃のもの,特に好ましくは融点が60〜120℃のものである。そのような固体可塑剤は,ラベルを貼着する際の加熱によって溶融して混合されている熱可塑性樹脂を可塑化し,それにより粘着性を生ずる。
フタル酸系固体可塑剤の例としては,フタル酸エステル類,例えば,フタル酸ジフェニル,フタル酸ジヘキシル,フタル酸ジイソヘキシル,フタル酸ジシクロヘキシル,フタル酸ジ(3,5−ジメチルシクロヘキシル),フタル酸(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル),フタル酸ジ(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル),フタル酸ジボルニル,フタル酸ジヒドロアビエチル,フタル酸ジナフチル;イソフタル酸エステル類,例えば,イソフタル酸ジメチル,イソフタル酸ジベンジル,イソフタル酸ジシクロヘキシル;テレフタル酸エステル類,例えば,テレフタル酸ジメチル,テレフタル酸ジベンジル,テレフタル酸ジシクロヘキシル,テレフタル酸(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)等が挙げられるが,これらに限定されない。またこれらは,それぞれ単独で用いてもよく,2種以上を併用してもよい。
上記ディレードタック型感熱性糊におけるフタル酸系固体可塑剤の含有量は,同糊を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対し,好ましくは30〜1000重量部であり,より好ましくは80〜600重量部,特に好ましくは150〜350重量部である。
上記ディレードタック型感熱性糊を構成する軟化点110〜180℃付近のタッキファイヤーとしては,テルペン樹脂,脂肪族系石油樹脂,ロジン系〔ロジン,ロジン誘導体(重合ロジン,水添ロジン等)〕のタッキファイヤーが周知であり,適宜用いることができ,特にテルペン樹脂系及びロジン系タッキファイヤーを好ましく用いることができる。
上記ディレードタック型感熱性糊におけるタッキファイヤーの含有量は,同糊を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対し,好ましくは10〜500重量部であり,より好ましくは15〜300重量部,特に好ましくは20〜100重量部である。ラベルの裏面へのディレードタック型感熱性糊の塗布は,ロールコーター方式,リバースコーター方式,ナイフコーター方式,エアードクターコーター方式,ブレードコーター方式,グラビアコーター方式,スクリーンコーター方式その他種々の方法から選択すればよい。リバースコーター方式は特に好ましい方式の一つである。
ラベルの裏面(紙面)へのディレードタック型感熱性糊の塗布には,例えば,リバースコーター等の適宜の手段を用いて,ディレードタック型感熱性糊を塗布し(例えば15±8g/m2程度),45〜75℃の熱風を約10秒間吹き付けて乾燥させればよい。これにより,当該糊が裏面に塗布された,常温では裏面に粘着性がなく加熱により始めて粘着性が生ずるラベルが得られる。
コーティングされたガラス製品にラベルを貼着するには,例えば,貼着時にガラス製品の表面温度が40℃付近となるように予めガラス製品を加温しておき,ラベル裏面温度が,例えば90℃付近となるように条件設定してラベラーを運転すればよい。
ラベルの剥離性の評価は,ガラス製品に貼着されたラベルを,手剥離にて剥がし,剥がし易さ(紙破れ度合い)とガラス製品表面への糊残りの度合いを評価することにより行うことができる。
以下,ガラス製品としてガラス容器(ガラスびん)を用いた実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
〔コンベアガイド汚染評価促進試験〕
本発明の構成要素である水性コーティング組成物でコーティングされたガラス容器について,コーティングされた樹脂の摩耗やガラス表面からの脱落に起因する搬送ライン,特にコンベアガイドの汚染評価のための促進試験は,ラインシミュレーターを用いて行った。本明細書において「ラインシミュレーター」とは,製造後に流通過程に置かれたガラス容器の表面に通常加えられるであろう物理的損傷を実験的に予測するための手段としてガラスびん業界で従来より用いられている,アメリカングラスリサーチ社(AGR International, INC., Butler, PA, USA)製の試験装置をいう。その構造,寸法等,各種の設定及び使用方法は以下の通りである。
図1は,ラインシミュレーターの側面から見た概要図である。ラインシミュレーターは,概略円筒状の形態であり装置本体の外枠を形成している,上部の開放されたカバー18の内側に,回転円板1(ステンレス鋼製)と,この上面に固定されて回転円板1と共に回転する同径の回転円板2(ベークライト製)とが備えられている。回転円板1及び2は,モーター3によって駆動され,所定速度で回転される。カバー18の内壁全周に沿って,断面概略円形のプラスチック製ガイドレール4が,上下2段に環状に設けられている。回転円板2上には,試験するガラス容器のサイズに応じて4通りのサイズのものから規定に従って選択される円形の交換プレート7の1つが載せられ,ハンドル8を有するネジ式の固定具により回転円板1及び2の軸に取り付けられる。交換プレート7は,その外周に沿ってブラケット6を備えており,ブラケット6の外周側には,断面概略円形のプラスチック製ガイドレール5が,上下2段に環状に設けられている。図において,回転円板1の下には3枚のスペーサー9が挿入されている。個々に分離できるこれらのスペーサー9は,回転円板1を下方から支える働きをすると共に,回転円板1の高さを調節するために用いられる。すなわち,試験すべきガラス容器の高さに応じ,後述する規定に従って,スペーサー9の幾つか(0〜3枚)を回転円板2と交換プレート7との間に挿入することにより,回転円板1の(従って同時に回転円板2の)高さが調節される。試験すべきガラス容器は,ガイドレール4及び5の間において回転円板2上に立てて並べられる。
図1において,10は,回転円板2上に突出したゲートである。ゲート10は,図2において詳細に図解するように,カバー18の外側に位置する支点において鉛直な軸の周りに回動可能に支持されたレバーの形態であり,カバー18に設けられたスロットを通って
カバー18の内側,回転円板2の上方に突出するように配置されている。図1においては,ゲート10はそのレバーの先端のみが示されている。ゲート10には,その先端付近につる巻バネ11の一端が取り付けられている。カバー18の外面には,貫通する雌ネジを備えたブロック19が固定されている。ゲート調整ネジ20aが,この雌ネジ内にねじ込まれており,ゲート調整ネジ20aの先端はブロック19を通ってカバー18の内側に突出している。ゲート調整ネジ20aの先端には,前記つる巻バネ11の他端が取り付けられている。20bは,ゲート調整固定ネジであり,これを調整済みのゲート調整ネジ20aの周りに回してブロック19に対して押しつけることにより,ゲート調整ネジ20aを動かないようその位置に固定することができる。
図1において,12は,回転円板2に載せられたガラス容器の外表面に常温の水を掛けるためのスプレーヘッドである(噴出口内径2mm)。掛けられた水は回転円板1及び2とカバー18との隙間より落下し,外周において下方へと傾斜の付けられた円形のアルミ板16とカバー18との隙間よりドレーントラップ14内に落下してドレーン用接続口15を介して排出される。回転円板1及び2の回転時間は,セットタイマー13を操作することにより所定長さに設定される。
図2は,図1に示したラインシミュレーターのゲート10付近の構造を示す平面図である。図1が示すように,ゲート10は支点Aを中心として鉛直軸周りに回動可能に支持されている。つる巻バネ11はその一端において,ゲート調整ネジ20aの先端に取り付け
られ,他端においてゲート10の先端付近に設けられた円柱状のピンに取り付けられている。ゲート10には,ガラス容器と接触する面にコンベアガイド材と同じガイド部材「ニューライト(登録商標)板」(作新工業株式会社製 超高分子量ポリエチレン)10aが皿ネジで固定されており,ガイド部材10aは,ガラス容器が連続的に接触したときの汚染の評価に供される。21及び22は,装置内に並べられたガラス容器のうちの2個を表している。ガラス容器は,試験に当たってガイドレール4と5の間の回転円板2上に,後述の仕方で多数並べられる。矢印は,回転円板2の回転方向を示す。
図2を参照して,各部位の寸法は次の通りである。
1)ガイドレール4の内径・・・・613mm
2)カバー18の外径・・・・637mm
3)カバー18の外周と支点Aとの最短距離・・・・19mm
4)ゲート調整ネジの中心軸と支点Aとが回転円板1の中心軸に対して作る角度・・・・26.3°
5)支点Aとゲート先端との距離・・・・178mm
6)ガイド部材先端表面とカバー18との距離・・・・30mm
<交換プレートの選択方法>
また,ブラケット6及びガイドレール5を伴った4通りのサイズの交換プレート7(No.1〜4)は,そのガイドレール5の外径がそれぞれ48.3cm(No.1),44.5cm(No.2),40.3cm(No.3)及び32.0cm(No.4)である。試験において用いる交換プレート7のサイズの選択は,ガラス容器の外径に従って行われる。すなわち:
1)ガラス容器外径58.4mm以下・・・・・・・No.1
2)ガラス容器外径58.4〜73.7mm・・・・No.2
3)ガラス容器外径73.7〜96.5mm・・・・No.3
4)ガラス容器外径96.5〜129.5mm・・・No.4
<スペーサーの配置方法>
図1に示したスペーサー9は,試験すべきガラス容器の高さに応じて,次の通りに配置される。すなわち:
1)容器高さ228.6mm以下・・・・3枚のスペーサー9全てを回転円板1とアルミ板16との間に配置する。
2)容器高さ152.4〜254.0mm・・・・2枚のスペーサー9を回転円板1とアルミ板16との間に配置し,1枚のスペーサー9を回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
3)容器高さ177.8〜279.4mm・・・・1枚のスペーサー9を回転円板1とアルミ板16との間に配置し,2枚のスペーサー9を回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
4)容器高さ203.2〜304.8mm・・・・3枚のスペーサー9全てを回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
<ゲートの調整方法>
図2を参照。直径約52mmのガラス容器表面のコーティングを評価するにあたり,ゲート10に取り付けた厚さ約5mmのガイド部材10aの表面先端とカバー18との距離が30mmとなるように,ゲート調整ネジ20aで位置決めし,次いで,ゲート調整固定ネジ20bを締め付けることにより,ゲート調整ネジを固定する。ここにおいて,ラインシミュレーターで用いられるつる巻バネ11は,自然長3.6cm,ゲート調整ネジ20aの先端がゲート10の先端付近の円柱状のピンに突き当ったときの長さ1.3cm,及びバネ定数65.4N/cmである。
<回転数,噴出水量>
回転円板1及び2の回転数・・・・36回転/分
スプレーヘッド12からの噴出水量・・・・180mL/分
<使用方法>
前記の各規定に従って,試験すべきガラス容器の外径及び高さに応じて交換プレート7及びスペーサー9を取り付け,ゲートを調整し固定する。ガラス容器をガイドレール4の内周に沿って,該内周に接触させた状態で,ガラス容器相互に隙間をあけないように一列に,先頭のガラス容器と最後尾のガラス容器との間の間隔がガラス容器1個分に満たなくなるまで,順次並べる。セットタイマー13を所望の時間に設定すると共に,スプレーヘッド12から噴出される水の流量を設定する。回転円板1及び2の回転を開始し,スプレーヘッドからの水をガラス容器の外表面に掛けながら,設定した時間の長さにわたって装置の運転を持続する。
<ラインシミュレーターの機能>
回転円板1及び2の回転に伴い,その上に載っているガラス容器(21,22等)はゲート10へと順次送られ,次々とゲート10を押し,つる巻バネ11による付勢に抗してゲート10を押し広げて通過するが,そのときガラス容器表面のコーティングがガイド部材との摩擦により擦れ落ち,その程度の大小により,ガイド部材の汚染程度が変化する。ガラス容器をこの状態に一定時間置くことにより,ラインシミュレーター処理は,搬送ラインにおけるガラス容器のコーティングの耐久性を,より過酷な条件で短期間に評価することを可能にする。
〔表面滑り角度測定〕
日本ガラスびん協会規格(昭和52年6月15日制定,平成17年3月22日追加・改正(6))「7.14 表面滑り角度測定方法」は,ガラスびんにつき以下の手順及び基準により表面滑り角度を測定すべきことを規定しており,これに従ってガラス容器につき表明滑り角度の測定を行った。
<試料>
(1)試料びん: コーティング剤が完全に乾燥したびんを採取し,びん温度が室温になるまで放冷したものを試料びんとする。
(2)試料びんの採取: 1測定ごとに9本以上の試料びんを採取する。但し,サンプリング時および測定時においてびんの胴面を手で触れないこと。
<測定方法>(図3を参照)
(1)平行調整ネジ37で水平にしたびん保持台34上に試料びん32及び33を接して並べ,びん底をストッパーに密着させ,更にびん32と33が横方向にズレないようストッパーを当てる。
(2)試料びん32と33の上に試料びん31を置き三角形に積み重ねる。
(3)試料びんは3本とも同一方向に並べ,びん表面は彫刻や合わせ目のある面は避けストレート面が接するようにする。
(4)びん保持台に徐々に傾斜角度をつけるため,ハンドル36を廻し,試料びん31が滑り始めた位置の目盛りを読み記録する。
(5)測定は,1測定に3本のびんを用い,再度測定に使うことはしない。但し,測定は3回以上行う。
〔コーティング実施例1〕
α−オレフィンと無水マレイン酸及びマレイン酸モノ・イソプロピルエステルの共重合体(α−オレフィンは炭素数10超)〔ベーカー・ペトロライト社製,商品名:セラマー1608,CAS No.75535−27−2,酸価154mg−KOH/g(以下,単位省略),ケン化価190mg−KOH/g(以下,単位省略),数平均分子量2580〕を,N,N−ジメチルアミノエタノールを用いて常法により水性分散体としたものを準備した(水性分散体A)。樹脂と塩基の合計濃度は約15重量%〔重量%比は,樹脂:塩基=約2:1〕,平均粒径は約0.2μmである。この水性分散体6.7mLを800mLの蒸留水に加えて混合した(A−1液)。また,アミノ基を有するシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング(株)製 A−1100)1.0mLを200mLの蒸留水に加えて混合した(C−1液)。A−1液とC−1液を混合し,この溶液をガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。
次に,慣用の方法で表面にホットエンドコーティングを施した内容量140mL,質量160gのドリンク剤用ガラス容器を用意し,それらを恒温乾燥器中で115℃にて60分間保持した。上記ガラス表面処理用水性コーティング組成物をハンド式スプレーガンのカップに移し,コンプレッサーから供給されるエアの噴出量とその圧力をスプレーガンの手元で調整することにより,スプレー量を80mL/分に固定した。次いで,外表面温度約105℃に加温した上記ガラス容器を1個ずつターンテーブルの中心に置き,該ターンテーブルを2回転(1回転約2秒)させる間に,そのガラス容器に約50cmの距離から上記コーティング組成物をスプレーすることにより,ガラス容器の外表面に該組成物を均一に,液垂れのないように塗布した。塗布後,そのままの状態でガラス容器を室温まで放冷した。この手順により,以下の試験に必要な個数のコールドエンドコーティング済みガラス容器を用意した。
ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は8〜11°であった。70℃の湯に10分間浸漬(湯洗)したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は7〜8°であった。コールドエンドコーティングを施さなかった同じガラス容器について別途測定した滑り角度は,21〜25°であった。これらのことは,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面にも,α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングが十分付着していることを示している。
〔コーティング実施例2〕
コーティング実施例1と同じ調合比で約100Lのガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物を調製した。水は純水(イオン交換水)を使用した。製びん工場の製造ラインでホットエンドコーティング処理され,さらに徐冷炉で徐歪された外表面温度約100〜110℃の内容量140mL,質量160gのドリンク剤用ガラス容器の表面に,2本のスプレーガンを用いて該コーティング組成物をスプレーした。スプレー量はガン1本あたり80又は100mL/分とし,スプレーは,1列30本のガラス容器に対し,列の両側から約4秒かけてスプレーガンを走行させながら行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度はそれぞれ7〜8°又は7〜9°であった。また,70℃の湯に10分間浸漬したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度はそれぞれ10〜13°又は10〜14°であった。さらに,ガン1本あたり100mL/分に調整してスプレーしたガラス容器を,85℃の湯に10分間浸漬した後の表面滑り角度は9〜12°であった。このことは,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面にも,α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングが十分付着していることを示している。
〔コーティング実施例3〕
コーティング実施例1と同じ水性分散体A 530mLを80Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(A−2液)。また,アミノ基を有するシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン〔東レダウコーニング(株)製 A−1100〕80mLを20Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(C−2液)。A−2液とC−2液を混合し,この溶液をガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この水性コーティング組成物を製びん工場の製造ラインで,コーティング実施例2と同様に,但しガラス容器の表面にガン1本あたりのスプレー量を80mL/分として,コーティングを行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度は8〜13°であった。また,70℃の湯に10分間浸漬したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は11〜14°であった。このことは,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面にも,α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングが十分付着していることを示している。
〔コーティング比較例1〕
ポリエチレンワックス(ハネウェル社製 AC#629ポリエチレンワックス:酸価15,樹脂軟化点101℃)の水性エマルジョン(乳化剤として非イオン系界面活性剤及びオレイン酸カリウム,中和剤としてKOHを使用して常法により製造。固形分濃度:約12重量%)1Lを100Lの純水(イオン交換水)に加えて混合し,この溶液をガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この水性コーティング組成物を製びん工場の製造ラインで,コーティング実施例2と同様に,但しガン1本あたりのスプレー量を90mL/分として,コーティングを行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は7〜9°であった。また,70℃の湯に10分間浸漬したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は14〜18°であった。このことは,従来のポリエチレンコーティングは,本発明において用いられているα−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングに比べ脱落しやすいことを示している。
〔コーティング実施例4〕
コーティング実施例1と同じ水性分散体A 1350mLを80Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(A−3液)。また,アミノ基を有するシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製 KBE−903〕200mLを20Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(C−3液)。A−3液とC−3液を混合し,この溶液をガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この水性コーティング組成物を製びん工場の製造ラインで,コーティング実施例2と同様に,但しガラス容器の表面に,ガン1本あたりのスプレー量を100mL/分として,コーティングを行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度は7〜8°であった。また,70℃又は85℃の湯に10分間浸漬したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度はそれぞれ8〜9°又は9〜10°であった。このことは,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面にも,α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングが十分付着していることを示している。
〔コーティング実施例5〕
α−オレフィンと無水マレイン酸及びマレイン酸モノ・イソプロピルエステルの共重合体(α−オレフィンは炭素数10超)〔ベーカー・ペトロライト社製,商品名:セラマー1608,CAS No.75535−27−2,酸価154mg−KOH/g(以下,単位省略),ケン化価190mg−KOH/g(以下,単位省略),数平均分子量2580〕を,水酸化カリウムを用いて常法により水性分散体としたものを準備した(水性分散体B)。樹脂と塩基の合計濃度は約17重量%〔重量%比は,樹脂:KOH=約5:1〕,平均粒径は約0.1μmである。この水性分散体670mLを80Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(B−1液)。また,アミノ基を有するシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBE−903)100mLを20Lの純水(イオン交換水)に加えて混合した(C−4液)。B−1液とC−4液を混合し,この溶液をガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この水性コーティング組成物を製びん工場の製造ラインで,コーティング実施例2と同様に,但しガラス容器の表面にガン1本あたりのスプレー量を100mL/分として,コーティングを行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度は8〜10°であった。また,80℃の湯に10分間浸漬したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は9〜11°であった。このことは,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面にも,α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体樹脂コーティングが十分付着していることを示している。
〔コーティング実施例6〕
コーティング実施例2で得たガラス容器(ガン1本あたりのスプレー量80及び100mL/分),コーティング実施例4,コーティング実施例5で得たガラス容器(ガン1本あたりのスプレー量100mL/分)及びコーティング比較例1で得たガラス容器(ガン1本あたりのスプレー量90mL/分)をそれぞれ160本準備し,32本ずつ5グループに分けた。各グループ32本をラインシミュレーター(LS)にかけ,LS=0,1,5,10,15分のサンプルを作製した。また,計31分間ラインシミュレーター試験を実施した後のゲートに固定したガイド部材表面の汚れを観察した。その結果,コーティング実施例2,コーティング実施例4及びコーティング実施例5のガラス容器は何れもガイド部材を全く汚さず,ガイド部材は試験開始前と同様清浄に保たれたのに対し,コーティング比較例1のガラス容器ではガイド部材は著しく汚染された。試験後のガイド部材の表面の典型例を図4に対比した写真で示す。図において,上側(a)はコーティング実施例2(ガン1本あたりのスプレー量80mL/分)のガラス容器で試験後のガイド部材,下側(b)はコーティング比較例1のガラス容器で試験後のガイド部材である。
コーティング実施例2のガラス容器2種類(ガン1本あたりのスプレー量80mL/分及び100mL/分のもの),コーティング実施例5及びコーティング比較例1のガラス容器について,ラインシミュレーター(LS)による処理に伴う表面の滑性の変化を,処理時間0,1,5,10,15分間のそれぞれについて,前記の日本ガラスびん協会規格7.14 表面滑り角度測定方法に基づいて評価した(各n=12)。結果を表1〜4に示す。また,LS試験経過時間と表面滑り角度の平均値の変化を図5に示す。これらの結果から,コーティング実施例2及びコーティング実施例5の水性コーティング組成物で処理したガラス容器では,コーティング比較例1と比べて表面滑り角度の上昇が顕著に抑えられ,滑り性が維持されていることが分かる。




ラインシミュレーター(LS)による処理に伴う表面の滑性の変化についての以上の結果から,コーティング実施例2及びコーティング実施例5のガラス表面処理用水性コーティング組成物は,コーティング比較例1の従来のコーティング組成物と比べ,耐久性の良好なコールドエンドコーティングを形成することがわかる。
〔ラベリング実施例1〜4,ラベリング比較例1〜6〕
コーティング実施例2,4,5及びコーティング比較例1に従ってコーティングを施したガラス容器を新たに準備した。また,それらに加えて,市販のガラスびん用の保護剤であるライオミックスGL〔ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル含有(30%)弱酸性水溶液,ライオン(株)〕の1Lを100Lの純水(イオン交換水)に加えて混合したものをコーティング組成物として用いて次のようにコーティングを施したガラス容器を別に準備した。すなわち,製びん工場の製造ラインで(ホットエンドコーティングは行わずに)徐冷炉で徐歪された外表面温度約80〜90℃の内容量140mL,質量160gのドリンク剤用ガラス容器の表面に,2本のスプレーガンを用いて該コーティング組成物をスプレーした。スプレー量はガン1本あたり90mL/分とし,スプレーは,1列30本のガラス容器に対し,列の両側から約4秒かけてスプレーガンを走行させながら行った。
これらのガラス容器に対して,以下の手順に従ってディレードタック型感熱性ラベルを作製して表面に貼着し,その易剥離性(剥がし易さ,及び糊残りの程度)について試験した。
<ラベルの作製>
ラベル用紙として,次の特性を有する片面アート紙A〜Cを準備した。

アクリル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊(a)〔可塑剤としてフタル酸系固体可塑剤,タッキファイヤーとしてテルペン樹脂系タッキファイヤーを含有,不揮発分52〜56%の水性エマルジョン,粘度180〜270mPa/s,pH7.0〜8.5)〕,SBR(スチレン−ブタジエンゴム)系樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊(b)若しくはエチレン酢酸ビニル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊(c)を,上記片面アート紙A〜Cの裏面(非コート面)にリバースコーターで15g/m2塗布し,45〜75℃の熱風を約10秒間吹きつけて乾燥させることにより,各ディレードタック型感熱性糊付きラベルを作製した。
<ラベリング>
予め,ガラス容器を70℃の湯で10分間洗浄し,自然乾燥させておいた。ラベリング時に,ガラス容器の表面温度が約40℃になるよう,ガラス容器に温湯を満たし,上記の各ディレードタック型感熱性糊付きラベルを用いて,下記のラベラー条件でラベリングを行った。
ラベラー: 光洋自動機製LR−126K型
ラベリング速度: 80容器/分
熱風温度: 280℃
貼り付けドラム表面温度: 100℃
ラベル裏面温度: 90℃
<ラベルの貼着状態の評価>
上記で得られたラベル貼着ガラス容器の各々について,手剥離によりラベルを剥がし,(1)剥がし易さ(紙破れ度合い)及び(2)ガラス容器表面への糊残りの度合いを評価した。結果を表6に示す。
(1)剥がし易さの判定基準
○:紙破れなく剥離が可能
△:部分的に紙破れし剥離困難
×:全面的に紙破れし剥離不可能
(2)糊残りの判定基準
○:糊残りなし
△:糊残り少ない
×:糊残り多い

以上の結果から,本発明のラベル貼着ガラス容器は,ラベル貼着前に熱水処理に付されてもガラス容器表面にコーティングが残存して滑り性を維持でき,しかも摩耗やガラス容器表面からの脱落に起因する搬送ライン,特にコンベアガイドの汚染を防止でき,しかもそのコーティングされた表面に貼着したディレードタック型感熱性ラベルが,常温乾燥状態において糊残りなく容易に剥がせることが分かる。
本発明は,(1)ガラス容器の洗浄及び内容物の殺菌のために行われる熱水処理に付されてもガラス容器表面に残存して傷付き防止に機能でき,(2)摩耗やガラス容器表面からの脱落に起因する搬送ライン,特にコンベアガイドの汚染を防止できるという特徴を有するガラス用の水性コーティング組成物でコーティングしたガラス製品であって,表面に貼着されたラベルを,常温乾燥状態において糊残りなく容易に剥がせるものを提供するために利用することができる。
ラインシミュレーターの側面から見た概要図 ラインシミュレーターのゲート付近の構造を示す平面図 表面滑り角度測定方法を示す概要図 コーティング実施例2及びコーティング比較例1でそれぞれ得たガラス容器のラインシミュレーター試験後の,ガイド部材の典型的な表面状態を示す写真 ラインシミュレーター試験経過時間に伴うガラス容器の表面滑り角度の変化を示すグラフ
符号の説明
1=回転円板(ステンレス鋼製)
2=回転円板(ベークライト製)
3=モーター
4=ガイドレール
5=ガイドレール
6=ブラケット
7=交換プレート
8=ハンドル
9=スペーサー
10=ゲート
11=バネ
12=スプレーヘッド
13=セットタイマー
14=ドレーントラップ
15=ドレーン用接続口
16=アルミ板
17=パッキング
18=カバー
19=ブロック
20a=ゲート調整ネジ
20b=ゲート調整固定ネジ
21=ガラス容器
22=ガラス容器
31〜33=試料びん
34=びん保持台
35=目盛り板
36=ハンドル
37=平行調整ネジ

Claims (15)

  1. コーティング組成物によりコーティングされた表面にラベルを貼着してなるガラス製品であって,
    該コーティング組成物が,塩基の存在下,水中に樹脂を分散した状態で含有させ,且つシランカップリング剤を含有させてなる水性コーティング組成物であって,該樹脂が,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び該共重合体の部分反応物のうちの少なくとも1種であり,該樹脂の酸価が100〜300mg−KOH/gであり,該樹脂のケン化価が150〜320mg−KOH/gであり,該樹脂の数平均分子量が1500〜4000であり,そして該樹脂におけるα−オレフィンの炭素数が10〜50である,水性コーティング組成物であり,且つ
    該ラベルが,アクリル系熱可塑性樹脂ベースのディレードタック型感熱性糊が裏面に塗布された,少なくとも当該裏面が紙よりなるラベルであって,該紙が酸性紙である
    ことを特徴とする,ラベル貼着ガラス製品。
  2. 該樹脂の酸価が120〜250mg−KOH/gであり,該樹脂のケン化価が160〜270mg−KOH/gである,請求項1のラベル貼着ガラス製品。
  3. 該コーティング組成物に含有させた樹脂である該共重合体の部分反応物が,少なくとも一部の無水マレイン酸モノマー単位においてアルキルエステル化によりグラフト変性されてなるものである,請求項1又は2のラベル貼着ガラス製品。
  4. 該アルキルエステル化がモノアルキルエステル化である,請求項のラベル貼着ガラ製品。
  5. 該コーティング組成物に含有させたシランカップリング剤がアミノ基を有するものである,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  6. 該コーティング組成物における樹脂と塩基の合計濃度が0.05〜1重量%である,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  7. 該コーティング組成物における樹脂の濃度が0.03〜0.6重量%である,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  8. 該コーティング組成物におけるシランカップリング剤の濃度が0.01〜1重量%である,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  9. 該コーティング組成物が該樹脂以外の界面活性剤を含有しないものである,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  10. 該紙のステキヒト・サイズ度が35秒以上である,請求項1ないしの何れかのラベル貼着ガラス製品。
  11. 該紙が,サイズ剤としてロジン及び硫酸バンドを使用したものである,請求項1ないし10の何れかのラベル貼着ガラス製品。
  12. 該ディレードタック型感熱性糊が,アクリル系熱可塑性樹脂,フタル酸系固体可塑剤,及びテルペン樹脂系又はロジン系タッキファイヤーを含んでなるものであることを特徴とする,請求項1ないし11の何れかのラベル貼着ガラス製品。
  13. 該水性コーティング組成物を表面にコーティングした該ガラス製品が,該表面を,該コーティングより前にホットエンドコーティングしてあるものである,請求項1ないし12の何れかのラベル貼着ガラス製品。
  14. ガラス容器である,請求項1ないし13の何れかのラベル貼着ガラス製品。
  15. 板ガラスである,請求項1ないし12の何れかのラベル貼着ガラス製品。

JP2007213426A 2007-08-20 2007-08-20 感熱ラベル貼着ガラス製品 Active JP4916977B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007213426A JP4916977B2 (ja) 2007-08-20 2007-08-20 感熱ラベル貼着ガラス製品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007213426A JP4916977B2 (ja) 2007-08-20 2007-08-20 感熱ラベル貼着ガラス製品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009046348A JP2009046348A (ja) 2009-03-05
JP4916977B2 true JP4916977B2 (ja) 2012-04-18

Family

ID=40498939

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007213426A Active JP4916977B2 (ja) 2007-08-20 2007-08-20 感熱ラベル貼着ガラス製品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4916977B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019211397A (ja) 2018-06-07 2019-12-12 松林工業株式会社 タングステンシート及び放射線防護服
JP2023129854A (ja) * 2022-03-07 2023-09-20 東洋ガラス株式会社 コーティング処理済ガラス容器およびその製造方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5142712A (en) * 1974-10-09 1976-04-12 Hitachi Ltd Keikotaihimakuno keiseihoho
JPS573869A (en) * 1980-06-11 1982-01-09 Ishizuka Glass Ltd Coating agent
JPS57165466A (en) * 1981-04-06 1982-10-12 Ishizuka Glass Ltd Coating agent
JPH0621268B2 (ja) * 1985-07-12 1994-03-23 出光石油化学株式会社 コ−テイング剤
JPH07286073A (ja) * 1994-04-19 1995-10-31 Sanyo Chem Ind Ltd 水性樹脂組成物およびコーテイング剤
JPH10203054A (ja) * 1997-01-21 1998-08-04 Mitsubishi Paper Mills Ltd 記録用紙
JPH11286661A (ja) * 1998-04-02 1999-10-19 Mitsubishi Paper Mills Ltd 感熱性粘着シート
JP2004117941A (ja) * 2002-09-27 2004-04-15 Daicel Chem Ind Ltd 感熱性記録用シート
JP4330006B2 (ja) * 2004-09-13 2009-09-09 株式会社リコー 感熱粘着層を有する感熱記録材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009046348A (ja) 2009-03-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4813546B2 (ja) 水性コーティング組成物及びガラス製品
JP4804007B2 (ja) 粘着製品
RU2477739C2 (ru) Адгезивная композиция для снимаемой самоклеящейся этикетки
JP5504487B2 (ja) 水性コーティング剤、ガラス容器のコーティング方法及びガラス容器
JP2011529521A (ja) 自己接着性ラベル用接着剤組成物と、それを有する物品
JP5348932B2 (ja) ラベル用接着剤
JP2012522853A (ja) 苛性アルカリ除去能を有するホットメルト接着剤配合物
JP4916977B2 (ja) 感熱ラベル貼着ガラス製品
US20160186023A1 (en) Additive for caustic removable hot melt adhesives and formulations containing the same
JP5794875B2 (ja) 水性コーティング組成物及びガラス製品
JP4304682B2 (ja) 感熱ラベル,ホットメルト型接着剤および感熱ラベルの剥離方法
JP4310261B2 (ja) ガラス製品
JP2014514408A (ja) 苛性除去可能なホットメルト接着剤用の添加剤およびそれを含む配合物
JP3018868B2 (ja) 高速ラベラー用感熱性粘着シート
JP2001092358A (ja) 感熱ラベル、感熱ラベル用ホットメルト型接着剤および感熱ラベルの剥離方法
US11267997B2 (en) Friction-activated adhesive formulations and application devices
JP2001294824A (ja) 物品固定用粘着テープ
JP4353645B2 (ja) ガラス容器用コールドエンドコーティング組成物及びガラス容器
US20240059941A1 (en) Acrylic pressure sensitive adhesive composition for food packaging label application
JP2002097432A (ja) 粘着剤組成物
JP3497878B2 (ja) 感熱性粘着シート
JPH1192178A (ja) ガラス容器の擦り傷隠蔽剤及びガラス容器の擦り傷隠蔽方法
JP2000098904A (ja) 感熱透明ラベルおよび貼付方法
JP2005097353A (ja) ディレードタック型粘着剤組成物及び粘着ラベル
JP5215571B2 (ja) ラベル、ラベル付き容器及びラベルの剥離方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100805

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111011

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111205

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120117

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120125

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150203

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4916977

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250