JP5794875B2 - 水性コーティング組成物及びガラス製品 - Google Patents
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Description
1.塩基の存在下,水中に樹脂(A)と樹脂(B)とを分散した状態で含有させてなる水性コーティング組成物であって,樹脂(A)が,軟化点110℃以上のポリエチレンワックスであり,樹脂(B)が,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び該共重合体の部分反応物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする水性コーティング組成物。
2.樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比が,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=35/65〜80/20である,上記1の水性コーティング組成物。
3.樹脂(A)の酸価が20〜40mg−KOH/gであり,樹脂(B)の酸価が100〜300mg−KOH/gである,上記1又は2の水性コーティング組成物。
4.樹脂(A)の軟化点が130℃以上である,上記1ないし3の何れかの水性コーティング組成物。
5.樹脂(A)の25℃における針入度が0.1mm以下である,上記1ないし4の何れかの水性コーティング組成物。
6.該α−オレフィンの炭素数が10〜50である,上記1ないし5の何れかの水性コーティング組成物。
7.該共重合体の部分反応物が,少なくとも一部の無水マレイン酸モノマー単位においてアルキルエステル化によりグラフト変性されてなるものである,上記1ないし6の何れかの水性コーティング組成物。
8.該アルキルエステル化がモノアルキルエステル化である,上記7の水性コーティング組成物。
9.樹脂(A)及び樹脂(B)の合計濃度が,それらのカリウム塩重量換算で,0.05〜1重量%である,上記1ないし8の何れかの水性コーティング組成物。
10.樹脂(A)の酸価が25〜35mg−KOH/gであり,樹脂(B)の酸価が120〜250mg−KOH/gである,上記1ないし9の何れかの水性コーティング組成物。
11.樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比が,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=40/60〜75/25である,上記1ないし10の何れかの水性コーティング組成物。
12.該α−オレフィンの炭素数が14〜40である,上記1ないし11の何れかの水性コーティング組成物。
13.上記1ないし12の何れかの水性コーティング組成物を表面にコーティングしたことを特徴とするガラス製品。
14.該水性コーティング組成物を表面にコーティングした該ガラス製品が,該表面を,該コーティングより前にホットエンドコーティングしてあるものである,上記13のガラス製品。
15.ガラス容器である,上記13又は14のガラス製品。
16.板ガラスである,上記13のガラス製品。
17.ガラス表面を,表面温度80〜130℃にて上記1ないし12の何れかの水性コーティング組成物と接触させることを特徴とする,ガラス表面処理方法。
樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比は,高温,超高速充填ラインでの使用,充填ラインの汚染性,ガラス容器の強度維持等を考慮すると,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=40/60〜75/25であることがより好ましく,(A)/(B)=50/50〜75/25であることが更に好ましい。
樹脂(A)の酸価が20mg−KOH/g未満であると,水性コーティング組成物中における樹脂(A)の分散安定性が低下すると共に,コーティング表面へのラベルやシールの接着性が不十分となる虞があり,ガラス容器ユーザーにおけるコンベアガイドの汚染が酷くなる虞もある。逆に酸価が40mg−KOH/gを超えると,ラベルやシールの易剥離性が得られなくなる虞がある。
水性コーティング組成物の分散安定性,ラベルやシールの接着性,易剥離性,コーティングの耐水性,高温殺菌,高速充填ラインでの使用,コンベアガイドの汚染低減等を考慮すると,樹脂(A)の酸価は25〜35mg−KOH/gであり,樹脂(B)の酸価は120〜250mg−KOH/gであることがより好ましい。なおここに,「酸価」とは,樹脂1g中に含まれるカルボキシル基を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
高温殺菌,高速充填ラインでの使用を考慮すると,樹脂(A)の針入度は0.05mm(0.5dmm)以下であることがより好ましい。
なお,アルキル側鎖にカルボキシル基を別途導入する等の方法で,酸価を増大させてもよい。
1.ラベル剥離試験
実験室においてガラス容器へ紙製ラベルを貼り付ける場合は,糊の使用量が過剰にならないよう,200メッシュスクリーンに(線幅1.2mm,線間隔1.1mmの)線状パターン(全長,前幅はラベルサイズに合わせる)を形成し,スキージーを用いて糊を紙製ラベル裏面に直接塗布し,ガラス容器表面に貼りつける。食品工場,製薬工場等においてガラス容器へ紙製ラベルを貼り付ける場合は,通常のラベラーまたは感熱ラベラーを用いる。
ガラス容器表面に貼り付けた紙製ラベルの角部を爪で剥がし,剥がれた部分を摘んでラベルを引き剥がし,ラベルが破断した時点をもって1回の剥離操作とする。ラベルが破断せず1回でラベルが剥がれた場合を◎,2〜3回でラベルが剥がれた場合を○,3回目の操作後もラベルが完全には剥がれないが,残存率が30%以下の場合を△,残存率が30%を超える場合を×として評価する。
ガラス容器製造ラインや食品メーカー,製薬メーカーの充填ラインにおけるコンベアガイド汚染評価のための促進試験は,ラインシミュレーターを用いて行う。本明細書において「ラインシミュレーター」とは,製造後に流通過程に置かれたガラス容器の表面に通常加えられるであろう物理的損傷を実験的に予測するための手段としてガラスびん業界で従来より用いられている,アメリカングラスリサーチ社(AGR International, INC., Butler,
PA, USA)製の試験装置をいう。その構造,寸法等,各種の設定及び使用方法は以下の通りである。
カバー18の内側,回転円板2の上方に突出するように配置されている。図1においては,ゲート10はそのレバーの先端のみが示されている。ゲート10には,その先端付近につる巻バネ11の一端が取り付けられている。カバー18の外面には,貫通する雌ネジを備えたブロック19が固定されている。ゲート調整ネジ20aが,この雌ネジ内にねじ込まれており,ゲート調整ネジ20aの先端はブロック19を通ってカバー18の内側に突出している。ゲート調整ネジ20aの先端には,前記つる巻バネ11の他端が取り付けられている。20bは,ゲート調整固定ネジであり,これを調整済みのゲート調整ネジ20aの周りに回してブロック19に対して押しつけることにより,ゲート調整ネジ20aを動かないようその位置に固定することができる。
られ,他端においてゲート10の先端付近に設けられた円柱状のピンに取り付けられている。ゲート10には,ガラス容器と接触する面にコンベアガイド材と同じガイド部材「ニューライト(登録商標)板」(作新工業株式会社製 超高分子量ポリエチレン)10aが皿ネジで固定されており,ガイド部材10aは,ガラス容器が連続的に接触したときの汚染の評価に供される。21及び22は,装置内に並べられたガラス容器のうちの2個を表している。ガラス容器は,試験に当たってガイドレール4と5の間の回転円板2上に,後述の仕方で多数並べられる。矢印は,回転円板2の回転方向を示す。
1)ガイドレール4の内径:613mm
2)カバー18の外径:637mm
3)カバー18の外周と支点Aとの最短距離:19mm
4)ゲート調整ネジ20aの中心軸と支点Aとが回転円板1の中心軸に対して作る角度:26.3°
5)支点Aとゲート先端との距離:178mm
6)ガイド部材先端表面とカバー18との距離:30mm
また,ブラケット6及びガイドレール5を伴った4通りのサイズの交換プレート7(No.1〜4)は,そのガイドレール5の外径がそれぞれ48.3cm(No.1),44.5cm(No.2),40.3cm(No.3)及び32.0cm(No.4)である。試験において用いる交換プレート7のサイズの選択は,ガラス容器の外径に従って行われる。すなわち:
1)ガラス容器外径58.4mm以下・・・・・・・No.1
2)ガラス容器外径58.4〜73.7mm・・・・No.2
3)ガラス容器外径73.7〜96.5mm・・・・No.3
4)ガラス容器外径96.5〜129.5mm・・・No.4
図1に示したスペーサー9は,試験すべきガラス容器の高さに応じて,次の通りに配置される。すなわち:
1)容器高さ228.6mm以下:3枚のスペーサー9全てを回転円板1とアルミ板16との間に配置する。
2)容器高さ152.4〜254.0mm:2枚のスペーサー9を回転円板1とアルミ板16との間に配置し,1枚のスペーサー9を回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
3)容器高さ177.8〜279.4mm:1枚のスペーサー9を回転円板1とアルミ板16との間に配置し,2枚のスペーサー9を回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
4)容器高さ203.2〜304.8mm:3枚のスペーサー9全てを回転円板2と交換プレート7との間に配置する。
図2を参照。直径約45mmのガラス容器表面のコーティングを評価するにあたり,ゲート10に取り付けた厚さ約5mmのガイド部材10aの表面先端とカバー18との距離が40mmとなるように,ゲート調整ネジ20aで位置決めし,次いで,ゲート調整固定ネジ20bを締め付けることにより,ゲート調整ネジを固定する。ここにおいて,ラインシミュレーターで用いられるつる巻バネ11は,自然長3.6cm,ゲート調整ネジ20aの先端がゲート10の先端付近の円柱状のピンに突き当ったときの長さ1.3cm,及びバネ定数65.4N/cmである。
回転円板1及び2の回転数:35回転/分
スプレーヘッド12からの噴出水量:200mL/分
前記の各規定に従って,試験すべきガラス容器の外径及び高さに応じて交換プレート7及びスペーサー9を取り付け,ゲートを調整し固定する。ガラス容器をガイドレール4の内周に沿って,該内周に接触させた状態で,ガラス容器相互に隙間をあけないように一列に,先頭のガラス容器と最後尾のガラス容器との間の間隔がガラス容器1個分に満たなくなるまで,順次並べる。セットタイマー13を所望の時間に設定すると共に,スプレーヘッド12から噴出される水の流量を設定する。回転円板1及び2の回転を開始し,スプレーヘッドからの水をガラス容器の外表面に掛けながら,設定した時間の長さにわたって装置の運転を持続する。
回転円板1及び2の回転に伴い,その上に載っているガラス容器(21,22等)はゲート10へと順次送られ,次々とゲート10を押し,つる巻バネ11による付勢に抗してゲート10を押し広げて通過するが,そのときガラス容器表面のコーティングがガイド部材との摩擦により擦れ落ち,その程度の大小により,ガイド部材の汚染程度が変化する。ガラス容器をこの状態に一定時間置くことにより,ラインシミュレーター処理は,搬送ラインにおけるガラス容器のコーティングの耐久性を,より過酷な条件で短期間に評価することを可能にする。
日本ガラスびん協会規格(昭和52年6月15日制定,平成22年5月19日追加・改正(7))「7.12 表面滑り角度測定方法」は,ガラスびんにつき以下の手順及び基準により表面滑り角度を測定すべきことを規定している。
<試料>
(1)試料びん: コーティング剤が完全に乾燥したびんを採取し,びん温度が室温になるまで放冷したものを試料びんとする。
(2)試料びんの採取: 1測定ごとに9本以上の試料びんを採取する。但し,サンプリング時および測定時においてびんの胴面を手で触れないこと。
<測定方法>(図3を参照)
(1)平行調整ネジ37で水平にしたびん保持台34上に試料びん32及び33を接して並べ,びん底をストッパーに密着させ,更にびん32と33が横方向にズレないようストッパーを当てる。
(2)試料びん32と33の上に試料びん31を置き三角形に積み重ねる。
(3)試料びんは3本とも同一方向に並べ,びん表面は彫刻や合わせ目のある面は避けストレート面が接するようにする。
(4)びん保持台に徐々に傾斜角度をつけるため,ハンドル36を廻し,試料びん31が滑り始めた位置の目盛りを読み記録する。
(5)測定は,1測定に3本のびんを用い,再度測定に使うことはしない。但し,測定は3回以上行う。
耐内圧力強度は,JIS S2302−1994「炭酸飲料用ガラスびんの耐内圧力試験方法」に準じて測定を行い,サンプル数は20とした。機械衝撃強度は,JIS S2303−2003「炭酸飲料用ガラスびんの機械衝撃試験方法」に準じて測定を行い,サンプル数は上下コンタクトポイント(びん同士が接触する部位)各20とした。
<樹脂及び水性分散体>
樹脂(A)として,軟化点138℃のポリエチレンワックス〔ハネウェル社製,商品名:A−C392,酸価30mg−KOH/g(以下,単位省略),針入度<0.05mm(<0.5dmm)〕を,水酸化カリウムの存在下,非イオン界面活性剤(高級アルコールエチレンオキシド付加物)を用い,常法により水性分散体としたものを用意した(水性分散体A)。ポリエチレンワックスの濃度は,そのカリウム塩重量換算で,35重量%である。
また,樹脂(B)として,α−オレフィンと無水マレイン酸及び無水マレイン酸モノ・イソプロピルエステルの共重合体(α−オレフィンは炭素数10超)〔ベーカー・ペトロライト社製,商品名:セラマー1608,CAS No.75535−27−2,酸価154,ケン化価190mg−KOH/g(以下,単位省略),数平均分子量2580〕を用い,水酸化カリウムの存在下,常法により水性分散体としたものを用意した(水性分散体B)。樹脂(B)の濃度は,そのカリウム塩重量換算で,16.8重量%である。
(1)水性分散体Bの6.7gを1000mLのイオン交換水に加えて混合し,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この組成物は,樹脂(B)を含むが,樹脂(A)は含まない(比較例1)。
(2)水性分散体Aの2.7gを1000mLのイオン交換水に加えて混合し,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。この組成物は,樹脂(A)を含むが,樹脂(B)は含まない(比較例2)。
(3)水性分散体Aの1.08gを500mLのイオン交換水に加え混合した液と水性分散体Bの4.02gを500mLのイオン交換水に加え混合した液とを合わせ,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比は,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=約0.36/0.64であった(実施例1)。
(4)水性分散体Aの1.35gを500mLのイオン交換水に加え混合した液と水性分散体Bの3.35gを500mLのイオン交換水に加え混合した液とを合わせ,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比は,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=約0.46/0.54であった(実施例2)。
(5)水性分散体Aの1.62gを500mLのイオン交換水に加え混合した液と水性分散体Bの2.68gを500mLのイオン交換水に加え混合した液とを合わせ,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比は,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=約0.55/0.45であった(実施例3)。
(6)水性分散体Aの2.02gを500mLのイオン交換水に加え混合した液と水性分散体Bの1.68gを500mLのイオン交換水に加え混合した液とを合わせ,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物とした。樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比は,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=約0.72/0.28であった(実施例4)。
次に,慣用の方法で表面にホットエンドコーティングを施した内容量100mL,質量103gのドリンク剤用ガラス容器を用意し,それらを恒温乾燥器中で115℃にて60分間保持した。上記6種類のガラス表面処理用水性コーティング組成物をハンド式スプレーガンのカップに移し,コンプレッサーから供給されるエアの噴出量とその圧力をスプレーガンの手元で調整することにより,スプレー量を70mL/分に固定した。次いで,外表面温度約100℃に加温した上記ガラス容器を1個ずつターンテーブルの中心に置き,該ターンテーブルを2回転(1回転約2秒)させる間に,そのガラス容器に約50cmの距離から上記コーティング組成物をスプレーすることにより,ガラス容器の外表面に該組成物を均一に,液垂れのないように塗布した。塗布後,そのままの状態でガラス容器を室温まで放冷した。この手順により,以下の試験に必要な個数のコールドエンドコーティング済みガラス容器をそれぞれ用意した。
ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.12 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は,比較例1:11〜14°(平均値12.1°),実施例1:7〜10°(平均値9.3°),実施例2:6〜9°(平均値7.6°),実施例3:6〜8°(平均値7.4°),実施例4:6〜7°(平均値6.5°),比較例2:6〜8°(平均値7.3°)であった。
また,80℃の湯に10分間浸漬(湯洗)後乾燥したガラス容器の表面滑り角度は,比較例1:7〜10°(平均値8.6°),実施例1:6〜8°(平均値6.8°),実施例2:5〜7°(平均値6.2°),実施例3:5〜7°(平均値5.8°),実施例4:5〜6°(平均値5.5°),比較例2:7〜9°(平均値8.6°)であった。コールドエンドコーティングを施さなかった同じ規格のガラス容器について別途測定した滑り角度は,25〜30°であった。これらのことから,得られた無洗浄,湯洗いずれのガラス容器表面においても,実施例1〜4のコーティングは比較例1および2に対して,より低い表面滑り角度を示している(表1参照)。カリウム塩重量換算での樹脂(A)と樹脂(B)の合計重量のうちの樹脂(A)の重量割合と,表面滑り角度の平均値との関係を図4に示す。
<樹脂及び水性コーティング組成物>
軟化点101℃のポリエチレンワックス〔ハネウェル社製,商品名:A−C629,酸価15〕を,水酸化カリウムの存在下,乳化剤として高級アルコールエチレンオキシド付加物およびオレイン酸カリウムを用いて常法により水性分散体としたものを用意した(水性分散体C;固形分濃度:約12重量%)。
これをイオン交換水で100倍希釈し,ガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物100Lを調製した。このコーティング組成物は従来長期に亘って使用されてきたものである。
製びん工場の製造ラインでホットエンドコーティング処理され,さらに徐冷炉で徐歪された外表面温度約100〜110℃の内容量100mL,質量103gのドリンク剤用ガラス容器の表面に,3本のスプレーガンを用いて該コーティング組成物をスプレーした。スプレー量はガン1本あたり70mL/分とし,スプレーは,1列35本のガラス容器に対し,列の両側から約3.2秒かけてスプレーガンを走行させながら行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.12 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度はそれぞれ6〜8°であった。
上記水性コーティング組成物を用いて上記コーティング処理を行ったガラス容器を新たに195本用意した。39本ずつラインシミュレーター(LS)にかけ,10分ごとに全数を入れ替え,計50分間試験を実施した。試験実施後のラインシミュレーターのゲートに固定したガイド部材表面の汚染を観察したところ,比較例3のガラス容器はガイド部材を著しく汚染した(図5(d)参照)。
<水性コーティング組成物及びコーティング処理>
実施例3,4及び比較例2と同じガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物各100Lを調製し,それぞれ,実施例5,6及び比較例4の水性コーティング組成物とした。これらを用いて,比較例3の「コーティング処理」の部に記載したのと同じ条件及び手順で同じ規格のガラス容器のスプレーコーティングを行った。
スプレーコーティング後,室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.12 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度は,実施例5:7〜10°(平均値7.8°),実施例6:6〜8°(平均値7.3°),比較例4:6〜9°(平均値7.2°)であった(表2参照)。
上記「水性コーティング組成物及びコーティング処理」の部の記載に準じてコーティングを行い,各組成物毎にコーティング済みガラス容器を117本用意し,39本ずつ3グループに分けた。各グループ39本のガラス容器について,ラインシミュレーター(LS)による処理に伴う表面の滑性の変化を,処理時間1,3又は5分間のそれぞれについて,前記の日本ガラスびん協会規格7.12
表面滑り角度測定方法に基づいて評価した(各n=12)。結果を表2に示す。また,LS試験経過時間と表面滑り角度の平均値の変化を図6に示す。これらの結果から,実施例5および6の水性コーティング組成物で処理したガラス容器では,比較例4と比べて表面滑り角度の上昇が顕著に抑えられ,滑り性が維持されていることが分かる。これに対し,樹脂(B)を含まず,シランカップリング剤も含まない比較例4のコーティングは,ガラス容器表面から脱落し表面の滑りを維持できない。
上記「水性コーティング組成物及びコーティング処理」の部の記載に準じてコーティングを行い,各組成物毎にコーティング済みガラス容器を新たに195本用意した。39本ずつラインシミュレーター(LS)にかけ,10分ごとに全数を入れ替え,実施例5,6および比較例4のガラス容器についてそれぞれ計50分間試験を実施した。試験実施後のラインシミュレーターのゲートに固定したガイド部材表面の汚染を観察したところ,比較例3の水性コーティング剤でコーティングしたガラス容器はガイド部材を著しく汚染(図5(d)参照)したのに対し,実施例5,6及び比較例4の水性コーティング剤でコーティングしたガラス容器でのガイド部材の汚染は軽微であった(図5(a),(b),(c)参照)。
上記「水性コーティング組成物及びコーティング処理」の部の記載に準じてコーティングを行い,各組成物毎にコーティング済みガラス容器を約7500本用意した。これらのガラス容器について,熱水処理,高温の水蒸気処理が行われる,充填速度1,200本/分のラインでライン適正試験を行った。実施例5,6および比較例4のいずれのガラス容器もラインのガイド部材をほとんど汚染することなく,1,200本/分の速度で充填可能であった。
また,このラインを通過したガラス容器に,ラベラーで,デンプン−アクリル系糊を用いて紙製ラベル(132mm×60mm,90g/m2)を貼付した。ラベリングは安定して行われ,接着力は強固であり,乾燥後のラベル剥離試験ではラベルを剥がすことはできなかった。
上記「水性コーティング組成物及びコーティング処理」の部の記載に準じてコーティングを行い,各組成物毎にコーティング済みガラス容器を120本用意した。これらのガラス容器につき,ラインシミュレーターにより0および5分間処理した後の耐内圧力強度および機械衝撃強度を測定した。耐内圧力試験のサンプル数はそれぞれ20本とし,機械衝撃試験については,上下のコンタクトポイントについてそれぞれ20本とした。結果を表3に示す。実施例5および6については上記5分間処理後も十分に強度が維持されており,特に実施例5のガラス容器に用いられたコーティング組成物が,強度維持に優れている。比較例4のガラス容器は,従来のコーティング組成物で処理された比較例3のガラス容器よりも強度が劣る結果となった。
<コーティング処理>
実施例5と同じガラス表面処理用水性コーティング(コールドエンドコーティング)組成物100Lを調製し,製びん工場の製造ラインでホットエンドコーティング処理され,さらに徐冷炉で徐歪された外表面温度約100〜110℃の内容量100mL,質量103gのドリンク剤用ガラス容器の表面に,3本のスプレーガンを用いて該コーティング組成物をスプレーした。スプレー量はガン1本あたり45,55,65又は75mL/分とし,スプレーは,1列30本のガラス容器に対し,列の両側から約3.7秒かけてスプレーガンを走行させながら行った。
室温まで放冷した後,ガラス容器表面の滑性の評価を,前記の日本ガラスびん協会規格7.12 表面滑り角度測定方法に基づいて行った(n=12)。無洗浄のガラス容器の表面滑り角度は,ガン1本あたり45,55,65,75mL/分について,それぞれ6〜8°(平均値7.0°),6〜8°(平均値7.1°),6〜7°(平均値6.4°),5〜7(平均値5.9°)であった。また,80℃の湯に10分間浸漬(湯洗)後乾燥したガラス容器の測定の結果,表面滑り角度は,それぞれ7〜9°(平均値7.7°),7〜8°(平均値7.8°),7〜8°(平均値7.4°),6〜8°(平均値7.1°)であった。
上記のガラス容器を80℃の湯に10分間浸漬(湯洗)後乾燥させ,中に73℃の湯を詰め,表面温度60〜65℃のときに,デンプン−アクリル系糊を塗布した紙製ラベル(132mm×60mm,90g/m2)をその表面に貼付した。紙製ラベル裏面への糊の塗布は,200メッシュスクリーンに形成した線状パターンを,スキージーを用いて通過させることにより行った。ラベル当たりの糊の塗布量は,0.15〜0.20gであった。評価は1ガン当りのスプレー流量45,75mL/分について6本ずつとし,室温で10日間乾燥後に行った。
また,本発明の水性コーティング剤で処理したガラス製品は,殺菌目的で70〜80℃以上の熱水や高温の水蒸気等に曝され,かつ毎分1000本以上の充填を行う超高速ラインにおいても,十分な滑り性を維持できるという際立った特徴を有する。
2=回転円板(ベークライト製)
3=モーター
4=ガイドレール
5=ガイドレール
6=ブラケット
7=交換プレート
8=ハンドル
9=スペーサー
10=ゲート
11=バネ
12=スプレーヘッド
13=セットタイマー
14=ドレーントラップ
15=ドレーン用接続口
16=アルミ板
17=パッキング
18=カバー
19=ブロック
20a=ゲート調整ネジ
20b=ゲート調整固定ネジ
21=ガラス容器
22=ガラス容器
31〜33=試料びん
34=びん保持台
35=目盛り板
36=ハンドル
37=平行調整ネジ
Claims (17)
- 塩基の存在下,水中に樹脂(A)と樹脂(B)とを分散した状態で含有させてなる水性コーティング組成物であって,樹脂(A)が,軟化点110℃以上のポリエチレンワックスであり,樹脂(B)が,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体及び該共重合体の部分反応物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比が,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=35/65〜80/20である,請求項1の水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)の酸価が20〜40mg−KOH/gであり,樹脂(B)の酸価が100〜300mg−KOH/gである,請求項1又は2の水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)の軟化点が130℃以上である,請求項1ないし3の何れかの水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)の25℃における針入度が0.1mm以下である,請求項1ないし4の何れかの水性コーティング組成物。
- 該α−オレフィンの炭素数が10〜50である,請求項1ないし5の何れかの水性コーティング組成物。
- 該共重合体の部分反応物が,少なくとも一部の無水マレイン酸モノマー単位においてアルキルエステル化によりグラフト変性されてなるものである,請求項1ないし6の何れかの水性コーティング組成物。
- 該アルキルエステル化がモノアルキルエステル化である,請求項7の水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)及び樹脂(B)の合計濃度が,それらのカリウム塩重量換算で,0.05〜1重量%である,請求項1ないし8の何れかの水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)の酸価が25〜35mg−KOH/gであり,樹脂(B)の酸価が120〜250mg−KOH/gである,請求項1ないし9の何れかの水性コーティング組成物。
- 樹脂(A)と樹脂(B)の重量混合比が,それらのカリウム塩重量換算で,(A)/(B)=40/60〜75/25である,請求項1ないし10の何れかの水性コーティング組成物。
- 該α−オレフィンの炭素数が14〜40である,請求項1ないし11の何れかの水性コーティング組成物。
- 請求項1ないし12の何れかの水性コーティング組成物を表面にコーティングしたことを特徴とするガラス製品。
- 該水性コーティング組成物を表面にコーティングした該ガラス製品が,該表面を,該コーティングより前にホットエンドコーティングしてあるものである,請求項13のガラス製品。
- ガラス容器である,請求項13又は14のガラス製品。
- 板ガラスである,請求項13のガラス製品。
- ガラス表面を,表面温度80〜130℃にて請求項1ないし12の何れかの水性コーティング組成物と接触させることを特徴とする,ガラス表面処理方法。
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