JP4916612B2 - カルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多価アルコールより、カルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、多価アルコールからカルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物を製造するには、種々の酸化剤が反応剤として用いられている。その中で最も実用的な方法として、酸素又は空気を酸化剤として用いる方法が知られている。
【0003】
例えば、グリセリンからグリセリン酸を得る実用的な方法としては、特開平5−331100やAppl. Catal. A, 1995, 127, 165ではPd触媒を用いた酸化方法が報告されている。反応はアルカリ性条件で行われるため、生成物はグリセリン酸塩となる。また、前記文献ではPt触媒を用いた酸化方法も報告されている。こちらは酸性条件で反応が行われるため、生成物はグリセリン酸となる。これらの両反応方法は、反応操作を行うには簡便ではあるが、グリセリン酸の選択率は十分なものではない。選択率を改善する方法として、特開平5−245373に、Ptの他に更にCe等の金属を担持させた触媒を用いて連続式の固定床反応装置で反応を行うことにより、高選択率でグリセリン酸を得る方法が開示されている。この方法はグリセリン酸を効率良く合成できる点において優れている。しかし、高選択性を得るために汎用性の少ない特殊な触媒が必要となり、装置的にも固定床反応装置との組み合わせに限定されることから、簡便な方法とは言えない。
【0004】
グリセリンの酸化反応物を精製して高純度のグリセリン酸を得る方法として、特開平5−339200に、グリセリン酸を対応するアルカリ土類金属塩とした後、晶析を行う精製方法が開示されており、現実的かつ有用な方法である。この方法において、除去が困難な望ましくない不純物は、例えばグリコール酸、シュウ酸等のカルボキシル基を有する化合物である。一方、未反応のグリセリンの除去は、非常に容易であるので、精製工程を含めて効率的にグリセリン酸を得ることを考えれば、グリセリンの酸化反応においては高選択率であることが最も大切なことである。
【0005】
また同様に、グリセリンからタルトロン酸を得る方法(特開昭52−116415)、グリセリンからジヒドロキシアセトンを得る方法、グリセリン酸からタルトロン酸を得る方法(特開平8−92156)、1,2−ジオールからヒドロキシカルボン酸を得る方法(特開昭54−132519)、アルキルグリセリルエーテルからO−アルキル置換グリセリン酸を得る方法(特開昭57−162797)など、種々の方法が開示されているが、何れも実用的で選択性の高い簡便な方法とは言えない。
【0006】
これらの多価アルコールの酸化反応においても、前述と同様の理由により、高選択率であることが非常に重要となる。
【0007】
本発明の課題は、含酸素ガスを用いて多価アルコールを酸化する反応において、簡便かつ高選択的にカルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物を得る方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、周期表7A、8及び1B族から選ばれる金属を1種以上含有する触媒、及びハロゲン原子含有の塩又は酸、若しくは硫黄原子含有の塩又は酸(但し、H2SO4及びその塩から選ばれる1種以上のみからなる塩又は酸を除く)の存在下で、含酸素ガスを用いて多価アルコールを酸化する、カルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物の製法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される触媒は、周期表7A、8及び1B族から選ばれる金属を含有するが、これらの金属としては、Pt、Pd、Cu、Ag、Au、Ru、Re、Rh、Ir等が挙げられ、Pt、Pd、Auが好ましく、Pt、Auが特に好ましい。尚、本発明において、周期表は長周期型を用いた。
【0010】
また必要ならば、他の助触媒成分を含有した触媒を用いても良い。他の助触媒成分としては、例えば、Pb、Bi、Sn、Ti、Se、Te、Ce、Sb、Zn等の金属あるいは金属酸化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明で使用される触媒の担体は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素系の活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維や、無機担体であるシリカ、アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、珪藻土等が挙げられ、特に活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維等の炭素系担体が好ましい。
【0012】
本発明においては、例えば、市販品として入手容易なPt/C触媒やPd/C触媒等を用いることもできる。これらの触媒の形態は特に限定されず、粉末状、粒状、成形品等を反応器の形式に応じて使用すれば良い。反応器の形式としては、攪拌槽式、流動床式、固定床式等を用いることができる。また、触媒量は装置に応じて任意に設定される。
【0013】
本発明においては、上記のような触媒と、ハロゲン原子含有の塩又は酸、若しくは硫黄原子含有の塩又は酸(但し、H2SO4及びその塩から選ばれる1種以上のみからなる塩又は酸を除く)(以下本発明の添加剤という)の存在下に反応を行う。
【0014】
本発明で用いられるハロゲン原子含有の塩又は酸としては、例えば、HF、HCl、HBr、HI等のハロゲン化水素、NaClO等の次亜塩素酸塩、NaBrO等の次亜臭素酸塩、NaClO2等の亜塩素酸塩、NaClO3等の塩素酸塩、Mg(ClO4)2等の過塩素酸塩、HIO4等の過ヨウ素酸、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NaBr、KBr、ピリジン塩酸塩等の塩、式(1)で表されるアンモニウム塩等が挙げられる。
【0015】
R4N+ X- (1)
[式中、Rは同一又は異なっていてもよい直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、又は水素原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
式(1)で表されるアンモニウム塩としては、NH4 +Cl-(塩化アンモニウム)、(CH3)4N+I-、(Bu)4N+Br-(Buはブチル基を示す)、(C6H13)4N+Cl-、トリエタノールアミン塩酸塩等が挙げられる。
【0016】
これらのハロゲン原子含有の塩又は酸の中では、入手の容易さや価格を考慮すると、HCl、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NaBr、KBr、式(1)で表されるアンモニウム塩が好ましく、HCl、NaCl、KCl、NH4 +Cl-が特に好ましい。
【0017】
本発明で用いられる硫黄原子含有の塩又は酸としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルフィン酸、亜硫酸、もしくはこれらの塩が挙げられ、入手の容易さや価格を考慮すると亜硫酸もしくは亜硫酸塩が好ましい。
【0018】
これら本発明の添加剤の添加量は、目的物の選択率を向上させる観点から、原料の多価アルコールに対して0.001〜10重量%が好ましい。
【0019】
本発明で用いられる多価アルコールは、水酸基を2個以上有するものであり、例えば、グリセリン、グリセリン酸、1,2−アルカンジオール(1,2−プロピレングリコール、1,2−オクタンジオール等)、アルキルグリセリルエーテル(メチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル等)、モノグリセライド、糖類(グルコース、マルトース、ショ糖等)、糖誘導体(ソルビトール、グルコース−1−リン酸、グルコン酸、アルキルグリコシド等)、エチレングリコール、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等)、ペンタエリスリトール、高分子ポリオール(ポリグリセリン、セルロース、澱粉等)、アミノアルコール(イソセリノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等)、アミドアルコール(ジエタノールアミド、グルカミド等)等が挙げられ、グリセリン、グリセリン酸、ポリグリセリン、1,2−プロピレングリコール、アルキルグリセリルエーテル、モノグリセライド、糖類、糖誘導体、エチレングリコールが好ましく、グリセリンが特に好ましい。
【0020】
また本発明の方法により得られる、カルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物としては、例えば、グリセリン酸、タルトロン酸、ケトマロン酸、乳酸、ピルビン酸もしくはこれらの塩が挙げられ、特にグリセリン酸又はその塩が好ましい。
【0021】
本発明においては、適当な反応装置に触媒、ハロゲン原子含有の塩又は酸、若しくは硫黄原子含有の塩又は酸、多価アルコールを溶媒と共に仕込み、その系内に含酸素ガスを導入して行う方法が一般に用いられる。使用される溶媒には、好ましくは水が用いられるが、その量については特に制限がない。
【0022】
本発明では、酸化剤として含酸素ガスが使用される。含酸素ガスとしては、例えば、酸素、空気、任意の組成の酸素と窒素の混合ガス、任意の組成の酸素と空気の混合ガス等が挙げられる。反応速度の点からは酸素ガスが好ましく、一方、経済性の点からは空気が好ましく、目的に応じて酸化剤を選択することができる。含酸素ガスの圧力は特に限定されないが、装置コストの面から常圧〜10MPaで用いることが好ましい。
【0023】
本発明において、反応温度は反応性に応じて任意に設定されるが、反応速度を速め、また副生成物の量を抑えて目的物の選択率を向上させる観点から、好ましくは20〜120℃、より好ましくは30〜100℃である。
【0024】
本発明において使用される触媒の種類によっては、反応時のpHを制御して反応を行った方が、より好結果を与える場合がある。例えば、Pdを含有する触媒を用いる場合には、一般的にアルカリ性条件に反応溶液を保つ方が好結果を与える。この際に用いるpH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の苛性アルカリ類、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩類や、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類が使用され得るが、価格の点から水酸化ナトリウムが最適である。
【0025】
一方、例えばPtを含有する触媒を用いる場合には、一般的に中性から酸性条件に反応溶液を保つ方が好結果を与える。また、反応が進行しグリセリン酸等のカルボン酸が生成する場合には、反応が進行するに従い反応溶液は酸性になるので、一般的にpH調整剤を添加する必要はない。酸性〜中性の望む範囲内にpHを保ちたい場合は、反応が進行して望むpHに達してからpH調整剤を添加し始めれば良い。
【0026】
他の金属を含有する触媒を用いても同様に、必要ならばpHを適当な範囲に調整して反応を行うことができる。
【0027】
【実施例】
実施例における反応率(原料の転化率)、収率、選択率は、全て、下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)を用いた内部標準添加法による定量値を基に算出しており、モル%で表記されている。
【0028】
<分析条件>
GC分析装置:島津製作所製GC−14B
カラム:HEWLETT PACKARD製ultra#2(25m)
内部標準物質:トリエチレングリコール
サンプル前処理:トリメチルシリル化
実施例1
1Lの5つ口フラスコにグリセリン50g、5%Pt/C(エンゲルハルド社製:dry品)5g、蒸留水450g、及びNaCl 0.1gを仕込んで攪拌しながら50℃に昇温した。その後、スパジャーにより酸素を203mL/minの流量で吹き込み、反応を行った。70時間後に反応を終了し、ろ過により触媒の除去を行ってグリセリン酸水溶液を得た。反応率90%、グリセリン酸収率66%、グリセリン酸選択率73%であった。
【0029】
実施例2〜13
本発明の添加剤の種類及び反応時間を、表1に示すように変更した以外は、実施例1の方法に従って反応を行った。但し、実施例11に関しては、36%HCl水溶液を0.18g添加して反応を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0030】
比較例1
添加剤を何も添加せず、反応時間14時間であること以外は、実施例1と同じ方法で反応を行った。結果を表1に示す。
【0031】
比較例2〜4
添加剤の種類及び反応時間を、表1に示すように変更した以外は、実施例1の方法に従って反応を行った。但し、比較例4では、添加剤としてH2SO4を0.18g使用した。結果を表1にまとめて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例14
1Lの5つ口フラスコにグリセリン50g、5%Pt/C(エンゲルハルド社製:dry品)5g、蒸留水450g、及びパラトルエンスルホン酸・1水和物0.9gを仕込んで攪拌しながら50℃に昇温した。その後、スパジャーにより酸素を203mL/minの流量で吹き込み、反応を行った。13時間後に反応を終了し、ろ過により触媒の除去を行ってグリセリン酸水溶液を得た。反応率93%、グリセリン酸収率56%、グリセリン酸選択率60%であった。
【0034】
実施例15
10Lのジャーファメンターにグリセリン400g、5%Pt/C(川研ファインケミカル社製:wet品H2O56.0%)90.9g、蒸留水3550g、及びNa2SO3 0.8gを仕込んで攪拌しながら50℃に昇温した。その後、スパジャーにより酸素を1620mL/minの流量で吹き込み、反応を行った。36時間後に反応を終了し、ろ過により触媒の除去を行ってグリセリン酸水溶液を得た。反応率94%、グリセリン酸収率63%、グリセリン酸選択率67%であった。
【0035】
実施例16
1Lの5つ口フラスコにグリセリン50g、1%Au/C 10g、蒸留水450g、NaOH(min.96%)23.45g及びNa2SO30.1gを仕込んで攪拌しながら50℃に昇温した。その後、スパジャーにより酸素を203mL/minの流量で吹き込み、反応を行った。25時間後に反応を終了し、ろ過により触媒の除去を行ってグリセリン酸水溶液を得た。反応率、グリセリン酸収率及び選択率を表2に示す。
【0036】
比較例5
添加剤を何も添加しないことを除いて、実施例16と同じ方法で反応を行った。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明の方法によると、簡便かつ高選択的にカルボキシル基及び/又はカルボニル基を有する化合物を得ることができる。
Claims (2)
- 周期表7A、8及び1B族から選ばれる金属を1種以上含有する触媒、及びハロゲン原子含有の塩又は酸、若しくは硫黄原子含有の塩又は酸(但し、H2SO4及びその塩から選ばれる1種以上のみからなる塩又は酸を除く)の存在下で、含酸素ガスを用いてグリセリンを酸化する、グリセリン酸の製法であって、
前記ハロゲン原子含有の塩又は酸、若しくは硫黄原子含有の塩又は酸(但し、H 2 SO 4 及びその塩から選ばれる1種以上のみからなる塩又は酸を除く)が、ハロゲン化水素、式(1)で表されるアンモニウム塩、NaCl、KCl、MgCl 2 、CaCl 2 、NaBr、KBr、パラトルエンスルホン酸又はその塩、メタンスルフィン酸又はその塩、及び亜硫酸又はその塩から選ばれるものであるグリセリン酸の製法。
R 4 N + X - (1)
[式中、Rは同一又は異なっていてもよい直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、又は水素原子を示し、Xはハロゲン原子を示す。] - 触媒が、少なくともPt、Pd又はAuを含むものである請求項1に記載の製法。
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