JP4099630B2 - パーフルオロアルキル化合物の製造方法 - Google Patents

パーフルオロアルキル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーフルオロアルキル化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
式:Rf(CH22R(式中、Rfは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、Rは、置換若しくは未置換のアルキル基又はアセチル基である。)で表されるパーフルオロアルキル化合物は、撥水撥油剤や界面活性剤、医農薬等の他、各種の有用な物質を製造するための中間体として有用な化合物である。この様なパーフルオロアルキル化合物は、例えば、1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物の脱ハロゲン化水素化反応によって製造することが可能である。
【0003】
1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物の脱ハロゲン化及び水素化反応を利用したパーフルオロアルキル化合物の製造方法としては、例えば、特公昭45−22523号、J. Fluorine Chem., 20(1982) 313等に記載されている様に、弱塩基物質や弱酸の塩の存在下に、Pd/CaCO3やラネーニッケル等の触媒を用いてRfCH2CHI(CH2)nOHで表される化合物を水素還元してRfCH2(CH2n+2OHを得る方法が知られている。しかしながら、この方法では、目的とする還元生成物の選択率は83.2〜93.5%程度であるが、副生成物としてRfCH=CH(CH2)nOH等が生成し、これらの分離が困難であるために、高純度の目的物が得られないという問題がある。
【0004】
また、J. Fluorine Chem., 68(1994)49には、RfCH2CHI(CR2)nOH(Rは、H又はメチルである)を水素化トリブチルすずによって還元する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、収率が90%に満たない上、反応の制御が困難であり、工業的に大規模に利用することはできない。
【0005】
特開平11−180914号公報には、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの製造方法として、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノールを水素化還元する方法が開示されている。この方法は、アミン等の酸結合剤の存在下に、不均一水添触媒を用いて水添分解脱ハロゲン化を行う方法であり、高収率で目的物を得ることができるが、比較的高い水素圧下で反応を行うため、高圧の反応器が必要である上に、原料を仕込むために高圧ポンプを必要とする等、設備が高価になるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的は、1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物の接触水素化によるパーフルオロアルキル化合物の製造方法であって、比較的低い水素圧下においても選択的に高収率で目的物であるパーフルオロアルキル化合物を製造できる方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物を原料として、塩基性物質及び弱酸性物質の存在下、又は該塩基性物質と弱酸性物質との塩の存在下に、接触水素化反応を行うことによって、高い水素圧を要することなく、高収率で目的とするパーフルオロアルキル化合物が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のパーフルオロアルキル化合物の製造方法を提供するものである。
1. 一般式:RfCH2CHIR(式中、Rfは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、Rは、置換若しくは未置換のアルキル基又はアセチル基である。)で表される1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物を、塩基性物質及び弱酸性物質の存在下、又は塩基性物質と弱酸性物質との塩の存在下に、接触水素化することを特徴とする一般式:Rf(CH22R(式中、Rf及びRは上記に同じ)で表されるパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
2. 1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物1当量に対して塩基性物質1当量以上と、該塩基性物質1当量に対して、1当量以上の弱酸性物質の存在下、又は1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物1当量に対して、塩基性物質と弱酸性物質との塩1当量以上の存在下に、接触水素化することを特徴とする上記項1に記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
3. 弱酸性物質が、25℃の水に溶解した場合の解離定数の対数pKaが1〜10の酸である上記項1又は2に記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
4. 溶媒が水であり、反応系のpHが9以下である上記項1〜3のいずれかに記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
5. 触媒として酸化白金を用いる上記項1〜4のいずれかに記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、原料として、一般式:RfCH2CHIR(式中、Rfは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、Rは、置換若しくは未置換のアルキル基又はアセチル基である。)で表される1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物を用い、これを接触水素化して一般式:Rf(CH22R(式中、Rf及びRは上記に同じ)で表されるパーフルオロアルキル化合物を製造する方法である。
【0010】
上記各一般式において、Rfで表されるパーフルオロアルキル基は、炭素水1〜20の直鎖又は分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、具体的には、式:CF3(CF2n−(式中、n=0〜19)で表される基、式:(CF32CF(CF2CF2n−(式中、n=0〜8)で表される基等を例示できる。該パーフルオロアルキル基におけるアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ペンチル、n−ヘキシル、へプチル、n−オクチル、ノニル、n−デシル等を挙げることができ、
また、Rは、置換若しくは未置換のアルキル基、又はアセチル基である。この場合、アルキル基としては、炭素数1〜14程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル等を挙げることができる。また、これらのアルキル基の置換基としては、水酸基、基−COOH、基−COOR1等を例示できる。ここで、R1は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル等の炭素数1〜5程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。これらの置換基は、アルキル基上の任意の位置に一個又は二個以上存在することができる。
【0011】
本発明の製造方法は、塩基性物質及び弱酸性物質の存在下、又は塩基性物質と弱酸性物質との塩の存在下に、原料として用いる1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物を接触水素化して、脱ハロゲン化と水素化を同時に行う方法である。
【0012】
塩基性物質としては、無機化合物及び有機化合物のいずれでもよく、具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、NaOH、KOH、メチルモルホリンなどを例示できる。これらの塩基性物質は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0013】
該塩基性物質は、そのまま用いるか、或いは、該塩基性物質と弱酸性物質との塩の形態で用いることができる。該塩基性物質と弱酸性物質との塩としては、例えば、25℃の水に溶解した場合の解離定数の対数pKaが1〜10程度の酸と上記した塩基性物質との塩を用いることができる。この様な塩としては、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等を例示できる。
【0014】
該塩基性物質、又は該塩基性物質と弱酸性物質との塩の使用量は、原料として用いる1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物1当量に対して、1当量程度以上とすればよく、2当量程度以上とすることが好ましく、通常、10当量程度以下の使用量とすればよい。この様な割合で塩基性物質、又は該塩基性物質と弱酸性物質との塩を用いることによって、接触水素化反応の反応速度を向上させることができる。
【0015】
該塩基性物質を用いる場合には、弱酸性物質と共に用いることが必要である。
【0016】
弱酸性物質としては、例えば、25℃の水に溶解した場合の解離定数の対数pKaが1〜10程度の酸を用いることができる。この様な弱酸性物質としては、酢酸、ぎ酸等の有機酸、ホウ酸などの無機酸を例示できる。
【0017】
塩基性物質を用いる場合の弱酸性物質の使用量についは、溶媒が水である場合に反応系のpHが9程度以下となる量とすることが好ましく、pH7程度以下となる量とすることがより好ましい。具体的には、該塩基性物質1当量に対して、弱酸性物質を1当量以上用いることが好ましく、1〜5当量程度用いることがより好ましい。
【0018】
また、該塩基性物質と弱酸性物質との塩の形態で用いる場合には、更に、弱酸性物質を添加しても良い。この場合、この塩1当量に対して、弱酸性物質を4当量程度まで用いることができる。
【0019】
この様に塩基性物質と弱酸性物質を同時に用いるか、或いは、該塩基性物質と弱酸性物質との塩を用いることによって、高い水素圧を要することなく、目的物を選択的に高収率で製造することが可能となる。塩基性物質を用いる場合に、弱酸性物質を用いないか、或いは、弱酸性物質の使用量が少な過ぎると、分離困難な副生成物が生じ易くなるので好ましくない。
【0020】
本発明方法では、触媒としては、酸化白金、Pd/カーボン等の白金系触媒、ラネーニッケル等のニッケル触媒などを用いることができる。特に、酸化白金を触媒とする場合には、目的物の選択率が高くなる点で好ましい。
【0021】
触媒の使用量については特に限定はなく、使用量を多くすれば反応速度を向上させることが可能であるが、コスト面で不利になるので、通常、原料として用いる1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物に対して、0.1〜5mass%程度とすればよく、0.1〜1mass%程度とすることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、メタノール、エタノール等の有機溶媒、水等を用いることができる。これらの内で、特に、水は安価な点で好適である。また、上記した弱酸性物質を水に溶解した酸水溶液を溶媒としても良い。
【0023】
原料である1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物の濃度については、特に限定的ではないが、通常、5〜50重量%程度とすればよい。
【0024】
本発明の製造方法では、塩基性物質及び弱酸性物質の存在下、又は該塩基性物質と弱酸性物質との塩の存在下に、原料化合物を接触水素化すればよく、各成分の添加方法等については特に限定されない。例えば、最初に反応容器に水素雰囲気下で溶媒、触媒、塩基性物質及び弱酸性物質を仕込んだ後、所定量の原料化合物を添加し、更に、水素を添加しつつ反応を行っても良く、或いは、原料化合物、触媒、塩基性物質及び酸性物質を含む反応容器に水素を導入して反応を行っても良い。この様な方法で接触水素化反応を行うことよって、脱ハロゲン化と水素化が進行して、目的とするパーフルオロアルキル化合物を得ることができる。
【0025】
反応時の水素圧は、特に限定的ではなく、高い水素圧下でも反応を行うことができるが、1MPa以下という低い水素圧においても、十分な反応速度で高純度の目的物を得ることができる。水素圧の下限値は、通常、0.05MPa程度とすることが好ましい。
【0026】
反応温度は、通常、0〜50℃程度とすればよく、反応時間は、通常、3〜10時間程度とすればよい。
【0027】
反応終了後、慣用されている分離手段、例えば、溶媒抽出、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等によって、目的物である一般式:Rf(CH22R(式中、Rf及びRは上記に同じ)で表されるパーフルオロアルキル化合物を単離、精製することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、1MPa以下というような比較的低い水素圧においても、分離困難な副生成物を殆ど生じることなく、目的とするパーフルオロアルキル化合物を高収率で得ることができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0030】
実施例1
容量100mlのオートクレーブに、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノール6.0g、酸化白金30mg、酢酸アンモニウム6.2g、及び水12mlを仕込み、水素を導入して0.5MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら、5.5時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、濾液をジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0031】
原料の転化率は99.3%、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの選択率は99%以上であった。
【0032】
実施例2
容量100mlのオートクレーブに、5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−3−ヨード−1−ヘキサノール6.1g、酸化白金30mg、酢酸アンモニウム6.2g、及び水12mlを仕込み、水素を導入して0.5MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら、5.5時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、濾液をジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0033】
原料の転化率は99.3%、5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−1−ヘキサノールの選択率は99%以上であった。
【0034】
実施例3
容量100mlのオートクレーブに、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノール5.1g、酸化白金50mg、トリエチルアミン6.1g、酢酸14.6g及びメタノール20mlを仕込み、水素を導入して0.5MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら、4時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、氷水20g、5N−NaOH30mlを加えた後、ジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0035】
原料の転化率は99.4%、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの選択率は99%以上であった。
【0036】
実施例4
容量100mlのオートクレーブに、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノール6.0g、酸化白金30mg、トリエチルアミン8.0g、酢酸21.6g及び水12mlを仕込み、水素を導入して0.5MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら8時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、氷水20g、5N−NaOH30mlを加え、ジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0037】
原料の転化率は95.5%、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの選択率は99%以上であった。
【0038】
比較例1
容量100mlのオートクレーブに、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノール12.0g、5%Pd/CaCO3触媒2.4g、28%アンモニア水2.6g、及びエタノール13.0gを仕込み、水素を導入して1.0MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら、5.5時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、濾液をジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0039】
原料の転化率は99%、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの選択率は92%であった。
【0040】
比較例2
容量100mlのオートクレーブに、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−ヨード−1−ペンタノール6.3g、5%Pd/C触媒310mg、トリエチルアミン6.1g、酢酸14.6g、及びメタノール20mlを仕込み、水素を導入して2.0MPaの圧力になるように保持し、室温で激しく攪拌しながら、6時間反応を行った。反応器から反応混合物を取り出し、触媒を濾別した後、氷水20g、5N−NaOH30mlを加え、ジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行った。
【0041】
原料の転化率は99%、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノールの選択率は90%であった。

Claims (5)

  1. 一般式:RfCH2CHIR(式中、Rfは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、Rは、置換若しくは未置換のアルキル基又はアセチル基である。)で表される1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物を、塩基性物質及び弱酸性物質の存在下、又は塩基性物質と弱酸性物質との塩の存在下に、触媒として酸化白金を用いて接触水素化することを特徴とする一般式:Rf(CH22R(式中、Rf及びRは上記に同じ)で表されるパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
  2. 1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物1当量に対して塩基性物質1当量以上と、該塩基性物質1当量に対して、1当量以上の弱酸性物質の存在下、又は1−パーフルオロアルキル−2−ヨード化合物1当量に対して、塩基性物質と弱酸性物質との塩1当量以上の存在下に、接触水素化することを特徴とする請求項1に記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
  3. 弱酸性物質が、25℃の水に溶解した場合の解離定数の対数pKaが1〜10の酸である請求項1又は2に記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
  4. 溶媒が水であり、反応系のpHが9以下である請求項1〜3のいずれかに記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
  5. 塩基性物質がアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、NaOH、KOH、メチルモルホリンからなる群から選ばれた少なくとも1種、弱酸性物質が酢酸、ぎ酸、ホウ酸からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のパーフルオロアルキル化合物の製造方法。
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