JP4407846B2 - 1級アルコールの酸化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は1級アルコールの酸化方法に関し、詳しくは、操作性が簡便で大量合成の容易な、且つ安全性の高い、特定の構造を有する1級アルコールの酸化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
アルコールの酸化は、化学反応における重要な官能基変換の1つであり、幅広く研究が行われている。代表的な方法としては、下記▲1▼〜▲3▼に示す方法が挙げられる。
【0003】
▲1▼ CrO3による酸化方法(Jones Oxidation etc.)
▲2▼ 活性化DMSOを用いる方法(Swern Oxidation, Corey-Kim Oxidation etc.)
▲3▼ Al(OCH(CH3)2)3を用いる Redox反応(Oppenauer Oxidation)
しかしこれらの方法は少量合成においては便利であるが、反応の後処理が繁雑であったり、有害な廃棄物を多量に副生する等の問題を有しており、大量合成には適さなかった。工業的な生産を考えた場合、触媒的な酸化法が必須となり、酸化剤は安全かつ安価なものが望ましい。古くよりPt又はPd触媒によるアルコールの酸化が報告されているが、高温、加圧下、アルカリ性条件等の厳しい反応条件が必要であった(特開平6−321845、EP−201957、特開昭50−96516、USP−3342858、特公昭60−41656、特開昭62−198641など)。一方、Ru触媒を用いるアルコールの効率的な酸化方法が報告されているが、1級アルコールとしては単純な構造のn−オクタノールの酸化しか報告されていない(J. Org. Chem., 1993, 58, 7318.)。この様な状況により、反応性の低い1級アルコール、特に洗浄剤の活性成分の製造原料となるような特定の構造を有する1級アルコールについては実用的な酸化方法は殆ど報告されていないのが現状であった。
【0004】
このため、反応操作が簡単で安全な、また有害な廃棄物が少なく大量合成に適した、特定の構造を有する1級アルコールの実用的な酸化方法が強く望まれている。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決できる特定の構造を有する1級アルコールの実用的な酸化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは特定の第1群及び第2群より選ばれる金属触媒の共存下、アルデヒドを添加して反応を行うことにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(I)又は(II)
R1-A1-CH2OH (I)
〔式中、
R1:炭素数4〜22のヒドロキシル基又はハロゲン原子が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の、アルキル基、アルケニル基、あるいは炭素数6〜18のアルキルフェニル基を示す。
【0007】
A1:エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、糖骨格残基、エステル基、アセタール基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる基、又はこれらの基を少なくとも1つ有する連結基を示す。〕
R2-CH2-OH (II)
〔式中、
R2:炭素数4〜22の分岐鎖のアルキル基、炭素数4〜22の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基又はハロゲン化アルキル基、あるいは炭素数6〜18のアルキルフェニル基を示す。〕
で表される1級アルコールを酸化するに際し、Co0 、Co2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Mn2+又はNi2+を含有する金属化合物からなる第1群から選ばれる金属触媒の1種以上、及びRu、Cr、Mo、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、W又はこれらの金属化合物からなる第2群から選ばれる金属触媒であって第1群から選ばれた金属触媒以外の金属触媒の1種以上の存在下、一般式(III)
R3-CHO (III)
〔式中、
R3:炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、あるいは置換又は無置換のフェニル基、ベンジル基又はシクロアルキル基を示す。〕
で表されるアルデヒドを添加して反応を行うことを特徴とする、1級アルコールの酸化方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
一般式(I)において、R1は炭素数4〜22のヒドロキシル基又はハロゲン原子が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の、アルキル基、アルケニル基、あるいは炭素数6〜18のアルキルフェニル基を示すが、例えばn−ヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、イソステアリル基、2−エチルヘキシル基、2−ブチルオクチル基、2−オクチルドデシル基、オレイル基、12,12,12−トリフルオロドデシル基、3,4,5,6,7,8,9,10,11,12−パーフルオロドデシル基、2−ヒドロキシドデシル基、12−ヒドロキシドデシル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
【0009】
また、A1はエーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、糖骨格残基、エステル基、アセタール基、カルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ニトリル基、及びエポキシ基からなる群から選ばれる基、又はこれらの基を少なくとも1つ有する連結基を示すが、エーテル基又はアミド基を有するアルキレン基が好ましい。
【0010】
一般式(I)で表される1級アルコールとして特に好ましいものは、下記一般式 (IV) で表されるエーテル基含有アルコール、又は一般式(V)で表されるアミド基含有アルコールである。
【0011】
R1-(O-R4)n-OH (IV)
〔式中、
R1:前記と同じ意味を示す。
R4:炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、n個のR4は同一でも異なっていてもよい。
【0012】
n:オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す 0.1〜50の数である。〕
R1-A2-(R5-O)m-H (V)
〔式中、
R1:前記と同じ意味を示す。
【0013】
A2:アミド基、アルキル基の炭素数が1〜22のN−アルキルアミド基、又はアルキル基の炭素数が1〜22のN−(ヒドロキシアルキル)アミド基を示す。
R5:炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、m個のR5は同一でも異なっていてもよい。
【0014】
m:オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す 0.1〜50の数である。〕
一般式(II)において、R2は炭素数4〜22の分岐鎖のアルキル基、炭素数4〜22の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、ヒドロキシアルキル基又はハロゲン化アルキル基、あるいは炭素数6〜18のアルキルフェニル基を示す。
【0015】
前記一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールの具体例としては、次の化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】
Figure 0004407846
【0017】
一般式(III) において、R3は炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基(ビニル基等)、あるいは置換基としてハロゲン原子等を有していてもよいフェニル基、ベンジル基又はシクロアルキル基(シクロヘキシル基等)を示すが、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、置換フェニル基又はフェニル基が反応性の点で好ましく、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso −プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、m−クロロフェニル基が好ましく、更にはメチル基が価格の点で好ましい。
【0018】
本発明で用いられる第1群の金属触媒は、Co0 、Co2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Mn2+又はNi2+を含有する金属化合物から選ばれるが、金属は単核であっても複核であっても良い。また、これらの水和物であっても良い。対イオンもしくは配位子としては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酸素原子、カルボニル、オレフィン、P含有配位子、N含有配位子、O含有配位子、カルボン酸アニオン、アルコキシド等が挙げられる。
【0019】
第1群の金属触媒の具体例としては、Co, Co(OAc)2・4H2O, Co(OCOC17H35)2, Co(NO3)2・6H2O, CoCl2, CoSO4・7H2O, Co(acac)2, Co(hexadecafluorophthalocyanine), FeCl2, Fe(OAc)2, FeCp2, Fe(Cp-PPh2)2, Fe(phthalocyanine), FeCl(tetraphenylporphyrinato), Fe2O3, FeCl3, Fe(OCOC17H35)3, Fe(NO3)3・9H2O, Fe(acac)3, Fe(hexafluoroacetylacetonato)3, CuCl2, CuO, Cu(acac)2, Cu(OAc)2, Cu(CF3CO2)2, Cu(CF3SO3)2, Cu(OH)2, Cu(0Me)2, Cu(NO3)2・3H2O, CuSO4,Mn(OAc)2・4H2O, NiCl2, NiO, Ni(OAc)2・4H2O, Ni(OOC-COO), Ni(acac)2, NiCp2, NiCl2(PPh3)2 等が挙げられ、Co, Co(OAc)2・4H2O, Co(NO3)2・6H2O, Fe2O3, FeCl3, Fe(NO3)3・9H2O, Cu(OAc)2, Cu(NO3)2・3H2O, Mn(OAc)2・4H2O, Ni(OAc)2・4H2Oが好ましく、Co, Co(OAc)2・4H2O, Fe2O3, Cu(OAc)2, Mn(OAc)2・4H2O,Ni(OAc)2・4H2Oが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いられる第2群の金属触媒は、Ru、Cr、Mo、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、W又はこれらの金属化合物であるが、金属は単核であっても複核であっても良い。また、これらの水和物であっても良い。対イオンもしくは配位子としては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酸素原子、カルボニル、オレフィン、P含有配位子、N含有配位子、O含有配位子、カルボン酸アニオン、アルコキシド等が挙げられる。これらの金属触媒はそのまま用いても良いし、又はシリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭、高分子樹脂等の担体に担持させて用いても良い。
【0021】
第2群の金属触媒の具体例としては、Ru, Ru/C, Ru/Al2O3, Ru/SiO2, RuCl3・nH2O, Ru(acac)3, RuCp2, RuCp* 2, RuCl2(2,2'-bipyridine)2, RuCl2(PPh3)3, [RuCl2(COD)]n, Ru3(CO)12, Ru(CO)(tetraphenylporphyrinato)・THF, Ru[ethylenebis(salicylaldiminato)](PPh3)Cl, Cr, CrO3, Cr2O3, CrCl2, Cr(CO)6, Cr(CO)3(benzene), [Cr(OAc)2・H2O]2, CrK(SO4)2・12H2O, Cr(H2NCH2CH2NH2)3Cl3 ・3.5H2O, Mo, Mo(CO)6, Mo2C, MoB, [Mo(OAc)2]2, MoCl3, MoO2, MoS2, MoSe2,MoO2Cl2, MoO2(acac)2, MoCl5, MoO3, Mo(CO)3(cycloheptatriene), H2MoO4・H2O, NaMoO4・2H2O, (NH4)6Mo7O24・2H2O, Na3[PO4・12MoO3]・nH2O, V, VCl3, V(acac)3, VO(acac)2, V2O5, NaVO3, VO(OC3H7)3, VO(phthalocyanine), Mn, Mn2(CO)10, MnO2, Mn(OAc)2・4H2O, Mn(OAc)3・2H2O, Mn(acac)3, MnCl(tetraphenylporphyrinato), Mn(ClO4)2・6H2O, MnF2, MnCO3, MnWO4, MnCl(salen), Fe, FeSi2, Fe(CO)5, Fe3(CO)12, FeCl2, Fe(OAc)2, FeCp2, Fe(ClO4)2・6H2O, Fe(Cp-PPh2)2, Fe(phthalocyanine), FeCl(tetraphenylporphyrinato), Fe2O3, FeCl3, Fe(OCOC17H35)3, Fe(NO3)3・9H2O, Fe(ClO4)3・nH2O, Fe(acac)3, Fe(hexafluoroacetylacetonato)3, FePO4・nH2O, Ni, Ni(COD)2, NiCl2(PPh3)2, NiCl2, NiO,Ni(OAc)2・4H2O, Ni(OOC-COO), Ni(acac)2, NiCp2, NiCl2(PPh3)2, Ni2O3, Cu, Cu(1,10-phenanthroline)2, CuCl, CuBr, CuI, Cu2O, Cu2S, CuCl2, CuO, Cu(acac)2, Cu(OAc)2, Cu(CF3CO2)2, Cu(CF3SO3)2, Cu(OH)2, Cu(OMe)2, Cu(NO3)2・3H2O, CuSO4, CuSCN, Cu(phthalocyanine), Pd, Pd/C, Pd/Al2O3, PdO, PdCl2, PdCl2(MeCN)2, Pd(OAc)2, Pd(acac)2, W, W(CO)6, WC, WB, WO3, WOCl4, Na2WO4 ・2H2O, H2WO4, Na3[PO4・12WO3]・nH2O等が挙げられ、Ru、Cr、Mo又はこれらの金属化合物が好ましく、Ru, Ru/C, RuCl3・nH2O, Ru(acac)3, RuCl2(PPh3)3, Ru3(CO)12, Ru(CO)(tetraphenylporphyrinato)・THF, Ru[ethylenebis(salicylaldiminato)](PPh3)Cl, Cr, CrO3, MoB, Mo(CO)6, MoCl3, MoO2が特に好ましい。
【0022】
本発明において第1群の金属触媒と第2群の金属触媒の好ましい組合せは第1群の金属触媒としてCo(OAc)2・4H2O, Cu(OAc)2又はNi(OAc)2・4H2Oを用い、第2群の金属触媒としてRu, Ru/C, RuCl3・nH2O, RuCl2(PPh3)3, Ru3(CO)12, Ru[ethylenebis(salicylaldiminato)](PPh3)Cl, CrO3, Mo(CO)6, MoCl3又はMoO2を用いる組合せである。
【0023】
本発明の反応方法によると、前記一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールを酸化するに際し、前記第1群より選ばれる金属触媒、及び前記第2群より選ばれる金属触媒であって第1群から選ばれた金属触媒以外の金属触媒の存在下、前記一般式(III) で表されるアルデヒドを添加することにより反応を行うが、本発明の酸化方法の好ましい実施様態を以下に示す。
【0024】
反応器に一般式(I)又は(II)で表される1級アルコール、第1群より選ばれる金属触媒、第2群より選ばれる金属触媒、さらに必要なら溶媒を仕込み、一般式(III) で表されるアルデヒドを添加する。
【0025】
第1群より選ばれる金属触媒、及び第2群より選ばれる金属触媒の仕込み量は、それぞれ、一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールに対し 0.001〜10 mol%が好ましく、0.01〜5 mol%が更に好ましい。0.001mol%より少ないと添加による効果が減少し、反応時間が長くなり好ましくない。また10 mol%を超えて用いると、好ましくない副反応が起こるようになり、また経済的にも不利である。
【0026】
反応で用いる溶媒は、一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールの性質により使用の有無、及び種類を選択することが出来る。例えば、前記1級アルコールの融点や粘度が高くそのままでは撹拌が困難な場合、前記1級アルコールの濃度と反応収率の間に相関がある場合等は、適当な量の反応溶媒を使用することが出来る。本反応で用いられる溶媒は、一般的に有機合成で用いられている溶媒なら何でも良く、例えばヘキサン、アセトン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メタノール、水等が挙げられ、単独で用いても混合して用いても良い。
【0027】
前記一般式(III) で表されるアルデヒドの添加量は、一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールに対し0.1 〜20当量が好ましく、1〜10当量が更に好ましい。0.1 当量より少ないと反応が完全には進行しなくなり、故意に原料を残存させる場合を除き好ましくない。また、20当量を超えて用いても効果は同じであるが、経済的に不利である。添加の方法は、反応の開始時に一括して仕込んでもよいし、滴下により添加を行ってもよい。
【0028】
反応は空気雰囲気下、酸素雰囲気下、もしくはこれらの混合気体の雰囲気下で行うが、酸素雰囲気下の方が反応が速く進行し好ましい。また、反応スケールが大きい場合、これらの気体との接触効率を高くする為に、これらの気体をバブリングにより供給するのが好ましい。
【0029】
酸化反応時の温度は、一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールもしくは溶媒の融点以上、沸点以下であれば何ら問題ないが、−30〜150 ℃が好ましく、更に好ましくは0〜100 ℃である。酸化反応の時間は、0.5 〜48時間が好ましい。
【0030】
【発明の効果】
本発明の酸化方法によると、実質的に用いる反応剤は一般式(III) で表されるアルデヒドと酸素だけである。これは従来の金属反応剤や過酸化物等の危険な酸化剤を用いる方法と比較して、著しく安全であり且つ操作が簡便である。また従来の方法の様に、有害な廃棄物は副生しない。また、従来のPt又はPd触媒による酸化方法の様に高温、加圧、アルカリ性等の厳しい条件下で反応を行う必要がなく、この点においても、従来法と比較して著しく安全であり、且つ操作が簡便である。
【0031】
これらの原因は、まず、一般式(III) で表されるアルデヒドと酸素より、第1群より選ばれる金属触媒の存在下、反応系中で酸化剤である過酸(R3-COOOH) を調製していることにある。これにより、危険な酸化剤である過酸の取り扱いに伴う種々の問題が解決された。更にこの過酸(R3-COOOH) の作用により、第2群より選ばれる金属触媒が酸化活性種となるが、この酸化活性種が一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールに対して、極めて高活性を示すことにある。これにより、厳しい条件下で反応を行う必要がなくなった。
【0032】
上記の様な方法で得られた一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールの酸化物がカルボン酸もしくはカルボン酸エステルである場合、塩基性物質で中和もしくは加水分解することによりカルボン酸塩にすることが出来る。更に一般式(I)又は(II)で表される1級アルコールに長鎖のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、又はアルキルフェニル基が含まれる場合、この様にして得られるカルボン酸塩は、各種洗浄剤の基剤もしくは添加剤として使用することができる。
【0033】
【実施例】
実施例1
酸素入りの風船を備えた50ミリリットル・ナスフラスコに、下記式 (VI) で表される2−ドデシルオキシエタノール0.4628g(2009mmol)、Co(OAc)2・4H2O 0.0012g(0.0048mmol;2−ドデシルオキシエタノールに対して0.2mol%)、RuCl3・nH2O 0.0012g(0.0046mmol;2−ドデシルオキシエタノールに対して0.2mol%) 及び酢酸エチル6mlを仕込み35℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.39g(2−ドデシルオキシエタノールに対して4当量)を30分間かけて滴下し、さらに35℃で2.5時間撹拌した。その後、少量のNa2SO3 水溶液を加えて過酸化物を分解し、溶媒を留去して、カラム・クロマトグラフィーにより精製を行って、下記式(VII) で表されるドデシルオキシ酢酸0.1400g(収率29%)を得た。
融点 44.0〜47.0℃
高分解能質量分析(HRMS) 計算値(C14H28O3として):224.2038
実測値:224.2016
【0034】
【化2】
Figure 0004407846
【0035】
実施例2〜6
表1に示すエーテル基を有する種々の1級アルコールを用い、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行った。結果を表1にまとめて示した。
【0036】
【表1】
Figure 0004407846
【0037】
実施例7
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(VIII)で表されるN−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド0.4866g(1.999mmol) 、Co(OAc)2・4H2O(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して0.2mol%) 、 RuCl3・nH2O(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して0.2mol%) 及び酢酸エチル14mlを仕込み70℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.35g(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して4当量) を30分間かけて滴下し、さらに70℃で2.5 時間撹拌した。その後、実施例1と同様の操作を行って、式(IX)で表されるN−ホルミルドデカンアミド0.1889g(収率42%)を得た。
融点 73.7〜75.2℃
HRMS 計算値(C13H25NO2 として):227.1885、実測値:227.1842
【0038】
【化3】
Figure 0004407846
【0039】
実施例8
実施例1と同様のナスフラスコに、上記式(VIII)で表されるN−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミド0.4905g(2.015mmol) 、Co(OAc)2・4H2O(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して0.2mol%) 、 RuCl3・nH2O(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して0.2mol%) 及び酢酸14mlを仕込み35℃で撹拌した。そこへ、酢酸2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.36g(N−(2−ヒドロキシエチル)ドデカンアミドに対して4当量) を30分間かけて滴下し、さらに35℃で2.5 時間撹拌した。反応物を 1H−NMRにより分析したところ、下記式(X)で表される(ドデカノイルアミノ)酢酸が収率28%で生成していた。単離精製した上記化合物のNMRスペクトルはグリシンのアシル化により調製したサンプルと一致した。
【0040】
【化4】
Figure 0004407846
【0041】
実施例9
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(XI)で表されるN−(3−ヒドロキシプロピル)ドデカンアミド0.5147g(2.000mmol) 、Co(OAc)2・4H2O(N−(3−ヒドロキシプロピル)ドデカンアミドに対して0.2mol%)、 RuCl3・nH2O(N−(3−ヒドロキシプロピル)ドデカンアミドに対して0.2mol%)及び酢酸エチル6mlを仕込み70℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.35g(N−(3−ヒドロキシプロピル)ドデカンアミドに対して4当量) を30分間かけて滴下し、さらに70℃で2.5 時間撹拌した。その後、酢酸エチルにより再結晶を行って、下記式(XII) で表される3−(ドデカノイルアミノ)プロピオン酸0.3191g(収率59%)を得た。
融点 115.5 〜117.0 ℃
HRMS 計算値(C15H29NO3 として):271.2148、実測値:271.2151
【0042】
【化5】
Figure 0004407846
【0043】
実施例10
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(XIII)で表されるN−(5−ヒドロキシペンチル)ドデカンアミド0.2870g(1.005mmol) 、Co(OAc)2・4H2O(N−(5−ヒドロキシペンチル)ドデカンアミドに対して 0.2mol %) 、 RuCl3・nH2O(N−(5−ヒドロキシペンチル)ドデカンアミドに対して0.2mol%) 及び酢酸エチル25mlを仕込み35℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.18g(N−(5−ヒドロキシペンチル)ドデカンアミドに対して4当量) を30分間かけて滴下し、さらに35℃で2.5 時間撹拌した。その後、酢酸エチルにより再結晶を行って、下記式(XIV) で表される5−(ドデカノイルアミノ)ペンタン酸0.1272g(収率42%)を得た。
融点 115.8 〜116.7 ℃
HRMS 計算値(C17H33NO3 として):299.2460、実測値:299.2479
【0044】
【化6】
Figure 0004407846
【0045】
実施例11
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(XV)で表されるN−ドデシル−(6−ヒドロキシ)ヘキサンアミド0.5993g(2.001mmol) 、Co(OAc)2・4H2O(N−ドデシル−(6−ヒドロキシ)ヘキサンアミドに対して0.2mol %) 、 RuCl3・nH2O(N−ドデシル−(6−ヒドロキシ)ヘキサンアミドに対して0.2mol%) 及び酢酸エチル14mlを仕込み70℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.35g(N−ドデシル−(6−ヒドロキシ)ヘキサンアミドに対して4当量)を30分間かけて滴下し、さらに70℃で2.5 時間撹拌した。その後、酢酸エチルにより再結晶を行って、下記式(XVI) で表される5−(ドデシルカルバモイル)ペンタン酸0.3721g(収率59%)を得た。
融点 113.0 〜115.0 ℃
HRMS 計算値(C18H35NO3 として):313.2617、実測値:313.2609
【0046】
【化7】
Figure 0004407846
【0047】
実施例12
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(XVII)で表されるN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ドデカンアミド0.2882g(1.003mmol) 、Co(OAc)2・4H2O〔N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して0.5mol%〕、 Ru3(CO)12〔N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して0.5mol%〕及び酢酸エチル20mlを仕込み35℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.18g〔N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して4当量〕を30分間かけて滴下し、さらに35℃で2.5 時間撹拌して、下記式(XVIII) で表される(2−ドデカノイルアミノエトキシ)酢酸を含む反応混合物を得た。その後反応混合物を(トリメチルシリル)ジアゾメタンで処理してメチルエステル誘導体とし、カラムクロマトグラフィーにより単離精製を行なったところ、前記カルボン酸の収率は32%であった。
【0048】
【化8】
Figure 0004407846
【0049】
実施例13
実施例1と同様のナスフラスコに、下記式(XIX) で表されるN−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)ドデカンアミド0.3320g(1.002mmol) 、Co(OAc)2・4H2O〔N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して0.5mol%〕、 Ru3(CO)12〔N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して0.5mol%〕及び酢酸エチル20mlを仕込み35℃で撹拌した。そこへ、酢酸エチル2mlに溶解させたアセトアルデヒド0.18g〔N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)ドデカンアミドに対して4当量〕を30分間かけて滴下し、さらに35℃で2.5 時間撹拌して、下記式(XX)で表される(2−(2−ドデカノイルアミノエトキシ)エトキシ)酢酸及び実施例12記載の式(XVIII) で表される(2−ドデカノイルアミノエトキシ)酢酸を含む反応混合物を得た。その後反応混合物を実施例12と同様に処理して単離精製を行なったところ、前記カルボン酸の収率はそれぞれ32%、10%であった。
【0050】
【化9】
Figure 0004407846
【0051】
実施例14〜16及び比較例1〜3
実施例13と同様の反応条件で、下記式(XXI) で表されるテトラエチレングリコールドデシルエーテルに対してそれぞれ0.5mol%の表2に示す第1群より選ばれる金属触媒及び第2群より選ばれる金属触媒、及びテトラエチレングリコールドデシルエーテルに対して4当量のアトセアルデヒドを用いて酸化反応を行なった。
また、比較例として、金属触媒及び/又はアセトアルデヒドを用いないで同様に反応を行なった。
得られた下記式(XXII)で表される(2−(2−(2−ドデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)酢酸の収率を表2にまとめて示した。
【0052】
【化10】
Figure 0004407846
【0053】
【表2】
Figure 0004407846

Claims (3)

  1. 一般式(I)
    R1-A1-CH2OH (I)
    〔式中、R1:炭素数4〜22のヒドロキシル基又はハロゲン原子が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の、アルキル基、アルケニル基、あるいは炭素数6〜18のアルキルフェニル基を示す。
    A1:エーテル基及びアミド基からなる群から選ばれる基、又はこれらの基を少なくとも1つ有する連結基を示す。〕
    で表される1級アルコールを酸化するに際し、Co0 又はCo 2+ を含有する金属化合物からなる第1群から選ばれる金属触媒の1種以上、及びRu又はこの金属化合物からなる第2群から選ばれる金属触媒であって第1群から選ばれた金属触媒以外の金属触媒の1種以上の存在下、一般式(III)
    R3-CHO (III)
    〔式中、R3:炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、あるいは置換又は無置換のフェニル基、ベンジル基又はシクロアルキル基を示す。〕
    で表されるアルデヒドを添加して反応を行うことを特徴とする、1級アルコールの酸化方法。
  2. 一般式(I)で表される1級アルコールが一般式 (IV)
    R1-(O-R4)n-OH (IV)
    〔式中、R1:前記と同じ意味を示す。
    R4:炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、n個のR4は同一でも異なっていてもよい。
    n:オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す 0.1〜50の数である。〕
    で表されるエーテル基含有アルコールである請求項1記載の酸化方法。
  3. 一般式(I)で表される1級アルコールが一般式(V)
    R1-A2-(R5-O)m-H (V)
    〔式中、R1:前記と同じ意味を示す。
    A2:アミド基、アルキル基の炭素数が1〜22のN−アルキルアミド基、又はアルキル基の炭素数が1〜22のN−(ヒドロキシアルキル)アミド基を示す。
    R5:炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、m個のR5は同一でも異なっていてもよい。
    m:オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す 0.1〜50の数である。〕
    で表されるアミド基含有アルコールである請求項1記載の酸化方法。
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