JP4915376B2 - 熱間圧延の圧延順決定方法及び圧延順決定装置、並びに、熱延鋼板の製造方法及び製造装置 - Google Patents

熱間圧延の圧延順決定方法及び圧延順決定装置、並びに、熱延鋼板の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、複数のスラブを加熱炉にて加熱した後に圧延機で圧延する熱間圧延の圧延順序を決定する方法及び装置、並びに、当該方法により得られた圧延順に圧延を行う熱延鋼板の製造方法及び熱間圧延の圧延順序決定装置を備える熱延鋼板の製造装置に関する。
複数の圧延材(以下において「スラブ」ということがある。)が圧延される熱間圧延工程では、圧延機で圧延される圧延材の圧延順序が、生産効率や生産コストに大きく影響することが知られている。従来、圧延材の圧延順序は、操業者の勘や経験等に基づいて決定されていたため、熱間圧延工程の生産効率や生産コストを最適化することが困難であった。
かかる事態を解決するため、これまでに、熱間圧延されるスラブの圧延順序の決定に関する技術が開発されてきており、例えば特許文献1には、熱間圧延工場の物流スケジューリング装置が開示されている。
特開平6−304619号公報
しかし、特許文献1に開示されている装置によって決められた圧延順序に従うように加熱炉でスラブを加熱すると、スラブの幅方向に温度差が生じることがある。スラブの幅方向に温度差があると、圧延したときには高温度部が低温度部に比べて軟らかく延び易いため、温度が低い方向に向かった曲がり(キャンバーともいう。)が圧延材に生じる。曲がりが生じると、製品の歩留まりが悪くなるだけでなく、さらに後続する圧延工程において圧延機への噛み込み不良トラブルを引き起こし、生産性が低下するという問題があった。
かかる問題は、特許文献1に開示されているような従来の圧延順決定方法では、圧延工程で生じる曲がりの原因となる加熱工程におけるスラブの幅方向における温度差の生じ易さを考慮していないことが原因で生じている。
そこで本発明は、加熱炉における加熱工程で生じるスラブ幅方向の温度差の目安となる片焼け評価量を複雑な方法を用いることなく評価することによって、圧延工程での圧延材の曲がりを抑制することができる熱間圧延の圧延順決定方法及び圧延順決定装置を提供することを課題とする。さらに本発明は、上記圧延順決定方法により得られた圧延順に圧延を行う熱延鋼板の製造方法及び熱間圧延の圧延順序決定装置を備える熱延鋼板の製造装置を提供することを課題とする。
発明者は鋭意検討の結果、スラブが加熱炉に装入される前に加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差の目安となる片焼け評価量を求め、これに基づく評価関数を導入することにより圧延工程における圧延材の曲がりを抑制することができる知見を得た。発明者はこれら知見を発展させて本発明を完成させた。以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の本発明は、加熱炉にて加熱した後に圧延機で圧延される複数のスラブの圧延順を決定する方法であって、複数のスラブが加熱炉に装入される前に、該スラブのそれぞれについて加熱炉の加熱工程において生じるスラブの幅方向における温度差の目安となる片焼け評価量を計算し、計算された複数のスラブの片焼け評価量の総和を少なくとも1つの項に含む評価関数から評価関数値を計算し、該評価関数値が最小となるようにスラブの圧延順を決定することを特徴とする、熱間圧延の圧延順決定方法を提供することにより、前記課題を解決する。
ここで「最小」とは、真に最小であることの他、真の最小値を求めることが時間的な制約等により不可能である場合に、例えば発見的手法であるヒューリスティック探索等の方法により求めた準最小も含むものとする。以下同様である。
請求項2に記載の本発明は、鋳造工程から直送されるスラブである複数の直送スラブと、該直送スラブ以外のスラブである複数の非直送スラブとを混合して圧延するときに、直送スラブのみを加熱する加熱炉、及び非直送スラブのみを加熱する加熱炉を有し、直送スラブ及び非直送スラブの圧延順を決定する方法であって、直送スラブは、鋳造工程から加熱炉への必要搬送時間に該加熱炉における必要加熱時間を加えた合計時間を算出し、該合計時間後の最も早く圧延できる圧延順となるように割り当てられ、非直送スラブは、複数の非直送スラブが加熱炉に装入される前に該非直送スラブのそれぞれについて加熱炉の加熱工程において生じる、スラブの幅方向における温度差の目安となる片焼け評価量を計算するとともに、複数の非直送スラブの片焼け評価量の総和を少なくとも1つの項に含む評価関数から評価関数値を計算し、該評価関数値が最小となるように非直送スラブの圧延順を決定することを特徴とする、熱間圧延の圧延順決定方法を提供することにより、前記課題を解決する。
ここで、「必要搬送時間」とは、鋳造工程を終了してから加熱炉へ装入するまでに必要な最短時間を意味し、「必要加熱時間」とは、加熱炉に装入されてから目標加熱炉抽出温度に加熱するまでに必要な最短時間を意味する。
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の熱間圧延の圧延順決定方法において、片焼け評価量を、加熱炉内で隣り合う各々のスラブの長さの差をもとに計算することを特徴とする熱間圧延の圧延順決定方法を提供することにより、前記課題を解決する。
請求項4に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の熱間圧延の圧延順決定方法において、片焼け評価量を、加熱炉内で隣り合う各々のスラブの長さ方向の装入配置関係から計算することを特徴とする熱間圧延の圧延順決定方法を提供することにより、前記課題を解決する。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間圧延の圧延順決定方法により圧延順を算出する手段を備えることを特徴とする熱間圧延の圧延順決定装置を提供することにより、前記課題を解決する。
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間圧延の圧延順決定方法により得られた圧延順に圧延を行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法を提供することにより、前記課題を解決する。
請求項7に記載の本発明は、加熱炉及び圧延機と、請求項5に記載の熱間圧延の圧延順決定装置と、を備えることを特徴とする熱延鋼板の製造装置を提供することにより、前記課題を解決する。
本発明によれば、スラブの加熱工程におけるスラブ幅方向の温度差を抑制することによって、圧延工程で生じる圧延材の曲がりを軽減し、製品の歩留まりを向上させることが可能になる。また、圧延材の圧延機への噛み込み不良トラブルを防止し、生産性を向上させることが可能になる。
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
1.熱間圧延の圧延順決定方法、及び、熱延鋼板の製造方法
図1は、1つの実施形態に係る本発明の圧延順決定方法S0の流れを示す図である。圧延順決定方法S0は、所定の加熱炉に装入されるスラブの圧延順を決定する方法である。ここで、本発明の圧延順決定方法S0では評価関数値Jを導入する。そして当該評価関数値Jが最小の値をとる条件を得てこれにより圧延順が決定される。従って、始めに評価関数値Jについて説明し、その後、圧延順決定方法S0について説明する。
1つの例に係る評価関数値Jは、
Figure 0004915376

で表され、3つの項の和で構成されている。ここでJは加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差の目安となる片焼け評価量の評価関数項、Jは仕上げ板幅の評価関数項、及びJは仕上げ板厚の評価関数項である。以下それぞれについて説明する。
<片焼け評価量の評価関数項J
図2は、同じ加熱炉内にスラブSL、スラブSL、スラブSLが隣り合って装入されている状態を示す模式図である。SL、SL、SLは図の矢印の方向に移動しながら加熱されてSL、SL、SLの順に加熱炉から抽出された後、図の上方に向かって送られて圧延される。すなわち図の上下がスラブの長さ方向であり、図の左右がスラブの幅方向である。
スラブは、スラブを下面から支えるスキッドボタンの配置の制約から、スラブの先端あるいは後端が揃うように加熱炉内に装入配置されることが多い。図2では、スラブの後端が揃うように装入配置される場合を示している。
ここで、スラブSLに着目して加熱工程において生じるスラブSLの幅方向温度分布について説明する。スラブSLとそれに隣り合うスラブSL、SLとの長さ方向の装入配置関係は、図2の(a)〜(c)に示す3通りに分類できる。
図2(a)は、スラブSLが隣り合うスラブSL、SLよりも長い場合を示している。この場合のハッチング部に注目すると、スラブSLの先端の左側はスラブSLよりも飛び出ており、他の部分より多くの輻射熱を受けて温度が高くなる。同様に右側はスラブSLよりも飛び出しているため、他の部分より多くの輻射熱を受けて温度が高くなる。しかし、左右を比較すると温度が高い部分の長さは左側の方が右側より長いので、スラブSLの先端は左側の方が右側より温度が高くなる。
また図2(b)は、スラブSLが隣り合うスラブのどちらか一方(本例ではスラブSL)に対してのみ長い場合を示している。この場合のハッチング部に注目すると、スラブSLの先端の左側はスラブSLよりも飛び出ており、他の部分より多くの輻射熱を受けて温度が高くなる。一方、右側にはそのような部分は存在しないので、スラブSLの先端は左側の方が右側より温度が高くなる。
さらに図2(c)は、スラブSLが隣り合うスラブSL、SLよりも短い場合を示している。この場合、スラブSLの先端は隣り合うスラブSL、SLよりも内側に入っているので左右ともに高温部は存在せず、スラブSLの先端は左右均等の温度になる。
以上のように、スラブの幅方向温度分布の大きさは隣り合うスラブから長さ方向に飛び出ている部分の長さの左右の差に応じて生じる。
したがって、隣り合うスラブとのスラブ長さの差が大きいとスラブ幅方向温度分布が大きくなることになるので、加熱工程で生じる第kスラブの幅方向温度分布の目安となる片焼け評価量Tを下記式2で計算する。
Figure 0004915376

ここで、xは第kスラブの長さ、xk−1、xk+1はその両側に隣り合うスラブの長さである。
各スラブの片焼け評価量ができるだけ小さいことが理想であるが、他の条件の影響によりこれが必ずしも理想的にはならないことがある。そこで、下記式3で表される、各スラブの片焼け評価量の総和である片焼け評価量の評価関数項Jによりそれを評価する。
Figure 0004915376

ここでαは重み係数であり、当該圧延に関して、この項をJの値に対してどの程度影響させるかを示すものである。そしてこれは圧延の目的、効率等の観点から、熱延鋼板の製造の事情に応じて都度設定される。式3を用いることにより、圧延順とスラブ長さから、加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差が大きくなるか小さくなるかの目安を得ることができる。
また、加熱工程で生じる第kスラブの幅方向温度分布の目安となる片焼け評価量Tは、隣り合うスラブから長さ方向に飛び出ている部分の長さの左右の差の自乗として、下記式4で評価してもよい。
Figure 0004915376

式4により、圧延順と隣り合うスラブとの長さ方向の装入配置関係から、加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差が大きくなるか小さくなるかの目安を得ることができる。
また、式4は加熱炉内でスラブの後端が揃っている場合のスラブ先端の幅方向温度分布、あるいは、スラブの先端が揃っている場合のスラブ後端の幅方向温度分布の目安となる式であるが、図3のように先端、後端ともに揃っていない場合は、先端の幅方向温度分布の目安となる値と、後端の幅方向温度分布の目安となる値との荷重平均である下記式5で評価することができる。
Figure 0004915376

ここで、yは基準線から第kスラブの先端までの長さ、zは基準線から第kスラブの後端までの長さ、p、qはスラブ先端の幅方向温度分布とスラブ後端の幅方向温度分布の重視度合いを調整するための重み係数である。
実際のスラブ幅方向の温度差を計算するには、伝熱方程式を解かなければならないが、計算時間が膨大になるため、最適解を得るために繰り返し計算が必要なスケジューリング問題の中に組み込むことができない。しかし、本方法では、スラブ幅方向の温度差が大きくなるか小さくなるかの目安を簡便な方法で評価しているので、スケジューリング問題の中に容易に組み込むことができる。
<仕上げ板幅の評価関数項J
仕上げ板幅の評価関数項Jは、圧延順で先後するスラブ間における仕上げ圧延の板幅に関してその変化を評価する関数項で、各スラブの仕上げ板幅Wが変数となる。理想は1つの圧延チャンス内で、常に後に圧延するスラブの仕上げ板幅Wがその前に圧延するスラブの仕上げ板幅Wj−1より狭いことである。しかし、他の条件の影響によりこれが必ずしも理想的にはならないので、当該仕上げ板幅評価関数項Jによりそれを評価する。Jは下記式6で表される。
Figure 0004915376

ここで、f(W,Wj−1)は第jスラブにおける評価関数であり、圧延機の特性、製造ラインの性質等により得られる関数である。またαは重み係数であり、当該圧延に関して、この項をJの値に対してどの程度影響させるかを示すものである。そしてこれは圧延の目的、効率等の観点から、熱延鋼板の製造の事情に応じて都度設定される。
具体的にf(W,Wj−1)は、図4に示したような性質を有する関数である。図4では横軸に圧延順で先後するスラブの仕上げ板幅の差をとり、縦軸はf(W,Wj−1)を表している。このように、関数f(W,Wj−1)は、先後のスラブの仕上げ板幅差が0のとき最小値をとる。そして、後に圧延するスラブの仕上げ板幅の方が先に圧延するスラブの仕上げ板幅より大きくなる場合には、その大きくなる度合いに応じてf(W,Wj−1)も大きくなる。一方、後に圧延するスラブの仕上げ板幅の方が先に圧延するスラブの仕上げ板幅より小さくなる場合には、f(W,Wj−1)は緩やかに大きくなるとともに、所定の値を超えると急激に大きくなる。
<仕上げ板厚の評価関数項J
仕上げ板厚の評価関数項Jは、圧延順で先後するスラブ間における仕上げ圧延の板厚に関してその変化を評価する項で、各スラブの仕上げ板厚hが変数となる。理想は1つの圧延チャンス内で、後に圧延するスラブの仕上げ板厚hとその前に圧延するスラブの仕上げ板厚hj−1の差が小さいことである。しかし、他の条件の影響によりこれが必ずしも理想的なものにはならないので、当該仕上げ板厚評価関数項Jによりそれを評価する。Jは、下記式7で表される。
Figure 0004915376

ここで、g(h,hj−1)は第jスラブの仕上げ板厚に関する評価関数であり、圧延機の特性、製造ライン性質等により得られる関数である。またαは重み係数であり、当該圧延に関して、この項をJの値に対してどの程度影響させるかを示すものである。そしてこれは圧延の目的、効率等の観点から、熱延鋼板の製造の事情に応じて都度設定される。
具体的にg(h,hj−1)は、図5に示したような性質を有する関数である。図5では横軸に圧延順で先後するスラブの仕上げ板厚の差をとり、縦軸はg(h,hj−1)を表している。このように、関数g(h,hj−1)は、先後のスラブの仕上げ板厚差が0のとき最小値をとる。そして、後に圧延するスラブの仕上げ板厚の方が先に圧延するスラブの仕上げ板厚より厚くなる場合には、その大きくなる度合いに応じてg(h,hj−1)も大きくなる。一方、後に圧延するスラブの仕上げ板厚の方が先に圧延するスラブの仕上げ板厚より薄くなる場合には、g(h,hj−1)はさらに大きな割合で大きくなる。
以上説明したJ、J、Jを各項とする式1により評価関数値Jを求めることができる。本実施形態では、評価関数値Jを3つの項の和から求めることとしたが、加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差の目安となる片焼け評価関数項Jを含むものであれば他の項が追加されてもよいし、変更されてもよい。どのような項を用いるかについては、圧延の目的、得るべき熱延鋼板の性質(寸法精度や機械的性質)等により選択することができる。
次に圧延順決定方法S0について図1を参照しつつ説明する。図1に圧延順決定方法S0の流れを示した。圧延順決定方法S0では、1号〜4号の4基の加熱炉に関し、1号及び2号炉は非直送スラブ(鋳造工程からの直送スラブではないことを意味する。以下同様。)を加熱し、3号及び4号炉は直送スラブ(鋳造工程からの直送スラブを意味する。以下同様。)を加熱する実施形態である。かかる実施形態の圧延順決定方法S0は、スラブ情報を入力する工程S1、圧延チャンス数及び各チャンスのスラブ数を決定する工程S2、加熱炉抽出時間を計算する工程S3、直送スラブの圧延順と装入加熱炉を決定する工程S4、非直送スラブの圧延順に対応する装入加熱炉を決定する工程S5、及び非直送スラブの圧延順を決定する工程S6を含んでいる。以下、各工程について説明する。
<スラブ情報を入力する工程S1>
スラブ情報を入力する工程S1(以下「工程S1」と記載することがある。)は、圧延すべきスラブの情報を入力する工程である。ここでは、スラブに関する各情報を入力し、後工程に受け渡す。入力される情報は、例えば直送スラブか非直送スラブか、スラブ長さ、仕上げ板幅、仕上げ板厚及び長さ方向のスラブ装入位置等を挙げることができる。
<圧延チャンス数及び各チャンスのスラブ数を決定する工程S2>
圧延チャンス数及び各チャンスのスラブ数を決定する工程S2(以下「工程S2」と記載することがある。)は、スラブをいくつの圧延チャンスに分割し、圧延チャンス数及び各チャンスを構成するスラブの数を決定する工程である。圧延チャンス数及び各チャンスを構成するスラブの数は、過去の圧延工具の表面荒れ状況等から経験的に決められる。
<加熱炉抽出時間を計算する工程S3>
加熱炉抽出時間を計算する工程S3(以下「工程S3」と記載することがある。)は、スラブの加熱炉からの抽出時間を算出する。ここでは、1つ前を先行するスラブの加熱炉抽出時間に平均抽出ピッチを加えた時間を加熱炉抽出時間とする。ただし、1つ前を先行するスラブと当該スラブとの圧延チャンスが異なる場合には、平均抽出ピッチの代わりに、圧延工具替え時間を加える。
<直送スラブの圧延順と装入加熱炉を決定する工程S4>
直送スラブの圧延順と装入加熱炉を決定する工程S4(以下「工程S4」と記載することがある。)は、直送スラブの圧延順と装入する加熱炉を決定する工程である。直送スラブは熱損失を避けることを最優先とし、鋳造工程から直送される時間に必要加熱時間を加算して抽出可能時間を求め、当該抽出可能時間後で最も直近の圧延順を割り当てる。図6に直送スラブが割り当てられる場面を模式的に示した。このように直送スラブは、上記最も適した圧延順となるように非直送スラブの間に割り当てられていく。直送スラブが装入される加熱炉は上記のように3号炉又は4号炉のいずれかであり、装入する炉は1つ前を先行する直送スラブとは異なる加熱炉とされる。これによりサイクリックに直送スラブが3号炉及び4号炉に装入される。本工程S4により直送スラブの圧延順と装入加熱炉が決定する。
<非直送スラブの装入加熱炉を決定する工程S5>
非直送スラブの装入加熱炉を決定する工程S5(以下「工程S5」と記載することがある。)は、圧延順に応じて各非直送スラブを装入する加熱炉を決定する工程である。装入する炉は図7に模式的に示したように1つ前を先行する非直送スラブと異なる加熱炉となるようにサイクリックに1号炉又は2号炉のいずれかに割り当てられる。
<非直送スラブの圧延順を決定する工程S6>
非直送スラブの圧延順を決定する工程S6(以下「工程S6」と記載することがある。)は、非直送スラブの圧延順を決める工程である。当該圧延順の決定は所定の順により行われる。図8に、工程S6に含まれ、評価関数値Jの最小を演算して非直送スラブの圧延順が決定されるまでの工程S60の流れを示した。工程S60は上記した評価関数値Jを用いて圧延順を決定する。工程S60は、非直送スラブの圧延順初期値を与え評価関数値Jを算出する工程S61、非直送スラブの変更された圧延順候補により評価関数値J’を算出する工程S62、評価関数値を比較判定する工程S63、圧延順候補に圧延順を変更しJ’の値をJとする工程S64、及び計算終了を判定する工程S65を含んでいる。以下、各工程について説明する。
<非直送スラブの圧延順初期値を与え評価関数値Jを算出する工程S61>
非直送スラブの圧延順初期値を与え評価関数値Jを算出する工程S61(以下単に「工程S61」と記載することがある。)は、非直送スラブの適当に定めた初期圧延順に基づいて上記評価関数値Jを求める工程である。ここでは、以下に説明する各工程の計算を行うための初期値を提供する目的を有する。
<非直送スラブの変更された圧延順候補により評価関数値J’を算出する工程S62>
非直送スラブの変更された圧延順候補により評価関数値J’を算出する工程S62(以下単に「工程S62」と記載することがある。)は、工程S61の計算の基礎となる圧延順とは異なる非直送スラブの圧延順を設定し、これに基づいて評価関数値J’を算出する工程である。算出の方法は上記の通りである。これにより工程S61で得られた評価関数値Jと工程S62で得られた評価関数値J’との2つの評価関数値を得ることができる。
<評価関数値を比較判定する工程S63>
評価関数値を比較判定する工程S63(以下単に「工程S63」と記載することがある。)は、評価関数値Jと評価関数値J’との大きさを比較する工程である。評価関数値Jが評価関数値J’以下の場合、後述する、圧延順候補に圧延順を変更してJ’の値をJとする工程S64を飛ばして、該評価関数値Jをもって計算終了を判定する工程S65へ進む。一方、評価関数値J’が評価関数値Jよりも小さい場合、圧延順候補に圧延順を変更しJ’の値をJとする工程S64へ進む。すなわちここでは、より小さい評価関数値が選択されるように判定する。
<圧延順候補に圧延順を変更しJ’の値をJとする工程S64>
圧延順候補に圧延順を変更しJ’の値をJとする工程S64(以下単に「工程S64」と記載することがある。)は、工程S63において、評価関数値J’が評価関数値Jよりも小さいと判断された場合に、当該評価関数値J’を評価関数値Jと置き換える工程である。これにより、現時点でとり得る最小の評価関数値を評価関数値Jとすることができる。
<計算終了を判定する工程S65>
工程S65は、評価関数値Jのこれ以上の計算を終了して結果を実際の圧延順に反映させるかを判断する工程である。計算は、本来であれば、最小の評価関数値Jが得られる圧延順を見出したときに終了する。しかし実際には、圧延順の候補は膨大であり、厳密に最小の評価関数値Jを見出すのは時間的な制約等から困難である。そこで、所定の数の評価関数値計算の中で最も小さい評価関数値を採用する。計算終了を判定する工程S65は、この計算が所定回数に至ったか否かを判断する工程である。計算が所定回数に至っていないときには、工程S62に戻り、新たなる評価関数値J’を算出するように指令する。一方、計算が所定回数に至ったときには終了し、ここまでで最小の評価関数値Jを得た圧延順を採用する。ここで、所定回数の設定方法は特に限定されるものではないが、計算機の能力や圧延順を決定する際に許される時間などから決定する。
以上のような圧延順決定方法S0により、複数の加熱炉、及び直送スラブがある場合であっても、スラブの加熱工程における幅方向温度差を抑制し、圧延工程で生じる圧延材の曲がりを軽減できる。ここで、加熱炉の基数や直送スラブの有無は特に限定されるものではなく、いずれの場合においても本発明の方法を用いることが可能である。加えて、上述した本発明の熱間圧延の圧延順決定方法(圧延順決定方法S0)により決定された圧延順に圧延を行う、本発明の熱延鋼板の製造方法によれば、圧延材の圧延機への噛み込み不良トラブルを防止し、生産性を向上させることが可能になる。
2.熱間圧延の圧延順決定装置
図9は、本発明にかかる熱間圧延の圧延順決定装置(以下単に「圧延順決定装置」等ということがある。)の形態例を示す概念図である。図9に示すように、本発明の圧延順決定装置10は、スラブ情報入力部1と、圧延チャンス及びスラブ数決定部2と、加熱炉抽出時間計算部3と、直送スラブ決定部4と、非直送スラブ装入加熱炉決定部5と、非直送スラブ圧延順決定部6と、を備えている。スラブ情報入力部1には、入力されたスラブ情報等が格納され、圧延チャンス及びスラブ数決定部2では、スラブ情報入力部1に格納された情報等に基づいて、圧延チャンス数及び各チャンスを構成するスラブの数が決定される。さらに、加熱炉抽出時間計算部3では、加熱炉抽出時間が計算され、直送スラブ決定部4では、直送スラブの圧延順及び装入加熱炉が決定される。そして、非直送スラブ装入加熱炉決定部5では、非直送スラブの装入加熱炉が決定され、非直送スラブ圧延順決定部6では、非直送スラブの圧延順が決定される。スラブ情報入力部1、圧延チャンス及びスラブ数決定部2、加熱炉抽出時間計算部3、直送スラブ決定部4、非直送スラブ装入加熱炉決定部5、及び、非直送スラブ圧延順決定部6の各機能は、上述した本発明の熱間圧延の圧延順決定方法における工程S1〜工程S6とそれぞれ対応している。それゆえ、本発明によれば、本発明の熱間圧延の圧延順決定方法を実行することが可能な、圧延順決定装置10を提供することができる。すなわち、圧延順決定装置10を用いてスラブの圧延順を決定することにより、圧延材の曲がりを軽減し、製品の歩留まりを向上させることが可能になるほか、圧延材の圧延機への噛み込み不良トラブルを防止して、生産性を向上させることが可能になる。
3.熱延鋼板の製造装置
図10は、本発明にかかる熱延鋼板の製造装置の形態例を簡略化して示す概念図である。図10において、図9と同様の構成を採るものには、図9で使用した符号と同符号を付し、その説明を省略する。なお、図10では、熱延鋼板の製造装置の一部のみを示している。
図10に示すように、本発明にかかる熱延鋼板の製造装置100(以下単に「製造装置100」ということがある。)は、スラブの圧延順を決定する圧延順決定装置10と、加熱炉20と、圧延機30と、スラブ供給手段40と、を備え、スラブ41、41、…が圧延機30で圧延される過程を経て、熱延鋼板42、42、…が製造される。圧延順決定装置10には、上記工程S1〜工程S6を経て決定されたスラブ41、41、…の圧延順を表示する圧延順表示手段としての機能、及び、本発明にかかる熱間圧延の圧延順決定方法で算出される片焼け評価量を表示する片焼け評価量表示手段としての機能が備えられる。そして、製造装置100では、スラブ供給手段40から圧延機30へと供給されるスラブ41、41、…の順番が、圧延順決定装置10によって決定される。このように、製造装置100には、本発明の圧延順決定装置10が備えられるので、本発明によれば、曲がりを軽減して熱延鋼板42、42、…の歩留りを向上させることが可能であり、生産性を向上させることが可能な、熱延鋼板の製造装置100を提供することができる。
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
実施例の条件は実施形態の圧延順決定方法S0によるものである。すなわち加熱炉1〜4号炉のうち1号及び2号炉に非直送スラブが装入される。比較のため、従来方法でも圧延順を決定した。従来方法は、本発明において説明した評価関数Jとは異なり、片焼け評価量の評価関数項を含まない評価関数Kを用いた。評価関数Kは、下記式8により表される。
Figure 0004915376

ここで、Kは仕上げ板幅の評価関数項、及びKは仕上げ板厚の評価関数項であり、本発明で使用したものと重み関数が異なるだけである。仕上げ板幅の評価関数項Kは下記式9により、仕上げ板厚の評価関数項Kは下記式10により、それぞれ表される。
Figure 0004915376
Figure 0004915376
そして、本発明の方法と従来方法で、板幅、板厚に関する評価が同等、すなわち、J/α=K/β、J/α=K/βとなるように重み係数α、α、β、βを調整して圧延順を決定し、決定された圧延順に基づいて非直送スラブの片焼け評価量の総和を計算し直し、本発明の方法の値(実施例)と従来方法の値(比較例)を比較した。
表1に結果を示す。片焼け評価量としては上記式2によるケース、及び、上記式4によるケースの2ケースを計算した。
Figure 0004915376
いずれのケースにおいても、片焼け評価量の評価関数項を含む評価関数を用いた本発明により決定された圧延順では、従来方法で決定された圧延順に比べて片焼け評価量の総和が小さくなっており、加熱工程において生じるスラブ幅方向の温度差が抑制される。
以上、現時点において最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではない。本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、熱間圧延の圧延順決定方法、熱間圧延の圧延順決定装置、熱延鋼板の製造方法、及び、熱延鋼板の製造装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
1つの実施形態に係る本発明の熱間圧延の圧延順決定方法のフロー図である。 加熱工程において生じるスラブ幅方向温度分布の発生原因を説明する模式図である。 加熱工程において生じるスラブ幅方向温度分布の発生原因を説明する模式図である。 仕上げ板幅の評価項における関数の特性を模式的に示すグラフである。 仕上げ板厚の評価項における関数の特性を模式的に示すグラフである。 直送スラブが割り当てられた場面を模式的に示した図である。 非直送スラブが加熱炉に割り当てられた場面を模式的に示した図である。 工程S6に含まれる評価関数値Jを演算する工程のフローである。 本発明にかかる熱間圧延の圧延順決定装置の形態例を示す概念図である。 本発明にかかる熱延鋼板の製造装置の形態例を示す概念図である。
符号の説明
1…スラブ情報入力部
2…圧延チャンス及びスラブ数決定部
3…加熱炉抽出時間計算部
4…直送スラブ決定部
5…非直送スラブ装入加熱炉決定部
6…非直送スラブ圧延順決定部
10…熱間圧延の圧延順決定装置
20…加熱炉
30…圧延機
40…スラブ供給手段
41…スラブ
100…熱延鋼板の製造装置

Claims (7)

  1. 加熱炉にて加熱した後に圧延機で圧延される複数のスラブの圧延順を決定する方法であって、
    複数の前記スラブが前記加熱炉に装入される前に、該スラブのそれぞれについて前記加熱炉の加熱工程において生じる前記スラブの幅方向における温度差の目安となる片焼け評価量を計算し、
    計算された複数の前記スラブの前記片焼け評価量の総和を少なくとも1つの項に含む評価関数から評価関数値を計算し、該評価関数値が最小となるように前記スラブの圧延順を決定することを特徴とする、熱間圧延の圧延順決定方法。
  2. 鋳造工程から直送されるスラブである複数の直送スラブと、該直送スラブ以外のスラブである複数の非直送スラブとを混合して圧延するときに、前記直送スラブのみを加熱する加熱炉、及び前記非直送スラブのみを加熱する加熱炉を有し、前記直送スラブ及び前記非直送スラブの圧延順を決定する方法であって、
    前記直送スラブは、前記鋳造工程から前記加熱炉への必要搬送時間に該加熱炉における必要加熱時間を加えた合計時間を算出し、該合計時間後の最も早く圧延できる圧延順となるように割り当てられ、
    前記非直送スラブは、複数の前記非直送スラブが前記加熱炉に装入される前に該非直送スラブのそれぞれについて前記加熱炉の加熱工程において生じる、前記スラブの幅方向における温度差の目安となる片焼け評価量を計算するとともに、
    複数の前記非直送スラブの前記片焼け評価量の総和を少なくとも1つの項に含む評価関数から評価関数値を計算し、該評価関数値が最小となるように前記非直送スラブの圧延順を決定することを特徴とする、熱間圧延の圧延順決定方法。
  3. 前記片焼け評価量を、前記加熱炉内で隣り合う各々の前記スラブの長さの差をもとに計算することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱間圧延の圧延順決定方法。
  4. 前記片焼け評価量を、前記加熱炉内で隣り合う各々の前記スラブの長さ方向の装入配置関係から計算することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱間圧延の圧延順決定方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間圧延の圧延順決定方法により圧延順を算出する手段を備えることを特徴とする、熱間圧延の圧延順決定装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間圧延の圧延順決定方法により得られた圧延順に圧延を行うことを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
  7. 加熱炉及び圧延機と、請求項5に記載の熱間圧延の圧延順決定装置と、を備えることを特徴とする、熱延鋼板の製造装置。
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