JP4914121B2 - 接眼光学系及びそれを有するファインダー光学系 - Google Patents

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本発明は、接眼光学系及びそれを有するファインダー光学系に関し、デジタル一眼レフカメラやビデオカメラ等の撮像装置に好適なものである。
従来、一眼レフカメラのファインダー光学系では撮影レンズによる被写体像を焦点板上に形成している。そして焦点板上に形成した被写体像をペンタプリズム等の像反転手段を介して正立像とした後、接眼レンズによって拡大表示して観察者が観察するように構成している。
このようなファインダー光学系に用いられる接眼レンズとしては、高い観察倍率と十分な長さのアイレリーフの確保、視度調節機能、そして高い光学性能が求められている。
一般にこのようなファインダー光学系において、観察倍率は対物レンズと接眼レンズの焦点距離の比で求められる。このため観察倍率を大きくする為には、接眼レンズの焦点距離を短くすることが必要となる。
しかしながら一眼レフカメラのファインダー光学系においては、一般に視度を−1ディオプトリー付近に設定することが必要となる。このため、物体像が形成される焦点板から接眼レンズまでの距離(接眼レンズの主点位置までの光路長)によって実質的な接眼レンズの焦点距離は決定される。
従って一眼レフカメラにおいて最も単純にファインダー光学系の観察倍率を大きくするにはペンタプリズムの光路長を短くし、接眼レンズをペンタプリズムに近接させて配置すれば良い。
しかしながら、このような構成にすると、ファインダー光学系の観察部(アイポイント)がカメラの後面より物体側に移動してしまい、観察者が瞳を接眼レンズに近接させることが困難となる。
そこで接眼レンズをペンタプリズムに近接させて配置する代わりに、接眼レンズの主点を近接させて配置することによって観察倍率を大きくしたファインダー光学系が知られている。
このファインダー光学系において接眼レンズを物体像が形成する焦点板側から順に負レンズ、正レンズ、アイポイント側が凹面のメニスカス形状の負レンズから構成したファインダー光学系が知られている(特許文献1、2参照)。
特開2001−324684号公報 特開2000−98266号公報
最近のデジタル一眼レフカメラでは、いわゆる35mm銀塩フィルムよりもイメージサークルの小さい所謂APS−Cサイズと同様の大きさの撮像手段がセンサに用いられている。
ファインダー光学系で観察されるファインダー像は撮像手段面上に形成される物体像と同一または略同一であるように構成されている。このためデジタル一眼レフカメラのファインダー光学系を介して観察されるファインダー像は従来の銀塩カメラで観察されるファインダー像よりも小さくなってくる。前述した従来のファインダー光学系をAPS−Cサイズと同様のデジタル一眼レフカメラに応用することで観察倍率(ファインダー倍率)を0.9倍程度に高めることができる。
しかしながらデジタル一眼レフカメラでは観察されるファインダー像の大きさは、観察倍率0.9程度では、十分でない。
観察倍率を高くするために接眼レンズの構成レンズ枚数を増やし、接眼レンズの焦点距離を短くする方法は、レンズ構成が複雑となるので良くない。
また一眼レフカメラのファインダー光学系において、アイレリーフを十分に長くするためにはペンタプリズムを十分に大きく構成して、ペンタプリズムによる光線のけられを極力少なくすることが必要となる。
請求項1の発明の接眼光学系は、対物レンズによって形成された像を正立像に反転する像反転手段と、該像反転手段によって正立像となった像を拡大表示する接眼レンズ部とを有する接眼光学系において、
前記接眼レンズ部は前記像反転手段から順に、負の屈折力の第1レンズ、正の屈折力の第2レンズ、観察側が凹面でメニスカス形状の正もしくは負の屈折力の第3レンズから構成され、前記第2レンズは前記接眼レンズ部の光軸方向に沿って移動して視度調節を行う視度調節機能を有しており、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記接眼レンズ部の全系の焦点距離をf、前記像反転手段の空気換算光路長をdpとするとき、
1.33<|f1/dp|<2.10
0.5<f2/f<0.6
なる条件を満足することを特徴としている。
しかしながら、その際には焦点板から接眼レンズまでの光路長が必然的に長くなり、それに応じて接眼レンズの焦点距離が長くなり、ファインダーの観察倍率が小さくなってしまう。
そのため、ファインダーの観察倍率を大きくしつつ、アイレリーフを十分に長くするには接眼レンズの入射瞳位置を焦点板になるべく近づけて、ペンタプリズムの光路長を大きくすることなく光線のけられを少なくすることが重要になってくる。
一眼レフカメラのファインダー系では、焦点板上に形成された物体像からの光束が通過するペンタプリズムの光路長と該物体像を表示する接眼レンズの構成を適切に設定することがファインダーの観察倍率を大きくし、かつ長いアイレリーフを得るのに重要である。
またファインダー像を良好に観察するには、接眼レンズで視度調整をすることが必要である。このとき接眼レンズ中の一部のレンズを移動したとき、視度調整が容易に行えることが重要になってくる。
本発明は高い光学性能を保ちつつ観察倍率が大きく、大きなファインダー像の観察ができ、しかもアイレリーフを十分に長く確保することのできる接眼光学系及びそれを有するファインダー光学系の提供を目的とする。
本発明の接眼光学系は、
対物レンズによって形成された像を正立像に反転する像反転手段と、該像反転手段によって正立像となった像を拡大表示する接眼レンズ部とを有する接眼光学系において、
該接眼レンズ部は該像反転手段から順に、負の屈折力の第1レンズ、正の屈折力の第2レンズ、観察側が凹面でメニスカス形状の正もしくは負の屈折力の第3レンズから構成され、該第2レンズは該接眼レンズ部の光軸方向に沿って移動して視度調節を行う視度調節機能を有しており、該第1レンズの焦点距離をf1、該像反転手段の空気換算光路長をdpとするとき、
1.33<|f1/dp|<2.10
なる条件を満足することを特徴としている。
本発明によれば簡易なレンズ構成で、高い光学性能を保ちつつ観察倍率が大きく、大きなファインダー像の観察ができ、しかもアイレリーフを十分に長く確保することのできる接眼光学系が得られる。
図1は本発明の接眼光学系を一眼レフカメラ(撮像装置)のファインダー光学系に適用したときの実施例1の要部断面図である。図2、図3は各々本発明の接眼光学系の数値実施例1の光学要素の光路を展開した光路図と収差図である。図4、図5は各々本発明の接眼光学系の数値実施例2の光学要素の光路を展開した光路図と収差図である。図6、図7は各々本発明の接眼光学系の数値実施例3の光学要素の光路を展開した光路図と収差図である。図8、図9は各々本発明の接眼光学系の数値実施例4の光学要素の光路を展開した光路図と収差図である。図10、図11は各々本発明の接眼光学系の数値実施例5の光学要素の光路を展開した光路図と収差図である。
光路図と収差図においてはファインダー視度が−1ディオプトリー(標準視度)のときを示している。光路図において像反転手段5が位置する左方が物体側(光入射側)、アイポイント7側の右方が観察側(光出射側)である。
図1において、1はカメラ本体(不図示)に固定または着脱可能なレンズ系である。2はクイックリターンミラーであり、回転軸2aを中心に回動可能となっている。3は焦点板(フレネルレンズ)である。4は焦点板(マット面)であり、その面上にレンズ系1によって物体像が形成されている。5は正立像形成部材(像反転手段)としてのペンタプリズムであり、焦点板4上に形成された物体像を正立正像としている。6は接眼光学系の一要素を構成する接眼レンズ部である。レンズ系1から接眼レンズ部6に至る各部材はファインダー光学系を構成している。7はアイポイントの位置を表している。IPはレンズ系1の像面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(撮像手段)の撮像面またはフィルム(撮像手段)等の感光面に相当する。
EPは接眼光学系であり、像反転手段5と接眼レンズ部6とを有している。
収差図において、Hは入射瞳の高さ、Yは最大像高である。
図1に示す光学系をファインダー光学系として取り扱うときは、レンズ系1は焦点板4に物体像を形成するための対物レンズに相当する(以下、ファインダー光学系として取り扱うときはレンズ系1を対物レンズ1と称する。)。
また撮像装置として取り扱うときは、レンズ系1は像面IPに物体像を形成するための撮影レンズに相当する(以下、撮像装置として取り扱うときはレンズ系1を撮影レンズ1と称する。)。
撮像手段に像を形成するときはクイックリターンミラー2は矢印の如く回動して撮影レンズ1からの光束が像面IPに入射するようにしている。そして像面IPに配置された撮像手段によって焦点板4に形成された物体像に相当する像(物体像の一部または全部またはそれよりも大きな部分の像)を光電変換(受光)している。
本実施例におけるファインダー光学系では、対物レンズ1によって被写体像をクイックリターンミラー2で反射させて焦点板4上に形成している。そして焦点板4に形成したファインダー像をペンタプリズム5で正立像とし、正立像を拡大表示する接眼レンズ部6を介してアイポイント7より観察している。
本発明に係る接眼レンズ部6は物体側から観察側へ順に、負の屈折力の第1レンズ6a、正の屈折力の第2レンズ6b、アイポイント側が凹面でメニスカス形状の正もしくは負の屈折力の第3レンズ6cからなっている。そして視度調整機構8によって第2レンズ6bを接眼レンズ部6の光軸Laに沿って移動することで視度調節を行っている。
尚、第1レンズ6aの物体側または第3レンズ6cの観察側の少なくとも一方にレンズやフィルタ−等の光学部材を設けても良い。
本実施例で適用可能な像反転手段としては、ポロプリズム、ダハプリズム等、像を反転することができる光学部材であれば何でも良い。
各実施例では第1レンズ6aと第2レンズ6bの焦点距離を各々f1、f2、第1レンズ6aの材料のアッベ数をνd、像反転手段5の空気換算光路長をdp、接眼レンズ部6の全系の焦点距離をfとするとき
1.33<|f1/dp|<2.10 ‥‥‥‥(1)
20<νd<32 ‥‥‥‥(2)
0.5<f2/f<0.6 ‥‥‥‥(3)
なる条件を満足している。
ここで空気換算光路長dpは材料の屈折率をNd、光路を展開したときの長さをLとするとき、
dp=L/Nd
で表わされるものである。
条件式(1)は負の屈折力の第1レンズ6aの焦点距離と像反転手段(ペンタプリズム)5の空気換算光路長dpの比を特定している。これにより、高い観察倍率(ファインダー倍率)を実現してファインダー像を大きくしながらも、十分な長さのアイレリーフと高い光学性能を保つことができる。
ファインダー光学系の観察倍率を大きくする為には、接眼レンズ部6の焦点距離を短くすること、即ち焦点板4から接眼レンズ部6までの距離(接眼レンズ部6の主点位置までの光路長)を短くすることが必要である。また、焦点板4から接眼レンズ部6までの距離を短くした場合には、視度を−1ディオプトリー付近に設定する為に接眼レンズ部6の焦点距離を短くする必要がある。
接眼レンズ部6を負の屈折力の第1レンズ6a、正の屈折力の第2レンズ6b、負もしくは正の屈折力の第3レンズ6cで構成した場合には、第2レンズ6bの正の屈折力を強めることで接眼レンズ部6の焦点距離を短くすることができる。
しかしながら、第2レンズ6bは視度調節を行う視度調節機能を有している為に強い正の屈折力をすでに有しており、さらに正の屈折力を強めると球面収差、像面湾曲といった収差を良好に補正することが困難になる。そのため、接眼レンズ部6の焦点距離を短くする為には第1レンズ6aの負の屈折力を弱めることで、接眼レンズ部6全系としての焦点距離を短くすることが望ましい。
条件式(1)は上述した接眼レンズ部6の焦点距離を短くし、高い観察倍率を実現しながら、アイレリーフを十分に確保する為に設定した条件である。
条件式(1)の下限を超えると、第1レンズ6aの負の屈折力が強くなりすぎるため、接眼レンズ部6の焦点距離を短くすることが難しくなり、高い観察倍率を実現することが困難になる。また、下限を超えて接眼レンズ部6全系の焦点距離を短くしようとしたときには第1レンズ6aの負の屈折力が強くなりすぎるため、球面収差、像面湾曲といった諸収差を良好に補正することが困難になる。
条件式(1)の上限を超えると、第1レンズ6aの負の屈折力が弱くなりすぎるため、接眼レンズ部6の入射瞳位置が遠くなりすぎてしまい(観察側へきてしまい)ペンタプリズム5による光線のけられが多く、またアイレリーフが短くなりすぎてしまう。
条件式(2)は負の屈折力の第1レンズ6aの材料のアッベ数を特定し、主に倍率色収差を良好に補正し、ファインダー像を大きくしながらも高い光学性能を保つためのものである。
上述した条件式(1)を満足することで、高い観察倍率と十分なアイレリーフを確保することが可能になる。しかしながら第1レンズ6aの負の屈折力が弱くなるため、倍率色収差の補正が不十分になる場合がある。条件式(2)は高い観察倍率を実現しながら、アイレリーフを十分に確保し、倍率色収差を良好に補正して、さらに高い光学性能を実現する為に設定した条件式である。
条件式(2)の下限を超えると選択できる材料が極端に少なくなりすぎてしまうので良くない。条件式(2)の上限を超えると、負の屈折力の第1レンズ6aによる倍率色収差の補正が不十分になり高い光学性能を得ることが困難になる。
条件式(3)は正の屈折力の第2レンズ6bの屈折力に関し、視度調節の調整範囲を光学性能を維持したまま広くとるためのものである。
上述した条件式(1)を満足することで、高い観察倍率と十分なアイレリーフを確保することが可能になるが、第1レンズ6aの負の屈折力が弱くなる。このため、条件式(3)の下限を超えて第2レンズ6bの正の屈折力が強くなりすぎると球面収差、像面湾曲といった諸収差を良好に補正することが困難になる。また、上限を超えて第2レンズ6bの正の屈折力が弱くなりすぎると視度調節の調整範囲を十分に取ることが困難になる。
尚、各実施例において、さらに好ましくは条件式(1)〜(3)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
1.35<|f1/dp|<2.05 ‥‥‥‥(1a)
21<νd<31 ‥‥‥‥(2a)
0.51<f2/f<0.58 ‥‥‥‥(3a)
以上のように各実施例によれば接眼光学系の各要素を適切に設定することにより、高い光学性能を有し、高い観察倍率で且つ十分に長いアイレリーフを確保することができる。
次に各数値実施例の数値データを示す。各数値実施例においては物体側(焦点板側)から観察側(アイポイント側)への順序を示す。
各数値実施例において、iは物体側からの面の順序を示し、Riはレンズ面の曲率半径、Diは第i面と第(i+1)面との間の間隔、Niとνiは各々d腺を基準とした材料の屈折率、アッベ数を示す。最も物体側の2つの面は平面であり、像反転手段である。
なお、各数値実施例において*印は非球面を表しており、非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にY軸、光の進行方向を正とし、Rを近軸曲率半径、K、B、C、D、Eとしたとき、
Figure 0004914121
によって定義されるものである。また、「e-0X」の表示は「10-X」を意味している。
また、各数値実施例のファインダー光学系を実現した際のファインダー倍率とアイレリーフの概略の計算結果を示す。ファインダー倍率は焦点距離が50mmの対物レンズ(撮影レンズ)を用いたときのアフォーカル系の角倍率で表すことができる。ここでは近似的に対物レンズの焦点距離と接眼光学系の焦点距離の比で表している。
また、前述の−1ディオプトリーのときの条件式と数値実施例における諸数値との関係を表1に示す。
Figure 0004914121
Figure 0004914121
Figure 0004914121
Figure 0004914121
Figure 0004914121
Figure 0004914121
本発明のファインダー光学系を用いた撮像装置の要部断面図 本発明の数値実施例1の光路を展開したときの断面図 本発明の数値実施例1の収差図 本発明の数値実施例2の光路を展開したときの断面図 本発明の数値実施例2の収差図 本発明の数値実施例3の光路を展開したときの断面図 本発明の数値実施例3の収差図 本発明の数値実施例4の光路を展開したときの断面図 本発明の数値実施例4の収差図 本発明の数値実施例5の光路を展開したときの断面図 本発明の数値実施例5の収差図
符号の説明
1:レンズ系
2:クイックリターンミラー
3:焦点板(フレネルレンズ)
4:焦点板(マット面)
5:ペンタプリズム
6a:接眼レンズ部を構成する負の第1レンズ
6b:接眼レンズ部を構成する正の第2レンズ
6c:接眼レンズ部を構成する第3レンズ
7:アイポイント
8:視度調整機構
EP:接眼光学系
La:光軸

Claims (4)

  1. 対物レンズによって形成された像を正立像に反転する像反転手段と、該像反転手段によって正立像となった像を拡大表示する接眼レンズ部とを有する接眼光学系において、
    前記接眼レンズ部は前記像反転手段から順に、負の屈折力の第1レンズ、正の屈折力の第2レンズ、観察側が凹面でメニスカス形状の正もしくは負の屈折力の第3レンズから構成され、前記第2レンズは前記接眼レンズ部の光軸方向に沿って移動して視度調節を行う視度調節機能を有しており、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの焦点距離をf2、前記接眼レンズ部の全系の焦点距離をf、前記像反転手段の空気換算光路長をdpとするとき、
    1.33<|f1/dp|<2.10
    0.5<f2/f<0.6
    なる条件を満足することを特徴とする接眼光学系。
  2. 前記第1レンズの材料のアッベ数をνdとするとき、
    20<νd<32
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の接眼光学系。
  3. 請求項1又は2に記載の接眼光学系と、前記対物レンズとを有していることを特徴とするファインダー光学系。
  4. 請求項に記載のファインダー光学系と、該ファインダー光学系で表示される物体像に相当する像を受光する撮像手段と、を有していることを特徴とする撮像装置。
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