JP4913950B2 - 巻取りライナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯状の未加硫ゴム部材等を巻き取る際に用いられる巻取りライナーに係り、特に薄肉の未加硫ゴムシート等を巻き取る際に好適な巻取りライナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤのトップやサイドウォールのタイヤ構成部材であるトレッド、ベルト、、プライ、インナライナー等の未加硫生ゴムを貯蔵するのに、押出機やカレンダロールから供給される帯状の未加硫ゴム部材を巻き取って保管する場合がある。
【0003】
未加硫ゴム部材は粘着性を有するため、そのまま巻き取ると、巻き取られた未加硫ゴム部材が互いに接着し、巻き出し時には未加硫ゴム部材が変形してしまうことがある。
【0004】
そこで巻き取る未加硫ゴム部材の部材間に巻取りライナーを介在させ、未加硫ゴム部材同士の接着を防止する方法が一般に採用されている。
【0005】
このようにして巻取りライナーを介在させて巻き取り保管された未加硫ゴム部材は、巻取りライナーを剥離してタイヤ組立てに供せられる。
【0006】
ここに使用される巻取りライナーは、従来、合成繊維織物が主に使用されている。
【0007】
図4に示すように、従来の巻取りライナー100としては、全ての経糸102及び緯糸(図4では図示せず)に同一径のフィラメントコードを用いているのが一般的である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の巻取りライナーでは、ライナーのフィラメントコードと、未加硫ゴム部材とが接触することにより以下のような問題がある。
(1) 高タッキネスの未加硫ゴム部材の場合、図4に示すように、フィラメントコード(経糸102)と未加硫ゴム部材20との密着(面積)が大きく、巻出し時、剥がす時に未加硫ゴム部材20が伸ばされる。
(2) 薄肉でシート剛性が低い未加硫ゴム部材では、密着している部分に剥がす力が集中するため未加硫ゴム部材の伸びがより顕著である。
(3) グリーンモジュラスが低い未加硫ゴム部材を巻取りした場合、巻芯部付近では、未加硫ゴム部材に作用する圧力が大きく、図5に示すように、フィラメントコード100と未加硫ゴム部材20との接触面積が増加するので、より顕著に上記の問題が発生する。
(4) 硫黄多量配合の未加硫ゴム部材では、巻取りライナーとの接触面積が増える程、刺激を受けブルーム(硫黄が表面に析出する現象)を発生させる。また、複数回の巻取り、巻き出しを繰り返した場合、更に接触面積が増えることにより刺激を受け、ブルームが顕著になり、タイヤを組立てる精度を悪化させる。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮し、巻取り相手との接触面積を出来る限り小さくして、容易に剥離することのできる巻取りライナーを提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数本の経糸と複数本の緯糸からなる織り構造の巻取りライナーであって、前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は、径の異なる少なくとも2種類のフィラメントコードを含み、太径のフィラメントコードと太径のフィラメントコードとの間に、細径のフィラメントコードが1本以上配置されていることを特徴としている。
【0011】
次に、請求項1に記載の巻取りライナーの作用を説明する。
【0012】
請求項1に記載の巻取りライナーでは、経糸及び緯糸の少なくとも一方は、太径のフィラメントコードと太径のフィラメントコードとの間に、細径のフィラメントコードが1本以上配置されているので、ライナーの両面では、太径のフィラメントコードの部分と細径のフィラメントコードの部分との間で高低差が生じ、未加硫ゴム部材等の粘着性を有する巻取り相手は、主に太径のフィラメントコードの頂部及び太径のフィラメントコードに交差したフィラメントコードの頂部に接触し、前記頂部よりも低い位置となる細径のフィラメントコードとの接触が減り、経糸及び緯糸に全て同径のフィラメントコードを用いた巻取りライナーに比較して巻取り相手との接触面積を減少させることができる。
【0013】
このため、薄肉で剛性の弱い未加硫ゴム部材であっても、巻取りライナーから容易に剥がすことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の巻取りライナーにおいて、前記太径のフィラメントコードの打ち込み間隔が1mm以上15mm以下であることを特徴としている。
【0015】
次に、請求項2に記載の巻取りライナーの作用を説明する。
【0016】
太径のフィラメントコードの打ち込み間隔が1mm以下では、太径のフィラメントコードの密度が大きくなり、逆に接触面積が増加するため好ましくない。
【0017】
太径のフィラメントコードの打ち込み間隔が15mmを越えると、巻取り相手は太径のフィラメントコードから離れた部位で細径のフィラメントコードに密着してしまい、太径のフィラメントコードを設けた意味が無くなる。
【0018】
したがって、太径のフィラメントコードの打ち込み間隔を1mm以上15mm以下に設定することが好ましい。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の巻取りライナーにおいて、前記太径のフィラメントコードの打ち込み間隔が2mm以上10mm以下であることを特徴としている。
【0020】
次に、請求項3に記載の巻取りライナーの作用を説明する。
【0021】
太径のフィラメントコードの打ち込み間隔を2mm以上10mm以下とするこで、相手部材との密着面積を確実かつ十分に減少させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の巻取りライナーにおいて、前記太径のフィラメントコードの直径をA、前記細径のフィラメントコードの直径をBとしたときに、0.1mm≦A−Bであることを特徴としている。
【0023】
次に、請求項4に記載の巻取りライナーの作用を説明する。
【0024】
太径のフィラメントコードの直径A−細径のフィラメントコードの直径Bが0.1mm未満になると、太径のフィラメントコードと細径のフィラメントコードとの高低差が小さくなり過ぎ、相手部材との密着面積を確実かつ十分に減少させることができなくなる。
【0025】
したがって、太径のフィラメントコードの直径Aと細径のフィラメントコードの直径Bとの差を0.1mm以上に設定することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の巻取りライナーの一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0027】
図1の断面図で示すように、本実施形態の巻取りライナー10は、経糸12と緯糸14とを織成した織物である。
【0028】
本実施形態の経糸12は、径の異なる太径のフィラメントコード16と、フィラメントコード16よりも細径のフィラメントコード18とを含んでおり、太径のフィラメントコード16と太径のフィラメントコード16との間には、4本の細径のフィラメントコード18が配設されている。
【0029】
本実施形態では、経糸12を構成している太径のフィラメントコード16及び細径のフィラメントコード18は、巻取りライナー10の長手方向に直線状の延びており、各コードの中心線が同一平面内に配置されている。
【0030】
ここで、太径のフィラメントコード16の間隔Lは1mm以上15mm以下が好ましく、2mm以上10mm以下が更に好ましい。
【0031】
太径のフィラメントコード16の直径をA、細径のフィラメントコード18の直径をBとしたときに、0.1mm≦A−Bであることが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態の緯糸14は、経糸12と同様の細径のフィラメントコード18のみが使用されている。
【0033】
経糸12及び緯糸14の各フィラメントコードの材質は、例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、綿等を用いることができ、これらを適宜組み合わせても良い。
(作用)
本実施形態では、経糸12が、太径のフィラメントコード16と太径のフィラメントコード16との間に4本の細径のフィラメントコード18が配置されているので、図2に示すように、経糸12のみの部分では、ライナー表面に太径のフィラメントコード16と細径のフィラメントコード18の高低差(凹凸)が生じ、貼り付いた未加硫ゴム部材20は、太径のフィラメントコード16に隣接する細径のフィラメントコード18に接触しなくなる。
【0034】
一方、緯糸14の付近では、図1に示すように、緯糸14の細径のフィラメントコード18の未加硫ゴム部材20側に突出した部分、及び未加硫ゴム部材20側に露出した太径のフィラメントコード16とに接触する。
【0035】
このため、本実施形態の巻取りライナー10では、経糸及び緯糸に全て同径のフィラメントコードを用いた巻取りライナーに比較して接触面積を減少させることができる。
【0036】
なお、図1及び図2では、片面にのみ未加硫ゴム部材20が接触しているが、未加硫ゴム部材20の貼り付けられた巻取りライナー10をドラム等に巻き付けると、巻取りライナー10の両面に未加硫ゴム部材20が接触することになる。
【0037】
したがって、巻取りライナー10は、両面が同じ表面形状であることが好ましい。
【0038】
したがって、未加硫ゴム部材20がインナーライナー用で非常に薄肉の場合であっても、巻取りライナー10から容易に剥がすことができ、また、未加硫ゴム部材20を不用意に伸ばすことが無くなる。
【0039】
また、接触面積が少なくなるので、多量の硫黄を含んだ未加硫ゴム部材20を貼り付けた場合でも、ブルームの発生を抑えることが出来る。
【0040】
なお、本実施形態の巻取りライナー10では、経糸12に太径のフィラメントコード16と細径のフィラメントコード18を用い、緯糸14には太径のフィラメントコード16のみを用いたが、本発明はこれに限らず、経糸12に全て同じ径のフィラメントコードを用い、緯糸14に太径のフィラメントコード16と細径のフィラメントコード18を用いても良く、経糸12及び緯糸14の両方に太径のフィラメントコード16と細径のフィラメントコード18を用いても良い。
【0041】
何れの場合であっても、未加硫ゴム部材20との接触面積を減少させることができる。
(試験例1)
本発明の効果を確かめるために、比較例の巻取りライナー及び本発明の適用された実施例の巻取りライナーとを用意し、巻取りライナーに未加硫ゴム部材(複数本のコードを並べてゴム(未加硫)コーティングしたベルトトリート部材)を貼り付けて巻き取った後、巻き出して巻取りライナーから未加硫ゴム部材を剥離する際の剥離抗力を調べた。
【0042】
この試験に用いた巻取りライナーのフィラメントコードは全てビニロンである。
【0043】
なお、各巻取りライナーの経糸及び緯糸に用いたフィラメントコードの太さ及び間隔は、以下の表1内に記載した通りである。
【0044】
剥離抗力の試験は、図3に示すように、巻取りライナー10の一端と未加硫ゴム部材20の一端とを互いに反対方向に引っ張り、剥離時の抗力をインストロン社製の試験装置で測定した。
【0045】
評価は、比較例の剥離抗力を100とする指数で表しており、数値が小さいほど剥離抗力が小さく、剥がしやすいことを表している。
【0046】
【表1】
【0047】
試験の結果、本発明の適用された実施例の巻取りライナーは、未加硫ゴム部材を剥がし易くなっていることが分る。
(試験例2)
本発明の効果を確かめるために、比較例の巻取りライナー及び本発明の適用された実施例の巻取りライナーとを用意し、巻取りライナーに未加硫ゴム部材(厚さ0.4mmのインナーライナー部材)を貼り付けて巻き取った後、巻き出して巻取りライナーから未加硫ゴム部材を剥離し、未加硫ゴム部材の伸びを調べた。
【0048】
この試験に用いた巻取りライナーのフィラメントコードは全てポリエステルである。なお、各巻取りライナーの経糸及び緯糸に用いたフィラメントコードの太さ及び間隔は、以下の表1内に記載した通りである。
【0049】
剥離抗力の試験は、未加硫ゴム部材の表面に、長手方向に200mm間隔でベンチマークを入れ、これを巻取りライナーと共に巻き取り、巻き出し後、ベンチマークの変化を測定した。
【0050】
評価は、以下の計算式にしたがって求めた値で示しており、数値が小さいほど未加硫ゴム部材の変化(伸び)が小さいことを表している。
【0051】
【数1】
【0052】
【表2】
【0053】
試験の結果、本発明の適用された実施例の巻取りライナーを用いることにより、剥離による未加硫ゴム部材の伸びを抑えられることが分る。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の巻取りライナーは上記の構成としたので、巻取り相手との接触面積を出来る限り小さくして、巻取り相手を容易に剥離することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻取りライナーの緯糸付近の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る巻取りライナーの経糸部分の断面図である。
【図3】剥離試験の方法を示す説明図である。
【図4】従来の巻取りライナーに未加硫ゴム部材が密着した様子を示す断面図である。
【図5】従来の巻取りライナーに未加硫ゴム部材が密着した様子を示す断面図である。
【符号の説明】
10 巻取りライナー
12 経糸
14 緯糸
16 太径のフィラメントコード
18 細径のフィラメントコード
Claims (4)
- 複数本の経糸と複数本の緯糸からなる織り構造の巻取りライナーであって、
前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は、径の異なる少なくとも2種類のフィラメントコードを含み、太径のフィラメントコードと太径のフィラメントコードとの間に、細径のフィラメントコードが1本以上配置されていることを特徴とする巻取りライナー。 - 前記太径のフィラメントコードの間隔が1mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の巻取りライナー。
- 前記太径のフィラメントコードの間隔が2mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の巻取りライナー。
- 前記太径のフィラメントコードの直径をA、前記細径のフィラメントコードの直径をBとしたときに、0.1mm≦A−Bであることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項に記載の巻取りライナー。
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