JP4913365B2 - 反射防止膜及び反射防止フィルム - Google Patents

反射防止膜及び反射防止フィルム Download PDF

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Description

本発明は、反射防止膜及び反射防止フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、低屈折率層と高屈折率層の密着性が良好であり、硬度が高く、耐擦傷性と透明性に優れ、反射率の低い反射防止膜及び該反射防止膜を積層してなる反射防止フィルムに関する。
パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲータ、携帯電話などのディスプレイは、人間が画像を見て情報を読み取るものであり、見やすさが重要な機能として求められる。しかし、現実には背景の映り込みによりコントラストが低下し、画面が見づらくなるという状況が多々発生する。これを防ぐために、視認性低下の原因となっている画面の表面反射を抑制する工夫がなされ、ディスプレイ表面には防眩処理又は反射防止処理が施される。
防眩処理は、ディスプレイの表面に微細な凹凸を形成し、光の散乱により反射像を散らして輪郭をぼやかせる処理である。基板がプラスチックの場合には、シリカなどの無機微粒子や、ポリスチレンなどの有機微粒子などが表面にコーティングされるが、画像の解像度が低下する。反射防止処理は、表面に光の波長程度の厚さからなる薄膜を形成し、光の干渉効果により反射率を低減するものである。入射媒質の屈折率をn1、膜の屈折率をn2、反射率をRとすると、
R = [(n2−n1)/(n2+n1)]2
であり、膜厚をd、光の波長をλとすると、
d = λ/(4n2)
のとき、光の干渉効果が最大となる。薄膜の形成方法として、乾式法と湿式法がある。
乾式法においては、二酸化チタンなどの高屈折率層と、フッ化マグネシウムやシリカなどの低屈折率層を、真空蒸着やスパッタリングなどにより形成するが、基材の大きさに制限があり、処理に長時間を要し、連続化が困難である。湿式法については、例えば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化セリウム、二酸化錫などを含む高屈折率層と、フッ化マグネシウムやシリカなどを含む低屈折率層からなる反射防止膜が提案されている(特許文献1)。しかし、二酸化チタンを高屈折率層の添加剤として使用した場合、低屈折率層との塗膜密着性が十分ではないために、耐擦傷性が悪く、鉛筆硬度も低く、十分な表面硬度が得られないという問題がある。
特許第3186437号公報
本発明は、低屈折率層と高屈折率層の密着性が良好であり、硬度が高く、耐擦傷性と透明性に優れ、反射率の低い反射防止膜及び該反射防止膜を積層してなる反射防止フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水酸基価の高い電離放射線硬化型樹脂と二酸化チタン、ジルコニア又は酸化亜鉛の微粒子からなる高屈折率層と、シリカマトリックスとシリカ系粒子からなる低屈折率層は、密着性が良好であり、硬度が高く、耐擦傷性と透明性に優れ、反射率の低い反射防止膜が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)水酸基価が200〜600mgKOH/gであるエポキシエステル系樹脂からなる電離放射線硬化型樹脂と、平均粒子径1〜100nmの二酸化チタン、ジルコニア及び酸化亜鉛から選ばれる1種以上の無機化合物粒子の質量比が、0.1:1〜2:1である高屈折率層と、シリカマトリックス及びシリカ系粒子を含有する低屈折率層とが積層されてなることを特徴とする反射防止膜、
)高屈折率層の無機化合物粒子が、ルチル型二酸化チタン粒子である(1)記載の反射防止膜、
)高屈折率層の電離放射線硬化型樹脂が、吸収波長350〜450nmの光重合開始剤を含有する(1)又は(2)記載の反射防止膜、
)低屈折率層のシリカ系粒子が、平均粒子径10〜100nmの中空シリカ粒子である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の反射防止膜、
)基材フィルムの上に、ハードコート層を有し、その上に(1)ないし()のいずれか1項に記載の反射防止膜が積層されてなることを特徴とする反射防止フィルム、
)ハードコート層が、マトリックス成分と平均粒子径2〜100nmの五酸化アンチモン粒子を含む()記載の反射防止フィルム、
)基材フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロースフィルムである()記載の反射防止フィルム、及び、
)全光線透過率が、90%以上である()ないし()のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、
を提供するものである。
本発明の反射防止膜及び反射防止フィルムは、反射率が低く、低屈折率層と高屈折率層の密着性が良好であり、硬度が高く、耐擦傷性と透明性に優れている。本発明の反射防止膜と反射防止フィルムは、湿式コーティング法により容易に大量生産することができる。
本発明の反射防止膜は、水酸基価が200〜600mgKOH/gである電離放射線硬化型樹脂と、平均粒子径1〜100nmの二酸化チタン、ジルコニア及び酸化亜鉛から選ばれる1種以上の無機化合物粒子の質量比が、0.1:1〜2:1である高屈折率層と、シリカマトリックス及びシリカ系粒子を含有する低屈折率層とが積層されてなる反射防止膜である。本発明において、高屈折率層の屈折率は、1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.50以下であることが好ましく、1.45以下であることがより好ましい。高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率との差は、0.20以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率との差が0.20未満であると、反射防止効果が十分に発現しないおそれがある。
本発明に用いる水酸基価が200〜600mgKOH/gである電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などのエポキシエステル系樹脂などを挙げることができる。これらの中で、エポキシエステル系樹脂は、密着性の良好な高屈折率層を形成するので、特に好適に用いることができる。電離放射線硬化型樹脂の水酸基価が200mgKOH/g未満であると、高屈折率層の密着性が不十分となるおそれがある。電離放射線硬化型樹脂の水酸基価が600mgKOH/gを超えると、樹脂の分子量が大きくなり、粘度が高くなって、作業性が低下するおそれがある。
本発明においては、水酸基価が高く、水酸基の多い電離放射線硬化型樹脂を高屈折率層のマトリックス成分として用いるので、高屈折率層の水酸基−OHが低屈折率層のシリカマトリックスの≡SiOR(Rはアルキル基)と反応し、高屈折率層と低屈折率層の間に化学結合が形成され、高屈折率層と低屈折率層の密着性が向上する。
本発明において、二酸化チタン、ジルコニア及び酸化亜鉛から選ばれる無機化合物粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、より好ましくは3〜40nmである。平均粒子径1nm未満の無機化合物粒子を製造することは容易ではなく、安定生産できないおそれがある。無機化合物粒子の平均粒子径が100nmを超えると、反射防止膜の反射率とヘーズが上昇し、全光線透過率が低下するおそれがある。
本発明において、電離放射線硬化型樹脂と無機化合物粒子の質量比は0.1:1〜2:1であり、より好ましくは0.5:1〜1.5:1である。電離放射線硬化型樹脂と無機化合物粒子の質量比が0.1:1未満で、電離放射線硬化樹脂の割合が少ないと、高屈折率層の強度が低下するおそれがある。電離放射線硬化型樹脂と無機化合物粒子の質量比が2:1を超えて、無機化合物粒子の割合が少ないと、反射防止効果が十分に発現しないおそれがある。
本発明においては、高屈折率層の無機化合物粒子がルチル型二酸化チタン粒子であることが好ましい。ルチル型二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタン、ジルコニア、酸化亜鉛などに比べて屈折率が高いので、効果的に高屈折率層を形成することができる。
本発明において、反射防止膜の低屈折率層は、シリカマトリックス及びシリカ系粒子を含有する。シリカマトリックス及びシリカ系粒子を含有する低屈折率層を形成する方法に特に制限はなく、例えば、アルコキシシラン又はその誘導体とシリカ系粒子を含有する溶液を、基材フィルムに形成された高屈折率層の上に塗布し、アルコキシシラン又はその誘導体の加水分解によりシロキサン結合を生成させて低屈折率層を形成することができる。アルコキシシラン又はその誘導体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシラン、それらのフッ素置換誘導体などを挙げることができる。
本発明においては、高屈折率層の電離放射線硬化型樹脂が、吸収波長350〜450nmの光重合開始剤を含有することが好ましい。吸収波長が350nm未満であると、高屈折率層に含まれる二酸化チタンにより波長350nm未満の電離放射線が吸収されるので、光重合開始剤による電離放射線の吸収量が減少し、電離放射線硬化型樹脂の硬化が十分に進行しないおそれがある。波長が450nmを超える電離放射線はエネルギーが弱く、光重合開始剤の分解による重合開始反応が十分に起こらないおそれがある。
本発明においては、低屈折率層のシリカ系粒子が、平均粒子径10〜100nmの中空シリカ粒子であることが好ましく、平均粒子径30〜70nmの中空シリカ粒子であることがより好ましい。中空シリカ粒子の形態に特に制限はなく、例えば、多孔質シリカ粒子、内部に空洞を有するシリカ粒子などを挙げることができる。低屈折率層に中空シリカ粒子を含有させることにより、効果的に屈折率を低下させることができる。中空シリカ粒子の空洞率は、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。平均粒子径10nm未満の中空シリカ粒子は製造が容易ではなく、安定生産できないおそれがある。中空シリカ粒子の平均粒径が100nmを超えると、粒子径が低屈折率層の厚さよりも大きくなって、低屈折率層の表面の平滑性が損われるおそれがある。
本発明において、高屈折率層の厚さに特に制限はないが、30〜500nmであることが好ましく、50〜250nmであることがより好ましい。高屈折率層の厚さが30nm未満であると、反射防止効果が十分に発現しないおそれがある。高屈折率層の厚さが500nmを超えると表面硬度、塗膜密着性、全光線透過率などが低下し、さらに反射防止効果が十分に発現しないおそれがある。本発明において、低屈折率層の厚さに特に制限はないが、40〜300nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。低屈折率層の厚さが40nm未満であると、表面の耐擦傷性が低下し、さらに反射防止効果が十分に発現しないおそれがある。低屈折率層の厚さが、300nmを超えると、塗膜に割れが生じたり、膜が厚すぎて反射防止効果が不十分になるおそれがある。
本発明の反射防止フィルムは、基材フィルムの上にハードコート層を有し、その上に本発明の反射防止膜が積層されてなる反射防止フィルムである。各層の積層順序は、基材フィルム−ハードコート層−高屈折率層−低屈折率層であることが好ましい。
本発明に用いる基材フィルムは、透明性を有するプラスチックフィルムであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリトリメチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルムなどのアクリル系フィルム、スチレン−アクリロニトリル共重合体フィルムなどのスチレン系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ環状オレフィンフィルムなどのポリオレフィン系フィルムなどを挙げることができる。これらの中で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度と寸法安定性が良好なので好適に用いることができ、トリアセチルセルロースフィルムは、等方性と透明性が良好なので好適に用いることができる。
本発明において、ハードコート層の形成方法に特に制限はなく、マトリックス成分として、例えば、電離放射線硬化型塗料、熱硬化型塗料などを用いることができる。これらの中で、電離放射線硬化型塗料を好適に用いることができる。電離放射線に特に制限はなく、例えば、電子線、放射線、紫外線などを挙げることができる。電離放射線硬化型塗料を基材フィルム上に塗布、乾燥したのち、電離放射線を照射して架橋させることにより、強靭な塗膜を形成し、反射防止フィルムの硬度と耐擦傷性を向上することができる。
電離放射線の中で、紫外線は装置が簡単であり、取り扱いが容易であることから、特に好適に用いることができる。電離放射線硬化型塗料に使用される電離放射線硬化型樹脂については特に制限はなく、紫外線や電子線硬化によりJIS K 5600−5−4において定義される鉛筆硬度H以上の塗膜を与える樹脂であれば任意に使用することができる。このような電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどの多官能性アクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成される多官能ウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。また、これらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂なども必要に応じて使用することができる。これらの中で、アクリル系紫外線硬化型樹脂を特に好適に用いることができる。
本発明において、ハードコート層の厚さは1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。ハードコート層の厚さが1μm未満であると、ハードコート層の硬度と耐擦傷性が低下するおそれがある。ハードコート層の厚さが20μmを超えると、カールの発生や、基材フィルムとの密着性の低下などがみられ、さらにハードコート層に割れを生じやすくなるおそれがある。
本発明においては、ハードコート層がマトリックス成分と平均粒子径2〜100nmの五酸化アンチモン粒子を含有することが好ましい。ハードコート層に五酸化アンチモン粒子を含有させることにより、帯電防止効果が発現し、表面抵抗率が109〜1011Ω/sq.に低下して、塵埃などの付着を防止することができる。平均粒子径2nm未満の五酸化アンチモン粒子は製造が容易でなく、安定生産できないおそれがある。五酸化アンチモン粒子の平均粒子径が100nmを超えると、ヘーズ値が大きくなり、透明性が損なわれるおそれがある。
本発明の反射防止フィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361−1にしたがって測定することができる。全光線透過率が90%未満であると、透明性が劣り、ディスプレイの保護フィルムなどとして使用したとき、画像の鮮鋭性が低下するおそれがある。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例においては、下記の原材料を使用した。
(1)低屈折率塗料A:触媒化成工業(株)、ELCOM P−5012、シリカマトリックス、フッ素シリコーン系マトリックスに中空シリカ粒子(粒子径40〜60nm)を添加、固形分2質量%、主溶剤イソプロピルアルコール(該塗料により形成された低屈折率層の屈折率1.40)。
(2)エポキシエステル系紫外線硬化型樹脂:共栄社化学(株)、80MFA、水酸基価484mgKOH/g。
(3)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA):川原油化(株)、6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂。
(4)アクリル系紫外線硬化型樹脂:ダイセルユーシービー(株)、EB80、水酸基価61mgKOH/g。
(5)酸化チタンスラリー:テイカ(株)、710T、高透明性微粒子酸化チタンスラリー、結晶粒子径15〜25nm、平均分散粒子径50nm以下、ルチル型、主溶剤イソプロピルアルコール、顔料濃度40質量%。
(6)ジルコニア:住友大阪セメント(株)、ジルコニアナノ粒子、水・アルコール系分散液、粒子径3〜10nm、固形分40質量%。
(7)酸化亜鉛:テイカ(株)、711Z、イソプロピルアルコール分散液、粒子径10〜20nm、固形分40質量%。
(8)酸化チタンD:テイカ(株)、JRNC、ルチル型、処理剤Al・Si・Zr、平均粒子径270nm、顔料濃度93質量%。
(9)光重合開始剤E:チバスペシャリティケミカルズ(株)、イルガキュア819、吸収波長350〜450nm。
(10)光重合開始剤F:チバスペシャリティケミカルズ(株)、ダロキュア1173、吸収波長350nm未満。
(11)ハードコート塗料B:触媒化成工業(株)、ELCOM P−4513、五酸化アンチモン(粒子径20〜25nm)とシリカ(粒子径50〜60nm)を添加したアクリル系紫外線硬化型樹脂、主溶剤エチルアルコール、固形分40質量%(該塗料により形成されたハードコート層の屈折率1.55)。
(12)ハードコート塗料C:JSR(株)、デソライトZ7501、アクリル系紫外線硬化型樹脂、主溶剤メチルエチルケトン、固形分52質量%(該塗料により形成されたハードコート層の屈折率1.51)。
(13)基材フィルムPET:東レ(株)、U426、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ125μm。
(14)基材フィルムTAC:富士写真フィルム(株)、フジタックTF−80UL、トリアセチルセルロースフィルム、厚さ80μm。
また、実施例及び比較例において、評価は下記の方法により行った。
(1)最低反射率
分光光度計[日本分光(株)、U−best V−570]を用いて、波長380〜780nmの反射率を測定し、その最低値を求める。波形が波打つ場合には、スムージング処理を行い最低値を求める。
(2)全光線透過率
JIS K 7361−1にしたがい、ヘーズコンピューター[日本電色工業(株)、NDH2000]を用いて測定する。
(3)ヘーズ
JIS K 7136にしたがい、ヘーズコンピューター[日本電色工業(株)、NDH2000]を用いて測定する。
(4)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4にしたがい、鉛筆[三菱鉛筆(株)、ユニ]を用いて塗膜のすり傷で評価する。
(5)耐擦傷性
スチールウール[日本スチールウール(株)、#0000]を丸めて200gの荷重をかけて10往復させて擦り、傷の状態を観察し、下記の基準により耐擦傷性を判定する。
○:傷が0〜10本認められる。
△:傷が11〜20本認められる。
×:傷が21本以上認められる。
(6)塗膜密着性
JIS K 5600−5−6にしたがって評価し、下記の基準により塗膜密着性を判定する。
○:塗膜はがれがない。
△:はがれがあるが、クロスカット部分で影響を受けるのは15%以下である。
×:はがれがあり、クロスカット部分の15%を超えて影響を受けている。
(7)屈折率
ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層により形成された、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の各塗膜の屈折率をJIS K 7142に準じて、アッベ屈折計を用いて測定する。
実施例1
厚さ125μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ(株)、U426]を基材フィルムとして、ハードコート塗料B[触媒化成工業(株)、ELCOM P−4513]を乾燥膜厚5μmになるように塗布し、乾燥した。次いで、エポキシエステル系紫外線硬化型樹脂[共栄社化学(株)、80MFA]0.3質量部、酸化チタンスラリー[テイカ(株)、710T、顔料濃度40質量%]1質量部、光重合開始剤E[チバスペシャリティケミカルズ(株)、イルガキュア819]0.01質量部及びメチルエチルケトン35質量部からなる高屈折率塗料を乾燥膜厚80nmになるように塗布し、乾燥し、高圧水銀灯により1J/cm2の紫外線を照射して塗料を硬化させた。形成された高屈折率層の屈折率は、1.73であった。さらに、低屈折率塗料A[触媒化成工業(株)、ELCOM P−5012]を乾燥膜厚70nmになるように塗布し、乾燥した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.25%であり、全光線透過率は94.4%であり、ヘーズは0.55%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷はまったくつかず、塗膜密着性試験においてはがれは生じなかった。
実施例2
ハードコート塗料として、ハードコート塗料C[JSR(株)、デソライトZ7501]を用い、高屈折率塗料のエポキシエステル系紫外線硬化型樹脂[共栄社化学(株)、80MFA]の配合量を0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.45%であり、全光線透過率は94.1%であり、ヘーズは0.62%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷はまったくつかず、塗膜密着性試験においてはがれは生じなかった。
実施例3
基材フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)、フジタックTF−80UL]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.27%であり、全光線透過率は94.0%であり、ヘーズは0.52%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷はまったくつかず、塗膜密着性試験においてはがれは生じなかった。
実施例4
光重合開始剤として、光重合開始剤F[チバスペシャリティケミカルズ(株)、ダロキュア1173]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.45%であり、全光線透過率は93.8%であり、ヘーズは0.61%であった。鉛筆硬度は2Hであり、耐擦傷性試験において傷が15本認められ、塗膜密着性試験においてクロスカット部分の7%に影響を受けた。
実施例5
酸化チタンスラリー[テイカ(株)、710T、顔料濃度40質量%]の代わりに、ジルコニア[住友大阪セメント(株)、ジルコニアナノ粒子、固形分40質量%]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.30%であり、全光線透過率は94.0%であり、ヘーズは0.58%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷は2本しか認められず、塗膜密着性試験においてはがれは生じなかった。
実施例6
酸化チタンスラリー[テイカ(株)、710T、顔料濃度40質量%]の代わりに、酸化亜鉛[テイカ(株)、711Z、固形分40質量%]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの最低反射率は0.31%であり、全光線透過率は93.4%であり、ヘーズは0.65%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷は3本しか認められず、塗膜密着性試験においてはがれは生じなかった。
比較例1
エポキシエステル系紫外線硬化型樹脂[共栄社化学(株)、80MFA]の代わりに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)[川原油化(株)]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの反射率は0.41%であり、全光線透過率は94.1%であり、ヘーズは0.63%であった。鉛筆硬度はHであり、耐擦傷性試験において傷が35本認められ、塗膜密着性試験においてクロスカット部分の27%に影響を受けた。
比較例2
エポキシエステル系紫外線硬化型樹脂[共栄社化学(株)、80MFA]の代わりに、アクリル系紫外線硬化型樹脂[ダイセルユーシービー(株)、EB80]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの反射率は0.43%であり、全光線透過率は93.5%であり、ヘーズは0.60%であった。鉛筆硬度はHであり、耐擦傷性試験において傷が21本認められ、塗膜密着性試験においてクロスカット部分の18%に影響を受けた。
比較例3
酸化チタンスラリー[テイカ(株)、710T、顔料濃度40質量%]の代わりに、酸化チタンD[テイカ(株)、JRNC、顔料濃度93質量%]を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムの反射率は1.50%であり、全光線透過率は65.2%であり、ヘーズは5.5%であった。鉛筆硬度は3Hであり、耐擦傷性試験において傷が16本認められ、塗膜密着性試験においてクロスカット部分の11%に影響を受けた。
実施例1〜6及び比較例1〜3の結果を、第1表に示す。
Figure 0004913365
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第1表に見られるように、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロースフィルムを基材フィルムとし、基材フィルム上に五酸化アンチモンを含むハードコート層が設けられ、吸収波長350〜450nmの光重合開始剤を含有する水酸基価484mgKOH/gのエポキシエステル系紫外線硬化型樹脂と、結晶粒子径15〜25nmの二酸化チタン、粒子径3〜10nmのジルコニア又は粒子径10〜20nmの酸化亜鉛の質量比が0.75:1又は1.25:1である高屈折率層と、シリカマトリックス及び中空シリカ粒子を含む低屈折率層が積層された実施例1〜3及び実施例5〜6の反射防止フィルムは、最低反射率が低く、全光線透過率が高く、ヘーズが小さい。また、鉛筆硬度が高く、耐擦傷性と塗膜密着性にも優れている。吸収波長350nm未満の光重合開始剤を用いた実施例4の反射防止フィルムは、鉛筆硬度、耐擦傷性、塗膜密着性がやや劣る。
紫外線硬化型樹脂として、水酸基を有しないジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いた比較例1の反射防止フィルムと、水酸基価61mgKOH/gのアクリル系紫外線硬化型樹脂を用いた比較例2の反射防止フィルムは、鉛筆硬度が低く、耐擦傷性と塗膜密着性が劣る。また、粒子径の大きい二酸化チタンを用いた比較例3の反射防止フィルムは、最低反射率が大きく、全光線透過率が低く、ヘーズが高く、耐擦傷性と塗膜密着性もやや劣る。
本発明の反射防止膜及び反射防止フィルムは、反射率が低く、低屈折率層と高屈折率層の密着性が良好であり、硬度が高く、耐擦傷性と透明性に優れている。本発明の反射防止膜と反射防止フィルムは、湿式コーティング法により、簡単な装置を用いて経済的に大量生産することができる。

Claims (8)

  1. 水酸基価が200〜600mgKOH/gであるエポキシエステル系樹脂からなる電離放射線硬化型樹脂と、平均粒子径1〜100nmの二酸化チタン、ジルコニア及び酸化亜鉛から選ばれる1種以上の無機化合物粒子の質量比が、0.1:1〜2:1である高屈折率層と、シリカマトリックス及びシリカ系粒子を含有する低屈折率層とが積層されてなることを特徴とする反射防止膜。
  2. 高屈折率層の無機化合物粒子が、ルチル型二酸化チタン粒子である請求項1記載の反射防止膜。
  3. 高屈折率層の電離放射線硬化型樹脂が、吸収波長350〜450nmの光重合開始剤を含有する請求項1又は請求項2記載の反射防止膜。
  4. 低屈折率層のシリカ系粒子が、平均粒子径10〜100nmの中空シリカ粒子である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の反射防止膜。
  5. 基材フィルムの上に、ハードコート層を有し、その上に請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の反射防止膜が積層されてなることを特徴とする反射防止フィルム。
  6. ハードコート層が、マトリックス成分と平均粒子径2〜100nmの五酸化アンチモン粒子を含む請求項記載の反射防止フィルム。
  7. 基材フィルムが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロースフィルムである請求項記載の反射防止フィルム。
  8. 全光線透過率が、90%以上である請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
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