JP4912906B2 - ドリルねじを用いた金属材の接合構造および構造物 - Google Patents
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Description
また、従来、少なくとも一方の部材の板厚が2.3mm以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部の接合)においては、(1)溶接接合、(2)ボルト接合、リベット接合ならびに(3)高力ボルト接合が適用されていた(例えば、特許文献1〜3参照。)。ドリルねじによる接合は、板厚2.3mm厚以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部)においてはドリルねじによる接合は行われていなかった。
前記のように、(1)溶接接合では、開先加工等を含む溶接できる形状に加工、温度管理等、非常に煩雑で、接合コストも高くなると共に高度の熟練を要するという問題があった。
また、(2)前記のボルト接合またはリベット接合では、接合される部材のすべてにボルトまたはリベットの軸径以上の孔を穿設しなければならず、しかも接合部の表裏両側から作業する必要があり、接合作業効率が低いという問題がある。
また、前記(3)では、前記(2)に加えて摩擦接合面に有効に摩擦力が生じるように表面処理する必要があり、接合コストが増加する問題がある。
本発明は、ドリルねじを用いた接合構造において、ドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させて接合構造の耐力および剛性並びに引き抜き抵抗を向上させることを可能にした金属材の接合構造および鋼構造物等の構造物を提供することを目的とする。
また、第2発明のドリルねじを用いた金属材の接合構造においては、ドリルねじを複数の鋼材に渡って配置することにより鋼材を接合する接合構造において、重ね合わせた鋼材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とする。
また、第3発明では、第1または第2発明のドリルねじを用いた金属材の接合構造において、ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用し、かつ前記重ね合わせてドリルねじにより接合された鋼材の接合面に平行な引張力(または圧縮力)の作用方向に対して、その引張力(または圧縮力)の作用方向と同方向または逆方向よりにドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したことを特徴とする。
また、第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造において、添板等の鋼材に、傾斜した下孔を設けたことを特徴とする。
また、第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造において、ドリルねじを傾斜させて鋼材を接合するに際して、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚T(mm)が、少なくとも下記式(1)で与えられることを特徴とする。
T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・(τy/σy)・・・・(1)
d:ドリルねじの呼び径(mm)
τy:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm2)
σy:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2)
As:ドリルねじのせん断断面積(mm2)
θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角)
また、第6発明の構造物においては、請求項1〜5のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造を備えている。
第3発明によると、ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用する応力の作用方向に対して、同方向または逆向き方向にドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したので、鋼材に主に作用する応力の作用方向と異なる方向にドリルねじの刃先を配置する場合に比べて、ドリルねじの耐荷力を向上させることができ、効果的に接合部の耐力・剛性を向上させことができる。
第1発明によると、複数のドリルねじを全て同じ方向に傾斜させた場合には、接合部の耐荷力に方向性が生じる恐れが高いが、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置すると、複数のドリルねじによる接合部の耐荷力の異方性を効果的に排除することができ、合理的な接合部の耐力・剛性が得られる。
第4発明によると、傾斜した下孔を鋼材に設けることで、ドリルねじの確実な傾斜角を確保して、その下孔をガイドとしてドリルねじを設置して鋼材相互を接合することができる。
第5発明によると、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚Tを、T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・τy/σyとすることで、ドリルねじの降伏せん断応力τyと接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点σyの比と、ドリルねじの直径並びにドリルねじの倒れ角θで、接合する鋼材の板厚Tを表すことができるため、支圧耐力がドリルねじのせん断耐力以上となるように接合する鋼材の板厚Tを容易に決定でき、したがって、鋼材の板厚Tとドリルねじの組み合わせ設計が容易になると共に、鋼材相互の接合部の設計が容易になると共に正確な設計をすることができ、正確な接合耐力の接合構造を実現することが可能になる。
第1発明または第2発明によると、ドリルねじ軸心の傾斜角にあわせ、ドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部が設けられたドリルねじを用いることで、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも、頭部首下での応力集中を緩和し、頭部首下での剛性の高いドリルねじとなると共に、鋼材等の金属材にドリルねじの頭部下部の截頭円錐状部を用いた接合構造とすることができる。また、ドリルねじを傾斜させても、截頭円錐状部が鋼材に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなる接合構造とすることができる。
第6発明によると、傾斜させて配置されたドリルねじにより、せん断断面積を増加させ、耐力および剛性を向上させた接合部を有する鋼構造物等の構造物とすることができる。
前記のドリル部2の長さ寸法L1のなかでも、対称に傾斜したドリルねじ先端部7を除く、ドリル部基端部から肩部Sまでの長さ寸法L2と、ドリルねじ部3の長さ寸法Lとが、接合される各鋼材11,12にドリルねじ頭部5aを収納する下孔を設けない場合には、図8bに示すように、タッピングされて接合される各鋼材の傾斜した貫通孔における対角方向の合計の板厚寸法T1以上とされており、確実にドリル刃10により各鋼材(鋼板)に貫通孔を削孔した後に、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピング可能にされている。
なお、接合される各鋼材11,12に、ドリルねじ頭部を収納する下孔を設ける場合には、ドリル刃10により削孔されることもなく、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされることもないので、ドリルねじ1のこれらの部分を短くすることができる。
なお、ドリルねじの頭部形状は、円柱状あるいは半球状としドリルねじの頭部に回動工具係合用凹部を設けてもよく、前記以外にも、頭部側周面に断面四角軸部等の回動工具係合部を設けた形態であってもよい。図10は、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも頭部首下での応力集中を緩和し頭飛び等の不具合の発生を抑制すべく、ドリルねじ軸心の倒れ角θにあわせ、ドリルねじ1の頭部下部に截頭円錐状部5bを設けたドリルねじ1とした例である。すなわち、鋼材11に対する截頭円錐状部5bの傾斜面の傾斜角をθとしたドリルねじ1である。このようなドリルねじ1を用いると、ドリルねじ1を傾斜させても、截頭円錐状部5bが鋼材11に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなり、施工効率を向上させることができる。
前記のドリルねじ1の引き抜き抵抗を増大させる要素としては、ねじ山の形状、ねじ山の高さ、ねじピッチ、ドリルねじの倒れ角(θ)、ドリルねじ傾斜方向の鋼材の板厚等が関係しているので、これらの要素および加工性ならびに施工性を勘案して、適宜設定される。
ドリルねじを傾斜させる方向として、図10に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと同方向にドリルねじの刃先を配置する方法、あるいは、図1に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する方法のいずれかにすることで、それ以外の方向に傾斜させた場合に比べて接合部での作用応力を横断する断面における鋼材のドリルねじによる断面欠損を最も少なくすることが出来るので、接合部の剛性・耐力を向上させる上で有利である。
また、図1に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する場合のみで接合部を構成する場合には、荷重作用時に鋼材11と鋼材12の間に隙間が発生し接合部の耐力・剛性が低下することも考えられるが、このような性状を設計面で考慮しそのまま利用してもよいし、隙間の発生を抑制するように鋼材同士を補剛して耐力・剛性を向上させた上で利用してもよい。
また、詳細説明は後記するが、図2,3に示すように、梁14におけるウェッブ19相互の縦添板20を介して、上下方向のせん断力が主に作用するせん断応力の作用方向に対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置してもよい。また、横方向のせん断力が作用するせん断応力の作用方向に対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置してもよい。
前記の下孔13は、ドリルねじ1の軸心の倒れ角(傾斜角)と同様に、重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して、または主に作用する応力の作用方向に対して傾斜した下孔13とされ、その下孔13の中心軸線に、傾斜して配置されるドリルねじ1の中心軸線が一致して、傾斜したドリルねじ1でタッピングされることにより確実な接合が可能となり、また、ドリルねじ1を所定の傾斜角度にガイドして確実にタッピングできる効果がある。
なお、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材11側に設ける下孔13の形態としては、図示を省略するが、ドリルねじ1の頭部を収納する形態の上部大径下孔と、その上部大径下孔に接続し、かつドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされる下部小径下孔とを、同軸状に直列に設ける形態の下孔でもよいが、ドリルねじ1のドリルねじ部3の軸方向のねじ部係合距離を大きく図り、ねじ部相互の係合によるねじ部係合部強度を高める上では、上部大径下孔を設けないで、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされる小径下孔のみとするのが望ましい。
また、ドリルねじ1の頭部側に配置されて接合される鋼材11では、ドリルねじ1のドリルねじ部3による係合面積を大きくするために、無孔状態としてもよい。
この形態では、直列に隣り合うH形断面の梁14,14の上フランジ17,17相互の上面に渡って上添板15が配設され、また下フランジ18,18相互の下面に渡って下添板16が配設されている。
また、多数のドリルねじ1は、添板15,16の長手方向片側において、直列隣り合うH形断面の梁14境界端部側にドリルねじ1の頭部5aが接近するように一方に傾斜するドリルねじ1(1a)と、前記と反対に梁14の中央部側にドリルねじ1の頭部5aが接近するように他方に傾斜するドリルねじ1(1b)が対称な倒れ角θで配置されて、前記添板15,16側からドリルねじ1(1a,1b)が、電動ドライバーあるいは電動式トルクレンチ(図示を省略した)により、フランジ17,18にねじ込まれ、ドリルねじ1および各添板15,16が、それぞれフランジ17,18に圧着されて一体に接合されている。
このようにドリルねじの刃先側に位置する鋼材12(上下フランジ17,18)に主に作用する応力の作用方向Pに対して、その作用方向と同方向にドリル刃先が向くようにドリルねじ1を配置して接合すると(重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して傾斜させ、応力の作用方向Pに対して、その作用方向と同方向にドリル刃先が向くようにドリルねじ1を配置して接合すると)、鋼材12(上下フランジ17,18)に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する場合に比べて、ドリルねじの耐荷力を向上させることができ、効果的に接合部の耐力・剛性を向上させることができる。
図2に示されている構造では、例えば、両側の各梁14における上フランジ17(または下フランジ18)と、上添板15(または下添板16)との中央よりに配置されている各4本のドリルねじ1(1b)による接合は、ドリルねじ1におけるドリル刃先が接近する方向に傾斜されて、ドリル刃先の方向が異なる方向となるように2本のドリルねじを2組配置した接合構造とされ、また、上添板15(または下添板16)の外側よりに配置されている各ドリルねじ1(1a)による接合は、ドリルねじ1におけるドリル刃先が離反する方向(頭部は接近する方向)に傾斜されて、ドリル刃先の方向が異なる方向となるように2本のドリルねじを2組配置した接合構造とされている。したがって、図2に示されている形態では、隣り合う梁14の境界の縦中心軸線を境に左右を見ると、上添板15(または下添板16)側で、左右対称に傾斜したドリルねじ1を2本づつ4組配置されている構造である。
複数のドリルねじを全て同じ方向に傾斜させた場合には、接合部の耐荷力に方向性が生じる恐れが高いが、前記のように、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置すると、複数のドリルねじによる接合部の耐荷力の異方性を効果的に排除することができ、合理的な接合部の耐力・剛性が得られる。
図示のように、主に作用する応力の作用方向Pに対して、ドリルねじ1の軸心(中心軸線)を傾斜させて配置する場合に、一方の方向のみに傾斜させた配置とする場合には、耐荷力の方向特性が生じるようになるが、図示の形態のようにドリルねじ1の傾斜配置を対称状態で配置すると、効率よく一方の傾斜方向のドリルねじ1の耐荷力の方向特性を排除して、均等な接合構造とすることができる。
前記のような実施形態の変形形態として、完全対称な傾斜状態で配置される以外にも、非対称形態で設置する形態でも可能であり、倒れ角θも異なる倒れ角θとした上で配置することも可能であり、接合構造の支圧耐力を、一方の側の複数のドリルねじ1による固着部と、他方の側の複数のドリルねじ1による固着部とを、異なる支圧耐力として、地震時等に支圧耐力が低い側で破壊させるように、接合部の破壊部を制御することも可能になる。
一般に、図8または図5あるいは図6に示すように、鋼材11,12を貫通するようにドリルねじ1を設置し、引張力または圧縮力が鋼材11,12に作用した場合に、ドリルねじ1が棒状部材であるが故に、ドリルねじ1から鋼材11,12側に梃子反力Fが作用するようになる。
この梃子反力Fは、鋼材が薄い場合には、鋼材板厚方向に分散させることができないが、鋼材11,12の接合部板厚寸法が厚くなると、前記の梃子反力Fは、鋼材表面に対して垂直にドリルねじ1を配置した場合には、鋼材表面側に応力集中するようになる。
前記の一定以上の板厚寸法Tを設定するには、ドリルねじ1の傾斜角θ、鋼材相互の接合部境界面のドリルねじ1の横断面のせん断断面積As部分のせん断耐力Qs、鋼材(板)の支圧耐力Qbの値が関係してくるので、これらを実用上、ドリルねじ1を用いた接合部の設計に利用しやすくされていると、接合部の設計、施工上に有利になると共に、このようなドリルねじ1を用いた金属材の接合構造を備えた建築物であると、接合部耐力、剛性の高い建築物とすることができる。
T1:厚みが小さい方の鋼材の板厚(mm)
σy1:厚みが小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2)
T2:厚みが大きい方の鋼材の板厚(mm)
σy2:厚みが大きい方の鋼材の降伏点(N/mm2)
d:ドリルねじの呼び径(mm)
τy:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm2)
σy:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2)
As:ドリルねじのせん断断面積(mm2)
θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角)
そして、鋼材11,12間の境界面におけるドリルねじ1のせん断耐力Qs(N/mm2)について検討すると、
ドリルねじのせん断耐力Qsは、ドリルねじ1のせん断断面積Asと降伏せん断応力τyの積に係数を掛けた次式で表すことができる。
Qs=0.2・As・0.55・τy (1)
ここで、
上記の係数0.2は、曲げ力(上下の鋼材の軸心の差に起因するもの)作用の影響に
対するせん断耐力の低下を考慮した係数である。
また、係数0.55は、有効断面積率(実質的に有効なねじ部断面積の呼び径断面積
に対する比)である。
また、鋼材の支圧耐力Qbは、厚みの小さい方の鋼材の支圧耐力をQb1とし、厚みの大きい方の鋼材の支圧耐力をQb2とした場合、ドリルねじ1により貫通される孔軸方向の有効面積に鋼材の降伏応力の積に係数を掛けて、次式(2)のように表され、また、厚みの小さい鋼材の支圧耐力Qb1と、厚みの大きい鋼材の支圧耐力Qb2は、それぞれ次のような式(2−1)または(2−2)で与えられる。また、Qbは、Qb1とQb2の小さい値をとるようにした。
Qb=min(Qb1,Qb2)=1.875・T・d・σy (2)
ここで、厚みの小さい方の鋼材の支圧耐力Qb1と、厚みの大きい方の鋼材の支圧耐力Qb2とは、それぞれ次のような式で与えられる。
Qb1=1.875・T1・d・σy1 (2−1)
Qb2=1.875・T2・d・σy2 (2−2)
上記の係数1.875は、支圧接合形式による接合部耐力の補正係数である。
ドリルねじのせん断耐力Qsで接合部耐力が決定するようにするためには、鋼材の支圧耐力Qb(N/mm2)が、ドリルねじのせん断耐力Qs(N/mm2)以上でなければならず、下記式(3)になる。
Qb≧Qs (3)
前記(1)式および前記(2)式を(3)式に代入すると共に、
Asをπ・(d/2)2/cosθとして代入して、板厚Tについて整理すると、
T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・τy/σy (4)
が得られ、この式(4)が、鋼材の板厚T(但し、計算結果の係数は小数点第2位以下四捨五入した)を制限する条件式になる。
したがって、鋼材の板厚Tは、倒れ角θと、ドリルねじの降伏せん断応力τyと、接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の降伏点σyで設定することができ、実用上、接合部の耐力確保するために必要な鋼材の板厚Tを、式(4)により設計することが可能になり、建築物におけるドリルねじ1を用いた接合構造の設計が容易になる。
また、このように設計された建築物におけるドリルねじを用いた接合部の接合部耐力および剛性は、客観的な信頼性のある接合部となるので、建築物の接合部の信頼性、しいては、建築物そのものの耐力および剛性の信頼性に寄与することができる。
前記の板厚Tとしては、実用上、例えば、6mm〜22mm程度とするのが好ましい。
なお、施工性の評価にあたっては、ドリルねじを効率よくねじ込める場合を◎とし、ドリルねじをねじ込める場合を〇とし、ドリルねじをガイド孔またはガイド治具を用いてねじ込める場合を△とし、ドリルねじをねじ込めない場合を×として評価した。
(2)先端にドリル刃10を加工したドリルねじ1により、重合される部材12に孔(貫通孔)をあけ、ねじ部3によって被接合鋼材12(または11を含む)をタッピングして接合し、一体化することで、溶接のような作業時の管理や溶接後の防錆補修が不要となり、ボルトやリベットのように部材の両側から作業する必要が無くなり、高力ボルトのように摩擦力のための表面処理を必要としないため、作業効率が向上するとともに、ガタ等を誘発するすき間が生ぜず、剛性の高い接合を構築できる。
ドリルねじ1の頭部形状としては、円柱状の頭部とし、その上面側に回動工具係合用溝を設けるようにしてもよい。
なお、前記のような接合方法によると、単に、ドリルねじの軸心を傾斜させるだけで、鋼材相互の接合部におけるドリルねじのせん断面積を増大させるように鋼材相互を接合することができ、鋼材相互のドリルねじを介した接合部の耐力および剛性を簡単な施工法により向上させることができる。また、単に、ドリルねじを傾斜して接合することにより、鋼材表面に対して垂直にドリルねじを配置する場合に比べて、ドリルねじのねじ部と鋼材の係合部を増大させることができるため、ドリルねじの引き抜き抵抗が増大するので接合部の耐力・剛性を向上させることができる。
また、ドリルねじ軸心の傾斜角にあわせ、ドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじを用いることで、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも頭部首下での応力集中を緩和し、ドリルねじの頭飛び等の不具合を抑制できる。また、ドリルねじを傾斜させても、截頭円錐状部が鋼材に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなり、施工効率を向上させることができる。
2 ドリル部
3 ドリルねじ部
4 脚部
5 フランジ部
5a 頭部
5b 截頭円錐状部
6 回動工具係合部
7 ドリル刃先端部
8 ねじ山
9 傾斜ガイド溝
10 ドリル刃
11 鋼材
12 鋼材
13 下孔(先孔)
14 梁
15 上添板
16 下添板
17 上フランジ
18 下フランジ
19 ウェッブ
20 縦添板
Claims (6)
- ドリルねじを複数の鋼材等の金属材に渡って配置することにより金属材を接合する接合構造において、重ね合わせた金属材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とするドリルねじを用いた金属材の接合構造。
- ドリルねじを複数の鋼材に渡って配置することにより鋼材を接合する接合構造において、重ね合わせた鋼材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とするドリルねじを用いた金属材の接合構造。
- ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用し、かつ前記重ね合わせてドリルねじにより接合された鋼材の接合面に平行な引張力(または圧縮力)の作用方向に対して、その引張力(または圧縮力)の作用方向と同方向または逆方向よりにドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の金属材の接合構造。
- 添板等の鋼材に、傾斜した下孔を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造。
- ドリルねじを傾斜させて鋼材を接合するに際して、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚T(mm)が、少なくとも下記式(1)で与えられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造。
T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・(τy/σy)・・・・(1)
d:ドリルねじの呼び径(mm)
τy:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm2)
σy:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2)
As:ドリルねじのせん断断面積(mm2)
θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角) - 請求項1〜5のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造を備えた構造物。
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