JP4912906B2 - ドリルねじを用いた金属材の接合構造および構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板または形鋼あるいは鋼管およびこれらを用いた鋼構造物における鋼材相互の接合部、あるいは構造物相互を鋼材を用いて連結する接合部、または鉄骨部材等の鋼材相互の接合部、あるいはアルミニウム合金その他の金属材料を含む金属材相互間の接合部における板部相互を重合させて、ドリルねじにより接合する金属材の接合構造およびその接合構造を備えた鋼構造物などの構造物に関する。
従来、ドリルねじを用いた金属材の接合構造として、スチールハウス等では、薄鋼板相互をこれらに渡って貫通配置するようにドリルねじを用いて接合することが知られている。前記のように薄鋼板相互の接合では、高剛性の接合構造を前提としていない接合構造である。
また、従来、少なくとも一方の部材の板厚が2.3mm以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部の接合)においては、(1)溶接接合、(2)ボルト接合、リベット接合ならびに(3)高力ボルト接合が適用されていた(例えば、特許文献1〜3参照。)。ドリルねじによる接合は、板厚2.3mm厚以上の鉄骨の柱と梁の接合、梁と梁の接合ならびに梁と小梁の接合(いずれも板状部相互の重合部)においてはドリルねじによる接合は行われていなかった。
(1)前記の溶接接合では、接合される鋼材を溶接できる形状に加工し、さらに溶接時の熱により部材が変形しないように温度、溶接手順や拘束条件を管理して溶接を実施していた。また、めっきや塗装など予め防錆処理されていた鋼材を用いる場合にあっては、接合部のめっきや塗装などを剥離したうえ溶接接合し、溶接の後に損傷を受けた防錆処理部の補修も必要となっていた。
(2)前記のボルト接合またはリベット接合では、接合される部材のすべてにボルトまたはリベットの軸径以上の孔を穿設したうえ、ボルトおよびナットまたはリベットにより一体化する接合方法としていた。このとき、両被接合部材の双方から作業する必要があった。
(3)前記の高力ボルト接合では、前記(2)と同様の作業に加え、重合される部材の接触面を有効に摩擦力が生じるように表面処理する必要があった。
前記のように、(1)溶接接合では、開先加工等を含む溶接できる形状に加工、温度管理等、非常に煩雑で、接合コストも高くなると共に高度の熟練を要するという問題があった。
また、(2)前記のボルト接合またはリベット接合では、接合される部材のすべてにボルトまたはリベットの軸径以上の孔を穿設しなければならず、しかも接合部の表裏両側から作業する必要があり、接合作業効率が低いという問題がある。
また、前記(3)では、前記(2)に加えて摩擦接合面に有効に摩擦力が生じるように表面処理する必要があり、接合コストが増加する問題がある。
前記の(1)〜(3)課題を有利に解消することができる接合構造として、(4)鋼材の板厚が2.3mmを越える板厚の鋼材相互の接合にも、ドリルねじによる接合が利用されつつあり、特許出願が行われている。
前記の(4)の場合について、図4(または図6あるいは図8a)を参照して説明すると、ドリルねじ1を鋼材表面に対して垂直にドリルねじ1をねじ込んで、鋼板からなる鋼材11,12相互を接合したものである。
実公昭56−4082号公報 実公昭56−55365号公報 特開2002−38608号公報
前記(4)従来の場合は、ドリルねじ1の呼び径により計算された断面積、ドリルねじ1のねじ軸部の中心軸線Cに直角な断面積(例えば、ドリルねじ1の呼び径を基礎とした断面積)が、ドリルねじ1のせん断耐力を左右することになり、また、鋼材(鋼板)11,12とドリルねじ部3との接触面積が最小となる位置であるので、支圧耐力が小さいという問題がある。
本発明は、ドリルねじを用いた接合構造において、ドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させて接合構造の耐力および剛性並びに引き抜き抵抗を向上させることを可能にした金属材の接合構造および鋼構造物等の構造物を提供することを目的とする。
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のドリルねじを用いた金属材の接合構造においては、ドリルねじを複数の鋼材等の金属材に渡って配置することにより金属材を接合する接合構造において、重ね合わせた金属材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とする。
また、第2発明のドリルねじを用いた金属材の接合構造においては、ドリルねじを複数の鋼材に渡って配置することにより鋼材を接合する接合構造において、重ね合わせた鋼材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とする。
また、第3発明では、第1または第2発明のドリルねじを用いた金属材の接合構造において、ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用し、かつ前記重ね合わせてドリルねじにより接合された鋼材の接合面に平行な引張力(または圧縮力)の作用方向に対して、その引張力(または圧縮力)の作用方向と同方向または逆方向よりにドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したことを特徴とする。
た、第発明では、第1発明〜第発明のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造において、添板等の鋼材に、傾斜した下孔を設けたことを特徴とする。
また、第発明では、第1発明〜第発明のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造において、ドリルねじを傾斜させて鋼材を接合するに際して、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚T(mm)が、少なくとも下記式(1)で与えられることを特徴とする。
T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・(τy/σy)・・・・(1)
d:ドリルねじの呼び径(mm)
τy:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm2
σy:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2
s:ドリルねじのせん断断面積(mm2
θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角
た、第発明の構造物においては、請求項1〜のいずれかのドリルねじを用いた金属材の接合構造を備えている。
第1または第2発明によると、単に、ドリルねじの軸心を傾斜させるだけで、鋼材等の金属材相互の接合部におけるドリルねじのせん断面積を増大させることができ、鋼材等の金属材相互のドリルねじを介した接合部の耐力および剛性を向上させることができる。また、ドリルねじを傾斜して接合することにより、鋼材等の金属材表面に対して垂直にドリルねじを配置する場合に比べて、ドリルねじのねじ部と鋼材等の金属材の係合部を増大させることができるため、ドリルねじの引き抜き抵抗が増大するので接合部の耐力・剛性を向上させることができる。
第3発明によると、ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用する応力の作用方向に対して、同方向または逆向き方向にドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したので、鋼材に主に作用する応力の作用方向と異なる方向にドリルねじの刃先を配置する場合に比べて、ドリルねじの耐荷力を向上させることができ、効果的に接合部の耐力・剛性を向上させことができる。
発明によると、複数のドリルねじを全て同じ方向に傾斜させた場合には、接合部の耐荷力に方向性が生じる恐れが高いが、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置すると、複数のドリルねじによる接合部の耐荷力の異方性を効果的に排除することができ、合理的な接合部の耐力・剛性が得られる。
発明によると、傾斜した下孔を鋼材に設けることで、ドリルねじの確実な傾斜角を確保して、その下孔をガイドとしてドリルねじを設置して鋼材相互を接合することができる。
発明によると、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚Tを、T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・τy/σyとすることで、ドリルねじの降伏せん断応力τyと接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点σyの比と、ドリルねじの直径並びにドリルねじの倒れ角θで、接合する鋼材の板厚Tを表すことができるため、支圧耐力がドリルねじのせん断耐力以上となるように接合する鋼材の板厚Tを容易に決定でき、したがって、鋼材の板厚Tとドリルねじの組み合わせ設計が容易になると共に、鋼材相互の接合部の設計が容易になると共に正確な設計をすることができ、正確な接合耐力の接合構造を実現することが可能になる。
1発明または第2発明によると、ドリルねじ軸心の傾斜角にあわせ、ドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部が設けられたドリルねじを用いることで、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも、頭部首下での応力集中を緩和し、頭部首下での剛性の高いドリルねじとなると共に、鋼材等の金属材にドリルねじの頭部下部の截頭円錐状部を用いた接合構造とすることができる。また、ドリルねじを傾斜させても、截頭円錐状部が鋼材に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなる接合構造とすることができる。
発明によると、傾斜させて配置されたドリルねじにより、せん断断面積を増加させ、耐力および剛性を向上させた接合部を有する鋼構造物等の構造物とすることができる。
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
先ず、図7を参照して本発明において使用するドリルねじ1の一形態について説明すると、このドリルねじ1は、ドリル部2とドリルねじ部3とを有する脚部4と、頭部に座金を兼ねたフランジ部5および六角形の回動工具係合部(頭部)6を一体に備えており、少なくとも接合される鋼材の一方の部材の板厚が、板厚2.3mm以上〜18mm程度あるいはこれを越える板厚のH形鋼,溝形鋼,T形鋼あるいはL型鋼等の鉄骨部材と他の鋼材との接合、あるいは前記と同様な板厚寸法の鉄骨部材と鋼板等の鋼材との接合に適用可能なドリルねじ1とされている。
また、前記ドリル部2の先端には、対称に傾斜した先端部7が設けられ、ドリル部の先端部7からドリルねじ部3のねじ山8に渡り、重合されて接合される各鋼材の合計厚さ寸法以上の長さの傾斜ガイド溝9が、脚部4の外周上を軸方向に傾斜して設けられて、切り粉を案内排出するようにされている。
また、前記のドリルねじ1は、基端部に脚部4より大径のフランジ部5および六角形の回動工具係合部(頭部)5aを有し、先端部に先端がドリル形状を有するドリルねじ1であって防錆処理(例えば、亜鉛鍍金処理)されたドリルねじ1は、耐食性が得られ、鉄骨部材相互の板状部相互を重合して接合する接合部に利用可能なドリルねじ1とすることができる。
また、ドリルねじの製造加工時に、脱水素処理させたドリルねじ1は、水素除去不充分によるドリルねじ1のねじ頭部のねじ込み作業後に破断される所謂、首飛び現象が発生しないドリルねじ1であるので、接合金具として信頼性の高いドリルねじ1により鉄骨部材を接合した接合構造の鉄骨造建築物を構築することができる。
ドリル部2の外径寸法D1は、ドリルねじ部3の谷の径dよりも大きく、かつドリルねじ部3の山の外径Dよりも小さくされ、ドリル部2の長さ寸法L1およびねじ部3の長さ寸法Lは、重合されて接合される鋼材相互のドリルねじ傾斜方向の合計の板厚寸法T以上とされ、頭部に六角等の多角形の回動工具係合部6が形成され、電動式レンチ等により回動可能に構成されている。
前記のドリル部2の長さ寸法L1のなかでも、対称に傾斜したドリルねじ先端部7を除く、ドリル部基端部から肩部Sまでの長さ寸法L2と、ドリルねじ部3の長さ寸法Lとが、接合される各鋼材11,12にドリルねじ頭部5aを収納する下孔を設けない場合には、図8bに示すように、タッピングされて接合される各鋼材の傾斜した貫通孔における対角方向の合計の板厚寸法T1以上とされており、確実にドリル刃10により各鋼材(鋼板)に貫通孔を削孔した後に、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピング可能にされている。
なお、接合される各鋼材11,12に、ドリルねじ頭部を収納する下孔を設ける場合には、ドリル刃10により削孔されることもなく、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされることもないので、ドリルねじ1のこれらの部分を短くすることができる。
なお、ドリルねじの頭部形状は、円柱状あるいは半球状としドリルねじの頭部に回動工具係合用凹部を設けてもよく、前記以外にも、頭部側周面に断面四角軸部等の回動工具係合部を設けた形態であってもよい。図10は、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも頭部首下での応力集中を緩和し頭飛び等の不具合の発生を抑制すべく、ドリルねじ軸心の倒れ角θにあわせ、ドリルねじ1の頭部下部に截頭円錐状部5bを設けたドリルねじ1とした例である。すなわち、鋼材11に対する截頭円錐状部5bの傾斜面の傾斜角をθとしたドリルねじ1である。このようなドリルねじ1を用いると、ドリルねじ1を傾斜させても、截頭円錐状部5bが鋼材11に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなり、施工効率を向上させることができる。
ドリルねじ1の先端には、当該ドリルねじ1のねじ部3の谷の径dと同じ寸法か、または僅かに大きい外径で、かつ、当該ドリルねじ1のねじ部3の山の径Dより小さい外径D1のドリル刃10を有している。
ドリルねじ1の呼び径は、例えば、6mm〜8mmあるいはこれ以上の寸法とされ、少なくとも接合される鋼材の板厚が2.3mm以上の鋼材11,12同士が重合された鋼材重合部に適用可能にされている。
また、ドリルねじ1の表面硬さおよび心部硬さは、JISB1059の3.2.1(表面硬さ)項の規定および3.2.2(心部硬さ)項の規定に準じて、JISB1059の11.1.1の試験を行った時に、530HV0.3以上の表面硬さ、320HV10〜400HV10の心部硬さとなっていることが望ましい。前記のドリルねじ1を使用して接合される部材(鋼材)の材質として軟鋼(400MPa鋼程度以下)の部材であると望ましい。
次に、前記のようなドリルねじ1を用いた本発明の接合構造の一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、図7に示すドリルねじ1を使用して、鉄骨部材の柱と梁の接合部、柱と柱または梁と梁の接合部あるいは梁と小梁の接合部等の鉄骨部材における板状部を重合させて、ドリルねじ1により接合する場合の形態を示したものである。重合されて接合される2つの接合鋼材11,12は、少なくとも接合される一方の鋼材12が板厚2.3mm以上であり、かつ、ドリルねじ1が傾斜された状態で配置されてドリルねじ1のドリル刃10により貫通孔が明けられ、当該ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされ、重合される他方の鋼材12とドリルねじ1が圧着されて一体化された接合部とされている。
図1に示すように、前記のドリルねじ1の傾斜配置状態は、各鋼材11,12に主に作用する応力(図示の場合は、矢印で示す引張応力)の作用方向Pに対して、ドリルねじ軸心(ドリルねじの中心軸線)Cを傾斜させて配置するようにしている。また、図5にも示すように、重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置している。
本発明では、前記のように、重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して、または各鋼材11,12に主に作用する応力の作用方向Pに対して、ドリルねじ軸心(ドリルねじの中心軸線)Cを傾斜させて配置する理由は、ドリルねじ1を傾斜させるだけで、(1)鋼材11,12相互の接合部におけるドリルねじ1のせん断面積を増大させるため、鋼材11,12相互のドリルねじ1を介した接合部の耐力および剛性を向上させることができること、(2)ドリルねじ1を傾斜配置して鋼材相互を接合することにより、図4に示す従来のように、鋼材表面に対して垂直にドリルねじ1をねじ込み配置する場合に比べて、ドリルねじ1のドリルねじ部3と鋼材11,12の係合部を増大させることができるため、ドリルねじ1の引き抜き抵抗が増大するので、接合部の耐力・剛性を向上させることである。
前記のドリルねじ1の引き抜き抵抗を増大させる要素としては、ねじ山の形状、ねじ山の高さ、ねじピッチ、ドリルねじの倒れ角(θ)、ドリルねじ傾斜方向の鋼材の板厚等が関係しているので、これらの要素および加工性ならびに施工性を勘案して、適宜設定される。
ドリルねじを傾斜させる方向として、図10に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと同方向にドリルねじの刃先を配置する方法、あるいは、図1に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する方法のいずれかにすることで、それ以外の方向に傾斜させた場合に比べて接合部での作用応力を横断する断面における鋼材のドリルねじによる断面欠損を最も少なくすることが出来るので、接合部の剛性・耐力を向上させる上で有利である。
また、図1に示すように鋼材12に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する場合のみで接合部を構成する場合には、荷重作用時に鋼材11と鋼材12の間に隙間が発生し接合部の耐力・剛性が低下することも考えられるが、このような性状を設計面で考慮しそのまま利用してもよいし、隙間の発生を抑制するように鋼材同士を補剛して耐力・剛性を向上させた上で利用してもよい。
前記の主に作用する応力の作用方向としては、図示のように、例えば、部材長手方向の引張力が主に作用する応力の作用方向Pに対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置するようにしてもよく、図示を省略するが、上位に位置する柱の下端部と、下位に位置する柱の上端部の接続部においては、圧縮力が主に作用する応力の作用方向に対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置するようにしてもよい。
また、詳細説明は後記するが、図2,3に示すように、梁14におけるウェッブ19相互の縦添板20を介して、上下方向のせん断力が主に作用するせん断応力の作用方向に対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置してもよい。また、横方向のせん断力が作用するせん断応力の作用方向に対して傾斜させるようにドリルねじ1を配置してもよい。
前記のように、重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して、または主に作用する応力の作用方向に対して傾斜させて配置するドリルねじ1の倒れ角θ、すなわち、応力伝達方向に対する垂線(接合面の垂線)とドリルねじ1の軸心(ドリルねじの中心軸線)とのなす角θ(ドリルねじの倒れ角)は、15°〜60°の範囲でよく、施工性を考慮すると15°〜45°の範囲が好ましい(詳細は後記する)。
また、ドリルねじ1を傾斜させれば傾斜させるほど、鋼材境界面(接合面)に平行なドリルねじ1のせん断断面積が増えるため望ましいが、ドリルねじ1をねじ込むことが困難になり施工性が低下するようになるため、鋼材11,12にドリルねじ1をねじ込む場合に、図9に示すように、ガイドとなる傾斜した下孔(先孔)13を設けるようにしてもよい。
前記の下孔13は、ドリルねじ1の軸心の倒れ角(傾斜角)と同様に、重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して、または主に作用する応力の作用方向に対して傾斜した下孔13とされ、その下孔13の中心軸線に、傾斜して配置されるドリルねじ1の中心軸線が一致して、傾斜したドリルねじ1でタッピングされることにより確実な接合が可能となり、また、ドリルねじ1を所定の傾斜角度にガイドして確実にタッピングできる効果がある。
なお、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材11側に設ける下孔13の形態としては、図示を省略するが、ドリルねじ1の頭部を収納する形態の上部大径下孔と、その上部大径下孔に接続し、かつドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされる下部小径下孔とを、同軸状に直列に設ける形態の下孔でもよいが、ドリルねじ1のドリルねじ部3の軸方向のねじ部係合距離を大きく図り、ねじ部相互の係合によるねじ部係合部強度を高める上では、上部大径下孔を設けないで、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングされる小径下孔のみとするのが望ましい。
また、接合される鋼材11,12に一方または両方に下孔13を設ける場合、下孔13の内径寸法をドリルねじ1のドリル刃10の外径寸法よりも小さくしてもよい。
前記の下孔(先孔)13を設ける場合、ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材11に下孔13を設けるようにしてもよく、ドリルねじ1のドリル刃先側に位置して接合される鋼材12にも下孔13を設けるようにしてもよい。ドリルねじ1の頭部側に位置して接合される鋼材11に設ける下孔13形態としては、ドリルねじ1におけるドリル刃10の該側面をガイドして、先孔の中心軸線とドリルねじ1の軸心(中心軸線)が合致するような下孔であると、ドリルねじ1を正確な位置で正確な姿勢で、所定の傾斜状態で鋼材相互を接合することができる。
したがって、下孔13の内径寸法は、ドリルねじ1におけるドリル刃10の外径寸法D1よりも僅かに大きく、ドリルねじ1のドリルねじ部3の外径寸法Dよりも小さい寸法であるのが好ましい。特に、ドリルねじ1のドリル刃10側に配置されて接合される鋼材12側では、前記のような下孔13を設けておくか無孔状態にしておいて、ドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングするようにすればよい。
また、ドリルねじ1の頭部側に配置されて接合される鋼材11では、ドリルねじ1のドリルねじ部3による係合面積を大きくするために、無孔状態としてもよい。
図2および図3に示す形態は、前記の図1に示す形態をさらに具体的に建築物における梁、添板などの鋼材相互の接合に適用した形態を示したものである。
この形態では、直列に隣り合うH形断面の梁14,14の上フランジ17,17相互の上面に渡って上添板15が配設され、また下フランジ18,18相互の下面に渡って下添板16が配設されている。
また、多数のドリルねじ1は、添板15,16の長手方向片側において、直列隣り合うH形断面の梁14境界端部側にドリルねじ1の頭部5aが接近するように一方に傾斜するドリルねじ1(1a)と、前記と反対に梁14の中央部側にドリルねじ1の頭部5aが接近するように他方に傾斜するドリルねじ1(1b)が対称な倒れ角θで配置されて、前記添板15,16側からドリルねじ1(1a,1b)が、電動ドライバーあるいは電動式トルクレンチ(図示を省略した)により、フランジ17,18にねじ込まれ、ドリルねじ1および各添板15,16が、それぞれフランジ17,18に圧着されて一体に接合されている。
また、各梁15,16におけるウェッブ19,19相互の片面または両面に渡って、縦添板20が配設され、前記添板20側からドリルねじ1が、電動ドライバーあるいは電動式トルクレンチ(図示を省略した)により、ウェッブ19および添板20にねじ込まれ、ドリルねじ1および添板20が、ウェッブ19に圧着されて一体に接合されている。
前記各上添板15、下添板16、および縦添板20は、梁14に対して所定の位置が保持されるように、図示を省略するが、板状部相互を圧着仮固定する把持クランプ金具(図示省略)、あるいは梁14のフランジあるいはウェッブに対して各添板15,16,17を固定する接着テープ(図示省略)などが設けられて位置固定された状態で、ドリルねじ1が設けられる。
図2及び図3に示す形態では、梁14,14の上下フランジ17,18にねじ込まれたドリルねじ1のうち、梁14外端部(右側の梁14では右端部、左側の梁14では左端部)側方向に主な引張応力の作用方向Pであるとした場合、端部側に位置するドリルねじ1(1a)では、主に作用する応力の作用方向Pに向ってドリルねじ1(1a)のドリル刃先端部7が向くように配置されていることになるが、そのドリルねじ1(1a)の傾斜方向とは、逆に傾斜されたドリルねじ1(1b)では、鋼材に主に作用する応力の作用方向Pに対して、その左右方向とは逆向き方向にドリル刃先が向くように配置されていることになる(図2に示す形態では、上フランジ側では、内側に対称に配置されている4本(前後を含めると8本))。
このようにドリルねじの刃先側に位置する鋼材12(上下フランジ17,18)に主に作用する応力の作用方向Pに対して、その作用方向と同方向にドリル刃先が向くようにドリルねじ1を配置して接合すると(重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して傾斜させ、応力の作用方向Pに対して、その作用方向と同方向にドリル刃先が向くようにドリルねじ1を配置して接合すると)、鋼材12(上下フランジ17,18)に主に作用する応力の作用方向Pと逆向き方向にドリルねじの刃先を配置する場合に比べて、ドリルねじの耐荷力を向上させることができ、効果的に接合部の耐力・剛性を向上させることができる。
さらに図2に示されている特徴的な接合構造について説明すると、この形態では、ドリルねじ1におけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置した接合構造としている特徴がある金属材の接合構造とされている。
図2に示されている構造では、例えば、両側の各梁14における上フランジ17(または下フランジ18)と、上添板15(または下添板16)との中央よりに配置されている各4本のドリルねじ1(1b)による接合は、ドリルねじ1におけるドリル刃先が接近する方向に傾斜されて、ドリル刃先の方向が異なる方向となるように2本のドリルねじを2組配置した接合構造とされ、また、上添板15(または下添板16)の外側よりに配置されている各ドリルねじ1(1a)による接合は、ドリルねじ1におけるドリル刃先が離反する方向(頭部は接近する方向)に傾斜されて、ドリル刃先の方向が異なる方向となるように2本のドリルねじを2組配置した接合構造とされている。したがって、図2に示されている形態では、隣り合う梁14の境界の縦中心軸線を境に左右を見ると、上添板15(または下添板16)側で、左右対称に傾斜したドリルねじ1を2本づつ4組配置されている構造である。
複数のドリルねじを全て同じ方向に傾斜させた場合には、接合部の耐荷力に方向性が生じる恐れが高いが、前記のように、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置すると、複数のドリルねじによる接合部の耐荷力の異方性を効果的に排除することができ、合理的な接合部の耐力・剛性が得られる。
図示のように、主に作用する応力の作用方向Pに対して、ドリルねじ1の軸心(中心軸線)を傾斜させて配置する場合に、一方の方向のみに傾斜させた配置とする場合には、耐荷力の方向特性が生じるようになるが、図示の形態のようにドリルねじ1の傾斜配置を対称状態で配置すると、効率よく一方の傾斜方向のドリルねじ1の耐荷力の方向特性を排除して、均等な接合構造とすることができる。
前記のような実施形態の変形形態として、完全対称な傾斜状態で配置される以外にも、非対称形態で設置する形態でも可能であり、倒れ角θも異なる倒れ角θとした上で配置することも可能であり、接合構造の支圧耐力を、一方の側の複数のドリルねじ1による固着部と、他方の側の複数のドリルねじ1による固着部とを、異なる支圧耐力として、地震時等に支圧耐力が低い側で破壊させるように、接合部の破壊部を制御することも可能になる。
前記のように、ドリルねじ1を傾斜した状態(重ね合わせた鋼材11,12間の接合面の垂線に対して傾斜した状態)で鋼材接合箇所の表面側に配置して、各鋼材11,12をドリル刃10により切削して、傾斜した各貫通孔13を形成した後、続いてドリルねじ1のドリルねじ部3によりタッピングし、各鋼材11,12に雌ねじ孔を形成して鋼材11,12相互をドリルねじ1を介して接合する場合以外に、傾斜した下孔13を鋼材に設けることで、ドリルねじ1の確実な倒れ角θを確保して、その下孔13をガイドとしてドリルねじを設置して鋼材相互を接合すると、前記のようなドリルねじ1の接合施工効率を高めることができ、ドリルねじ1を正確な位置に設置して確実な接合構造とすることができる。
次に、ドリルねじ1の傾斜と、ドリルねじ1による梃子(テコ)反力について説明する。
一般に、図8または図5あるいは図6に示すように、鋼材11,12を貫通するようにドリルねじ1を設置し、引張力または圧縮力が鋼材11,12に作用した場合に、ドリルねじ1が棒状部材であるが故に、ドリルねじ1から鋼材11,12側に梃子反力Fが作用するようになる。
この梃子反力Fは、鋼材が薄い場合には、鋼材板厚方向に分散させることができないが、鋼材11,12の接合部板厚寸法が厚くなると、前記の梃子反力Fは、鋼材表面に対して垂直にドリルねじ1を配置した場合には、鋼材表面側に応力集中するようになる。
前記のように、接合された鋼材11,12に引張力または圧縮力が作用した場合に、ドリルねじ1により鋼材に梃子反力が作用するが、この時の鋼材に分布する梃子反力は、図8に示すように、鋼材11,12の表面に集中するように梃子反力が生じる。この場合の梃子反力の分布は、鋼材11,12表面に対して垂直にドリルねじ1を配置した場合に比べて、ドリルねじ1を鋼材11,12の表面に対して垂直な軸線に対して傾斜させた状態でドリルねじ1をねじ込むことにより、より鋼材11,12とドリルねじのねじ部3との係合部(係合距離および係合面積)を増大させ、梃子反力による応力の分布を、鋼材11,12の板厚全体に分布させて、接合部耐力を向上させることができる。
また、本発明のように、主に応力の作用方向Pに対してドリルねじ1の軸心(中心軸線)を傾斜させるべく、ドリルねじ1を鋼材長手方向等で各鋼材表面に対して傾斜した状態で設置することで、板厚方向に分散させて、梃子反力による鋼材表面側への応力の集中を回避し、効果的に接合部耐力を確保するためには、一定以上の板厚寸法Tが必要になる。
前記の一定以上の板厚寸法Tを設定するには、ドリルねじ1の傾斜角θ、鋼材相互の接合部境界面のドリルねじ1の横断面のせん断断面積A部分のせん断耐力Q、鋼材(板)の支圧耐力Qの値が関係してくるので、これらを実用上、ドリルねじ1を用いた接合部の設計に利用しやすくされていると、接合部の設計、施工上に有利になると共に、このようなドリルねじ1を用いた金属材の接合構造を備えた建築物であると、接合部耐力、剛性の高い建築物とすることができる。
前記の梃子反力Fによる応力集中の回避と、鋼材板厚寸法の下限値と、ドリルねじ1の傾斜角(倒れ角)θとの関係について、図6および図7を参照して説明する。
図5および図6に示されている記号および鋼材の板厚寸法Tを導くまでに主に使用する記号は、下記のように定義される。
T1:厚みが小さい方の鋼材の板厚(mm)
σy1:厚みが小さい方の鋼材の降伏点(N/mm
:厚みが大きい方の鋼材の板厚(mm)
σy2:厚みが大きい方の鋼材の降伏点(N/mm
d:ドリルねじの呼び径(mm)
τ:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm
σ:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm
:ドリルねじのせん断断面積(mm
θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角)
そして、鋼材11,12間の境界面におけるドリルねじ1のせん断耐力Q(N/mm)について検討すると、
ドリルねじのせん断耐力Qは、ドリルねじ1のせん断断面積Aと降伏せん断応力τの積に係数を掛けた次式で表すことができる。
=0.2・A・0.55・τ(1)
ここで、
上記の係数0.2は、曲げ力(上下の鋼材の軸心の差に起因するもの)作用の影響に
対するせん断耐力の低下を考慮した係数である。
また、係数0.55は、有効断面積率(実質的に有効なねじ部断面積の呼び径断面積
に対する比)である。
また、鋼材の支圧耐力Qは、厚みの小さい方の鋼材の支圧耐力をQb1とし、厚みの大きい方の鋼材の支圧耐力をQb2とした場合、ドリルねじ1により貫通される孔軸方向の有効面積に鋼材の降伏応力の積に係数を掛けて、次式(2)のように表され、また、厚みの小さい鋼材の支圧耐力Qb1と、厚みの大きい鋼材の支圧耐力Qb2は、それぞれ次のような式(2−1)または(2−2)で与えられる。また、Qは、Qb1とQb2の小さい値をとるようにした。
=min(Qb1,Qb2)=1.875・T・d・σ(2)
ここで、厚みの小さい方の鋼材の支圧耐力Qb1と、厚みの大きい方の鋼材の支圧耐力Qb2とは、それぞれ次のような式で与えられる。
b1=1.875・T・d・σy1 (2−1)
b2=1.875・T・d・σy2 (2−2)
上記の係数1.875は、支圧接合形式による接合部耐力の補正係数である。
ドリルねじのせん断耐力Qで接合部耐力が決定するようにするためには、鋼材の支圧耐力Q(N/mm)が、ドリルねじのせん断耐力Q(N/mm)以上でなければならず、下記式(3)になる。
≧Q(3)
前記(1)式および前記(2)式を(3)式に代入すると共に、
をπ・(d/2)/cosθとして代入して、板厚Tについて整理すると、
T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・τ/σ (4)
が得られ、この式(4)が、鋼材の板厚T(但し、計算結果の係数は小数点第2位以下四捨五入した)を制限する条件式になる。
したがって、鋼材の板厚Tは、倒れ角θと、ドリルねじの降伏せん断応力τと、接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の降伏点σで設定することができ、実用上、接合部の耐力確保するために必要な鋼材の板厚Tを、式(4)により設計することが可能になり、建築物におけるドリルねじ1を用いた接合構造の設計が容易になる。
また、このように設計された建築物におけるドリルねじを用いた接合部の接合部耐力および剛性は、客観的な信頼性のある接合部となるので、建築物の接合部の信頼性、しいては、建築物そのものの耐力および剛性の信頼性に寄与することができる。
前記の板厚Tとしては、実用上、例えば、6mm〜22mm程度とするのが好ましい。
なお、前記(4)式により、鋼材の板厚Tは、分母に位置するcosθの関数になるから、図6に示す従来の場合より、本願のようにドリルねじ1を傾斜させた接合構造のほうが有利になることもわかる。
次に、ドリルねじ1の倒れ角θを順次変化させた場合について、耐力上昇の程度と、実際の施工面を検討したドリルねじ1の倒れ角θの実施可能範囲について、下記表1に示す。
なお、施工性の評価にあたっては、ドリルねじを効率よくねじ込める場合を◎とし、ドリルねじをねじ込める場合を〇とし、ドリルねじをガイド孔またはガイド治具を用いてねじ込める場合を△とし、ドリルねじをねじ込めない場合を×として評価した。
Figure 0004912906
上記の表1からわかるように、ドリルねじ1に倒れ角θの範囲は、15°付近からドリルねじのせん断耐力の向上の効果が見込め、倒れ角θが60°、75°と大きくなるにつれて、大きくなるが、反面、施工性は倒れ角θが60°付近までは、施工可能であるが、75°付近となると、ドリルねじ1もドリルねじ部3およびドリル部2も長いものが必要となり、また、施工面で格段に施工性が低下するため、倒れ角θは、15°〜60°の範囲であればよく、好ましくは、15°から45°であるとよい。
なお、前記実施形態のように、ドリルねじ1を使用して部材同士を接合すると、(1)単に、ドリルねじを用いて部材同士を接合するので、特別な技能を有さずとも、確実で強度の高い鉄骨造の接合構造を、簡便でかつ作業性よく容易に施工して、鋼製部材相互を接合することができる。
(2)先端にドリル刃10を加工したドリルねじ1により、重合される部材12に孔(貫通孔)をあけ、ねじ部3によって被接合鋼材12(または11を含む)をタッピングして接合し、一体化することで、溶接のような作業時の管理や溶接後の防錆補修が不要となり、ボルトやリベットのように部材の両側から作業する必要が無くなり、高力ボルトのように摩擦力のための表面処理を必要としないため、作業効率が向上するとともに、ガタ等を誘発するすき間が生ぜず、剛性の高い接合を構築できる。
このようなドリルねじ1を使用して接合すると、接合構造が簡素になり、鋼材相互の接合コストが安価で工期を短縮することができるため、建築施工コストの安価な建築物を構築することができる。
本発明を実施する場合、接合する部材は、板状部相互である必要があるが、円形あるいは矩形の閉鎖断面部材(鋼管柱、梁)の板状部と、これに重合される断面円弧状あるいは平板状の鋼材とをドリルねじ1を用いて、鋼材の外側(ワンサイド側)から接合する接合構造にも適用することができる。
本発明を実施する場合、接合される2つの接合部材の板状部に接合用の孔を設けない形態であると、部材の接合部の加工費用が一切不要になるので、格段に安くすることができる。また、ドリルねじ1による接合は、工場においては、各種の設備がある場合が多いので接合作業が容易であるが、現場においては、柱等の建て込まれて位置固定された部材に、他の接合すべき部材を重合してドリルねじ1により接合させるようにするのが好ましい。
また、本発明を実施場合、図示を省略するが、本発明の接合構造を、(1)H形断面の柱におけるフランジと、梁端部の縦端板との接合構造に適用してもよく、また、(2)柱側のガセットプレートと、梁のウェッブとの接合構造に適用してもよく、あるいは(3)柱側のガセットプレートとブレースとの接合構造に適用してもよく、(4)屋根骨組に用いる山形トラスを構成する傾斜上弦材と水平な下弦材との接合構造、またはこれらの間に介在されて接合される斜材との接合部に適用してもよく、(5)その他鉄骨部材相互の接合構造に適用してもよい。
本発明を実施する場合、図示を省略するが、柱と胴縁支持金具との接合、胴縁と胴縁支持金具との接合、または、屋根トラスと壁上縁材とを連結金物を介して接合する場合の屋根トラスと連結金物あるいは連結金物と壁上縁材との接合その他の鋼材相互の接合にドリルねじ1を使用して接合してもよい。
本発明を実施する場合、ドリルねじ1頭部側に位置して接合される鋼材11,12に設けられる先孔13の形状としては、ドリルねじ1の頭部5の外側面の一部または全部を嵌合させる形状としてもよい。
ドリルねじ1の頭部形状としては、円柱状の頭部とし、その上面側に回動工具係合用溝を設けるようにしてもよい。
また、ドリルねじ1の頭部形状としては、頭部の外側面上部を円柱状とし、これに接続する外側面下部をねじ軸部に接続する截頭半球状の形状としてもよい。
本発明を実施する場合、ドリルねじの頭部形状は回動工具係合部を有する形状であれば、適宜の形状でよい。
なお、前記のような接合方法によると、単に、ドリルねじの軸心を傾斜させるだけで、鋼材相互の接合部におけるドリルねじのせん断面積を増大させるように鋼材相互を接合することができ、鋼材相互のドリルねじを介した接合部の耐力および剛性を簡単な施工法により向上させることができる。また、単に、ドリルねじを傾斜して接合することにより、鋼材表面に対して垂直にドリルねじを配置する場合に比べて、ドリルねじのねじ部と鋼材の係合部を増大させることができるため、ドリルねじの引き抜き抵抗が増大するので接合部の耐力・剛性を向上させることができる。
また、ドリルねじ軸心の傾斜角にあわせ、ドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじを用いることで、ドリルねじ打ち込み時に過剰にトルクがかかった場合にも頭部首下での応力集中を緩和し、ドリルねじの頭飛び等の不具合を抑制できる。また、ドリルねじを傾斜させても、截頭円錐状部が鋼材に対して線タッチまたは面タッチして確実なストッパとなり、施工効率を向上させることができる。
本発明の接合構造を実施する場合、接合する金属材料としては、鋼材相互間に限定されることなく、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはその他の金属材料間の接合に適用してもよく、あるいは、鋼材とその他の金属材料の金属材間の接合構造に採用してもよい。また、これらの場合、ドリルねじをアルミニウム合金等の金属材料としてもよい。
本発明のドリルねじを用いた接合構造の一実施形態を示すものであって、(a)は一部縦断側面図、(b)はその鋼材接合部の横断面図、(c)は(a)の平面図である。 H形鋼材相互に渡って添板からなる鋼材を配置してドリルねじにより接合した本発明の接合構造を示す側面図である。 図2の平面図である。 従来のドリルねじを用いた接合構造の一実施形態を示すものであって、(a)は一部縦断側面図、(b)はその鋼材接合部の横断面図、(c)は(a)の平面図である。 ドリルねじを傾斜させた本発明の接合構造の説明図である。 ドリルねじを傾斜させない従来の接合構造の説明図である。 ドリルねじの一例を示すものであって、(a)正面図、(b)は側面図である。 (a)は従来のドリルねじを用いた接合構造のようにドリルねじを鋼材表面に対して垂直にねじ込んだ場合で、(b)は本発明のドリルねじを用いた接合構造のようにドリルねじを傾斜させてねじ込み配置した場合の梃子反力を説明するための説明図である。 下孔(先孔)の一例を示す縦断側面図である。 ドリルねじ頭部下部の形状をドリルねじ軸心の傾斜角にあわせ截頭円錐状部を設けたドリルねじとした本発明の接合構造の一部縦断面図である。
符号の説明
1 ドリルねじ
2 ドリル部
3 ドリルねじ部
4 脚部
5 フランジ部
5a 頭部
5b 截頭円錐状部
6 回動工具係合部
7 ドリル刃先端部
8 ねじ山
9 傾斜ガイド溝
10 ドリル刃
11 鋼材
12 鋼材
13 下孔(先孔)
14 梁
15 上添板
16 下添板
17 上フランジ
18 下フランジ
19 ウェッブ
20 縦添板

Claims (6)

  1. ドリルねじを複数の鋼材等の金属材に渡って配置することにより金属材を接合する接合構造において、重ね合わせた金属材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とするドリルねじを用いた金属材の接合構造。
  2. ドリルねじを複数の鋼材に渡って配置することにより鋼材を接合する接合構造において、重ね合わせた鋼材間の接合面の垂線に対して、ドリルねじ軸心を傾斜させて配置してドリルねじによる接合部のせん断断面積を増加させるようにし、かつドリルねじ軸心の傾斜角にあわせてドリルねじの頭部下部に截頭円錐状部を設けたドリルねじが用いられて接合され、さらに、ドリルねじにおけるドリル刃先の方向が異なる方向となるように少なくとも2本以上のドリルねじを2組以上配置し、ドリル刃先の方向が異なる一方のドリルねじの本数と他方の方向のドリルねじの本数を同じ本数としたことを特徴とするドリルねじを用いた金属材の接合構造。
  3. ドリルねじの刃先側に位置する鋼材に主に作用し、かつ前記重ね合わせてドリルねじにより接合された鋼材の接合面に平行な引張力(または圧縮力)の作用方向に対して、その引張力(または圧縮力)の作用方向と同方向または逆方向よりにドリル刃先が向くようにドリルねじを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の金属材の接合構造。
  4. 添板等の鋼材に、傾斜した下孔を設けたことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造。
  5. ドリルねじを傾斜させて鋼材を接合するに際して、接合する鋼材の支圧耐力の小さい方の鋼材の板厚T(mm)が、少なくとも下記式(1)で与えられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造。
    T≧{π・d/(68.2・cosθ)}・(τy/σy)・・・・(1)
    d:ドリルねじの呼び径(mm)
    τy:ドリルねじの降伏せん断応力(N/mm2
    σy:接合される2枚の鋼板のうち支圧耐力が小さい方の鋼材の降伏点(N/mm2
    s:ドリルねじのせん断断面積(mm2
    θ(°):応力伝達方向に対する垂線とドリルねじの軸線とのなす角(ドリルねじの倒れ角)
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のドリルねじを用いた金属材の接合構造を備えた構造物。
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