JP5540546B2 - 高力アルミニウム合金ボルトの製造方法 - Google Patents

高力アルミニウム合金ボルトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高強度でしかも長年月締結しても軸力低下の少ない7xxx系アルミニウム合金高力ボルトの製造方法に関する。
2xxx系、6xxx系、7xxx系等の展伸加工用アルミニウム合金は、特定の熱処理条件で溶体化処理(溶体化焼入処理の意)した後、時効処理(特に自然時効と断らない限り人工時効処理の意)を施すことによって高強度を付与することができる。例えば、7xxx系アルミニウム合金は、特定の条件で上記の溶体化+時効を施すことによって、2xxx系や6xxx系よりも高い引張強さ650MPa程度の高強度を付与することができるが、溶体化時の急冷(焼入れ)による歪が生じ易いので、所定の熱処理を施した後に所要の成形を加えることが行われる。
例えば、特許文献1には、Pb、Biを含有する切削性の良好な2xxx系アルミニウム合金押出材に熱処理を施したT6材を、所定の長さに切断後、鍛造加工、転造加工して、直径8mm、ピッチ1.25mmのボルトを製造する方法が開示されている。
特開平7−300647号公報
前記2xxx系アルミニウム合金のT6材の引張強さは高々500MPaであって、T6材を鍛造加工、転造加工する装置も大設備とする必要はない。
ところで近時、橋梁等に使用する床版も大型長尺材化し、それに伴って床版結合用のボルトも大径化すると共に、更に高強度化が求められている。このような高強度アルミニウム合金としては、7xxx系アルミニウム合金が知られており、Zn含有量が8質量%を超えるような7xxx系アルミニウム合金熱処理材は時効処理により容易に引張強さ720MPaを超える強度が付与できる。しかしながら、このように高強度のアルミニウム合金で呼び径12mmφ以上の大径ボルトを鍛造のような塑性加工を施して製造するために、大型の設備を必要とする上、塑性変形量の大きい頭部の鍛造成形時に、頭部周囲に微小割れが発生する虞が大きいという問題があった。
また、とくに呼び径12mmφ以上のボルトでは大きな初期応力で締め付けても、長期に亘って軸力が低下しないことが重要である。
そこで、本発明の目的は、大型の塑性加工設備を必要とせず、微小割れ発生の虞もなく、大きな初期応力でも長期に亘って軸力低下が小さい高力アルミニウム合金ボルトの製造方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明によれば、Zn含有量8質量%以上の7xxx系アルミニウム合金から成り、溶体化し時効した後の引張強さが720MPa以上であり、呼び径が12mmφ以上の高力アルミニウム合金ボルトを製造する方法において、
鍛造により成形した頭部および胴部から成るボルト中間体の頭部裏面から胴部外周の、溶体化処理時に再結晶粒が短径100μm以上に粗粒化した表層、または該粗粒化する表層を、切削により除去することを特徴とする高力アルミニウム合金ボルトの製造方法。
本発明によれば、鍛造により成形した頭部および胴部から成るボルト中間体の頭部裏面から胴部外周の、溶体化処理時に再結晶粒が短径100μm以上に粗粒化した、または該粗粒化する表層を、切削により除去することにより、大型の塑性加工設備を必要とせず、微小割れ発生の虞もなく、大きな初期応力でも長期に亘って軸力低下が小さい高力アルミニウム合金ボルトを製造することができる。特に、表層の結晶粒度はボルトの締め付け軸力低下に直結するクリープ特性に大きく影響するため、表層の粗大粒を除去した本発明の高力ボルトは大きな初期応力を負荷した状態で長期に亘って軸力の低下が抑制される。
本発明の高力アルミニウム合金ボルトは、例えば、河川、道路等のアルミニウム橋桁、あるいはアルミニウム塔の骨組み等を鉄ボルトを使用せずに確実に締結でき、長期に亘って十分な締結力を保持することが可能であり、使用後のスクラップを再生使用する場合も鉄ボルトを丁寧に取り除く手間が省け、スクラップの溶解において鉄ボルトからのFe不純物の混入が抑制され、再生アルミニウム合金材の純度を極度に低下させることなく再使用することができる等の諸効果を有する。
図1は、本発明の種々の成形段階における被成形材料の形状を示す断面図である。 図2は、本発明の典型的な製造工程のフローチャートである。 図3は、本発明の実施例で作製したボルト中間体の表層除去前の各部位(1)〜(5)の断面顕微鏡写真である。
本発明は、引張強さ720MPa以上、呼び径12mmφ以上の高力大径ボルトとするために、Zn含有量を8質量%以上として引張強さを確保し、短径100μm以上の粗大な結晶粒を表層から排除してクリープ特性を高め長期に亘って大きな軸力を確保した。
Znを8質量%以上含有する7xxx系アルミニウム合金の組成と引張強さ720MPa以上を付与する熱処理について説明する。
本発明において、7xxx系アルミニウム合金とはJIS規格およびAA規格を含む組成であるが、いずれの規格の範囲内に限定しない。JISでは7075、7N01が規定されており、7075のZn含有量は5.1〜6.1質量%、7N01のZn含有量は4.0〜5.0質量%であって、7075のT6材で引張強さ610MPa程度であるから、近時の大型床版等のボルトとしては締結力が不十分である。一方、AA規格には、粉末合金であるが7034、7036等が規定されており、7034のZn含有量は11.0〜12.0質量%、7036のZn含有量は8.4〜9.4質量%であって、7034のT6材で引張強さ900MPa、7036のT6材で引張強さ800MPa程度が得られる。したがって、本発明においてZn含有量の上限は12質量%であれば十分である。
Cu、Mgの含有量はJIS規格あるいはAA規格の7xxx系に規定されている程度、例えばCuは0.8〜2.8質量%、Mgは1.4〜3.0質量%であってよく、特に限定する必要はない。
Si、Feが各0.5質量%以下、Mnは1.0質量%以下、Tiは0.2質量%以下、Bは0.05質量%以下、Cr、Zrは前記7xxx系の各規格に規定されている程度、それぞれ含有してよい。その他の元素は、各0.5質量%以下であれば本発明の効果を妨げない。
720MPa以上の引張強さを得るための熱処理条件は、例えば460℃×1時間以上加熱保持して焼入れする溶体化処理後、120℃に24時間加熱保持して(T6)時効処理(=人工時効処理)する。耐SCC性を高める目的で、過時効とすることもできる。また、上記のT6処理後に180℃に10時間以上保持した後、再度120℃に24時間以上保持(T77)して強度と耐SCC性を同時に向上させることもできる。
図1に、ボルト素材と各成形段階での加工材の形状を示す。
図1(1)に示すように、ボルト素材100は押出材または鋳造材であり、単純な円柱形である。ただし、他の状態・形状であってもよく、特に限定しない。
図1(4)に示すように、完成ボルト1は、頭部2とそれに連続する胴部3とから成る。胴部3は首下部31とねじ部32とから成る。dはねじ部32の呼び径であり、ねじ山の直径である。本発明は呼び径d≧12mmφのボルトを特に適用対象とする。d3はねじ部32に転造でねじを形成する場合の削除後の直径であって、ほぼねじの有効径程度である。33はねじ部32に形成されたねじであり、その概略形状を示す。34は座金(図示せず)が当たる台座である。
素材100からボルト1までの成形工程は下記のとおりである。
図1(2)に示すように、素材100を、頭部鍛造型11、胴部成形型12、胴部成形台兼押出棒13から成る鍛造型10内にセットして、上下から成形力Pを負荷することにより、ボルト中間体1xに成形する。成形完了後、押出棒13を下方から押し上げてボルト中間体1xを鍛造型10から取り出す。熱間鍛造の場合は、素材100として押出材または鋳造材をそのまま用いるか、冷間鍛造の場合は、O処理を施してから用いる。ただし、これらを限定する必要はない。
次いで、図1(3)に示すように、ボルト中間体1xの頭部2は裏面2Bを除いて完成ボルト1の頭部2と同寸法に成型されており、ボルト中間体1xの胴部は素材100の径d0に対して成形により若干太い径d1になっている。溶体化処理の前または後に、ボルト中間体1xの頭部裏面2Bおよび胴部表層3Aの溶体化時粗粒化部Cを切削により除去する。従って図1(2)で得られたボルト中間体1xの頭部の高さ14は、図1(3)で図示される頭部2の高さと、切削除去される溶体化時粗粒化部Cとの合計値である。表層切削除去代Cは、予め予備試行により実測しておく。素材100を熱間鍛造したボルト中間体1xの場合、除去代Cは概ね1mm程度であり、冷間鍛造の場合は熱間鍛造の場合と同等かやや厚くなる程度である。これにより胴部は径d1からd2に減径している。
次に、図1(4)に示すように、胴部3のねじ部32にねじ33を形成する。ねじを切削により形成する場合は、上記表層の切削除去と同じ工程でねじ切削まで行なっても良いし、上記表層の切削除去とは別の工程として行なっても良い。ねじを転造によって形成する場合は、ねじ有効径d3まで切削した後に転造する。ねじ形成後に時効処理を行なう。転造によりねじ形成する場合は、時効処理を先に行なってもよい。
本発明の製造方法は、溶体化の後または前に、溶体化により粗粒化したまたは粗粒化する表層を切削により除去する点が特徴である。
本発明の一実施形態においては、溶体化の後に、粗粒化した表層を切削除去する典型的な形態として、前記鍛造後、
前記溶体化を行なった後に、
(A1)前記表層の切削除去と前記胴部の切削によるねじ形成とを1工程でまたは順次別工程で行なった後に、前記時効を行うか、または
(A2)前記表層の切削除去を行なった後に、前記胴部の転造によるねじ形成と前記時効とをこの順でまたは逆順で行う。
本発明の別の一実施形態においては、溶体化の前に、粗粒化する表層を切削除去する典型的な形態として、前記鍛造後、
(B1)前記表層の切削除去と前記胴部の切削によるねじ形成とを1工程でまたは順次別工程で行なった後に、前記溶体化を行い、その後、前記時効を行うか、または
(B2)前記表層の切削除去を行なった後に、前記溶体化を行い、その後、前記胴部の転造によるねじ形成と前記時効とをこの順でまたは逆順で行う。
粗粒化したまたは粗粒化する表層の切削除去代は、行う製造工程について予め予備試行して実測により求めることができる。
図2に、上記(A1)(A2)(B1)(B2)の各形態の工程フローチャートをまとめて示す。
図2(A1)の形態においては、鍛造後に鍛造型10から取り出されたボルト中間体1xを溶体化(溶体化焼入れ)する。温度は組成によって異なるが、後述する条件で保持後焼き入れる。水焼入れするのが好ましい。
溶体化されたボルト中間体1xは、頭部2の裏面2Bとこれに続く胴部3の表層Cを切削により除去する。前述したように、除去代Cは、素材100を熱間鍛造したボルト中間体1xの場合は約1mm程度、冷間鍛造の場合は熱間鍛造の場合と同等かやや厚くなる程度である。
この表層Cの切削除去した後または表層Cの切削除去と同時に、ねじ部32にねじ切削してねじ33を形成する。次いで、後述の条件で時効(人工時効)を施す。
図2(A2)の形態においては、図2(A1)の形態と同様に、ボルト中間体1xを溶体化した後、表層Cを切削除去する。
この表層Cを切削除去した後または表層Cの切削除去と同時に、ねじ部32に相当する部分をねじ有効径d3まで切削した後、転造してねじ33を形成する。次いで、後述の条件で時効を施す。先に時効を行なった後に、ねじ転造を行なってもよい。
図2(B1)の形態においては、鍛造後取り出されたボルト中間体1xの頭部2の裏面2Bとこれに続く胴部3の表層Cを切削により除去する。除去代Cは前記と同様である。
この表層Cを切削除去した後または表層Cの切削除去と同時に、ねじ部32にねじ切削してねじ33を形成する。次いで、溶体化した後、後述の条件で時効を施す。
図2(B2)の形態においては、図2(B1)の形態と同様に、鍛造後取り出されたボルト中間体1xの頭部2の裏面2Bとこれに続く胴部3の表層Cを切削により除去する。除去代Cは前記と同様である。
この表層Cを切削除去した後または表層Cの切削除去と同時に、ねじ部32に相当する部分をねじ有効径d3まで切削した後、溶体化し、転造してねじ33を形成する。次いで、後述の条件で時効を施す。先に時効を行なった後に、ねじ転造を行なってもよい。
更に、他の実施形態として、溶体化と時効を行なった後に、表層Cを切削除去し、その後、胴部に切削または転造によりねじ形成してもよい。この場合、時効による歪を除去できる。
以下、ボルト鍛造に供する素材と、各処理工程を詳細に説明する。
鍛造用の素材100は、所定組成の鋳造材、または所定組成のビレットを押出加工して作成する押出材が供される。押出加工は公知の技術でよい。押出材は鋳造材に比較して押出加工を受けるので伸率が高く鍛造に適している。押出材は、例えばZn9.4質量%、Mg3.0質量%、Cu1.6質量%、Zr0.15質量%、残部Alおよび不可避不純物から成る合金であり、T1(押出後自然時効)状態で引張強さ460〜490MPa、0.2%耐力で330〜350MPa、伸率13〜15%程度である。また、O材で引張強さ200MPa、0.2%耐力で100MPa、伸率23%程度であって引張強さがT6材(表3)と較べると相当に低い。
上記の如く引張強さが特に高い訳でなく、鍛造に際して素材100の温度は室温でも良いが、鍛造素材を300〜450℃に加熱し熱間鍛造すると、鍛造後型外に取出すときに胴部成形台兼押抜棒13に掛ける押抜力が小さくて済む効果がある。前記押抜力が小さくて済む理由は、胴部成形型10の鉄製鋳型と素材100のアルミニウムとの熱膨張差と考えられる。また、該熱間鍛造は室温鍛造と較べて鍛造後のボルト中間体1xの残留歪が開放され易く、室温鍛造の場合と較べてボルト中間体1xのその後の溶体化処理で発生する粗大再結晶粒の発生領域が狭くなり、素材の切削除去量が少なくなって好ましい。熱間鍛造後溶体化処理の場合は切削代が1mmもあれば十分であるが、冷間鍛造後溶体化処理の場合は熱間鍛造後溶体化処理の場合と同等かやや厚めが目標となる。
頭部を鍛造した後溶体化焼入処理する。溶体化焼入処理後に頭部を鍛造する工程は、溶体化焼入処理と頭部鍛造までの時間において、実操業では2日、あるいは5日と相当にばらつきがあり、その間に自然時効が進行して強度が変化し、鍛造条件が一定しない。溶体化処理の条件は素材100の組成で変わるが、Zn含有量が8〜12質量%の合金では460℃×1時間以上加熱保持すればよいがこの値に限定されるものではなく、十分に固溶体化させればよい。焼入れは水焼入れが好ましい。頭部鍛造後のボルト中間体1xは爾後の溶体化処理で再結晶するが、ボルト中間体1xは頭部2の鍛造および胴部3の成形で変形量が異なり、頭部2の裏面2Bおよび胴部3の表層部Cの変形量は2〜5%程度と想定され、従ってその部分が溶体化処理で粗大に再結晶し、長径が1〜2mm程度、短径で100〜300μm程度に粗大再結晶化する。この粗大再結晶の集合組織は、鍛造および溶体化処理等の諸条件で大きく変化するが、例えば熱間鍛造で厚さ0.6から0.9mmである。
図1(3)は溶体化後にボルト中間体1xの頭部2の裏面2Bと頭部2に続く胴部3の切削除去する表層部Cを示す説明図である。この溶体化後の切削はボルト中間体1xに発生した粗大再結晶粒を除去するものである。この粗大再結晶粒の有無によってボルト軸力低下率に相当の開きが生じる。本発明はこの粗大再結晶粒が存在しないボルトであることが技術的中核になる。
一方、図2の(B1)および(B2)の形態では、溶体化を鍛造後のボルト中間体1xのボルト頭部2の裏面2Bと胴部3の外周面を切削除去した後に施す。この切削除去は鍛造後の溶体化で粗大再結晶粒の発生が予測される箇所であって、この部分を溶体化前に除去しておけば溶体化しても粗大再結晶粒は発生しない。切削除去代は前もって鍛造後の溶体化で発生する粗大再結晶粒を測定しておけばよい。これは溶体化で粗大再結晶粒が発生する歪が残留している箇所を取り除くことと同じである。
粗大再結晶粒が存在しないボルトの軸力低下が少ない理由は以下のように考えられる。
すなわち、結晶粒界は結晶内部と較べ結晶配列が不規則で脆弱であると考えられ、ボルト表面に粗大再結晶粒があると、ボルトを締め付け軸力を負荷したときに微細結晶粒の場合と比べて応力の分散箇所が少なく数少ない粗大再結晶粒界に集中するためにクリープ強度にも影響し、長期の負荷で破断の起点となり軸力低下をきたすものと考えられる。従って、応力が分散せず数少ない粒界に集中するような粗大再結晶粒を面削除去すれば、応力が分散する箇所の多い微細結晶粒のみとなり、結果として軸力低下率が小さくなるものと考えられる。
ボルト中間体1xの表層Cの切削除去代は厚さにして熱間鍛造の場合は1mmあれば十分で、0.7mm未満では一部に粗大再結晶粒が残る虞があるが、粗大再結晶粒を除去すればよく、除去代の下限を限定する必要はない。上限は限定するものではないが、厚く除去すれば素材の無駄となる。冷間鍛造の場合は熱間鍛造の場合より除去代は同等かやや厚めが目安になる。
ねじ部32相当箇所は、引抜き等の加工を施して減径し、次いでねじ部32の転造または切削によりねじ33を形成してもよい。
溶体化処理後の時効処理(人工時効処理)は、頭部鍛造し溶体化処理後であれば任意の工程で行なうことができる。すなわち、該人工時効処理で高力化したとしても、前記の面削、胴部の成形加工、ねじ部加工のいずれの工程も支障をきたさず加工できるからである。
なお、時効処理は前記したT6、あるいはT77等の過時効処理でよく、いずれも720MPaの引張強さが得られる。人工時効処理の条件は実操業では種々工夫されているのでそれに従えばよく、720MPa 以上を付与すればよい。従ってT6、T77に限定するものではない。
具体的に時効処理の実施時期を例示すれば、頭部鍛造し溶体化処理後ボルト中間体1xの表層除去前、あるいは、表層除去後胴部3のねじ有効径d3加工前、あるいは、ねじ有効径d3加工後ねじ部32加工前、あるいは、ねじ部32加工後等のいずれでもよい。
表1に示す組成の均質化熱処理した合金ビレットを押出加工して、外径d0=22mmφ、長さ100mmの図1(1)に示す素材100を得た。押出条件を表2に示す。
次に図1(2)に示す鍛造金型10を用い、表2の素材番号2−1、2−2の素材を用い、金型温度室温、素材温度310℃にて、400tプレスで鍛造し、M20寸法の頭部を有するボルト中間体1xを得た。
次に、ボルト中間体1xを溶体化処理し、時効処理して、引張強さ、0.2%耐力、伸びを測定した。溶体化処理条件と測定結果をまとめて表3に示す。
一方、溶体化処理後の試料番号3−1、3−2の表層の粗大結晶粒を測定した。試料番号3−2の測定した写真の一部を図3に示す。図3の右上に示す観察位置(1)〜(5)が写真(1)〜(5)に対応する。(1)は図1(3)に示すボルト中間体1xの頭部2の厚さの1/2の位置、(2)は頭部2の裏面2B外角部の3mm内側、(3)は頭部2と胴部3の交わるコーナー部、(4)は頭部2から10mm下の胴部、(5)は胴部長さの1/2の位置である。なお、頭部外周の下部周縁には鍛造時にバリが生ずる。断面観察用サンプルの研磨時にバリが邪魔になるため、バリ部分を含む下部周縁を切削除去してから用いた。図3の右上に観察位置をスケッチで示す。写真(2)にはこの削除部分が現れている。
写真観察によれば、塑性変形を受けた表層は、内部と比較して粗大に再結晶していることが判る。試料番号3−1も試料番号3−2と略同様の組織を示していた。
頭部2の裏面2Bと頭部2に続く胴部3に掛けて短径の長さ(粗大再結晶粒単体の厚さ部位)が100〜300μmで粗大再結晶粒が厚さ(粗大再結晶粒の集合層)にして300〜700μm存在していることが判る。粗大結晶粒の測定結果を表4に示す。
次いで、頭部鍛造後溶体化処理した表3の試料番号3−1、3−2のボルト中間体1xを頭部2の裏面2Bと頭部2に続く胴部3の表層Cを厚さにして1mm切削して粗大結晶粒集合層を除去した。切削除去後のサンプル検査の結果、短径で100μm以上の粗大再結晶粒は存在しなかった。
次いで、図1(4)に示すように、胴部3のねじ相当部32をねじ有効径d3まで切削減径し、転造によりねじを形成し、JIS規格M20寸法のボルト1を作製した。別途同材でナットおよび平座金を同じくT6処理して作製した。ボルト1の寸法は、頭部2が13mm、頭部2の平面六角部(図示せず)の対角線長径37mm、平行部間隙32mm、台座34の直径29mm、胴部3の長さ70mmである。
一方、比較例として、表層Cの粗大結晶粒集合層を切削除去しない以外は上記と同様にして試料を用意した。
次にボルト1とナットおよび平座金を用い、表3に示す0.2%耐力の85%の締結力で締め、ボルト1の表面に貼付したひずみゲージで軸力低下率を測定した。結果を表5に示す。参考例として、試料番号5−5に、JIS7075のT6処理したボルト(引張強さ:661MPa、0.2%耐力:611MPa、伸び:11.0%)についても同様に軸力低下率を測定した結果も示す。
表5の結果より、本発明方法によって製造されたZnを8質量%以上含有するボルト頭部を鍛造成形し、溶体化処理後外周切削により表層Cの粗大晶を除去したボルトは、相当に大きな締付力で締め付けても試料番号5−1、5−3に示す如く、軸力残存率%が100日後で99.0%(試料番号5−1)と96.6%(試料番号5−3)、350日後で98.9%(試料番号5−1)と96.2%(試料番号5−3)であって、軸力残存率が大きく優れていることがわかる。
一方、ボルト頭部鍛造成形後表層Cを切削除去していないボルト(試料番号5−2、5−4)は、軸力残存率が小さく、長期の締結治具には向かないことがわかる。
参考として、JIS7075の面削無しで実施例1記載の手順で作成したボルトの減衰率を示す。350日後の軸力減衰率%が98.7%であって、本発明にかかる高力ボルトは7075と同程度の軸力低下率であることが判る。7075は他の試料に比べて引張強度および0.2%耐力が低く、0.2%耐力の85%で締結したときに負荷が小さいため、軸力低下率が小さい。本発明の方法により表層Cを除去することにより、7075よりも高強度化し、遥かに大きな締結力を負荷しても、7075並みの軸力低下率が確保できた。
本発明によれば、大型の塑性加工設備を必要とせず、微小割れ発生の虞もなく、大きな初期応力でも長期に亘って軸力低下が小さい高力アルミニウム合金ボルトの製造方法が提供される。

Claims (2)

  1. Zn含有量8質量%以上の7xxx系アルミニウム合金から成り、溶体化水焼入れ処理し時効した後の引張強さが720MPa以上であり、呼び径が12mmφ以上の高力アルミニウム合金ボルトを製造する方法であり、
    鍛造により成形した頭部および胴部から成るボルト中間体の頭部裏面から胴部外周の、溶体化水焼入れ処理時に再結晶粒が短径100μm以上に粗粒化した表層を、切削により除去する製造方法において、
    記鍛造後、前記溶体化水焼入れ処理を行なった後に、
    (A1)前記表層の切削除去と前記胴部の切削によるねじ形成とを1工程でまたは順次別工程で行なった後に、前記時効を行うか、または
    (A2)前記表層の切削除去を行なった後に、前記胴部の転造によるねじ形成と前記時効とをこの順でまたは逆順で行う
    ことを特徴とする高力アルミニウム合金ボルトの製造方法。
  2. Zn含有量8質量%以上の7xxx系アルミニウム合金から成り、溶体化水焼入れ処理し時効した後の引張強さが720MPa以上であり、呼び径が12mmφ以上の高力アルミニウム合金ボルトを製造する方法であり、
    鍛造により成形した頭部および胴部から成るボルト中間体の頭部裏面から胴部外周の、溶体化水焼入れ処理時に再結晶粒が短径100μm以上に粗粒化する表層を、切削により除去する製造方法において、
    記鍛造後、
    (B1)前記表層の切削除去と前記胴部の切削によるねじ形成とを1工程でまたは順次別工程で行なった後に、前記溶体化水焼入れ処理を行い、その後、前記時効を行うか、または
    (B2)前記表層の切削除去を行なった後に、前記溶体化水焼入れ処理を行い、その後、前記胴部の転造によるねじ形成と前記時効とをこの順でまたは逆順で行う
    ことを特徴とする高力アルミニウム合金ボルトの製造方法。
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