JP4910217B2 - 盤ぶくれ防止杭 - Google Patents

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本発明は、盤ぶくれ防止のために打設される杭の地中形状、構造に関する。
被圧地下水位が高い地盤での掘削工事において、掘削底面の安定性確保、すなわち盤ぶくれ及びボイリング対策が大きな課題となっていた。
図3は、従来の中間杭を用いた掘削における盤ぶくれの模式図で、(a)は平面図、(b)は断面図である。図に示すように、従来は、土留め壁4、5の先端が掘削底面Aの下方の不透水層(難透水層)地盤1に到達させて建造物構築領域を囲繞し、所用間隔で中間杭9を不透水層(難透水層)地盤1まで打ち込んで掘削を行っていた。掘削の進行に伴い、被圧滞水層地盤2の揚圧力U(矢印)により不透水層(難透水層)地盤1が盤ぶくれを起こし、掘削底面Aと共に中間杭9、地上の覆工板11までを押し上げる事故を生じていた。
このような問題を解決するため、特許文献1は、前記中間杭9を鋼製杭材の周囲にモルタルまたはコンクリートを一体化した盤ぶくれ防止杭とし、不透水層(難透水層)地盤1を貫通すると共に被圧滞水層地盤2の所要深さまで貫入させ、周辺地盤との摩擦力により掘削底面Aの不透水層(難透水層)地盤1が盤ぶくれを防止する発明であった。
しかしながら、この工法では、不透水層(難透水層)地盤1の強度が比較的大きく、盤ぶくれ防止杭と地盤間の周面摩擦が所要の大きさを得られる場合でないと実施できない欠点があった。
特許文献2は、掘削底面Aに当たる不透水層(難透水層)地盤1の部分に所定厚さの改良固結地盤体を造成し、その上で改良固結地盤体を貫通し被圧滞水層地盤2まで貫通する対策杭を打設し、被圧滞水層地盤3の強度が小さい場合でも盤ぶくれを防止する発明であった。
しかしながら、この工法では掘削底面の地盤を全面改良しなければならず、コストが嵩むため、経済性から採用が極めて難しい問題があった。
特開平11−181806号公報(第2、3頁、第1図) 特開2003−171949号公報(第2、3頁、第1図)
前記の問題を解決するため、本発明は掘削底面が軟弱な不透水層(難透水層)地盤であっても盤ぶくれを防止することができ、且つ経済性に優れた構造の盤ぶくれ防止杭を提供することを課題とする。
本発明による盤ぶくれ防止杭は、土留め壁で囲繞された地下建築物の構築領域内に所定の間隔で打設される地中杭であって、地表面から被圧滞水層地盤の所要深さまで貫入する長さで、被圧滞水層地盤の上方に位置する不透水層(難透水層)地盤部分及び不透水層(難透水層)地盤部分から下方の被圧滞水層地盤部分まで、柱状に地盤改良を行い地中杭と一体に形成した拡張部(10b、10c)が設けられ前記被圧滞水層地盤部分の拡張部(10c)の径が、前記不透水層(難透水層)地盤部分の拡張部(10b)の径より大きく形成され、該拡張部(10b、10c)の杭外周面に生じる摩擦力及び拡張部(10c)の上面にかかる前記不透水層(難透水層)地盤部分のせん断抗力による支圧抵抗により、被圧滞水層からの揚圧力による掘削底面の盤ぶくれを抑えることを特徴とする。
また、前記拡張部は、地質強度に応じた所望の盤ぶくれ抵抗力となるように、不透水層(難透水層)地盤部分又は不透水層(難透水層)地盤部分から下方の杭径及び杭軸方向の長さを設定することを特徴とする。
本発明の盤ぶくれ防止杭は、不透水層(難透水層)地盤部分または不透水層(難透水層)地盤部分から下方の被圧滞水層地盤部分に拡張部を備えることから、被圧滞水層地盤からの揚圧力に対抗する所定の周面摩擦力を確保することができる。
このため、従来の改良固結地盤体の施工に比較して経済性に優れ、さらに従来の盤ぶくれ防止杭に較べ杭の打設本数を減らすことができる。
また、拡張部杭、拡張部杭長およびその強度を適用地盤の地質構成に合わせて自由に設計・施工することができるため、適用範囲を拡大することができる。
以下、本発明の盤ぶくれ防止杭の実施の形態を図に基いて説明する。
図1は、本発明の盤ぶくれ防止杭の形態を示し、(a)は第1の形態、(b)は第2の形態、(c)は第3の形態を示す断面図である。
図1に示す実施の形態において、地表面20の地下は互層地盤となっており、不透水層(難透水層)地盤1の下に砂質土などの被圧滞水層地盤2が位置している場合を示す。
4、5は地下建築物構築領域を囲繞するために被圧滞水層地盤2まで根入れされた土留め壁である。図では、切梁6で土留め壁4、5を支保しながら掘削底面Aまで構築領域の掘削をした状態を示している。
図1(a)に示す本発明の盤ぶくれ防止杭10は、地表面20から被圧滞水層地盤2まで安定液を用いて削孔し、不透水層(難透水層)地盤1部分から下方の被圧滞水層地盤2までの削孔径を拡張し、安定液と置き換えてコンクリートまたはモルタルを注入し柱状に地盤改良を行い、削孔の中心に鋼製杭材8を地表から削孔低まで挿入建て込み硬化させ、地中杭と一体に形成した拡張部10b、10cを不透水層(難透水層)地盤1及び被圧滞水層地盤2に形成したものである。
本発明の拡張部は拡張されていないコンクリート・モルタル杭10a部分の3〜4倍の径(最大3000mm)とする。尚、この実施の形態では、不透水層(難透水層)地盤1部分から下方の被圧滞水層地盤2まで連続して拡張部10b、10cを形成したが、拡張部10bと間隔を空けて拡張部10cを杭底近傍のみに設けても良い。
図1(b)の実施の形態は、地表面20から被圧滞水層地盤2まで安定液を用いて削孔し、不透水層(難透水層)地盤1部分のみ削孔径を拡張し、安定液と置き換えてコンクリートまたはモルタルを注入し柱状に地盤改良を行い、削孔の中心に鋼製杭材8を地表から削孔低まで挿入建て込み硬化させ、地中杭と一体に形成した拡張部10bを不透水層(難透水層)地盤1に形成したものである。
すなわち、被圧滞水層地盤2に貫入している部分は、通常の削孔径のコンクリート・モルタル杭10aとしたものである。このため被圧滞水層地盤2への貫入長を図1(a)に示した第1の実施の形態より長くしている。
図1(c)の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、拡張部10b、10cを不透水層(難透水層)地盤1及び被圧滞水層地盤2に形成しているが、被圧滞水層地盤2に形成された拡張部10cの径を不透水層(難透水層)地盤1の拡張部10bよりさらに大きくし、被圧滞水層地盤2における周辺地盤との周面摩擦力を高めたものである。この例では、盤ぶくれ防止杭10の長さが図1(a)、(b)に対し短く、被圧滞水層地盤2への貫入長も短くすることができる。
図1において、盤ぶくれ防止杭10は1本のみ図示しているが、実際は建築物構築領域の面積に対応して所定間隔ごとに打設される。(図2参照)
図1において、符号11は盤ぶくれ防止杭10を中間杭として仮設された覆工板、aは掘削空間である。図において掘削空間aに露出した盤ぶくれ防止杭10のコンクリート・モルタル杭10aは、周囲のコンクリート又はモルタルが剥がされ鋼製杭材8が露出された状態を示している。
図2は、本発明の盤ぶくれ防止杭を用いた掘削工事の実施例を示し、(a)は建築物構築領域の平面図、(b)は建築物構築領域の断面図である。
図2(a)に示すように、建築物構築領域は鋼矢板などの土留め壁4、5が掘削底面より深い地中位置まで根入れされ周辺地盤と区画し、建築物構築領域の面積に応じて所定間隔で本発明の盤ぶくれ防止杭10が打設される。
図に示すように、盤ぶくれ防止杭10は、中心にH型鋼の鋼製杭材8が挿入され、周囲にコンクリート又はモルタルが充填固化されており、掘削底面までは通常の中間杭と同様の杭径に形成されたコンクリート・モルタル杭10aとなっているが、掘削底面の不透水層(難透水層)地盤1部分又はその下の被圧滞水層地盤2部分は、その3〜4倍の径に拡張された拡張部10b、10cに形成されている。
これらの拡張部10b、10cは、背景技術の項で説明した不透水層(難透水層)地盤1の全面に設けられた改良固結地盤体(背景技術の項参照)に対比すると、柱状の改良固結地盤体に該当すると共に、杭の周辺摩擦力により杭周辺の不透水層(難透水層)地盤1を被圧滞水層地盤2からの揚圧力に対抗させるアンカーの役割を果たす。
図2(b)は、(a)の断面図で、山留め壁4、5に腹起こし6bを介して切梁6で支保工しながら掘削底面Aまで掘削した状態を示す。
この実施例では、不透水層(難透水層)地盤1及び被圧滞水層地盤2に貫入された盤ぶくれ防止杭10は、拡張部10b、10cが形成されて、被圧滞水層地盤2からの揚圧力(上向きの矢印)に対抗する不透水層(難透水層)地盤1と拡張部10bの杭の周囲の周面摩擦力C1が盤ぶくれを抑止している。
拡張部10b、10cの杭の径は、公知の拡径用の掘削ドリルを用いて最大3000mmとすることができる。
尚、現場の地盤状況が悪く、盤ぶくれ防止杭10が図2(a)に示した所定間隔の打設のみでは効果が足りない(揚圧力に対抗できない)と判断される場合は、所定間隔を少なくして杭の本数を増加させ、或いは拡張部10b、10cが互いに重なり一体化するようにして効果を確保する。
本発明の盤ぶくれ防止杭の形態を示し、(a)は第1の形態、(b)は第2の形態、(c)は第3の形態を示す断面図である。 本発明の盤ぶくれ防止杭を用いた掘削工事の実施例を示し、(a)は建築物構築領域の平面図、(b)は建築物構築領域の断面図である。 従来の中間杭を用いた掘削における盤ぶくれの模式図で、(a)は平面図、(b)は断面図である。
符号の説明
1 不透水層(難透水層)地盤
2、3 被圧滞水層地盤
土留め壁
6 切梁
6b 腹起こし
8 鋼製杭材(H型鋼)
9 中間杭
10 盤ぶくれ防止杭
10a コンクリート・モルタル杭
10b 拡張部
10c 拡張部
11 覆工板
20 地表面

Claims (2)

  1. 土留め壁で囲繞された地下建築物の構築領域内に所定の間隔で打設される地中杭であって、
    地表面から被圧滞水層地盤の所要深さまで貫入する長さで、被圧滞水層地盤の上方に位置する不透水層(難透水層)地盤部分及び不透水層(難透水層)地盤部分から下方の被圧滞水層地盤部分まで、柱状に地盤改良を行い地中杭と一体に形成した拡張部(10b、10c)が設けられ
    前記被圧滞水層地盤部分の拡張部(10c)の径が、前記不透水層(難透水層)地盤部分の拡張部(10b)の径より大きく形成され、
    該拡張部(10b、10c)の杭外周面に生じる摩擦力及び拡張部(10c)の上面にかかる前記不透水層(難透水層)地盤部分のせん断抗力による支圧抵抗により、被圧滞水層からの揚圧力による掘削底面の盤ぶくれを抑えることを特徴とする盤ぶくれ防止杭。
  2. 前記拡張部は、地質強度に応じた所望の盤ぶくれ抵抗力となるように、不透水層(難透水層)地盤部分又は不透水層(難透水層)地盤部分から下方の杭径及び杭軸方向の長さを設定することを特徴とする請求項1記載の盤ぶくれ防止杭。
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