JP4908095B2 - 駆動系およびアクチュエータ - Google Patents

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Description

本発明は、駆動系およびアクチュエータに関する。
この種、駆動系の一部をなすアクチュエータとしては、たとえば、ボール螺子ナットと、ボール螺子ナットに回転自在に螺合される螺子軸とで構成される送り螺子機構である伝達部材と、螺子軸に連結されるロータを有するモータとを備えて構成されているものが知られ、たとえば、被駆動部材が車両におけるバネ上部材あるいはバネ下部材である場合には、駆動系はサスペンション装置とされる。
以下、アクチュエータについて詳しく説明すると、螺子軸の回転運動を螺子軸と螺子ナットと送り螺子機構によって螺子軸と螺子ナットとの軸方向の相対移動に変換することで、モータの発生するトルクを上記相対移動の抑制もしくは助勢に利用することが可能なようになっている。
また、モータは、PWM(Pulse Width Modulation)制御されて、発生する荷重(ダンピングフォース)を可変にすることが可能とされ、また、このアクチュエータにあっては、荷重の発生源をモータとしているので、上記螺子軸とボール螺子ナットとの相対運動における運動エネルギを電気エネルギに変換するエネルギ回生を行うことが可能である(たとえば、特許文献1参照)。
特開2003−343647号公報
ところで、上記アクチュエータにあっては、モータのロータは螺子軸に連結されるとともに、螺子軸は螺子ナットを介して回転自在に筒に連結される構成を採用していることから、ロータの機械的な共振周波数、すなわち、ロータの周方向振動における共振周波数は、下記の式(1)に示したように、ロータの慣性モーメントと、ロータに連結される部材の全体、この場合、主として螺子軸、トーションバーおよび筒の全体、における捩りバネ定数(周方向の捩り剛性)とによって決せられることになる。
Figure 0004908095
なお、式(1)中、fmはロータの機械的な共振周波数であり、Kはロータに連結される部材全体の捩りバネ定数、Iはロータの慣性モーメントをそれぞれ示している。
他方、モータをPWM制御する場合には、電気子の複数の巻線に流れる電流を制御することになるが、巻線へは電源電圧以上の電圧を印加することができない。そのため、巻線へ印加すべき電圧指令値が電源電圧を超える場合にはモータを正常には制御できない状態となる。
そして、このような状態においては、各巻線に流れる電流を制御することが困難であって、巻線に流れる電流が共振する現象が現れる。この巻線に流れる電流が共振する周波数、すなわち、モータの電気的な共振周波数は、下記の式(2)に示したように、アクチュエータのストローク速度に比例するロータの回転速度に応じて変化することになる。
Figure 0004908095
なお、式(2)中、feはモータの電気的な共振周波数であり、Rは巻線のレジスタンス、Lは巻線のインダクタンス、ωはロータの電気角速度をそれぞれ示している。
上記式(2)から理解できるように、モータの電気的な共振周波数は、ロータの回転速度の増加に伴って大きくなる性質を持っている。
したがって、従来のアクチュエータにあっては、上記したロータの機械的な共振周波数にロータの回転速度に応じて変化する電気的な共振周波数が近付くと発振するような振動モードとなり、結果、モータが発生するトルクのリップルが大きくなり、ストローク速度が安定せず振動的になってしまい、車両における乗心地を阻害してしまう事態を招来してしまう。このような現象は、図6に示すように、特に、アクチュエータのストロークを助勢する側には現れずにストロークを抑制する場合にのみ現れ、モータの電気的な共振周波数がロータの回転速度(アクチュエータのストローク速度)の上昇によってロータの機械的な共振周波数の近傍にまで大きくなると上記振動モードが現れることになり、さらにロータの回転速度(アクチュエータのストローク速度)が上昇すると、モータの電気的な共振周波数はロータの機械的な共振周波数を乗り越えて図中右方にシフトしてロータの機械的な共振周波数から遠ざかることとなり、この振動モードは発現しなくなる。
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、振動モードの発現を防止可能な駆動系およびアクチュエータを提供することである。
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における駆動系は、モータによって駆動される被駆動部材とモータのロータとの間に介装される伝達部材を介して被駆動部材にモータの動力を伝達する駆動系であって、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定の電気角速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されてなる。
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるアクチュエータは、直動部材と回転部材とを有し直動部材の直線運動を回転部材の回転運動に変換する運動変換機構と、回転部材に連結されるロータを有するモータとを備え、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定のストローク速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されてなる。
本発明の駆動系およびアクチュエータによれば、ロータの周方向振動における共振周波数が、モータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されているので、モータの電気的な共振周波数は、ロータの周方向振動における共振周波数より小さくなり、モータが発生するトルクのリップルが大きくなってモータの回転速度あるいはアクチュエータのストローク速度が安定せずに振動的になってしまう振動モードの発現を防止することができる。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における駆動系の一部をなすアクチュエータの概念図である。図2は、アクチュエータの制御装置のシステム図である。図3は、PWM回路を示す図である。図4は、アクチュエータの内部構成を示すブロック線図である。図5は、電圧制限円とd相およびq相の電圧指令値との関係を示す図である。
一実施の形態におけるアクチュエータは、図1に示すように、回転部材たる螺子軸1と直動部材たるボール螺子ナット2とを有してボール螺子ナット2の直線運動を螺子軸2の回転運動に変換する運動変換機構Hと、螺子軸1に連結されるロータRを有するモータMとを備えて構成されている。
詳しくは、螺子軸1は、ボール螺子ナット2に回転自在に螺合されるとともに、螺子軸1の図1中上端は、モータMのロータRに連結されている。したがって、螺子軸1とボール螺子ナット2が軸方向の直線相対運動を呈すると、回転部材である螺子軸1が回転運動を呈することになり、この螺子軸1の回転運動がモータMのロータRに伝達されることになり、運動変換機構Hは、この実施の形態の場合、送り螺子機構とされている。ここで、螺子軸1の回転速度を歯車機構等で構成される減速機を介して減速して上記螺子軸1の回転運動をロータRに伝達するようにしてもよい。
そして、図示しないが、ボール螺子ナット2は被駆動部材に連結され、この場合、被駆動部材は、モータMの駆動によって直動運動されることになる。したがって、本実施の形態においては、モータMの動力を図外の被駆動部材へ伝達する伝達部材は運動変換機構Hとされ、このアクチュエータと図示しない被駆動部材とで駆動系を構成している。
なお、上記螺子軸1とボール螺子ナット2が軸方向の直線相対運動を呈するときに、螺子軸1を回転不能として代わりにボール螺子ナット2を回転させるようにする場合には、このボール螺子ナット2の回転運動をモータMのロータRに伝達するようにしてもよい。また、伝達部材である運動変換機構Hは、上記したもの以外にも、ラックアンドピニオンのような機構とされてもよい。
そして、モータMは、この場合、筒状のフレーム10と、フレーム10の内周側に設けた電機子であるステータSと、フレーム10に回転自在に軸支されるロータRとを備え三相ブラシレスモータとして構成され、詳しくは、ステータSは、複数のティースを備えた環状のステータコア11と、各ティースに巻回されたU,V,W相の各相における巻線12とを備えており、他方のロータRは、螺子軸1の一端に連結されるシャフト13と、シャフト13の中間部外周に装着された駆動用磁石14とを備えている。
なお、駆動用磁石14は、駆動用磁石14を所定数の極数を実現できるようにブロック化してシャフト13の外周に接着されるか、環状に形成して分割着磁されてシャフト13の外周に嵌着される。
また、このモータMには、ロータRの回転角(電気角)θを検出するために、回転角センサ15が搭載されており、具体的にはたとえば、回転角センサ15は、シャフト13に設けたレゾルバコアとフレーム10に設けられるレゾルバコアに対向するレゾルバステータとで構成されればよく、他にも、光学式のエンコーダを採用してもよいし、ロータRにセンシング用磁石を設ける場合にはホール素子やMR素子等の磁気センサをフレーム10に設けるとした構成としてもよい。
上述のように、このアクチュエータにあっては、駆動源をモータMとしているので、モータMに電気エネルギを与えて駆動する場合には、螺子軸1を回転駆動させて螺子軸1とボール螺子ナット2とを積極的に相対直線運動させる、すなわち、ストロークさせることができ、アクチュエータとしての機能を発揮でき、図外のボール螺子ナット2に連結される被駆動部材を往復動させることができる。
また、モータMは、被駆動部材が外力によって強制的に動かされる場合には、螺子軸1から強制的に回転運動が入力され、誘導起電力や電源からの電力によって巻線12に電流が流れて磁界が形成されて電磁力が発生し、螺子軸1の回転運動を抑制するトルクを発生するので、螺子軸1とボール螺子ナット2の相対直線運動を抑制するように機能する。すなわち、この場合には、モータMが外部から入力される運動エネルギを回生して電気エネルギに変換して得られる電力によって、あるいは、この回生に加えて電源から供給される電力によって、発生するトルクで螺子軸1とボール螺子ナット2の相対直線運動を抑制することができる。
したがって、この駆動系では、モータMをアクチュエータとしてもジェネレータとしても機能させ得るので、上記螺子軸1とボール螺子ナット2の相対直線運動を抑制することもできる。
そして、上記モータMの巻線12に流れる電流を制御するために、具体的には、U,V,W相の巻線12は、制御装置20に接続され、このモータMは、制御装置20によって駆動制御される。
この制御装置20は、図2に示すように、基本的には、電気角速度ωおよび図外の被駆動部材の制御を司る図示しない上位の制御装置から入力されるトルク指令に基づいて各電流目標値id*,iq*を演算する電流目標値演算部26と、上記巻線12の三相のうち二相に流れる電流をdq変換してd相電流値およびq相電流値を演算する二相電流演算部21と、各電流目標値id*,iq*と上記d相およびq相の電流値id,iqとに基づいてd相電圧指令値Vdおよびq相電圧指令値Vqを演算する比例積分制御部22と、上記d相電圧指令値Vdおよびq相電圧指令値VqをU,V,Wの各相の電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換する三相変換演算部23と、モータMのU,V,Wのうち二相iu,ivに流れる電流値を検出する電流検出器24と、モータ駆動回路としてのPWM回路25とを備えて構成されている。
そして、この制御装置20は、電流目標値演算部26によって決定されるd相およびq相の各電流目標値id*,iq*と、二相電流演算部21の演算結果として得られるd相およびq相の電流値id,iqとのそれぞれの偏差εd,εqに基づいてモータMを比例積分制御する。なお、偏差を微分して得られる要素を追加して比例微分積分制御を行うようにしてもよい。
ここで、電流目標値演算部26は、上位の車両制御装置から出力されるトルク指令およびロータRの電気角速度ωに基づいてd相およびq相の電流目標値id*,iq*を所定の制御則に則って上記比例積分制御部22に出力するものであるが、この場合、電流目標値演算部26への出力としては、トルク指令としてではなくても、アクチュエータが発生すべき力指令の状態で出力し、電流目標値演算部26でその分の換算を行うようにしてもよい。また、制御装置20の電流目標値演算部26で被駆動部材の制御に必要な信号、たとえば、加速度や速度や変位を取り込み、この電流目標値演算部26で上位の制御装置と同様の演算を行うようにしてもよいことは勿論である。
上記電流目標値演算部26は、回転角センサ15から受け取るロータRの電気角θからロータRの電気角速度ωを演算するようにしているが、回転角センサ15に電気角速度ωを演算させる機能を持たせてもよいし、別途、ロータRの電気角θをロータRの電気角速度ωを演算する演算部を設けるようにしてもよい。
なお、上位の制御装置における被駆動部材の制御に必要となるアクチュエータの伸縮量、ストローク速度や伸縮加速度等については、回転角センサ15から得られる電気角θと螺子軸1のピッチ、減速比から演算すればよく、別途センサを設ける必要は無い。
また、この電流目標値演算部26は、基本的には、d相電流目標値を0としてq相電流目標値を演算するようになっているが、ロータの電気角速度ωが大きい場合に、d相電流目標値をマイナスの値に誘導して弱め界磁制御をするようにしてもよいことは無論である。
そして、電流検出器24としては、ホール素子や巻線等を用いた非接触型や、三相の巻線12のいずれか二つに直列介装した抵抗の電圧降下から電流値を得る電流検出器を用いればよい。
また、上記電流検出器24は、U,V,W相のうち二相に流れる電流値を検出すればよく、これは、二相の電流値が分かればロータRの電気角θから後述する下記式(3)を用いてd相およびq相の電流値に変換可能であるからである。
さらに、PWM回路25は、図3に示すように、電源Eと、モータMにおける三相各相の巻線12に電流供給を行う6つのスイッチング素子41と、各スイッチング素子41にPWMパルス信号を与えるマルチバイブレータ等の図示しないパルス発生器とを備えて構成されており、このPWM回路25は、比例積分制御部21が出力する各電圧指令値に基づいて所定のPWMデューティ比で上記各相に電流供給を行う。
そして、二相電流演算部21は、電気角θを用いて、以下の式(3)に示したように、上記各電流値iv,iuをd相およびq相の電流値id,iqへ変換する演算を行い、この変換されたd相およびq相の電流値id,iqを比例積分制御部22へ出力する。
Figure 0004908095
比例積分制御部22は、各電流目標値id*,iq*とd相およびq相における電流値id,iqの各偏差εd,εqを算出し、算出された偏差εd,εqを積分して得られた積分値に所定の積分ゲインを乗じ、さらには、各偏差εd,εqに所定の比例ゲインを乗算し、積分ゲイン乗算後の値と比例ゲイン乗算後の値を加算して、各電圧指令値Vd,Vqを出力する。
そして、さらに、d相電圧指令値Vdおよびq相電圧指令値Vqは、上記したようにU,V,Wの各相の電圧指令値に変換する三相変換演算部23に入力され、この三相変換演算部23は、下記式(4)の演算によって、上記d相電圧指令値Vdおよびq相電圧指令値Vqを実際のU,V,W各相の電圧指令値Vu,Vv,Vwへ変換し、この変換された電圧指令値Vu,Vv,VwをPWM回路25に出力する。
Figure 0004908095
また、このモータ制御装置は、リミッタ27を備えており、このリミッタ27は、三相変換演算部23が出力する上記各電圧指令値Vu,Vv,Vwのうち、PWM開度が全開、すなわち、PWMデューティ比が最大値以上となる場合に、PWMデューティ比を最大値とする値に電圧指令値Vu,Vv,Vwを制限する。
上記した制御装置20のPWM回路25以外の各部は、ハードウェアとして、具体的にはたとえば、電流検出器24、回転角センサ15が出力する各信号を増幅するためのアンプと、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器と、CPU(Central Prossesing Unit)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置、RAM(Random Access Memory)、水晶発振子及びこれらを連絡するバスラインとを備えた図示しない周知のコンピュータシステムとして構成され、また、PWM回路25に電圧指令値Vu,Vv,Vwを出力することができるようになっている。なお、このハードウェアとして制御装置20のPWM回路25以外の各部は、この駆動系が搭載される機器のコントローラに統合されてもよい。
そして、この場合、上記電流目標値演算部26におけるd相およびq相における電流目標値id*,iq*の演算のための通常制御を行うための処理手順と後述する回生制御を行うための処理手順は、プログラムとしてROMや他の記憶装置に予め格納されている。
ここで、上記したアクチュエータの内部構成をブロック線図で示すと、図4に示すとおり、破線で囲まれた部分がモータMの内部構成を示しており、d相およびq相における電圧に対してモータMがトルクを出力する。他方、一点差線で囲まれた部分はロータRの回転運動がアクチュエータのストロークに変換される機械的部分、すなわち、ロータR、運動変換機構Hの構成を示しており、モータMが出力するトルクの入力に対しアクチュエータはストロークすることとなる。
なお、図4中、1/sは、ラプラス演算子で記述した積分記号であり、Cμは、ボール螺子ナット2と螺子軸1との間の摩擦やモータMのロータR部分の摩擦によって生じるロータRの回転を抑制する力をモータMの機械角速度から演算するための減衰係数であり、PPは、モータMの電気角速度ωを機械角速度から演算するためのモータMの極対数であり、Ktは、q軸電流からモータMの発生トルクを演算するためのトルク定数であり、Iは、ロータRの慣性モーメントであり、Kは、ロータRに連結される部材全体の捩りバネ定数であり、Lは、d相およびq相の各巻線のインダクタンスであり、Rは、d相およびq相の各巻線のレジスタンスである。
この図4から理解できるように、d相とq相に印加される電圧は、それぞれのインダクタンスLによって他方の相へ干渉し、また、q相はロータRの電気角速度ωによって誘起される誘導起電力の影響を受ける。
そして、図5に示す、d相およびq相の電圧指令値Vd,Vqの合成ベクトルの長さが、dq座標における電源Eの電圧相当である飽和電圧を半径を持つ円(電圧制限円)を超えるようになると、三相の巻線12に印加すべき電圧指令値Vu,Vv,Vwの各端子間における電圧の少なくとも一つ以上が電源Eの電圧を超えることになって、モータMを正常には制御できない状態となり、破線で囲まれたモータMの内部構造におけるq相に流れる電流がある周波数帯で共振してしまう可能性がある状態となる。
このことは、実際の巻線12に流れる電流が共振してしまう可能性がある状態となっていることを示しており、巻線12に流れる電流が共振する共振周波数であるモータMの電気的な共振周波数feは、上記の式(2)に示したように、アクチュエータの構造上、電気角速度ωに比例するアクチュエータのストローク速度、すなわち、アクチュエータの伸縮速度に依存して変化する。
すなわち、ストローク速度が増加することに伴って、モータMの電気的な共振周波数feも増大することになる。
また、ロータRは、本実施の形態においては、螺子軸1が周方向の捩りに対するバネ要素として機能することから、式(1)で示される共振周波数fmで共振することになる。
すなわち、上記モータMの電気的な共振周波数feとロータRの周方向振動における共振周波数fmとが接近すると、互いの振動を励起して発振するような振動モードとなることになる。
そこで、本実施の形態においては、上記振動モードの発現を防止するべく、ロータRの周方向振動における共振周波数fmが、所定のストローク速度におけるモータMの電気的な共振周波数feより少なくとも大きくなるように設定されている。
したがって、アクチュエータの伸縮のストローク速度が所定のストローク速度以下である場合、モータMの電気的な共振周波数feは、ロータRの周方向振動における共振周波数fmより小さく、このような状態では、モータが発生するトルクのリップルが大きくなってアクチュエータのストローク速度が安定せずに振動的になってしまう振動モードの発現が防止されることになる。
すなわち、本発明の駆動系によれば、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定の電気角速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されるので、モータの電気的な共振周波数は、ロータの周方向振動における共振周波数より小さくなり、モータが発生するトルクのリップルが大きくなってモータの回転速度が安定せずに振動的になってしまう振動モードの発現を防止することができ、本発明のアクチュエータによれば、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定のストローク速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されているので、モータの電気的な共振周波数は、ロータの周方向振動における共振周波数より小さくなり、モータが発生するトルクのリップルが大きくなってアクチュエータのストローク速度が安定せずに振動的になってしまう振動モードの発現を防止することができる。
なお、上記した所定のストローク速度は、たとえば、アクチュエータを車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装して、アクチュエータでバネ上部材の姿勢制御や振動を抑制するサスペンションとして使用する場合には、所定のストローク速度を1m/sに設定することで、車両の乗心地を重視すべきストローク速度の領域では、上記振動モードの発現を防止することができるとともに、ロータRとバネ上部材もしくはバネ下部材との間に介装される伝達部材、この場合、ロータRに対して周方向のバネ要素として機能する螺子軸1における捩りバネ定数(周方向の捩り剛性)を必要以上に大きく設定しなければならない事態を回避できる。
このように、たとえば、駆動系における被駆動部材をバネ下部材として、アクチュエータにおけるモータMをバネ上部材に連結する場合、あるいは、駆動系における被駆動部材をバネ上部材として、アクチュエータにおけるモータMをバネ下部材に連結する場合、振動モードが発現されると、バネ上部材にも振動モードによる振動が伝達されるが、上記の如く設定されれば、振動モードの発現が防止され、バネ上部材へ不快な振動が伝達されてしまうことを回避することができる。
また、上述のようにアクチュエータをサスペンションとして利用する場合、ロータRや螺子軸1といった回転する多くの部材を備えており、その慣性質量も大きく高周波振動の入力に対して慣性モーメントが大きくなること、および、フリクションの影響もあって、バネ下部材側の振動をバネ上部材に伝達しやすくなるという特性があり、ロータRとバネ上部材もしくはバネ下部材との間に介装される部材の全体の捩りバネ定数を大きく設定しすぎると、上記振動を伝達しやすい特性によって車両における乗心地を却って阻害してしまうことになるが、上記したように、所定のストローク速度を1m/s程度に設定しておくことによって、バネ要素として機能するロータRとバネ上部材もしくはバネ下部材との間に介装される部材の全体の捩りバネ定数を必要以上に大きく設定しなければならない事態を回避できることから、車両における乗心地の向上と振動モードの発現を防止することの両方を満足させることが可能となる。
なお、運動変換機構Hの直動部材を螺子軸1とし、回転部材をボール螺子ナット2とする場合には、螺子軸1を直接にバネ上部材あるいはバネ下部材に連結するようにしておけばよいので、ロータRとバネ上部材あるいはバネ下部材との間に介装されてバネ要素として機能するのは主として螺子軸1ということになる。
つづき、具体的に、ロータRの周方向振動における共振周波数fmを、所定のストローク速度におけるモータMの電気的な共振周波数feより大きくなるように設定する方法について説明する。
アクチュエータのストローク速度とモータMのロータRの回転速度との関係は、運動変換機構Hの直動部材であるボール螺子ナット2と回転部材である螺子軸1の直線相対変位に対する螺子軸1のボール螺子ナット2に対する相対回転数により設定される。
そして、ロータRの回転速度とロータRの電気角速度ωとの関係は、極対数によって決せられることになる。
したがって、上記した所定のストローク速度をある値に設定すると、この設定された所定のストーク速度に対応するロータRの電気角速度ωが一義的に決められ、モータMの巻線12のレジスタンスRとインダクタンスLから所定のストローク速度におけるモータMの電気的な共振周波数feを求めることができる。
この所定のストローク速度におけるモータMの電気的な共振周波数feに対して、ロータRの周方向振動における共振周波数fmは、fe<fmの関係となるように設定されればよいから、モータMのロータRの慣性モーメントIとモータMの電気的な共振周波数feとから式(1)を利用して、上記ロータRに連結されてロータRとバネ上部材あるいはバネ下部材との間に介装される螺子軸1の全体の捩りバネ定数Kを逆算すればよい。なお、駆動系の伝達部材に上記運動変換機構Hとは異なる構成を採用する場合には、伝達部材の全体の捩りバネ定数(周方向の捩り剛性)を逆算することになる。
また、上述したところでは、アクチュエータが直動型に設定されているため、ストローク速度を基準としてモータMの電気的な共振周波数feを設定するようにしているが、電気角速度を基準としてモータの電気的な共振周波数feを設定するようにしてもよい。
なお、運動変換機構Hにおける回転部材の慣性モーメントがロータRの回転モーメントの値に対して無視できないほど大きい場合には、もっと厳密にアクチュエータの機械的な共振周波数fmを求めるようにしてもよい。すなわち、慣性モーメントIの値にモータMのロータRの慣性モーメント以外にも運動変換機構Hの回転部材の慣性モーメントを加味するようにしてもよい。
以上のようにして、ロータRの周方向振動における共振周波数fmを、所定のストローク速度におけるモータMの電気的な共振周波数feより大きくなるように設定することが可能であるが、本実施の形態の場合、螺子軸1にボール螺子ナット2が螺合する位置は、アクチュエータのストロークの変位に応じて変化することになる。
そして、螺子軸1の捩りバネ定数は、図1中ボール螺子ナット2が螺子軸1の最下端で螺合しているときに、ボール螺子ナット2とロータRとの間の距離が長くなり、この状態で一番小さな値をとることになる。
すなわち、アクチュエータが最伸長状態となったときに、螺子軸1の捩りバネ定数が小さくなることになることから、この状態におけるロータRとバネ上部材もしくはバネ下部材との間に介装される部材全体の捩りバネ定数を基準としてロータRの周方向振動における共振周波数fmを設定するようにしておけば、アクチュエータのストロークの全体渡り、上記振動モードの発現を防止しえることになる。
なお、ボール螺子ナット2を回転部材とした場合にあっても同様で、アクチュエータが最伸長状態となる場合には螺子軸1の捩りバネ定数が一番小さくなるので、上記したところと同様にロータRの周方向振動における共振周波数fmを設定するようにしておくとよい。
また、被駆動部材は、モータMによって駆動されるものであればよく、たとえば、電気自動車における車輪や、電動パワーステアリングにおける車輪とされてもよい。そして、被駆動部材が電気自動車における車輪である場合、伝達部材をモータMのロータRと車輪とを接続するシャフトとすればよく、駆動系が電動パワーステアリングである場合、伝達部材をラックアンドピニオンか、あるいは、ロータRに連結されるボール螺子ナットと、車輪側に接続される螺子軸とで構成すればよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
一実施の形態における駆動系の一部をなすアクチュエータの概念図である。 アクチュエータの制御装置のシステム図である。 PWM回路を示す図である。 アクチュエータの内部構成を示すブロック線図である。 電圧制限円とd相およびq相の電圧指令値との関係を示す図である。 従来のアクチュエータにおけるストローク速度に対する発生荷重(ダンピングフォース)を示した図である。
符号の説明
1 回転部材たる螺子軸
2 直動部材たるボール螺子ナット
10 フレーム
11 ステータコア
12 巻線
13 シャフト
14 駆動用磁石
15 回転角センサ
20 制御装置
21 二相電流演算部
22 比例積分制御部
23 三相変換演算部
24 電流検出器
25 PWM回路
26 電流目標値演算部
27 リミッタ
E 電源
H 運動変換機構
M モータ
R ロータ
S ステータ

Claims (7)

  1. モータによって駆動される被駆動部材とモータのロータとの間に介装される伝達部材を介して被駆動部材にモータの動力を伝達する駆動系において、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定の電気角速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されてなることを特徴とする駆動系。
  2. ロータの周方向振動における共振周波数が、所定の電気角速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように、ロータの慣性モーメントと伝達部材における周方向捩れのバネ要素の捩りバネ剛性が設定されることを特徴とする請求項1に記載の駆動系。
  3. モータの巻線を流れる電流をdq変換を用いてd相およびq相の電流値を求め、d相電流目標値とd相電流値の偏差からd相電圧指令値を求めるとともに、q相電流目標値とq相電流値の偏差からq相電圧指令値を求めてモータを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の駆動系。
  4. 直動部材と回転部材とを有し直動部材の直線運動を回転部材の回転運動に変換する運動変換機構と、回転部材に連結されるロータを有するモータとを備えたアクチュエータにおいて、ロータの周方向振動における共振周波数が、所定のストローク速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように設定されてなることを特徴とするアクチュエータ。
  5. ロータの周方向振動における共振周波数が、所定のストローク速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように、ロータの慣性モーメントとロータに連結される周方向捩れのバネ要素の捩りバネ剛性が設定されることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
  6. ロータの周方向振動における共振周波数が、所定のストローク速度におけるモータの電気的な共振周波数より少なくとも大きくなるように、ロータの慣性モーメントとロータに連結される周方向捩れのバネ要素の捩りバネ剛性の最小値が設定されることを特徴とする請求項4または5に記載のアクチュエータ。
  7. 所定のストローク速度は、1m/s以上に設定されることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
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