JP4907777B2 - 金属−セラミックス複合材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属−セラミックス複合材料に関するもので、特に他のセラミックス材料や金属材料と組み合わせて用いる金属−セラミックス複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス繊維または粒子で強化された金属−セラミックスの複合材料は、金属とセラミックスの両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。この特性を利用して、従来は金属−セラミックス複合材料が、金属材料やセラミックス材料の代替として、あるいは金属材料と組み合わせて使用されることが多く、特にAlやAlを主成分とする合金をマトリックスとした金属−セラミックス複合材料を用いることが主流であった。しかし半導体素子の発展に伴い、半導体素子材料であるSiに熱膨張係数が近いセラミックス基板が普及し、半導体パッケージ構成材料としてもセラミックス材料が使用されることが多くなったため、金属−セラミックス複合材料もセラミックスと組み合わせて使われる機会が多くなった。
【0003】
例えばセラミックス基板においては、アルミナ等に比べて熱伝導率が約10倍程度高く、さらに熱膨張係数がシリコンに近似する窒化アルミニウム(AlN)基板が放熱部品と絶縁性支持基板の機能を兼ね備える基板として注目されている。AlNは絶縁体であることから、導電性部材と組み合わせて使われることが多い。この場合の導電性部材としては、AlNと熱膨張係数が大きく異なるものであっては、接合して使用したときに、歪が生じやすくなるため、AlNと熱膨張係数が近似する材料が求められる。
【0004】
AlNの熱膨張係数5×10-6/℃に熱膨張係数が近似する材料としては、例えばSiCの充填率が60〜80体積%でAl−Si−Mg系のAl合金をマトリックスとする金属−セラミックス複合材料が提供されている(公開特許公報2000−54090)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、セラミックス材料の開発は活発であり、金属−セラミックス複合材料が組み合わせて使用されるセラミックス材料も多様化が進んでいる。種々のセラミックス材料との組み合わせに対応するためには、若干の成分調整によって種々のセラミックス材料と近似の熱膨張係数に制御することが可能な金属−セラミックス複合材料の提供が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討してなされたものであり、金属−セラミックス複合材料の特性である高い剛性および高い耐熱性を保持しながら、熱膨張係数を種々のセラミックス材料に近似の広範囲の値に制御することが可能な金属−セラミックス複合材料を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した本発明の目的は、Si合金をマトリックスとし、強化材であるセラミックスがSiCおよびTiCの粉末および/または繊維からなり、複合材料中のSiCおよびTiCの充填率を調製することにより、複合材料の熱膨張係数を3×10 -6 /℃〜6×10 -6 /℃の範囲の所望の値に制御してなる金属−セラミックス複合材料によって達成される。ここで、Si合金がSiを90原子%以上含有するSi合金であり、強化材であるセラミックス粉末および/または繊維の充填率が40〜80体積%であり、複合材料中のSiCの充填率が3体積%以上であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、さらに詳細に本発明を説明する。
本発明の金属−セラミックス複合材料は、SiCおよびTiCの粉末および/または繊維の混合物で形成されたプリフォームにSi合金を浸透、複合化させることにより得られる。本発明に用いられるSi合金としては、Siを90原子%以上含有するSi合金であることが好ましい。Siの含有率が90原子%未満の合金を使用した場合には、複合材料の剛性や耐熱性が十分に保てなくなることがある。
【0009】
本発明の金属−セラミックス複合材料中のセラミックスの充填率は40〜80体積%であることが好ましい。40体積%未満では、プリフォームの強度が不十分である。また、80体積%を超える充填率でプリフォームを作製することは困難である。
【0010】
プリフォームを作製する方法としては、慣用の方法を用いることができる。すなわち、SiCおよびTiCの粉末および/または繊維の混合物と、含浸助材であるCおよび/または焼成した時にCとなる有機バインダーとを混合し、成形用型に充填してプレスし成形する。得られた成形体を焼成してプリフォームを作製する。このとき、プリフォーム中のセラミックスの充填率は、セラミックスの粉末および/または繊維の平均粒径と粒径分布を変えることによって制御できる。
例えば、粒径を小さくし、その分布を狭くすれば、充填率は低くなるし、逆に粒径分布を広くし、その中の粗粒と粗粒との間の隙間に、より小さい粒径の粒子が入るように配合すれば、充填率は高くなる。
【0011】
次に、作製したプリフォームとSi合金とを接触させ、非酸化雰囲気中でSi合金の融点以上、例えば1500℃以上に加熱してSi合金を溶融させ、プリフォーム中にSi合金を含浸複合化させて複合材料を得る。また、必要に応じて、さらに機械加工を施しても良い。
【0012】
本発明の複合材料の熱膨張係数は、複合材料中の強化材であるセラミックスの充填率、特にTiCの充填率を変化させることにより、3〜6×10-6/℃の範囲で制御することができる。TiCの充填率を限りなく0体積%に近付けることにより、熱膨張係数を最低値に近付けることができる。一方、TiCの充填率を高め、SiCの充填率を下げた場合には、複合材料の熱膨張率は高くなる。しかし、プリフォーム作製時に添加した含浸助材のCおよび/または有機バインダー由来のCと、含浸したSi合金のSiとの反応により、SiCが形成するため、複合材料中のSiCの充填率を0体積%にすることはできない。さらに、複合材料中のSiCの充填率が3体積%未満では、プリフォーム中へのSi合金の含浸が困難で、未含浸によるポア(空隙)が発生しやすくなるため、複合材料中のSiCの充填率を3体積%以上とすることが望ましい。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明について説明する。
(実施例1)
SiC粉末(信濃電気精錬社製、平均粒径10μm)およびTiC粉末(日本新金属社製、平均粒径1.6μm)を体積比2:1の割合で混合した。上記混合粉末100質量%に対し、有機バインダーとしてフェノール樹脂を10質量%(炭素換算3質量%)混合し、プレス後、真空中500℃で3時間加熱し、セラミックス充填率55体積%のプリフォームを得た。得られたプリフォームと金属Si(Si含有量99原子%)とを接触させた状態で、Arガス中1600℃で3時間加熱し、プリフォーム中に金属Siを溶融・含浸し、複合化させて金属−セラミックス複合材料を得た。
この時、フェノール由来のCとSiとの反応により、SiCが形成するため、得られた複合材料中のSiCの充填率は、40体積%であった。
得られた金属−セラミックス複合材料を切断し、含浸不良(ポア)の有無を観察した結果、良好に含浸し、ポアは認められなかった。
次に3×4×40mmの試験片を切り出し、室温〜200℃の範囲での熱膨張係数、共振法による剛性(ヤング率)および耐熱性の測定を行った。耐熱性は、試料に大気中で13.6MPaの荷重を加え、この状態で1300℃まで昇温し、破断した場合はその時の温度を、破断しなかった場合は1300℃を耐熱温度として測定した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、高い剛性、耐熱性と所望の熱膨張係数を有する複合材料を得ることができた。
【0014】
(実施例2)
SiC粉末とTiC粉末の混合比を体積比で99:1とした以外は、実施例1と同様にして、金属−セラミックス複合材料を得た。
得られた複合材料中のSiCおよびTiCの充填率、物性の測定結果を表1に示す。
良好に含浸し、ポアは認められず、表1から明らかなように、高い剛性、耐熱性と所望の熱膨張係数を有する複合材料を得ることができた。
【0015】
(実施例3)
平均粒子径50μmのTiC粉末と平均粒子径1.6μmのTiC粉末とを体積比2:1の割合で混合した。この混合粉末100質量%に対し、フェノール樹脂を10質量%混合し、さらにイオン交換水を加えてスラリーとし、鋳込み成形によって、SiC充填率3%、TiC充填率70%の金属−セラミックス複合材料を得た。得られた複合材料中の物性の測定結果を表1に示す。
良好に含浸し、ポアは認められず、表1から明らかなように、高い剛性、耐熱性と所望の熱膨張係数を有する複合材料を得ることができた。
【0016】
(実施例4)
原料セラミックス粉末として平均粒径1.6μmのTiC粉末を使用し、TiC粉末100質量%に対し、フェノール樹脂を1質量%(炭素換算0.5質量%)混合した以外は、実施例1と同様にして、金属−セラミックス複合材料を得た。
得られた複合材料中のSiCおよびTiCの充填率、物性の測定結果を表1に示す。
プリフォーム中のC成分が少なく、含浸速度が遅くなり、複合材料中の一部にポアが認められたものの、形状の保持には問題なかった。また表1から明らかなように、高い剛性、耐熱性と所望の熱膨張係数を有する複合材料を得ることができた。
【0017】
(実施例5)
Si合金としてSi含有量が80原子%のSi−Al合金を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属−セラミックス複合材料を得た。
得られた複合材料中のSiCおよびTiCの充填率、物性の測定結果を表1に示す。
ポアは生じなかったが、耐熱性が低いものとなった。
【0018】
(比較例1)
次に、SiC充填率0%の複合材料の作製を試みた。
原料セラミックス粉末として平均粒径1.6μmのTiC粉末を使用し、これをBN製の箱(内寸50×50×50mm)中に充填し、振動を加えた後、金属Si(Si含有量99原子%)をのせて、実施例1と同様の方法で金属Siを溶融し含浸を試みた。
しかし金属Siが含浸せず、金属−セラミックス複合材料を得られなかった。
【0019】
(比較例2)
使用する合金として、Si含有量が1原子%未満のAl合金を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属−セラミックス複合材料の作製を試みた。
しかしAl合金が含浸せず、金属−セラミックス複合材料を得られなかった。
【0020】
【表1】
Figure 0004907777
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、高い剛性および高い耐熱性を保持しながら、熱膨張係数を種々のセラミックス材料に近似の広範囲の値に制御することが可能で、組み合わせ部品との熱膨張係数の差による歪を発生することのない金属−セラミックス複合材料を容易に作製することができる。

Claims (2)

  1. Si合金をマトリックスとし、強化材であるセラミックスがSiCおよびTiCの粉末および/または繊維からなり、複合材料中のSiCおよびTiCの充填率を調製することにより、複合材料の熱膨張係数を3×10 -6 /℃〜6×10 -6 /℃の範囲の所望の値に制御してなる金属−セラミックス複合材料。
  2. Si合金がSiを90原子%以上含有するSi合金であり、強化材であるセラミックス粉末および/または繊維の充填率が40〜80体積%であり、複合材料中のSiCの充填率が3体積%以上である請求項1に記載の金属−セラミックス複合材料。
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