JP4053110B2 - 金属−セラミックス複合材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属に強化材を複合させた金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関し、特に熱膨張率を制御することのできる金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス繊維または粒子で強化された金属−セラミックスの複合材料は、金属とセラミックスの両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。このように、従来から難しいとされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えているため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料として注目されている。
【0003】
この複合材料、特に金属としてアルミニウムをマトリックスとする複合材料の製造方法は、粉末冶金法、高圧鋳造法、真空鋳造法等の方法が従来から知られている。しかし、これらの方法は、強化材であるセラミックスの含有量を多くできない、あるいは大型の加圧装置が必要である、もしくはニアネット成形が困難であるなどの理由により、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】
そこで最近では、上記問題を解決する製造方法として、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法が特に注目されている。この方法は、SiCやAl2O3などのセラミックス粉末で形成されたプリフォームに、アルミニウムインゴットを接触させ、これをN2雰囲気中で700〜900℃に加熱して溶融したアルミニウム合金をプリフォームに含浸させる方法である。これは、化学反応を利用してセラミックス粉末への溶融金属の濡れ性を改善することにより、加圧しなくても金属をプリフォームに含浸できるようにした優れた方法である。
【0005】
また、この方法では、セラミックスの含有率を30〜85vol%と広く、かつ高い範囲まで変えることができ、例えば熱膨張率で6.2×10-6/℃、ヤング率で265GPa、破壊靱性で10MN/m2/3、熱伝導度で170w/m℃の特性値を有するSiCを70vol%含む金属−セラミックス複合材料も容易に作製することができる。さらに、この方法で形成されたプリフォームは、その形状の自由度が高いので、かなり複雑な形状をニアネットで作ることも可能である。このようにこの方法は、加圧装置が不要であり、セラミックスの含有率を高くすることができ、ニアネット成形も可能となる方法であるので、前記した問題が解決される優れた方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法で作製された複合材料は、その熱膨張率を制御するためには、強化材であるセラミックス粉末の種類が単一であるため、強化材の粉末充填率を変えることにより制御するしかなく、例えば、熱膨張率を小さくするためには強化材の粉末充填率を上げる必要があり、熱膨張率を大きくするためには粉末充填率を下げる必要があった。そのため、熱膨張率を制御することで粉末充填率が上下することとなり、その粉末充填率が大きく下がった場合には、複合材料の作製過程で、あるいは作製された複合材料の特性そのものに悪影響を与えるという問題があった。
【0007】
それは例えば、組み合わせる相手材の熱膨張率に合わせるべく粉末充填率を70vol%から50〜55vol%に下げた場合には、粉末充填率が密充填から大きく外れることとなり、プリフォームの強度が低下するばかりでなく、強化材の粒径分布を微粒側に片寄らせているので、プリフォームの成形に用いるスラリーがチクストロピックとなり、流動性が悪化して成形性が悪くなる。また、それから作製される複合材料のヤング率も例えば強化材がSiCの場合には265GPaから210GPa程度にまで低下する。
【0008】
本発明は、上述した浸透法によって作製された金属−セラミックス複合材料が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、強化材の粉末充填率を変えることなく熱膨張率を制御することのできる金属−セラミックス複合材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、セラミックス粉末を60〜80vol%の粉末充填率を有するAl2O3とAlNの2種類の粉末とし、それら粉末を適切な割合で混合してプリフォームを形成すれば、熱膨張率を8.0〜12×10-6の範囲内で容易に変えることのできる複合材料が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、(1)セラミックス繊維または粒子を強化材としてプリフォームを形成し、そのプリフォームに基材である金属を浸透させた金属−セラミックス複合材料において、該プリフォームが、60〜80vol%の粉末充填率を有するAl2O3粉末及びAlN粉末から成り、かつ該複合材料の熱膨張率が、8.0〜12×10−6/℃であることを特徴とする金属−セラミックス複合材料(請求項1)とすることを要旨とする。以下にさらに詳細に説明する。
【0011】
上記複合材料としては、そのプリフォームが、60〜80vol%の粉末充填率を有するAl2O3粉末及びAlN粉末から成るとし、かつそのプリフォームから作製した複合材料の熱膨張率が、8.0〜12×10-6/℃であることとする金属−セラミックス複合材料とした(請求項1)。セラミックス粉末をAl2O3粉末及びAlN粉末の2種類としたのは、Al2O3粉末またはAlN粉末の1種類だけでは熱膨張率を変えるには前記したように粉末充填率を変えざるを得ないが、2種類であればその混合割合を適宜変えるだけで、粉末充填率を変えることなく熱膨張率を容易に変えることができることによる。粉末の種類を3種類にしても同様のことが言えるが、3種類以上になると所望の熱膨張率に合わせるのに複雑で面倒になる。
【0012】
また、プリフォームの粉末充填率を60〜80vol%としたのは、前記した悪影響を被らないように高い粉末充填率にするためであり、さらに、Al2O3粉末、AlN粉末の両者とも60〜80vol%としたのは、粉末充填率が高いのと低いのと大きく異なる粉末同士を混合しても60vol%以上の粉末充填率を有するプリフォームを形成することは可能であるが、その場合には限られた配合割合でしか達成することができないので、これを両者とも60vol%以上の同程度の充填率にしておけば、両者の割合をどのように変えても粉末充填率があまり変わることなく常に60vol%以上の粉末充填率が得られることによる。
【0013】
さらに、作製された複合材料の熱膨張率を8.0〜12×10-6/℃としたのは、60vol%以上の高い粉末充填率を有するプリフォームであるため、Al2O3粉末から成る複合材料の熱膨張率は8.0×10-6/℃程度であり、AlN粉末から成る複合材料の熱膨張率は12×10-6/℃程度であるので、その割合を変えることで熱膨張率がこの範囲で変わることによる。そして熱膨張率の範囲がこの範囲になるAl2O3とAlNの粉末を選んだのは、組み合わせて使用する相手材には鋳鉄の場合が最も多いので、その鋳鉄の熱膨張率(10×10-6/℃)に容易に合わせることのできるセラミックス粉末としたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ず60〜80vol%の粉末充填率を有するAl2O3粉末とAlN粉末とを用意する。これは例えばAl2O3粉末であれば、#320の市販アルミナと#600の市販アルミナとを重量比で7:3の割合で混合すれば、70vol%の粉末充填率を有する粉末が得られ、AlN粉末であれば、平均粒径が16μmのダウケミカル社製の粉末を購入すれば、70vol%の粉末充填率を有する粉末が得られる。なお、AlN粉末は水と反応するので、水を使う場合にはシリカコーティングを施した粉末とする必要がある。
【0017】
用意した粉末を所望の熱膨張率が得られる割合で配合する。但し、熱膨張率と配合割合との間には直線的な比例関係にはないので、あらかじめ実験により、所望する熱膨張率が得られる配合割合を見いだす必要がある。配合した粉末は、その粉末にコロイダルシリカ液またはアルミナ水和物のコロイド液を加え、それに水などを加えてポットミルで湿式混合する。混合は十分行う必要があるが、粉砕が起こり、粒径分布が変わるほど長時間行ってはならず、8〜24時間程度が適当である。
【0018】
得られたスラリーを用いて例えば沈降成形の場合には、スラリーを型に充填し、軽く振動を掛けて固形分を沈降させ、表面に浮いた水分を掻き取って成形する。それを型に入れたまま−30℃で一晩冷凍した後、脱型し、80〜900℃の温度で焼成(乾燥のみの場合も含む)してプリフォームを形成する。形成したプリフォームの上部または下部にアルミニウムを主成分とする合金を置き、窒素気流中で非加圧で700〜1000℃の温度で合金を浸透させ、冷却することにより金属−セラミックス複合材料が得られる。
【0019】
以上の方法で金属−セラミックス複合材料を作製すれば、強化材の粉末充填率を変えることなく熱膨張率を制御することができる金属−セラミックス複合材料とすることができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
(実施例1〜4)
(1)プリフォームの形成
強化材として#320の市販Al2O3粉末(太平洋ランダム社製、50A)を70wt%、#600の市販Al2O3粉末(太平洋ランダム社製、LA)を30wt%混合したAl2O3粉末と、平均粒径が16μmのシリカコーティングしたAlN粉末(ダウケミカル社製、XUS35571.00)とを用い、これらを表1に示す割合で配合した。その配合物に対し、コロイダルシリカ液をシリカ分が2wt%となる量だけ添加し、それにイオン交換水を30wt%加え、媒体を入れてないポットミルで16時間混合した。得られたスラリーを200×200×20mmのシリコーンゴム型に流し込んでセディメントキャスト(沈降成形)を行ない、−30℃に冷却して冷凍品を得た。得られた冷凍品を700℃で5時間焼成し、プリフォームを形成した。
【0022】
(2)金属−セラミックス複合材料の作製
形成したプリフォームの上にプリフォームの3倍重量のAl−7Mg組成のアルミニウム合金を置き、窒素雰囲気中で825℃の温度で20時間非加圧浸透させた後、100℃/hrで冷却し金属−セラミックス複合材料を作製した。
【0023】
(3)評価
形成したプリフォームの嵩密度をアルキメデス法で測定し、粉末充填率を求めた。また、得られた複合材料から試験片を切り出し、その試験片のヤング率を共振法で測定し、さらに、その試験片の熱膨張率をJIS R 1618により500℃まで測定した。それらの結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、Al2O3粉末とAlN粉末の配合割合を大幅に変化させても、粉末充填率とヤング率はほぼ一定であった。また、熱膨張率は、Al2O3粉末から成る複合材料の8.0×10-6/℃とAlN粉末から成る複合材料の12×10-6/℃の範囲内で推移していた。このことは、複合材料の熱膨張率を粉末充填率を変化させることなく鋳鉄の熱膨張率(10×10-6/℃)に容易に合わせられることを示しており、また、熱膨張率を変化させても複合材料の性能が低下しないことを示している。
【0026】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の金属−セラミックス複合材料であれば、セラミックス粉末の充填率を変えることなく熱膨張率を制御することができる金属−セラミックス複合材料とすることができるようになった。これにより、金属−セラミックス複合材料の性能を落とすことなく熱膨張率を制御できるようになり、工業的利用の範囲が非常に広がった。
Claims (1)
- セラミックス繊維または粒子を強化材としてプリフォームを形成し、そのプリフォームに基材である金属を浸透させた金属−セラミックス複合材料において、該プリフォームが、60〜80vol%の粉末充填率を有するAl2O3粉末及びAlN粉末から成り、かつ該複合材料の熱膨張率が、8.0〜12×10−6/℃であることを特徴とする金属−セラミックス複合材料。
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JP6903497A JP4053110B2 (ja) | 1997-03-07 | 1997-03-07 | 金属−セラミックス複合材料 |
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