JP4905740B2 - ガイドワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑性表面を形成するガイドワイヤに関する。
従来、治療や検査のために、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して使用されるカテーテル等を案内するためのガイドワイヤにおいて、体内組織との摩擦を低減するために、その表面に親水性コーティング剤を設けたものが幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、金属製の芯線4とその芯線4の端部に設けられたコイル(第1コイル5及び第2コイル6)とを含む用具全体の外周に潤滑性被膜7(親水性コーティング剤)を設けた医療用具が記載されている。
また、特許文献2には、ワイヤ本体4の先端部に相互に密着して巻回された金属コイル2の表面に親水性ポリマー層3B(親水性コーティング剤)を設けた医療用挿通器具が記載されている。
特開2004−215710 特開2008−237621
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されているように、単に親水性コーティング剤を医療用具等に施しただけでは、コイルを形成するコイル素線の間に親水性コーティング剤が侵入して、コイル素線の動きが阻害される虞があった。また、親水性コーティング剤を施した部分が硬くなってしまい、ガイドワイヤの先端部の柔軟性が損なわれ、ガイドワイヤを操作する際に血管等を穿孔する虞があった。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、親水性コーティング剤を施した場合においても、コイル素線の動きを阻害せずコイル体の柔軟性を確保したガイドワイヤを提供することを目的とする。
<1>第1の発明は、コアシャフトと、そのコアシャフトの外周に素線を巻回したコイル体と、そのコイル体の少なくとも一部分を被覆した親水性コーティング剤とを備えたガイドワイヤであって、前記親水性コーティング剤は、前記コイル体の少なくとも一部分の素線間に間隙を有するように被覆されていることを特徴とする。
<2>第2の発明は、第1の発明において、前記素線及び前記親水性コーティング剤が形成する断面の中心は、前記親水性コーティング剤が被覆された素線の断面の中心に対して、外側表面方向に変位していることを特徴とするガイドワイヤ。
<3>第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記素線に被覆された親水性コーティング剤は、側面方向の厚さが外側表面方向の厚さよりも薄いことを特徴とする。
<4>第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、前記素線に被覆された親水性コーティング剤は、内側表面方向の厚さが側面方向の厚さよりも薄いことを特徴とする。
<1>第1の発明のガイドワイヤは、上述したように親水性コーティング剤がコイル体の少なくとも一部分の素線間に間隙を有するように被覆されているので、親水性コーティング剤を施した場合においても、コイル素線の動きを阻害せずコイル体の柔軟性を確保することができる。
<2>第2の発明のガイドワイヤは、素線及び親水性コーティング剤が形成する断面の中心が、被覆された素線の断面の中心に対して外側表面方向に変位しているため、コイル体の柔軟性を確保しつつ、親水性コーティング剤による滑り性の耐久性を向上させることができる。
第3の発明のガイドワイヤは、素線に被覆された親水性コーティング剤の側面方向の厚さが、外側表面方向の厚さよりも薄いので、コイル素線間の間隙をさらに広くすることができ、コイル素線の動きをより自由にすることができる。また、コイル体を屈曲させた際、隣接するコイル素線同士が接触しても親水性コーティング剤の薄い部分が当接するため、コイル体の柔軟性をさらに確保することができる。
第4の発明のガイドワイヤは、素線に被覆された親水性コーティング剤の内側表面方向の厚さが側面方向の厚さよりも薄いので、コアシャフトとコイル体との間の空間を十分に確保することができるので、コイル体の柔軟性をさらに高めることができる。
本発明のガイドワイヤを示す縦断面図である。 本発明の第1の実施形態のガイドワイヤの親水性コーティング剤が被覆されたコイル素線を拡大した部分拡大図である。 本発明の第2の実施形態のガイドワイヤの親水性コーティング剤が被覆されたコイル素線を拡大した部分拡大図である。 第2の実施形態の変形例を示す図である。
以下に、本発明の第1の実施形態のガイドワイヤを図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明のガイドワイヤを示す縦断面図であり、図2は図1に記載のA部を拡大した部分拡大図である。
尚、図1では、説明の都合上、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
また、図1では、理解を容易にするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、全体的に模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
図1において、ガイドワイヤ1は、先端に向かって細径化されたコアシャフト2と、そのコアシャフト2の先端部を覆うコイル体3とから構成され、コアシャフト2の先端とコイル体3の先端とは最先端部4において固着され、また、最先端部4から基端側方向において、コアシャフト2とコイル体3はロウ付け部9(2ヶ所)によって固着されている。
コアシャフト2の構成材料は特に限定されず、例えば、ステンレス合金、超弾性合金、コバルト系合金、ピアノ線、又はタングステン等の材料から選択することができる。
また、コアシャフト2の先端部に固着されているコイル体3の構成材料は、例えば、放射線不透過性金属である白金、金、タングステン、放射線透過性金属であるステンレス合金、超弾性合金、コバルト系合金、ピアノ線等の材料から選択することができる。
コアシャフト2の先端とコイル体3の先端とを固着する最先端部4及びロウ付け部9の構成材料は、例えば、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn−Pb合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag合金等で構成することができる。
また、図1において、コイル体3を形成するコイル素線31の表面には親水性コーティング剤5が被覆されており、この親水性コーティング剤5はコイル素線31間に間隙32を形成するように被覆されている。
親水性コーティング剤5が被覆されたコイル素線31について、図2を用いて詳細に説明する。コイル素線31は、外側表面方向に相当する外側表面部311(本実施形態では、コアシャフト2の中心軸に平行な線に対して時計回り方向及び反時計回り方向に45℃傾斜させた線を仮想線とし、それら2つの仮想線の交点をコイル素線の断面中心に重ねた場合に、各仮想線によって仕切られる4つの領域のうちコアシャフト2から最も離間した領域を外側表面部311とする。)と、内側表面方向に相当する内側表面部313(本実施形態では、コアシャフト2の中心軸に平行な線に対して時計回り方向及び反時計回り方向に45℃傾斜させた線を仮想線とし、それら2つの仮想線の交点をコイル素線の断面中心に重ねた場合に、各仮想線によって仕切られる4つの領域のうちコアシャフト2から最も近接した領域を内側表面部313とする。)と、外側表面部311と内側表面部313の間に位置する側面方向に相当する側面部312(本実施形態では、コアシャフト2の中心軸に平行な線に対して時計回り方向及び反時計回り方向に45℃傾斜させた線を仮想線とし、それら2つの仮想線の交点をコイル素線の断面中心に重ねた場合に、各仮想線によって仕切られる4つの領域のうち外側表面部311及び内側表面部313以外の2つの領域を側面部312とする。)とを有する。
上述したように隣接するコイル素線31の側面部312間に間隙32が形成されるように、親水性コーティング剤5がコイル素線31に被覆されている。
また、親水性コーティング剤5は、この外側表面部311、側面部312、及び内側表面部313にわたって被覆されており、外側表面部311、側面部312、及び内側表面部313に被覆された親水性コーティング剤5の厚さは同じである。
このように、隣接するコイル素線31の側面部312間に間隙32を形成するように親水性コーティング剤5が被覆されているため、親水性コーティング剤を施した場合においても、コイル素線の動きを阻害せずコイル体3の柔軟性を確保することができる。
また、親水性コーティング剤5が間隙32を有する様に被覆されることで、ガイドワイヤ1をエチレンオキシド等のガスで滅菌する際に、コイル体3の間隙32からガスがコイル内部に浸入し、コイル体3の内部を効果的に滅菌することができるとともに、滅菌後の排ガスも容易に行えることができる。
コイル素線31間の間隙32を有する親水性コーティング剤5は、コイル体3の先端部35(図1参照)に形成することもできる。
この場合、間隙32がコイル体3の先端部35に形成されるので、親水性による滑り性を付与しつつ、コイル体3の先端部35の柔軟性を確保することができる。
また、間隙32をコイル体3の全長にわたって形成することで、コイル体3が全長にわたって柔軟になり、コイル体3全体の柔軟性をさらに確保することもできる。
コイル素線31の表面を被覆している親水性コーティング剤5の材料は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ハイドロキシエチルアクリルアミド)等のノニオン系親水性高分子、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸)等のアニオン系親水性高分子や、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等のカチオン性親水性高分子を用いることができる。また、これらの親水性高分子を複数用いてもよい。尚、イオン性官能基を複数用いる場合は、イオンコンプレックスの形成を防ぐため、アニオン系かカチオン系のいずれかに統一することが好ましい。
また、親水性コーティング剤5の材料として、上記したポリマーを構成するモノマーをラジカル重合して得られるポリマーを用いることもできる。モノマーから重合することで、膜厚の調整が管理し易くなると共に、数種のモノマーを組み合わせることで、共重合体の親水性を調整することもできる。尚、重合を行う場合は、ニトロキシル法、原子移動ラジカル重合、又は可逆的付加開裂連鎖移動重合等の分子量分布を制御し易いリビングラジカル重合を行うことが好ましい。リビングラジカル重合法を用いることで、コイル素線31上の親水性コーティング剤5の厚さを容易に制御することができる。
また、親水性コーティング剤5の成分として、親水性高分子と疎水性高分子とを混合することで、水分や血液等の体液と接触した時に、疎水性高分子の作用によって、疎水性高分子から水分が排除され、親水性高分子に水分が集まるようになる。このため、親水性コーティング剤5の滑り性を持続させることができる。
また、親水性高分子を親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体から形成することでも、親水性高分子と疎水性高分子の混合の場合と同じ理由によって、滑り性を持続させることができる。
また、親水性コーティング剤5の成分として、アニオンかカチオンのいずれか一方のイオンから形成したイオン性高分子から成る親水性高分子を用いることもできる。このようにイオン性高分子を用いることで水分や血液等の体液との接触時には、イオン性高分子自身の静電反発作用によって、親水性高分子が分散しようとするため、親水性コーティング剤5の柔軟性を向上させ、親水性コーティング剤5が被覆されたコイル体3の柔軟性をさらに確保することができる。また、分散しようとする親水性高分子との間に僅かな隙間が生じて、この隙間に水分子が入り込むので、親水性コーティング剤5の保水性を向上させ、滑り性を持続させることができる。
また、上述した親水性コーティング剤5に親水性を持続させるために、架橋による親水性高分子のゲルを用いることもできる。
この親水性高分子のゲル化によって、ゲル内部に水分を溜め込むことができるので、親水性コーティング剤5の滑り性を持続させることができる。また、ゲル化によって、親水性コーティング剤5の機械的強度が増加するので、親水性コーティング剤5の剥離を防止することができる。
上記の本発明に用いられる親水性コーティング剤5中の親水性高分子の形態としては、直鎖状、枝状、又は球状(デンドリマーを含む)の親水性高分子をコイル体3に固定する形態や、親水性高分子の一つの末端がコイル体3の金属表面に固定されたポリマーブラシのような形態から選択することができる。
この中で特に好ましいのは、親水性高分子の形態をポリマーブラシとすることである。ポリマーブラシを用いることで、分子量の制御が行い易くなるため、コイル体3の間隙32を有効に形成することができ、コイル体3の柔軟性を的確に確保することができる。
尚、直鎖状、枝状、球状(デンドリマーを含む)の親水性高分子をコイル体3に固定する方法としては、上述した親水性高分子が溶解した溶液中にコイル体3を浸漬する方法、ハケやブラシを用いて溶液をコイル体に被覆する方法、又は、スプレーコーティングによる方法等、公知の方法が挙げられる。
上述した親水性高分子が溶解した溶液を調製する際の溶媒としては、極性の高い溶媒であればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、N−プロパノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、又はN−メチル−2−ピロリドン等から選択することができる。
また、ポリマーブラシを形成する方法としては、グラフティング−フロム(grafting-from)法やグラフティング−トゥ(grafting-to)法等の名称で呼ばれる公知の技術によって形成することができる。これらの方法は特に限定されることはなく、それぞれの機能特性に応じて使い分けることができる。
次に、本発明の第2の実施形態のガイドワイヤを、図3を参照して第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
図3は、親水性コーティング剤15が被覆されたコイル素線31を拡大した部分拡大図である。
図3において、親水性コーティング剤15は、隣接するコイル素線31の側面部312間に間隙32を形成するように被覆されている。
また、親水性コーティング剤15は、コイル素線31及び親水性コーティング剤15が形成する断面の中心15aがコイル素線31の断面中心31aよりも外側表面部311方向に変位するように、コイル素線31の外周に被覆されており、親水性コーティング剤15の厚さは外側表面部311>側面部312>内側表面部313の順となっている。
このように、親水性コーティング剤15を外側表面部311方向に凸形状となる形態とすることにより、外側表面部311における親水性コーティング剤15の被覆厚が増加するため、長い時間にわたって親水性を付与して、ガイドワイヤ1の滑り性の耐久性を向上させることができる。
さらに、内側表面部313の親水性コーティング剤15が薄く被覆されているので、コアシャフトとコイル体3との間の空間を十分に確保することができ、コイル体3の柔軟性をさらに高めることができる。
このような親水性コーティング剤15の形態は、例えば、以下のような方法によって形成することができる。
親水性コーティング剤15を被覆する前に、親水性コーティング剤15とコイル素線31との親和性を高めるために、コイル体3の外周に紫外線を照射し、コイル素線31の表面を活性化する。
コイル体3の外側方向から紫外線を照射すると、コイル素線31の外側表面部311が最も活性化され、次いで、側面部312が活性化される。側面部312は、外側表面部311よりも紫外線照射量が少ないので、側面部312の活性度は外側表面部311よりも小さくなる。また、内側表面部313は照射光が届かないため、活性化されない。この活性化の差に起因して、側面部312の活性度は外側表面部311側から内側表面部313側にかけて減少する形態をとる。
この活性化されたコイル体3に親水性コーティング剤15を被覆すると、親水性コーティング剤15は活性化された部分に多く結合するので、親水性コーティング剤15の密度が、外側表面部311>側面部312>内側表面部313の順に低くなる。また、この密度の差に順じて、親水性コーティング剤15の厚さも変化する。さらに、側面部312においては、外側表面部311側から内側表面部313側にかけて漸減するように、親水性コーティング剤15の密度が減少し、これに順じて親水性コーティング剤15の膜厚も減少している。
この結果、親水性コーティング剤15の外側表面部311の滑り性は、側面部312及び内側表面部313よりも高く、また、外側表面部311の親水性コーティング剤15の滑り性を長く持続させることができる。
また、第2の実施形態の変形例として、紫外線照射前にコイル素線31の側面部312を樹脂や金属から形成した遮蔽部材などで遮蔽して、その後、紫外線を照射することで、図4に示すように側面部312の親水性コーティング剤15の厚さを内側表面部313と同じ程度に薄くすることができる。これによって、コイル体3の間隙32をさらに効率良く形成することが可能となり、コイル体3の柔軟性をさらに確保することができる。
尚、図1〜図4に記載の親水性コーティング剤5、15は、ガイドワイヤ1の長軸方向のコイル素線31の一部に被覆しても良く、ガイドワイヤ1の長軸方向のコイル素線31の全体に被覆しても良い。
1 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
3 コイル体
31 コイル素線
31a コイル素線断面中心
311 外側表面部
312 側面部
313 内側表面部
4 最先端部
5、15 親水性コーティング剤
15a コイル素線及び親水性コーティング剤断面中心

Claims (4)

  1. コアシャフトと、
    そのコアシャフトの外周に素線を巻回したコイル体と、
    そのコイル体の少なくとも一部分を被覆した親水性コーティング剤と
    を備えたガイドワイヤであって、
    前記親水性コーティング剤は、前記コイル体の少なくとも一部分の素線間に間隙を有するように被覆されていることを特徴とするガイドワイヤ。
  2. 請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、前記素線及び前記親水性コーティング剤が形成する断面の中心は、前記親水性コーティング剤が被覆された素線の断面の中心に対して、外側表面方向に変位していることを特徴とするガイドワイヤ。
  3. 請求項1又は2に記載のガイドワイヤにおいて、前記素線に被覆された親水性コーティング剤は、側面方向の厚さが外側表面方向の厚さよりも薄いことを特徴とするガイドワイヤ。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガイドワイヤにおいて、前記素線に被覆された親水性コーティング剤は、内側表面方向の厚さが側面方向の厚さよりも薄いことを特徴とするガイドワイヤ。
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