JP4436047B2 - 異なる高分子化合物からなる医療用ハイドロゲル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線照射による異なる高分子化合物からなる医療用ハイドロゲルに関する。さらには、ハイドロゲル被膜を有する医療用具およびハイドロゲルの膜材に関する。
【0002】
【特許文献1】
特開平8−266616号公報
【特許文献2】
特開平9−263671号公報
【従来の技術】
従来、カテーテルは、点滴や透析用のブラッドアクセス等に用いられてきた。しかし、近年の放射線医療技術の向上と共に、カテーテルを血管内に通して直接患部まで誘導することができるようになり、患部に直接検査または治療を行う医療用具として用いられている。そのため、カテーテルは血管等との摩擦が少なく、より細いものが求められている。また、カテーテル内には通常ガイドワイヤが設けられており、このガイドワイヤは、カテーテルの芯線として目的部位まで案内する役割を奏し、また、先端を放射線で探知できるようにすることでカテーテルを目的部位まで誘導させる役割を奏する。さらに、検査や治療を行う際、一度挿入したカテーテル内でガイドワイヤを摺動させるため、カテーテルとの間の摺動抵抗が少ないもの、径の細いものなど、その挿入性および操縦性のよいものが求められている。
【0003】
また、近年では再生医学の発展と共に、生体表面を覆ったり、生体内に埋め込み、組織が再生するときの足場となる医療材料が注目されている。このような医療材料は、生体と免疫拒絶反応を惹起しにくい生体適合性の高い材料をその目的に応じた様々な形状の医療用具表面に成膜することで生成されており、その膜の安定性の高いものが求められている。そしてその用途としては、創傷被覆材、コンタクトレンズ、人工晶子体などが挙げられる。
【0004】
近年、このような医療材料としてポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルの研究が進められている。引用文献2ではPVA水溶液を成形乾燥し、その成形品を熱処理した後、これをPVAやPVP等の安全性の高い素材の水溶液に含侵して膨潤させた後、放射線を照射してハイドロゲルを製造する方法を開示している。これにより、創傷被覆材として利用する場合、引っ張りの強さが大きく、柔軟性および耐熱性があり、皮膚等への粘着性がよいものが得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生体適合性が高く、生体と接した状態でも安定性が高いハイドロゲルを提供することを目的とするものである。さらに本発明は、剥離や脱落が起こりにくい上述のハイドロゲル被膜を備えている医療用具を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のハイドロゲルは、体内に挿入して、あるいは生体に接して用いるハイドロゲルであって、ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液に、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射することにより生成することを特徴としている。また、本発明の医療用具は、体内に挿入するためのニッケル−チタン合金ワイヤまたはステンレス鋼ワイヤからなる医療用具本体と、その表面を被覆する被膜とからなり、前記被膜が、ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液を医療用具本体に塗布し、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射することにより医療用具本体の表面に固定されていることを特徴としている。さらに、本発明のハイドロゲルの膜材は、ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液を基材上に塗布し、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射し、ついで基材から剥がすことにより形成されることを特徴としている。
【0007】
【作用および発明の効果】
本発明のハイドロゲル(請求項1)は、放射線架橋するポリビニルピロリドンを放射線架橋により共有結合を導入することで硬化させて生成している。そのため、耐熱性および機械的強度に優れており、生体に挿入してあるいは生体と接して使用した後、生体にそのポリビニルピロリドンが残留したりすることがない。また、このハイドロゲルはヒアルロン酸水溶液を含んでいるため、その生体親和性が高く、生体に接した状態でもその性能を長期間持続するハイドロゲルができる。さらに、共有結合の導入に、架橋剤などを用いる必要がないため、人体あるいは生体に対して優しい。また、用いる溶液のヒアルロン酸水溶液およびポリビニルピロリドンの配合また、溶液に添加剤等を添加することによってハイドロゲルの柔軟性などの物性を細かく制御することができ、より生体組織(血管など)にフィットさせることができる。さらに、保水性、親和性を持たすことで体内に挿入して用いる場合、より好ましい。
前記ヒアルロン酸水溶液を用いているため、通常は潤滑性を示さず、湿潤時に潤滑性を示すハイドロゲルを生成することができる。つまり、カテーテルなどの体内に挿入する医療用具などに用いる場合、体内に挿入するまでの取扱が容易であり、体内挿入後は血管等を傷つけない、またその操縦性が向上するため特に好ましい。また、多糖類は人体への影響が小さいため、さらに安全性の高い医療用材料である。
【0008】
本発明の医療用具(請求項2)は、本発明のハイドロゲルを用いているため、生体適合性の高い被膜を有する医療用具ができる。また、放射線を照射することにより高分子化合物(B)を共有結合により固定し、被膜を生成しているため、剥離や脱落を抑えることができる。また、本発明の膜材(請求項3)は、本発明のハイドロゲルを用いているため、前述した作用を奏する。そのため、創傷被覆材として好ましい。
【0010】
【本発明の実施の形態】
図1に示すガイドワイヤ10は、金属製の芯線11と、その芯線の先端部12に設けたコイル13と、その全体を覆うように設けられている被膜14とからなる。このガイドワイヤ10は、カテーテルを血管内に導くためのガイドとして用いるものである。
【0011】
前記芯線11としては、ニッケル−チタン合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、コバルト合金などの金属製のものが用いられる。その径は0.2〜2.0mmとするのが好ましい。芯線11の長さは通常1.5〜2.0m前後であり、芯線11の先端は、先端に向かうにつれて細くなるテーパ状に形成されている。前記コイル13は、芯線11をほぼ密着した螺旋状に巻き形成したものであり、それらのコイル13の両端は、ろう付け等で固定されている。
【0012】
前記コイル13は、外部からガイドワイヤの先端位置が分かるように、X線造影性を有する金属線から構成されている。そのようなX線造影性を有する金属としては、金、白金、銀、ビスマス、タングステン、タンタル、イリジウム、ロジウム、コバルトまたはこれらの合金などが挙げられる。
【0013】
前記被膜14は、生体適合性の高いヒアルロン酸水溶液と、放射線架橋するポリビニルピロリドンを含有する溶液Xを、芯線11およびコイル13からなる本体の外周に塗布あるいは含侵させ、放射線を常温常圧で好ましくは50〜100kGy照射することにより、固定化したものである。5kGy未満では放射線架橋の効果が薄く、900kGyより大きい場合は、材料の劣化を招くおそれがある。この被膜14の厚さは5〜500μm程度であるものが好ましい。
【0014】
このような被膜14において、放射線照射によって分解されていない生体適合性の高いヒアルロン酸水溶液が5〜95重量%、特に20〜90重量%含んでいるものが好ましい。95重量%より多い場合、これらのヒアルロン酸水溶液を充分固定することができず、剥がれたり脱落したりする恐れがある。また、5重量%未満である場合、その被膜の潤滑性が充分でないなどその被膜の生体適合性が低下する。
【0016】
上述の高分子を含む溶液Xにおいて、ヒアルロン酸水溶液を3〜50重量%含み、ポリビニルピロリドンを5〜30重量%含む水溶液を用いることが好ましい。また、ポリビニルピロリドンは架橋に充分な濃度を含むことが必要であり、ヒアルロン酸水溶液はポリビニルピロリドンの架橋を阻害しないことが重要である。
【0017】
また、図2に示す螺旋状の医療器具20aと鉤型の医療器具20bは、線状の医療器具本体21に、ヒアルロン酸水溶液とポリビニルピロリドンとを含有する水溶液を前記の方法で被覆し(符号22)、目的の形に形成し、放射線架橋でその被膜22を硬化させることで得ることができる。
【0018】
これまでの実施の形態では、医療用具本体に被覆する医療用具を開示してきたが、基材を用いない有機スラントとしても使用することができる。このような有機スラントは創傷被覆材などに用いられる。
このような有機スラントは、金型に注入することで成形したり、シート状の基材にヒアルロン酸水溶液とポリビニルピロリドンとを含有する水溶液を塗布し、放射線架橋により硬化させ、その金型あるいはシート状の基材から剥がすことで設けることができる。図3に示すチューブ状の有機スラント30は、金属芯線31にヒアルロン酸水溶液とポリビニルピロリドンとを含む水溶液を前記の方法で被覆し(符号32)、その後、金属芯線31を矢印の方向に引き抜くことで生成することができる。
【0019】
【実施例】
10%PVP水溶液および1%キトサン0.1N塩酸水溶液、1%ヒアルロン酸水溶液をそれぞれ調整した。これらを以下の割合で混合した。
[比較例1]
10%PVP水溶液:2.5ml
1%キトサン0.1N塩酸水溶液:2.5ml
[比較例2]
10%PVP水溶液:4.75ml
1%キトサン0.1N塩酸水溶液:0.25ml
[実施例1]
10%PVP水溶液:2.5ml
1%ヒアルロン酸水溶液:2.5ml
[実施例2]
10%PVP水溶液:4.75ml
1%ヒアルロン酸水溶液:0.25ml
[比較例3]
1%キトサン0.1N塩酸水溶液:5ml
[比較例4]
1%ヒアルロン酸水溶液:5ml
【0020】
上述の混合溶液と適当な長さに切断したニッケル−チタン合金ワイヤおよびステンレス鋼ワイヤを共栓付き試験管に入れ、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy(キログレイ)、100kGy照射した。そのときのワイヤ表面への膜の形成の有無を表1に示す。また、ニッケル−チタン合金ワイヤとステンレス鋼ワイヤによる差は見られなかった。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、膜の形成は放射線架橋する高分子化合物(B)を含有している溶液を用いた時に膜の形成が見られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の医療用具の一実施形態を示す側面図である。
【図2】 本発明の医療用具の他の実施形態の製造方法の概略を示すフロー図である。
【図3】 本発明の医療用具のさらに他の実施形態を示す製造方法の概略を示すフロー図である。
【符号の説明】
10 ガイドワイヤ
11 芯線
12 先端
13 コイル
14 被膜
20a、20b 医療用具
21 医療用具本体
22 被膜
30 有機スラント
31 金属芯線
32 被膜
Claims (3)
- 体内に挿入して、あるいは生体に接して用いるハイドロゲルであって、
ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液に、
コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射することにより生成するハイドロゲル。 - 体内に挿入するためのニッケル−チタン合金ワイヤまたはステンレス鋼ワイヤからなる医療用具本体と、その表面を被覆する被膜とからなり、
前記被膜が、ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液を医療用具本体に塗布し、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射することにより医療用具本体の表面に固定されている医療用具。 - ヒアルロン酸水溶液と、ポリビニルピロリドン(PVP)とをのみ含有する溶液を基材上に塗布し、コバルト60を線源とするガンマー線を50kGy〜100kGy照射し、ついで基材から剥がすことにより形成されるハイドロゲルの膜材。
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