JP3416729B2 - 血管内手術に用いる器質化を促進するコイル、およびこのコイルを血管内に留置するための留置装置 - Google Patents

血管内手術に用いる器質化を促進するコイル、およびこのコイルを血管内に留置するための留置装置

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JP3416729B2
JP3416729B2 JP2000123511A JP2000123511A JP3416729B2 JP 3416729 B2 JP3416729 B2 JP 3416729B2 JP 2000123511 A JP2000123511 A JP 2000123511A JP 2000123511 A JP2000123511 A JP 2000123511A JP 3416729 B2 JP3416729 B2 JP 3416729B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血管内治療に用い
るコイルに関する。
【0002】
【従来の技術】カテーテルと塞栓材料を用いた血管内治
療において、動脈瘤、動静脈奇形や動静脈瘻等の血管障
害や腫瘍への栄養動脈の塞栓治療が行われてきた。種々
の塞栓材が使用されてきたが、コイルはその安全性と簡
便性から近年多用されるようになってきた。この場合に
は、カテーテル先端を処置部位近傍へと導き、この先端
からコイルを処置部に注入し、または、先端にコイルを
有するガイドワイヤーをこのカテーテルを通じて処置部
に挿入し、コイル部を離脱させて処置部に留置する。コ
イル自体とコイル上に形成された血栓により、処置部へ
の血流が遮断され、治療が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本治療法の有効性と安
全性は明らかであるが、ここ数年、急速にコイルが適用
された症例が増加するとともに、その限界が徐々にでは
あるが明らかになってきた。例えば、動脈瘤の治療で
は、瘤内への血液の流れ込みを防止するために、瘤内へ
留置するコイルの体積分率を30%以上とすることを目
標にしていた。当初は、30%以上の体積分率でコイル
を留置すると、瘤内で血栓が形成され、さらに線維芽細
胞および血管内皮細胞が増殖し、動脈瘤内で血栓が器質
化され、さらに動脈瘤の入り口が内皮細胞で覆われ、治
癒するものと期待されていた。しかし、動物実験モデル
や剖検例の処置部を観察すると、コイル留置後、長期経
過した後もコイルの周囲は器質化されず、特に動脈瘤の
開口部ではコイルが直接に血流に接している状態であっ
た。この様な状態では、コイルに時として形成される血
栓が剥離し、これにより血管が閉塞されて脳梗塞を引き
起こす可能性を無視できない。また、瘤内へ流入する血
流により瘤が破裂する危険性も無視できない。このた
め、器質化を促進するコイルの開発が望まれる。
【0004】器質化を促進するコイルとしては、イオン
注入を行った白金コイル、さらにイオン注入を行った白
金コイルの上にコラーゲンタンパクを吸着させたコイル
が開発されており、動物実験では効果があると発表され
てきた[(Y. Murayama, Y.Suzuki, F. Vinuela, et a
l. (Developement of a Biologically active Guglielm
i Detachable Coil for the Treatment of Cerebral An
eurysms. Part I: InVitro Study), AJNR Am J. Neuror
adiol, 20, 1986 - 1991 (1999): Y. Murayama, F. Vi
nuela, Y. Suzuki, (Developement of a Biologically
active Guglielmi Detachable Coil for the Treatment
of Cerebral Aneurysms. Part II: An Experimental S
tudy in a Swine Aneurysm Model, AJNR Am J. Neurora
diol, 20,1992 - 1999 (1999) ]。しかし、これはコイ
ルの表面への細胞の接着を向上させたものでしかなく、
積極的に器質化を促進していない。このため、その効果
には限界がある。さらにイオン注入が高額であるため、
現在まで普及していない。
【0005】本発明の課題は、血管内手術の際に血管内
に留置するためのコイルであって、コイルの周囲におけ
る器質化を促進できるようなコイルを提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、血管内手術の
際に血管内に留置するためのコイルであって、金属製の
コイル本体と、このコイル本体の表面に固定化された細
胞増殖因子または細胞増殖因子の遺伝子を含むベクター
とを備えていることを特徴とする、コイルに係るもので
ある。
【0007】本発明者は、コイル表面に細胞の増殖を促
進する細胞増殖因子または細胞増殖因子の遺伝子を含む
ベクターを坦持させ、コイルを処置部に留置した後、コ
イルより細胞増殖因子を徐々に放出させ、あるいは細胞
増殖因子の遺伝子を含むベクターを周囲の細胞へと感染
させることで、処置部で細胞の増殖を促進し、さらに器
質化を促進できることを見いだし、本発明を完成させ
た。このようなコイルは、臨床例が増えるに従って限界
が明らかになってきた血管内留置用コイルの限界を解決
するものであるので、全世界的に医療器具メーカーにお
いて利用される蓋然性が非常に高く、産業上の利点は極
めて大きい。
【0008】本コイルは、好ましくは血管障害部位に留
置するものである。本発明のコイルを血管内、特に血管
傷害部位に留置することで、コイルの周囲の器質化を促
進できる。血管障害部位とは、例えば動脈瘤、動静脈奇
形、動静脈瘻等である。また、腫瘍への栄養動脈の塞栓
治療にも有用である。
【0009】図1は、本発明のコイルを血管7の動脈瘤
8内に留置した状態を示す模式図である。このコイル1
を留置することで、動脈瘤8内に線維芽細胞9を増殖さ
せて動脈瘤8内を器質化でき、さらに動脈瘤8の開口部
を血管内皮細胞10で覆うことができることがわかっ
た。この結果、血栓の飛散、動脈瘤の破裂を効果的に防
止できる。
【0010】本発明において細胞増殖因子またはベクタ
ーをコイル本体表面に固定化するためには、好ましく
は、例えば図2(b)に示すように、塩基性または酸性
基の解離性極性基4を有する物質3の膜をコイル本体2
の表面2aに形成し、この膜の表面に細胞増殖因子5
を、解離性極性基4とのイオン間相互作用によって固定
化し、コイル1を得る。図2(b)の例では、細胞増殖
因子5が負に帯電している場合には、塩基性の解離性極
性基を有する化合物を使用する必要がある。
【0011】本発明の他の実施形態においては、図2
(a)、(c)に示すように、コイル本体2の表面2a
に、塩基性または酸性の解離性極性基4を有する物質3
の膜を設ける。そして、解離性極性基と反対の荷電の酸
性基または塩基性基を有する高分子化合物6を膜上にイ
オン間相互作用によって固定化する。従って、膜の解離
性極性基4が正に帯電している場合、つまり塩基性基で
ある場合には、高分子化合物6は負に帯電しており、つ
まり酸性基を有している必要がある。膜の解離性極性基
4が負に帯電している場合、つまり酸性基である場合に
は、高分子化合物6は正に帯電しており、つまり塩基性
基を有している必要がある。次いで、細胞増殖因子5を
高分子化合物6に対してイオン相互作用、水素結合また
はアフィニティー相互作用によって固定化する。
【0012】膜を構成する物質3は限定されないが、一
方の端部にチオール基を有し、他方の端部に解離性極性
基を有する鎖状炭化水素化合物であることが好ましく、
この鎖状炭化水素が自己組織化能を有することが更に好
ましい。炭化水素化合物はアルキル化合物またはオレフ
ィン化合物が好ましく、アルキル化合物が更に好まし
い。炭化水素化合物は分枝状でも直鎖状でも良いが、自
己組織化のし易さから直鎖状であることが特に好まし
い。
【0013】物質3の解離性極性基4は、酸性基または
塩基性基である。この塩基性基としては、1級アミノ
基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基が好ま
しい。この酸性基としては、カルボキシル基、スルホン
酸基、硫酸エステル基が好ましい。
【0014】物質3が炭化水素化合物からなる場合に
は、炭化水素化合物、特に解離性極性基置換されたアル
カンチオール中の炭素鎖(CH2基)の個数は1−30
個が好ましく、5−20個が更に好ましい。
【0015】物質3にチオール基を設ける場合には、コ
イル本体2の表面に金膜を形成することが特に好まし
い。金膜は、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成
長法などによって形成できる。金膜の厚さは5−100
nmとすることが好ましい。この場合には、コイル本体
の材質は白金または白金の合金であることが、その生体
適合性のため、好ましい。ただし、白金それ自体は表面
処理をするのが困難であるため、白金の表面に金膜を設
けることが好ましい。白金と合金化される金属として
は、タングステン、イリジウムが挙げられる。
【0016】また、膜3はシランカップリング処理によ
って形成された膜であってもよい。これは、特にコイル
本体の表面に酸化被膜が存在する場合に適合している。
コイル本体の表面に酸化被膜が存在するものとしては、
例えばニチノール合金製コイルがある。こうした場合に
は、一方の端部に解離性極性基(酸性基または塩基性
基)を有するシランカップリング剤をコイル本体の表面
に付着させる。こうした塩基性基としては、1級アミノ
基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基があ
る。シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピ
ルトリエトキシシランやN−β−(アミノ)−γ−アミ
ノプロピルトリメトキシシラン、シラン オクタデシル
ジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アン
モニウムクロライドが好ましい。この表面に直接イオン
間相互作用にて細胞増殖因子を吸着させることができ
る。
【0017】図2(c)に示すように、解離性極性基を
有する高分子化合物6を更に固定化することによって、
細胞増殖因子の坦持量を著しく増加させることができ
る。例えば図2(c)に示すように、物質3の解離性極
性基4が塩基性基である(正に帯電している)場合に
は、酸性基を有する高分子化合物6(負に帯電する)を
吸着させる。一方、物質3の解離性極性基4が酸性基で
ある(負に帯電している)場合には、塩基性基を有する
高分子化合物6(正に帯電する)を吸着させる。
【0018】さらに、酸性基を有する高分子化合物と塩
基性基を有する高分子化合物とを交互に繰り返して吸着
させることによって、コイル表面に更に多量の官能基を
導入できる。高分子化合物でコーティングされた表面へ
と細胞増殖因子5をイオン吸着、水素結合またはアフィ
ニティー吸着させ、坦持させる。
【0019】本発明によれば、表面を塩基性基また酸性
基を有する処理剤、または、この表面をさらに長鎖高分
子を積層することで、表面が有する基を塩基性基か酸性
基のいずれかが主体となるようにでき、正または負に荷
電している細胞増殖因子をイオン間相互作用で坦持でき
るコイルを作製できる。天然高分子を用いることで、こ
れにアフィニティーを有する細胞増殖因子を坦持でき
る。
【0020】また、細胞増殖因子とアフィニティー相互
作用部位を有する高分子の長さ、密度等を適宜選択する
ことで、粒径の大きな細胞増殖因子の分子集合体や、細
胞増殖因子またはベクターの封入されたマイクロカプセ
ルを、電荷の正負にかかわらず坦持できる。こうした分
子集合体やマイクロカプセルは通常は担持が困難なもの
である。さらに、高濃度で持続して局所に細胞増殖因子
を投与することが出来る。
【0021】酸性基を有する高分子化合物としては、合
成高分子であるアクリル酸、メタクリル酸、ポリマレイ
ン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸
エステル、側鎖に燐酸基を有する高分子、グルタミン酸
それらの共重合体、半合成高分子であるカルボキシメチ
ルセルロース、セルロース硫酸エステル、天然高分子で
あるアルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、
デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリ
ンなどが挙げられる。また、これらの材料を2種以上組
み合わせたものであってもよい。
【0022】塩基性基を有する高分子化合物としては、
合成高分子であるポリアリルアミン、ポリエチレンイミ
ン、ポリリジン、2−ジエチルアミノメチルメタアクリ
ル酸エステル、N−3−N,N−ジメチルアミノプロピ
ルアクリルアミド、ポリプレン、半合成高分子であるジ
エチルアミノエチルデキストラン、天然高分子であるキ
ソサン、プロタミンを例示できる。また、これらの材料
を2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0023】細胞増殖因子は、目的とする部位における
細胞を増殖させる能力があれば良い。このため、目的と
する留置箇所によって、必要とされる細胞増殖因子の種
類を選択することができるので、細胞増殖因子の種類に
は制限はない。例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子、酸
性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞
増殖因子、血小板由来増殖因子などの各種増殖因子が挙
げられる。また、これらの細胞増殖因子の遺伝子を含む
ベクターとしては、プラスミドやウイルスベクターが挙
げられる。また、細胞増殖因子およびベクターの中から
2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0024】細胞増殖因子の固定化はコイル本体の表面
の一部にのみ設けられてもよいが、好ましくはコイル全
面に設けられる。
【0025】高分子化合物の分子量は坦持すべき生理活
性の種類等によって適宜調節することができるが、好ま
しくは500 −100,000,000 、特に好ましくは10,000−1
0,000,000であることが好適である。また、コイル表面
に積層した高分子化合物の量は、坦持すべき生理活性の
種類等によって適宜調節することができる。高分子化合
物の素材や分子量等にもよるが、好ましくは0.1 −1000
μg/cm2 特に好ましくは1 −200 μg/cm2 であること
が好適である。
【0026】表面処理を行ったコイルに細胞増殖因子ま
たはベクターを坦持させるには、細胞増殖因子またはベ
クターの水溶液に、細胞増殖因子またはベクターとは逆
に荷電した表面を有するコイルを漬け、細胞増殖因子ま
たはベクターをコイル表面にイオン吸着させる。また
は、細胞増殖因子の水溶液に、細胞増殖因子とアフィニ
ティー相互作用する高分子化合物が坦持されたコイルを
を漬け、細胞増殖因子をコイル表面にアフィニティー吸
着させる。
【0027】細胞増殖因子またはベクターの水溶液のp
Hは、コイル表面の官能基と細胞増殖因子により適宜調
節するが、好ましくは2 −11、特に好ましくは4 −11と
する。また、コイルには複数の種類の細胞増殖因子を坦
持させてもよい。さらにコイルの表面の一部には負に荷
電する高分子、その他の部分には正に荷電する高分子を
設け、正に荷電した細胞増殖因子と、負に荷電した細胞
増殖因子とを1つのコイルに坦持させることも出来る。
【0028】
【実施例】(実施例1)素線径50μmの白金−タングス
テン(8%)合金線を巻回させ、直径250 μmの白金コ
イルを得た。この白金コイルに、日立社製イオンコータ
ーを用いて30μm の金を蒸着した。この金蒸着コイル
を、11- メルカプトウンデカン酸を0.001mole/dl を含
む窒素置換エタノール溶液に24時間漬け、コイル表面に
11- メルカプトウンデカン酸の自己組織化膜を形成させ
た。この処理によりコイル表面には多数のカルボキシル
基が導入される。このコイルを、pH10のポリエチレン
イミン2 %水溶液とpH7 のヘパリン2 %水溶液とに交
互にそれぞれ3 回づつ漬けることで、コイル表面にポリ
エチレンイミン−ヘパリンのポリイオンコンプレックス
を積層させた。最終の浸漬はヘパリン溶液で行うこと
で、コイル最表層はヘパリンで覆われる。最表層がヘパ
リンでコーティングされたコイルを、塩基性線維芽細胞
増殖因子を50μgを含む1 ml溶液に1 時間浸漬するこ
とで、塩基性線維芽細胞増殖因子を坦持させた。
【0029】塩基性線維芽細胞増殖因子を坦持させたコ
イルを、ddY マウスの皮下に埋め込み、埋め込み後4
日、7 日と14日目に、皮下からコイルとその周囲の組織
を取り出した。組織からコイルを除去後、組織の薄切片
を作製し、ヘマトキシリンーエオジン染色を行い光学顕
微鏡にて組織像の観察を行った。コイルの存在した部位
の周囲の組織には、多数の新生血管が見られ、また、線
維芽細胞の増殖も見られた。この現象は、コイルから徐
放された塩基性線維芽細胞増殖因子による。
【0030】(比較例1)素線径50μmの白金ータング
ステン(8%)合金線を巻回し、直径250 μmのコイル
を得た。この未処理白金コイルをddY マウスの皮下に埋
め込み、埋め込み後4 日、7 日と14日目に、皮下からコ
イルとその周囲の組織を取り出した。組織からコイルを
除去後、組織の薄切片を作製し、ヘマトキシリンーエオ
ジン染色を行い光学顕微鏡にて組織像の観察を行った。
コイルの存在した部位の周囲の組織には、若干の結合組
織の形成は見られたものの、その程度は極めて軽微であ
った。
【0031】(実施例2)素線径50μmのニチノール合
金線を巻回し、直径250 μmのニチノールコイルをえ
た。このコイルを、N−β−(アミノ)−γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシランを1 %を含むヘキサン溶液に
1時間漬け、さらに60Cで加熱乾燥することでシラン
カップリング処理を行った。この処理により、コイル本
体の表面には多数のアミノ基が導入される。このコイル
を、pH7 のヘパリン2 %水溶液とpH10のポリエチレンイ
ミン2 %水溶液に交互に浸漬した。ただし、ヘパリン2
%水溶液には3回浸漬し、ポリエチレンイミン2 %水溶
液には2回浸漬した。これによって、コイル表面にヘパ
リンーポリエチレンイミンポリイオンコンプレックスを
坦持させた。最終の浸漬はヘパリン溶液で行うことで、
コイル最表層はヘパリンで覆われる。最表層がヘパリン
でコーティングされたコイルを、塩基性線維芽細胞増殖
因子を50μgを含む1 ml溶液に1 時間浸漬することで、
塩基性線維芽細胞増殖因子を坦持させた。
【0032】塩基性線維芽細胞増殖因子を坦持させたコ
イルを、ddY マウスの皮下に埋め込み、埋め込み後4
日、7 日と14日目に、皮下からコイルとその周囲の組織
を取り出した。組織からコイルを除去後、組織の薄切片
を作製し、ヘマトキシリンーエオジン染色を行い光学顕
微鏡にて組織像の観察を行った。コイルの存在した部位
の周囲の組織には、多数の新生血管が見られ、また、線
維芽細胞の増殖も見られた。この現象は、コイルから徐
放された塩基性線維芽細胞増殖因子による。
【0033】(比較例2)素線径50μmのニチノール合
金線を巻回し、直径250 μmのニチノールコイルをd dY
マウスの皮下に埋め込み、埋め込み後4 日、7 日と14日
目に、皮下からコイルとその周囲の組織を取り出した。
組織からコイルを除去後、組織の薄切片を作製し、ヘマ
トキシリンーエオジン染色を行い、光学顕微鏡にて組織
像の観察を行った。コイルの存在した部位の周囲の組織
には、若干の結合組織の形成は見られたものの、その程
度は極めて軽微であった。
【0034】(実施例3)ガイドワイヤー先端に離脱機
構を介して接続された白金コイル(カネカメディックス
社製「EDコイル」)を実施例1の方法に準じて処理し、
線維芽細胞増殖因子を坦持させた。このコイルを雑種成
犬の総頸動総頸動脈まで挿入し、このカテーテルを通じ
てマイクロカテーテルの先端を動脈瘤内へ導いた。さら
に、マイクロカテーテル内へ白金コイルを先端に有する
ガイドワイヤーを挿入し、先端白金コイルを動脈瘤内へ
導いた。白金コイルが動脈瘤内に収まったことを確認
後、ガイドワイヤーに通電して白金コイルをガイドワイ
ヤーから離脱させ、動脈瘤内に白金コイルを留置した。
動脈瘤内のコイル充填率が30%を越えるまでこの操作
を繰り返した。
【0035】カテーテルとガイドワイヤーを抜去後、犬
を通常の条件下で1ヶ月間飼育した。その後、動脈瘤モ
デル部位を犬から摘出し、動脈瘤を血管の内側から肉眼
的に見たところ、動脈瘤開口部は光沢のある組織で塞が
れいた。
【0036】(比較例2)カネカメディックス社製EDコ
イルをそのまま用いる以外は実施例3と同様の操作を行
った。1ヶ月後に動脈瘤開口部を観察したところ、開口
部には組織は存在せず金属光沢のある白金コイルが観察
された。
【0037】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、血
管内手術の際に血管内に留置するためのコイルであっ
て、コイルの周囲における器質化を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コイルを血管内の動脈瘤内に留置した状態を
示す模式図である。
【図2】(a)はコイル1の正面図である。(b)は、
コイル本体2の表面2aに、解離性極性基4を有する物
質からなる膜3および細胞増殖因子またはベクター5が
吸着されている状態を示す。(c)は、コイル本体2の
表面2aに、解離性極性基4を有する物質からなる膜
3、高分子化合物6およびおよび細胞増殖因子またはベ
クター5が吸着されている状態を示す。
【符号の説明】
1 コイル 2 コイル本体 2a コイ
ル本体2の表面 3 解離性極性基4を有する物
質 4 解離性極性基 5 細胞増殖因子またはベクター 6 解離性極
性基を有する高分子化合物 7 動脈 8
動脈瘤 9 線維芽細胞10 血管内皮細胞
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 17/12 A61B 17/00 320

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 血管内手術の際に血管内に留置するため
    のコイルであって、金属製のコイル本体と、このコイル
    本体の表面に解離性極性基を介して固定化された細胞増
    殖因子または細胞増殖因子の遺伝子を含むベクターとを
    備えていることを特徴とする、コイル。
  2. 【請求項2】 前記コイル本体の表面に設けられた、塩
    基性または酸性の解離性極性基を有する物質の膜を備え
    ており、この膜の表面に前記細胞増殖因子または前記ベ
    クターが前記解離性極性基とのイオン間相互作用によっ
    て固定化されていることを特徴とする、請求項1記載の
    コイル。
  3. 【請求項3】 前記コイル本体の表面に設けられた、塩
    基性または酸性の解離性極性基を有する物質の膜と、こ
    の膜に対してイオン相互作用により固定化され、前記膜
    と反対の荷電を持つ酸性基または塩基性基を有する高分
    子化合物とを備えており、前記細胞増殖因子または前記
    ベクターが前記高分子化合物に対してイオン間相互作
    用、アフィニティー相互作用または水素結合によって固
    定化されていることを特徴とする、請求項1記載のコイ
    ル。
  4. 【請求項4】 前記膜が、一方の端部にチオール基を有
    し、他方の端部に前記解離性極性基を有する鎖状炭化水
    素化合物の自己組織化膜からなることを特徴とする、請
    求項2または3記載のコイル。
  5. 【請求項5】 前記コイル本体の表面に金膜が形成され
    ていることを特徴とする、請求項4記載のコイル。
  6. 【請求項6】 前記膜がシランカップリング処理によっ
    て形成された膜であることを特徴とする、請求項2また
    は3記載のコイル。
  7. 【請求項7】 前記コイル本体の表面に酸化被膜が存在
    することを特徴とする、請求項6記載のコイル。
  8. 【請求項8】 前記酸性基を有する高分子化合物と、前
    記塩基性基を有する高分子化合物とが前記膜上に交互に
    積層されていることを特徴とする、請求項3−7のいず
    れか一つの請求項に記載のコイル。
  9. 【請求項9】前記高分子化合物が、プロテオグリカンお
    よびグリコサミノグリカンからなる群より選ばれている
    ことを特徴とする、請求項3−8のいずれか一つの請求
    項に記載のコイル。
  10. 【請求項10】 前記グリコサミノグリカンが、ヘパリ
    ンおよびヘパラン硫酸からなる群より選ばれていること
    を特徴とする、請求項9記載のコイル。
  11. 【請求項11】 血管内手術の際に血管内にコイルを留
    置するための留置装置であって、 血管内に収容されるべきガイドワイヤーと、ガイドワイ
    ヤーの先端に接続されているコイルと、前記コイルを血
    管内に固定した後に前記コイルの前記ガイドワイヤーか
    らの離脱を可能とするための離脱機構とを備えており、
    前記コイルが請求項1−10のいずれか一つの請求項に
    記載のコイルであり、前記離脱機構が通電により行なわ
    れることを特徴とする、留置装置。
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