JP4427636B2 - 人工栓塞物 - Google Patents

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Description

本発明は、血管内治療に用いられる人工栓塞物に関するものである。
血管障害の一つである脳動脈瘤は、くも膜下出血の原因の80%以上を占めている。くも膜下出血を起こした場合には、そのうち約50%が死亡すると言われている。このような脳動脈瘤の治療においては、現在のところ、特殊なクリップで瘤の根元部分を挟み付けるクリッピング術が主流の治療方法とされている。クリッピング術は、確立された治療法であるものの、患者が非常に重症の場合や高齢の場合などには、開頭術による侵襲のため、手術を行えない場合がある。また、動脈瘤の部位によっては手術が非常に難しいこともある。
これに対して、新しい低侵襲治療としてコイル塞栓治療が発展してきている。コイル塞栓治療とは、動脈瘤の内部にプラチナ製のコイルを詰めて、動脈瘤を閉塞する治療方法である。臨床研究によれば、コイル塞栓治療後、14%が動脈瘤の再発をしていると報告されている。この再発は、動脈瘤内の線維化が遅れるため、瘤内に血流が流れ込み、血管壁に圧がかかることで、動脈瘤が拡大、あるいは瘤の横から新たに動脈瘤形成が起こることによるものと考えられる。このような欠点を補うため、コイル表面に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を備えたコイルが開発されている(特開2001−299769)。
特開2001−299769号公報
しかしながら、上記のようなコイルに対する研究開発は、未だに十分な成果を挙げるには至っておらず、開発途上にあるものと言える。例えば、動脈瘤内にコイルを入れ、コラーゲンなどの安定な結合組織基質が充填されれば、瘤内への血流を妨げることにより、動脈瘤の再形成を防ぐことができると考えられる。つまり、コイル充填による動脈瘤内の線維化を意図的に行うことができれば、コイル塞栓治療は、より効果的なものとなる。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は塞栓効果をより高めて、血管内腔の線維化を促進する人工栓塞物を提供することである。
課題を解決するための手段、発明の作用、及び発明の効果
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、動脈内にテネイシンCを存在させることによって、その動脈の塞栓効果を高められることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
テネイシンCは、動脈硬化、血管吻合部、冠動脈形成術後、ステント留置などで、内膜の新生を引き起こし、血管の狭窄を引き起こすことが知られている。テネイシンCの発現は、これらの病変や治療にとっては悪い結果を及ぼすと考えられているため、この分子の発現を抑える方法が上記の病変を改善することになると考えられ、多くの研究は発現抑制を目指してなされてきた。ところが、本発明者らは、この作用を逆に捉えた。すなわち、動脈瘤などの血管障害部位では、血管の内膜の新生を引き起こし、腔を閉塞できれば、良好な治療効果が得られると考えられた。そこで、テネイシンCを固相化して、血管障害部位に固定することにより、内腔の閉塞を促進できるのではないかと考えた結果、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明に係る人工栓塞物は、テネイシンCを含有することを特徴とする。本発明に係る人工栓塞物は、血管障害部位に留置することにより、テネイシンCの作用により周囲の器質化を効果的に促進することができ、確実に線維化を引き起こし、血管内腔を狭小化し閉塞する。血管障害部位とは、例えば動脈瘤、動静脈奇形、動静脈瘻等を意味している。また、この人工栓塞物は、腫瘍への栄養動脈の塞栓治療にも用いることができる。
人工栓塞物としては、例えば金属製のコイル本体で構成する場合、或いはスポンジで構成する場合があり得る。このうちコイル本体で構成する場合には、そのコイル本体は、生体に対する反応が少なく、かつ柔軟性に富む材料(例えば、プラチナ、または金を主材料とするもの。この主材料が100%のものを使用することができるし、主材料に対して5%〜20%の副材料(例えば、タングステン)を含有させることができる)で形成することができる。コイル本体の大きさは、特に限定されないが、動脈瘤の内部に留置できる程度であることが好ましい。具体的には、上記材料から線素材を形成し、その線素材をコイル状に巻き付けたものを用いることができる。線素材としては、例えば、素線径が約1μm〜約100μmのものを用いることができる。また、コイル本体は、その直径が約0.1mm〜約1mm、その長さが約5mm〜約50cmのものを用いることができる。
本発明の人工栓塞物を脳動脈瘤に使用する場合には、例えば、素線径が約0.03mm〜約0.08mm、プライマリーコイル径が約0.2mm〜約0.4mmのものを用いることができる。
テネイシンC(Tenascin-C)とは、細胞外マトリックス糖タンパク質の一種である。ヒトテネイシンCの1つのサブユニットは、分子量210kD〜400kDであり、N末側からコイルドコイル(coiled-coil)を作るTAドメイン配列があり、続いてEGF様配列が繰り返され、さらにフィブロネクチンタイプIII(FNIII)繰り返し配列がある。このFNIII繰り返し配列には、選択的スプライシングを受ける領域があり、分子量の異なる多種のバリアントをつくり出す。また、C末端には、フィブリノーゲン様部位があり、このサブユニットがN末端付近のコイル状部位でより合わさって3量体になり、さらにこれらがS−S結合によって結合して6量体となり組織に存在していると考えられている。テネイシンCはヘパリン結合部位を有していることから、テネイシンCを固定化するためには、ヘパリン若しくはヘパリン様活性物質を使用することが好ましい。ここでヘパリン様活性物質とは、テネイシンCに結合する作用を備えているヘパリンの一部分を意味している。
コイル本体の表面にテネイシンCを固定するには、コイル本体の表面にテネイシン結合能を備えた第1層を設けておき、この第1層の表面にテネイシンCを固定する。第1層の材料としては、例えばヘパリン若しくはヘパリン様活性物質を含有する材料で形成することができる。ヘパリンとは、D−グルコサミン、D−グルクロン酸、L−イズロン酸からなる多糖のN−硫酸、N−アセチルおよびO−硫酸置換体を意味する。その分子量については、限定されないが、例えば1x10以上のものを用いることができる。また、必要な場合には、コイル本体の表面と第1層との間に、第2層を設けることができる。この第2層は、第1層をより強くコイル本体の表面に固定するためのものであり、例えば樹脂(ウレタン樹脂など)などの材料を用いて形成することができる。
すなわち、本発明において、前記コイル本体の表面とテネイシンCとの間に、テネイシン結合能を備えた第1層を設けることが好ましい。この場合には、コイル本体、第1層、及びテネイシンC含有層が設けられることになる。更に、前記コイル本体の表面と第1層との間に、第1層をより強くコイル本体の表面に固定する第2層を設けることが好ましい。この場合には、コイル本体、第2層、第1層、及びテネイシンC含有層が設けられることになる。テネイシンCの固定化は、コイル本体の表面の一部のみに設けられてもよいが、コイル本体の全面に設けることが好ましい。
また、上記発明において、前記人工栓塞物は、金属製のコイル本体と、このコイル本体に固定された構造物とを含み、前記テネイシンCは、少なくとも前記構造物に含有されていることが好ましい。構造物としては、例えば生体に対して刺激性の少ないものを材料として繊維状に構成されたものやゲル状のものを用いることができる。構造物の表面にテネイシンCを塗布したり、構造物そのものにテネイシンCを含有させることなどにより、テネイシンCを構造物に含有させることができる。また、コイル本体と構造物とを「固定」する場合には、(1)コイルの中空部分に繊維材もしくはゲル状物質を挿入する構成、或いは(2)コイル構造全体を被覆するよう繊維材やゲルを配置する等の構成がある。
本発明によれば、塞栓効果をより高めて、血管障害部位の線維化を促進するコイルを提供できる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、下記の実施形態によって限定されるものではなく、その要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
1.試験方法
<コイルの準備>
長さ12.5mm、直径0.3mmのプラチナコイル(素線径が約50μmのものをコイル状に巻き付けたもの)に、金イオンとアルカンチオール、ポリエチレンチミン、及びヘパリンをこの順番に結合したヘパリン固定化コイルを用いた。ヘパリン固定化コイルをテネイシンC溶液(PBS溶液で100μg/ml)に4℃1時間浸漬させ、ヘパリンを介してテネイシンCをコイルに結合させた。テネイシンCは、ヒト神経膠芽腫由来U251MG細胞の培養上清から精製した(Tsunoda T,Inada H,Kalembeyi I,Imanaka-Yoshida K,Sakakibara M,Okada R,Katsuta K,Sakakura T,Majima Y,Yoshida T. Involvement of large tenascin-C splice variants in breast cancer progression. Am J Pathol. 2003 Jun;162(6):1857-67.)。また、ヘパリン固定化コイルにbFGF溶液(PBS溶液で100μg/mlにしたもの)に室温1時間浸漬させ、ヘパリンを介してbFGFをコイルに結合させた。
上記のようにして調整したコイルのうち、非修飾のプラチナコイルをコントロール群に、ヘパリン固定化コイルをヘパリン群に、bFGFを浸漬させたものをbFGF群に、テネイシンCを浸漬させたものをテネイシン群とした。
<ラット動脈瘤モデル作製>
体重300g〜400gのオスSDラット22匹について、35mg/kgのペントバルビタールナトリウム(sodium pentobarbital)を腹膜内注射で投与することにより麻酔した。麻酔下ラットの下顎骨下から胸骨柄まで正中切開した。総頸動脈(Common carotid artery(以下、「CCA」という))は、胸鎖乳突筋の前縁に沿って剥離していった。そして、CCAを確認した後、肩甲舌骨筋を切らないように内頚静脈、迷走神経を剥離し、次のような手順でコイルを留置した。(1)CCAの分岐部の近位で永久結紮し、盲端を形成した。(2)CCAの起始部をクランプし、(3)小さな動脈切開を、永久結紮部位より2mm近位に行い、コイルをCCAに挿入した。(4)出血防止のため、動脈切開した部位より少し近位で結紮した。(5)血流内でコイルを固定するために、永久結紮部位よりもさらに3mm近位側に結紮した。(6)クランプは血流を頚動脈内で再開通するために解除した。
これで動脈瘤モデルが完成となる。以上のように、本実施形態では血管(CCA)を盲端にすることで、動脈瘤モデルとした。コイルを留置するラットはコントロール群に6匹、ヘパリン群に6匹、bFGF群に6匹、及びテネイシン群に8匹使用した。コイルの留置後、14日目にこれらのラットは同様の手技でCCAを露出させ、コイルを含むCCAセグメントを摘出した(約10mm)。そのセグメントは、10%ホルムアルデヒド緩衝溶液に入れた。テネイシン群2匹は28日目に同様に組織を得た。
<組織病理学>
ホルムアルデヒドに保存したCCAセグメントは、パラフィン包埋を行った。包埋した後、コイルを引き抜き、ブロックから4μmの厚さで薄切して切片を作製した。それぞれの切片中の細胞、コラーゲンの状態を評価するために、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色とSirius赤染色、α-smooth muscle actin(以下、「α−SMA」という)に対する免疫染色(anti-human smooth muscle actin/HRP-EPOS、DAKO Japan,Kyoto)、マクロファージの免疫染色(ratCD68,mouse anti-rat mononuclear phagocyte antibody,BD Biosciences,USA)、内皮細胞の免疫染色(rabbit anti-von-Willebrand factor,Dako Japan,Kyoto)を行った。α−SMAの免疫染色は、脱パラフィン後、過酸化水素処理、ブロッキングを行い、α−SMA抗体をそのまま使用し、4℃で一晩インキュベートした。発色基質には、DAB(3,3'-diaminobenzidine)/過酸化水素溶液を用いた。
マクロファージ免疫染色は、脱パラフィン後、過酸化水素処理、ブロッキングを行い、一次抗体をPBS(phosphate buffer saline)で20倍希釈し、4℃で一晩インキュベートした。二次抗体には、抗マウスIgG−パーオキシダーゼ標識抗体(anti mouse IgG - Peroxidase、MBL社製))をPBSで200倍希釈して使用し、2時間インキュベートした。発色基質には、DAB/過酸化水素を用いた。内皮細胞の免疫染色は、von Willebrand因子に対する市販の希釈一次抗体をかけ、4℃で一晩処理し、二次抗体には、抗ウサギIgG−パーオキシダーゼ標識抗体(MBL社製))をPBSで200倍希釈して使用し、2時間反応させた。発色基質には、DAB/過酸化水素を用いた。染色処理が完了後、それぞれの切片を顕微鏡で観察した。線維化部位、および血管腔の面積計算には、内弾性板を基準にして、Scion Image[Scion Corporation,US(http://www.scioncorp.com/)にてダウンロード可能なソフトウエア]を使用した。
2.試験結果
<顕微鏡観察>
図1には、各群の切片をHE染色したときの顕微鏡写真図を示した。なお、血管腔内の孔部(アスターリスク*で示されている)は、コイルを引き抜いたときできたものであり、いずれの写真においても同等の径を備えている。
写真中の血管腔内を評価すると、テネイシン群では、コイル本体の部分を除くほぼ全体の血管腔に器質化がみられ、結合組織が形成されていた。bFGF群では、血栓の一部に器質化が見られた。一方、ヘパリン群やコントロール群では、ほとんど器質化は見られなかった。
図2には、器質化に効果がみられたテネイシン群とbFGF群の切片をSirius赤染色したのち偏光顕微鏡で撮影したものを示す(左:同部位のHE染色。右:偏光顕微鏡像)。膠原線維はこの方法では赤色調の複屈折性をしめす。血管腔内の膠原線維の集積を評価すると、テネイシン群では、14日で太い膠原線維の密な集積が確認できた(中段)。28日のラットから採取された組織(下段)では、細胞数の減少が見られ、線維化が進んでいた。一方、bFGF群では、膠原線維の形成は殆ど見られなかった(上段)。
図3には、テネイシン群とbFGF群切片をα−SMA、マクロファージのマーカーであるCD68、内皮細胞のマーカーであるvon Willebrand因子(von Willebrand factor.以下、「vWF」という)の免疫染色したものの顕微鏡写真図を示した。血管腔内の平滑筋細胞(smooth muscle cell(以下、「SMC」という))の集積を評価すると、テネイシン群では、結合組織内に多数のSMCが密に集積していた。一方、bFGF群では、SMCの集積は見られなかった。マクロファージ(CD68)の免疫染色では、テネイシン群とbFGF群のいずれでも、器質化部にマクロファージが集積していた。vWFは、bFGF群では血栓と器質化部の境界面で陽性であった。テネイシン群では、小型の毛細血管で陽性であった。これらから、テネイシン群とbFGF群では、器質化部を構成する細胞が異なっており、テネイシン群ではSMCが主体であることがわかった。
<病理評価>
図4には、各群における血管腔面積を比較したグラフを示した。血管腔面積をそれぞれ比較すると、コントロール群の血管腔が最も大きく、次いでヘパリン群、bFGF群、及びテネイシン群の順に小さくなった。テネイシン群は、コントロール群(p<0.015)及びヘパリン群(p<0.042)に対して、有意に血管腔が小さくなった。また、有意差は認められなかったものの、テネイシン群の血管腔面積の平均値(0.352mm)は、bFGF群の血管腔面積の平均値(0.516mm)に比べて、70%以下に小さくなった。
図5には、各群における器質化率を比較したグラフを示した。コントロール群(4.84)及びヘパリン群(1.62%)では、ほとんど器質化が認められなかった。bFGF群では、器質化が認められたものの、その割合は低く(17.94%)、十分な器質化は見られなかった。一方、テネイシン群では、器質化率は非常に高く(93.41%)、残りのいずれの群に対しても有意差を示した(p<0.0001)。
3.考察
本実施形態において使用したプラチナコイルは、非常に柔らかいので、動脈瘤の形状やサイズに適合する。このため、動脈瘤内にしっかり詰められたコイルは、動脈瘤にとって、血流を母血管と遮断し、血栓を形成することにより、破裂や瘤の再形成を防止する期待がもたれる。したがって、コイル塞栓治療は、理論的には、動脈瘤の開口部に沿って起こる血栓化、線維化、そして最終的には開口部表面の内皮化を促進するために、コイルを動脈瘤内に隙間がなくなるように詰め込むことが必要である。この必要性から、柔軟性のあるプラチナコイルは理想的である。しかし、プラチナコイルを用いた場合には、血管造影像ではコイルが動脈瘤を塞いでいるように見えるものの、コイルが動脈瘤内を占める容積(充填率)は実際には30%程度に過ぎない。
コイルの留置によって、瘤内には血栓化が起こる。この血栓は、最終的に器質化・線維化を起こすことが好ましい。そうすれば、動脈瘤からプラチナコイルの隙間を流れる血流で、動脈瘤の再拡大や破裂・再出血をおこす心配がなくなるからである。動脈瘤治療の場合には、血管では生物学的に不利益と考えられている血栓形成や血管内膜の新生を引き起こし、最終的には線維化により、瘤内を塞いでしまうことが望まれる。プラチナは生物活性のきわめて低い金属であり、組織反応が起こらないことが、血管内治療を行う材料としての利点と考えられてきている。したがって、プラチナコイル自体に血栓形成や内膜新生を期待することは無理であり、そのような生物活性を持つ物質を付加することができれば、コイル塞栓治療をより有効にすると考えられる。
現在、コイル塞栓治療では、コイル表面に増殖因子やそれを発現する線維芽細胞を付着させる方法で、VEGF(John M. Abrahams,Mark S. Forman,Sean Grady,and Scott L. Diamond: Delivery of Human Vascular Endothelial Growth Factor with Platinum Coils Enhances Wall Thickening and Coil Implantation in a Rat Aneurysm Model. AJNR 22: 1410-1417,August 2001)や、bFGF(Liu Hong,Susumu Miyamoto,Keisuke Yamada,Nobuo Hashimoto,Yasuhiko Tabata: Enhanced Formation of Fibrosis in a Rabbit Aneurysm by Gelatine Hydrogel Incorporating Basic Fibroblast Growth Factor. Neurosurgery vol.49,954-961,2001,David F. Kallmes,Armistead D. Williams,Harry J. Cloft,Maria-Beatriz S. Lopes,Gerald R. Hankins,Gregory A. Helm: Platinum Coil-mediated Implantation of Growth Factor-secreting Endovascular Tissue Graft: An in Vivo Study. Radiology 207: 519-523,1998)などの効果をみる試みがされている。
本実施形態で使用したテネイシンCは細胞外マトリックス糖蛋白の一種で、上記のような増殖因子に分類されるものではなく、また、血栓形成を促進する機能は知られていない。動脈硬化病変、経皮経血管的動脈形成術(Percutaneous transluminal coronary angioplasty。以下、「PTCA」という)や血管吻合術やステント留置術などの後の血管の再狭窄病変で、早期にテネイシンCの発現が見られる。テネイシンCは血管壁中膜などのSMCを内膜に遊走させ、その増殖を引き起こし、新生内膜の形成を促進していると考えられている。ヒトにおけるPTCA後の組織の検討では、内膜でのテネイシンCの発現とSMCの増殖は1ヶ月以内で生じ、その後、プロテオグリカンの一種のPG−Mが1ヶ月〜3ヶ月の間に蓄積され、その量的な効果により極度の内腔狭窄が起きる。3ヶ月以降になると、新生内膜は、I型、III型コラーゲンで構成されるより成熟した細胞外マトリックスに置きかえられ、長期ではふたたび血管の狭窄・閉塞をきたす。
本実施例によれば、ヘパリン固定化コイルの表面に固定されたテネイシンCを動脈瘤内に導入でき、瘤内での結合組織形成を有意に高める効果が示された。さらに、その組織の細胞成分はおもにSMCであることがわかった。これらは、PTCAやステント留置術後の1ヶ月以内の組織と酷似している(Kyoko Imanaka-Yosida,Ritsuko Matsuura, Naoki Isaka,Takeshi Nakano,Teruyo Sakakura,and Toshimichi Yoshida:serial extracellular matrix changes in neointimal lesions of human coronary artery after percutaneous transluminal coronary angioplasty:clinical significance of early tenascin-C expression. Virchows Archiv 2001:p.p185-90)。また、本実施例のラットモデルでは、14日ですでに膠原線維形成がかなり進んでおり、28日では充分に成熟した結合組織となっており、これらから勘案すればヒトでも同様な良好な効果が期待できる。
マクロファージの集積は、発明者らも予想していなかったテネイシンCの働きであり、SMCと同じように動脈瘤内の肉芽組織形成に関与していた。マクロファージは線維芽細胞を遊走・増殖させるさまざまな因子を分泌するので、テネイシンCのSMCへの作用に相加的に働き、器質化・線維化を促進したと考えられる。
また、コントロール群、ヘパリン群、bFGF群及びテネイシン群の4群を比較すると、テネイシン群の血管腔のサイズが最も小さかった。これは、SMCが筋線維芽細胞として働き、器質化組織を収縮したと推測できる。また、マクロファージは細胞外マトリックスを分解するマトリックスメタロプロテアーゼを分泌するので、新たに作られた器質化組織と既存の血管壁組織を、過不足のない量へ再構築されることを促進したためと考えられる。また、生理活性物質を導入したさまざまなコイルの報告があるが、血管内腔の縮小を来たす効果をもつコイルは本実施例が始めてである。以上から、テネイシン固定化コイルは、コイル本体の効果だけでなく、テネイシンCの作用により誘導された細胞で形成された組織で動脈瘤内を満たすことで、血流を瘤内から遮断し、また長期的には線維化を起こして出血・瘤の再発を防止することにつながるのではないかと考えられた。また、動脈瘤のサイズを狭小化することから、大型の動脈瘤治療において瘤の狭小化の効果が期待でき、脳実質や脳神経の圧迫を引き起こす動脈瘤の空間占拠効果を減少させるなど、コイル塞栓術の適応の拡大が期待できる。
このように本実施形態によれば、塞栓効果をより高めて、動脈瘤内の線維化を促進する人工栓塞物を提供することができる。
各群の切片をヘマトキシリン-エオジン染色したときの顕微鏡写真図である。 コントロール群(Control)、ヘパリン群(Heparin)、bFGF群、テネイシン群(TN−C)の写真を示す。テネイシン群の写真中の矢頭は血管壁を示す。また、図中にある横線は100μmのスケールである(図2及び図3においても同じである。)。アスターリスク(*)は、コイルを抜去した後の組織のない場所を示す。 bFGF群とテネイシン(TN−C)群をSirius赤染色したときの顕微鏡写真図である。左はヘマトキシリン-エオジン染色、右はSirius赤染色を偏光顕微鏡で観察したもの。器質化部位(org)、血管中膜(med)、血管外膜(adv)を右欄外に示す。14d:14日目、28d:28日目。 bFGF群とテネイシン(TN−C)群をα−SMA染色、マクロファージ染色(CD68)、内皮細胞染色(von Willebrand因子、vWF)したときの顕微鏡写真図である。テネイシン群の写真中の矢頭は血管壁を示す。HE:ヘマトキシリン-エオジン染色。 14日目の組織における各群における血管腔の面積を比較したグラフである。なお、各データは、平均値±標準偏差(SD)にて示した。 14日目の組織における各群における器質化率を比較したグラフである。なお、各データは、平均値±標準偏差(SD)にて示した。

Claims (6)

  1. テネイシンCを含有することを特徴とする人工栓塞物。
  2. 前記人工栓塞物は、金属製のコイル本体またはコイルに付随する構造物の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の人工栓塞物。
  3. 前記人工栓塞物は、金属製のコイル本体を含み、このコイル本体の表面とテネイシンCとの間にテネイシンC結合能を備えた第1層もしくはテネイシンCを含有する構造物の少なくともいずれか一方を設けたことを特徴とする請求項1に記載の人工栓塞物。
  4. 前記コイル本体の表面と前記第1層との間に、第1層をより強くコイル本体の表面に固定する第2層を設けたことを特徴とする請求項3に記載の人工栓塞物。
  5. 前記第1層もしくは構造物の少なくともいずれか一方には、ヘパリン若しくはヘパリン様活性物質が含有されていることを特徴とする請求項3または4に記載の人工栓塞物。
  6. 前記人工栓塞物は、金属製のコイル本体と、このコイル本体に固定された構造物とを含み、前記テネイシンCは、少なくとも前記構造物に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の人工栓塞物。
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