本発明は、燃料改質装置付き内燃機関に関するものである。特に、この発明は、燃料を噴射した排気ガスを改質触媒に流すことにより内燃機関で燃焼可能な改質ガスを生成し、この改質ガスの燃焼も含めて運転可能な燃料改質装置付き内燃機関に関するものである。
従来の内燃機関では、燃費の向上と運転性能の確保との両立を図るために、改質用燃料を改質して発熱量が大きい改質ガスを生成し、生成した改質ガスを内燃機関で燃焼させることにより、これらを両立させているものがある。例えば、特許文献1に記載のエンジンの燃料供給装置では、エタノールなどのアルコールとガソリンの混合燃料からアルコールとガソリンとを分離する分離器と、分離器で分離したアルコールの一部を、排気の熱により改質する改質器と、を備えており、分離器で分離したガソリンとアルコール及び改質ガスは、それぞれ異なる運転領域で吸気系に供給する。ガソリン、アルコール、改質ガスは、燃焼時における特性がそれぞれ異なっているため、このように運転領域に応じて供給する燃料を異ならせることにより、燃費の向上と運転性能の確保とを両立できる。
しかしながら、改質ガスを生成する改質器は、排気ガスの熱によって改質ガスを生成するため改質器には排気ガスが流れるが、ガソリンには硫黄成分が含まれているため、ガソリンまたはガソリンとエタノールとの混合燃料を燃焼させた場合における排気ガスが改質器に流れた場合には、改質器が有する改質手段である改質触媒は硫黄被毒する虞がある。この場合、運転時間が経過するに従って、改質触媒による改質効果が低減する虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、改質手段の硫黄被毒を抑制できる燃料改質装置付き内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、燃料を燃焼させる複数の気筒のうち、ガソリンを燃焼させる気筒であるガソリン側気筒と、前記複数の気筒のうち、エタノールを燃焼させる気筒であるエタノール側気筒と、改質させる元になる燃料である改質用燃料を前記エタノール側気筒内から排出された排気ガスに対して供給可能な改質用燃料供給手段と、前記改質用燃料供給手段によって前記排気ガスに対して供給された前記改質用燃料を前記排気ガスから伝達される熱を利用して改質することにより前記ガソリン側気筒内及び前記エタノール側気筒内で燃焼可能な改質ガスを生成する改質手段と、前記改質手段で生成した前記改質ガスを前記ガソリン側気筒及び前記エタノール側気筒に供給可能な還流通路と、を備えることを特徴とする。
この発明では、改質手段は、排気ガスに対して供給された改質用燃料を改質することにより改質ガスを生成するが、改質用燃料を供給する改質用燃料供給手段は、エタノール側気筒内から排出された排気ガスに対して改質用燃料を供給する。このため、改質手段にはガソリンを燃焼させた際における排気ガスが流れることがないため、ガソリンに含まれる硫黄成分が改質手段に流れることを抑制できる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制することができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、前記ガソリン側気筒は、リーン空燃比で運転することを特徴とする。
この発明では、ガソリン側気筒はリーン空燃比で運転するため、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。つまり、排気ガスに対して供給された改質用燃料を改質手段で改質する場合、改質用燃料を供給する排気ガスが、リーン空燃比で運転している気筒から排出された排気ガスの場合には改質手段での改質が困難になるため、排気ガスに対して改質用燃料を供給する場合には、この排気ガスを排出する気筒をリーン空燃比にすることができない。しかし、改質用燃料は、エタノール側気筒から排出された排気ガスに供給し、ガソリン側気筒内から排出された排気ガスには改質用燃料を供給しないため、ガソリン側気筒はリーン空燃比にすることができる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、さらに、前記ガソリン側気筒への吸気通路であるガソリン側吸気通路には、前記ガソリン側吸気通路内を流れる空気量を調整可能なガソリン側吸気調整手段が設けられており、前記エタノール側気筒への吸気通路であるエタノール側吸気通路には、前記エタノール側吸気通路内を流れる空気量を調整可能であると共に前記ガソリン側吸気調整手段と独立して調整可能なエタノール側吸気調整手段が設けられており、前記還流通路は、前記ガソリン側吸気通路と前記エタノール側吸気通路とに接続されており、且つ、前記還流通路内を流れるガスである還流ガスのうち、前記ガソリン側吸気通路に流れる前記還流ガスを調整可能なガソリン側還流ガス調整手段と、前記エタノール側吸気通路に流れる前記還流ガスを調整可能なエタノール側還流ガス調整手段と、を備えていることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側吸気調整手段とエタノール側吸気調整手段とを設けているので、ガソリン側気筒とエタノール側気筒とで吸入空気量を独立して調整可能になっている。また、ガソリン側還流ガス調整手段とエタノール側還流ガス調整手段とを設けているので、ガソリン側気筒とエタノール側気筒とで、改質ガスを含む還流ガスの流量を独立して調整可能になっている。これらの結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に所望の状態で内燃機関を運転させることができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、さらに、前記ガソリン側吸気調整手段と前記エタノール側吸気調整手段とを制御可能な吸気手段制御手段と、前記ガソリン側還流ガス調整手段と前記エタノール側還流ガス調整手段とを制御可能な還流ガス調整手段制御手段と、前記吸気手段制御手段に対して前記ガソリン側吸気調整手段と前記エタノール側吸気調整手段とを調整させ、前記還流ガス調整手段制御手段に対して前記ガソリン側還流ガス調整手段と前記エタノール側還流ガス調整手段とを調整させることにより前記ガソリン側気筒で発生するトルクと前記エタノール側気筒で発生するトルクとのトルク差を低減するトルク差低減手段と、を備えていることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側気筒とエタノール側気筒との吸入空気量をガソリン側吸気調整手段とエタノール側吸気調整手段とで調整し、ガソリン側気筒とエタノール側気筒との還流ガスの流量をガソリン側還流ガス調整手段とエタノール側還流ガス調整手段とで調整することにより、ガソリン側気筒とエタノール側気筒との間で、トルク差が発生することを抑制している。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、前記ガソリン側気筒及び前記エタノール側気筒が共にストイキ領域で運転する場合には、前記ガソリン側還流ガス調整手段と前記エタノール側還流ガス調整手段とを制御することにより、前記ガソリン側吸気通路に流れる前記還流ガスの割合よりも前記エタノール側吸気通路に流れる前記還流ガスの割合を増加させることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側吸気通路に流れる還流ガスの割合よりもエタノール側吸気通路に流れる還流ガスの割合を増加させている。つまり、気筒内でガソリンを燃焼させる場合よりも、気筒内でエタノールを燃焼させる場合の方が、還流ガスの導入時の燃焼が安定する。このため、ガソリン側吸気通路に流れる還流ガスの割合よりもエタノール側吸気通路に流れる還流ガスの割合を増加させることにより、より多くの還流ガスを流すことができるので、燃費の向上を図ることができる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、さらに、車両走行時における原動手段であるモータと、前記モータの運転を制御すると共に前記ガソリン側気筒と前記エタノール側気筒とのトルク差に起因する振動を前記モータのトルクを変化させることにより抑制する制御を行うモータ制御手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側気筒とエタノール側気筒との間で発生するトルク差に起因する振動を、モータのトルクを変化させることにより抑制している。つまり、このモータは、内燃機関と共に車両の原動手段として設けられており、内燃機関及びモータは、共に動力を発生し、発生した動力を車両の駆動輪に伝達可能に設けられている。このため、ガソリン側気筒とエタノール側気筒との間のトルク差に起因して振動が発生した場合に、その振動の方向と相反するトルク変動をモータに発生させることにより、振動を抑制して駆動輪に伝達することができる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、さらに、前記ガソリン側気筒から排出された排気ガスにより作動すると共に作動時に空気を前記ガソリン側気筒に対して供給する過給手段を備えていることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側気筒に対して空気を供給可能な過給手段を設けているので、ガソリン側気筒をリーン空燃比にした場合に、高負荷域までリーン空燃比を実現できるので、最高熱効率を向上させることができる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に燃費の向上を図ることができる。
また、この発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、前記ガソリン側気筒の圧縮比と前記エタノール側気筒の圧縮比とを互いに異ならせることを特徴とする。
この発明では、ガソリン側気筒の圧縮比とエタノール側気筒の圧縮比とを互いに異ならせるので、例えば、ガソリン側気筒の圧縮比と比較してエタノール側気筒の圧縮比を高くすることができる。エタノールは、ガソリンと比較して耐ノック性が高いため、エタノール側気筒の圧縮比は、ガソリン側気筒の圧縮比よりも高くすることができ、このようにエタノール側気筒の圧縮比を高くすることにより、より確実に熱効率を向上させることができる。この結果、改質手段の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に燃費の向上を図ることができる。
本発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、改質手段の硫黄被毒を抑制することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る燃料改質装置付き内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の説明では、燃料改質装置付き内燃機関の一例として、燃料改質装置が備えられるエンジンであると共に、エンジンを運転させる燃料としてガソリンとエタノールとを用いることができる車両であるFFV(Flexible Fuel Vehicle)に搭載されるエンジンである燃料改質装置付きエンジンの場合について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。同図に示す燃料改質装置3付きエンジン1は、車両(図示省略)に備えられる燃料改質装置3付き内燃機関となっており、この燃料改質装置3が備えられるエンジンは、車両の運転時の原動手段となっている。このエンジン1は、4つの気筒5が直列に配置されている。4つの気筒5のうち、2つの気筒5は、エンジン1の運転時における燃料としてガソリンを燃焼させる気筒5であるガソリン側気筒6となっており、他の2つの気筒5は、エンジン1の運転時における燃料としてエタノールを燃焼させる気筒5であるエタノール側気筒7となっている。また、エンジン1には、気筒5内に連通すると共に気筒5内に吸入される空気が流れる通路である吸気通路10と、気筒5内で燃料を燃焼させた後、気筒5内から排出される排気ガスが流れる排気通路30とが接続されている。
この吸気通路10と排気通路30とのうち、吸気通路10は、ガソリン側気筒6に接続される吸気通路10であるガソリン側吸気通路11と、エタノール側気筒7に接続される吸気通路10であるエタノール側吸気通路12とに分岐している。さらに、これらのガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とは、それぞれ2つずつ設けられているガソリン側気筒6及びエタノール側気筒7に合わせて、共に2つの通路に分岐してエンジン1に接続されている。つまり、吸気通路10は、当該吸気通路10においてエンジン1に吸気させる空気が流入する1つの通路である吸気流入通路13が設けられており、吸気通路10内を流れる空気の流れ方向における吸気流入通路13の下流側で、ガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とに分岐し、ガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とは、さらにそれぞれ2つの通路に分岐している。
また、この吸気通路10には、エンジン1の運転時に気筒5に対して燃料を供給可能な燃料供給手段であるインジェクタ20が配設されている。このインジェクタ20は、エンジン1の運転時に吸気通路10内に燃料を噴射することにより、気筒5に対して燃料を供給可能に設けられている。詳しくは、このインジェクタ20は、吸気通路10における4つの気筒5に分岐した部分にそれぞれ設けられることにより、4つのインジェクタ20が設けられている。この4つのインジェクタ20のうち、ガソリン側吸気通路11に設けられる2つのインジェクタ20は、エンジン1の運転時における燃料として用いられるガソリンをガソリン側吸気通路11内に噴射可能なガソリン用インジェクタ21となっており、エタノール側吸気通路12に設けられる2つのインジェクタ20は、エンジン1の運転時における燃料として用いられるエタノールをエタノール側吸気通路12内に噴射可能なエタノール用インジェクタ22となっている。
また、吸気通路10の一部である吸気流入通路13には、吸気通路10内を開閉可能なスロットルバルブ25が配設されており、吸気通路10を流れる空気の流れ方向におけるスロットルバルブ25の上流側には、吸気通路10内を流れる空気の流量を検出可能なエアフロメータ26が設けられている。このように形成される吸気通路10の入口には、吸気通路10に流入する空気中の不純物を除去するエアクリーナ27が設けられている。
また、排気通路30は、ガソリン側気筒6に接続される排気通路30であるガソリン側排気通路31と、エタノール側気筒7に接続される排気通路30であるエタノール側排気通路32とに分岐している。さらに、これらのガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とは、それぞれ2つずつ設けられているガソリン側気筒6及びエタノール側気筒7に合わせて、共に2つの通路に分岐してエンジン1に接続されている。
つまり、排気通路30は、当該排気通路30を流れる排気ガスの流れ方向に見た場合に、2つのガソリン側気筒6に合わせて2つに分岐しているガソリン側排気通路31が1つの通路に合流し、2つのエタノール側気筒7に合わせて2つに分岐しているエタノール側排気通路32が1つの通路に合流している。さらに、ガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とは、1つの通路に合流しており、合流した通路は排気主通路33となっている。
また、この排気主通路33には、排気ガスを浄化し、且つ、改質用燃料の改質を行う触媒部40が備えられている。この触媒部40には、排気ガスを浄化する浄化手段である浄化触媒41が内設されている。さらに、触媒部40には、改質用の燃料である改質用燃料より、気筒5内で燃焼可能な改質ガスを生成する改質手段である改質触媒42が内設されている。この改質触媒42は、触媒部40に内設される浄化触媒41の周囲に配設されており、例えばロジウム系の材料が用いられたロジウム触媒となっている。
また、排気通路30は、エタノール側排気通路32で通路が分岐しており、エタノール側排気通路32から分岐した通路は改質用通路34となっている。この改質用通路34は、一端がエタノール側排気通路32に接続され、他端が触媒部40に接続されている。このように形成される改質用通路34には、改質させる元になる燃料である改質用燃料を排気ガスに対して供給可能な改質用燃料供給手段である改質用燃料インジェクタ37が設けられている。この改質用燃料インジェクタ37は、改質用燃料を改質用通路34内に噴射することにより、改質用燃料を排気ガスに対して供給可能になっている。
また、改質用通路34は、一端がエタノール側排気通路32に接続され、他端が触媒部40に接続されており、改質用通路34内を流れる排気ガスは、エタノール側排気通路32側から触媒部40側に流れる。このため、改質用通路34に設けられる改質用燃料インジェクタ37は、改質用通路34内を流れる排気ガスの流れ方向における触媒部40の上流側に位置している。換言すると、触媒部40に設けられる改質触媒42は、改質用燃料インジェクタ37で改質用燃料を供給する排気ガスの流れ方向における改質用燃料インジェクタ37の下流側に位置している。
また、触媒部40には、エンジン1から排出された排気ガスの一部であり、再びエンジン1に吸気させる還流ガスであるEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスが流れる通路であるEGRガス通路50が接続されており、このEGRガス通路50は、排気ガスが流れる方向において触媒部40と吸気通路10との間に設けられている。つまり、EGRガス通路50は、触媒部40と吸気通路10とを接続している。このように設けられるEGRガス通路50は、触媒部40からEGRガス通路50に流れた排気ガス及び改質触媒42で生成した改質ガスが、触媒部40側から吸気通路10側に流れることができるように形成されている。即ち、EGRガス通路50は、改質ガスを気筒5の吸気通路10に流入させることにより、改質ガスをガソリン側気筒6及びエタノール側気筒7に供給可能な還流通路となっている。
また、当該EGRガス通路50には、EGRガス通路50を流れる排気ガスや改質ガスを冷却可能な冷却手段であるEGRクーラ55が設けられている。EGRクーラ55は、エンジン1を循環し、車両の運転時にエンジン1を冷却する冷却媒体である冷却水(図示省略)と、排気ガス及び改質ガスとの間で熱交換を行うことができるように形成されており、排気ガス及び改質ガスは、冷却水との間で熱交換を行うことにより温度が低下する。
また、EGRガス通路50には、EGRクーラ55が設けられている部分と吸気通路10に接続されている部分との間の部分、即ち、EGRガス通路50における吸気通路10に接続されている部分の近傍に、EGRガス通路50内を開閉可能なEGRガス流量調整バルブ56が配設されている。
また、このEGRガス通路50における吸気通路10に接続されている部分付近は、2つの通路に分岐しており、この2つの通路が吸気通路10のガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とに接続されている。つまり、EGRガス通路50は、EGRガス通路50内を流れるEGRガスの流れ方向におけるEGRガス流量調整バルブ56の下流側で2つの通路に分岐しており、吸気通路10のガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とに別々に接続されている。ガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とに接続されたEGRガス通路50のうち、ガソリン側吸気通路11に接続されている部分はガソリン側EGRガス通路51となっており、エタノール側吸気通路12に接続されている部分はエタノール側EGRガス通路52となっている。
また、このように設けられるEGRガス通路50と改質用通路34とは、双方の通路が接続される触媒部40を挟んで直線状に形成されている。詳しくは、EGRガス通路50と改質用通路34とは、排気主通路33内を流れる排気ガスの流れ方向に対して略直交する方向で触媒部40に接続されており、さらに、EGRガス通路50と改質用通路34とは、触媒部40に対して互いに略対向する位置に接続されている。これにより、EGRガス通路50と改質用通路34とにおける触媒部40に接続されている部分は、触媒部40を挟んで直線状に形成されている。
また、排気通路30は、排気主通路33を流れる排気ガスの流れ方向における触媒部40の下流側にも設けられている。即ち、排気通路30は、排気ガスの流れ方向における触媒部40の上流側から下流側にかけて連通して形成されている。
また、ガソリン側吸気通路11に設けられたガソリン用インジェクタ21は、エンジン1を搭載する車両に設けられ、ガソリン側気筒6内で燃焼させる燃料であるガソリンを貯留するガソリンタンク60に接続されている。このガソリンタンク60は、ガソリンタンク60内のガソリンを外部に送出可能なガソリンフィードポンプ61を備えており、ガソリンタンク60内のガソリンは、このガソリンフィードポンプ61によってガソリン用インジェクタ21に供給可能に設けられている。
同様に、エタノール側吸気通路12に設けられたエタノール用インジェクタ22、及び改質用通路34に設けられた改質用燃料インジェクタ37は、エタノール側気筒7内で燃焼させたり改質用燃料として使用したりする燃料であるエタノールを貯留するエタノールタンク65に接続されている。このエタノールタンク65は、エタノールタンク65内のエタノールを外部に送出可能なエタノールフィードポンプ66を備えており、エタノールタンク65内のエタノールは、このエタノールフィードポンプ66によってエタノール用インジェクタ22や改質用燃料インジェクタ37に供給可能に設けられている。
これらのガソリン用インジェクタ21、エタノール用インジェクタ22、改質用燃料インジェクタ37、スロットルバルブ25、EGRガス流量調整バルブ56、エアフロメータ26は、車両に搭載されると共に車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)70に接続されている。
図2は、図1に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。ECU70には、処理部71、記憶部80及び入出力部81が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU70に接続されているガソリン用インジェクタ21、エタノール用インジェクタ22、改質用燃料インジェクタ37、スロットルバルブ25、EGRガス流量調整バルブ56、エアフロメータ26は、入出力部81に接続されており、入出力部81は、これらのスロットルバルブ25やエアフロメータ26等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部80には、燃料改質装置3付きエンジン1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部80は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部71は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、スロットルバルブ25の開閉の制御が可能なスロットルバルブ制御部72と、エアフロメータ26での検出結果より運転中のエンジン1の吸入空気量を取得可能な吸入空気量取得部73と、ガソリン用インジェクタ21から噴射するガソリンの噴射量やエタノール用インジェクタ22から噴射するエタノールの噴射量を制御可能な燃料噴射量制御部74と、改質用燃料インジェクタ37から噴射する改質用燃料の噴射量を制御可能な改質用燃料噴射量制御部75と、EGRガス流量調整バルブ56の開閉の制御が可能なEGRガス流量調整バルブ制御部76と、を有している。
ECU70によって制御される燃料改質装置3付きエンジン1の制御は、例えば、エアフロメータ26などによる検出結果に基づいて、処理部71が上記コンピュータプログラムを当該処理部71に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてスロットルバルブ25などを作動させることにより制御する。その際に処理部71は、適宜記憶部80へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このように燃料改質装置3付きエンジン1を制御する場合には、上記コンピュータプログラムの代わりに、ECU70とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1は、運転時には車両の室内に設けられるアクセルペダル(図示省略)の開度であるアクセル開度に応じてECU70の処理部71が有するスロットルバルブ制御部72がスロットルバルブ25の開度を制御する。即ち、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ(図示省略)の検出結果に応じて、スロットルバルブ制御部72がスロットルバルブ25の開度を制御する。これにより、吸気通路10にはスロットルバルブ25の開度に応じた空気が流れる。吸気通路10に空気が流れた場合、この空気の流量をエアフロメータ26で検出し、エアフロメータ26での検出結果をECU70の処理部71が有する吸入空気量取得部73で取得する。
吸入空気量取得部73で取得した吸入空気量は、アクセル開度などの運転状態に関する情報と共にECU70の処理部71が有する燃料噴射量制御部74に伝達され、伝達された運転状態に関する情報に応じて燃料噴射量制御部74によってインジェクタ20を制御し、インジェクタ20を作動させる。
つまり、エンジン1の運転時には、ガソリン用インジェクタ21にはガソリンタンク60が備えるガソリンフィードポンプ61によってガソリンタンク60内のガソリンが供給されるため、燃料噴射量制御部74がガソリン用インジェクタ21を作動させることにより、ガソリン用インジェクタ21は、燃料噴射量制御部74での制御に応じた燃料をガソリン側吸気通路11内に噴射する。同様に、エタノール用インジェクタ22にはエタノールタンク65が備えるエタノールフィードポンプ66によってエタノールタンク65内のエタノールが供給されるため、燃料噴射量制御部74がエタノール用インジェクタ22を作動させることにより、エタノール用インジェクタ22は、燃料噴射量制御部74での制御に応じた燃料をエタノール側吸気通路12内に噴射する。
このように、ガソリン側吸気通路11内に対してガソリン用インジェクタ21からガソリンを噴射したり、エタノール側吸気通路12内に対してエタノール用インジェクタ22からエタノールを噴射したりすることにより、噴射したこれらの燃料は、それぞれの吸気通路10内を流れる空気と混合し、混合気となって吸気通路10内を流れる。
その際に、燃料噴射量制御部74は、ガソリン用インジェクタ21に対して、空気とガソリンとの空燃比が、燃料を気筒5内で燃焼させる際における理想的な空燃比であるストイキにおける空気とガソリンとの空燃比よりもガソリンの割合が少なくなった空燃比であるリーン空燃比となるガソリンの噴射量になるように、ガソリン用インジェクタ21を制御する。
このように、燃料噴射量制御部74で噴射量を制御されてガソリン側吸気通路11内に噴射されたガソリンは、ガソリン側吸気通路11内を流れる空気と混合し、混合気となってガソリン側吸気通路11内を流れる。このガソリンと空気との混合気は、ガソリン側吸気通路11が接続されるガソリン側気筒6に吸入される。同様に燃料噴射量制御部74で噴射量を制御されてエタノール側吸気通路12内に噴射されたエタノールは、エタノール側吸気通路12内を流れる空気と混合し、混合気となってエタノール側吸気通路12内を流れる。このエタノールと空気との混合気は、エタノール側吸気通路12が接続されるエタノール側気筒7に吸入される。
各気筒5内に吸入された混合気は、それぞれの気筒5の燃焼行程で混合気中の燃料が燃焼する。このため、空燃比がリーン空燃比になるようにガソリンの噴射量が制御された混合気が吸入されるガソリン側気筒6は、リーン空燃比で運転する。気筒5内で燃料が燃焼した後の排気ガスは、排気行程で気筒5内から排気通路30に流出する。詳しくは、ガソリン側気筒6から排出された排気ガスはガソリン側排気通路31に流れ、エタノール側気筒7から排出された排気ガスはエタノール側排気通路32に流れる。このように、ガソリン側排気通路31に流出した排気ガスと、エタノール側排気通路32に流出した排気ガスとは、ガソリン側排気通路31及びエタノール側排気通路32の下流側に位置する排気主通路33に流れ、排気主通路33で合流する。
排気主通路33で合流した排気ガスは、排気主通路33に備えられる触媒部40に流れ、当該触媒部40に設けられる浄化触媒41に流れる。浄化触媒41に流れた排気ガスは浄化触媒41によって浄化され、排気ガスの流れ方向における触媒部40の下流側に位置する排気通路30に流れて大気に放出される。また、このように排気ガスが浄化触媒41を通過する際には、浄化触媒41には排気ガスの熱が伝達されるため、浄化触媒41は、排気ガスの熱により温度が上昇する。
一方、排気通路30を流れる排気ガスのうち、エタノール側排気通路32を流れる排気ガスの一部は、エタノール側排気通路32に接続された改質用通路34に流れる。改質用通路34には、このように一部の排気ガスが流れるが、この改質用通路34には改質用燃料インジェクタ37が設けられている。改質用燃料インジェクタ37は、改質用通路34内を流れる排気ガスに対して改質用燃料を噴射可能に設けられており、その噴射量は、ECU70の処理部71が有する改質用燃料噴射量制御部75によって制御可能に設けられている。
つまり、改質用燃料噴射量制御部75は改質用燃料インジェクタ37を制御することにより改質用燃料インジェクタ37を作動させることができるが、改質用燃料インジェクタ37には、エタノール用インジェクタ22と同様にエタノールタンク65が備えるエタノールフィードポンプ66によってエタノールタンク65内のエタノールが供給される。このため、改質用燃料噴射量制御部75が改質用燃料インジェクタ37を作動させることにより、改質用燃料インジェクタ37は、改質用燃料噴射量制御部75での制御に応じてエタノールタンク65内のエタノールを、改質用燃料として改質用通路34内に噴射する。
改質用燃料噴射量制御部75によって制御される改質用燃料インジェクタ37から改質用燃料を噴射した場合、改質用燃料は改質用通路34を流れる排気ガスと混合し、混合した状態で触媒部40に流入する。このように、改質用燃料と混合した状態で触媒部40に流入した排気ガスは、触媒部40に設けられている改質触媒42を通過する。
ここで、改質触媒42は、浄化触媒41の周囲に配設されて浄化触媒41と一体となって触媒部40に内設されているが、浄化触媒41は、排気主通路33から流れる排気ガスの熱が伝達されることにより、温度が高くなっている。このため、このように温度が高くなった浄化触媒41の熱は改質触媒42に伝達され、改質触媒42の温度も上昇する。これにより、改質用燃料と混合した排気ガスが改質触媒42を通過する際には、改質触媒42は排気ガスに熱を与えながら通過する排気ガスを改質し、改質ガスを生成する。
つまり、改質触媒42は、浄化触媒41を介して排気ガスの熱が伝達されることにより温度が上昇するが、改質触媒42の作用で排気ガスを改質する際には、この熱を利用し、吸熱反応をさせることにより改質する。このように、触媒部40に内設される改質触媒42は、浄化触媒41が排気ガスを浄化する際に排気ガスから伝達される熱を利用して改質ガスを生成可能に設けられている。この改質により生成した改質ガスは、水素を含んでおり、燃焼可能な気体となっている。
改質触媒42では、改質用燃料を改質して改質ガスを生成するが、改質触媒42で生成した改質ガス、及び改質ガスに改質されずに改質触媒42を通過する排気ガスは、エンジン1に還流する還流ガスであるEGRガスとして、EGRガス通路50に流れる。EGRガス通路50に流れたEGRガスは、EGRクーラ55を通過する。その際に、EGRクーラ55は、EGRガスと冷却水との間で熱交換を行わせる。これにより、EGRガスは、温度が低下する。
EGRクーラ55によって温度が低下したEGRガスは、さらにEGRガス通路50を流れ、EGRガス流量調整バルブ56の方向に向かう。このEGRガス流量調整バルブ56は、ECU70の処理部71が有するEGRガス流量調整バルブ制御部76によって制御可能に設けられており、EGRガス流量調整バルブ制御部76は、EGRガス流量調整バルブ56を制御することによりEGRガス流量調整バルブ56の開度を調整する。
ここで、EGRガス流量調整バルブ56が設けられるEGRガス通路50は、吸気通路10に接続されているが、吸気通路10内を流れる空気とEGRガス通路50内を流れるEGRガスとでは、EGRガス通路50内を流れるEGRガスの方が、吸気通路10内を流れる空気よりも圧力が高くなっている。このため、吸気通路10とEGRガス通路50とが連通した状態では、EGRガス通路50内を流れるEGRガスは、吸気通路10内に流入する。従って、EGRガス流量調整バルブ制御部76によってEGRガス流量調整バルブ56を制御し、EGRガス流量調整バルブ56の開度を大きくした場合には、EGRガス通路50内を流れるEGRガスの吸気通路10内への流入量は多くなり、EGRガス流量調整バルブ56の開度を小さくした場合には、吸気通路10内へのEGRガスの流入量は少なくなる。
このように、吸気通路10にはEGRガス流量調整バルブ56の開度に応じたEGRガスが流れるが、EGRガス通路50は、EGRガス流量調整バルブ56の下流側でガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分岐しており、ガソリン側EGRガス通路51は吸気通路10のガソリン側吸気通路11に接続され、エタノール側EGRガス通路52は吸気通路10のエタノール側吸気通路12に接続されている。このため、EGRガス通路50内を流れるEGRガスのうち、ガソリン側EGRガス通路51に流れたEGRガスはガソリン側EGRガス通路51を通ってガソリン側吸気通路11に流入し、エタノール側EGRガス通路52に流れたEGRガスはエタノール側EGRガス通路52を通ってエタノール側吸気通路12に流入する。
ガソリン側吸気通路11やエタノール側吸気通路12を有する吸気通路10には、このようにEGRガス流量調整バルブ56の開度に応じた量のEGRガスが流れるが、このEGRガスには、改質ガスが含まれており、さらに改質ガスには、水素や一酸化炭素などの燃焼可能なガスが含まれている。このため、EGRガスが流入した気筒5内で燃料が燃焼する場合には、ガソリン用インジェクタ21から噴射されたガソリンやエタノール用インジェクタ22から噴射されたエタノールと共に改質ガスも燃焼する。特に、水素は急速燃焼をするガスであるため、水素が燃焼をする際には、気筒5内の水素は急速な燃焼速度で燃焼する。
また、これらのように気筒5内で燃焼する改質ガスは、エンジン1の運転に用いられる燃料であるガソリンやエタノールよりも発熱量が高いため、改質ガスが燃焼した際には、エンジン1の出力は増加する。従って、EGRガスに含まれる改質ガスを燃焼させる場合において、エンジン1の出力を一定にする場合には、改質ガスを燃焼させない場合と比較してスロットルバルブ25は閉じ、ガソリン用インジェクタ21から噴射するガソリンの噴射量やエタノール用インジェクタ22から噴射するエタノールの噴射量を低減させる。
以上の燃料改質装置3付きエンジン1は、ガソリン側気筒6内及びエタノール側気筒7内で燃焼可能な改質ガスを生成する改質触媒42は、排気ガスに対して供給された改質用燃料を改質することにより改質ガスを生成するが、改質用燃料を供給する改質用燃料インジェクタ37は、エタノール側気筒7内から排出された排気ガスに対して改質用燃料を噴射することにより供給する。このため、改質触媒42には、ガソリンを燃焼させた際における排気ガスが流れることがないため、ガソリンに含まれる硫黄成分が改質触媒42に流れることを抑制できる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制することができる。
また、ECU70の処理部71が有する燃料噴射量制御部74によってガソリン用インジェクタ21から噴射するガソリンの噴射量を制御することにより、ガソリン側気筒6はリーン空燃比で運転するため、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。つまり、排気ガスに対して供給された改質用燃料を改質触媒42で改質する場合、改質用燃料を供給する排気ガスが、リーン空燃比で運転している気筒5から排出された排気ガスの場合には改質触媒42での改質が困難になるため、排気ガスに対して改質用燃料を供給する場合には、この排気ガスを排出する気筒5をリーン空燃比にすることができない。しかし、改質用燃料は、エタノール側気筒7から排出された排気ガスに供給し、ガソリン側気筒6内から排出された排気ガスには改質用燃料を供給しないため、ガソリン側気筒6はリーン空燃比にすることができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。
実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と略同様の構成であるが、吸気通路10に設けられるスロットルバルブ25、及びEGRガス通路50に設けられるEGRガス流量調整バルブ56が、それぞれ2つずつ設けられている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図3は、本発明の実施例2に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と同様に、吸気通路10はガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とを有しており、排気通路30は、ガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とを有している。また、これらのガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とは、触媒部40を備える排気主通路33で合流している。この排気主通路33には、浄化触媒41と改質触媒42とを内設すると共に、改質用通路34及びEGRガス通路50が接続された触媒部40が設けられている。
このうち、改質用通路34は、他端がエタノール側排気通路32に接続されており、且つ、改質用燃料インジェクタ37が設けられている。また、EGRガス通路50は、他端側がガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分岐しており、ガソリン側EGRガス通路51は吸気通路10のガソリン側吸気通路11に接続され、エタノール側EGRガス通路52は吸気通路10のエタノール側吸気通路12に接続されている。
このように分岐して吸気通路10に接続されているEGRガス通路50には、分岐したそれぞれの通路に、EGRガス流量調整バルブ56が設けられている。即ち、ガソリン側EGRガス通路51には、EGRガス通路50内を流れるEGRガスのうち、ガソリン側EGRガス通路51を流れるEGRガスの流量を調整可能なガソリン側還流ガス調整手段であるガソリン側EGRガス流量調整バルブ111が設けられている。また、エタノール側EGRガス通路52には、EGRガス通路50内を流れるEGRガスのうち、エタノール側EGRガス通路52を流れるEGRガスの流量を調整可能なエタノール側還流ガス調整手段であるエタノール側EGRガス流量調整バルブ112が設けられている。このガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とは、独立してEGRガスの流量を調整可能になっている。
また、このように分岐したEGRガス通路50が接続されるガソリン側吸気通路11及びエタノール側吸気通路12には、それぞれにスロットルバルブ25が設けられている。詳しくは、ガソリン側気筒6に接続される吸気通路10であるガソリン側吸気通路11には、ガソリン側吸気通路11内を流れる空気量を調整可能なガソリン側吸気調整手段であるガソリン側スロットルバルブ101が設けられている。また、エタノール側気筒7に接続される吸気通路10であるエタノール側吸気通路12には、エタノール側吸気通路12内を流れる空気量を調整可能であると共にガソリン側スロットルバルブ101と独立して調整可能なエタノール側吸気調整手段であるエタノール側スロットルバルブ102が設けられている。
図4は、図3に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。また、この実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1が有するECU120は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1が有するECU70と同様に処理部71と記憶部80と入出力部81とを有している。このうち、処理部71は、少なくともスロットルバルブ制御部72と、吸入空気量取得部73と、燃料噴射量制御部74と、改質用燃料噴射量制御部75と、EGRガス流量調整バルブ制御部76と、を有している。
このうち、スロットルバルブ制御部72は、ガソリン側スロットルバルブ101とエタノール側スロットルバルブ102とを制御可能な吸気手段制御手段として設けられており、EGRガス流量調整バルブ制御部76は、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とを制御可能な還流ガス調整手段制御手段として設けられている。
さらに、処理部71は、エンジン1に要求されているトルクである要求トルクをアクセル開度に基づいて導出する要求トルク導出手段である要求トルク算出部121と、改質用燃料を改質可能な改質触媒42による改質用燃料の改質効率を、エンジン1の回転数と要求トルクとより推定する改質効率推定手段である改質効率推定部122と、エンジン1の運転時に必要な吸気量である必要吸気量を、エンジン1のトルクと改質効率とより導出する吸気量導出手段である吸気量算出部123と、気筒5の吸気量中におけるEGRガスの割合であるEGR率を、エンジン1のトルクと改質効率とより導出するEGR率導出手段であるEGR率算出部124と、スロットルバルブ制御部72に対してガソリン側スロットルバルブ101とエタノール側スロットルバルブ102とを調整させ、EGRガス流量調整バルブ制御部76に対してガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とを調整させることにより、ガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとのトルク差を低減するトルク差低減手段であるトルク差低減部125と、を有している。
この実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1の運転時の基本的な作用は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と同様な作用をする。即ち、エンジン1が有するガソリン側気筒6は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気とガソリン用インジェクタ21から噴射されるガソリンとの混合気を吸気してガソリンを燃焼させる。また、エタノール側気筒7は、エタノール側吸気通路12を流れる空気とエタノール用インジェクタ22から噴射されるエタノールとの混合気を吸気してエタノールを燃焼させる。その際に、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1では、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流量は、ECU120の処理部71が有するスロットルバルブ制御部72がガソリン側スロットルバルブ101の開度を制御することにより調整する。同様に、エタノール側吸気通路12を流れる空気の流量は、スロットルバルブ制御部72がエタノール側スロットルバルブ102の開度を制御することにより調整する。
このように、気筒5内で燃焼した後の排気ガスは排気通路30に排気されるが、ガソリン側気筒6からの排気ガスは排気通路30が有するガソリン側排気通路31に排気され、エタノール側気筒7からの排気ガスはエタノール側排気通路32に排気される。これらのように、ガソリン側排気通路31に排気された排気ガスと、エタノール側排気通路32に排気された排気ガスとは、排気主通路33で合流し、排気主通路33に設けられる触媒部40に流れて、触媒部40に内設される浄化触媒41で浄化される。
また、排気通路30に排気された排気ガスのうち、エタノール側排気通路32側に排気された排気ガスの一部は改質用通路34に流れる。この改質用通路34には、改質用燃料インジェクタ37が設けられており、改質用通路34を流れる排気ガスは、改質用燃料インジェクタ37で噴射した改質用燃料と混合した後、改質用通路34が接続される触媒部40に流れ、触媒部40に内設される改質触媒42に流れる。
触媒部40に内設される改質触媒42は、浄化触媒41を流れる排気ガスから伝達される熱を利用して、改質用通路34から流れた排気ガスに混合される改質用燃料を改質し、改質ガスを生成する。改質ガスで生成した改質ガスは、改質用通路34を流れて触媒部40に流入した排気ガスと共にEGRガス通路50に流れ、EGRガス通路50に設けられるEGRクーラ55で冷却された後、吸気通路10に流れる。その際に、EGRガス通路50は、ガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分岐しているため、EGRガス通路50を流れるEGRガスも、ガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分かれて流れる。
また、このようにガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分かれて流れるEGRガスは、流量をガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とによって調整される。つまり、ガソリン側EGRガス通路51から、当該ガソリン側EGRガス通路51が接続されているガソリン側吸気通路11に流れるEGRガスの流量は、ECU120の処理部71が有するEGRガス流量調整バルブ制御部76でガソリン側EGRガス流量調整バルブ111の開度を制御することにより調整する。同様に、エタノール側EGRガス通路52から、当該エタノール側EGRガス通路52が接続されているエタノール側吸気通路12に流れるEGRガスの流量は、EGRガス流量調整バルブ制御部76でエタノール側EGRガス流量調整バルブ112の開度を制御することにより調整する。
これらのように、エンジン1はガソリン側スロットルバルブ101、エタノール側スロットルバルブ102、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111、エタノール側EGRガス流量調整バルブ112を制御することにより、所望のトルクで運転可能になっているが、これらを制御する際には、ガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとで、大きな差が生じないように制御する。
図5は、本発明の実施例2に係る燃料改質装置付きエンジンの処理手順を示すフロー図である。次に、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1の制御方法、即ち、当該燃料改質装置90付きエンジン1の処理手順について説明する。実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1の処理手順では、まず、アクセル開度より、要求トルクを算出する(ステップS101)。この要求トルクの算出は、ECU120の処理部71が有する要求トルク算出部121でアクセル開度を取得し、取得したアクセル開度より、エンジン1に要求されているトルクである要求トルクを算出する。なお、この要求トルクの算出は、アクセル開度に応じた要求トルクを算出する関数によって算出してもよく、アクセル開度と要求トルクとの関係を示すマップより求めてもよい。
次に、エンジン1の回転数及び要求トルクより、改質効率を推定する(ステップS102)。この推定は、ECU120の処理部71が有する改質効率推定部122で推定する。改質効率推定部122は、エンジン1の他の制御で用いられるエンジン1の回転数と、要求トルク算出部121で算出した要求トルクとを、予めECU120の記憶部80に記憶されている改質効率を求めるマップに照らし合わせることにより推定する。つまり、エンジン1の運転時には、エンジン1の回転数とトルクとより排気温度が推定できるので、この排気温度より、吸熱反応させることによって改質用燃料を改質可能な改質触媒42による改質用燃料の改質効率を求めることができる。このため、エンジン1の回転数とトルクとに対する、改質触媒42による改質用燃料の改質効率のマップを予め作成してECU120の記憶部80に記憶させておき、改質効率推定部122で改質効率を推定する際には、エンジン1の回転数と、要求トルク算出部121で算出した要求トルクとを、このマップに照らし合わせることにより推定する。
次に、必要吸気量とEGR率を算出する(ステップS103)。このうち、必要空気量はECU120の処理部71が有する吸気量算出部123で算出し、EGR率は、ECU120の処理部71が有するEGR率算出部124で算出する。つまり、エンジン1の運転時には、トルクと改質効率が決まれば、その改質効率の際にそのトルクで運転をするのに必要な燃料の量が決まるので、この燃料の量と空燃比とより、その燃料を燃焼させるのに必要な空気量である必要空気量を求めることができる。また改質効率に応じて、気筒5の吸気量中におけるEGRガスの割合であるEGR率を決めることができるので、トルクと改質効率とより必要空気量を求めると同時に、EGR率を求めることができる。
このため、エンジン1のトルクと改質効率とに対する、必要吸気量とEGR率のマップを予め作成してECU120の記憶部80に記憶させておき、吸気量算出部123で必要空気量を算出する際、及びEGR率算出部124でEGR率を算出する際には、要求トルク算出部121で算出した要求トルクと改質効率推定部122で推定した改質効率とを、このマップに照らし合わせることにより算出する。
次に、スロットルバルブ25の開度と、EGRガス流量調整バルブ56の開度とを算出する(ステップS104)。これらのスロットルバルブ25の開度とEGRガス流量調整バルブ56の開度とは、ECU120の処理部71が有するトルク差低減部125で算出する。詳しくは、必要空気量が決定することにより、その空気量を吸気させるのに必要なスロットルバルブ25の開度を求めることができ、EGR率が決定することにより、そのEGR率で気筒5に吸気させることができるEGRガス流量調整バルブ56の開度を求めることができる。このため、必要空気量とスロットルバルブ25の開度との関係を示すマップ、及びEGR率とEGRガス流量調整バルブ56の開度との関係を示すマップを予め作成してECU120の記憶部80に記憶させておく。
トルク差低減部125でスロットルバルブ25の開度を算出する際には、吸気量算出部123で算出した必要空気量を、必要空気量とスロットルバルブ25の開度との関係を示すマップに照らし合わせることにより算出する。また、EGRガス流量調整バルブ56の開度を算出する際には、EGR率算出部124で算出したEGR率を、EGR率とEGRガス流量調整バルブ56の開度との関係を示すマップに照らし合わせることにより算出する。
さらに、トルク差低減部125は、スロットルバルブ25の開度とEGRガス流量調整バルブ56の開度とを算出する際に、ガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとのトルク差を低減するように算出する。即ち、スロットルバルブ25としては、それぞれ独立して開閉可能なガソリン側スロットルバルブ101とエタノール側スロットルバルブ102とが設けられており、EGRガス流量調整バルブ56としては、それぞれ独立して開閉可能なガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とが設けられている。
このため、これらをそれぞれ独立して制御することにより、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで、それぞれ独立してトルクを調整することができるが、トルク差低減部125は、スロットルバルブ25の開度とEGRガス流量調整バルブ56の開度とを算出する際に、ガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとのトルク差を低減するように、ガソリン側スロットルバルブ101の開度とエタノール側スロットルバルブ102の開度、及びガソリン側EGRガス流量調整バルブ111の開度とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112の開度とを算出する。
スロットルバルブ25の開度とEGRガス流量調整バルブ56の開度とを算出したトルク差低減部125は、算出した開度をスロットルバルブ制御部72及びEGRガス流量調整バルブ制御部76に伝達する。これにより、スロットルバルブ制御部72は、トルク差低減部125で算出した開度になるようにガソリン側スロットルバルブ101及びエタノール側スロットルバルブ102を制御し、EGRガス流量調整バルブ制御部76は、トルク差低減部125で算出した開度になるようにガソリン側EGRガス流量調整バルブ111及びエタノール側EGRガス流量調整バルブ112を制御する。
以上の燃料改質装置90付きエンジン1は、ガソリン側スロットルバルブ101とエタノール側スロットルバルブ102とを設けているので、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで吸入空気量を独立して調整可能になっている。また、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とを設けているので、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで、改質ガスを含むEGRガスの流量を独立して調整可能になっている。これにより、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とに吸気させる空気の量やEGRガスの量を、それぞれ独立して調整することができるので、燃焼させる燃料の性状が異なる気筒5同士で独立して運転状態を調整することができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に所望の状態でエンジン1を運転させることができる。
また、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7との吸入空気量をガソリン側スロットルバルブ101とエタノール側スロットルバルブ102とで調整し、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とのEGRガスの流量をガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とで調整することにより、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7との間で、トルク差が発生することを抑制している。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、気筒5間のトルク差に起因してドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
実施例3に係る燃料改質装置150付きエンジン1は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と略同様の構成であるが、エンジン1はハイブリッド装置135が有する複数の原動手段のうちの1つとして設けられている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図6は、実施例3に係る燃料改質装置付きエンジンを搭載する車両の要部概略図である。実施例3に係る燃料改質装置150(図7参照)付きエンジン1は、複数の原動手段を有するハイブリッド装置135が搭載される車両130であるハイブリッド車に搭載されており、このエンジン1は、ハイブリッド装置135が有する原動手段のうちの1つとして設けられている。また、このハイブリッド装置135は、他の原動手段として、電気によって作動するモータ(モータジェネレータ)140を備えており、これらのエンジン1とモータ140とは、共に車両130の走行時の原動力を発生可能になっている。また、ハイブリッド装置135は、エンジン1の出力を受けて発電を行う発電機(モータジェネレータ)141を有しており、エンジン1と発電機141とは、動力分割機構142によって接続されている。さらに、動力分割機構142とモータ140とは、共に減速機145に接続されており、減速機145は、駆動軸146を介して車両130の駆動輪147に接続されている。このうち、動力分割機構142は、エンジン1の出力を発電機141と減速機145とに振り分ける。
また、減速機145は、動力分割機構142を介して伝達されたエンジン1の出力やモータ140の出力を減速して駆動輪147に伝達する。つまり、減速機145は、エンジン1から、車両130が有する車輪である駆動輪147までの動力の伝達経路、及びモータ140から駆動輪147までの動力の伝達経路に設けられると共に、エンジン1の出力やモータ140の出力を変速して駆動輪147方向に伝達する変速手段として設けられている。また、動力分割機構142は、エンジン1の出力を、発電機141への出力と、車両130の走行時の駆動力とに分割可能な動力分割手段として設けられている。
モータ140は交流同期電動機であり、インバータ143に接続され、交流電力によって駆動する。インバータ143は、車両130に搭載されるバッテリ144に蓄えられた電力を直流から交流に変換してモータ140に供給すると共に、発電機141によって発電される電力を交流から直流に変換してバッテリ144に蓄えることができるように設けられている。このように、バッテリ144は、モータ140を駆動させる場合におけるモータ140の電源として設けられており、また、発電機141は、エンジン1の出力により発電すると共に発電した電気をバッテリ144に充電可能な発電手段として設けられている。発電機141も、基本的には上述したモータ140とほぼ同様の構成を有しており、交流同期電動機としての構成を有している。この場合、モータ140が主として駆動力を出力するのに対し、発電機141は主としてエンジン1の出力を受けて発電する役割をする。
また、モータ140は主として駆動力を発生させるが、駆動輪147の回転を利用して発電(回生発電)することもでき、発電機として機能することも可能になっている。この場合、駆動輪147には回生ブレーキ力を作用させることができるので、これを通常の制動手段であるフットブレーキやエンジンブレーキと併用することにより、車両130を制動させることができる。一方、発電機141は主としてエンジン1の出力を受けて発電をするが、インバータ143を介してバッテリ144の電力を受けて駆動する電動機としても機能することが可能になっている。
さらに、モータ140は、動力分割機構142と共に減速機145に接続されており、動力分割機構142には、エンジン1が接続されている。このため、モータ140は、動力分割機構142を介して減速機145に伝達されるエンジン1のトルクを検出することができる。即ち、モータ140は、車両130の走行時における原動手段として設けられていると同時に、トルク検出手段としても設けられている。
また、エンジン1、モータ140、発電機141、動力分割機構142は、それぞれECU155に接続されており、ECU155により制御可能に設けられている。また、バッテリ144もECU155に接続されており、ECU155によりバッテリ144の電気残量が監視可能になっている。
また、実施例3に係る燃料改質装置150付きエンジン1は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1(図1参照)と同様に、吸気通路10はガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とを有しており、排気通路30は、ガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とを有している。また、これらのガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とは、触媒部40を備える排気主通路33で合流している。この排気主通路33には、浄化触媒41と改質触媒42とを内設すると共に改質用通路34及びEGRガス通路50が接続された触媒部40が設けられている。このうち、改質用通路34は、他端がエタノール側排気通路32に接続されており、且つ、改質用燃料インジェクタ37が設けられている。また、EGRガス通路50は、他端側がガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分岐しており、ガソリン側EGRガス通路51は吸気通路10のガソリン側吸気通路11に接続され、エタノール側EGRガス通路52は吸気通路のエタノール側吸気通路12に接続されている。
図7は、図6に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。また、この実施例3に係る燃料改質装置150付きエンジン1が有するECU155は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1が有するECU70と同様に処理部71と記憶部80と入出力部81とを有している。このうち、処理部71は、少なくともスロットルバルブ制御部72と、吸入空気量取得部73と、燃料噴射量制御部74と、改質用燃料噴射量制御部75と、EGRガス流量調整バルブ制御部76と、を有している。
さらに、処理部71は、エンジン1のトルクを取得するトルク取得手段であるエンジントルク取得部156と、モータ140の運転を制御すると共にガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とのトルク差に起因する振動をモータ140のトルクを変化させることにより抑制する制御を行うモータ制御手段であるモータ制御部157と、を有している。
この実施例3に係る燃料改質装置150付きエンジン1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例3に係る燃料改質装置150付きエンジン1の運転時の基本的な作用は、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と同様な作用をする。即ち、エンジン1が有するガソリン側気筒6は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気とガソリン用インジェクタ21から噴射されるガソリンとの混合気を吸気してガソリンを燃焼させる。また、エタノール側気筒7は、エタノール側吸気通路12を流れる空気とエタノール用インジェクタ22から噴射されるエタノールとの混合気を吸気してエタノールを燃焼させる。
気筒5内で燃焼した後の排気ガスは排気通路30に排気されるが、ガソリン側気筒6からの排気ガスは排気通路30が有するガソリン側排気通路31に排気され、エタノール側気筒7からの排気ガスはエタノール側排気通路32に排気される。これらのように、ガソリン側排気通路31に排気された排気ガスと、エタノール側排気通路32に排気された排気ガスとは、排気主通路33で合流し、排気主通路33に設けられる触媒部40に流れて、触媒部40に内設される浄化触媒41で浄化される。
また、排気通路30に排気された排気ガスのうち、エタノール側排気通路32側に排気された排気ガスの一部は改質用通路34に流れ、改質用燃料インジェクタ37で噴射した改質用燃料と混合する。改質用燃料が混合した排気ガスは、触媒部40に流れ、触媒部40に内設される改質触媒42に流れる。この改質触媒42は、排気ガスに混合される改質用燃料を改質し、改質ガスを生成する。改質触媒42で生成した改質ガスは、改質用通路34を流れて触媒部40に流入した排気ガスと共にEGRガス通路50に流れ、EGRガス通路50に設けられるEGRクーラ55で冷却された後、吸気通路10に流れ、吸気通路10から気筒5内に吸気される。
エンジン1は、このように運転するが、エンジン1の運転時には、エンジン1が発生するトルクは動力分割機構142に伝達され、動力分割機構142から減速機145に伝達された後、さらに減速機145から駆動軸146に伝達されることにより、駆動輪147に伝達される。
また、車両130の走行時には、走行状態に応じてモータ140も作動させるが、このモータ140は、ECU155の処理部71が有するモータ制御部157で制御する。モータ制御部157は、車両130の走行状態に応じてモータ140を制御し、モータ140にトルクを発生させる。モータ140で発生したトルクは、減速機145に伝達され、さらに減速機145から駆動軸146に伝達されることにより、駆動輪147に伝達される。車両130は、このようにエンジン1やモータのトルクが駆動輪147に伝達されることにより走行する。
また、車両130の走行時には、モータ140は、動力分割機構142と減速機145を介して駆動軸146に伝達され、駆動輪147に伝達されるエンジン1のトルクを、減速機145を介して検出する。即ち、減速機145には、エンジン1のトルクが伝達可能に設けられており、モータ140は減速機145に接続されているため、エンジン1のトルクは減速機145を介してモータ140にも伝達可能になっている。モータ140は、このように減速機145を介して伝達されるエンジン1のトルクを検出可能に設けられており、検出したエンジン1のトルクは、ECU155の処理部71が有するエンジントルク取得部156で取得する。
エンジン1のトルクは、このようにモータ140で検出可能に設けられているが、エンジン1は、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで、性状の異なる燃料によって運転している。このため、それぞれの気筒5内での燃料の燃焼によって発生するトルクは、気筒5間で差が生じ易くなっており、この気筒5間のトルク差によって、エンジン1のトルクはトルク変動が生じ易くなっている。
さらに、実施例1に係る燃料改質装置3付きエンジン1と同様に、ガソリン側気筒6の空燃比をリーン空燃比にした場合には、ガソリン側気筒6内での燃料の燃焼によって発生するトルクが小さくなるので、ガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとのトルク差は、さらに大きくなる。このため、この場合には、エンジン1のトルクのトルク変動は、さらに大きくなる。
このように、エンジン1のトルクにはトルク変動が生じ易くなっているが、エンジン1のトルクは、エンジントルク取得部156で取得可能になっている。エンジントルク取得部156で取得したエンジン1のトルクは、ECU155の処理部71が有するモータ制御部157に伝達される。モータ制御部157は、モータ140の回転数やトルクを制御することができるが、エンジントルク取得部156から伝達されたエンジン1のトルクにトルク変動が発生している場合、モータ制御部157は、モータ140のトルクを、エンジン1のトルク変動の反対方向に変化するように制御する。つまり、エンジン1のトルクが大きくなる場合には、モータ140のトルクを小さくし、エンジン1のトルクが小さくなる場合には、モータ140のトルクが大きくなるように、モータ制御部157はモータ140を制御する。これらのエンジン1のトルクやモータ140のトルクは、共に減速機145に伝達され、双方のトルクが合わせられて減速機145から駆動軸146を介して駆動輪147に伝達される。
エンジン1のトルクにトルク変動が生じた場合、振動が発生し易くなるが、エンジン1のトルク変動と反対方向の変動になるようにモータ140のトルクを変化させることにより、モータ140のトルクはエンジン1のトルク変動による振動を打ち消す方向に作用する。このため、エンジン1のトルクとモータ140とのトルクとが減速機145で合わせられて駆動軸146に伝達される際には、エンジン1のトルク差に起因する振動が抑制されて伝達される。
以上の燃料改質装置150付きエンジン1は、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7との間で発生するトルク差に起因する振動を、モータ140のトルクを変化させることにより抑制している。つまり、このモータ140は、エンジン1と共に車両130の原動手段として設けられており、エンジン1及びモータ140は、共に動力を発生し、発生した動力を車両130の駆動輪147に伝達可能に設けられている。このため、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7との間のトルク差に起因して振動が発生した場合に、その振動の方向と相反するトルク変動をモータ140に発生させることにより、振動を抑制して駆動輪147に伝達することができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、ドライバビリティが悪化することを抑制することができる。
実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1は、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1と略同様の構成であるが、ターボチャージャ161が備えられている点に特徴がある。他の構成は実施例2と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図8は、本発明の実施例4に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1は、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1と同様に、吸気通路10はガソリン側吸気通路11とエタノール側吸気通路12とを有しており、排気通路30は、ガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とを有している。また、これらのガソリン側排気通路31とエタノール側排気通路32とは、触媒部40を備える排気主通路33で合流している。この排気主通路33には、浄化触媒41と改質触媒42とを内設すると共に改質用通路34及びEGRガス通路50が接続された触媒部40が設けられている。
このうち、改質用通路34は、他端がエタノール側排気通路32に接続されており、且つ、改質用燃料インジェクタ37が設けられている。また、EGRガス通路50は、他端側がガソリン側EGRガス通路51とエタノール側EGRガス通路52とに分岐しており、ガソリン側EGRガス通路51は吸気通路10のガソリン側吸気通路11に接続され、エタノール側EGRガス通路52は吸気通路10のエタノール側吸気通路12に接続されている。
このように分岐して吸気通路10に接続されているEGRガス通路50には、分岐したそれぞれの通路にEGRガス流量調整バルブ56が設けられており、ガソリン側EGRガス通路51にはガソリン側EGRガス流量調整バルブ111が設けられ、エタノール側EGRガス通路52にはエタノール側EGRガス流量調整バルブ112が設けられている。また、分岐したEGRガス通路50が接続される吸気通路10も分岐しているが、この吸気通路10には、分岐したそれぞれの通路にスロットルバルブ25が設けられており、ガソリン側吸気通路11にはガソリン側スロットルバルブ101が設けられ、エタノール側吸気通路12にはエタノール側スロットルバルブ102が設けられている。
また、実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1には、ガソリン側気筒6から排出された排気ガスにより作動すると共に、作動時に空気をガソリン側気筒6に対して供給する過給手段であるターボチャージャ161が設けられている。詳しくは、このターボチャージャ161は、タービンインペラ166を有するタービン165と、タービンインペラ166の回転が伝達されることにより回転するコンプレッサインペラ163を有するコンプレッサ162とを有しており、このうちタービン165がガソリン側排気通路31に接続され、コンプレッサ162がガソリン側吸気通路11に接続されている。
ターボチャージャ161のコンプレッサ162が接続されるガソリン側吸気通路11には、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の下流側に、コンプレッサ162で圧縮された空気を冷却するインタークーラ168が設けられている。また、ガソリン側吸気通路11に設けられるガソリン側スロットルバルブ101は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるインタークーラ168の下流側に配設されている。また、ガソリン側吸気通路11に接続されているガソリン側EGRガス通路51は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の上流側に接続されている。
この実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1の運転時の基本的な作用は、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1と同様な作用をする。即ち、ガソリン側気筒6は、ガソリン側吸気通路11を流れると共にガソリン側スロットルバルブ101で流量を調整される空気とガソリン用インジェクタ21から噴射されるガソリンとの混合気を吸気してガソリンを燃焼させる。また、エタノール側気筒7は、エタノール側吸気通路12を流れると共にエタノール側スロットルバルブ102で流量を調整される空気とエタノール用インジェクタ22から噴射されるエタノールとの混合気を吸気してエタノールを燃焼させる。
燃料の燃焼後の排気ガスは、ガソリン側気筒6からの排気ガスはガソリン側排気通路31に排気され、エタノール側気筒7からの排気ガスはエタノール側排気通路32に排気される。これらの排気ガスは排気主通路33で合流し、排気主通路33に設けられる触媒部40に流れて、触媒部40に内設される浄化触媒41で浄化される。
また、排気通路30に排気された排気ガスのうち、エタノール側排気通路32側に排気された排気ガスの一部は改質用通路34に流れて改質用燃料インジェクタ37で噴射した改質用燃料と混合した後、触媒部40に内設される改質触媒42に流れる。この改質触媒42は、排気ガスに混合される改質用燃料を改質し、改質ガスを生成する。改質触媒42で生成した改質ガスは、改質用通路34を流れて触媒部40に流入した排気ガスと共にEGRガス通路50に流れ、EGRガス通路50に設けられるEGRクーラ55で冷却された後、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とで流量を調整されて吸気通路10に流れ、吸気通路10から気筒5内に吸気される。
さらに、実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1には、ターボチャージャ161が設けられているが、このターボチャージャ161は、ガソリン側気筒6からガソリン側排気通路31に排気される排気ガスがタービン165に流れることにより作動する。つまり、ガソリン側排気通路31を流れる排気ガスが、タービン165に流れることにより、排気ガスの圧力などのエネルギがタービン165に伝達され、タービン165が有するタービンインペラ166が回転する。タービンインペラ166の回転は、コンプレッサインペラ163に伝達され、コンプレッサインペラ163も回転する。これにより、ターボチャージャ161は作動する。コンプレッサインペラ163が回転した場合、コンプレッサ162は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の上流側を流れる空気を吸気し、圧縮してガソリン側吸気通路11の下流側に流す。これにより、ターボチャージャ161の作動時のガソリン側吸気通路11におけるコンプレッサ162の下流側には、大気圧よりも圧力が高くなった空気が流れる。
ここで、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の上流側には、ガソリン側EGRガス通路51が接続されているが、ターボチャージャ161が作動した場合には、コンプレッサ162は、コンプレッサ162の上流側を流れる空気を吸気するため、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の上流側は、圧力が低くなる。このため、ターボチャージャ161が作動した場合においてガソリン側EGRガス流量調整バルブ111を開いた場合には、ガソリン側EGRガス通路51を流れる改質ガスはガソリン側吸気通路11方向に吸引されるため、ガソリン側吸気通路11に流れ易くなる。
また、ターボチャージャ161が作動することにより、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の下流で圧力が高くなった空気は、ガソリン側吸気通路11を流れ、コンプレッサ162の下流側に配設されるインタークーラ168に流れる。空気を圧縮して圧力を高くした場合、温度が上昇するが、インタークーラ168は、インタークーラ168内を流れる圧縮空気とインタークーラ168の周囲を流れる空気との間で熱交換を行うことにより、インタークーラ168内を流れる空気の温度を下げる。これにより、インタークーラ168内を流れる空気の密度が高くなる。
インタークーラ168で冷却され、密度が高くなった空気は、さらにガソリン側吸気通路11における下流側に流れる。インタークーラ168の下流には、ガソリン側スロットルバルブ101が配設されており、インタークーラ168で冷却された後ガソリン側吸気通路11を流れる空気は、ガソリン側スロットルバルブ101によって流量が調整される。さらに、流量が調整された空気は、ガソリン用インジェクタ21が噴射したガソリンと混合し、混合気となってガソリン側気筒6に吸気される。
ここで、ガソリン用インジェクタ21から噴射するガソリンの噴射量は、ECU120の処理部71が有する燃料噴射量制御部74で制御するが、燃料噴射量制御部74は、ガソリン側気筒6に吸気させる混合気の空燃比がリーン空燃比になるようにガソリン用インジェクタ21を制御する。即ち、ガソリン側吸気通路11には、ターボチャージャ161によって圧縮された空気が流れるため、ガソリン用インジェクタ21から噴射するガソリンの噴射量は、空気を圧縮しない場合と比較して増加するが、ガソリンの噴射量は増加させつつ、空燃比がリーン空燃比になるように、燃料噴射量制御部74はガソリン用インジェクタ21を制御する。このように、ターボチャージャ161によって圧縮された空気に対して、リーン空燃比になるようにガソリンを噴射することにより、アクセル開度を大きくした場合におけるガソリン側気筒6で発生するトルクとエタノール側気筒7で発生するトルクとのトルク差を低減し、熱効率を上昇させることができる。
図9は、スロットル開度を大きくした場合の空気量、発生トルク及び熱効率をNAリーンの場合と過給リーンとで比較した場合における説明図である。同図におけるNA(Natural Aspiration)リーンとは、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1のように燃料にガソリンを用いるガソリン側気筒6と燃料にエタノールを用いるエタノール側気筒7とを有しており、且つ、ターボチャージャ161などの過給手段を用いずに、自然吸気を行うエンジン1において、ガソリン側気筒6をリーン空燃比で運転する状態を示している。また、過給リーンとは、実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1の運転状態を示しており、ガソリン側気筒6に吸気させる空気の圧力をターボチャージャ161によって高くすることより吸入空気量を増加させる、即ち、過給するエンジン1において、ガソリン側気筒6をリーン空燃比で運転する状態を示している。
このため、NAリーンでスロットルバルブ25の開度を大きくした場合には、図9に示すように、吸入する空気量は、NA時ガソリン側気筒空気量171とNA時エタノール側気筒空気量172とで等しくなるのに対し、過給リーンでスロットルバルブ25の開度を大きくした場合には、ターボチャージャ161でガソリン側気筒6に過給する分、ガソリン側気筒6で吸入する空気量の方がエタノール側気筒7で吸入する空気量よりも多くなる。このため、過給時エタノール側気筒空気量176よりも過給時ガソリン側気筒空気量175の方が多くなる。また、過給リーンでスロットルバルブ25の開度を大きくした場合には、NAリーンでスロットルバルブ25の開度を大きくした場合よりも、ガソリン側気筒6で吸入する空気量が多くなるため、過給時ガソリン側気筒空気量175は、NA時ガソリン側気筒空気量171よりも多くなる。
また、ガソリン側気筒6をリーン空燃比で運転した場合、NAリーンでは、ガソリン側気筒6に供給するガソリンの量を少なくするのに伴って、発生トルクも、NA時エタノール側気筒発生トルク182よりNA時ガソリン側気筒発生トルク181の方が小さくなる。これに対し、過給リーンでは、吸入する空気量がエタノール側気筒7よりガソリン側気筒6の方が多くなるので、ガソリン側気筒6の空燃比をリーンにした場合でも、エタノール側気筒7に供給するエタノールの量とガソリン側気筒6に供給するガソリンの量とを、同程度にすることができる。つまり、ガソリン側気筒6に供給するガソリンの量は、NAリーンの場合より過給リーンの場合の方が多くなる。このため、過給時ガソリン側気筒発生トルク185はNA時ガソリン側気筒発生トルク181よりも大きくなり、過給時ガソリン側気筒発生トルク185と過給時エタノール側気筒発生トルク186とは、同程度の大きさになる。
また、熱効率は、改質ガスを導入することにより向上させることができ、このように改質ガスを導入した場合には、空燃比をリーン寄りにすることができる。このため、排気ガスに改質用燃料を噴射せず、排気ガスを改質ガスの生成に使用しないガソリン側気筒6は、空燃比を、よりリーン寄りにすることができ、熱効率を向上させることができる。従って、NAリーンの場合における熱効率は、NA時エタノール側気筒熱効率192よりもNA時ガソリン側気筒熱効率191の方が高くなる。
同様に、過給リーンの場合もエタノール側気筒7よりガソリン側気筒6の方が、熱効率が高くなるが、過給時ガソリン側気筒空気量175はNA時ガソリン側気筒空気量171よりも多くなるので、空燃比をリーン空燃比にすることができる領域を、大きくすることができる。つまり、NAリーンの場合には、吸入する空気量がガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで同程度なので、ガソリン側気筒6をリーン空燃比にした場合、NA時ガソリン側気筒発生トルク181はNA時エタノール側気筒発生トルク182よりも小さくなる。このため、スロットルバルブ25の開度を大きくする、即ち、エンジン1全体で大きなトルクを要求されている場合には、ガソリン側気筒6のトルクも大きくする必要があるため、ガソリン側気筒6をリーン空燃比に維持するのが困難になる。従って、この場合にはガソリン側気筒6の空燃比をリッチ寄りにするため、熱効率が低下する。
これに対し、過給リーンの場合には、スロットルバルブ25の開度を大きくした場合でも、リーン空燃比を維持しつつ、過給時ガソリン側気筒発生トルク185を過給時エタノール側気筒発生トルク186と同程度にすることができ、エンジン1全体で大きなトルクを要求されている場合でも、要求トルクを満たすことができる。このため、過給リーンの場合には、スロットルバルブ25の開度を大きくした場合でもガソリン側気筒6の空燃比をリーン空燃比に維持し続けることができ、熱効率が高い状態を維持し続けることができる。この場合、要求トルクが大きい場合でも高い熱効率を維持し続けることができるので、ガソリン側気筒6の全体の熱効率は、NAリーンの場合よりも向上する。
さらに、改質触媒42は、温度が高くなるに従って改質用燃料を改質する際の改質効率が高くなるので、改質用燃料の改質は、高負荷になるに従って改質効率が高くなる。従って、スロットルバルブ25の開度を大きくし、要求トルクが大きい状態の方が改質効率が高くなり、リーン空燃比で運転し易くなる。このため、ガソリン側気筒6に過給した場合には、スロットルバルブ25の開度を大きくし、改質効率が高い状態でリーン空燃比にすることができるので、過給時ガソリン側気筒熱効率195は過給時エタノール側気筒熱効率196よりも高くなり、さらに、過給時ガソリン側気筒熱効率195はNA時ガソリン側気筒熱効率191よりも高くなる。
以上の燃料改質装置160付きエンジン1は、ガソリン側気筒6に対して空気を供給可能なターボチャージャ161を設けているので、ガソリン側気筒6をリーン空燃比にした場合に、高負荷域までリーン空燃比を実現できる。これにより、最高熱効率を向上させることができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に燃費の向上を図ることができる。
また、ガソリン側気筒6に対して空気を供給可能なターボチャージャ161を設けることにより、ガソリン側気筒6をリーン空燃比にした場合でもガソリン側気筒6で発生するトルクを確保することができ、高負荷時に発生するトルクを、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とで同程度にすることができる。これにより、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7との間でトルク差が発生することを、より確実に抑制することができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、気筒5間のトルク差に起因してドライバビリティが悪化することを、より確実に抑制することができる。
また、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1では、改質効率を推定する際(ステップS102)に、エンジン1の回転数と要求トルクとをマップに照らし合わせることにより推定しているが、改質効率は、排気ガスの温度である排気温度や、浄化触媒41または改質触媒42の温度である床温より推定してもよい。改質効率は、改質触媒42の温度によって変化するため、排気温度や床温を取得することにより、改質効率を推定することができる。これにより、改質効率を、より容易に推定することができる。
また、実施例2に係る燃料改質装置90付きエンジン1のように、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とが設けられている場合において、ガソリン側気筒6及びエタノール側気筒7が共にストイキ領域で運転する場合には、ガソリン側EGRガス流量調整バルブ111とエタノール側EGRガス流量調整バルブ112とを制御することにより、ガソリン側吸気通路11に流れるEGRガスの割合よりもエタノール側吸気通路12に流れるEGRガスの割合を増加させるのが好ましい。このように、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とを共にストイキ領域で運転する場合に、ガソリン側吸気通路11に流れるEGRガスの割合よりもエタノール側吸気通路12に流れるEGRガスの割合を増加させることにより、燃費の向上を図ることができる。
つまり、ガソリンよりもエタノールの方が着火性が良いため、EGRガスの導入時における燃料の燃焼は、気筒5内でガソリンを燃焼させる場合よりも、気筒5内でエタノールを燃焼させる場合の方が、EGRガスの導入時の燃焼が安定する。このため、ガソリン側吸気通路11に流れるEGRガスの割合よりもエタノール側吸気通路12に流れるEGRガスの割合を増加させることにより、より多くのEGRガスを流すことができるので、燃費の向上を図ることができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ燃費の向上を図ることができる。
また、実施例4に係る燃料改質装置160付きエンジン1では、ガソリン側EGRガス通路51は、ガソリン側吸気通路11を流れる空気の流れ方向におけるコンプレッサ162の上流側に接続されているが、これ以外の形態でガソリン側吸気通路11に接続されていてもよい。例えば、ガソリン側EGRガス通路51は、2方向に分岐させてガソリン側吸気通路11におけるコンプレッサ162の上流側と下流側とにそれぞれ接続する共に、ガソリン側EGRガス通路51からガソリン側吸気通路11に流れる改質ガスの流れ方向を、コンプレッサ162の上流側方向と下流側方向とに切り替える切替バルブ(図示省略)を設けてもよい。
これにより、エンジン1の負荷が高く、ターボチャージャ161のコンプレッサ162による過給圧が高い場合には、切替バルブを切り替えて改質ガスをコンプレッサ162の上流側からガソリン側吸気通路11に流れるようにすることにより、エタノール側気筒7の排気圧が低く、改質ガスの圧力が低い場合でも、改質ガスを、より確実にガソリン側EGRガス通路51からガソリン側吸気通路11に流すことができる。つまり、エタノール側気筒7の排気圧が低い場合、ガソリン側EGRガス通路51内を流れる改質ガスの圧力も低くなるため、ガソリン側EGRガス通路51内を流れる改質ガスはガソリン側吸気通路11内に流れ難くなるが、エンジン1の負荷が高く、過給圧が高くなる場合には、切替バルブを切り替えて改質ガスをコンプレッサ162の上流側からガソリン側吸気通路11に流れるようにすることにより、改質ガスはコンプレッサ162に吸引されることになる。従って、改質ガスを、より確実にガソリン側EGRガス通路51からガソリン側吸気通路11に流すことができる。また、エンジン1の負荷が低く、過給圧が低い場合には、切替バルブを切り替えて改質ガスをコンプレッサ162の下流側からガソリン側吸気通路11に流れるようにすることにより、ガソリン側吸気通路11におけるガソリン側気筒6までの抵抗が少なくなるため、より多くの改質ガスをガソリン側EGRガス通路51からガソリン側吸気通路11に流すことができる。従って、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に燃費の向上を図ることができる。
また、上述した燃料改質装置付きエンジン1では、ガソリン側気筒6の圧縮比とエタノール側気筒7の圧縮比とを互いに異ならせてもよい。ガソリン側気筒6の圧縮比とエタノール側気筒7の圧縮比とを異ならせる場合には、吸排気バルブ(図示省略)の開閉タイミングをそれぞれの気筒で異ならせたり、ピストン(図示省略)等の形状をそれぞれの気筒で異ならせたりするなど、周知の手法を用いることにより実現できる。
このように、ガソリン側気筒6の圧縮比とエタノール側気筒7の圧縮比とを互いに異ならせる場合、双方の気筒5の圧縮比は、ガソリン側気筒6の圧縮比と比較してエタノール側気筒7の圧縮比を高くするのが好ましい。エタノールは、ガソリンと比較して耐ノック性が高いため、エタノール側気筒7の圧縮比は、ガソリン側気筒6の圧縮比よりも高くすることができる。また、圧縮比を高くした場合には、熱効率が向上する。従って、ガソリン側気筒6の圧縮比とエタノール側気筒7の圧縮比とを互いに異ならせ、耐ノック性が高いエタノールを燃料として使用するエタノール側気筒7の圧縮比を高くすることにより、より確実に熱効率を向上させることができる。この結果、改質触媒42の硫黄被毒を抑制しつつ、より確実に燃費の向上を図ることができる。
また、上述した燃料改質装置付きエンジン1では、気筒5は4つ設けられており、4つの気筒5のうち、2つがガソリン側気筒6となっており、残りの2つがエタノール側気筒7になっているが、気筒5の構成は、これ以外の構成でもよい。少なくとも、気筒5が複数設けられており、ガソリン側気筒6とエタノール側気筒7とを有していればよい。
また、上述した燃料改質装置付きエンジン1では、EGRガス通路50と改質用通路34とは、排気主通路33内を流れる排気ガスの流れ方向に対して略直交する方向で触媒部40に接続されているが、EGRガス通路50と改質用通路34とは、これ以外の形態で配設されていてもよい。例えば、EGRガス通路50と改質用通路34とは、改質用通路34から触媒部40内に流れ、さらにEGRガス通路50に流れる排気ガスや改質ガスの流れが、排気主通路33内を流れる排気ガスの流れ方向に向流するように形成されていてもよい。EGRガス通路50と改質用通路34とは、改質用燃料が供給された改質用通路34内の排気ガスが触媒部40内の改質触媒42に流れて改質触媒42で改質ガスを生成し、この改質ガス及び排気ガスがEGRガス通路50に流れるように設けられていれば、その形態は問わない。
以上のように、本発明に係る燃料改質装置付き内燃機関は、改質用燃料を改質することにより改質ガスを生成し、生成した改質ガスを内燃機関で燃焼させる燃料改質装置付き内燃機関に有用であり、特に、燃料にガソリンとエタノールとを用いる燃料改質装置付き内燃機関に適している。
本発明の実施例1に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。
図1に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。
本発明の実施例2に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。
図3に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。
本発明の実施例2に係る燃料改質装置付きエンジンの処理手順を示すフロー図である。
実施例3に係る燃料改質装置付きエンジンを搭載する車両の要部概略図である。
図6に示す燃料改質装置付きエンジンの要部構成図である。
本発明の実施例4に係る燃料改質装置付きエンジンの全体構成図である。
スロットル開度を大きくした場合の空気量、発生トルク及び熱効率をNAリーンの場合と過給リーンとで比較した場合における説明図である。
符号の説明
1 エンジン
3、90、150、160 燃料改質装置
5 気筒
6 ガソリン側気筒
7 エタノール側気筒
10 吸気通路
11 ガソリン側吸気通路
12 エタノール側吸気通路
20 インジェクタ
21 ガソリン用インジェクタ
22 エタノール用インジェクタ
25 スロットルバルブ
30 排気通路
31 ガソリン側排気通路
32 エタノール側排気通路
33 排気主通路
34 改質用通路
37 改質用燃料インジェクタ
40 触媒部
41 浄化触媒
42 改質触媒
50 EGRガス通路
51 ガソリン側EGRガス通路
52 エタノール側EGRガス通路
56 EGRガス流量調整バルブ
70、120、155 ECU
71 処理部
72 スロットルバルブ制御部
73 吸入空気量取得部
74 燃料噴射量制御部
75 改質用燃料噴射量制御部
76 EGRガス流量調整バルブ制御部
101 ガソリン側スロットルバルブ
102 エタノール側スロットルバルブ
111 ガソリン側EGRガス流量調整バルブ
112 エタノール側EGRガス流量調整バルブ
121 要求トルク算出部
122 改質効率推定部
123 吸気量算出部
124 EGR率算出部
125 トルク差低減部
130 車両
135 ハイブリッド装置
140 モータ
141 発電機
142 動力分割機構
144 バッテリ
145 減速機
156 エンジントルク取得部
157 モータ制御部
161 ターボチャージャ