JP4905313B2 - 胴巻きラベル - Google Patents

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Description

本発明は、清涼飲料水、乳飲料、ビール、ワイン、栄養ドリンク、調味料、化粧品などに使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂(以下「PET」ともいう。)等からなるプラスチック容器、ガラス瓶等の容器の表面に巻き付ける胴巻きラベル、及び、そのラベル付容器に関するものである。より詳しくは、流通時にラベルが脱落することなく、使用後に手で簡単に剥がすことのできる易剥離性を有し、かつ容器への糊残りないためリサイクル適性に優れる胴巻きラベル、及び、そのラベル付容器に関するものである。
従来、清涼飲料水、乳・乳飲料、ビール、ワイン、調味料、化粧品などに使用されるガラスびんやプラスチック容器には、内容表示の目的で容器に印刷ラベルが貼着され、または遮光の目的でラベルを被覆して使用されている。このような容器の全周にわたるラベルを装着する方法として、予め筒状に接着したラベルを前記容器に外嵌装着する方法のほか、粘着剤、ディレードタック接着剤、ホットメルト接着剤等の感熱性接着剤などをラベル端部に塗布し、容器の胴部分に巻きつけられて貼付するものが知られている。このような胴巻きラベルは、汎用樹脂を基材として調製できるため、安価に製造できる利点がある。
このような胴巻きラベルを装着した容器について、環境問題や資源のリサイクル化などの面から、PET容器等の容器を回収して再利用することが実用化され、容器リサイクルを円滑に行うための活動が活発化している。このため、指定PETボトルの自主設計ガイドラインでは、剥離適性としてラベル、印刷などが手、または簡単な器具、または熱湯処理で剥離でき、接着剤などがボトルに残らないものをAランクにし、分離適性として水より比重が軽く、容易に水での比重分離ができるものをAランクにし、剥離適性がAランクであり、比重分離による分離で20ppm以下に分離できるPPラベルなどをAAランクと認定している。よって、一般家庭で容器を回収して捨てる場合には、上記したアルカリ溶液や熱水による分離ではなく、簡便にラベルを剥離することができ、かつ接着剤やラベルの残留物が容器に残らないラベルであることが好ましい。例えば、筒状に成形したラベルを容器に外嵌したラベル付容器の場合には、予めラベルにミシン目を形成したものを使用し、使用後のラベルの剥離を容易にしているが、感熱性接着剤を介してラベルを貼付した容器の場合には、ラベル剥離時に接着剤が容器に残存する場合がある。
このような易剥離性のラベルとして、例えば、ラベル裏面に難接着層を予め形成しておき、難接着層に接着性を有する容器接着層を積層して形成し、難接着層及び容器接着層で容器の周面にラベル裏面を仮接着した状態で、ラベルの両端を貼付するラベルの接着性と剥離性を同時に満足させることができるラベルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ラベル基材の裏面の全面に感熱性接着剤を有し、かつ該感熱性接着剤をパターン状に塗布量を変えて塗布したことを特徴とする剥離の容易な感熱ラベルが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2000−238782公報 特開2001−134188公報
しかしながら、上記特許文献1のラベルは、難接着層と接着層を形成する2種類の樹脂を使用するため、絵柄印刷層の印刷色数に制約が大きくなり、デザイン性に劣り、接着層を形成する工程と、難接着層を形成する工程の2工程が必要となるためコスト高となり、生産性に劣る場合がある。
また、特許文献2のラベルは、ラベルの終端部のラベル/ラベル間の接着強度が弱く、ラベル付容器の流通過程で容器からラベルが脱落、剥離しやすい場合がある。また、ラベル付容器を水中にドブ漬けすると、端部の接着剤非形成領域でラベル/容器間に生ずる隙間から水が浸入し、ラベルが容器から脱落し、剥離しやすく、耐水性に劣る場合がある。このように、容器に感熱性接着剤層を介して容器に貼付する胴巻きラベルの場合には、ラベル−ラベル間の接着力は、輸送中、流通下、特に低温環境下で容器が落下した場合などでもラベルが容易に剥離しない接着強度が要求されるが、同時に使用後には容易に剥離できる易剥離性が要求され、両者を両立しうるものは存在しない。特に、胴巻きラベルは、清涼飲料水、乳・乳飲料、ビール、ワイン、調味料、化粧品などに使用される容器に貼付され、需要者の範囲が相当に広いため、だれでも容易に使用後の容器からラベルを剥離できる要求が強い。
上記現状に鑑み、本発明は、胴巻きラベルとしての剪断強度を確保しつつ、指先で容易にラベルを容器から剥離でき、かつ容器への糊残しの少ない、胴巻きラベルを提供することを目的とする。
本発明者らは、感熱性接着剤を介して容器に添付する胴巻きラベルについて詳細に検討した結果、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体は、加熱により容器本体にラベルを接着しうるが、24時間の放冷によって接着力が低下し、ラベル始端部と容器本体とを上記プロピレン系重合体で接着すると、使用後の容器本来からのラベル剥離が容易で容器への糊残りがないためリサイクル性に優れること、および上記プロピレン系重合体はポリオレフィンラベルとの親和性に優れるため、ポリオレフィンラベル−ラベル間を強固に結合することができ、ラベルの脱落がないことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、合成樹脂フィルムからなるラベル基材の裏面の少なくとも両端部に感熱性接着剤層を形成し、前記感熱性接着剤層を加熱してラベルの始端部と容器本体とを感熱性接着剤層を介して接着し、容器の周方向に前記ラベルを巻き付け、ラベル終端部ラベル始端部の感熱性接着剤層とは反対側の面に感熱性接着剤層を介して接着する胴巻きラベルにおいて、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体を含む水性分散溶液を乾燥時の厚みが1〜20μmとなるように前記ラベル基材に塗布、加熱乾燥して形成されたことを特徴とする、胴巻きラベルを提供するものである。
また、上記胴巻きラベルが、前記の感熱性接着剤の塗布面を内側にして容器の胴部外周面に貼付されてなることを特徴とする胴巻きラベル付容器を提供するものである。
本発明の胴巻きラベルは、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体を含む水性分散溶液を使用することで、接着後の放冷により容器本体−ラベル間の接着剥離強度が低下し、一方ポリオレフィンラベルとの親和性に優れるためラベル−ラベル間を強固に結合することができ、誰でも容易に容器からラベルを剥離することができると同時にラベルの脱落がない。容器からラベルを剥離する際には、容器への糊残りが少ないためリサイクルに適する。
本発明で使用する水性分散溶液は、加熱時のタックが強くかつオープンタイムが長いため各種の条件でラベリングが可能となる。
本発明で使用する前記感熱性接着剤層は、例えばグラビア印刷法によって簡便に調製することができるため、ラベルの製造が容易であり、ラベル製品の保管、流通過程も温度管理が容易である。
本発明の胴巻きラベルは、ラベル終端部のラベル−ラベル間の剪断強度が平均4N/15mm以上であるため、使用に十分な接着強度を確保することができる。
本発明の胴巻きラベルは、容器に巻き付けて装着することができるため、ラベルを筒状に形成する工程が不要となり、生産工程を簡略化することができ、コストも低下させることができる。
本発明は、合成樹脂フィルムからなるラベル基材の裏面の少なくとも両端部に感熱性接着剤層を形成し、前記感熱性接着剤層を加熱してラベルの始端部と容器本体とを感熱性接着剤層を介して接着し、容器の周方向に前記ラベルを巻き付け、ラベル終端部ラベル始端部の感熱性接着剤層とは反対側の面に感熱性接着剤層を介して接着する胴巻きラベルにおいて、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体を含む水性分散溶液を乾燥時の厚みが1〜20μmとなるように前記ラベル基材に塗布、加熱乾燥して形成されたことを特徴とする、胴巻きラベルである。以下、本発明の胴巻きラベルについて説明する。
(1)胴巻きラベルの構成
本発明の胴巻きラベルは、容器の胴部外周面に巻き付けて添付する胴巻きラベルであって、合成樹脂フィルムからなるラベル基材の裏面の両端部に感熱性接着剤層を形成したものである。合成樹脂フィルムの内側に更に印刷層が積層されていてもよく、合成樹脂フィルムの表面側に外層が積層されていてもよい。
図1に本発明の胴巻きラベルの断面図の好ましい態様の一例を示す。本発明の胴巻きラベルは、容器に添付するため、ラベル始端部(W)とラベル終端部(W’)との2つの貼付部を有する。図1は、合成樹脂フィルム(10)と感熱性接着剤層(20)とからなり、合成樹脂フィルム(10)のラベル内側の、ラベル始端部(W)とラベル終端部(W’)に感熱性接着剤層(20)が形成された態様である。
合成樹脂フィルム(10)に更にデザイン印刷層(30)を有する態様を図2に示す。図2では、ラベル始端部(W)およびラベル終端部(W’)には印刷層を設けておらず、合成樹脂フィルム(10)のラベル内側に感熱性接着剤層(20)が形成される態様となっている。なお、デザイン印刷層上に、感熱性接着剤層を設けてもよい。
図3は、胴巻きラベルの合成樹脂フィルム(10)のラベル表面に、更に外層(40)を有する態様を示す。外層(40)は、ラベル表面の全面に形成されてもよいが、一部にのみ形成されていてもよい。図3に示すようにラベル表面のラベル終端部(W’)と接着する部分には外層(40)が形成されていない場合には、ラベル終端部(W’)の感熱性接着剤層(20)は、合成樹脂フィルム(10)に直接接着することができる。なお、合成樹脂フィルム(10)は、単層に限定されず、2層以上の積層フィルムであってもよい。
本発明の胴巻きラベルは、ラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層と、ラベル終端部とラベル始端部とを接着する感熱性接着剤層とは同一でも異なっていてもよい。また、胴巻きラベルのサイズは、貼付対象の容器のサイズに応じて適宜選択することができる。本発明では、少なくとも、ラベル始端部とラベル始端部とに感熱性接着剤層を有すれば、接着剤を塗布する貼付部のサイズも、例えばラベル貼付装置の使用態様などに応じて適宜選択することができる。なお、ラベル全面に感熱性接着剤層が形成されていてもよい。
(2)合成樹脂フィルム
本発明において、本発明に係る胴巻きラベルを構成する合成樹脂フィルムからなるラベル基材層としては、一軸、若しくは、二軸に延伸した合成樹脂フィルムからなる基材で、且つ、耐熱性を有すれば、いずれのものでも使用することができ、更には、機械的、物理的、化学的強度、印刷適性を有するフィルムを使用することが好ましい。このようなフィルムは、胴巻きラベルの用途によって適宜選択することができる。
例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等の樹脂から製膜されたフィルム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの樹脂から製膜された変性ポリオレフィンフィルム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の樹脂から製膜されたフィルム、アクリル系樹脂フィルム等からなる1層または2層以上の積層フィルムを使用することができる。
上記フィルムは、それを構成する樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
更に、上記の合成樹脂フィルムには、必要に応じて、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。また、合成樹脂フィルムの表面には、印刷性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理を施してもよい。
フィルムの厚さとしては、10〜100μm程度に形成されるものが好ましい。本発明では、この中でも特に、延伸ポリプロピレンフィルム(以下「OPPフィルム」ともいう。)を好適に使用することができる。本発明で使用する感熱性接着剤層には、プロピレン系重合体が含有されるため、合成樹脂フィルムとの接着性に優れるからである。
なお、合成樹脂フィルムとしては、シュリンクフィルムであってもよい。なお、シュリンクラベルの場合には、耐熱性、剛性、機械適性、外観等を損なわない範囲で適宜選択され、27〜200μm、より好ましくは30〜160μmが好ましい。この厚さは、熱収縮前の層厚とする。なお、本発明において「シュリンクラベル」とは、熱処理によって収縮するラベルであるが熱収縮の有無は問わない。従って、熱収縮前後のいずれにおいても、シュリンクラベルである。
(3)感熱性接着剤層
本発明において、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体を含む水性分散溶液を乾燥時の厚みが1〜20μmとなるように前記ラベル基材に塗布、加熱乾燥して形成されたものである。感熱性接着剤は一般に、加熱により接着性を確保し、その接着性が冷却後も1日〜数年間持続するというものである。しかしながら、本発明で使用する特定のプロピレン系重合体を含む水性分散溶液で形成した感熱性接着剤層は、加熱により接着性を獲得するため容器本体に胴巻きラベルを接着することができるが、接着後に放冷すると接着性が低下する、という特性を有する。感熱性接着剤層を形成した胴巻きラベルを巻き取った原反はブロッキングが少なくラベル付容器の製造が容易であり、ラベル使用後には糊残りなくラベルを剥離することができる。また、前記プロピレン系重合体は水性分散溶液で供給されるため印刷によって簡便にラベルに感熱性接着剤層を形成することができる。なお、本発明において「感熱性接着剤層」とは、上記趣旨により、加熱によって接着しうるが加熱貼り付け後24時間経過時の容器本体−ラベル間の剥離強度が0〜0.5N/15mm(25℃)であるものを広く含み、上記条件を満たすものであれば、接着する場合に限定されず、粘着する場合、その他を含むものとする。なお、容器とラベル間の接着のためには、前記感熱性接着剤層は、加熱によって軟化し粘着性を発現して接着し、加熱直後に0.5N/15mm以上の剥離強度を有する必要がある。なお、加熱直後とは所定温度に加熱した後、30分以内を意味する。
(i)プロピレン系重合体
本発明で使用する水性分散溶液は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体が水媒体に分散してなるものである。本発明において、「プロピレン系重合体」とは、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を構成するプロピレン単位の含有量が60〜100モル%の重合体である。なお、該重合体は、カルボキシル基またはカルボン酸無水物またはカルボン酸エステル基を含有し、かつ不飽和二重結合を有する重合性化合物で変性された変性ポリプロピレン系重合体であってもよい。また、前記プロピレン系重合体の平均粒子径は、0.01〜0.2μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。この範囲であれば、水性分散溶液への調製が容易だからである。
なお、本発明で好適に使用されるプロピレン系重合体の重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)Mwであり、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは100000〜300000である。Mwが10,000未満であると、該重合体から得られる変性プロピレン系重合体により形成される感熱性接着剤層の造膜性が不良となる場合があり、500,000を超えると水性媒体への分散化が困難になり、分散安定性が低下する場合がある。
GPCによる分子量の測定は、オルトジクロロベンゼンなどを溶媒とし、ポリスチレンを標準試料として、市販の装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。該プロピレン系重合体の分子量分布については特に制限はないが、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が、好ましくはMw/Mn<20、更に好ましくはMw/Mn<10、最も好ましくはMw/Mn<5である。
プロピレン系重合体としては、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を構成するプロピレン単位の含有量が60〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは95〜100モル%の重合体である。60モル%を下回るとポリオレフィン、特にポリプロピレン基材への密着性に劣る場合がある。プロピレン系重合体を構成しうる他の共重合体成分としては、オレフィン性単量体(オレフィン単位)、例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、スチレン、及びこれらの誘導体の中から好適なオレフィン性二重結合を有するモノマー単位を選択することができる。これらのうち、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のモノオレフィン単位が好ましく、エチレン又はブテンが更に好ましい。
上記プロピレン系重合体は、アイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むが、ステレオブロック構造中のアイソタクチックブロックの含有率は10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。10質量%未満であると結晶性が低すぎ、十分な接着性が得られない場合がある。一方、60質量%を越えと結晶性が高すぎ、溶媒への溶解性が低下する場合がある。なお、アイソタクチックブロックの配合量は、例えば、13C−NMRスペクトルによって以下のように測定することができる。具体的には、試料350〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させ、次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基及びメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として125MHz以上のNMR装置を使用し、20時間以上の積算を行うのが好ましい。
ケミカルシフトは、頭−尾結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一である、すなわち、mmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として他の炭素ピークのケミカルシフトを決定する。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrm及びrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。なお、これらのペンタッドに由来するピークのケミカルシフトは、NMRの測定条件によって多少の変動があること、及び、ピークは必ずしも単一ピーク(single peak)ではなく、微細構造にもとづく複雑な分裂パターン(split pattern)を示すことが多い点に注意して帰属を行う必要がある。
本発明で使用される好適なプロピレン重合体は、上記mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8ppmとした際に、19.8ppm〜22.2ppmの範囲に現れる上記10種のペンタッドに属するピークの総面積Sに対する、21.8ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率(S1/S)が10〜60%であり、かつ21.5〜21.7ppmをピークトップとするピーク(mmmr)の面積をS2としたとき、4+2S1/S2>5を満足することが好ましく、より好ましくは5<4+2S1/S2<25、更に好ましくは、7<4+2S1/S2<10である。4+2S1/S2>5という要件は、プロピレン重合体が、アタクチックポリプロピレンとは異なり、結晶化可能な連鎖長のアイソタクチックブロックを含有することを意味し、立体特異性が乱れたシークエンスからなるブロックも同時に主鎖に存在することを意味する。本発明で使用するプロピレン系重合体は、結晶性を有するブロックと非晶性のブロックとが共存し、かつ、結晶性を有するブロックが、比較的長い平均連鎖長を有するアイソタクチックブロックから形成されるため、アイソタクチック性に富む構造になっている。
上記プロピレン系重合体は、シングルサイト触媒により重合する方法によって製造することができる。シングルサイト触媒のなかでも、メタロセン触媒がミクロタクティシティを好適に用いることができ、メタロセン化合物([α]成分)と共触媒([β]成分)を必須成分とするメタロセン系触媒が好ましく用いられる。メタロセン化合物([α]成分)としては、遷移金属含有の架橋基を有するC1−対称性アンサ−メタロセンが好ましい。また、共触媒([β]成分としては、有機アルミニウムオキシ化合物、前記[α]成分の遷移金属と反応して[α]成分をカチオンに交換することが可能なイオン性化合物、ルイス酸、及びケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物又は無機ケイ酸塩、からなる群より選択される一種以上の物質を用いることができる。更に、共触媒[β]成分の他に任意成分[γ]としてAlR1mZ3-m(式中、R1は、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは、水素、ハロゲン、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基、mは0<m≦3の数)で示される有機アルミニウム化合物を用いてもよい。上記触媒成分については、特開2003−201322号公報に詳しく記載されている。
上記[α]成分と[β]成分、又は[α]成分と[β]成分と[γ]成分との存在下に、プロピレン重合体を製造する。重合温度、重合圧力、及び重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常20〜150℃、好ましくは0〜100℃、重合圧力は、0.1MPa〜100MPa、好ましくは、0.3MPa〜10MPa、更に好ましくは、0.5MPa〜4MPa、重合時間は、0.1時間〜10時間、好ましくは、0.3時間〜7時間、更に好ましくは0.5時間〜6時間の範囲から選ばれる。
本発明で使用するプロピレン系重合体においては、前記したように、重合体の重量平均分子量Mwを10,000〜500,000の範囲にするのが好ましく、分子量調節には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御して分子量を調節する方法、モノマー濃度を制御して分子量を調節する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、水素が好ましい。
また、アイソタクチック部を10〜60質量%含有させるには、触媒の構造、重合温度やモノマー濃度を制御することで所望とする立体規則性を有するプロピレン重合体を得ることができる。
本発明のプロピレン系重合体は、有機溶媒に溶解させることができる。溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等の脂肪族系炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族系炭化水素;塩化メチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;n−エチルアセテート、n−ブチルアセテート等のエステル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素若しくはハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、メチルチクロヘキサンが好ましい。
本発明のプロピレン系重合体は、高分子量であっても上記のような有機溶媒に溶解させることができ、かつその溶液粘度が低いことを特長とする。具体的には、プロピレン系重合体のポリスチレン換算での重量平均分子量が100,000の場合に溶液粘度が約15mPa・s以下、重量平均分子量が300,000の場合に溶液粘度が約3000mPa・s以下である。なお、本発明においては、ブルックフィールド型粘度計を用い、トルエン溶媒を用いて、プロピレン系重合体の濃度が5質量%、25℃における粘度を測定した値を用いる。
また、本発明のプロピレン系重合体の軟化点は、上記構成によって、50℃〜120℃、好ましくは60℃〜100℃であり、最も好ましくは70℃〜90℃に調整される。軟化点が50℃より低いと該重合体から得られた変性プロピレン系重合体から形成される感熱性接着剤層にベタツキが生じたり、感熱性接着剤層の基材密着性が低下する。軟化点が120℃より高いと変性プロピレン系重合体のエマルジョンの成膜性が低下し、より高温で乾燥・成膜させる必要があるため好ましくない。軟化点は、熱機械分析装置(TMA・Thermo Mechanical Analysis)を用いた針入による測定方法で得た値とする。
本発明で使用する不飽和カルボン酸、もしくはその酸無水物及びエステル、またはカルボン酸エステル及び/またはその誘導体をグラフトすることにより変性した変性ポリプロピレン系重合体は、プロピレン系重合体の平均粒子径および水溶性を調製して水性分散溶液とすることができる。具体的には、アクリル酸などのカルボキシル基やマレイン酸無水物などの不飽和カルボン酸、もしくはその酸無水物、またはアクリル酸エステルなどの不飽和カルボン酸、もしくはその酸無水物等の酸基またはその誘導体を上記プロピレン系重合体にグラフト共重合させることによって得ることができる。該変性用化合物としては、炭素原子数が好ましくは3〜25の不飽和カルボン酸、その酸無水物及びそのエステル等のカルボン酸誘導体があり、これらの化合物をプロピレン系重合体に、常法によりラジカル付加反応させればよい。
上記グラフトさせる不飽和カルボン酸、その酸無水物として具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、アコニット酸、又はこれらの酸無水物等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表現は「アクリル又はメタクリル」の意味である。
不飽和カルボン酸誘導体としては、上記不飽和カルボン酸のカルボキシル基或いは酸無水物基の1つがエステル化された不飽和モノカルボン酸モノエステルや不飽和ジカルボン酸モノエステルが挙げられる。不飽和モノカルボン酸モノエステルとしては、(メタ)アクリル酸のエステル類が挙げられ、具体的には、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等;炭素数6〜12のアリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
更に、他の(メタ)アクリル酸誘導体としては、ヘテロ原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイドの付加物等;フッ素原子を含有する炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのモノマー、例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パ−フルオロエチルエチル等;(メタ)アクリルアミド系モノマー、例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、前記酸無水物にアルキルアルコールをエステル化したものであり、そのアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸モノエステルのエステル化率(完全エステル化率を200%とする)は、45〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。エステル化率が前記範囲であると、得られた水性分散溶液の分散安定性及び感熱性接着剤層の耐水性が良好となる。
本発明の変性プロピレン系重合体における不飽和カルボン酸或いは不飽和カルボン酸誘導体等のグラフト率は、0.6〜4.0質量%であり、好ましくは0.7〜3.0質量%である。含有率が0.6質量%未満であると、得られた水性分散溶液の分散粒子の粒子径が大きく分散安定性が不良となり、4.0質量%を過度に超えると、場合により感熱性接着剤層の耐水性が不良になりやすく、グラフト変性効果が発揮されない。また、変性重合体の極性が高くなりポリオレフィンへの接着性が低下する。この含有率は、赤外分光スペクトル分析法により、カルボニル基の吸収強度を、含有量既知のサンプルに基づく検量線と対比することで測定できる。
不飽和カルボン酸若しくは酸無水物或いは不飽和カルボン酸誘導体をラジカル付加する方法としては、例えば、プロピレン系重合体を有機溶媒に溶解し、不飽和カルボン酸若しくは酸無水物或いは不飽和カルボン酸誘導体とラジカル重合開始剤とを添加して加熱攪拌することによりラジカル付加を行う方法;各成分を押出機に供給して加熱混練しながらラジカル付加を行う方法;プロピレン系重合体のパウダーに、不飽和カルボン酸若しくは酸無水物或いは不飽和カルボン酸誘導体とラジカル重合開始剤とを有機溶媒に溶解した溶液を含浸させた後、パウダーが溶解しない温度まで加熱し、ラジカル付加を行う方法等が挙げられる。
使用されるラジカル重合開始剤と不飽和カルボン酸若しくは酸無水物或いは不飽和カルボン酸誘導体とのモル比[ラジカル重合開始剤/不飽和カルボン酸若しくは酸無水物或いは不飽和カルボン酸誘導体]は、通常1/100〜1/1、好ましくは1/20〜1/1である。反応温度については、特に制限はないが、通常50℃以上、好ましくは80〜200℃である。また、反応時間は、通常1〜10時間である。
また、本発明で使用する変性プロピレン系重合体としては、上記プロピレン系重合体又はこれに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより得られた変性プロピレン系重合体を、塩素化したものを用いてもよい。この場合の好ましい塩素含有率は5〜40質量%であり、これによって低温時の溶液流動性を改良することができる。塩素化の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば上記のプロピレン系重合体又はこれに不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトすることにより得られた変性プロピレン系重合体を、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等の塩素系溶媒に溶解して、無触媒又はラジカル発生剤(後述のラジカル重合開始剤と同様のものが使用可能)の存在下で、50〜130℃の温度で塩素と接触させることにより行うことができる。
ラジカル付加反応に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することが出来、有機過酸化物、アゾニトリル等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジイソプロピルパーオキシド、ジ(t−ブチル)パーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クミルヒドロパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカルボナート、ジシクロヘキシルパーオキシカルボナート等が挙げられる。アゾニトリルとしては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドが好ましい。
ラジカル付加反応に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なかでも、芳香族系炭化水素及びハロゲン化炭化水素が好ましく、特にトルエン、キシレン、クロルベンゼンが好ましい。
特に不飽和ジカルボン酸モノエステルを変性剤として有する変性ポリプロピレン系重合体の製造法としては、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルをプロピレン系重合体に前記のようにラジカル付加させる方法、或いは不飽和ジカルボン酸若しくはこれらの酸無水物を、プロピレン系重合体にラジカル付加させた後、アルキルアルコールによりカルボキシル基の1つをエステル化する方法によって製造することもできる。
(ii)水性分散溶液
本発明で使用する水性分散溶液は、水性溶液に上記プロピレン系重合体が分散する溶液であり、プロピレン系重合体の平均分子量が小さいため水性溶液に溶解または分散させて分散溶液とすることができるが、更に界面活性剤その他の成分を配合してプロピレン系重合体をミセル状に分散してエマルションを構成するものであってもよい。本願明細書では、プロピレン系重合体が水性溶液中に存在すれば、溶解、分散、乳化などの状態の如何を問わず、水性分散溶液とする。
水性分散溶液を構成する水性溶液としては、水のほかに親水性有機溶媒を含む均一溶液であってもよい。このような親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル類等が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性系界面活性剤の群から選ばれる少なくとも1種が使用される。ここで、アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩である、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートや、第四級アンモニウム塩である、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。両性系界面活性剤としては、例えばラウリルベタインやステアリルべタイン等が挙げられる。
本発明では、上記のなかでもノニオン系界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系界面活性剤を使用した場合には、特に低HLBのものの低水溶性による耐水性向上等の利点が得られる。
また、界面活性剤としては、プロピレン系重合体粒子の粒径を小さくしつつ、耐水性や耐溶剤性等の感熱性接着剤層性能を向上させる効果を両立させるため、少なくとも2種の界面活性剤を含有するものが好ましい。少なくとも2種の界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性系界面活性剤から任意に選ぶことができる。なかでも、本発明では、ノニオン系界面活性剤を含有する少なくとも2種の界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系界面活性剤とともに使用され得る界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤又は両性界面活性剤のいずれをも用いることができるが、得られた水性分散溶液のプロピレン系重合体粒子の粒子径及び感熱性接着剤層の耐水性の観点から、アニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。更に、本発明では、得られた水性分散溶液粒子の粒子径、及び感熱性接着剤層の耐水性の観点から、異なったHLB値を有する2種のノニオン系界面活性剤の使用、またはアニオン系界面活性剤とノニオン性界面活性剤との併用が好ましい。
ノニオン系界面活性剤を2種以上併用する場合のノニオン系界面活性剤の組合せとしては、特にHLB値が12〜15の範囲のノニオン系界面活性剤(b1)と、HLB値が16〜18の範囲のノニオン系界面活性剤(b2)のそれぞれから少なくとも1種選ぶのが好ましい。2種以上のノニオン系界面活性剤の配合割合としては、配合比が(b1)/(b2)=1/9〜9/1範囲、好ましくは3/7〜7/3となるようにすることが、得られた水性分散溶液粒子の粒子径、及び感熱性接着剤層の耐水性の観点から好ましい。
ノニオン系界面活性剤成分のHLB値が12〜15の範囲のノニオン系界面活性剤(b1)としては、HLB値が12〜15の範囲のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの中から選んだ1種類又は2種類の混合物が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:11〜14モルの範囲)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)の中から選んだ1種類又は2種以上の混合物が好ましく、より好ましくはポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:10〜14モルの範囲)が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤成分のHLB値が16〜18の範囲のノニオン系界面活性剤(b2)としては、HLB値が16〜18の範囲のポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルの中から選んだ1種類又は2種類の混合物が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:18〜22モルの範囲)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:33〜39モルの範囲)、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:12〜19モルの範囲及びプロピレンオキサイド付加モル数:1〜5モルの範囲)中から選んだ1種類又は2種類以上の混合物が好ましく、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数:18〜22モルの範囲)が挙げられる。なお、本発明における界面活性剤成分のHLB値の算出式としてはGriffinによるHLB値−数方式を用いる。たとえば、多価アルコール脂肪酸エステルの場合は、Sをエステル鹸化価、Aを脂肪酸の中和価とし、HLB値=20(1−S/A)である。また、Eをオキシエチレン含量(%)、Pを多価アルコール含量(%)とし、トール油、松脂、密蝋、ラウリン多価アルコール誘導体の場合は、HLB値=(E+P)/5となる。更に、親水基がオキシエチレン基のみである場合には、HLB値=E/5となる。
本発明で少なくとも2種の界面活性剤b1及びb2を使用する場合、その配合比(b1)/(b2)は、好ましくは1/9〜9/1、特に好ましくは3/7〜7/3である。配合比が1/9未満であると、感熱性接着剤層の耐水性が若干不良となり、9/1を超えると、得られた水性分散溶液の分散粒子の粒子径が若干大きく分散安定性が若干不良となる。
本発明の水性分散溶液では、更に塩基性物質を含んでいてもよい。これを水系溶媒中に含有させることにより、前記プロピレン系重合体の分散安定性を向上させることができる。塩基性物質としては、無機塩基性化合物類、アンモニア、又はアミン類が挙げられ、中でもアミン類が好ましい。無機塩基性化合物類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムが挙げられ、アンモニア及びアミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン等のアルキルアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミン類;モルホリン等が挙げられ、好ましくは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが挙げられる。
このような水性分散溶液中のプロピレン系重合体の含有量は、1〜40質量%、好ましくは3〜30質量%である。1質量%を下回るとポリオレフィン基材への接着性が低下する場合があり、40質量%を超えると分散溶液の安定性が低下する場合がある。
本発明の水性分散溶液においては、追加成分として変性プロピレン系重合体以外の他の重合体、例えば、(メタ)アクリル系重合体、ウレタン系重合体、又はエポキシ系重合体などを用いてもよい。なかでも、耐候性、耐熱性、及び耐水性向上の理由からして、(メタ)アクリル系重合体やウレタン系重合体などの使用が好ましい。
本発明の水性分散溶液においては、プロピレン系重合体(以下、変性プロピレン系重合体を含む。)100質量部に対し、界面活性剤0.1〜100質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは51〜100質量部、水10〜1000質量部、好ましくは150〜500質量部からなるものである。界面活性剤成分が、0.1質量部未満であると、得られた水性分散溶液の分散粒子の粒子径が大きく分散安定性が不良となり、100質量部を超えると、感熱性接着剤層の耐水性が不良となる。水成分が、10質量部未満であると、得られた水性分散溶液の固形分濃度が高くなりすぎて分散安定性が不良となり、1000質量部を超えると、得られた水性分散溶液の有効成分濃度が低すぎて実用上問題がある。また、プロピレン系重合体の分散安定性の向上の為に塩基性物質を用いる場合は、プロピレン系重合体成分100質量部に対し、塩基性物質を0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部含有させる。塩基性物質成分が、0.01質量部未満であると分散安定性の改良効果が不十分となり、10質量部を超えると分散安定性の改良効果が飽和に達するので、それを超えて添加しても分散安定性の向上は期待できない。
更に接着強度や耐候性の向上の為に、上記の他の重合体を用いる場合には、プロピレン系重合体100質量部に対し、該重合体を好ましくは1〜5,000質量部、特に好ましくは50〜1000質量部である。他の重合体成分が、1質量部未満であると、接着強度等の感熱性接着剤層の性能の改良効果が得られなくなり、5,000質量部を超えると、ポリオレフィン系基材への接着性が低下する。
本発明における水性分散溶液は、前記プロピレン系重合体を、必要に応じて用いられる塩基性物質を含有する水系溶媒に分散させることによって調製することができる。分散方法については、特に制限はなく、例えば、プロピレン系重合体を、界面活性剤及び水と共に水中に投入して分散させる粉砕法;有機溶媒に溶解した変性プロピレン系重合体を、界面活性剤及び水と混合した後、有機溶媒を除去する方法;ホモミキサーを用いて分散を行うホモミキサー法;内部せん断力により乳化を行うミキサーを用いる方法;転相法等いずれの方法を利用しても良く、分散する変性プロピレン系重合体の物性等に応じて適宜選択される。特に、内部せん断力により乳化を行うミキサーを用いる方法が、変性プロピレン系重合体をより微細分散させることが出来、分散安定性を改良できるという面で好ましく用いられる。
本発明の水性分散溶液に、必要により他の水性樹脂、例えば水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性エポキシ樹脂、水性アルキッド樹脂、水性フェノール樹脂、水性アミノ樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性シリコン樹脂等を配合して用いられる。その他、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、酸化チタン、有機顔料等の着色剤、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤等の各種添加剤も配合使用してもよい。更に塗布される基材との濡れ性を改善するために、必要に応じて少量の有機溶媒を添加しても良い。
増粘剤としては、例えばアルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系増粘剤;ベントナイトクレー等の鉱物性増粘剤;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリルエマルジョンコポリマー、架橋アクリルエマルジョンコポリマー等のアクリル酸系増粘剤;カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維誘導体等を挙げることができる。
消泡剤としては、例えばヒマシ油、大豆油、アマニ油等の植物油;スピンドル油、流動パラフィン等の鉱物油;ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;オレイルアルコール、ポリオキシアルキレングリコール、オクチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等の脂肪酸エステル;トリブチルホスフェート、ナトリウムオクチルホスフェート等のリン酸エステル;ポリオキシアルキレンアミド類のアミド類;ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;ジメチルシリコン、ポリエーテル変性シリコン等のシリコン類;ジメチルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン等のアミン類等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、メタオクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等のフェノール系安定剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等のリン系安定剤等を挙げることができる。また、用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、パラオクチルフェニルサリチレート等を挙げることができる。
また、水性分散溶液を調製する際に界面活性剤を使用せず、水性樹脂を使用して前記プロピレン系重合体と水性樹脂とを含有するミセルを形成させ水性溶液に分散させ、水性ミセル溶液としてもよい。
例えば上記プロピレン系重合体と他の水性樹脂として親水性のウレタン樹脂部分と疎水性のアクリル樹脂部分とを有するアクリル複合ウレタン樹脂を使用した場合には、前記プロピレン系重合体が疎水性のアクリル樹脂部分と結合し、親水性のウレタン樹脂部分を水分散媒中に配置したミセルを形成し得る。ウレタン樹脂中に組み込まれている乳化基が乳化剤として作用するため、ミセルの外側に配置され、乳化基を含有してないアクリル樹脂部とプロピレン系重合体とを内側にしたコアシェル構造となるのである。
プロピレン系重合体と共にミセルを形成するために使用する他の水性樹脂としては、公知の水性樹脂の中で上記プロピレン系重合体と相溶性のある樹脂から構成されるものであれば特に制約はないが、アクリル複合ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、反応性界面活性剤を使用したアクリル樹脂等、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を使用することができる。これらの重量平均分子量は通常、10,000〜1,000,000の範囲である。中でもアクリル複合ウレタン樹脂が好ましい。
本発明では、水性分散溶液中のプロピレン系重合体の含有量は、1〜40質量%、好ましくは3〜30質量%である。分散溶液の粘度は、1〜10000mPa・s/25℃、好ましくは5〜5000mPa・s/25℃である。1mPa・s・25℃を下回ると塗布時に均一な感熱性接着剤層が得られず、一方、10000mPa・s/25℃を超えると塗布が困難になる場合がある。
上記アクリル複合ウレタン樹脂とは、ウレタン組成とアクリル組成とが、所定の構成比率で同一ミセル内に存在するように以下の方法で製造された樹脂である。水酸基を含有しないアクリル系モノマー中で有機ジイソシアネートと、ポリオール、水酸基とイオン形成基を含有した化合物とから、ウレタンプレポリマー化反応を行い、水を添加して乳化させ、その後にアクリル系モノマーをラジカル重合することにより得られる樹脂、あるいはウレタンプレポリマー化反応時に水酸基とラジカル重合性の官能基を含有する化合物を用いて、ウレタン樹脂中にラジカル重合性の官能基を導入し、その後にアクリル系モノマーを重合した樹脂等が挙げられる。上記製造方法で製造を行った樹脂は同一ミセル内にウレタン樹脂とアクリル樹脂が存在し、さらに乾燥後も均一で透明な感熱性接着剤層となる。
このような水性分散溶液は、分子内に活性水素基を含有しない(メタ)アクリル系モノマー中において、ジイソシアネート化合物、分子中に2個以上の水酸基を含有するポリオール化合物及び分子中に2個以上の水酸基と1個以上のイオン形成官能基を含有する化合物を、NCO/OH=2/1〜1.1/1のモル比で反応させてウレタンプレポリマーを形成させ、イオン形成官能基を中和させ、プロピレン系重合体を混合し、これに水を添加して乳化させ、次いで(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって製造することができる。
まず、イソシアネート基に対し非反応性の(メタ)アクリル系モノマー中でジイソシアネート化合物、分子中に2個以上の水酸基を含有するポリオール化合物、及び分子中に2個以上の水酸基と1個以上のイオン形成官能基を含有する化合物を反応させ、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを生成させる。分子内に活性水素基を含有しない(メタ)アクリル系モノマーとは、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、アミノ基、グリシジル基等を含有しないアクリル系モノマーである。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/テトラヒドロフラン共重合体の(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体の(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられ、アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド等のアミド基を有するもの、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等の三級アミノ基を有するモノマー、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の窒素を含有するモノマー、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式モノマー、また、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸フェニル等の芳香族系モノマー、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の含珪素モノマー、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の含フッ素モノマー等が挙げられる。その他、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
また、ポリオレフィンと異種基材間との接着性から、(メタ)アクリル系モノマー種としては、得られる(メタ)アクリルポリマーの計算上のガラス転位温度が70℃以下のものが好ましい。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、ホモポリマーであれば、例えば上記、アクリル酸アルキルエステル類の全て、メタクリル酸アルキルエステル類であれば、メタクリル酸メチルエステル以外の全てが該当する。また、複数の(メタ)アクリル酸エステル類を混合して使用することも可能である。混合した場合は各(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマーのガラス転位温度から、混合比により計算することで得られる。例えば(メタ)アクリル酸メタクリル酸メチルエステル100部に対してとアクリル酸ブチルエステルを33部以上混合する事により計算上のガラス転位温度を70℃以下にすることが可能である。
本発明において使用するジイソシアネート化合物としては、溶解性や耐候性の観点からイソホロンジイソシアネート(IPDI)が最も好ましい。その他、性能上問題ない範囲で2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)及びこれと2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)の混合物、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が混合することも可能である。また、必要に応じ上記TDI、HMDI、IPDI等の3量体、或いはトリメチロールプロパン等との反応物である多官能性イソシアネートを少量併用することも可能である。
ポリオール化合物としては、ウレタン合成に一般的に使用されるポリオールを使用可能である。具体的にはポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール、シリコンポリオール等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルグリコールとしてはジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)又はその無水物と低分子量ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。ポリエーテルエステルグリコールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。ポリカーボネートグリコールとしては低分子量ジオールとアルキレンカーボネート又はジアルキルカーボネートとから脱グリコール又は脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物が挙げられる。これらの中でも耐候性の観点からはポリカーボネートポリオールが好ましい。さらに好ましくは(B)3−メチル−1,5−ペンタンジオールを含有するポリカーボネートポリオールであり、最も好ましくは更に1,6−ヘキサンジオールを含有するポリカーボネートポリオールであり、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとがモル比で95:5〜40:60の範囲であるポリカーボネートポリオールが好ましい。1,6ヘキサンジオールの含有量がこれ以上多くなると、プレポリマーの粘度が高くなり乳化不良を引き起こす可能性がある。感熱性接着剤層の柔軟性や接着性の観点からはポリエーテルポリオールが好ましく、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである。前記ポリオール化合物の数平均分子量は下限値が、通常、1000以上、好ましくは1500以上であり、上限値が通常、5000以下、好ましくは3000以下である。この分子量が小さすぎるとポリオールとしての機能が発揮されず、大きすぎると得られたウレタンプレポリマーの粘度が高くなり水分散時に凝集物の発生や、分散不良を引き起こしたり、親水基量が低下するために水分散が不良になる傾向がある。
分子中に2個以上の水酸基と1個以上のイオン形成官能基を有する化合物(以下、イオン形成化合物、と略称する場合がある)としては、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸類、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等が挙げられる。その他、物性等が問題ない範囲でスルホン酸アルカリ金属塩基、例えば2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩、5−スルホ−ジ−β−ヒドロキシエチルイソフタレートナトリウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸ベンジルトリエチルアンモニウム塩等も使用可能である。中でも(メタ)アクリル系モノマーの溶解性の観点から、アルカノールカルボン酸類が好ましく、さらに好ましくは、ジメチロールプロピオン酸もしくはジメチロールブタン酸である。
イオン形成官能基の含有量はウレタン樹脂プレポリマー固形分当たり好ましくは500〜7000g/イオン基1個の範囲である。この値が小さすぎると得られる樹脂の皮膜物性や耐水性が悪くなる傾向がある。また、大きすぎるとウレタンプレポリマーの自己乳化性が不足し分散粒子の平均粒子径が大きくなり分散安定性が悪くなるばかりでなく、緻密な皮膜が形成しにくい。通常、ジイソシアネート化合物のNCO基と、ポリオール化合物及び水酸基とイオン基形成官能基を含有する化合物を合わせた水酸基との比率はモル比で2:1〜1.1:1、さらに好ましくは1.7:1〜1.3/1の範囲である。NCO/OH比が大きすぎると未反応のイソシアネートモノマーが過剰になり、乳化不良になる。また、NCO/OH比が少なすぎると、プレポリマーの粘度が高く乳化不良を引き起こす可能性がある。
プレポリマー化反応は通常50〜100℃で行い、重合時間は通常、 2〜10Hrである。重合時間が短すぎるとウレタン化反応が終了せずに、未反応物質が存在する可能性があり、また長すぎると(メタ)アクリル系モノマーが重合をしてしまう可能性がある。また、(メタ)アクリル系モノマーの熱による重合を防ぐため空気の存在下でp−メトキシフェノール等の重合禁止剤をモノマーに対し20〜3000ppm程度の範囲で加えておくことが好ましい。また、この際、ウレタン化反応の触媒としてジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物やトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を使用しても良い。ここで得られるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、下限値が通常、2000以上、好ましくは2500以上であり、上限値が、通常10000以下、好ましくは、10000以下である。このようにしてイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液が得られる。またウレタンプレポリマーのアクリル系モノマー溶液にアクリル系モノマーを更に追加してもよく、その場合、追加時期は特に限定されず、後述するウレタンプレポリマーの中和工程の前または後の任意の時期に添加することができる。また、中和したウレタンプレポリマーを水に分散させた後、この分散液にアクリル系モノマーを添加しても良い。また、該ウレタンプレポリマー溶液を水に分散する際、前記ポリオキシエチレン基含有アクリルモノマーを添加することによって、水への分散が良好となり尚かつ均一でより安定な分散液が得られる。
ついで、前記工程において得られたウレタンプレポリマーのアクリル系モノマー溶液を水に分散するためには、前記のイオン基形成化合物をウレタンプレポリマー分子鎖に組み込み、イオン基形成に必要な中和剤を加え、ウレタンプレポリマーに自己乳化性を付与する。イオン形成化合物として酸性官能基、例えばカルボキシル基を含有する化合物を使用した場合は、カルボキシル基塩を形成し親水性化するための中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いる。カルボキシル基に対する中和率は通常50〜100モル%である。中和剤としては、塩基性や耐水性向上の観点から、トリエチルアミンが好ましい。
その後、ウレタンプレポリマーの(メタ)アクリル系モノマー溶液に上述したプロピレン系重合体を添加し、混合する。このプロピレン系重合体を混合する方法としては、プロピレン系重合体が溶液状態で添加するのが好ましい。20℃で固体状態のものは、加熱溶融して溶融状態で添加するものことも可能である。そのため、前述した水酸基を含有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーの一部を使用して溶解することが好ましい。
前記工程により得られた、ウレタンプレポリマーとプロピレン系重合体の(メタ)アクリル系モノマ−に、水を添加して乳化させる。このときの水の使用量は、中和終了時のプレポリマー溶液に1部に対して、下限値が、通常、0.3部以上、好ましくは、1部以上、更に好ましくは、1.5部以上であり、上限値が、通常、1000部以下、好ましくは、100部以下、更に好ましくは10部以下である。この量が多すぎると、最終製品の樹脂部分が少なくなり、接着性等の性能が得られず。水の添加部数が0.3部未満では、完全に乳化が行われず後工程の重合時に凝集してしまう可能性がある。さらに、乳化を容易に行うために活性水素基を含有しないオキシエチレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマー化合物を添加することも可能である。添加時期は水へ分散する前、即ち中和前または中和時に添加する。また、これらモノマーは室温で液体のものと固体のものがあり、液体のものはそのまま添加し、固体のものは加熱溶解した後に添加することができる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基を持たないものは、プレポリマー化反応時に加えておくことも可能である。ポリオキシエチレン基含有アクリルモノマーの添加量は全(メタ)アクリル系モノマー中に0.5〜30質量%であり、添加量が0.5質量%未満ではウレタンプレポリマーの(メタ)アクリル系モノマー溶液の水分散化に対する効果が不十分であり、添加量が30質量%を越えると最終的に得られる樹脂の耐水性や耐熱性が低下する。また、該ウレタンプレポリマー溶液の粘度を下げる効果と取り扱い易さの点から、分子中にエチレンオキサイド単位(CH2CH2O)を2〜20個程度有するモノマーが好ましい。
ウレタンプレポリマーの(メタ)アクリル系モノマー溶液を水に分散乳化する方法としては、通常の撹拌機による分散乳化を使用可能である。具体的には、20〜30℃に加温したウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液を撹拌し、20〜30℃に加温した水を連続的に滴下する事で乳化することが可能である。この乳化時の温度は特に制約はないものの、ウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液や水の温度が80℃以上になると、ウレタンプレポリマー中のNCO基と水との反応が早くなり、乳化不良を引き起こす可能性がある。また、ウレタンプレポリマーに水を一括混合してから混合撹拌することで乳化することも可能である。混合撹拌の方法としては、一般的な装置を使用可能であり、さらに、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用しても良い。乳化時にウレタンプレポリマーのアクリル溶液に水を混合するために、NCO基と水とが反応しウレタンプレポリマーの鎖延長が乳化と同時に進行している。鎖延長剤として水のみを使用した場合は、乳化中および乳化終了時にはNCO基は完全には消失せずに一部は残存しており、鎖延長反応が終結する、言い換えるとNCO基が完全に消失するのは、次工程のアクリルモノマー重合時である。
また、ウレタンプレポリマーの鎖延長時に特に鎖延長剤は必要ないものの、有機溶剤系ウレタンウレア樹脂の製造時に使用される鎖延長剤を使用することも可能である。具体的には、ポリエステルポリオールの原料として用いられる分子量500未満の低分子ジオール化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノール−A等の芳香族系ジオール、N−メチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等が挙げられる。さらに、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミン等の低分子ジアミン化合物が挙げられる。これら鎖延長剤は2種類以上の混合物として用いることも可能である。また、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール類も一部併用することができる。
また、必要により使用される末端停止剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のモノアルコール、モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
次いで、このようにしてウレタンプレポリマーの(メタ)アクリル系モノマー溶液の水分散液を得た後、これに後述する重合開始剤を添加して温度を上昇させて(メタ)アクリル系モノマーの重合温度の範囲内でウレタンプレポリマーの水による鎖延長を行うと共に、(メタ)アクリル系モノマーの重合を行ない、ウレタン樹脂とアクリル樹脂からなる水性アクリル変性ウレタン樹脂が得られる。
また、必要に応じてウレタンプレポリマーの鎖延長の際に水以外の鎖延長剤を添加してウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させても良い。鎖延長剤としては、活性水素を有する公知の鎖延長剤を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ヒドラジン等が挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーの重合には公知のラジカル重合が適用できる。重合開始剤は水溶性開始剤、油溶性開始剤共に使用可能であり、油溶性開始剤を使用する場合はウレタンプレポリマーのアクリルモノマー溶液に添加しておくことが好ましい。これら重合開始剤は、通常アクリルモノマーに対して0.05〜5質量%の範囲で用いられ、重合温度は20〜100℃が好ましい。レドックス系開始剤の場合は75℃以下で十分である。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル、等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、ラウリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジンカーボネイト等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機パーオキサイド化合物がある。有機または無機パーオキサイド化合物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することも可能である。還元剤としては、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等が挙げられる。
重合開始剤の添加に際しては、始めに全量を一括仕込みする方法、全量を時間をかけて滴下する方法、始めに一部分仕込んで残りを後から追加する方法のいずれでも良い。また、重合を押し切り残存モノマーを減らすために重合の途中、或いは一旦重合を終えた後に重合開始剤を追加して重合を加えることもできる。この際、重合開始剤の組み合わせは任意に選ぶことができる。アクリルモノマーの重合における分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ターシャルドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等の使用も可能である。
これらの工程により、アクリル複合ウレタン樹脂及びプロピレン系重合体を同一ミセル内に含有する粒子が水媒体に分散した水性分散溶液が得られる。
この水性分散溶液中におけるアクリル複合ウレタン樹脂の不揮発分は10〜50質量%が好ましく、より好ましくは30〜40質量%である。不揮発分が多すぎると十分に乳化せず、少なすぎると樹脂濃度が低くなりすぎて使用出来ない可能性がある。
本発明で使用する前記プロピレン系重合体を含む水性分散溶液としては、ラベラーにて加熱し、容器にラベルを貼り付けた後、上記プロピレン系重合体を含有し、得られる感熱性接着剤層の軟化点が50〜120℃であり、加熱貼り付け後24時間経過時の容器本体−ラベル間の剥離強度が0〜0.5N/15mm(25℃)であれば、市販品でも好適に使用することができる。このようなプロピレン系重合体を含む水性分散溶液としては、例えば、三菱化学社製の商品名「BW5550」、「BW5531」、などがある。なお、感熱性接着剤として市販されるものに限定されず、上記プロピレン系重合体を配合するものであればプライマー、アンカーコート剤その他の名称であってもよい。
なお、本発明では、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層として上記プロピレン系重合体を含む水性分散溶液からなる感熱性接着剤層であればよく、ラベル終端部とラベル始端部とを接着する感熱性接着剤層を、上記プロピレン系重合体を含む水性分散溶液からなる感熱性接着剤層で構成してもよく、従来の感熱性接着剤を使用して調製してもよい。このような従来の感熱接着剤としては、常温で固体のもの(ホットメルト接着剤)と、液状のもの(ディレードタック接着剤)とがあり、いずれでもかまわない。好ましくは、エチレン−酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル・塩素化ポリプロピレン系、アクリル系、水性エチレン−酢酸ビニル系、ポリエステル系の中から選択される少なくとも1種からなるヒートシール剤またはディレードタック剤である。これらは市販品を使用することができる。例えば東洋インキ社製,商品名「ヒートマジックDW4070」、「DW1040」、大日本インキ株式会社製、商品名「PSW505」などを使用することができる。
(iii)感熱性接着剤の形成
本発明の水性分散溶液をラベル基材の表面に適用する方法としては、グラビア印刷法や噴霧塗布によって好適に行うことができる。ラベル基材への塗布は常温で行えばよく、塗布した後、自然乾燥や40℃程度の加熱強制乾燥等、適宜の方法によって乾燥され感熱性接着剤層を形成することができる。なお、ラベル基材のラベル始端部とラベル終端部にのみ感熱性接着剤層を形成してもよいが、ラベル全面に感熱性接着剤層を形成してもよい。全面に形成することでラベル基材の厚みを均一にすることができ、これを巻き取った原反のシワの発生などを効率的に抑制することができる。なお、本発明で使用する感熱性接着剤層の厚さは、感熱性接着剤層の面積にもよるが1〜20μmである。
本発明の胴巻きラベルの感熱性接着剤層は、上記感熱性接着剤を使用することで、例えばPET容器に胴巻きラベルを接着した場合には、加熱貼り付け後24時間経過時の容器本体−ラベル間の剥離強度が0〜0.5N/15mm(25℃)となる。加熱貼り付け時には従来と同様の接着強度を有し、放冷によって24時間後に剥離強度が低下する理由は明確ではないが、プロピレン系重合体が重量平均分子量が10,000〜500,000であり、かつアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むため平均粒子系が小さく、このため加熱貼り付け時には結晶構造が伸びて通常のポリオレフィン系接着剤と同等の接着力を発揮するが、放冷によって結晶化が進むと接着力が低下すると考えられる。一方、ラベル基材がポリオレフィン系フィルムであると、プロピレン系重合体との親和性に優れるため、ポリオレフィン系フィルム内で感熱性接着剤が結晶化を進行させ、これによってラベル同士を強固に接着させると推定される。このように、感熱性接着剤層に含まれるプロピレン系重合体の接着強度は被接着物の素材によって相違し、ポリプロピレンフィルムには高い剪断強度で接着することができ、したがって、ラベル基材がポリプロピレンフィルムであり容器の素材がPETである場合には、感熱性接着剤は、PETよりもポリプロピレンフィルムと強固に接着するため、この胴巻きラベルをPET容器に接着し放冷すると、感熱性接着剤はラベル基材に高い剪断強度で接着し、一方、加熱貼り付け後24時間経過時の容器本体−ラベル間の剥離強度は0〜0.5N/15mm(25℃)であるため、容器への糊残りがなくラベルを剥離することができる。前記した水性分散溶液でラベル終端部とラベル始端部とを接着する感熱性接着剤層を形成した場合には、ラベル−ラベル間の剪断強度が高く維持することができ、例えば平均4N/15mm以上、より好ましくは6〜180N/15mm、特に好ましくは10〜60N/15mmである。剪断強度が4N/15mmを下回ると、保存、輸送、販売時など、特に寒冷地で剥離する場合がある。
胴巻きラベルは、落下時、保存、輸送、販売時など、特に寒冷地で剥離する場合があり、ラベル剥離によって商品価値が損なわれる。このような実際の使用におけるラベルの接着力を評価したところ、感熱性接着剤によって接着したラベル−ラベルの幅15mmあたりの接着強度を算出したところ、4Nの剥離強度があればラベル上下長に係わらずに容器使用時のラベル離脱を防止できることが判明した。接着強度は、感熱性接着剤塗布面積に比例するため、本願発明では、ラベル−ラベル間の剪断強度を、4N/15mm以上とした。従って、例えばラベル上下長さが84mmのラベルの場合には、82mm×4N/15mm=21.6N以上の剪断強度を満たすことが要求される。なお、剪断強度、剥離強度は後記する実施例で記載する方法で測定した値とする。
(4)デザイン印刷層
本発明において、本発明に係る胴巻きラベルには印刷層を有していてもよく、合成樹脂フィルムからなる基材層の全面に、または、部分的に図形、文字、記号等の絵柄を形成することができる。
印刷方法に限定はなく、例えばグラビア印刷で印刷層を形成することができる。印刷層としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。なお、印刷層に使用されるインキとしては、合成樹脂フィルムからなる基材層と接着性があり、必要な耐性を有している一般的に用いられているインキが使用できる。
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるために沸点の低い溶剤を用いるが、乾燥が速すぎると印刷物がかすれたり、うまく印刷できない場合があり、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、印刷は、裏印刷でも、表印刷でもよい。
本発明では、容器に貼着した状態における基材層の内外のどちら側に形成してもよいが、この実施形態では基材層の内側に形成してある。この際、合成樹脂フィルムのラベル内側とは、合成樹脂フィルムに接して形成される場合に限定されず、また、合成樹脂フィルムよりラベル内側であれば最内層であってもよい。
また、本発明では、胴巻きラベルの全長に亘って印刷層を形成してもよく、感熱性接着剤層にはデザイン印刷層を設けなくてもよい。
本発明において、印刷層の厚みは、例えば1〜8μm、好ましくは2〜5μm程度である。
(5)外層
本発明の胴巻きラベルは、前記合成樹脂フィルムの表面側に更に外層を設けてもよい。このような外層としては、胴巻きラベルの用途や意匠性などによって適宜選択することができ、ラベル表面の滑り性を付与する場合にはOPニスを、ラベルを触ったときの触感を付与する場合にはスエードインキによる印刷層を、マット感を付与する場合にはマットOPなどを使用することが好ましい。なお、外層が印刷層であってもよく、外層が印刷層と他の層などの、2以上の層からなる積層であってもよい。特に、基材層の外側に印刷層を形成する場合には、形成した印刷層を保護するために、透明ニス等によって形成されるオーバーコート層を設けておくことが望ましい。
(6)表面処理
本発明には、上記胴巻きラベルのいずれかの層の形成に先立ち、予め表面処理を行った後に他の層を形成し、または積層してもよい。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、このような表面処理として、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理としてもよい。
(7)胴巻きラベルの製造方法
本発明の胴巻きラベルが、合成樹脂フィルムのラベル内側にデザイン印刷層や、合成樹脂フィルムのラベル外側に外層を有する場合には、予め合成樹脂フィルムにデザイン印刷層や外層を形成し、次いで貼付部に感熱性接着剤層を形成することが簡便である。前記外層は、上記合成樹脂フィルムにデザイン印刷層を形成した後に反転させて、例えばOPニスなどによる印刷を行うことで形成することができる。
本発明の胴巻きラベルにおいて、感熱性接着剤層を形成するには、ダイレクトロールやグラビアロールなどを用いたロールコーター方式やエクストルージョンコーター方式やスリットオリフィスコーター方式などがあり、本発明ではどのような塗工方法でも差し支えなく、溶剤に溶解し塗工した後溶剤を取り除いても構わない。例えば、胴巻きラベルの貼付部に感熱性接着剤層を形成するには、予め合成樹脂フィルムにデザイン印刷層や外層を形成した積層フィルムに、グラビア印刷法により感熱性接着剤層を形成してラベル原反とすることができる。また、グラビア印刷法に代えて、接着剤コーターや接着剤アプリケーターを用いて感熱性接着剤を塗工する方法を採用することもできる。
前記した熱可塑性樹脂成分からなるベースポリマーと、粘着付与剤と、固形可塑剤とを溶媒に分散させてなるディレードタック型感熱性接着剤は、エマルションの状態でグラビアコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、リップコート法、ナイフコート法等のような通常の感熱性接着剤を塗布するための手段を用いて、基材の印刷層を形成している方の面の全面にまたは部分的に塗布して感熱性接着剤層を形成させ、例えば、40〜60℃の温度で乾燥することにより、合成樹脂容器用ラベルを製造することができる。
なお、本発明において感熱性接着剤層の形成は、胴巻きラベル原反ロールを所定サイズに切断した後に感熱性接着剤層を形成してもよく、感熱性接着剤層を形成した後に所定サイズに切断してもよい。
(8)容器
本発明の胴巻きラベルを添付しうる容器としては特に制限はなく、上記接着剤によって接着しうる樹脂であればよい。従って、本発明の胴巻きラベルが適用される被着体としては、ガラス容器;ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン、ポリ乳酸、ナイロンなどの合成樹脂性容器;セラミクス容器などの無機物容器;アルミや鉄、SUSなどの金属製容器;ガラス、合成樹脂、セラミクス、金属、紙などを含む複合材からなる容器がある。
容器の形状としては、胴部の胴巻きラベル接着部の容器横断面が丸型に限定されず、四角、八角などの多角型であってもよいが、胴巻きラベル貼付部が平坦であることが好ましい。
(9)胴巻きラベル付き容器の製造方法
このようにして作製した本発明にかかるラベルを容器に貼付する場合は、一般的に使用されているラベリングマシンを用いて、先ずラベルを加熱し前記感熱性接着層を活性化させる。次に、容器全体を熱風や、水蒸気、及び、水蒸気が結露した湯気により加熱するスチームや、高周波シール、赤外線等の輻射熱を作用させて加熱しながらラベルを押圧して合成樹脂容器に貼り付けることができる。あるいは、合成樹脂容器に貼付られたラベルを熱板等により押圧してもよい。
また、ラベルを加熱する工程は、ラベルを容器に装着する前の工程、あるいは、ラベルを容器に装着する工程のうち、適宜の段階で施すことができる。この結果、ラベルの接着層をたとえば90〜100℃程度にヒーターからの熱風で再加熱して活性化させた状態で合成樹脂容器にラベルが密着され、ラベル貼付合成樹脂容器が得られる。
また、上記のようにして製造した本発明にかかるラベルは、粘着持続性に優れたものである。
本発明において、本発明にかかる胴巻きラベルを感熱性接着剤の塗布面を内側にして、容器の胴部外周面に装着されてなるラベル付容器は、清涼飲料水、乳飲料、ビール、ワイン、栄養ドリンク、調味料、化粧品等の包装容器として使用でき、流通時にラベルが剥離しない程度の接着強度があり、しかも使用後は、容易にラベルを剥離することができ、リサイクル性に適するものである。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
なお、測定方法は以下に従った。
(1)剪断強度
ラベル−ラベル間、およびラベル−容器間の剪断強度は、JIS K6864に準じておこなった。
(2)剥離強度
ラベル−ラベル間、およびラベル−容器間の剥離強度は、測定試料(15mm幅)を用いて、JIS K 6854−2に基いて、引張試験機で180度剥離接着強さ試験を行った。
(3)耐落下適性
ラベル付容器を口部を上にして100cmの高さから自然落下し、ラベル脱落の有無を評価した。
(4)平均粒子径
日機装社製「Microtrac UPA」で測定した。
(実施例1)
厚さ50μm、幅980mmの二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡株式会社社製、商品名「P2761」)に8色グラビア印刷機にてデザイン印刷および白ベタ印刷を施し、スリッターで55mm幅にスリットし、ついでテストコーターで、胴巻きラベルの容器本体との接着部と、ラベル終端部とラベルとの接着部にエマルションタイプ感熱性接着剤(三菱化学株式会社製、商品名「BW−5550」、融点78℃、固形分濃度28質量%、平均粒子径0.05μm、分子量150000のポリプロピレンのアイソタクチック−アタクチックステレオブロックポリマー、粘度65mPa・S、pH8.2、水性)を固形分濃度26質量%になるようにIPAで希釈したものを、塗工速度5m/分、塗布量4.96g/m2でパートコート印刷し、温度60℃で乾燥し、厚さ9μmの感熱性接着剤層を形成し、胴巻きラベルを製造した。
この胴巻きラベルをスリッターで巻き返した後に澁谷工業製感熱ラベラーテスト機にて500ml、PET角容器20本への貼り付けテストを実施し、図4に示す胴巻きラベル付容器を製造した。なお、貼り付け条件は、感熱ドラム温度75〜80℃、加工速度210bpmとした。
この胴巻きラベルの接着性として、貼り付け直後の容器−ラベル間、およびラベル−ラベル間の剥離強度、24時間経過後の、貼り付け直後の容器−ラベル間、およびラベル−ラベル間の剥離強度、ラベル接着24時間後のラベル−ラベル間のせん断強度を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
厚さ50μm、幅980mmの二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(東洋紡株式会社社製、商品名「P2761」)に8色グラビア印刷機にてデザイン印刷および白ベタ印刷を施し、スリッターで55mm幅にスリットし、ついでテストコーターで、胴巻きラベルの容器本体との接着部に感熱性接着剤(三菱化学株式会社製、商品名「BW−5550」、融点78℃、固形分濃度28質量%、粘度65mPa・S、pH8.2、水性)を固形分濃度26質量%になるようにIPAで希釈したものを、塗工速度50m/分、塗布量4.2g/m2、温度65℃でパートコート印刷し、ラベル終端部とラベルとの接着部にはディレードタック剤(東洋インキ株式会社製、商品名「ヒートマジックDW4070」)を塗布量5.3g/m2、温度60℃でパートコート印刷して、胴巻きラベルを製造した。
実施例1と同様にして、上記胴巻きラベルを容器に接着し、実施例1と同様にしてこの胴巻きラベルの接着性として、貼り付け直後の容器−ラベル間、およびラベル−ラベル間の剥離強度、24時間経過後の、貼り付け直後の容器−ラベル間、およびラベル−ラベル間の剥離強度、ラベル接着24時間後のラベル−ラベル間のせん断強度を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3〜8)
ラベル基材、容器材質、感熱性接着剤の種類を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に操作して胴巻きラベル付き容器を製造した。実施例8の容器はラベル接着後にスチームに寄ってシュリンク加工を行った。
この胴巻きラベルの接着性として、貼り付け24時間後の容器−ラベル間の剥強度、およびラベル−ラベル間の剪断強度、剥離時の容器への糊残り、接着後1週間後のラベルの脱落を観察した。結果を表2に示す。
なお、FB間は、容器−ラベル間、FF間はラベル−ラベル間を意味し、PPエマルションとは、三菱化学株式会社製、商品名「BW−5550」を、アクリル−EVA系とは、東洋インキ株式会社製、商品名「ヒートマジックDW4070」を、OPPとは延伸ポリプロピレンを、PETはポリエチレンテレフタレートを、HDPEとは高密度ポリエチレンを、パートコートとは感熱性接着剤の塗布部分であってラベル始端部とラベル終端部との部分的塗布を、全面コートとは感熱性接着剤の塗布部分であって胴巻きラベルの裏面全面塗布を意味し、せん断強度と剥離強度の単位はN/15mmである。
Figure 0004905313
Figure 0004905313
(結果)
実施例1と実施例2とは、PPエマルションによる容器とラベルとの加熱貼り付け時にはFB間の剪断強度がそれぞれ4.8N/15mm、4.6N/15mmであり、胴巻きラベルを容器に接着するに十分な接着力を有した。また、容器とラベルとを接着したPPエマルションは、接着後24時間後にはFB間の剥離強度が0.04N/15mmとなり、放冷により接着力が低下した。
実施例1では、PPエマルションによってラベルとラベルとを接着したが、接着24時間経過後のラベル−ラベル間の剪断強度は12N/15mmという接着力が確保されていた。PPエマルションは、ラベル基材のOPPフィルムとの親和性に優れるため、PETとOPPラベルよりもOPPラベル同士をより強力に接着したためと考えられる。
実施例1と実施例3とから、接着後24時間のラベル−ラベル間の剪断強度が12N/15mmあれば、容器−ラベル間の剥離強度が0.04N/15mmであっても、1週間後にもラベルが落下せず、実用に耐えること接着強度が確保された。また、容器−ラベル間の剥離強度が0N/15mmであると、容器への糊残りもなかった。
実施例3と実施例4とから、PPエマルションを全面コートしても容器−ラベル間の剥離強度は0N/15mmであり糊残りもなかった。
本発明に係る胴巻きラベルは、ラベル接着後、24時間放冷すると剥離強度が低下し、糊残りなくラベルを容器から剥離することができる。しかも、ラベル−ラベル間の剪断強度は、ラベル終端部に剥がし口を有するため、容器使用後のラベルの剥離が容易で容器のリサイクル性に優れ、有用である。
図1は、本発明で使用する胴巻きラベルを説明する横断面図である。 図2は、デザイン印刷層を有する、本発明で使用する胴巻きラベルを説明する横断面図である。 図3は、更に外層を有する、本発明で使用する胴巻きラベルを説明する横断面図である。 本発明の胴巻きラベルを装着した容器を説明する図である。
符号の説明
10・・・合成樹脂フィルム、
20・・・感熱性接着剤層、
30・・・デザイン印刷層、
40・・・外層、
50・・・容器、
100・・・ラベル、
W・・・ラベル始端部、
W’・・・終端部。

Claims (10)

  1. 合成樹脂フィルムからなるラベル基材の裏面の少なくとも両端部に感熱性接着剤層を形成し、前記感熱性接着剤層を加熱してラベルの始端部と容器本体とを感熱性接着剤層を介して接着し、容器の周方向に前記ラベルを巻き付け、ラベル終端部ラベル始端部の感熱性接着剤層とは反対側の面に感熱性接着剤層を介して接着する胴巻きラベルにおいて、少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、重量平均分子量が10,000〜500,000でありアイソタクチックブロックとアタクチックブロックとのステレオブロック構造を含むプロピレン系重合体を含む水性分散溶液を乾燥時の厚みが1〜20μmとなるように前記ラベル基材に塗布、加熱乾燥して形成されたことを特徴とする、胴巻きラベル。
  2. 少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、軟化点が50〜120℃である、請求項1記載の胴巻きラベル。
  3. 前記プロピレン系重合体は、不飽和カルボン酸、もしくはその酸無水物及びエステル、またはカルボン酸エステル及び/またはその誘導体をグラフトすることにより変性した変性ポリプロピレン系重合体である、請求項1または2記載の胴巻きラベル。
  4. 前記プロピレン系重合体の平均粒子径は、0.01〜0.2μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  5. 前記水性分散溶液におけるプロピレン系重合体の含有量は、1〜40質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  6. 少なくともラベル始端部と容器本体との接着に用いられる感熱性接着剤層は、前記加熱貼り付け後24時間経過時の容器本体−ラベル間の剥離強度が0〜0.5N/15mm(25℃)である、請求項1〜5のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  7. 前記基材ラベルは、ポリプロピレンフィルムである、請求項1〜6のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  8. 前記容器本体は、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ乳酸、ガラス、ナイロン、金属、セラミックスの中からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  9. 前記ラベル終端部とラベル始端部とを接着する感熱性接着剤層は、ラベル−ラベル間の剪断強度が4N/15mm〜180N/15mmである、請求項1〜8のいずれかに記載の胴巻きラベル。
  10. 請求項1〜10のいずれかに記載の胴巻きラベルが、前記の感熱性接着剤の塗布面を内側にして容器の胴部外周面に貼付されてなることを特徴とする胴巻きラベル付容器。
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