JP3895035B2 - 水性印刷インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性印刷インキ組成物に関し、さらに詳しくは、各種プラスチックフィルム又は各種ラミネート包装材料に対して、優れた接着性、ラミネート適性等の適性を有する水性印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装容器の多様化、合成皮革等の合成樹脂製品の高機能化に伴い、これらに用いられる被覆剤においては、被着体との十分な接着性、強い耐性、及び後加工適性等が要求されている。
【0003】
例えば、各種ラミネート包装材料に用いる印刷インキにおいては、種々の包装材料に対する接着性、印刷適性、ラミネート適性等が要求されている。
【0004】
ここでラミネート加工としては、一般に次に挙げる2つの方法がある。各種プラスチックフィルムを印刷基材としてインキを印刷した後、印刷面に必要に応じてアンカーコート剤を塗布し、更に溶融プラスチックを圧着してフィルム状に積層する押出しラミネート加工方法、及び印刷面に接着剤を塗布し、更にその上にプラスチックフィルム、金属箔等を貼合して積層するドライラミネート加工方法である。
【0005】
従って、ラミネート加工される印刷物で使用される印刷インキは、印刷基材と良好に接着する事はもとより、積層されるフィルムとのラミネート強度にも優れていなければならない。
【0006】
従来より、これに使用する印刷インキとしては、ポリウレタン樹脂をバインダーとする溶剤型の印刷インキが使用されているが、より高い接着性、ラミネート強度、耐ボイル適性、耐レトルト適性を求められる過酷な条件下で使用される用途に適用できないという問題がある。
【0007】
さらに、最近では、環境問題、省資源、労働安全性及び火災等の見地から、有機溶剤の使用を極力抑えた水性タイプの印刷インキの要望が強くなっている。
【0008】
特にラミネート加工された包装袋では、インキ皮膜が被印刷体フィルムと積層フィルムとの間で埋封されて、有害な有機溶剤が残留し易く、内容物に有害な影響を及ぼすことから、この水性化の要望は強い。
【0009】
印刷インキを水性化するためには、バインダー樹脂を水性化する必要があり、その方法としては一般的に、溶剤性インキで用いられているバインダー樹脂を界面活性剤の存在下で水中に乳化(エマルジョンタイプ)させるか、又は、バインダー樹脂分子内に酸基を導入し、塩基性化合物の存在下で水中に溶解(水溶性タイプ)又は分散(自己乳化性タイプ)させたものがある。
【0010】
ラミネート用印刷インキに使用されるポリウレタン樹脂も前記の方法にて水性化できるが、エマルジョンタイプのポリウレタンを使用すると顔料分散性、インキ流動性、及び再溶解性が不良となる。従って、水溶性又は自己乳化性タイプのポリウレタン樹脂が使用されるケースが多い。
【0011】
ここでポリウレタン樹脂の水溶化を目的として、分子内に酸基を導入する方法としては以下の方法が開示されている。
【0012】
▲1▼高分子ジオール化合物に加えて、ジメチロールプロピオン酸等のジオールモノカルボン酸を併用する方法(特開平4−178418号公報等)
▲2▼無水ピロメリット酸に代表される、テトラカルボン酸二無水物とジオール化合物との縮合物を利用する方法(特開平6−184485号公報等)
【0013】
しかし、▲1▼の方法で得られるポリウレタン樹脂を使用したインキにおいては、グラビアインキの基本性能である再溶解性を得るために必要な量のカルボキシル基を分子内に導入すると分子自体が硬くなり、インキの接着性が低下する傾向があり、再溶解性と接着性を両立する水性印刷インキが得ることが困難である問題を有する。
【0014】
また、▲2▼の方法では、テトラカルボン酸二無水物とジオール化合物の反応によりカルボキシル基を有する骨格がポリウレタン樹脂の主鎖の一部を構成する構造から、テトラカルボン酸二無水物とジオール化合物とのエステル結合の加水分解により分子切断がおこり、経時での水性インキの接着性、ラミネート強度、再溶解性が低下する問題を有する。
【0015】
従って、上記のような水性ポリウレタン樹脂を主バインダーとしたラミネート用水性印刷インキにおいては、接着性、ラミネート適性や保存安定性という観点において、十分な性能が得られていないのが現状である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、優れた接着性、ラミネート適性、保存安定性を有する水性印刷インキ組成物を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を重ねた結果、ポリウレタン樹脂を得るための高分子量ポリオール化合物として、水酸基数が3個以上の高分子量ポリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基を有する側鎖を有するカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)を使用し、ポリウレタン樹脂に、該ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖を導入することにより、これらの課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0018】
即ち、本発明は、(1)分子内に水酸基を3個以上有する数平均分子量500〜10,000の高分子量ポリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)と、有機ジイソシアネート化合物と、鎖伸長剤と、及び必要に応じて反応停止剤とを反応させて得られる、前記ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖を有し、且つ酸価10〜100のポリウレタン樹脂が、塩基性物質の存在下で溶解又は分散している状態の水性ポリウレタン樹脂ワニス、着色剤から主として構成される水性印刷インキ組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、(2)前記(1)項記載のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)が、分子内に水酸基を3個有する数平均分子量500〜10,000のポリエステルトリオール対して、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を残存水酸基数が2個となるよう反応させて得られるカルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)であることを特徴とする水性印刷インキ組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、(3)前記(1)項又は(2)項記載の分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物が、無水環を形成していないカルボキシル基を1つ有し、且つ、カルボン酸無水基を1個有する化合物であることを特徴とする水性印刷インキ組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、(4)前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物が、無水トリメリット酸であることを特徴とする水性印刷インキ組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、(5)前記(1)〜(4)項のいずれかに記載のポリウレタン樹脂の主鎖の末端が、ヒドラジン残基であることを特徴とする水性印刷インキ組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、(6)前記(1)〜(5)項のいずれかに記載の塩基性物質が、沸点120℃以上の不揮発性アミンであることを特徴とする水性印刷インキ組成物に関する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明においては、ポリウレタン樹脂を得るための高分子量ポリオール化合物として、水酸基数が3個以上の高分子量ポリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基を有する側鎖を有するカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)を使用し、ポリウレタン樹脂に、該ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖を導入することにより、保存安定性、接着性、ラミネート適性等が優れている水性印刷インキ組成物を得ることができる。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂中の、前記カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖について、図面を参照して説明する。
【0026】
前記カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)が、たとえば、水酸基数が3個の高分子量トリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物(a−1)であるばあい、該ジオール化合物(a−1)は図1に模式的に表わされる。図1において、ジオール化合物(a−1)は2つの水酸基でポリウレタン樹脂の主鎖に組み込まれることになる。このジオール化合物(a−1)のばあい、両末端が水酸基である主鎖から分岐している鎖b−1が本発明でいう側鎖である。なお、主鎖は、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物のカルボン酸無水基が、前記高分子量トリオールのどの水酸基と反応するかにより異なることになり、それに応じて側鎖も異なることになる(以下の例においても同様)。
【0027】
また、前記カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)が、たとえば、水酸基数が4個の高分子量テトラオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物(a−2)であるばあい、該ジオール化合物(a−2)は図2に模式的に表わされる。図2において、ジオール化合物(a−2)は2つの水酸基でポリウレタン樹脂の主鎖に組み込まれることになる。このジオール化合物(a−2)のばあい、両末端が水酸基である主鎖から分岐している鎖b−2、b−3が側鎖である。
【0028】
なお、前記高分子量テトラオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させるばあい、前記のジオール化合物(a−2)と共に、図3に示すごときトリオール化合物(a−3)が少量生成するばあいがある。このトリオール化合物(a−3)のばあい、3つの水酸基はいずれもポリウレタン樹脂の主鎖に組み込まれていると考え、カルボキシル基を有する側鎖をはさんで最も近い主鎖(OH(1)とOH(2)の間の主鎖またはOH(1)とOH(3)の間の主鎖)から分岐している鎖b−4を側鎖とする。このような取扱はトリオール以上のポリオール化合物についても適用できる。
【0029】
以下、本発明の、分子内に水酸基を3個以上有する数平均分子量500〜10,000の高分子量ポリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個する化合物を反応させてえられる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)と、有機ジイソシアネート化合物と、鎖伸長剤と、及び、必要に応じて反応停止剤とを反応させて得られる、前記ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖を有し、且つ酸価10〜100のポリウレタン樹脂が、塩基性物質の存在下で溶解又は分散している状態の水性ポリウレタン樹脂ワニス、着色剤から主として構成される水性印刷インキ組成物について詳しく説明する。
【0030】
本発明のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)としては、水酸基数が3個以上の高分子量ポリオール、好ましくは数平均分子量500〜10,000、とくに1,000〜6,000の高分子量ポリオールに対して、残存水酸基数が2個となる比率で分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)が使用できる。
【0031】
本発明のカルボキシル基含有高分子ポリオール化合物(A)を得るために用いる、水酸基数が3個以上の高分子量ポリオールとしては、例えば、下記に示すような高分子ポリオールが使用できる。
【0032】
(1)多官能化剤として、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールルプロパン、ペンタエリスリトール等の水酸基数が3個以上の多価アルコール、ないしは、ソルビトール、ショ糖等の糖類を用い、これらに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の1種又は2種以上を付加重合したポリエーテルポリオール
(2)前記の多官能化剤に、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の1種又は2種以上を付加重合したポリエステルポリオール
(3)前記の多官能化剤の存在下に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の低分子量ジオール化合物の1種又は2種以上と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の二塩基酸成分の1種又は2種以上との縮合重合により得られるポリエステルポリオール
(4)前記の多官能化剤の存在下、前記の低分子量ジオール化合物と環状カーボネート、ジアルキルカーボネート等のカーボネート成分或いはホスゲンとの縮合重合により得られるポリカーボネートポリオール
【0033】
これら水酸基数が平均3個以上の高分子量ポリオールの中でも、各種フィルムに対する幅広いラミネート適性を得るという観点から、上記(3)のポリエステルポリオールが好適に使用できる。
【0034】
本発明のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)を得るための分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等が例示できる。
【0035】
この中でも、水性印刷インキ組成物の接着性、ラミネート適性等の皮膜物性と再溶解性を両立させる観点から、無水環を形成していないカルボキシル基を1個有し、且つ、カルボン酸無水基を1個有する無水トリメリット酸等が好適に使用できる。
【0036】
本発明のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)は、前記の水酸基を平均3個以上有する高分子量ポリオールに対して、残存水酸基数が2個となるように、前記の分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させることにより得られる。
【0037】
本発明においては、前記のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)に加えて、カルボキシル基を含有しないその他の高分子量ジオールを必要に応じて目的とする性能を低下させない範囲で併用してもよく、かかる高分子量ジオールとしては、数平均分子量が500〜10,000の範囲のもので、従来からポリウレタン樹脂の合成に一般的に使用されているポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアセタールジオール、ポリアクリレートジオール、ポリエステルポリアミドジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリブタジエンジオール等が使用出来る。
【0038】
ポリエーテルジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の活性水素原子を2個有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合したものが例示出来る。
【0039】
ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和又は不飽和の各種公知のグリコール成分の1種又は2種以上と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸又はこれらに対応する酸無水物やダイマー酸等の酸成分の1種又は2種以上を脱水縮合せしめて得られるポリエステルジオール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物をエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、ビスフェノールA等の活性水素原子を2個有する化合物の1種又は2種以上で開環重合して得られるポリエステルジオール等が使用できる。
【0040】
ポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールとジフェニルカーボネート、ホスゲンとの反応によって得られる化合物等が使用できる。
【0041】
以上のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)と併用可能なカルボキシル基を含有しない高分子量ジオールの数平均分子量は、得られるポリウレタン樹脂の皮膜強度、凝集力を最適化する目的から500〜10,000のものが、好ましくは、1,000〜6,000のものが好適に使用できる。
【0042】
また、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲又は水性化が困難にならない範囲で、3官能以上のカルボキシル基を含有しない高分子量ポリオールも併用することができる。具体的には、カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)を得るために用いる水酸基数が3個以上の前述の▲1▼〜▲4▼の高分子量ポリオール等が例示できる。
【0043】
尚、本発明のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)及び併用可能なカルボキシル基を含有しない高分子量ジオール又はポリオール以外に、低分子量ジオール又はポリオールを併用して数平均分子量を前記の範囲とすることによっても、良好な性能を付与しうるポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0044】
具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、アルキルジアルカノールアミン、1,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール等及びこれらのアルキレンオキシド低モル付加物、ビスフェノールAのアルキレンオキシド低モル付加物等の数平均分子量500未満の低分子量ジオールが例示できる。
【0045】
本発明のポリウレタン樹脂を得るために使用する有機ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等が使用できる。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂をうるために使用する鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トリレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミノプロピルエーテル、メチルイミノビスエチルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、エチルイミノビスイソプロピルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N′−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、ジアミノプロピオン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノ安息香酸等のジアミン化合物、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等のジヒドラジド化合物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール等のグリコール成分を使用することができる。
【0047】
また、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲又は水性化が困難にならない範囲で、3官能以上の鎖伸長剤を併用することもできる。
【0048】
具体的には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンペンタミン等のポリアミン類が使用出来る。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂を得るために必要に応じて使用する反応停止剤としては、アルカノールアミン類、ヒドラジン、ジヒドラジド化合物、アルコール等が使用できる。また、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲又は水性化が困難にならない範囲で2官能以上のアミン類等を使用することができる。
【0050】
尚、この中でも、各種プラスチックフィルムへのラミネート適性を得る目的において、基材プラスチックフィルム表面のカルボニル基との相互作用を有効に利用するため、ポリウレタン樹脂の主鎖の分子末端がヒドラジン残基となるよう、ヒドラジン残基を有する化合物及び/又はヒドラジンが反応停止剤として好適に使用できる。
【0051】
本発明のポリウレタン樹脂については、ラミネート適性、インキ化した時の良好な印刷効果、印刷適性、再溶解性を得るための理由から、ポリウレタン樹脂が数平均分子量200以上、好ましくは300〜2500の、好ましくは末端がカルボキシル基である側鎖を有し、且つ酸価が10〜100の範囲であることが好ましく、最終ウレタン樹脂としてこの範囲に入るように分子設計し、各原材料の組成比を決定する必要がある。
【0052】
酸価が10未満では、ポリウレタン樹脂の水性化能が低すぎるために、インキの印刷効果、印刷適性、再溶解性が低下する。一方、酸価が100を超えると水性化能は充分であるが、皮膜が硬くなりすぎたり、また、極性官能基量が多すぎることが原因で、本発明の目的である良好なラミネート適性を有する特徴が損なわれる。
【0053】
本発明のポリウレタン樹脂を中和して水性ポリウレタン樹脂ワニスを得るための塩基性物質としては、アンモニアやトリエチルアミン等の揮発性塩基性物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロオクテン等の不揮発性アミンが使用できる。
【0054】
食品包装用途のラミネート容器に使用する場合は、揮発性塩基性物質はシーラント基材を通して内容物へ移行して臭気等を放って好ましくないため、塩基性化合物として、無機アルカリ化合物又は不揮発性アミンを使用するのが好ましい。さらに、ラミネート適性、耐水性を低下させない点から、沸点が120℃以上の不揮発性アミンを使用するのがより好ましい。その中でも、ラミネート適性、耐水性の点から、トリエチレンジアミンが好ましい。
【0055】
本発明のウレタン樹脂を水性化するためには、乳化剤を使用しないことが好ましいが、性能が低下しない範囲において、機械的安定性等を改良する目的で少量の乳化剤を併用することも可能である。
【0056】
該乳化剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル等のアルキルフェニル縮合物エーテル型、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のモノオール型ラウリル酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型等のノニオン系乳化剤、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、燐酸エステル等のアニオン系乳化剤が使用できる。
【0057】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂の製造は従来公知の一般的な方法により可能である。例えば、有機ジイソシアネートと、カルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)及び要すれば併用可能な高分子量ジオール又はポリオールとを、当量比NCO/OH=1.3〜2.5、好ましくは、1.5〜2.0となる割合で反応させプレポリマーを得る。次いで、鎖伸長剤及び必要に応じて溶媒、触媒等を添加して反応させ、さらに反応停止剤を反応させて反応を完結する。
【0058】
尚、反応停止剤を使用する代わりに、過剰の鎖伸長剤を使用して反応停止する方法、鎖伸長剤と反応停止剤を同時に添加する方法でも製造することができる。
【0059】
また、プレポリマーの合成時において、必要に応じNCOに対して不活性で且つ親水性の有機溶剤、例えば1−メチル−2−ピドリドン、アセトン等を使用することができる。
【0060】
さらに、ポリウレタン樹脂の水溶化ついては、プレポリマーを生成後に塩基性化合物を含んだアルカリ性水溶液を加えた後、鎖伸長剤、反応停止剤を添加し、反応を完結する方法、もしくは前記有機溶媒中にて反応を完結させた後、アルカリ性水溶液を加え、その後必要に応じ脱溶媒を行う方法で行うことができる。
【0061】
本発明の水性印刷インキ組成物は、前記水性ポリウレタン樹脂(塩基性物質で全部又は1部分を中和して水性化したもの)と着色剤から主としてなるものである。
【0062】
本発明の水性印刷インキ組成物中の前記ポリウレタン樹脂の使用量は5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%である。
【0063】
また、インキ性能向上を目的として、本発明の効果を低下させない範囲で、他の各種水性樹脂、例えば、本発明以外のポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂等を併用することもできる。
【0064】
次に、本発明で使用する着色剤としては、一般に水性印刷インキに従来から使用されている無機、有機顔料或いは体質顔料が使用できる。
【0065】
ここで使用可能な無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、カーボンブラック、黒鉛等、有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることが出来る。
【0066】
さらに使用可能な体質顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等を挙げることが出来る。
【0067】
これら着色剤の通常の使用量は、水性印刷用インキ組成物中、1〜50重量%である。
【0068】
更に、乾燥性、その他、インキ性能の必要性に応じて、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等の低級アルコール又は低級アルコキシプロパノール等の水混和性溶剤、及び、耐ブロッキング剤、シリコン系化合物、フッ素系化合物、消泡剤、架橋剤、静電気防止剤等の各種添加剤を含有させる事も出来る。
【0069】
以上の材料を使用して水性印刷用インキ組成物を製造する方法としては、まず顔料と水性バインダー樹脂を攪拌混合させた後、通常の分散装置で混練し、更に所定の成分を添加混合して製造することができる。
【0070】
本発明の水性印刷用インキ組成物を各種プラスチックフィルム等に印刷する方法については、まず、本発明で基材として使用するプラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等のフィルム及びこれらのフィルムに対して塩化ビニリデン樹脂等の各種表面コート剤を塗布したものが使用できる。本発明の水性印刷用インキ組成物は、既知のフレキソ印刷機、グラビア印刷機を使用して、フレキソ又はグラビア印刷方式で印刷する事ができる。
【0071】
更に、上記の方法によって得られた印刷物に、ラミネート加工する方法としては、従来技術で記載した押し出しラミネート法とドライラミネート法が利用できる。
【0072】
ここで、押し出しラミネート法は、印刷物の表面に必要に応じて、チタン系、イソシアネート系、イミン系、又はポリブタジエン系等のアンカーコート剤を塗工した後、従来より既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層することもできる。押し出しラミネート法で使用する溶融樹脂としては、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来より使用されている樹脂が使用できる。
【0073】
次に、ドライラミネート法は、印刷物の表面に、水性、溶剤性、又は無溶剤性のウレタン系、イソシアネート系等の接着剤組成物を塗工した後、従来より既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。なお、安全衛生、環境保護等の面から、完全に水性のラミネート加工物を得るために、水性又は無溶剤性の接着剤組成物を使用する事が好ましい。また、ドライラミネート法で使用するフィルム状のポリマーとしては、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が使用でき、特にレトルト用途で使用されるラミネート加工物では、基材として貼合されるプラスチックフィルの間にアルミ箔をはさんでラミネートすることもできる。
【0074】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等により何等限定されるものではない。
【0075】
<水性ポリウレタン樹脂ワニスの製造>
水性ポリウレタン樹脂ワニス1
攪拌機、冷却管、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた四つ口フラスコ中に、3官能化剤としてトリメチロールプロパンを使用したアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを縮合重合して得られる数平均分子量3000のトリオール300部、無水トリメリット酸19.2部を仕込み、反応温度110〜130℃で1時間反応させた。40℃に冷却後イソホロンジイソシアネート35.5部、N−メチル−2ピロリドン41部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させ、ついで水704部、イソプロパノール83部、塩基性物質としてトリエチレンジアミン22.4部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン6.13部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン2.4部を加え20分間攪拌し、固形分濃度32%、酸価31の水性ポリウレタン樹脂ワニス1を得た(ポリウレタン樹脂のカルボキシル基含有高分子量ジオール化合物に起因する側鎖(以下、単に側鎖という)の理論数平均分子量1192)。
【0076】
ここで、側鎖の理論数平均分子量はつぎのようにして求めた。前記トリオールは、3官能化剤(トリメチロールプロパン)の3つのOH基にポリエステル鎖が均等に付いていると仮定する。したがって、3つのポリエステル鎖のそれぞれの数平均分子量は1000となる。そのうちの1つのポリエステル鎖の末端に無水トリメリット酸(分子量192)がつくので、側鎖の理論数平均分子量は1192となる。
【0077】
水性ポリウレタン樹脂ワニス2
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造において、中和剤としてトリエチレンジアミン22.4部の代わりに、トリエチルアミン20.2部を用い、固形分濃度30%、酸価31の水性ポリウレタン樹脂ワニス2を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量1192)。
【0078】
水性ポリウレタン樹脂ワニス3
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造において、イソホロンジイソシアネート35.5部の代わりに、テトラメチルキシリレンジイソシアネート39.1部を用い、固形分濃度32%、酸価30の水性ポリウレタン樹脂ワニス3を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量1192)。
【0079】
水性ポリウレタン樹脂ワニス4
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造において、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン6.13部の代わりに、N−(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン3.75部を用い、固形分濃度32%、酸価31の水性ポリウレタン樹脂ワニス4を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量1192)。
【0080】
水性ポリウレタン樹脂ワニス5
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造において、無水トリメリット酸19.2部の代わりに、無水フタル酸14.8部を用い、塩基性物質であるトリエチレンジアミンの添加量を11.2部に変更し、固形分濃度31%、酸価16の水性ポリウレタン樹脂ワニス5を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量1148)。
【0081】
水性ポリウレタン樹脂ワニス6
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、3官能化剤としてトリメチロールプロパンを使用したアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを縮合して得られる数平均分子量3000のトリオール300部、無水トリメリット酸19.2部を仕込み、反応温度110〜130℃で1時間反応させた。次いで冷却後ネオペンチルグリコール5部を加え均一に攪拌した後、40℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート52.6部、N−メチル−2ピロリドン44部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させた。さらに水753部、イソプロパノール89部、塩基性物質としてトリエチレンジアミン22.4部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン9.09部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン3.57部を加え20分間攪拌し、固形分濃度32%、酸価29の水性ポリウレタン樹脂ワニス6を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量1192)。
【0082】
水性ポリウレタン樹脂ワニス7
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、3官能化剤としてトリメチロールプロパンを使用したアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを縮合して得られる数平均分子量1000のトリオール150部、無水トリメリット酸28.8部を仕込み、反応温度110〜130℃で1時間反応させた。40℃に冷却後、数平均分子量5000の(ポリ3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール150部、イソホロンジイソシアネート63.9部、N−メチル−2ピロリドン46部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させ、ついで水781部、イソプロパノール92部、塩基性物質としてトリエチレンジアミン33.6部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン11.1部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン4.33部を加え20分間攪拌し、固形分濃度33%、酸価41の水性ポリウレタン樹脂ワニス7を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量525)。
【0083】
水性ポリウレタン樹脂ワニス8
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、数平均分子量1500の(ポリ−3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール300部、無水ピロメリット酸21.8部を仕込み、反応温度90〜100℃で2時間反応させた。50℃に冷却後イソホロンジイソシアネート35.5部、N−メチルピロリドン42部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させ、次いで水708部、イソプロパノール83部、トリエチレンジアミン22.4部を加えて均一に攪拌した後鎖伸長剤としてイソホロンジアミン6.13部を加え5分間攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン部を加え2.4部を加え20分間攪拌し、固形分濃度32%、酸価31のポリウレタン樹脂ワニス8を得た。
【0084】
水性ポリウレタン樹脂ワニス9
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、数平均分子量4000の(ポリ−3−メチル1,5−ペンタンアジペート)ジオール240部、ジメチロールプロピオン酸24.1部、イソホロンジイソシアネート85.2部、N−メチルピロリドン42部を仕込み、反応温度90℃で8時間反応させた。60℃に冷却後、水716部、イソプロパノール84部、トリエチレンジアミン20.2部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン14.7部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤としてヒドラジン5.77部を加え20分間攪拌し、固形分濃度32%、酸価27のポリウレタン樹脂ワニス9を得た。
【0085】
水性ポリウレタン樹脂ワニス10
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、3官能化剤としてトリメチロールプロパンを使用したアジピン酸と3メチル−1,5−ペンタンジオールを縮合重合して得られる数平均分子量3000のトリオール150部、無水フタル酸7.41部を仕込み、反応温度110〜130℃で1時間反応させた。40℃に冷却後、平均分子量2000の(ポリ3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール150部、イソホロンジイソシアネート44.4部、N−メチル−2ピロリドン42部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させ、ついで水714部、イソプロパノール84部、塩基性物質としてトリエチレンジアミン5.61部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン7.66部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン3.01部を加え20分間攪拌し、固形分濃度31%、酸価8の水性ポリウレタン樹脂ワニス10を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論平均分子量1148)。
【0086】
水性ポリウレタン樹脂ワニス11
水性ポリウレタン樹脂ワニス1の製造のばあいと同様の装置に、3官能化剤としてトリメチロールプロパンにε−カプロラクトンを付加重合して得られる数平均分子量400のトリオール120部、無水トリメリット酸57.6部を仕込み、反応温度110〜130℃で1時間反応させた。50℃に冷却後イソホロンジイソシアネート106.6部、N−メチル−2−ピロリドン33部を仕込み、50〜60℃で4時間反応させ、次いで水563部、イソプロパノール66部、塩基性物質としてトリエチレンジアミン63.3部を加えて均一に攪拌した後、鎖伸長剤としてイソホロンジアミン18.4部を加え5分攪拌し、次いで反応停止剤として水加ヒドラジン7.21部を加え20分間攪拌し、固形分濃度36%、酸価109の水性ポリウレタン樹脂ワニス11を得た(ポリウレタン樹脂の側鎖の理論数平均分子量325)。
【0087】
[ラミネート用水性印刷インキ組成物]
実施例1〜8及び比較例1〜4
水性ポリウレタン樹脂ワニス1〜11を使用し、表1、表2記載の配合に従って、ラミネート用水性印刷インキ組成物を製造した。
【0088】
すなわち、顔料とポリウレタン樹脂をレッドデビル型分散機で30分間攪拌し、さらに、水、イソプロピルアルコール及び併用樹脂を添加するものについては、その水、イソプロピルアルコール及び併用樹脂を加えさらに15分攪拌を行った。
【0089】
ここで顔料としては、酸化チタン(デュポン社製タイピュアR−960)、エチレン-アクリル酸樹脂としてはザイクセンAC(住友精化(株)製)を使用した。
【0090】
[評価試験]
得られたラミネート用水性印刷インキ組成物の再溶解性、接着性、押し出しラミネート強度を下記の方法により評価し、その結果を表1及び2に示した。
【0091】
尚、製造直後のインキをa状態、40℃で1カ月エージングさせた後のインキをb状態として、インキの長期保存による各性能の変化も観察した。
【0092】
(1)再溶解性
試験方法
グラビア校正機で各ラミネート用水性印刷インキ組成物を用いて10秒間運転後、運転を止めてそのまま60秒間放置した。続いて、コロナ処理した延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製、P−2161、厚さ25μm、以下処理OPPフィルムという)に印刷し、正常な印刷物になるまでのピッチ数からインキの再溶解性を判定した。
【0093】
評価基準
A:10ピッチ以内で正常に戻る
B:11〜30ピッチで正常に戻る
C:31〜50ピッチで正常に戻る
D:50ピッチでも正常に戻らない
【0094】
(2)接着性
試験方法
各ラミネート用水性印刷インキ組成物をグラビア校正機で処理OPPフィルム及びコロナ処理した延伸PETフィルム(東洋紡(株)製、E−5102、厚さ15μm、以下処理PETフィルムという)にヘリオクリショグラフ200線/インチの版で印刷し、印刷面にセロテープを貼り付け、これを剥がした時の、印刷皮膜がフィルムから剥離する度合いから接着性を評価した。
【0095】
評価基準
A:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しないもの
B:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離するもの
C:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、50%未満がフィルムから剥離するもの
D:印刷皮膜の面積比率として、50%以上がフィルムから剥離するもの
【0096】
(3)押し出しラミネート強度
試験方法
各ラミネート用水性印刷インキ組成物をグラビア校正機で、処理OPPフィルムおよび処理PETフィルムにヘリオクショグラフ200線/インチの版で印刷後、アンカーコート剤[処理OPPフィルムに対してはイミン系(東洋モートン(株)製、EL−420)、処理PETフィルムに対してはイソシアネート系(東洋モートン(株)製、EL−443A/C)を使用]を塗布し、押し出しラミネート機にて溶融ポリエチレンを45μmの厚さに積層して、ラミネート加工物を得た。これらのラミネート加工物を40℃で3日間エージング後、15mm幅に切断し、安田精機(株)製の剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
【0097】
評価方法
剥離強度(g/15mm)の実測値を記載した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【発明の効果】
以上、実施例を挙げて具体的に説明したように、ポリウレタン樹脂を得るための高分子量ポリオールとして、本発明で特定するカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)を使用することにより、保存安定性、接着性、ラミネート適性等が優れている水性印刷インキ組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いるポリウレタン樹脂を得るためのカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)の構造の1例を示す模式図である。
【図2】本発明で用いるポリウレタン樹脂を得るためのカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)の構造の他の例を示す模式図である。
【図3】本発明で用いるポリウレタン樹脂を得るためのカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)の構造のさらに他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
b−1、b−2、b−3、b−4 側鎖
Claims (6)
- 分子内に水酸基を3個以上有する数平均分子量500〜10,000の高分子量ポリオールに、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を反応させて得られる、カルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)と、有機ジイソシアネート化合物と、鎖伸長剤と、及び必要に応じて反応停止剤とを反応させて得られる、前記ポリオール化合物(A)に起因する数平均分子量が200以上のカルボキシル基を有する側鎖を有し、且つ酸価10〜100のポリウレタン樹脂が、塩基性物質の存在下で溶解又は分散している状態の水性ポリウレタン樹脂ワニス、着色剤から主として構成される水性印刷インキ組成物。
- 請求項1記載のカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)が、分子内に水酸基を3個有する数平均分子量500〜10,000のポリエステルトリオール対して、分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物を残存水酸基数が2個となるよう反応させて得られるカルボキシル基含有高分子量ジオール化合物を主たる成分とするカルボキシル基含有高分子量ポリオール化合物(A)であることを特徴とする水性印刷インキ組成物。
- 請求項1又は2記載の分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物が、無水環を形成していないカルボキシル基を1つ有し、且つ、カルボン酸無水基を1個有する化合物であることを特徴とする水性印刷インキ組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の分子内にカルボン酸無水基を1個有する化合物が、無水トリメリット酸であることを特徴とする水性印刷インキ組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン樹脂の主鎖の末端が、ヒドラジン残基であることを特徴とする水性印刷インキ組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の塩基性物質が、沸点120℃以上の不揮発性アミンであることを特徴とする水性印刷インキ組成物。
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