JP4904816B2 - クロマン化合物の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2,4,5の方法は、触媒とは言いながら、何れの場合も、酸を基質のフェノールに対して0.5倍当量程度と相当な量加える事で、反応速度、選択性の向上を図っている。その結果、高温下で多量の酸を用いる事による装置の腐食や複雑化を伴う等、工業的に実施する上で解決すべき新たな課題を生ずる結果となっている。
以上の様に、何れの方法もクロマン化合物の合成方法としては一長一短があり、工業的に実施するには不充分である。特に医薬若しくは健康食品分野向けに用いるには、高純度の製品を出来るだけ安価に製造する必要がある。従来技術では、工業的な規模で高純度のクロマン化合物、特にクロマンカルボン酸誘導体を、簡単な工程・操作で収率良く得る事は出来なかった。
例えば、前掲の特開昭60−92283号公報(特許文献2)は、炭化水素系溶媒を用いて無触媒で反応を行う方法を開示しているが、反応進行に伴って生成する水は反応溶媒と共沸するので必要に応じて留去しても良いと記されており、実施例に於いて、反応中に生成する縮合水はキシレン蒸気と共に数回留去した事が記載されている。一方、特開平7−97380号公報(特許文献3)では、要件として第2級アミン及び酸の存在下に反応させる事が記載されているのみであり、水の効果については何の記載も無い。さらに、特開2003−146981号公報(特許文献5)では、逆にパラホルムアルデヒド又はトリオキサンに例示される水分含有量の低いホルムアルデヒド重合体の使用を推奨している。即ち、何れの先行例に於いても、無溶媒、無触媒の穏和な条件下に於いて、水の存在によって高い収率でクロマンカルボン酸類が得られる事は全く示されておらず、これを予見する事は出来ない。この様に本発明は、従来技術と一線を画するものである。
1.下記一般式(1)で表されるクロマン化合物を、
フェノール類は、一般式(2)で表されるフェノール類である。
本発明においては、反応基質として上記フェノール類を単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
本発明では、上記の何れを用いても良いが、特にホルムアルデヒド水溶液又は水存在下にパラホルムアルデヒドを用いる事が好ましい。
これらのうち、本発明の製造方法は、上記一般式(1)におけるXがエステル基であるクロマンカルボン酸エステルの製造に好適であり、特に、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸エステル類の製造に相応しい。
水の量が10モルを超えると、水とオレフィンとの副反応が無視できなくなる。その結果、オレフィンの対フェノールモル比が低下して収率が低下する。よって、上記範囲が好ましい。
反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常は0.5から10時間程度で反応を行う。好ましい反応時間は、1から4時間の範囲である。しかし、さらに長時間反応を行っても支障は無い。
反応は、回分式、半回分式、連続式の何れの方式で行っても良く、製造スケール等を勘案して適宜選択すれば良い。
通常、冷却して結晶を析出させて濾過すれば容易に生成物を得る事が出来る。例えば、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチルを製造する場合には、トリメチルヒドロキノン、ホルムアルデヒド水溶液とメタクリル酸メチルを無触媒で反応させた後、冷却した反応混合物にメタノールを加えるだけで高純度の結晶を得る事が出来る。
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(1.0g、6.6mmol)、ホルマリン水溶液(1.1g、ホルムアルデヒド37wt%:メタノール7wt%:水56wt%)及びメタクリル酸メチル(3.3g、32.9mmol)を攪拌装置付きの30mlステンレス製耐圧反応容器に仕込み、密閉して180℃で3時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後、室温まで冷却した反応液にメタノールを加え析出した結晶を濾過し、白色粉末状の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチルを得た(1.45g、5.5mmol)。1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による化学純度は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 83.3%
化学純度: 96 %
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
実施例1に於いて、さらに酢酸(0.2g、3.3mmol)を加えた以外は同様に操作し、白色粉末(1.0g、3.8mmol)を得た。反応成績及びHPLCによる化学純度は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 57.4%
化学純度: 79 %
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(1.0g、6.6mmol)、パラホルムアルデヒド(0.4g、13.2mmol)、メタクリル酸メチル(3.3g、32.9mmol)及び水(0.29g、16.1mmol)を攪拌装置付きの30mlステンレス製耐圧反応容器に仕込み、密閉して180℃で3時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後、室温まで冷却した反応液にメタノールを加え析出した結晶を濾過し、白色粉末状の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチルを得た(1.3g、4.9mmol)。1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績及びHPLCによる化学純度は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 74.2%
化学純度: 92.5%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチル)
実施例2に於いて、加える水を(0.06g、3.3mmol)とした以外は同様に操作し、白色粉末状の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチルを得た(1.1g、4.1mmol)。1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績及びHPLCによる化学純度は以下の通りであった。
転化率 : 75.0%
単離収率: 55.5%
化学純度: 85.5%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチル)
実施例2に於いて、水を加えなかった以外は同様に操作し、白色粉末(0.6g、2.3mmol)を得た。反応成績及びHPLCによる化学純度は以下の通りであった。
転化率 : 49 %
単離収率: 34.8%
化学純度: 70.5%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチル)
実施例2に於いて、水を加えず酢酸(0.2g、3.3mmol)を加えた以外は同様に操作した。反応成績は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 60.6%
化学純度: 82.0%
(6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3−ジメチルベンゼン(0.91g、6.6mmol)、ホルマリン水溶液(0.73g、ホルムアルデヒド37wt%:メタノール7wt%:水56wt%)及びメタクリル酸メチル(8.3g、83.0mmol)を、攪拌装置付きの30mlステンレス製耐圧反応容器に仕込み、密閉して180℃で3時間、攪拌しながら反応させた。冷却後、反応液を分析したところ、クロマン化合物として6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチルクロマン−2−カルボン酸メチルが得られた。1,4−ジヒドロキシ−2,3−ジメチルベンゼンを基準とする反応成績は以下の通りであった。
転化率 :89.1%
単離収率:46.8%
化学純度:94.1%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸エチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(1.0g、6.6mmol)、ホルマリン水溶液(1.3g、ホルムアルデヒド37wt%:メタノール7wt%、水56wt%)、メタクリル酸エチル(6.59g、57.7mmol)を攪拌装置付きの30mlステンレス製耐圧反応容器に仕込み、密閉して180℃で4時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後、室温まで冷却してGCで分析した。6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸エチルが得られた。1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 32.3%
化学純度: 88.8%
(6−ヒドロキシ−5,7,8−トリメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(1.0g、6.6mmol)、ホルマリン水溶液(1.1g、ホルムアルデヒド37wt%:メタノール7wt%:水56wt%)、及びアクリル酸メチル(3.0g、34.3mmol)を攪拌装置付きの30mlステンレス製耐圧反応容器に仕込み、密閉して180℃で3時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後、室温まで冷却してGCで分析した。1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績は以下の通りであった。
転化率: 100%
単離収率: 55.9%
化学純度: 87.0%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル)
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン(100Kg)、ホルマリン水溶液(107Kg、ホルムアルデヒド37wt%:メタノール7wt%:水56wt%)、及びメタクリル酸メチル(395Kg)を、1000Lステンレス製耐圧反応釜に仕込み、160℃で4時間反応させた。この時、反応釜内の圧力は1.1MPaを示した。
反応終了後、一晩放置して室温まで冷却した。反応液を濾過、メタノール洗浄した後、コニカルドライヤーで乾燥して白色粉末状の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチルを得た(137.3Kg)。
1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンを基準とする反応成績及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による化学純度は以下の通りであった。
転化率 :100 %
単離収率: 80 %
化学純度: 94.8%
(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸)
2000Lのグラスライニング製反応釜に、実施例6で得た6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチル(137.3Kg)をメタノール(137.3Kg)に溶解し、水(411.9Kg)及び苛性ソーダ(27Kg)を加えた溶液を2時間かけて滴下し、80℃で2時間、加水分解反応を行った。次に、この加水分解反応液を硫酸水素カリウム(91.9Kg)に水(411.9Kg)を加えて溶解した溶液を用いる中和反応を、80℃で2時間行った。その後、遠心分離を施し、コニカルドライヤーで結晶を乾燥して白色粉末状の6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸(130.2Kg)を得た。6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−カルボン酸メチルを基準とする反応成績及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による化学純度は以下の通りであった。
転化率 : 99.9%
単離収率: 99.3%
化学純度: 99.6%
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表されるクロマン化合物の製造方法であって、
一般式(2)で表されるフェノール類、
一般式(3)で表される不飽和化合物類
及びホルムアルデヒド類を、無触媒かつ、フェノール類に対して1から10モル倍の範囲の水を反応開始時に添加して反応させる事を特徴とするクロマン化合物の製造方法。 - 前記フェノール類が、アルキルフェノール又はポリヒドロキシベンゼンであり、前記不飽和化合物類が炭素数3から24迄の脂肪族化合物である請求項1に記載のクロマン化合物の製造方法。
- 前記フェノール類が、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2,3,4,5−テトラメチルフェノール、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記不飽和化合物類がアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクロレイン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、2−メチルアクリロニトリル、2−メチルアクリルアミド、メタクロレイン、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトンニトリル、クロトンアミド、クロトンアルデヒド、クロトンアルコール、2−メチルクロトン酸、2−メチルクロトン酸メチル、2−メチルクロトン酸エチル、2−メチルクロトンニトリル、2−メチルクロトンアミド、2−メチルクロトンアルデヒド、2−メチルクロトンアルコール、3−メチルクロトン酸、3−メチルクロトン酸メチル、3−メチルクロトン酸エチル、3−メチルクロトンニトリル、3−メチルクロトンアミド、3−メチルクロトンアルデヒド、3−メチルクロトンアルコール、4−メチル−ペント−4−エノイックアシッド、4−メチル−ペント−4−エノイックアシッドメチルエステル、4−メチル−ペント−4−エノイックアシッドエチルエステル、4−メチル−ペント−4−エンア−ル、4−メチル−ペント−4−エン−1−オール、3−メチル−ブテ−3−エン−1−オール、2−メチル−プロプ−2−エン−1−オールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のクロマン化合物の製造方法。
- 下記一般式(4)で表されるクロマンカルボン酸エステルの製造方法であって、
一般式(2)で表されるフェノール類、
一般式(5)で表されるメタクリル酸エステル
及びホルムアルデヒド類を、無触媒かつ、フェノール類に対して1から10モル倍の範囲の水を反応開始時に添加して反応させる事を特徴とするクロマンカルボン酸エステルの製造方法。 - 前記フェノール類が、アルキルフェノール又はポリヒドロキシベンゼンである請求項4に記載のクロマンカルボン酸エステルの製造方法。
- 前記フェノール類が、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2,3,4,5−テトラメチルフェノール、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記メタクリル酸エステルがメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のクロマンカルボン酸エステルの製造方法。
- フェノール類に対して化学量論的に過剰のメタクリル酸エステル、ホルムアルデヒド類を用いる請求項4に記載のクロマンカルボン酸エステルの製造方法。
- ホルムアルデヒド類がホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドからなる群から選ばれる一種以上である、請求項4に記載のクロマンカルボン酸エステルの製造方法。
- 1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼン、メタクリル酸メチル、及びホルムアルデヒド類を、1,4−ジヒドロキシ−2,3,5−トリメチルベンゼンに対して1から10モル倍の水を反応開始時に添加して、無触媒で反応させる事を特徴とする、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸メチルの製造方法。
- 請求項4から8の何れかに記載の方法で一般式(4)で表されるクロマンカルボン酸エステルを製造した後に、
さらに、一般式(4)で表されるクロマンカルボン酸エステルを加水分解してクロマンカルボン酸とする、クロマンカルボン酸の製造方法。
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