添付の図面を参照し、本発明に係る空調システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。
図1,2は、一例として示す空調システムの概念図であり、図3,4は、第1および第2室10,11を側方から示すシステムの概念図と、開扉された状態で示す扉24の斜視図とである。図5は、このシステムが実行するプロセスの一例を示すフローチャートである。図1,2は、第1および第2室10,11を上方から示している。図1,3では、扉24,25が閉じた状態(閉扉状態)にある。図2では、扉25が閉じた状態にあり、扉24が開いた状態(開扉状態)にある。システムは、扉24を介して隣り合う2つの室10,11と、それら室10,11に所定量の空気を供給する給気ダクト12(給気管)と、それら室10,11から所定量の空気を排出する排気ダクト13(排気管)と、給気ダクト12に取り付けられた定風量ユニット14a,14bと、排気ダクト13に取り付けられた可変風量ユニット15,16と、コントローラ17とから形成されている。
室10,11は、目標室内気圧が高い第1室10(高圧室)と、第1室10よりも目標室内気圧が低い第2室11(低圧室)とから形成されている。第1および第2室10,11の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。第1室10と第2室11とは、側壁18によって仕切られ、さらに、それら室10,11の四方を囲む天井19、床20、周壁21によって室外と仕切られている。第1室10と第2室11とには、それら室10,11の室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ22が設置されている。圧力センサ22は、ユニット15,16を経由し、インターフェイス23(無線または有線)を介してコントローラ17に接続されている。なお、室10,11の目標室内気圧に特に限定はなく、室10,11の用途や室10,11の容積等によって目標室内気圧を適宜設定することができる。それら室10,11の用途や容積についても特に限定はない。また、第2室11の目標室内気圧が第1室10のそれより高くてもよく、第1および第2室10,11の目標室内気圧が室外の気圧より低くてもよい。
側壁18には、第1室10と第2室11とをつなぐ扉24が取り付けられている。周壁21には、第2室11と室外とをつなぐ扉25が取り付けられている。扉24は、一方の縦方向側部が蝶番を介して側壁18に取り付けられている。扉24は、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸である(図4参照)。扉24は、第1室10から第2室11に向かって旋回させることはできるが、第2室11から第1室10に向かって旋回させることはできない。扉24の近傍には、扉24の開閉を識別するとともに、扉24の開度を測定する開閉角度センサ26が取り付けられている。センサ26は、インターフェイス27を介してコントローラ17に接続されている。扉24の開度とは、図4に示すように、扉24を開けたときの扉24と側壁18とのなす角度θ(扉旋回角度)をいう。扉25は、一方の縦方向側部が蝶番を介して周壁21に取り付けられている(図示せず)。扉25は、扉24と同様に、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸である。それら扉24,25は、側壁18や周壁21に対して0〜180度の範囲で旋回可能である。扉24を開けると、扉24の開放域Kを介して室10,11どうしが通じ、開放域Kを通って第1室10と第2室11とを行き来することができる。また、扉25を開けると、扉25の開放域Kを介して第2室11と室外とが通じ、開放域Kを通って第2室11と室外とを行き来することができる。なお、ユニット14a,14b,15,16やコントローラ17、センサ22,26には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
給気ダクト12は、天井19の上方に延びる基幹ダクト28と、基幹ダクト28から分岐して室10,11に向かって延びる2本の分岐ダクト29,30とから形成されている。基幹ダクト28には、室10,11に所定量の空気を給気する給気用送風機31が取り付けられている。それら分岐ダクト29,30は、室10,11の天井19に施設された給気口(図示せず)につながり、それら室10,11に個別に連結されている。定風量ユニット14a,14bは、ダクト12の内部気圧の変動に対してユニット14a,14b内を通る空気通過量を調節し、室10,11へ供給する空気量を常時一定に保持する。定風量ユニット14a,14bは、各分岐ダクト29,30毎に一つだけ設置されている。
排気ダクト13は、基幹ダクト32と、基幹ダクト32から分岐して室10,11に向かって延びる2本の分岐ダクト33,34とから形成されている。基幹ダクト32には、室10,11から所定量の空気を排気する排気用送風機35が取り付けられている。それら分岐ダクト33,34は、室10,11の周壁21に施設された排気口36につながり、それら室10,11に個別に連結されている。可変風量ユニット15,16は、各分岐ダクト33,34毎に1つだけ設置されている。可変風量ユニット15,16は、モータダンパ37と制御器38とから形成されている。ダンパ37は、図示はしていないが、モジュトロールモータ(回転機)と、モータの駆動力を介して旋回する旋回羽根と、旋回羽根の旋回によって開閉される空気流路とから形成されている。制御器38は、インターフェイス23を介してコントローラ17に接続されている。ユニット15,16では、制御器38からの制御信号によってモジュトロールモータが回転するとともに旋回羽根が所定角度に旋回し、空気流路に対する羽根の開度を調整して空気流路を通過する空気通過量を調節する。なお、モータダンパ37には、平行翼ダンパまたは対向翼ダンパを使用することができる。
システムでは、図3に矢印X1で示すように、給気用送風機31を介して給気ダクト12から室10,11へ所定量の空気が給気され、排気用送風機35を介して室10,11から排気ダクト13へ所定量の空気が排気されている。システムでは、給気用ダクト12の内部を流れる空気に圧力変動が生じたとしても、定風量ユニット14a,14bによって分岐ダクト30,31の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室10,11に供給されている。室10,11から排気ダクト13に排出される空気量は、可変風量ユニット15,16によって調節されている。扉24,25の閉扉中は、ユニット15,16を介して第1および第2室10,11の室内気圧が目標室内気圧に保持されており、第1および第2室10,11の室内気圧が室外のそれよりも高く、第1室10の室内気圧が第2室11のそれよりも高くなっている。
コントローラ17は、所定の演算を行う中央処理装置と所定の条件を記憶可能な主記憶装置とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)である。コントローラ17には、図示はしていないが、キーボードやテンキーユニット等の入力装置、プリンタやX−Yプロッタ等の出力装置、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置がインターフェイスを介して接続されている。コントローラ17は、主記憶装置に格納されたアプリケーションプログラムを起動し、所定のオペレーティングシステムに従い、扉24の開閉を識別する扉開閉識別手段と、室10,11の室内気圧を目標室内気圧に保持する室内気圧調節手段と、扉24の開扉中に空気を第1室10から第2室11に向かって流動させる気流方向規制手段とを実行する。コントローラ17は、室11の内部に設置されているが、室10または室外に設置される場合もある。
システムの起動中、コントローラ17には、圧力センサ22から第1および第2室10,11の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット15,16の制御器38から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ17には、開閉角度センサ26から扉24の開閉情報が常時入力されている。開閉情報には、扉24が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉24の開度(角度θ)が含まれる。コントローラ17は、扉24が閉扉状態にあると判断すると、室10,11に対して室内気圧調節手段を継続して実行し、扉24が開扉されたと判断すると、開放域Kを介してつながる第1および第2室10,11に対する室内気圧調節手段を一時中断してそれら室10,11に気流方向規制手段を実行する。また、コントローラ17は、開扉状態にある扉24が閉扉されたと判断すると、それら室10,11に対する気流方向規制手段を中断してそれら室10,11に再び室内気圧調節手段を実行する。
図5のフローチャートに基づき、コントローラ17によって実行されるこのシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室10,11の使用者は、扉25を開けて室11に入り、扉25を閉めた後、コントローラ17のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させた後、コントローラ17には、入力装置を介してこのシステムのプロセスを実行するために必要な諸条件が入力される(S−1)。条件には、扉24の種類、扉24の縦寸法と横寸法、目標室内気圧、開放域Kを通過する空気の平均流速が含まれる。扉24の種類には、スイング式片開き自在戸、スイング式両開き自在戸、スライド式片開き戸、スライド式引き込み戸、スライド式引き分け戸等がある。入力されたそれら条件は、コントローラ17の主記憶装置に格納される。コントローラ17は、条件変更の有無を表示装置を介して表示する(S−2)。それら条件に変更がある場合は、入力装置によって条件変更を行う(S−3)。
条件に変更がない場合、コントローラ17は、扉開閉識別手段を介して扉24が閉扉状態にあるかを判断する(S−4)。コントローラ17は、開閉角度センサ26からの開閉情報に基づき、扉24が閉扉状態にあると判断すると、室10,11に対して室内気圧調節手段を継続して実行し(S−5)、室10,11の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断する(S−6)。なお、システムの起動中、扉25の開閉はないものとする。
室内気圧調節手段においてコントローラ17は、室10,11の目標室内気圧(目標値)を基準入力信号に変換し(設定)、偏差をもとに制御対象が所定の動作をするように制御信号を作る(調節)。さらに、制御信号を操作に必要な操作信号(操作量)に変換するとともに(操作)、外乱が加えられたときの制御量を検出してそれを基準入力信号と同種の物理量(主フィードバック量)に変換し(検出)、その物理量をフィードバックして基準入力信号と比較する。室内気圧調節手段においてコントローラ17は、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。ここで、操作量はモジュトロールモータの回転を制御する電圧や電流、周波数であり、制御対象は可変風量ユニット15,16のモータダンパ37であり、制御量はモータダンパ37の羽根の旋回角度(羽根の開度によるモータダンパ37の空気流路を通過する空気通過量)である。偏差とは、目標室内気圧と主フィードバック量との差で制御量を訂正動作させる動作信号である。なお、フィードバック制御の制御動作は、PID制御である。
室内気圧調節手段では、圧力センサ22が測定した室10,11の実測室内気圧がコントローラ17に入力され、中央処理装置が入力された実測室内気圧とあらかじめ設定された室10,11の目標室内気圧とを常時比較して所定の第1角度制御量を作る。第1角度制御量は、コントローラ17からユニット15,16の制御器38に入力される。制御器38は、コントローラ17から入力された第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ37の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット15,16を通過する空気通過量を調節する。コントローラ17は、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器38を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
室10,11に外乱が加わって室内気圧が変動したり、室10,11の目標室内気圧を変更する必要が生じると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号(目標室内気圧)と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ17は、ステップ6において室10,11の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室10,11の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−7)。具体的には、基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなるように、中央処理装置が新第1角度制御量を作り、新第1角度制御量をユニット15,16の制御器38に出力する。制御器38は、コントローラ17から入力された新第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ37の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット15,16を通過する空気通過量を調節する。コントローラ17は、新第1角度制御量によって基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなり、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器38を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
コントローラ17は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−10)。ステップ10においてシステムの中止を選択すると、コントローラ17のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止する。ステップ10においてシステムの続行を選択すると、コントローラ17は、ステップ4に戻り、扉開閉識別手段を介して扉24が閉扉状態にあるかを再び判断する(S−4)。
図2に示すように扉24が開けられると、ステップ4においてコントローラ17は、開閉角度センサ26からの開閉情報に基づき、扉24が開扉されたと判断し、開扉された扉24を特定するとともに(S−8)、開扉された扉24の開放域Kを介してつながる第1および第2室10,11に対して室内気圧調節手段を一時中断し、それら室10,11に気流方向規制手段を実行する(S−9)。ここで、扉24が開扉されたとは、扉24が全開または半開である場合のみならず、扉24がわずかに開いた状態を含む。気流方向規制手段では、扉24の開扉にともなう開放域Kの開口面積S[m2]を時系列で連続的に算出するとともに、開放域Kを通過するあらかじめ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に開口面積Sを乗じ、扉24の開扉中に第1室10から第2室11に向かって開放域Kを通過する算定空気量VD[m3/h]を時系列で連続的に算出する。空気の平均流速Vが一定とは、扉24の全開状態、扉24の半開状態、扉24がわずかに開いた状態等のいずれの開扉状態でも扉24の開放域Kを通過する空気の平均流速が一定であることをいう。扉24の開口面積Sは、図4に斜線で示すように、扉24の上方に形成される開放域Kの上部表面積S1[m2]と扉24の側方に形成される開放域Kの側部表面積S2[m2]とを加え合わせた値である。なお、扉24の開放域Kを通過する算定空気量VDは、扉24の全開時が最も多く、扉24がわずかに開いた時が最も少ない。扉24の開口面積Sは、以下の数1に基づいて算出される。
(数1)
S=S1+S2[m2]
S1=(L2/2)*sinθ[m2]
S2=2L*H*sin(θ/2)[m2]
ただし、S≦L*H
ここで、Hは扉24の縦寸法[m]、Lは扉24の横寸法[m]であり、θは扉24の開度(扉24と側壁18とのなす角度θ)である。なお、扉24が引き戸の場合では、センサ26を介して開放域Kの横寸法を測定し、引き戸の縦寸法Hに開放域Kの横寸法を乗じて開放域Kの開口面積S[m2]を時系列で連続的に算出する。開放域Kを通過する算定空気量VDは、以下の数2に基づいて算出される。
(数2)
VD=3600S*V[m3/h]
気流方向規制手段では、算出した前記算定空気量VDに等しい空気量が扉24の開放域Kを通過し得るように、ユニット15,16(モータダンパ37の空気流路)を通過する空気通過量VMD15,VMD16[m3/h]を算出するとともに、空気通過量VMD15,VMD16がユニット15,16を通過し得るように、中央処理装置がモータダンパ37の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量をユニット15,16の制御器38に出力する。なお、ユニット15,16を通過する空気通過量VMD15,VMD16は、以下の数3に基づいて算出される。
(数3)
VMD15=VMDS15−VD[m3/h]
VMD16=VMDS16+VD[m3/h]
ここで、VMDS15は、可変風量ユニット15の標準空気通過量[m3/h](=定風量ユニット14aの空気通過量)であり、VMDS16は、可変風量ユニット16の標準空気通過量[m3/h](=定風量ユニット14bの空気通過量)である。なお、前記数1〜数3は、コントローラ17の主記憶装置に格納されている。
可変風量ユニット15,16の制御器38は、コントローラ17から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ37の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット15,16を通過する空気量を空気通過量VMD15,VMD16に一致させる。たとえば、扉24が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト30から第1室10に1200[m3/h]の空気量VMDS15が供給され、分岐ダクト31から第2室11に800[m3/h]の空気量VMDS16が供給されていると仮定し、扉24が開扉状態にあるときに、コントローラ17が第1室10から第2室11に向かって扉24の開放域Kを通過する算定空気量VDを200[m3/h]と算出したとする。この場合、第1室10につながるユニット15を通過する空気通過量がVMD15=1200−200=1000[m3/h]に変更され、第2室11につながるユニット16を通過する空気通過量がVMD16=800+200=1000[m3/h]に変更される。ユニット15,16の制御器38は、コントローラ17からの指令に基づいて、それらダクト34,35を各々1000[m3/h]の空気量が通過するように、モータダンパ37の羽根の旋回角度を変更する。気流方向規制手段では、扉24を開けた直後から扉24の全開に向かってモータダンパ37の空気通路を徐々に広げるように室11につながるユニット16のモータダンパ37の羽根を旋回させ、同時に、モータダンパ37の空気通路を徐々に狭めるように室10につながるユニット15のモータダンパ37の羽根を旋回させる。逆に、扉24の全開から全閉に向かってモータダンパ37の空気通路を徐々に狭めるように室11につながるユニット16のモータダンパ37の羽根を旋回させ、同時に、モータダンパ37の空気通路を徐々に広げるように室10につながるユニット15のモータダンパ37の羽根を旋回させる。
システムでは、気流方向規制手段におけるモータダンパ37の旋回羽根の旋回速度が室内気圧調節手段におけるモータダンパ37の旋回羽根のそれよりも高速に設定されている。ここで、室内気圧調節手段における羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、気流方向規制手段における羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉24を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、実際の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。気流方向規制手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、可変風量ユニット15,16を介して開放域Kを通過する空気量に等しい空気量を速やかに排気することができず、扉24の開扉中に空気が開放域Kを一方向へ通過することができない場合があり、空気が第2室11から第1室10に向かって流入する場合がある。システムは、扉24の開扉中に羽根を高速で旋回させてユニット15,16を通過する空気通過量を速やかに調節するから、空気を第1室10から第2室11に向かって確実かつ迅速に流動させることができる。システムは、扉24の閉扉後に羽根を低速で旋回させて室内気圧を目標室内気圧の範囲内に戻すから、室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、扉24を閉めた後に室10,11の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧に確実かつ迅速に復帰させることができる。
このシステムでは、開放域Kを通過する一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に開放域Kの開口面積S[m2]を乗じて算定空気量VD[m3/h]を算出し、算出した算定空気量VDに等しい空気量が扉24の開放域Kを通過し得るように、それら室10,11につながる可変風量ユニット15,16の空気通過量VMD15,VMD16[m3/h]を調節するから、扉24の開扉中に空気を第1室10から第2室11に向かって確実に流動させることができる。システムは、扉24の開扉中に空気を第1室10から第2室11に向かって常時一方向へ流動させることができるから、第2室11における空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が第2室11から第1室10に向かって流動することはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。このシステムは、気流方向規制手段が扉24の開放域Kを通過する空気の平均流速を一定速度に設定しつつ、第1室10から第2室11に向かって開放域Kを通過する算定空気量VDを算出するから、開放域Kを通過する空気の平均流速を常時一定に保持することができ、扉24が開け難くなることや扉24が閉め難くなることはなく、扉24の開閉を円滑に行うことができる。
システムは、扉開閉識別手段を介して扉24が閉扉状態にあると判断すると、室10,11に対して室内気圧調節手段を継続して実行するから、扉24の閉扉中に室10,11の室内気圧が目標室内気圧に保持され、扉開閉識別手段を介して扉24が開扉されたと判断すると、室10,11に対する室内気圧調節手段を一時中断してそれら室10,11に気流方向規制手段を実行するから、扉24の開扉中に空気を第1室10から第2室11に向かって円滑に流動させることができる。システムは、開扉されていた扉24が閉扉されると、気流方向規制手段を中断して室10,11に再び室内気圧調節手段を実行するから、開扉された扉24を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、ユニット15,16の定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防ぐことができ、扉24の開閉にともなって室10,11の室内気圧が変動したとしても、扉24を閉めた後にそれら室10,11の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに復帰させることができる。システムは、1つのユニット15を介して室10に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行され、1つのユニット16を介して室11に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
図6,7は、他の一例として示す空調システムの概念図であり、図8は、室51,52,53を側方から示す空調システムの概念図である。図6,7は、それら室50,51,52,53,54を上方から示している。図6,8では、扉74,75,76,77,78が閉扉状態にある。図7では、扉75,78が閉扉状態にあり、扉74,76,77が開扉状態にある。システムは、扉74,75,76,77を介して隣り合う5つの室50,51,52,53,54と、それら室50,51,52,53,54に所定量の空気を供給する給気ダクト55(給気管)と、それら室50,51,52,53,54から所定量の空気を排出する排気ダクト56(排気管)と、給気ダクト55に取り付けられた定風量ユニット57a,57b,57c,57d,57eと、排気ダクト56に取り付けられた可変風量ユニット58,59,60,61,62と、コントローラ63とから形成されている。
それら室50,51,52,53,54は、目標室内気圧が最も高い第1室50と、第1室50よりも目標室内気圧が低い第2〜第5室51,52,53,54とから形成されている。第1〜第5室50,51,52,53,54の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。第2〜第5室51,52,53,54の目標室内気圧は、第2室51から第5室54に向かって順に低くなっている。したがって、第1室50と第2〜第5室51,52,53,54との関係では、第1室50が高圧室となり、第2〜第5室51,52,53,54が低圧室となる。第2室51と第3〜第5室52,53,54との関係では、第2室51が高圧室となり、第3〜第5室52,53,54が低圧室となる。また、第3室52と第4〜第5室53,54との関係では、第3室52が高圧室となり、第4〜第5室が53,54低圧室となる。第4室53と第5室54との関係では、第4室53が高圧室となり、第5室54が低圧室となる。それら室50,51,52,53,54は、側壁64,65,66,67,68によって仕切られ、さらに、室50,51,52,53,54の四方を囲む天井69、床70、周壁71によって室外と仕切られている。室50,51,52,53,54には、室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ72が設置されている。圧力センサ72は、ユニット58,59,60,61,62を経由し、インターフェイス73を介してコントローラ63に接続されている。
側壁64,65,66,68には、第1室50と第3室52とをつなぐ扉74、第2室51と第3室52とをつなぐ扉75、第3室52と第4室53とをつなぐ扉76、第4室53と第5室54とをつなぐ扉77が取り付けられている。周壁71には、第4室53と室外とをつなぐ扉78が取り付けられている。それら扉74,75,76,77,78は、一方の縦方向側部が蝶番を介して側壁64,65,66,68や周壁71に取り付けられている(図示せず)。扉74,75,76,77,78は、図4の扉24と同様に、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸である。扉74,75,76,77,78の近傍には、扉74,75,76,77,78の開閉を識別するとともに、扉74,75,76,77,78の開度を測定する開閉角度センサ79,80,81,82,83が取り付けられている。センサ79,80,81,82,83は、インターフェイス84を介してコントローラ63に接続されている。扉74,75,76,77の開度とは、扉74,75,76,77を開けたときの扉74,75,76,77と側壁64,65,66,68とのなす角度θ(扉旋回角度)をいう。扉78の開度とは、扉78を開けたときの扉78と周壁71とのなす角度θ(扉旋回角度)をいう(図4参照)。
扉74,75,76,77,78は、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって旋回させることはできるが、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって旋回させることはできない。すなわち、扉74は第1室50から第3室52に向かって旋回し、扉75は第2室51から第3室52に向かって旋回し、扉76は第3室52から第4室53に向かって旋回するとともに、扉77は第4室53から第5室54に向かって旋回する。扉78は、第4室53から室外に向かって旋回する。それら扉74,75,76,77,78は、側壁64,65,66,68や周壁71に対して0〜180度の範囲で旋回可能である。扉74,75,76,77を開けると、扉74,75,76,77の開放域K(図4参照)を介して室50,51,52,53,54どうしが通じ、開放域Kを通ってそれら室50,51,52,53,54を行き来することができる。また、扉78を開けると、扉78の開放域Kを介して第4室53と室外とが通じ、開放域Kを通って第4室53と室外とを行き来することができる。なお、ユニット57a,57b,57c,57d,57e,58,59,60,61,62やコントローラ63、センサ72,79,80,81,82,83には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
給気ダクト55は、天井69の上方に延びる基幹ダクト85と、基幹ダクト85から分岐して室50,51,52,53,54に向かって延びる5本の分岐ダクト86,87,88,89,90とから形成されている。基幹ダクト85には、室50,51,52,53,54に所定量の空気を供給する給気用送風機91が取り付けられている。それら分岐ダクト86,87,88,89,90は、室50,51,52,53,54の天井69に施設された給気口(図示せず)につながり、それら室50,51,52,53,54に個別に連結されている。定風量ユニット57a,57b,57c,57d,57eは、ダクト55の内部気圧の変動に対してユニット57a,57b,57c,57d,57e内を通過する空気通過量を調節し、室50,51,52,53,54へ供給する空気量を常時一定に保持する。定風量ユニット57a,57b,57c,57d,57eは、各分岐ダクト86,87,88,89,90毎に1つだけ設置されている。
排気ダクト56は、基幹ダクト92と、基幹ダクト92から分岐して室50,51,52,53,54に向かって延びる5本の分岐ダクト93,94,95,96,97とから形成されている。基幹ダクト92には、室50,51,52,53,54から所定量の空気を排気する排気用送風機98が取り付けられている。それら分岐ダクト93,94,95,96,97は、室50,51,52,53,54の周壁71に施設された排気口99につながり、それら室50,51,52,53,54に個別に連結されている。可変風量ユニット58,59,60,61,62は、各分岐ダクト93,94,95,96,97毎に1つだけ設置されている。定風量ユニット57a,57b,57c,57d,57eや可変風量ユニット58,59,60,61,62は、図1のシステムに使用されたそれらと同一である。可変風量ユニット58,59,60,61,62は、モータダンパ100と制御器101とから形成されている。
システムでは、図8に矢印X1で示すように、給気用送風機91を介して給気ダクト55から室50,51,52,53,54へ所定量の空気が給気され、排気用送風機98を介して室50,51,52,53,54から排気ダクト56へ所定量の空気が排出されている。システムでは、給気用ダクト55の内部を流れる空気に圧力変動が生じたとしても、定風量ユニット57a,57b,57c,57d,57eによって分岐ダクト86,87,88,89,90の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室50,51,52,53,54に供給されている。室50,51,52,53,54から排気ダクト56に排気される空気量は、可変風量ユニット58,59,60,61,62によって調節されている。扉74,75,76,77,78の閉扉中は、第1室50の室内気圧が最も高く、第2室51から第5室54に向かって室内気圧が順に低くなるように、ユニット58,59,60,61,62を介して室50,51,52,53,54の室内気圧が目標室内気圧に保持されている。
コントローラ63は、図1のシステムのそれと同様に、中央処理装置と主記憶装置とを有するマイクロプロセッサであり、扉74,75,76,77,78の開閉を識別する扉開閉識別手段と、室50,51,52,53,54の室内気圧を目標室内気圧に保持する室内気圧調節手段と、扉74,75,76,77,78の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段とを実行する。コントローラ63には、入力装置や出力装置、表示装置がインターフェイスを介して接続されている。コントローラ63は、室53の内部に設置されているが、他の室50,51,52,54のいずれかまたは室外に設置される場合もある。
システムの起動中、コントローラ63には、圧力センサ72から第1〜第5室50,51,52,53,54の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット58,59,60,61,62の制御器101から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ63には、開閉角度センサ79,80,81,82,83から扉74,75,76,77,78の開閉情報が常時入力されている。開閉情報には、扉74,75,76,77,78が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉74,75,76,77,78の開度(角度θ)が含まれる。コントローラ63は、扉74,75,76,77,78の全てが閉扉状態にあると判断すると、室50,51,52,53,54に対して室内気圧調節手段を継続して実行し、扉74,75,76,77,78のいずれかが開扉されたと判断すると、開放域Kを介してつながる室に対する室内気圧調節手段を一時中断して該室に気流方向規制手段を実行する。また、コントローラ63は、開扉状態にある扉が閉扉されたと判断すると、気流方向規制手段を実行中の室に対し、気流方向規制手段を中断して該室に再び室内気圧調節手段を実行する。
図5のフローチャートを援用し、このシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室50,51,52,53,54の使用者は、扉78を開けて室53に入り、扉78を閉めた後、コントローラ63のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させた後、コントローラ63には、このシステムのプロセスを実行するために必要な諸条件が入力される(S−1)。条件は、図1のシステムのそれと同一である。入力された条件は、コントローラ63の主記憶装置に格納される。コントローラ63は、条件変更の有無を表示装置を介して表示する(S−2)。それら条件に変更がある場合は、入力装置によって条件変更を行う(S−3)。
条件に変更がない場合、コントローラ63は、扉開閉識別手段を介して扉74,75,76,77,78の全てが閉扉状態にあるかを判断する(S−4)。コントローラ63は、開閉角度センサ79,80,81,82,83からの開閉情報に基づき、扉74,75,76,77,78の全てが閉扉状態にあると判断すると、それら室50,51,52,53,54に対して室内気圧調節手段を実行し(S−5)、室50,51,52,53,54の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断する(S−6)。室内気圧調節手段においてコントローラ63は、図1のシステムと同様に、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。
室内気圧調節手段では、圧力センサ72が測定した室50,51,52,53,54の実測室内気圧がコントローラ63に入力され、中央処理装置が入力された実測室内気圧とあらかじめ設定された室50,51,52,53,54の目標室内気圧とを常時比較して所定の第1角度制御量を作る。第1角度制御量は、コントローラ63からユニット58,59,60,61,62の制御器101に入力される。制御器101は、コントローラ63から入力された第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ100の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット58,59,60,61,62を通過する空気通過量を調節する。コントローラ63は、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器101を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
扉74,75,76,77,78の閉扉中に室50,51,52,53,54の室内気圧が変動すると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ63は、室50,51,52,53,54の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室50,51,52,53,54の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−7)。具体的には、基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなるように、中央処理装置が新第1角度制御量を作り、新第1角度制御量をユニット58,59,60,61,62の制御器101に出力する。制御器101は、コントローラ63から入力された新第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ100の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット58,59,60,61,62を通過する空気通過量を調節する。コントローラ63は、新第1角度制御量によって基準入力信号とフィードバック量との間の誤差がゼロとなり、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器101を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
コントローラ63は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−10)。ステップ10においてシステムの中止を選択すると、コントローラ63のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止する。ステップ10においてシステムの続行を選択すると、コントローラ63は、ステップ4に戻り、扉開閉識別手段を介して扉74,75,76,77,78が閉扉状態にあるかを再び判断する(S−4)。
図7に示すように扉74,76,77が開けられると、ステップ4においてコントローラ63は、開閉角度センサ79,81,82からの開閉情報に基づき、扉74,76,77が開扉されたと判断し、開扉された扉74,76,77を特定するとともに(S−8)、開扉された扉74,76,77の開放域Kを介してつながる室50,52,53,54に対して室内気圧調節手段を一時中断し、それら室50,52,53,54に気流方向規制手段を実行する(S−9)。扉74,76,77が開けられると、矢印X2で示すように、空気が第1室50から第3室52を通って第4室53に流入し、さらに、第4室53から第5室54に流入する。気流方向規制手段では、扉74,76,77の開扉にともなう開放域Kの開口面積S[m2]を時系列で連続的に算出する。
気流方向規制手段では、開放域Kを通過するあらかじめ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に算出した開口面積Sを乗じ、扉74の開扉中に第1室50から第3室52に向かって開放域Kを通過する算定空気量VD[m3/h]を時系列で算出し、第3室52から第4室53に向かって開放域Kを通過する算定空気量VD[m3/h]を時系列で算出するとともに、第4室53から第5室54に向かって開放域Kを通過する算定空気量VD[m3/h]を時系列で算出する。扉74,76,77の開口面積Sは、扉74,76,77の上方に形成される開放域Kの上部表面積S1[m2]と扉74,76,77の側方に形成される開放域Kの側部表面積S2[m2]とを加え合わせた値であり(図4参照)、図1のシステムと同様に、前記数1に基づいて算出される。また、開放域Kを通過する空気通過量VDは、図1のシステムと同様に、前記数2に基づいて算出される。他の扉75,78の開口面積Sやそれら扉75,78の開放域Kを通過する空気通過量VDも同様に数1と数2とに基づいて算出される。
気流方向規制手段においてコントローラ63では、算出した前記算定空気量VDに等しい空気量が扉74,76,77の開放域Kを通過し得るように、ユニット58,60,61,62を通過する空気通過量VMDを算出するとともに、空気通過量VMDがユニット58,60,61,62を通過し得るように、中央処理装置がモータダンパ100の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量をユニット58,60,61,62の制御器101に出力する。なお、ユニット58,60,61,62を通過する空気通過量VMDは、行列式で表す以下の数4に基づいて算出される。
(数4)
VMD=VMDS−A*VD
ここで、VMD,VMDS,VD,Aは、以下の表1に示す行列である。数1〜数4は、コントローラ63の主記憶装置に格納されている。VMDS,Aは、コントローラ63の主記憶装置にあらかじめ格納されている。Aは、表2に示すように、扉74,75,76,77,78と可変風量ユニット58,59,60,61,62との関係を表す対応テーブルを行列として表示したものである。表2における1は扉に隣接する陽圧側の室を表し、−1は扉に隣接する陰圧側の室を表すとともに、0は扉に隣接しない室を表す。なお、システムでは、数4に基づいてユニット59を通過する空気通過量VMD59も同時に算出されているが、制御には用いない。
可変風量ユニット58,60,61,62の制御器101は、コントローラ63から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ100の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット58,60,61,62を通過する空気量を空気通過量VMD58,VMD60,VMD61,VMD62に一致させる。たとえば、扉74,75,76,77,78が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト86から第1室50に1500[m3/h]の空気量VMDS58が供給され、分岐ダクト87から第2室51に1200[m3/h]の空気量VMDS59が供給され、さらに、分岐ダクト88から第3室52に1000[m3/h]の空気量VMDS60が供給され、分岐ダクト89から第4室53に800[m3/h]の空気量VMDS61が供給され、分岐ダクト90から第5室54に600[m3/h]の空気量VMDS62が供給されていると仮定する。また、図7に示すように扉74,76,77が開扉状態にあるときに、中央処理装置が第1室50から第3室52に向かって扉74の開放域Kを通過する算定空気量VD74を300[m3/h]と算出し、第3室52から第4室53に向かって扉76の開放域Kを通過する算定空気量VD76を500[m3/h]と算出するとともに、第4室53から第5室54に向かって扉77の開放域Kを通過する算定空気量VD77を800[m3/h]と算出したとする。この場合、第5室54につながるユニット62を通過する空気通過流量がVMD62=600+800=1400[m3/h]に変更され、第4室53につながるユニット61を通過する空気通過流量がVMD61=800−800+500=500[m3/h]に変更されるとともに、第3室52につながるユニット60を通過する空気通過流量がVMD60=1000−500+300=800[m3/h]に変更され、第1室50につながるユニット58を通過する空気通過流量がVMD58=1500−300=1200[m3/h]に変更される。ユニット58,60,61,62の制御器101は、コントローラ63からの指令に基づいて、ダクト93を1200[m3/h]、ダクト95を800[m3/h]、ダクト96を500[m3/h]、ダクト97を1400[m3/h]の空気が通過するように、モータダンパ100の羽根の旋回角度を変更する。扉75が閉扉状態にある第2室51には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に保持されている。
コントローラ63は、扉74,75,76,77が閉扉された状態で扉78のみが開扉された場合、室外の空気が第4室53に進入することを防止するため、空気が室53から扉78を通って室外に流出するようにユニット61を形成するモータダンパ100の羽根の旋回角度を変更し、空気流路を狭める。具体的には、扉78の開口面積S[m2]を前記数1に基づいて算出し、扉78の開放域Kを通過する算定空気量VD78[m3/h]を前記数2に基づいて算出するとともに、ユニット61を通過する空気通過量VMD61[m3/h]を前記数4に基づいて算出した後、モータダンパ100の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量をユニット61の制御器101に出力する。制御器101は、コントローラ63から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、ユニット61を通過する空気量を空気通過量VMD61に一致させる。たとえば、扉74,75,76,77,78が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト89から第4室53に800[m3/h]の空気量VMDS61が供給されていると仮定し、扉78が開扉状態にあるときに、中央処理装置が第4室53から室外に向かって扉78の開放域Kを通過する算定空気量VD78を300[m3/h]と算出したとする。この場合、第4室53につながるユニット61を通過する空気通過量がVMD61=800−300=500[m3/h]に変更される。ユニット61の制御器101は、コントローラ63からの指令に基づいて、ダクト96を500[m3/h]の空気量が通過するように、モータダンパ100の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、気流方向規制手段における旋回羽根の旋回速度が室内気圧調節手段における羽根のそれよりも高速に設定されている。ここで、室内気圧調節手段における羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、気流方向規制手段における羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉74,75,76,77,78を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、実際の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。気流方向規制手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、可変風量ユニット58,59,60,61,62を介して開放域Kを通過する空気量に等しい空気量を速やかに排気することができず、扉74,75,76,77,78の開扉中に空気が開放域Kを一方向へ通過することができない場合があり、目標室内気圧が低い室から目標室内気圧が高い室に向かって空気が流入したり、空気が室外から第4室53に向かって流入する場合がある。
システムは、扉74,75,76,77,78の開扉中に羽根を高速で旋回させてユニット58,59,60,61,62を通過する空気通過量を速やかに調節するから、目標室内気圧が高い室から目標室内気圧が低い室に向かって空気を確実かつ迅速に流動させることができ、空気を第4室53から室外に向かって確実かつ迅速に流動させることができる。システムは、扉74,75,76,77,78の閉扉後にユニット58,59,60,61,62の羽根を低速で旋回させて室内気圧を目標室内気圧の範囲内に戻すから、室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、扉74,75,76,77,78を閉めた後にそれら室50,51,52,53,54の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧に確実かつ迅速に復帰させることができる。
このシステムでは、開放域Kを通過する一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に開放域Kの開口面積S[m2]を乗じて算定空気量VD[m3/h]を算出し、算出した算定空気量VDに等しい空気量が扉74,75,76,77,78の開放域Kを通過し得るように、それら室50,51,52,53,54につながる可変風量ユニット58,59,60,61,62の空気通過量VMD[m3/h]を調節するから、扉74,75,76,77の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を確実に流動させることができる。システムは、扉74,75,76,77,78の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を常時一方向へ流動させることができ、目標室内気圧の低い室における空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって流動することはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に室外へ排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。このシステムは、気流方向規制手段が扉74,75,76,77,78の開放域Kを通過する空気の平均流速を一定速度に設定しつつ、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって開放域Kを通過する算定空気量VDを算出するから、開放域Kを通過する空気の平均流速を常時一定に保持することができ、扉74,75,76,77,78が開け難くなることや扉74,75,76,77,78が閉め難くなることはなく、扉74,75,76,77,78の開閉を円滑に行うことができる。
システムは、扉開閉識別手段を介して室50,51,52,53,54毎に扉74,75,76,77,78の全てが閉扉状態にあると判断すると、該室に対して室内気圧調節手段を継続して実行するから、扉74,75,76,77,78の閉扉中に該室の室内気圧が目標室内気圧に保持され、扉開閉識別手段を介して扉74,75,76,77,78のいずれかが開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放域Kを介してつながる室に対する室内気圧調節手段を一時中断して気流方向規制手段を実行するから、扉の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を円滑に流動させることができる。システムは、開扉されていた扉74,76,77が閉扉されると、気流方向規制手段を中断して室50,52,53,54に室内気圧調節手段を再び実行するから、開扉された扉74,76,77を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、ユニット58,60,61,62の定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防ぐことができ、扉74,76,77の開閉にともなって室50,52,53,54の室内気圧が変動したとしても、扉74,76,77を閉めた後にそれら室50,52,53,54の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧に速やかに復帰させることができる。システムは、1つの可変風量ユニット58,59,60,61,62を介してそれら室50,51,52,53,54に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
それら図示のシステムにおいて、コントローラ17,63の主記憶装置は、室10,11,50,51,52,53,54の目標室内気圧やセンサ22,72が測定した室10,11,50,51,52,53,54の実測気圧、開放域Kを通過する算定空気量VD、可変風量ユニット15,16,58,59,60,61,62を通過する通過空気量VMD等の数値を記憶することができる。また、それら数値を表示装置を介して画面に表示したり、出力装置を介して印字することもできる。
それらシステムでは、定風量ユニット14a,14b,57a,57b,57c,57d,57eが給気ダクト12,55から分岐するダクト30,31,86,87,88,89,90に取り付けられ、可変風量ユニット15,16,58,59,60,61,62が排気ダクト13,56から分岐するダクト34,35,93,94,95,96,97に取り付けられているが、定風量ユニット14a,14b,57a,57b,57c,57d,57eが排気ダクト13,56から分岐するダクト34,35,93,94,95,96,97に取り付けられていてもよく、可変風量ユニット15,16,58,59,60,61,62が給気ダクト12,55から分岐するダクト30,31,86,87,88,89,90に取り付けられていてもよい。それらシステムでは、コントローラ17,63が室内気圧調整手段を実行するが、制御器38,101を介して可変風量ユニット15,16,58,59,60,61,62が単独で室内気圧調整手段を実行することもできる。