添付の図面を参照し、本発明に係る空調システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。
図1〜4は、一例として示す空調システムの概念図である。図5は、側壁13の側から示す第1室10の概観図である。図1〜4は室10,11,12を上方から示し、図5は、室10を側方から示している。図1では、扉18,19,20のすべてが閉じられ(閉扉状態)、扉19の前に使用者63(人)が立っている。図2では、扉19のみが開かれている(開扉状態)。図3では、扉18,19,20のすべてが閉じられ、扉18の前に使用者63が立っている。図4では、扉18のみが開かれている。
本実施の形態では、互いに隣接する3つの室10,11,12を例としてシステムを説明する。ただし、室を3つに限定するものではなく、室が2つまたは室が4つ以上であってもよい。室は、目標室内気圧が最も高い第1室10と、第1室10よりも目標室内気圧が低い第2室11と、第2室11よりも目標室内気圧が低い第3室12とから形成されている。第1室10と第2〜第3室11,12との関係では、第1室10が高圧室となり、第2〜第3室11,12が低圧室となる。第2室11と第3室12との関係では、第2室11が高圧室となり、第3室12が低圧室となる。それら室10,11,12の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。第1〜第3室10,11,12は、側壁13,14によって仕切られ、さらに、それら室10,11,12の四方を囲む天井15、床16、周壁17によって室外と仕切られている。側壁14には、第1室10と第2室11とをつなぐ扉18が設置され、第2室11と第3室12とをつなぐ扉19が設置されている。周壁17には、第3室12と室外とをつなぐ扉20が設置されている。
室10,11,12には、それら室10,11,12に所定量の空気を供給する給気ダクト21(給気管)がつながり、それら室10,11,12から所定量の空気を排出する排気ダクト22(排気管)がつながっている。室12には、コントローラ23が設置されている。コントローラ23は、第3室12に設置されているが、第1室10または第2室11に設置されていてもよい。室10,11,12には、それら室10,11,12の室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ24,25,26が設置されている。圧力センサ24,25,26は、インターフェイス27(無線または有線)を介してコントローラ23に接続されている。なお、室10,11,12の目標室内気圧に特に限定はなく、室10,11,12の用途や室10,11,12の容積等によって目標室内気圧を所定の範囲で適宜設定することができる。それら室10,11,12の用途や容積についても特に限定はない。また、第3室12の目標室内気圧が第2室11のそれより高くてもよく、第2室11の目標室内気圧が第1室10のそれより高くてもよい。それら室10,11,12の目標室内気圧が室外の気圧より低くてもよい。
給気ダクト21は、基幹ダクト28と、基幹ダクト28から分岐して室10,11,12に向かって延びる分岐ダクト29とから形成されている。基幹ダクト28には給気用送風機30が取り付けられ、分岐ダクト29には定風量ユニット31,32,33が取り付けられている。それら分岐ダクト29は、室10,11,12の天井15に施設された給気口(図示せず)につながり、それら室10,11,12に個別に連結されている。定風量ユニット31,32,33は、各分岐ダクト29毎に一つだけ設置されている。定風量ユニット31,32,33は、ダクト21の内部気圧の変動に対してユニット31,32,33内を通る空気通過量を調節し、室10,11,12へ供給する空気量を常時一定に保持する。排気ダクト22は、基幹ダクト34と、基幹ダクト34から分岐して室10,11,12に向かって延びる分岐ダクト35とから形成されている。基幹ダクト34には排気用送風機36が取り付けられ、分岐ダクト35には可変風量ユニット37,38,39が取り付けられている。それら分岐ダクト35は、室10,11,12の周壁17に施設された排気口40につながり、それら室10,11,12に個別に連結されている。可変風量ユニット37,38,39は、各分岐ダクト35毎に1つだけ設置されている。
可変風量ユニット37,38,39は、モータダンパ41,42,43と制御器44,45,46とから形成されている。ダンパ41,42,43は、図示はしていないが、モジュトロールモータ(回転機)と、モータの駆動力を介して旋回する旋回羽根と、旋回羽根の旋回によって開閉される空気流路とから形成されている。制御器44,45,46は、インターフェイス27を介してコントローラ23に接続されている。ユニット37,38,39では、制御器44,45,46からの制御信号によってモジュトロールモータが回転するとともに旋回羽根が所定角度に旋回し、空気流路に対する羽根の開度を調整して空気流路を通過する空気通過量を調節する。なお、モータダンパ41,42,43には、平行翼ダンパまたは対向翼ダンパを使用することができる。
図6,7は、閉扉された状態で示す扉18,19,20の斜視図と、開扉された状態で示す扉18,19,20の斜視図とである。扉18,19,20は、一方の縦方向側部が蝶番(図示せず)を介して側壁14や周壁17に取り付けられている。扉18,19,20は、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸である。扉18,19,20は、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって旋回させることはできるが、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室に向かって旋回させることはできない。すなわち、扉18は第1室10から第2室11に向かって旋回し、扉19は第2室11から第3室12に向かって旋回し、扉20は第3室12から室外に向かって旋回する。それら扉18,19,20は、側壁14や周壁17に対して0〜180度の範囲で旋回する。扉18を開けると、扉18の解放空間47を通って室10と室11とを行き来することができ、扉19を開けると、扉19の解放空間48を通って室11と室12とを行き来することができる。扉20を開けると、扉20の解放空間を通って室13と室外とを行き来することができる。
扉18,19,20には、室10,11,12の気密を保持するためにエアタイトのそれが使用されている。ドアノブ49は、グレモンハンドルであり、扉18,19,20の閉扉後にグレモンハンドルをロック(回転)することで扉18,19,20の気密性を高めている。扉18,19,20の上方には、扉18,19,20の前(近傍)に人が位置したときにその人の存在を検出する赤外線センサ50,51,52,53,54が取り付けられている。それらセンサ50,51,52,53,54は、扉18,19,20と天井15との間に延びる側壁14や周壁17に設置され、インターフェイス55を介してコントローラ23に接続されている。センサ50は第1室10の側に設置され、センサ51は第2室11の側に設置されている。センサ52は第2室11の側に設置され、センサ53は第3室12の側に設置されている。センサ54は第3室12の側に設置されている。室外の側には赤外線センサは設置されていない。それらセンサ50,51,52,53,54は、扉18,19,20の前に人が立つと、その人の体温を感知して所定の電気信号(以下、人検出信号という)をコントローラ23に出力する。
扉18,19,20の先端の側の上部には、扉18,19,20を施解錠可能な電気錠56,57,58が取り付けられている。電気錠56,57,58は、通電金具(図示せず)を介して電気錠制御器(図示せず)に接続されている。電気錠制御器は、インターフェイスを介してコントローラ23に接続されている。電気錠56,57,58には、通電中に継続して施錠状態を維持し、電流が遮断されると施錠を解除する通電時施錠型が使用されている。施錠状態にある電気錠56,57,58は、所定の暗証番号を入力することで施錠を解除することができる他、鍵を使用して施錠を解除することもできる。
扉18,19,20が収まる側壁14や周壁17の扉枠には、それら扉18,19,20の開閉を識別するとともに、扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して検出する3個の開閉センサ59,60,61が取り付けられている。それらセンサ59,60,61は、インターフェイス62を介してコントローラ23に接続されている。センサ59には、リミットスイッチ(トリガーセンサ)が使用されている。リミットスイッチは、扉18,19,20のデッドボルトの動きを接点信号に変換し、ON/OFF信号を出力する。センサ59は、扉18,19,20を開く前および閉じた後にグレモンハンドルを回転させる動作を検出する。センサ60,61には、マグネットスイッチが使用されている。マグネットスイッチは、磁力で扉18,19,20の開閉を検出する。センサ59は、扉18,19,20を閉めたときにドアノブ49が対向する扉枠に取り付けられている。センサ60は、扉18,19,20を閉めたときの扉18,19,20の先端の側に位置する扉枠に取り付けられている。センサ61は、蝶番の側に位置する扉枠に取り付けられている。マグネットスイッチが反応するまでの遊び(ストローク)を利用することで、センサ60,61が反応する扉回転角度に差を設けることができるから、センサ60,61の種類および取り付け位置を適宜選択することで、センサ60,61が反応する扉開度を調節することができる。扉18,19,20を開くときには、扉18,19,20のエアタイトが解かれ、扉18,19,20がわずかに開いた時点でセンサ59が反応し、その後、センサ60→センサ61の順に反応する。これとは逆に、扉18,19,20を閉めるときには、センサ61→センサ60→センサ59の順に反応する。扉18,19,20の近傍には2種類かつ3個のセンサ59,60,61が取り付けられているが、これに限定するものではなく、扉18,19,20の実際の開き度合いを識別可能な態様においてセンサの種類や個数、取り付け位置を決めることができる。なお、コントローラ23や給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット31,32,33,37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54,59,60,61、電気錠制御器には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
システムでは、矢印L1で示すように、給気用送風機30の駆動力を介して給気ダクト21から室10,11,12へ所定量の空気が給気され、矢印L2で示すように、排気用送風機36の駆動力を介して室10,11,12から排気ダクト22へ所定量の空気が排気されている。システムでは、給気用ダクト21の内部を流れる空気に圧力変動が生じたとしても、定風量ユニット31,32,33によって分岐ダクト29の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室10,11,12に供給されている。室10,11,12から排気ダクト22に排出される空気量は、可変風量ユニット37,38,39によって調節されている。扉18,19,20の閉扉中はユニット37,38,39を介して第1〜第3室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に維持されており、第1〜第3室10,11,12の室内気圧が室外の気圧(大気圧)よりも高く、第1室10の室内気圧が第2室11のそれよりも高くなり、第2室11の室内気圧が第3室12のそれよりも高くなっている。
コントローラ23は、所定の制御、演算を行う中央処理装置と所定の条件を記憶可能な主記憶装置とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)である。コントローラ23には、図示はしていないが、キーボードやテンキーユニット等の入力装置、プリンタやX−Yプロッタ等の出力装置、液晶ディスプレイやCRT等の表示装置がインターフェイスを介して接続されている。入力装置と表示装置とは、各室10,11,12毎に設置されている。コントローラ23は、主記憶装置に格納されたアプリケーションプログラムを起動し、所定のオペレーティングシステムにしたがって各手段を実行する。コントローラ23が実行する手段には、所定の条件を記憶する初期条件記憶手段、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、扉18,19,20の開閉を識別するとともに扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して識別する扉開閉識別手段、扉18,19,20のいずれかが開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段がある。
システムの起動中、コントローラ23には、圧力センサ24,25,26から室10,11,12の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット37,38,39の制御器44,45,46から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ23には、開閉センサ59,60,61から扉18,19,20の開閉情報が常時入力されている。コントローラ23は、センサ50,51,52,53,54を介して扉18,19,20の前に人が存在するかを常時監視している。扉18,19,20の開閉情報には、扉18,19,20が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉18,19,20の複数の段階に区分された実際の開き度合が含まれる。コントローラ23は、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して室内気圧調節手段を継続して実行し、扉18,19,20のいずれか1つが開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放空間を介してつながる室に対する室内気圧調節手段を中断してそれら室に気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、気流方向規制手段を実行中の室の扉が閉扉されたと判断すると、それら室に対する気流方向規制手段を中断してそれら室に再び室内気圧調節手段を実行する。
図8は、このシステムが実行するプロセスの一例を示すフローチャートである。図9は、図8から続くフローチャートである。図8,9に基づき、コントローラ23によって実行されるこのシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室10,11,12の使用者63(人)は、扉20を開けて室12に入り、扉20を閉めた後、コントローラ23のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させると、給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット31,32,33,37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54,59,60,61、電気錠制御器、電気錠56,57,58が稼動する。なお、システムを起動させる際には、扉18,19,20のすべてが閉じられているものとするとともに、扉18,19,20の前(近傍)に使用者63がいないものとする。システムを起動させた後、入力装置によって各手段を実行するための条件が入力される(S−1)。条件は、各室10,11,12の目標室内気圧、扉18,19,20が開扉されたと仮定したときの複数の段階に区分されたそれら扉18,19,20の仮想開き度合(複数の段階に区分された扉18,19,20の仮想旋回角度)、前記仮想開き度合に対応する複数の段階に区分された扉開放空間空気通過量VD、解錠維持時間である。コントローラ23は、条件変更の有無を表示装置を介して表示する(S−2)。条件に変更がある場合は、入力装置によって条件変更を行う(S−3)。入力または変更された条件は、コントローラ23の主記憶装置に格納される(S−4)(初期条件記憶手段)。条件は、システムの起動中いつでも変更することができる。
コントローラ23の主記憶装置には、下記の表1に示す扉18,19,20の実際の開き度合と扉18,19,20の仮想開き度合との対応関係、扉18,19,20の仮想開き度合と扉開放空間空気通過量VDとの対応関係が格納されている。コントローラ23は、表1に示すように、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づいて扉18,19,20の開閉を識別する。センサ59,60,61のすべてがONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が0度で扉18,19,20が閉められた状態にある。センサ59がOFFでセンサ60とセンサ61とがONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が0度を超え3度以下の範囲にあり、仮想開き度合の開1に対応する。仮想開き度合の開1では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量VDを100[m3/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量VDを80[m3/h]、扉20の開放空間を通過する開放空間空気通過量VDを50[m3/h]としている。
センサ59とセンサ60とがOFFでセンサ61がONのときは、扉18,19,20の実際の開き度合が3度を超え15度以下の範囲にあり、仮想開き度合の開2に対応する。仮想開き度合の開2では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量VDを300[m3/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量VDを150[m3/h]、扉20の開放空間を通過する開放空間空気通過量VDを100[m3/h]としている。センサ59,60,61のすべてがOFFのときは、扉18,19,20の開閉角度が15度を超え180以下の範囲にあり、仮想開き度合の開3に対応する。仮想開き度合の開3では、扉18の開放空間47を通過する開放空間空気通過量VDを500[m3/h]、扉19の開放空間48を通過する開放空間空気通過量VDを400[m3/h]、扉20の開放空間を通過する開放空間空気通過量VDを300[m3/h]としている。ただし、開放空間空気通過量VDを表1のそれらに限定するものではなく、センサ59,60,61の反応時の扉18,19,20の開き度合い(開閉角度)やそのときの扉18,19,20の開放空間47,48の投影面積、扉18,19,20の種類、扉18,19,20の縦横寸法、扉18,19,20を介してつながる室10,11,12の条件(室内温度、風量)等により、開放空間空気通過量VDを適宜決定することができる。
条件を記憶するとコントローラ23は、すべての扉18,19,20に対する施錠指令(施錠信号)を電気錠制御器に出力する(S−5)。施錠指令が入力された電気錠制御器は、通電金具を介して所定の電流を電気錠56,57,58に流す。電気錠56,57,58は、通電によってその締まり機構が作動し、扉18,19,20を施錠する(S−6)。電気錠56,57,58を介して扉18,19,20を施錠した後、コントローラ23は、各室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する(S−7)。室内気圧調節手段においてコントローラ23は、ユニット37,38,39の空気通過量を調節して各室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に近づけて行き、室内気圧が目標室内気圧の範囲内に入ると、その時点の各室10,11,12の室内気圧を維持する。コントローラ23は、センサ24,25,26が測定した実測室内気圧に基づいて各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断しているとともに(S−8)、センサ50,51,52,53,54からの信号に基づいて扉18,19,20の前に使用者63が存在するかを判断している(S−9)。
室内気圧調節手段においてコントローラ23は、室10,11,12の目標室内気圧(目標値)を基準入力信号に変換し(設定)、偏差をもとに制御対象が所定の動作をするように制御信号を作る(調節)。さらに、制御信号を操作に必要な操作信号(操作量)に変換するとともに(操作)、外乱が加えられたときの制御量を検出してそれを基準入力信号と同種の物理量(主フィードバック量)に変換し(検出)、その物理量をフィードバックして基準入力信号と比較する。室内気圧調節手段においてコントローラ23は、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。ここで、操作量はモジュトロールモータの回転を制御する電圧や電流、周波数であり、制御対象は可変風量ユニット37,38,39のモータダンパ41,42,43であり、制御量はダンパ41,42,43の羽根の旋回角度(羽根の開度によるダンパ41,42,43の空気流路を通過する空気通過量)である。偏差とは、目標室内気圧と主フィードバック量との差で制御量を訂正動作させる動作信号である。なお、フィードバック制御の制御動作は、PID制御である。
室内気圧調節手段では、圧力センサ24,25,26が測定した室10,11,12の実測室内気圧がコントローラ23に入力され、コントローラ23が入力された実測室内気圧とあらかじめ設定された室10,11,12の目標室内気圧とを比較して所定の第1角度制御量を作る。第1角度制御量は、コントローラ23からユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力される。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度(開度)を保持する。
外乱が加わって室10,11,12の室内気圧が変動したり、室10,11,12の目標室内気圧を変更すると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号(目標室内気圧)と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ23は、ステップ(S−8)において室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−10)。具体的には、基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなるように、コントローラ23が新第1角度制御量を作り、新第1角度制御量をユニット37,38,39の制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された新第1角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気通過量を調節する。コントローラ23は、新第1角度制御量によって基準入力信号と主フィードバック量との間の誤差がゼロとなり、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲に入ると、制御器44,45,46を介してその時点における羽根の旋回角度を保持する。
図1に示すように、使用者63が第3室12から第2室11に移動するため、扉19の前(近傍)に立つと、使用者63の体温をセンサ53が感知し、人検出信号がセンサ53からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉19の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉19を特定するとともに、特定した扉19に対する解錠指令(解錠信号)を電気錠制御器に出力する(S−11)。さらに、センサ50,51,52,53,54の測定機能を一時停止する。解錠指令が入力された電気錠制御器は、通電金具を介して電気錠57への通電を遮断する。電気錠57は、通電が遮断されると、その締まり機構が作動し、扉19の施錠を解除する(S−12)。電気錠57による扉19の施錠が解除された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉19が開扉されたかを判断する(S−13)。
コントローラ23は、扉19が開扉されるまでの間、人検出信号をトリガーとして扉19の解錠維持時間を計数し、解錠維持時間内かを判断する(S−14)。解錠維持時間内の場合は、電気錠57への通電が遮断され、扉19の解錠状態が維持される。扉19が開扉されることなく解錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉19に対する施錠指令を電気錠制御器に出力し、電気錠制御器が通電金具を介して所定の電流を電気錠57に流し、電気錠57が扉19を施錠する。さらに、コントローラ23は、解錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54の測定機能を回復させる。扉19が開扉されるまでの間は、室11,12に引き続き室内気圧調節手段が実行される(S−7)。解錠維持時間は、好ましくは3〜15秒、より好ましくは4〜6秒である。
図2に示すように、使用者63が扉19を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉19が開扉されたと判断し、室11,12に対する室内気圧調節手段を中断して室11,12に気流方向規制手段を実行する(S−15)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づき、扉19の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉19の開放空間48を通過し得るように、ユニット38,39(モータダンパ42,43の空気流路)を通過する空気通過量VMDを算出する。ユニット38,39を通過する空気通過量VMDは、以下の数1に基づいて算出される。
[数1]
VMD=VMDS−A*VD
ここで、VMD,VMDS,VD,Aは、以下の表2,3に示す行列である。VMDSやA、数1はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、VDは表1によって定められる。なお、Aは、表3に示すように、扉18,19,20と可変風量ユニット37,38,39との関係を表す対応テーブルを行列として表示したものである。表3における1は扉に隣接する陽圧側の室を表し、−1は扉に隣接する陰圧側の室を表すとともに、0は扉に隣接しない室を表す。
気流方向規制手段においてコントローラ23は、算出した空気通過量VMDがユニット38,39を通過し得るように、モータダンパ42,43の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量をユニット38,39の制御器45,46に出力する。制御器45,46は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ42,43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット38,39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。たとえば、分岐ダクト29から第2室11に1300[m3/h]の空気量VMDS38が供給されている(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m3/h]の空気量VMDS38が排出されている)と仮定するとともに、分岐ダクト29から第3室12に900[m3/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35へ900[m3/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定する。また、扉19が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第2室11から第3室12に向かって開放空間48を通過する扉開放空間空気通過量VD19を400[m3/h]と決定したとする。この場合、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300−400=900[m3/h]に変更され、第3室12につながるユニット39を通過する空気通過流量がVMD39=900+400=1300[m3/h]に変更される。ユニット38,39の制御器45,46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を900[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1300[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、図2に矢印L3で示すように、扉19を開けた直後から扉19の開扉中、気流方向規制手段によって空気が扉19の解放空間48を通って第2室11(高圧室)から第3室12(低圧室)に流入する。なお、扉19が閉扉状態にある第1室10には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ59,60,61によって扉19が閉扉されたかを判断する(S−16)。使用者63が第2室11に入り、扉19を閉めると、コントローラ23は、扉19が閉扉されたと判断し、扉19の施錠指令を電気錠制御器に出力する(S−17)。電気錠制御器が通電金具を介して電気錠57に通電し、電気錠57が扉19を施錠する(S−18)。さらに、コントローラ23は、扉19の閉扉をトリガーとして時間を計数し、扉19が閉扉されてから所定時間(2〜8秒)経過後にセンサ50,51,52,53,54の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−16)において、扉19が開扉されたままであると判断すると、室11,12に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。
コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−19)。ステップ(S−19)においてシステムの中止を選択すると、コントローラ23のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止するとともに、電気錠56,57,58への通電が遮断され、すべての扉18,19,20の施錠が解除される(S−20)。ステップ(S−19)においてシステムを中止せずに続行する場合、コントローラ23は、ステップ(S−7)に戻り、それら室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する。システムを続行すると、コントローラ23は、室内気圧調節手段を実行しつつ(S−7)、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−8)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−9)。
図3に示すように、使用者63が第2室11から第1室10に移動するため、扉18の前に立つと、使用者63の体温をセンサ51が感知し、人検出信号がセンサ51からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉18の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉18を特定するとともに、特定した扉18に対する解錠指令を電気錠制御器に出力する(S−11)。さらに、センサ50,51,52,53,54の測定機能を一時停止する。解錠指令が出力されると、電気錠制御器が通電金具を介して電気錠56への通電を遮断し、電気錠56が扉18の施錠を解除する(S−12)。電気錠56による扉18の施錠が解除された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉18が開扉されたかを判断する(S−13)。
コントローラ23は、人検出信号をトリガーとして扉18の解錠維持時間を計数し、解錠維持時間内かを判断する(S−14)。解錠維持時間内の場合は、扉18の解錠状態が維持される。扉18が開扉されることなく解錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉18に対する施錠指令を電気錠制御器に出力し、電気錠制御器が通電金具を介して所定の電流を電気錠56に流し、電気錠56が扉18を施錠する。さらに、コントローラ23は、解錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54の測定機能を回復させる。扉18が開扉されるまでの間は、室10,11に引き続き室内気圧調節手段が実行される(S−7)。
図4に示すように、使用者63が扉18を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉18が開扉されたと判断し、室10,11に対する室内気圧調節手段を中断して室10,11に気流方向規制手段を実行する(S−15)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づき、扉18の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉18の開放空間47を通過し得るように、ユニット37,38を通過する空気通過量VMDを前記数1に基づいて算出する。
たとえば、分岐ダクト29から第1室10に1800[m3/h]の空気量VMDS37が供給されている(第1室10から分岐ダクト35へ1800[m3/h]の空気量VMDS37が排出されている)と仮定するとともに、分岐ダクト29から第2室11に1300[m3/h]の空気量VMDS38が供給されている(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m3/h]の空気量VMDS38が排出されている)と仮定する。また、扉18が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第1室10から第2室11に向かって開放空間47を通過する扉開放空間空気通過量VD18を500[m3/h]と決定したとする。この場合、第1室10につながるユニット37を通過する空気通過流量がVMD37=1800−500=1300[m3/h]に変更され、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300+500=1800[m3/h]に変更される。ユニット37,38の制御器44,45は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を1300[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ41の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1800[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、図4に矢印L3で示すように、扉18を開けた直後から扉18の開扉中、気流方向規制手段によって空気が扉18の解放空間47を通って第1室10(高圧室)から第2室11(低圧室)に流入する。なお、扉19,20が閉扉状態にある第3室12には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ59,60,61によって扉18が閉扉されたかを判断する(S−16)。使用者63が第1室10に入り、扉18を閉めると、コントローラ23は、扉18が閉扉されたと判断し、扉18の施錠指令を電気錠制御器に出力する(S−17)。電気錠制御器が通電金具を介して電気錠56に通電し、電気錠56が扉18を施錠する(S−18)。さらに、コントローラ23は、扉18の閉扉をトリガーとして時間を計数し、扉18が閉扉されてから所定時間経過後にセンサ50,51,52,53,54の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−16)において、扉18が開扉されたままであると判断すると、室10,11に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−19)。システムの中止を選択すると、起動中のシステムが停止するとともに、すべての扉18,19,20の施錠が解除される。システムを続行する場合、コントローラ23は、それら室10,11,12に室内気圧調節手段を実行しつつ(S−7)、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−8)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−9)。
使用者63が室12から室外に出るために扉20の前に立つと、使用者63の体温をセンサ54が感知し、人検出信号がセンサ54からコントローラ23に出力される。人検出信号が入力されたコントローラ23は、扉20の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉20を特定するとともに、特定した扉20に対する解錠指令を電気錠制御器に出力する(S−11)。さらに、センサ50,51,52,53,54の測定機能を一時停止する。解錠指令が出力されると、電気錠制御器が通電金具を介して電気錠58への通電を遮断し、電気錠58が扉20の施錠を解除する(S−12)。電気錠58による扉20の施錠が解除された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉20が開扉されたかを判断するとともに(S−13)、扉20の解錠維持時間を計数しつつ、解錠維持時間内かを判断する(S−14)。解錠維持時間内の場合は、扉20の解錠状態が維持される。扉20が開扉されることなく解錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉20に対する施錠指令を電気錠制御器に出力し、電気錠制御器が通電金具を介して所定の電流を電気錠58に流し、電気錠58が扉20を施錠する。さらに、コントローラ23は、解錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54の測定機能を回復させる。扉20が開扉されるまでの間は、室12に引き続き室内気圧調節手段が実行される(S−7)。
使用者63が扉20を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉20が開扉されたと判断し、室12に対する室内気圧調節手段を中断して室12に気流方向規制手段を実行する(S−15)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、扉20の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定し、さらに、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉20の開放空間を通過し得るように、ユニット39を通過する空気通過量VMDを前記数1に基づいて算出する。たとえば、扉20が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト29から第3室12に900[m3/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35に900[m3/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定し、扉20が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第3室12から室外に向かって扉20の開放空間を通過する算定空気量VD20を300[m3/h]としたとする。この場合、第3室12につながるユニット39の空気流路を通過する空気通過量がVMD39=900−300=600[m3/h]に変更される。ユニット39の制御器46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を600[m3/h]の空気量が通過するように、モータダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、気流方向規制手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第2旋回速度)が室内気圧調節手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第1旋回速度)よりも高速に設定されている。旋回速度は、室内気圧調節手段から気流方向規制手段に移るときに第1旋回速度から第2旋回速度に切り替わり、気流方向規制手段から室内気圧調節手段に移るときに第2旋回速度から第1旋回速度に切り替わる。ここで、室内気圧調節手段における旋回羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、気流方向規制手段における旋回羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉18,19,20を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。気流方向規制手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、開放空間47,48を通過する扉開放空間空気通過量に等しい空気量を可変風量ユニット37,38,39を介して速やかに排気することができず、空気が開放空間47,48を一方向へ通過しない場合があり、扉18,19,20の開扉中に空気が低圧室から高圧室に向かって流入してしまう場合がある。
システムは、気流方向規制手段における旋回羽根の旋回速度が0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にあるから、扉18,19,20の開扉中に羽根を高速で旋回させてユニット37,38,39の空気流路を通過する空気通過量を速やかに調節することができ、目標室内気圧が高い室から目標室内気圧が低い室に向かって空気を確実かつ迅速に流動させることができる。システムは、室内気圧調節手段において羽根を低速で旋回させて室内気圧を初期設定された目標室内気圧の範囲に戻すから、室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、扉18,19,20が閉扉された後、室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に確実かつ迅速に復帰させることができる。
システムは、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して室内気圧調節手段を実行するから、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持することができる。システムは、人の存在が確認された扉のみの施錠を解除するから、人の存在が確認された扉を除く残余の扉の施錠が解除されることはなく、一度に複数の扉が開扉されることはない。システムは、一度に複数の扉が開扉されることにともなう室10,11,12の内部気流の乱れを防ぐことができ、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室への空気の流入を防ぐことができる。システムでは、決定した扉開放空間空気通過量VD[m3/h]に等しい空気量が扉18,19,20の開放空間47,48を通過し得るように、室10,11,12につながるユニット37,38,39の空気通過量VMD[m3/h]を調節するから、扉18,19の開扉中に、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を確実に流動させることができ、扉20の開扉中に、第3室12から室外に向かって空気を確実に流動させることができる。システムは、扉の開扉中に、空気を高圧室から低圧室に向かって常時一方向へ流動させることができるとともに、空気を第3室12から室外に向かって常時一方向へ流動させることができるから、低圧室における空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が低圧室から高圧室に向かって流動することはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に室外へ排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。
システムは、開扉されていた扉が閉扉されると、気流方向規制手段を中断して室10,11,12に室内気圧調節手段を実行するから、開扉された扉を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、ユニット37,38,39の定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防止することができ、扉18,19,20の開閉にともなって室10,11,12の室内気圧が変動したとしても、扉を閉めた後にそれら室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに復帰させることができる。システムは、1つの可変風量ユニット37,38,39を介してそれら室10,11,12に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
図10〜15は、他の一例として示す空調システムの概念図である。図10では、扉18,19,20のすべてが閉じられ、扉20の前に使用者63が立っている。図11では、扉20のみが開かれている。図12では、扉18,19,20のすべてが閉じられ、扉19の前に使用者63が立っている。図13では、扉19のみが開かれている。図14では、扉18,19,20のすべてが閉じられ、扉18の前に使用者63が立っている。図15では、扉18のみが開かれている。
室は、図1に示すそれらと同様に、目標室内気圧が最も高い第1室10と、第1室10よりも目標室内気圧が低い第2室11と、第2室11よりも目標室内気圧が低い第3室12とから形成されている。それら室10,11,12の目標室内気圧は、室外の気圧よりも高い。側壁14には、第1室10と第2室11とをつなぐ扉18と、第2室11と第3室12とをつなぐ扉19とが設置されている。周壁17には、第3室12と室外とをつなぐ扉20が設置されている。室10,11,12には、給気ダクト21(給気管)と排気ダクト22(排気管)とがつながっている。室外には、コントローラ23が設置されている。室10,11,12には、それら室10,11,12の室内気圧を時系列で連続的に測定する圧力センサ24,25,26が設置されている。圧力センサ24,25,26は、インターフェイス27を介してコントローラ23に接続されている。
給気ダクト21は、基幹ダクト28と、各室10,11,12に個別に連結された分岐ダクト29とから形成されている。基幹ダクト28には給気用送風機30が取り付けられ、分岐ダクト29には定風量ユニット31,32,33が取り付けられている。定風量ユニット31,32,33は、各分岐ダクト29毎に一つだけ設置されている。排気ダクト22は、基幹ダクト34と、各室10,11,12に個別に連結された分岐ダクト35とから形成されている。基幹ダクト34には排気用送風機36が取り付けられ、分岐ダクト35には可変風量ユニット37,38,39が取り付けられている。可変風量ユニット37,38,39は、各分岐ダクト35毎に1つだけ設置されている。定風量ユニット31,32,33や可変風量ユニット37,38,39は、図1のシステムに使用されたそれらと同一である。可変風量ユニット37,38,39は、モータダンパ41,42,43と制御器44,45,46とから形成されている。
扉18,19,20は、図1のそれらと同様に、縦方向側部を軸として旋回するスイング式片開き自在戸であり、エアタイトが使用されている(図6,7参照)。扉18は第1室10から第2室11に向かって旋回し、扉19は第2室11から第3室12に向かって旋回し、扉20は第3室12から室外に向かって旋回する。それら扉10,11,12は、側壁14や周壁17に対して0〜180度の範囲で旋回する。ドアノブ49は、グレモンハンドルである。扉18,19,20の上方には、扉18,19,20の前(近傍)に人が位置したときにその人の存在を検出する赤外線センサ50,51,52,53,54,64が取り付けられている。センサ50,51,52,53,54,64は、インターフェイス55を介してコントローラ23に接続されている。センサ50は第1室10の側に設置され、センサ51は第2室11の側に設置されている。センサ52は第2室11の側に設置され、センサ53は第3室12の側に設置されている。センサ54は第3室12の側に設置され、センサ64は室外の側に設置されている。センサ50,51,52,53,54,64は、図1のシステムに使用されたそれらと同一であり、人の体温を感知して所定の人検出信号をコントローラ23に出力する。扉18,19,20の先端の側の上部には、扉18,19,20を施解錠可能な電気錠56,57,58が取り付けられている。電気錠56,57,58は、通電金具(図示せず)を介して電気錠制御器(図示せず)に接続されている。電気錠制御器は、インターフェイスを介してコントローラ23に接続されている。電気錠56,57,58には、図1のそれらと同様に、通電時施錠型が使用されている。
扉18,19,20が収まる側壁14や周壁17の扉枠には、それら扉18,19,20の開閉を識別するとともに、扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して検出する3個の開閉センサ59,60,61が取り付けられている。それらセンサ59,60,61は、インターフェイス62を介してコントローラ23に接続されている。センサ59,60,61は、図1のシステムに使用されたそれらと同一であり、センサ59にはリミットスイッチ(トリガーセンサ)が使用され、センサ60,61にはマグネットスイッチが使用されている。センサ59は、扉18,19,20を閉めたときにドアノブ49が対向する扉枠に取り付けられている。センサ60は、扉18,19,20を閉めたときの扉18,19,20の先端の側に位置する扉枠に取り付けられている。センサ61は、蝶番の側に位置する扉枠に取り付けられている。なお、コントローラ23や給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット31,32,33,37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54,59,60,61,64、電気錠制御器には、図示はしていないが、配線を介して所定の電力が供給されている。
システムでは、矢印L1で示すように、給気ダクト21から室10,11,12へ所定量の空気が給気され、矢印L2で示すように、室10,11,12から排気ダクト22へ所定量の空気が排気されている。システムでは、定風量ユニット31,32,33によってダクト29の空気通過量が一定に保持され、常時一定量の空気が室10,11,12に供給されている。室10,11,12から排気ダクト22に排出される空気量は、可変風量ユニット37,38,39によって調節されている。扉10,11,12の閉扉中は、ユニット37,38,39によって第1〜第3室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に維持されている。
コントローラ23は、図1のそれと同様に、中央処理装置と主記憶装置とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)である。コントローラ23は、所定の条件を記憶する初期条件記憶手段、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、扉18,19,20の開閉を識別するとともに扉18,19,20の実際の開き度合いを複数の段階に区分して識別する扉開閉識別手段、扉18,19,20の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段を実行する。コントローラ23には、インターフェイスを介して入力装置や出力装置、表示装置が接続されている(図示せず)。入力装置や表示装置は、室10,11,12毎に設置されている。
システムの起動中、コントローラ23には、圧力センサ24,25,26から室10,11,12の実測室内気圧が常時入力され、可変風量ユニット37,38,39の制御器44,45,46から羽根の旋回角度が常時入力されている。コントローラ23には、開閉センサ59,60,61から扉18,19,20の開閉情報が常時入力されている。コントローラ23は、センサ50,51,52,53,54,64を介して扉18,19,20の前に人が存在するかを常時監視している。コントローラ23は、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して室内気圧調節手段を継続して実行し、扉18,19,20のいずれか1つが開扉されたと判断すると、開扉された扉の開放空間47,48を介してつながる室に対する室内気圧調節手段を中断してそれら室に気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、気流方向規制手段を実行中の室の扉が閉扉されたと判断すると、それら室に対する気流方向規制手段を中断してそれら室に室内気圧調節手段を実行する。
図16は、このシステムが実行するプロセスの他の一例を示すフローチャートである。図17は、図16に続くフローチャートである。図16,17に基づき、コントローラ23によって実行されるこのシステムのプロセスの詳細を説明すると、以下のとおりである。室10,11,12の使用者63は、コントローラ23のスイッチ(図示せず)をONにしてシステムを起動させる。システムを起動させると、給気用送風機30、排気用送風機36、ユニット31,32,33,37,38,39、センサ24,25,26,50,51,52,53,54,59,60,61,64、電気錠制御器、電気錠56,57,58が稼動する。ただし、システムを起動させたときには 電気錠56,57,58による扉18,19,20の施錠は行われない。システムを起動させた後、入力装置によってこのシステムの各手段を実行するために必要な条件が入力される(S−30)。条件は、各室10,11,12の目標室内気圧、扉18,19,20が開扉されたと仮定したときの複数の段階に区分されたそれら扉18,19,20の仮想開き度合(複数の段階に区分された扉18,19,20の仮想旋回角度)、前記仮想開き度合に対応する複数の段階に区分された扉開放空間空気通過量VD、施錠維持時間である。コントローラ23は、条件変更の有無を表示装置を介して表示する(S−31)。それら条件に変更がある場合は、入力装置によって条件変更を行う(S−32)。入力または変更された条件は、コントローラ23の主記憶装置に格納される(初期条件記憶手段)(S−33)。それら条件は、システムの起動中いつでも変更することができる。
コントローラ23の主記憶装置には、前記表1に示す扉18,19,20の実際の開き度合と扉18,19,20の仮想開き度合との対応関係、扉18,19,20の仮想開き度合と扉開放空間空気通過量VDとの対応関係が格納されている。条件を記憶するとコントローラ23は、各室10,11,12に対して室内気圧調節手段を実行する(S−34)。室内気圧調節手段においてコントローラ23は、図1のシステムと同様に、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を行う。室内気圧調節手段は、図1のシステムの室内気圧調節手段と同一であるから、その詳細な説明は省略する。コントローラ23は、センサ24,25,26が測定した室内気圧に基づいて各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを判断しているとともに(S−35)、センサ50,51,52,53,54,64からの信号に基づいて扉18,19,20の前に人が存在するかを判断している(S−36)。扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧が変動したり、目標室内気圧が変更されると、実測室内気圧が目標室内気圧の範囲から外れ、基準入力信号と主フィードバック量との間に誤差が生じる。コントローラ23は、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にないと判断すると、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲に入るように修正する(S−37)。
図10に示すように、使用者63が室12に入るために扉20の前(近傍)に立つと、使用者63の体温をセンサ64が感知し、人検出信号がセンサ64からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉20の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉20を特定するとともに、特定した扉20を除く残余の扉18,19に対する施錠指令(施錠信号)を電気錠制御器に出力する(S−38)。さらに、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を一時停止する。施錠指令が入力された電気錠制御器は、通電金具を介して電気錠56,57へ電流を流す。電気錠56,57は、通電によってその締まり機構が作動し、残余の扉18,19を施錠する(S−39)。電気錠56,57によって扉18,19が施錠された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉20が開扉されたかを判断する(S−40)。
コントローラ23は、扉20が開扉されるまでの間、人検出信号をトリガーとして扉18,19の施錠維持時間を計数し、施錠維持時間内かを判断する(S−41)。施錠維持時間内の場合は、電気錠56,57への通電が継続され、残余の扉18,19の施錠状態が維持される。扉20が開扉されることなく施錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉18,19に対する解錠指令(解錠信号)を電気錠制御器に出力し(S−42)、電気錠制御器が通電金具を介して電気錠56,57への通電を遮断し、電気錠56,57が扉18,19の施錠を解除する(S−43)。さらに、コントローラ23は、施錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させるとともに、ステップ(S−34)に戻って室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する。施錠維持時間は、好ましくは3〜15秒、より好ましくは4〜6秒である。
図11に示すように、使用者63が扉20を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉20が開扉されたと判断し、室12に対する室内気圧調節手段を中断して室12に気流方向規制手段を実行する(S−44)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づき、扉20の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉20の開放空間65を通過し得るように、ユニット39(モータダンパ43の空気流路)を通過する空気通過量VMDを前記数1に基づいて算出する。
気流方向規制手段においてコントローラ23は、算出した空気通過量VMDがユニット39を通過し得るように、モータダンパ43の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量をユニット39の制御器46に出力する。制御器46は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。たとえば、扉20が開閉いずれの状態でも、分岐ダクト29から第3室12に900[m3/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35に900[m3/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定し、扉20が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第3室12から室外に向かって扉20の開放空間65を通過する算定空気量VD20を300[m3/h]としたとする。この場合、第3室12につながるユニット39の空気流路を通過する空気通過量がVMD20=900−300=600[m3/h]に変更される。ユニット39の制御器46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を600[m3/h]の空気量が通過するように、モータダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、図11に矢印L3で示すように、扉20を開けた直後から扉20の開扉中、気流方向規制手段によって空気が扉20の解放空間65を通って第3室12から室外に流出する。なお、扉18,19が閉扉状態にある第1室10と第2室11とには、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ59,60,61によって扉20が閉扉されたかを判断する(S−45)。使用者63が第3室12に入り、扉20を閉めると、コントローラ23は、扉20が閉扉されたと判断し、残余の扉18,19の解錠指令を電気錠制御器に出力する(S−46)。電気錠制御器は通電金具を介して電気錠56,57への通電を遮断し、電気錠56,57による扉18,19の施錠が解除される(S−47)。さらに、コントローラ23は、扉20の閉扉をトリガーとして時間を計数し、扉20が閉扉されてから所定時間(2〜8秒)の経過後にセンサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−45)において、扉20が開扉されたままであると判断すると、室12に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。
コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−48)。ステップ(S−48)においてシステムの中止を選択すると、コントローラ23のスイッチがOFFとなり、起動中のシステムが停止する。ステップ(S−48)においてシステムを中止せずに続行する場合、コントローラ23は、ステップ(S−34)に戻り、それら室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する。システムを続行すると、コントローラ23は、室内気圧調節手段を実行しつつ(S−34)、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−35)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−36)。
図12に示すように、使用者63が第3室12から第2室11に移動するため、扉19の前に立つと、使用者63の体温をセンサ53が感知し、人検出信号がセンサ53からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉19の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉19を特定するとともに、特定した扉19を除く残余の扉18,20に対する施錠指令(施錠信号)を電気錠制御器に出力する(S−38)。さらに、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を一時停止する。施錠指令が入力された電気錠制御器は、通電金具を介して電気錠56,58へ電流を流す。電気錠56,58は、通電によってその締まり機構が作動し、残余の扉18,20を施錠する(S−39)。電気錠56,58によって扉18,20が施錠された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉19が開扉されたかを判断する(S−40)。
コントローラ23は、人検出信号をトリガーとして扉18,20の施錠維持時間を計数し、施錠維持時間内かを判断する(S−41)。施錠維持時間内の場合は、扉18,20の施錠状態が維持される。扉19が開扉されることなく施錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉18,20に対する解除指令を電気錠制御器に出力し(S−42)、電気錠制御器が通電金具を介して電気錠56,58への通電を遮断し、電気錠56,58が扉18,20の施錠を解除する(S−43)。さらに、コントローラ23は、施錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させるとともに、ステップ(S−34)に戻って室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する。
図13に示すように、使用者63が扉19を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉19が開扉されたと判断し、室11,12に対する室内気圧調節手段を中断して室11,12に気流方向規制手段を実行する(S−44)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づき、扉19の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉19の開放空間48を通過し得るように、ユニット38,39(モータダンパ42,43の空気流路)を通過する空気通過量VMDを前記数1に基づいて算出する。
たとえば、分岐ダクト29から第2室11に1300[m3/h]の空気量VMDS38が供給されている(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m3/h]の空気量VMDS38が排出されている)と仮定するとともに、分岐ダクト29から第3室12に900[m3/h]の空気量VMDS39が供給されている(第3室12から分岐ダクト35へ900[m3/h]の空気量VMDS39が排出されている)と仮定する。また、扉19が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第2室11から第3室12に向かって開放空間48を通過する扉開放空間空気通過量VD19を400[m3/h]と決定したとする。この場合、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300−400=900[m3/h]に変更され、第3室12につながるユニット39を通過する空気通過流量がVMD39=900+400=1300[m3/h]に変更される。ユニット38,39の制御器45,46は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を900[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1300[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ43の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、図13に矢印L3で示すように、扉19を開けた直後から扉19の開扉中、気流方向規制手段によって空気が扉19の解放空間48を通って第2室11(高圧室)から第3室12(低圧室)に流入する。なお、扉19が閉扉状態にある第1室10には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ59,60,61によって扉19が閉扉されたかを判断する(S−45)。使用者63が第2室11に入り、扉19を閉めると、コントローラ23は、扉19が閉扉されたと判断し、残余の扉18,20の解錠指令を電気錠制御器に出力する(S−46)。電気錠制御器は通電金具を介して電気錠56,58への通電を遮断し、電気錠56,58による扉18,20の施錠が解除される(S−47)。さらに、コントローラ23は、扉19の閉扉をトリガーとして時間を計数し、扉19が閉扉されてから所定時間(2〜8秒)の経過後にセンサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−45)において、扉19が開扉されたままであると判断すると、室11,12に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−48)。システムの中止を選択すると、起動中のシステムが停止する。システムを続行する場合、コントローラ23は、ステップ(S−34)に戻り、それら室10,11,12に室内気圧調節手段を実行しつつ、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−35)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−36)。
図14に示すように、使用者63が第2室11から第1室10に移動するため、扉18の前に立つと、使用者63の体温をセンサ51が感知し、人検出信号がセンサ51からコントローラ23に出力される。人検出信号がコントローラ23に入力されると、コントローラ23は、扉18の前に人が存在すると判断し、人の存在が検出された扉18を特定するとともに、特定した扉18を除く残余の扉19,20に対する施錠指令を電気錠制御器に出力する(S−38)。さらに、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を一時停止する。施錠指令が入力された電気錠制御器は、通電金具を介して電気錠57,58へ電流を流す。電気錠57,58は、通電によってその締まり機構が作動し、残余の扉19,20を施錠する(S−39)。電気錠57,58によって扉19,20が施錠された後、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61を介して扉18が開扉されたかを判断する(S−40)。
コントローラ23は、人検出信号をトリガーとして扉18の施錠維持時間を計数し、施錠維持時間内かを判断する(S−41)。施錠維持時間内の場合は、扉19,20の施錠状態が維持される。扉18が開扉されることなく施錠維持時間が経過すると、コントローラ23が扉19,20に対する解除指令を電気錠制御器に出力し(S−42)、電気錠制御器が通電金具を介して電気錠57,58への通電を遮断し、電気錠57,58が扉19,20の施錠を解除する(S−43)。さらに、コントローラ23は、施錠維持時間が経過した後、センサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させるとともに、ステップ(S−34)に戻って室10,11,12に室内気圧調節手段を実行する。
図15に示すように、使用者63が扉18を開けると、コントローラ23は、開閉センサ59,60,61からの開閉情報に基づき、扉18が開扉されたと判断し、室10,11に対する室内気圧調節手段を中断して室10,11に気流方向規制手段を実行する(S−44)。気流方向規制手段においてコントローラ23は、センサ59,60,61のON/OFF信号に基づき、扉18の実際の開き度合を複数の段階に区分して識別しつつ、実際の開き度合を仮想開き度合の開1〜開3のいずれかに当て嵌め、当て嵌めた仮想開き度合に対応する扉開放空間空気通過量VDを前記表1に基づいて決定する。気流方向規制手段においてコントローラ23は、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉18の開放空間47を通過し得るように、ユニット37(モータダンパ41の空気流路)を通過する空気通過量VMDを前記数1に基づいて算出する。
たとえば、分岐ダクト29から第1室10に1800[m3/h]の空気量VMDS37が供給されている(第1室10から分岐ダクト35へ1800[m3/h]の空気量VMDS37が排出されている)と仮定するとともに、分岐ダクト29から第2室11に1300[m3/h]の空気量VMDS38が供給されている(第2室11から分岐ダクト35へ1300[m3/h]の空気量VMDS38が排出されている)と仮定する。また、扉18が開扉状態にあるときに、コントローラ23が仮想開き度合を表1の開3とするとともに、第1室10から第2室11に向かって開放空間47を通過する扉開放空間空気通過量VD18を500[m3/h]と決定したとする。この場合、第1室10につながるユニット37を通過する空気通過流量がVMD37=1800−500=1300[m3/h]に変更され、第2室11につながるユニット38を通過する空気通過流量がVMD38=1300+500=1800[m3/h]に変更される。ユニット37,38の制御器44,45は、コントローラ23からの指令に基づいて、ダクト35を1300[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ41の羽根の旋回角度を変更するとともに、ダクト35を1800[m3/h]の空気量が通過するように、ダンパ42の羽根の旋回角度を変更する。
システムでは、図15に矢印L3で示すように、扉18を開けた直後から扉18の開扉中、気流方向規制手段によって空気が扉18の解放空間47を通って第1室10(高圧室)から第2室11(低圧室)に流入する。なお、扉19,20が閉扉状態にある第3室12には、室内気圧調節手段が継続して実行され、室内気圧が目標室内気圧に維持されている。コントローラ23は、開閉センサ59,60,61によって扉18が閉扉されたかを判断する(S−45)。使用者63が第1室10に入り、扉18を閉めると、コントローラ23は、扉18が閉扉されたと判断し、残余の扉19,20の解錠指令を電気錠制御器に出力する(S−46)。電気錠制御器が通電金具を介して電気錠57,58への通電を遮断し、電気錠57,58による扉19,20の施錠が解除される(S−47)。さらに、コントローラ23は、扉18の閉扉をトリガーとして時間を計数し、扉18が閉扉されてから所定時間(2〜8秒)の経過後にセンサ50,51,52,53,54,64の測定機能を回復させる。コントローラ23は、ステップ(S−45)において、扉18が開扉されたままであると判断すると、室10,11に対して引き続き気流方向規制手段を実行する。コントローラ23は、システムの中止の有無を表示装置を介して表示する(S−48)。システムの中止を選択すると、起動中のシステムが停止する。システムを続行する場合、コントローラ23は、ステップ(S−34)に戻り、それら室10,11,12に室内気圧調節手段を実行しつつ、各室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧の範囲内にあるかを監視するとともに(S−35)、扉18,19,20の前に人が存在するかを監視する(S−36)。
システムでは、気流方向規制手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第2旋回速度)が室内気圧調節手段におけるモータダンパ41,42,43の旋回羽根の旋回速度(第1旋回速度)よりも高速に設定されている。旋回速度は、室内気圧調節手段から気流方向規制手段に移るときに第1旋回速度から第2旋回速度に切り替わり、気流方向規制手段から室内気圧調節手段に移るときに第2旋回速度から第1旋回速度に切り替わる。ここで、室内気圧調節手段における旋回羽根の旋回速度は0.03〜0.10[rad/sec]の範囲にあり、気流方向規制手段における旋回羽根の旋回速度は0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にある。室内気圧調節手段における羽根の旋回速度が0.10[rad/sec]を超過すると、開扉された扉18,19,20を閉めた後において、室内気圧が目標室内気圧を挟んでプラスとマイナスとに大きく振れて安定せず、室10,11,12の室内気圧が目標室内気圧に復帰しない。気流方向規制手段における羽根の旋回速度が0.30[rad/sec]未満では、開放空間47,48,65を通過する扉開放空間空気通過量に等しい空気量を可変風量ユニット37,38,39を介して速やかに排気することができず、空気が開放空間47,48,65を一方向へ通過しない場合があり、扉18,19の開扉中に空気が低圧室から高圧室に向かって流入したり、扉20の開扉中に空気が室外から第3室12に流入する場合がある。
システムは、気流方向規制手段における旋回羽根の旋回速度が0.30〜1.00[rad/sec]の範囲にあるから、扉18,19,20の開扉中に羽根を高速で旋回させてユニット37,38,39の空気流路を通過する空気通過量を速やかに調節することができ、目標室内気圧が高い室から目標室内気圧が低い室に向かって空気を確実かつ迅速に流動させることができる。システムは、室内気圧調節手段において羽根を低速で旋回させて室内気圧を初期設定された目標室内気圧の範囲に戻すから、室内気圧調節手段において羽根を高速で旋回させる場合と比較し、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することはなく、扉18,19,20が閉扉された後、室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に確実かつ迅速に復帰させることができる。
システムは、扉18,19,20が閉扉状態にあると判断すると、各室10,11,12に対して室内気圧調節手段を実行するから、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持することができる。システムは、人の存在が確認された扉を除く残余の扉を施錠するから、人の存在が確認された扉を除く残余の扉が開扉されることはなく、一度に複数の扉が開扉されることはない。システムは、一度に複数の扉が開扉されることにともなう室10,11,12の内部気流の乱れを防ぐことができ、目標室内気圧の低い室から目標室内気圧の高い室への空気の流入を防ぐことができる。システムでは、決定した扉開放空間空気通過量VD[m3/h]に等しい空気量が扉18,19,20の開放空間47,48,65を通過し得るように、室10,11,12につながるユニット37,38,39の空気通過量VMD[m3/h]を調節するから、扉18,19の開扉中に、目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を確実に流動させることができ、扉20の開扉中に、第3室12から室外に向かって空気を確実に流動させることができる。システムは、扉の開扉中に、空気を高圧室から低圧室に向かって常時一方向へ流動させることができるとともに、空気を第3室12から室外に向かって常時一方向へ流動させることができるから、低圧室における空気が汚染されていたとしても、汚染された空気が低圧室から高圧室に向かって流動することはなく、汚染された空気を所定の経路で安全に室外へ排気することができ、空気汚染の全室への拡大を防ぐことができる。
システムは、開扉されていた扉18,19,20が閉扉されると、気流方向規制手段を中断して室10,11,12に室内気圧調節手段を実行するから、開扉された扉18,19,20を閉めた後において、室内気圧の制御量が周期的に大きく変動することがなく、ユニット37,38,39の定常状態(十分に時間が経過して一定になっているはずの状態)に対する振れ(ハンチング)を防止することができ、扉18,19,20の開閉にともなって室10,11,12の室内気圧が変動したとしても、扉18,19,20を閉めた後にそれら室10,11,12の室内気圧をあらかじめ設定された目標室内気圧の範囲内に速やかに復帰させることができる。システムは、1つの可変風量ユニット37,38,39を介してそれら室10,11,12に室内気圧調節手段と気流方向規制手段とが実行されるから、それら手段の実行に複数の可変風量ユニットを必要とせず、システムの簡略化や低コスト化、省スペース化を図ることができる。
それら図示のシステムでは、センサ59,60,61の替わりに、扉18,19,20の開閉を識別するとともに、扉18,19,20の実測開度θ1(扉18,19,20の実際の開き度合)を測定する開閉角度センサを使用し、気流方向規制手段を実行することもできる。ここで、扉18,19,20の実測開度θ1とは、扉18,19,20を開けたときの側壁14や周壁17と扉18,19,20とのなす角度(扉旋回角度0〜180度)をいう(図7参照)。それら図示のシステムを援用し、扉18,19,20の実測開度θ1を測定する開閉角度センサを使用する場合を説明すると、以下のとおりである。
開閉角度センサは、図示はしていないが、扉18,19,20の蝶番の側に位置する扉枠に取り付けられ、インターフェイスを介してコントローラ23に接続される。コントローラ23は、所定の条件を記憶する初期条件記憶手段、扉18,19,20の閉扉中に室10,11,12の室内気圧を目標室内気圧に維持する室内気圧調節手段、人の存在を検出する人検出手段、扉18,19,20の開閉を識別するとともに扉18,19,20の実測開度θ1を計測する扉開閉識別手段、扉18,19,20の開扉中に目標室内気圧の高い室から目標室内気圧の低い室に向かって空気を流動させる気流方向規制手段を実行する。コントローラ23には、インターフェイスを介して入力装置や出力装置、表示装置が接続されている。なお、コントローラ23が実行する室内気圧調節手段は既述したシステムのそれらと同一であるから、その説明は省略する。
システムを起動させた後、コントローラ23には、入力装置によって各手段を実行するために必要な条件が入力される。条件には、室10,11,12の目標室内気圧、扉18,19,20の種類(扉18,19,20の縦寸法と横寸法とを含む)、扉18,19,20が開扉されたと仮定したときの複数の段階に区分された扉18,19,20の仮想開度θ2(複数の段階に区分された扉の仮想開き度合)、前記仮想開度θ2に対応する複数の扉開放空間空気通過量VD、解錠維持時間、施錠維持時間である。扉18,19,20の種類には、スイング式片開き自在戸、スイング式両開き自在戸、スライド式片開き戸、スライド式引き込み戸、スライド式引き分け戸等がある。入力された条件は、コントローラ23の主記憶装置に格納される(初期条件記憶手段)。
このシステムでは、扉18,19,20の仮想開度θ2が15度、30度、45度の3段階に分類され、それら仮想開度θ2と仮想開度θ2に対応する3つの扉開放空間空気通過量VDとがコントローラ23の主記憶装置に格納されている。扉18,19,20の仮想開度θ2とは、扉18,19,20の実測開度θ1と同様に、扉18,19,20を開けたときの側壁14や周壁17と扉18,19,20とのなす角度θ2(扉旋回角度)をいう。ただし、扉18,19,20の仮想開度θ2を3段階に限定するものではなく、扉18,19,20の仮想開度θ2が4段階以上に分類されてもよく、4段階以上の仮想開度θ2とそれら仮想開度θ2に対応する扉開放空間空気通過量VDとが主記憶装置に格納されてもよい。ここで、扉18,19,20の実測開度θ1と仮想開度θ2との対応関係の一例としては、実測開度θ1が0度を超え15度以下の範囲を仮想開度θ2の15度とみなし、実測開度θ1が15度を超え30度以下の範囲を仮想開度θ2の30度とみなすとともに、実測開度θ1が30度を超え180度以下の範囲を仮想開度θ2の45度とみなすこととする。実測開度θ1のうちの30度を超え180度以下を仮想開度θ2の45度に対応させるのは、実測開度θ1が30度を超え180度以下の範囲における扉開放空間空気通過量VDが略同一となるから、30度を超え180度以下を実質的に実測開度θ1の45度とみなして差し支えないからである。
扉18,19,20の仮想開度θ2に対する扉開放空間空気通過量VDを求める一例としては、開放空間47,48,65を通過する任意かつ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]に開放空間の開口面積S[m2]を乗じ、扉18,19,20の開扉中に開放空間47,48,65を通過する扉開放空間空気通過量VD[m3/h]を算出する。空気の平均流速Vが一定とは、扉18,19,20の全開状態、扉18,19,20の半開状態、扉18,19,20がわずかに開いた状態等のいずれの開扉状態でも、扉18,19,20の開放空間を通過する空気の流速が一定であることをいう。扉18,19,20の開口面積Sは、図7に斜線で示すように、扉18,19,20の上方に形成される開放空間47,48,65の上部表面積S1[m2]と扉18,19,20の側方に形成される開放空間47,48,65の側部表面積S2[m2]とを加え合わせた値である。なお、扉18,19,20の開放空間47,48,65を通過する扉開放空間空気通過量VDは、扉18,19,20の全開時が最も多く、扉18,19,20がわずかに開いた時が最も少ない。扉18,19,20の開口面積Sと扉開放空間空気通過量VDとは以下の数2に基づいて算出される。
[数2]
S=S1+S2[m2]
S1=(L2/2)*sinθ2[m2]
S2=2L*H*sin(θ2/2)[m2]
VD=3600*S*V[m3/h]
ただし、S≦L*H[m2]
ここで、Hは扉18,19,20の縦寸法[m]、Lは扉18,19,20の横寸法[m]であり(図7参照)、θ2は扉18,19,20の仮想開度[度](15度、30度、45度)である。なお、前記数2はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θ2を入力すると、コントローラ23が前記数2に基づいて扉開放空間空気通過量VDを算出し、算出した空気通過量VDを主記憶装置に格納する。
扉18,19,20の仮想開度θ2に対する扉開放空間空気通過量VDを求める他の一例としては、所定時間(たとえば、秒単位、分単位)に扉18,19,20を通過する空気通過量VC[m3/h]をあらかじめ設定し、空気通過量VCに扉18,19,20の開放空間47,48,65を出入りする所定時間の人間の出入りの平均頻度ε(整数)と扉18,19,20の仮想開度θ2の割合η[%]とを乗じて算出する。この場合の扉開放空間空気通過量VDは、以下の数3に基づいて算出される。
[数3]
VD=(VC*ε*η)/100[m3/h]
ここで、扉18,19,20の仮想開度θ2の割合ηは、たとえば、扉18,19,20の仮想開度θ2が15度のときが15%、扉18,19,20の仮想開度θ2が30度のときが30%、扉18,19,20の仮想開度θ2が45度のときが100%である。なお、前記数3はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θ2(15度、30度、45度)を入力すると、コントローラ23が前記数3に基づいて扉開放空間空気通過量VDを算出し、算出した空気通過量VDを主記憶装置に格納する。
扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における仮想開度θ2は、たとえば、扉18,19,20の全開時における開放空間47,48,65の横寸法を100%、全開時に対して横寸法を15%、全開時に対して横寸法を30%の3段階に分類する。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における扉開放空間空気通過量VD[m3/h]を求める一例としては、扉18,19,20の縦寸法L[m]と横寸法H[m]とを乗じて扉18,19,20の全開時における開口面積S[m2]を算出し、算出した開口面積Sに開放空間を通過する任意かつ一定速度に設定された空気の平均流速V[m/s]と扉18,19,20の仮想開度θ2の割合η[%]とを乗じて算出する。この場合の扉開放空間空気通過量VDは、以下の数4に基づいて算出される。
[数4]
S=L*H[m2]
VD=(S*V*η)/100[m3/h]
ここで、扉18,19,20の仮想開度θ2の割合ηは、扉18,19,20の仮想開度θ2が15%のときが15%、扉18,19,20の仮想開度θ2が30%のときが30%、扉18,19,20が全開のときが100%である。なお、前記数4はコントローラ23の主記憶装置に格納されており、入力装置によって扉18,19,20の仮想開度θ2(15%、30%、100%)を入力すると、コントローラ23が前記数4に基づいて扉開放空間空気通過量VDを算出し、算出した空気通過量VDを主記憶装置に格納する。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合における扉18,19,20の実測開度θ1と仮想開度θ2との対応関係の一例としては、実測開度θ1が1〜15%までを仮想開度θ2における15%とみなし、実測開度θ1が16〜30%までを仮想開度θ2における30%とみなすとともに、実測開度θ1が31〜100%までを仮想開度θ2における100%とみなす。なお、扉18,19,20の実測開度θ1は、開放空間47,48,65の実際の横寸法であり、開閉角度センサを介して開放空間47,48,65の横寸法を測定することによって求めることができる。
扉18,19,20のいずれかが開扉されると、扉18,19,20の開閉情報が開閉角度センサからコントローラ23に入力される。ここで、開閉情報には、扉18,19,20が開扉状態にあるか閉扉状態にあるかの他に、開扉された扉18,19,20の実測開度θ1が含まれる。コントローラ23は、扉開閉識別手段によって計測した扉18,19,20の実測開度θ1(扉18,19,20の実際の開き度合)を主記憶装置に格納された3つの仮想開度θ2(15度、30度、45度)のいずれかに当て嵌める。既述のように、実測開度θ1が0度を超え15度以下を仮想開度θ2の15度とし、実測開度θ1が15度を超え30度以下を仮想開度θ2の30度とするとともに、実測開度θ1が30度を超え180度以下を仮想開度θ2の45度とする。扉18,19,20がスライド式引き戸の場合は、実測開度θ1が0%を超え15%以下を仮想開度θ2の15%とし、実測開度θ1が15%を超え30%以下を仮想開度θ2の30%とするとともに、実測開度θ1が30%を超え100%以下を仮想開度θ2の100%とする。気流方向規制手段では、実測開度θ1を仮想開度θ2に当て嵌めた後、仮想開度θ2に対応する扉開放空間空気通過量VDを決定し、決定した扉開放空間空気通過量VDに等しい空気量が扉18,19,20の開放空間47,48,65を通過し得るように、可変風量ユニット37,38,39(モータダンパ41,42,43の空気流路)を通過する空気通過量VMD[m3/h]を算出する。ユニット37,38,39を通過する空気通過量VMDは、コントローラ23の主記憶装置に格納された上記数1に基づいて算出される。
気流方向規制手段では、算出した空気通過量VMDがユニット37,38,39を通過し得るように、コントローラ23がモータダンパ41,42,43の羽根の旋回角度に対する第2角度制御量を作り、第2角度制御量を制御器44,45,46に出力する。制御器44,45,46は、コントローラ23から入力された第2角度制御量に基づき、モータによって羽根を旋回させて旋回角度を変更し、モータダンパ41,42,43の空気流路を時系列で連続的に狭めたり広げたりすることで、ユニット37,38,39を通過する空気量を空気通過量VMDに一致させる。
開閉角度センサによって扉18,19,20の実測開度θ1を測定するシステムは、図1や図10のシステムが有する効果に加え、扉18,19,20の仮想開度θ2を入力すると、コントローラ23が数2〜数4のいずれかに基づいて扉開放空間空気通過量VDを算出しつつ算出した扉開放空間空気通過量VDを格納するから、コントローラ23を介して正確な扉開放空間空気通過量VDを算出することができる。また、このシステムでは、気流方向規制手段が扉18,19,20の開放空間47,48,65を通過する空気の平均流速V[m/s]を一定速度に設定しつつ、開放空間47,48,65を通過する扉開放空間空気通過量VD[m3/h]を決定する場合、開放空間47,48,65を通過する空気の平均流速Vを常時一定に保持することができるから、扉18,19,20が開け難くなることや扉18,19,20が閉め難くなることはなく、扉18,19,20の開閉を円滑に行うことができる。
それらシステムにおいて、コントローラ23の主記憶装置は、室10,11,12の目標室内気圧やセンサ24,25,26が測定した室10,11,12の実測気圧、開放空間47,48,65を通過する算定空気量VD、可変風量ユニット37,38,39を通過する通過空気量VMD等の数値を記憶することができる。また、それら数値を表示装置を介して画面に表示したり、出力装置を介して印字することもできる。
それらシステムでは、定風量ユニット31,32,33が給気ダクト21から分岐するダクト29に取り付けられ、可変風量ユニット37,38,39が排気ダクト22から分岐するダクト35に取り付けられているが、定風量ユニット31,32,33が排気ダクト22から分岐するダクト35に取り付けられていてもよく、可変風量ユニット37,38,39が給気ダクト21から分岐するダクト29に取り付けられていてもよい。それらシステムでは、コントローラ23が室内気圧調整手段を実行するが、制御器44,45,46を介して可変風量ユニット37,38,39が単独で室内気圧調整手段を実行することもできる。
それらシステムでは、赤外線センサ50,51,52,53,54,64に替えて、圧電素子が設置された床マットを使用することもできる。床マットは、扉18,19,20の前の床16に置かれる。使用者63(人)がマットの上に乗ると、使用者63の体重が圧電素子に加わり、圧電素子の両端に所定の電圧が発生する。圧電素子からの電気信号(人検出信号)はコントローラ23に入力され、人検出信号に基づいてコントローラ23が扉18,19,20の前(近傍)に人が存在すると判断する。また、それらシステムでは、赤外線センサ50,51,52,53,54,64に替えて、ボタンスイッチを使用することもできる。ボタンスイッチは、扉18,19,20または扉枠に取り付けられる。使用者63が扉18,19,20を開ける前にボタンスイッチを押すと、電気信号(人検出信号)がコントローラ23に入力され、人検出信号に基づいてコントローラ23が扉18,19,20の前(近傍)に人が存在すると判断する。
それらシステムでは、気流方向規制手段を省くこともできる。この場合において、人の存在が確認されたときにその扉の施錠を解除するシステムは、人の存在が確認された扉を除く残余の扉の施錠が解除されることはなく、一度に複数の扉が開扉されることはないから、複数の扉が一度に開扉されることにともなう室の内部気流の乱れを防止することができ、扉の1つが開扉されたときに、開扉された扉の解放空間を介して空気を高圧室から低圧室に向かって流動させることができる。また、人の存在が確認されたときにその扉を除く残余の扉を施錠するシステムは、人の存在が確認された扉を除く残余の扉を開扉することはできず、一度に複数の扉が開扉されることはないから、複数の扉が一度に開扉されることにともなう室の内部気流の乱れを防止することができ、扉の1つが開扉されたときに、開扉された扉の解放空間を介して空気を高圧室から低圧室に向かって流動させることができる。